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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01H
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01H
管理番号 1377808
異議申立番号 異議2021-700416  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-30 
確定日 2021-08-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第6783389号発明「電流遮断素子、およびオゾン発生装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6783389号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6783389号の請求項1?17に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)5月31日に国際出願され、令和2年10月23日にその特許権の設定登録がされ、令和2年11月11日に特許掲載公報が発行された。その後、令和3年4月30日に特許異議申立人横沢聡(以下、「異議申立人」という。)から請求項1?3に係る特許に対し、特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6783389号の請求項1?17の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1?3の特許に係る発明は次のとおりのものである(以下、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明3」という。)。
「【請求項1】
中間導体の両側に、過電流が流れることにより溶融するヒューズ導体がそれぞれ接続された溶断エレメントの両側に板状の固定電極がそれぞれ接続され、それぞれの前記固定電極の板面が筒状の誘電体の基台の内面に固定材により固定されていることを特徴とする電流遮断素子。
【請求項2】
前記固定電極を3個以上有し、隣り合う前記固定電極の間にそれぞれ前記溶断エレメントが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電流遮断素子。
【請求項3】
前記固定電極と前記溶断エレメントとの接続体である金属部材を一枚の金属板により形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の電流遮断素子。」

3 申立理由の概要
異議申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び甲第2号証並びに従たる証拠として甲第3号証の1?甲第7号証(いずれの文献も以下を参照。)を提出し、請求項1?3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。また、請求項1?3に係る特許は同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

甲第1号証:特開平11-353993号公報
甲第2号証:特開2011-243484号公報
甲第3号証の1:国際公開第2015/183805号
甲第3号証の2:特表2017-517095号公報
甲第4号証:特開平7-57613号公報
甲第5号証:特開2015-228302号公報
甲第6号証:特開2009-99404号公報
甲第7号証:特開2009-283324号公報
甲第3号証の2は、甲第3号証の1に対応する日本国公報である。

4 文献の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高周波電流が通電される端子台に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の端子台は、第1端子と、第2端子と、これら端子間を接続し、電流経路を形成する金属片から構成され、機器間を接続する電線やケーブルの中間媒体、あるいは電流や信号の分岐手段などとして使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の上記端子台では、高周波電流が通電されるとき、第1端子あるいは第2端子の緩みやケーブルや電線との取り付け不良などがあると、これら第1端子または第2端子または金属片が発熱し、この熱が周囲の機器へ悪影響を与える恐れがあった。またこの熱の発生が長時間続くことから、周囲の機器が焼損する恐れもあった。
【0004】本発明は上記問題を解決するものであり、高周波電流が通電されているときの発熱を感知して回路を遮断できる端子台を提供することを目的とするものである。」
「【0011】端子台Tは、水平面に載置された、中央に凹部1Aを有する樹脂製の端子台本体1と、端子台本体1の両側の凸部1Bにそれぞれ一定間隔で設けられたねじ穴1Cに止められるネジ(導体の一例)からなる第1端子2および第2端子3と、これら第1端子2と第2端子3間を接続し、電流経路を形成する接続部4と、1組の第1端子2および第2端子3および接続部4を区分する仕切り板5を備えている。端子台Tは、端子台本体1に設けた、複数組の上記第1端子2および第2端子3および接続部4から構成される。
【0012】上記接続部4は、第1端子2側の第1金属片11と、中央の第2金属片12と、第2端子3側の第3金属片13と、第1金属片11と第2金属片12間に介装されるとともに、第1端子2または第1金属片11の発熱により溶断する第1溶断体14と、第2金属片12と第3金属片13間に介装されるとともに、第2端子3または第3金属片13の発熱により溶断する第2溶断体15と、第2金属片13の中央に載せられた重り16から構成されている。第1?第3金属片11,12,13は、銅や亜鉛などの導体からなり、溶断部である第1,第2溶断体14,15は錫と鉛の合金などにより形成される。また付勢部の一例である重り16により、中央の第2金属片12は下方(垂直な方向)へ付勢されている。」
【図1】


これらの記載より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

[甲1発明]
「第1端子2側の第1金属片11と、中央の第2金属片12と、第2端子3側の第3金属片13と、第1金属片11と第2金属片12間に介装されるとともに、第1端子2または第1金属片の発熱により溶断する第1溶断体14と、第2金属片12と第3金属片13間に介装されるとともに、第2端子3または第3金属片13の発熱により溶断する第2溶断体15とから構成される接続部4であって、
接続部4は、樹脂製の端子台本体1の両側の凸部1Bにそれぞれ一定間隔で設けられたねじ穴1Cに止められるネジからなる第1端子2および第2端子3間を、電流経路を形成するよう接続するものである、接続部4。」

(2)甲第2号証
甲第2号証には次の記載がある。
「【0001】
この発明は電流遮断素子、特に高電圧を利用する機器の放電に起因する回路ショートや回路部品の故障などにおける異常電流発生時に回路を遮断する電流遮断素子に関するものである。」
「【0002】
電流遮断素子として、異常電流が流れた場合に導体が蒸発して電流を遮断するヒューズが一般に用いられており、従来多くの種類のヒューズが高電圧を使用する機器に用いられてきた。ところで、大容量のオゾン発生装置(オゾナイザ)では、高電圧電源に接続される負荷として放電管が100本以上用いられている。オゾナイザでは、放電管のばらつきにより、1本の放電管に短絡放電が生じてその放電管でアーク放電が生じた場合でも、その放電管のみ高電圧電源から切り離して、装置全体の運転を継続できるようにできれば、メインテナンス時間が省略でき、信頼性の高い高電圧装置にできる。しかし、このような多数の負荷が高電圧電源に接続された高電圧装置に用いる電流遮断素子として適切に使用できるものが従来なかった。」
「【0039】
実施の形態3.
図10(A)、(B)は、本発明の実施の形態3による電流遮断素子の構成を示す模式図である。図に示すように、径の異なるあるいは材質の異なる複数のヒューズ導体6や径の等しい複数のヒューズ導体8を、空冷可能な表面積を持つ導体(ヒューズ接続板7)を挟んで複数個直列に接続している。この場合、間に挟むヒューズ接続板7を十分に冷却すれば、ヒューズ導体の抵抗による電力損失が無視できなくなるまで、ヒューズ導体を増やすことができる。また、空冷可能な表面積を持つ導体の両端にヒューズを設ければ、異常電流発生時に両端が蒸発(もしくは溶融)して、導体が切り離されるため、導体を落下させる等の手法で、放電後の絶縁距離を大きく取り、電源再投入時の放電を防止するように構成することも可能となる。このような、ヒューズ接続板7と複数のヒューズ導体6や8と電極2、3は、前述したような、一枚の薄板からエッチング等で切り出しする方法で簡単に作製することができる。」

これらの記載より、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

[甲2発明]
「異常電流が流れた場合に溶融、蒸発するヒューズ導体8を、空冷可能な表面積を持つヒューズ接続板7を挟んで複数個直列に接続し、両側のヒューズ導体8のそれぞれを2つの電極2、3に取り付けた、電流遮断素子。」

(3)甲第3号証の1及び甲第3号証の2
甲第3号証の1には次の記載がある(訳は、甲第3号証の2による。)。
「[0002] The field of the invention relates generally to electrical circuit protection fuses and methods of manufacture, and more specifically to the manufacture of high voltage, full-range power fuses.
[0003] Fuses are widely used as overcurrent protection devices to prevent costly damage to electrical circuits. Fuse terminals typically form an electrical connection between an electrical power source or power supply and an electrical component or a combination of components arranged in an electrical circuit. One or more fusible links or elements, or a fuse element assembly, is connected between the fuse terminals, so that when electrical current flow through the fuse exceeds a predetermined limit, the fusible elements melt and opens one or more circuits through the fuse to prevent electrical component damage.」
「訳:[0002]本発明の技術分野は、一般には、電気回路保護用ヒューズ及び製造方法に関し、より詳細には、高圧全範囲型電力ヒューズの製造に関する。
[0003]電気回路の大きな損害を防止するための過電流保護装置として、ヒューズが広く使用されている。ヒューズ端子は、典型的には、電源と電気部品または電気回路中に配置された部品の組み合わせとの間の電気接続を形成する。ヒューズ端子の間には、1つまたは複数の可融リンクまたは要素、またはヒューズ要素アセンブリが接続される。これによって、ヒューズを通る電流が既定の限界を超えたとき、可融要素が融解して1つまたは複数の回路がヒューズを介して開き、電気部品の損傷が防止される。」
「[0043] The housing 202 is fabricated from a non-conductive material known in the art such as glass melamine in one exemplary embodiment. Other known materials suitable for the housing 202 could alternatively be used in other embodiments as desired. Additionally, the housing 202 shown is generally cylindrical or tubular and has a generally circular cross-section along an axis perpendicular to the axial length dimensions LH and LT (Figure 2) in the exemplary embodiment shown. The housing 202 may alternatively be formed in another shape if desired, however, including but not limited to a rectangular shape having four side walls arranged orthogonally to one another, and hence having a square or rectangular-shaped cross section. The housing 202 as shown includes a first end 210, a second end 212, and an internal bore or passageway between the opposing ends 210, 212 that receives and accommodates the fuse element assembly 208 (Figure 4).
[0044] In some embodiments the housing 202 may be fabricated from an electrically conductive material if desired, although this would require insulating gaskets and the like to electrically isolate the terminal blades 204, 206 from the housing 202.
[0045] The terminal blades 204, 206 respectively extend in opposite directions from each opposing end 210, 212 of the housing 202 and are arranged to extend in a generally co-planar relationship with one another. Each of the terminal blades 204, 206 may be fabricated from an electrically conductive material such as copper or brass in contemplated embodiments. Other known conductive materials may alternatively be used in other embodiments as desired to form the terminal blades 204, 206. Each of the terminal blades 204, 206 is formed with an aperture 214, 216 as shown in Figure 3, and the apertures 214, 216 may receive a fastener such as a bolt (not shown) to secure the fuse 200 in place in an EV and establish line and load side circuit connections to circuit conductors via the terminal blades 204, 206.」
「訳:[0043]1つの例示的な実施形態において、ハウジング202は、メラミンガラスなどの当該技術分野において既知の非導電材料から作製される。代わりに、所望の場合、他の実施形態において、ハウジング202用として好適な他の既知の材料を使用することもできる。さらに、図示された例示的な実施形態において、図示されたハウジング202は、全体的に円筒形状または管状であり、軸方向長さ寸法LH及びLT(図2)に直交する軸に沿って略円形の断面を有する。但し、所望の場合、ハウジング202は、別の形状に形成されるものであってもよい。別の形状には、互いに直交するように配置された4つの側壁を有し、したがって長方形または四角形の断面を有する四角形状が含まれるが、これに限定されるものではない。図示されたハウジング202は、第1の端部210、第2の端部212、及び、対向する両方の端部210、212の間の内部穴または通路を含んでいる。この内部穴または通路は、ヒューズ要素アセンブリ208(図4)を受け入れて収容する。
[0044]幾つかの実施形態において、所望の場合、ハウジング202は、導電材料から作製されるものであってもよい。但し、この場合、端子ブレード204、206をハウジング202から絶縁するために、絶縁ガスケット等が必要となる。
[0045]端子ブレード204、206のそれぞれは、ハウジング202の対向する端部210、212のそれぞれから互いに反対の方向に、略共面関係を有して延びるように配置されている。考慮されている実施形態において、端子ブレード204、206のそれぞれは、銅または真鍮のような導電材料から作製することができる。代わりに、所望の場合、他の実施形態において、他の既知の導電材料を使用して端子ブレード204、206を形成するものであってもよい。端子ブレード204、206のそれぞれは、図3に示すように、開口部214、216を備えるように形成される。この開口部214、216は、ヒューズ200をEV中の定位置に固定し、端子ブレード204、206を介したライン側回路及び負荷側回路の回路導電体への接続を確立するために、ボルト(図示は省略する)のような締結具を受け入れるものであってもよい。」
「 [0047] Figures 4-6 illustrate various views wherein the fuse element assembly 208 can be seen from various vantage points through the portion of the hosing that is shown transparent. The fuse element assembly 208 includes a first fuse element 218 and a second fuse element 220 that each respectively connect to terminal contact blocks 222, 224 provided on end plates 226, 228. The end plates 226, 228 including the blocks 222, 224 are fabricated from an electrically conductive material such as cooper, brass or zinc, although other conductive materials are known and may likewise be utilized in other embodiments. Mechanical and electrical connections of the fuse elements 218, 210 and the terminal contact blocks 222, 224 may be established using known techniques, including but not limited to soldering techniques.
[0048] In various embodiments, the end plates 226, 228 may be formed to include the terminal blades 204, 206 or the terminal blades 204, 206 may be separately provided and attached. The end plates 226, 228 may be considered optional in some embodiments and connection between the fuse element assembly 208 and the terminal blades 204, 206 may be established in another manner.
[0049] A number of fixing pins 230 are also shown that secure the end plates 226, 228 in position relative to the housing 202. The fixing pins 230 in one example may be fabricated from steel, although other materials are known and may be utilized if desired. In some embodiments, the pins 230 may be considered optional and may be omitted in favor of other mechanical connection features.
[0050] An arc extinguishing filler medium or material 232 surrounds the fuse element assembly 208. The filler material 232 may be introduced to the housing 202 via one or more fill openings in one of the end plates 226, 228 that are sealed with plugs 234 (Figure 4). The plugs 234 may be fabricated from steel, plastic or other materials in various embodiments. In other embodiments a fill hole or fill holes may be provided in other locations, including but not limited to the housing 202 to facilitate the introduction of the filler material 232.」
「訳:[0047]図4?図6は、ハウジングの透明に示された部分を通じて様々な視点からヒューズ要素アセンブリ208が見えるように示した様々な図である。ヒューズ要素アセンブリ208は、第1のヒューズ要素218及び第2のヒューズ要素220を含む。各ヒューズ要素は、それぞれエンドプレート226、228に備えられた端子接点ブロック222、224に接続する。ブロック222、224を含むエンドプレート226、228は、銅、真鍮、または亜鉛のような導電材料から作製される。但し、他の導電材料が知られており、他の実施形態において、これらの他の導電材料を同様に使用することができる。ヒューズ要素218、220と端子接点ブロック222、224との機械的及び電気的な接続は、既知の技術を使用して確立することができる。この既知の技術には、半田付け技術が含まれるが、これに限定されるものではない。
[0048]様々な実施形態において、エンドプレート226、228は、端子ブレード204、206を含むように形成されるものであってもよく、あるいは、端子ブレード204、206は、別個に準備されて取付けられるものであってもよい。幾つかの実施形態において、エンドプレート226、228の装備は、任意選択で検討されるものであってもよく、ヒューズ要素アセンブリ208と端子ブレード204、206との間の接続は、別の手段によって確立されるものであってもよい。
[0049]エンドプレート226、228をハウジング202に対して定位置に固定するための幾つかの固定ピン230も示されている。一例として、固定ピン230は、鉄製であってもよい。但し、他の材料が知られており、所望の場合、この他の材料を使用することができる。幾つかの実施形態において、固定ピン230の装備は、任意選択で検討されるものであってもよく、固定ピンを省略して他の機械的連結構造を使用するものであってもよい。
[0050]ヒューズ要素アセンブリ208は、消弧用充填媒質または材料232に取り囲まれている。充填材料232は、エンドプレート226、228のうちの1つの、1つまたは複数の充填用開口部を通じて、ハウジング202に導入されるものであってもよい。充填用開口部は、プラグ234でシールされる(図4)。様々な実施形態において、プラグ234は、鉄、プラスチック、または他の材料から作製されるものであってもよい。他の実施形態において、1つまたは複数の充填用穴部は、他の位置に設けられるものであってもよい。この他の位置には、充填材料232の導入を容易にするためのハウジング202が含まれるが、これに限定されるものではない。」
「[0056] In the exemplary fuse elements 218, 220 shown, the oblique sections 242, 244 are formed or bent out of plane from the planar sections 240, and the oblique sections 242 have an equal and opposite slope to the oblique sections 244. That is, one of the oblique sections 242 has a positive slope and the other of the oblique sections 244 has a negative slope in the example shown. The oblique sections 242, 244 are arranged in pairs between the planar sections 240 as shown. Terminal tabs 246 are shown on either opposed end of the fuse elements 218, 220 so that electrical connection to the end plates 226, 228 may be established as described above.
[0057] In the example shown, the planar sections 240 define a plurality of areas of reduced cross-sectional area, referred to in the art as weak spots. The weak spots are defined by round apertures in the planar sections 240 in the example shown. The weak spots correspond to the thinnest portion of the section 240 between adjacent apertures. The reduced cross-sectional areas at the weak spots will experience heat concentration as current flows through the fuse elements 218, 220, and the cross-sectional area of the weak spots is strategically selected to cause the fuse elements 218 and 220 to open at the location of the weak spots if specified electrical current conditions are experienced.」
「訳:[0056]図示された例示的なヒューズ要素218、220において、斜行部分242、244は、共面部分240から形成される、または面外に曲げられる。斜行部分242は、斜行部分244と同等の対向する傾斜を有する。すなわち、図示された例において、一方の斜行部分242は、正の傾斜を有し、他方の斜行部分244は、負の傾斜を有する。斜行部分242、244は、図示されるように、共面部分240の間に一対で配置される。ヒューズ要素218、220の対向する端部のそれぞれには、終端タブ246が示されており、これによって、上述したように、エンドプレート226、228への電気的接続を確立することができる。
[0057]例示された例において、共面部分240には、断面積が縮小された複数の領域が形成される。この領域は、当技術分野において、脆弱点と呼ばれる。図示の例において、脆弱点は、共面部分240中の丸い開口部によって形成される。脆弱点は、共面部分240の隣接する開口部の間の最も細い部分に相当する。ヒューズ要素218、220を通じて電流が流れると、脆弱点における断面積が縮小された領域に熱が集中する。脆弱点における断面積が縮小された領域は、特定の電流条件が発生した場合、ヒューズ要素218、220が脆弱点の位置において開くように戦略的に選択される。」

これらの記載より、甲第3号証の1には、次の技術的事項が記載されているといえる。

「第1のヒューズ要素218及び第2のヒューズ要素アセンブリ220を含むヒューズ要素アセンブリ208がそれぞれエンドプレート226、228に備えられた端子接点ブロック222、224に接続され、エンドプレート226、228は、全体的に円筒形状または管状の、非導電材料から作成されるハウジング202の対向する第1の端部210、第2の端部212の内側に固定ピン230によって固定されている、過電流保護装置であって、第1のヒューズ要素218及び第2のヒューズ要素220は、全体的に導電材料の帯状片から、斜行部分242、244によって連結された一連の共面部分240として形成されている、過電流保護装置。」

(4)甲第4号証
甲第4号証には次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電流制限ヒューズに関する。」
「【0002】
【従来の技術】電流制限ヒューズは、典型的には2つの導電端子を接続する1つ以上の可融性素子を絶縁性のハウジング中に有している。」
「【0067】図5に示すヒューズ70は、絶縁性材料(例えば熱硬化性材料)からなる管状ハウジング72、導電性または絶縁性材料からなる端部ブロック74、導電性材料からなる端子76、導電性材料からなるピン48、導電性材料からなる可融性素子18、および栓75を有している。管状ハウジング72は、ピン孔78(端部近くに位置する)および充填孔96を有している。各端部ブロック74は、端子スロット77と、端部ブロック中を半径方向にかつスロット77の長軸に垂直に延びる1つのピン孔80とを有する。
【0068】端子76および端部ブロック74は、端部74のピン孔78および80ならびに端子76のピン孔98を通るピン48によって、管状ハウジング72中に保持される。
【0069】ハウジング72中に、管状ハウジング72に位置する充填孔96を介して難燃充填剤(図示せず)を充填する。充填剤は、前記のように、粒状でも固形でもよい。充填孔96はその後、栓75を用いてシールされる。」

これらの記載より、甲第4号証には次の技術的事項が記載されているといえる。

「電流制限切り欠き部33を有する可融性素子18の両端が、一対の端子76に接続され、一対の端子76は、端部ブロック74と共に、ピン48によって、絶縁性材料からなる管状ハウジング72中に保持される、電流制限ヒューズ。」

(5)甲第5号証
甲第5号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、電流経路を溶断することにより、電流経路上に接続された回路を保護する保護素子、及びこれを用いたバッテリパックに関する。」
「【0020】
保護素子1は、第1、第2の外部電極2,3が外部回路の接続端子と接続されることにより当該外部回路に組み込まれるとともに、可溶導体6が当該外部回路の電流経路の一部を構成し、定格を超える過電流によって溶断することにより電流経路を遮断するものである(図2)。
【0021】
第1及び第2の外部電極2,3は、保護素子1を外部回路に接続する接続端子であり、それぞれ保護素子1の内部でハンダ等の接続材料7を介して可溶導体6と接続され、可溶導体6を介して接続されている。第1及び第2の外部電極2,3は、保護素子1の外筐体10に支持されることにより保護素子1の内外にわたって配設されている。なお、第1及び第2の外部電極2,3は、絶縁基板4と隣接するエポキシ樹脂等からなる絶縁素材に形成するようにしてもよい。
【0022】
保護素子1は、第1、第2の外部電極2,3が外筐体10に支持されることにより、筐体内に臨まされるとともに、外筐体10の中央のスペースに絶縁基板4が配設され、これにより第1、第2の外部電極2,3と絶縁基板4とが隣接されている。
【0023】
外筐体10は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド:Polyphenylenesulfide)等の耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチックを用いて形成することができる。また、外筐体10は、所定の形状に成形する際に、インサート成型等により第1、第2の外部電極2,3を一体成型してもよい。
【0024】
絶縁基板4は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよいが、ヒューズ溶断時の温度に留意する必要がある。
【0025】
絶縁基板4の表面4aには表面電極5が形成されている。表面電極5は、ハンダ等の接続材料7を介して、第1、第2の外部電極2,3間を接続する可溶導体6と接続されている。表面電極5は、第1、第2の外部電極2,3間にわたって接続された可溶導体6を支持する支持電極である。また、表面電極5は、可溶導体6が過電流による自己発熱により溶融すると、溶融導体6aを凝集し、第1、第2の外部電極2,3間の電流経路を遮断する。
【0026】
なお、表面電極5は、可溶導体6の溶断後における絶縁抵抗を維持するために、第1、第2の外部電極2,3との十分な距離を隔てて設けることが好ましい。図1に示すように、第1、第2の外部電極2,3が外筐体10内において対向されている場合、表面電極5は、絶縁基板4の略中央に配設することで、第1、第2の外部電極2,3とそれぞれ所定の距離を隔てて溶融導体6aを保持し、また絶縁基板4の表面4aに飛散した溶融導体6aによる短絡のリスクを低減することができる。」

これらの記載から、甲第5号証には、次の技術的事項が記載されているといえる。

「可溶導体6と接続された外部電極2、3が外筐体10に支持される、保護素子。」

(6)甲第6号証
甲第6号証には次の記載がある。
「【0001】
この発明は電流遮断装置、特に機器の回路ショートや回路部品の故障などに起因する過電流によって生じる機器の発熱を感知して回路を遮断する他、通電などにより自己発熱して回路を遮断する電流遮断装置に関するものである.」
「【0011】
実施の形態1は、図1及び図2に示すように、例えばPBT(ポリブチレン テレフタレート:プラスチック樹脂)からなる絶縁体ケース7の底部に第1の電極1、第2の電極2、第3の電極3を所定の位置関係、例えばほぼ直線状あるいは側面から見たとき、上下方向に位置がずれた階段状に配置して構成される。各電極1、2、3は例えば厚さ1mmのCu板で平板状に形成されている。各電極の材料はCuに限るものではなく、Cuを主成分とする金属やAlなど電気抵抗率の低い金属であればよい。
【0012】
3つの電極のうち第1の電極1及び第3の電極3は絶縁体ケース7に固定され、第2の電極2は第1の電極1及び第3の電極3の中間部に両電極と適宜の間隔を介して配設され、絶縁体ケース7には固定されていない。
【0013】
第2の電極2と第3の電極3とは低融点導体4により結合され電気的、機械的に接続されている。低融点導体4は第1、第2、第3の電極1、2、3の融点よりも低い融点を有し、各電極の電気抵抗率よりも高い電気抵抗率を有する金属、例えばSnを主成分とするSn-Ag-Cu半田が使用されているが、この半田に限るものではなく、Ag,Cu,In,Bi,Pb,Zn,Ni等を主成分とする半田で、第1、第2、第3の電極1、2、3の融点よりも低い融点を有し、各電極の電気抵抗率よりも高い電気抵抗率を有するものであれば他の金属でもよい。」
「【0018】
一方、規定値以上の電流が低融点導体4、可撓導体5を介して第1、第2、第3の電極1、2、3に流れたときには、低融点導体4における抵抗発熱により低融点導体4に局所的な温度上昇が生じる。そして低融点導体4の融点付近にまで温度が上昇すると、低融点導体4が軟化あるいは溶融し、引張りバネ6の引張り力によって、図2に4A、4Bで示すように、低融点導体4を分離し、第2の電極2を図において反時計方向に回動して第2の電極2と第3の電極3間の導通を遮断する。」

これらの記載から、甲第6号証には次の技術的事項が記載されているといえる。

「低融点導体4に第2の電極2を介して接続された第1の電極1及び低融点導体4に接続された第3の電極3が絶縁体ケース7に固定された、電流遮断装置。」

(7)甲第7号証
甲第7号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は電気機器の保護素子に関し、高容量二次電池、例えば高容量リチウムイオン二次電池に対し過電流を遮断し、過充電時や過放電時に充電や放電を停止するのに有用なものである。」
「【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1-1の(イ)は本発明に係る保護素子の一実施例を示す側面図、図1-1の(ロ)は図1-1の(イ)におけるロ-ロ断面図である。
図1-1において、10は耐熱性の絶縁台座、例えばフェノール樹脂台である。1,1は一対の並行なピン電極であり、絶縁台座10に固定し、台座10からリード部11を引き出してある。このピン電極1は銅製や真鍮製とすることができ、円柱型、平型等にでき、抵抗器からの輻射熱を受け易いように、抵抗器側に凹の湾曲加工乃至は曲げ加工を施すことが好ましい。8は巻線型または酸化金属皮膜型の抵抗器であり、リード導体80a(80b)付きのキャップ電極801(802)が耐熱性絶縁コア例えばセラミックスコアの両端に装着され、コアに抵抗線または酸化金属皮膜が設けられ、その抵抗体の各端が各キャップ電極801,802に溶接等により接合されてなり、ピン電極1,1間に並設してある。この抵抗器の他方のキャップ電極802を台座中央の突部101に当接し、他方のリード導体80bを突部101を経て絶縁台座10から引き出してある。2は過電流発熱性片であり、図1?2に示すように、裏面に突部20を有し、突部20を貫通する孔を設け、その貫通孔に抵抗器8の一方のリード導体80aを挿通し、突部20と抵抗器本体80の一方のキャップ電極801とを接触させ、その接触箇所において、一方のリード導体80aと過電流発熱性片2とを可溶合金3により接合すると共に、各ピン電極1の一端端面の一半部を過電流発熱性片2各端部の裏面に接触させ、各ピン電極の一端端面の他半部と過電流発熱性片2の各端面とを可溶合金3により接合してある。
【0018】
図1-2に示すように、過電流発熱性片2の裏面突部30の孔口の肉を削ってキャビティ30を形成し、過電流発熱性片2を一方のリード導体80aに挿通し、キャビティ30に可溶合金を充填し、過電流発熱性片2の突部20を抵抗器本体80の一方のキャップ電極801に当接した状態で過電流発熱性片2の各端部200と各ピン電極1の端面との可溶合金3による接合を行い、この接合時の熱で前記キャビティ内30の可溶合金を溶融させて過電流発熱性片2と一方のリード導体80aとの可溶合金3による接合を行うことができる。
この場合、可溶合金が凝固するまで、後述の支持板4を押えてバネ7,7の圧縮反力を支える必要がある。接合時の熱がバネ7,7に伝われば、バネ特性の低下が避けられないので、支持板は熱絶縁体とすることが好ましい。
【0019】
図1-1において、6,6はガイド軸であり、前記の抵抗器8及び一対のピン電極1,1を挾んで台座10のバネサポータ102,102に植設してある。
7,7は各ガイド軸6,6に挿通したバネであり、前記抵抗器8の一方のリード導体80a及び一対のピン電極1,1並びにガイド軸6,6に共通の支持板4を摺動可能に挿通し、この支持板4で過電流発熱性片2を支承し、各バネ7,7の圧縮反力を支持板4を介して各可溶合金3,3,3に伝えている。
【0020】
この支持板4には、図1-3に示すように、過電流発熱性片2の突部の径よりもやや大きな径の孔201、ピン電極の径よりもやや大きな径の孔101,101、ガイド軸の径よりもやや大きな径の孔601,601が設けられている。これらの孔に代え、過電流発熱性片の外郭よりも小で、かつ図の孔を内包する内郭の一箇の孔を支持板に設けることもできる。図1-1において、5はケースであり、透視可能とすることが好ましい。」
「【0025】
本発明に係る保護素子は、二次電池保護回路の保護素子として好適に使用できる。
図2において、Eは二次電池を、Lは負荷を、Sは充電電源を、swはスイッチ例えばトランジスターを、Tは二次電池の過充電または過放電を検知しスイッチオン信号を発信するIC回路をそれぞれ示している。
Aは本発明に係る保護素子を示し、電極1,1のリード部101,101と抵抗器本体80の他方のリード導体80bとを3端子とする構成である。
放電時に過電流が流れると、保護素子Aの過電流発熱性片2を発熱させて低融点可溶材3,3を溶融させ、バネ7の応力エネルギーを解放し過電流発熱性片2を電極1,1間から脱離させて負荷Lと二次電池Eとの間を遮断し、また、二次電池Eの過放電に対し、IC回路Tからの信号によりスイッチswをオンさせ、抵抗器本体80を二次電池Eによって通電発熱させ、その発生熱で低融点可溶材3を溶融させ、バネ7の圧縮応力エネルギーを解放し過電流発熱性片2を電極1,1間から脱離させて二次電池Eと負荷Lとの間を遮断させる。
更に、充電時、過充電に対し、IC回路Tからの信号によりスイッチswをオンさせ、抵抗器本体80を二次電池E若しくは充電電源Sで通電発熱させ、その発生熱で低融点可溶材3を溶融させ、バネ7の圧縮応力エネルギーを解放し過電流発熱性片2を電極間1,1から脱離させて二次電池Eと充電電源Sとの間を遮断させる。」

これらの記載から、甲第7号証には次の技術的事項が記載されているといえる。

「過電流が流れると一対のピン電極1、1から離脱させられるようバネ7により付勢された過電流発熱性片2と接続された一対のピン電極1、1を備える保護素子の一対のピン電極1、1をケース5の内面に絶縁台座10によって固定した保護素子。」

5 当審の判断
(1)特許法第29条第2項について
ア.甲1発明を主引用発明として
(ア)本件発明1について
a.対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「中央の第2金属片12」、「第1金属片11」及び「第3金属片13」は、その配置、機能からみて、それぞれ、本件発明1の「中間導体」、「板状の固定電極」に相当する。
同様に、甲1発明の「第1溶断体14」、「第2溶断体15」はそれぞれ、本件発明1の「ヒューズ導体」に相当する。
甲1発明の「第1金属片11」及び「第3金属片13」は、「中央の第2金属片12」の両側に「第1溶断体14」及び「第2溶断体15」を介して接続されているといえるので、甲1発明の「第1端子2側の第1金属片11と、中央の第2金属片12と、第2端子3側の第3金属片13と、第1金属片11と第2金属片12間に介装されるとともに、第1端子2または第1金属片の発熱により溶断する第1溶断体14と、第2金属片12と第3金属片13間に介装されるとともに、第2端子3または第3金属片13の発熱により溶断される第2溶断体15とから構成される」ことは、本件発明1の「中間導体の両側に、過電流が流れることにより溶融するヒューズ導体がそれぞれ接続された溶断エレメントの両側に板状の固定電極がそれぞれ接続され」ることとの対比において、「中間導体の両側に、溶融するヒューズ導体がそれぞれ接続された溶断エレメントの両側に板状の固定電極がそれぞれ接続され」ることに相当する。
甲1発明の「接続部4」は、本件発明1の「電流遮断素子」に相当する。
甲1発明の「第1金属片11」及び「第3金属片13」は、その板面が固定材といえるネジからなる第1端子2及び第2端子3によって、誘電体である絶縁体の基台の一面であるといえる「樹脂製の端子台本体1の両側の凸部1B」に固定されているといえる(甲第1号証の【図1】を参照。)。
したがって、甲1発明の「樹脂製の端子台本体1の両側の凸部1Bにそれぞれ一定間隔で設けられたねじ穴1Cに止められるネジからなる第1端子2および第2端子3間を、電流経路を形成するよう接続する」は、本件発明1の「それぞれの前記固定電極の板面が筒状の誘電体の基台の内面に固定材により固定されている」との対比において、「それぞれの前記固定電極の板面が誘電体の基台の一面に固定材により固定されている」との限度で一致する。
以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。

[一致点1]
「中間導体の両側に、溶融するヒューズ導体がそれぞれ接続された溶断エレメントの両側に板状の固定電極がそれぞれ接続され、それぞれの前記固定電極の板面が誘電体の基台の一面に固定材により固定されている電流遮断素子。」

[相違点1-1]
ヒューズ導体に関し、本件発明1が、「過電流が流れることにより溶融する」ものであるのに対し、甲1発明は、「第1溶断体14」あるいは「第2溶断体15」が「第1端子2または第1金属片の発熱により溶断する」あるいは「第2端子3または第3金属片13の発熱により溶断する」ものである点。
[相違点1-2]
本件発明1では、それぞれの前記固定電極の板面が固定されているのが、「筒状の誘電体の基台の内面」であるのに対し、甲1発明では、「樹脂製の端子台本体1の両側の凸部1B」であり、端子台本体1が筒状ではなく、そのため第1金属片11及び第3金属片13が固定されているのが、端子台本体1の内面でもない点。

b.判断
(a)相違点1-1について
甲1発明は、高周波電流が通電される端子台に関するものであり、高周波電流が通電されるときに、端子台本体1の第1端子あるいは第2端子の緩みや、ケーブルや電線との取り付け不良などによる、第1端子2または第2端子3または各金属片11、12、13が発熱により第1溶断体14あるいは第2溶断体15が溶断することで回路を遮断する作用をなすものである(甲第1号証の段落【0001】?【0003】を参照。)。
これに対し、甲第3号証の1に記載の技術的事項の「過電流保護装置」、甲第4号証に記載の技術的事項の「電流制限ヒューズ」、甲第5号証に記載の技術的事項の「保護素子」、甲第6号証に記載の技術的事項の「電流遮断装置」及び甲第7号証に記載の技術的事項の「保護素子」は、流れる電流が既定の限界を超えたとき、可溶要素が融解して回路がヒューズを介して開かれるものである(甲第3号証の1の段落[0002]、[0003]、甲第4号証の段落【0001】、【0002】、甲第5号証の段落【0001】、甲第6号証の段落【0001】及び甲第7号証の段落【0001】を参照。)。
甲1発明の「第1溶断体14」あるいは「第2溶断体15」が溶融するための熱の発生の原理は、甲第3号証の1?甲第7号証に記載の技術的事項の可溶要素が溶融するための熱の発生の原理とは異なるし、甲1発明と甲第3号証の1?甲第7号証に記載の技術的事項の目的も異なるから、甲第3号証の1?甲第7号証に記載の技術的事項を参考に、甲1発明の「第1溶断体14」あるいは「第2溶断体15」を、過電流が流れることにより溶融するよう構成し、もって、相違点1-1に係る本件発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(b)相違点1-2について
α.上記(a)で説示のとおり、甲1発明と甲第3号証の1に記載の技術的事項では、両者の技術分野及び作用・機能が異なるといえるから、甲1発明に甲第3号証の1に記載の技術的事項を適用する前提を欠いているといえる。
また、甲第3号証の1に記載の過電流保護装置は、全体的に円筒形状または管状の、非導電材料から作成されるハウジング202はその内部に、消弧用充填材料が充填されるものとされている(甲第3号証の1の段落[0050]を参照。)。これに対し、甲1発明は、機器間を接続する電線やケーブルの中間媒体、あるいは電流や信号の分岐手段に適用して使用されるものであり(甲第1号証の段落【0001】及び【0002】を参照。)、消弧用充填材料を必要としない。
したがって、甲1発明の端子台本体1の形状を、消弧用充填材料を保持可能とする筒状とする必要は無いし、端子台本体1を筒状とすれば、かえって、機器間を接続する電線やケーブルの中間媒体、あるいは電流や信号の分岐手段としての使用性に劣ることとなるともいえる。
そうだとすれば、甲第3号証の1に記載の技術的事項を甲1発明に適用する動機付けもないといえる。
さらに、甲第3号証の1に記載の過電流保護装置の、第1のヒューズ要素218及び第2のヒューズ要素220は、「全体的に導電材料の帯状片から、斜行部分242、244によって連結された一連の共面部分240として形成されている」ものであり、本件発明1の、「中間導体の両側に、過電流が流れることにより溶融するヒューズ導体がそれぞれ接続された溶断エレメント」との構成とは異なるから、仮に、甲第3号証の1に記載の技術的事項を甲1発明に適用しても、相違点1-2に係る本件発明1の構成に至ることはできない。
β.甲第4号証に記載の電流制限ヒューズは、甲第3号証の1に記載の過電流保護装置と同様に、ヒューズを通る電流が既定の限界を超えたとき、可溶要素が融解するものであり(甲第4号証の段落【0001】、【0002】を参照。)、また、筒状ハウジング72の中に粒状難燃充填剤が充填されるものとされているという点でも甲第3号証の1に記載の過電流保護装置と同様である。さらに、その可融性素子18は、(列状の穴によって規定される)電流制限切り欠き部33を有するものであり、本件発明1の、「中間導体の両側に、過電流が流れることにより溶融するヒューズ導体がそれぞれ接続された溶断エレメント」との構成とは異なるといえる。
そうだとすれば、上記α.と同様の理由により、甲第4号証に記載の技術的事項を甲1発明に適用する動機付けはないし、仮に、甲第4号証に記載の技術的事項を甲1発明に適用しても、相違点1-2に係る本件発明1の構成に至ることはできない。
γ.甲第5号証に記載の保護素子の外筐体10及び甲第6号証に記載の電流遮断装置の絶縁体ケース7はどちらも、筒状でないから、甲1発明に甲第5号証及び甲第6号証に記載の技術的事項を適用しても相違点1-2に係る本件発明1の構成に至ることはできない。
δ.甲第7号証に記載の保護素子のケース5が筒状であるか否かはともかく、甲1発明の端子台本体1を筒状とすれば、かえって、機器間を接続する電線やケーブルの中間媒体、あるいは電流や信号の分岐手段としての使用性に劣ることとなるといえるから、甲1発明の端子台本体1を筒状とする動機付けがないということはα.で説示したとおりである。
したがって、甲第7号証に記載の技術的事項を参考に、甲1発明において相違点1-2に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことではない。
(c)以上のとおりであるので、本件発明1は、甲1発明及び甲第3号証の1?甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定したものである。
そうすると、本件発明2及び3と甲1発明との間には、少なくとも上記相違点1-1及び1-2が存在することとなる。
したがって、上記(ア)b.と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲1発明及び甲第3号証の1?甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.甲2発明を主引用発明として
(ア)本件発明1について
a.対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「空冷可能な表面積を持つヒューズ接続板7」は、本件発明1の「中間導体」に相当する。
甲2発明の「異常電流」及び「溶融、蒸発するヒューズ導体8」は、それぞれ本件発明1の「過電流」及び「溶融するヒューズ導体」に相当する。
甲2発明の「ヒューズ導体8」は、「ヒューズ接続板7を挟んで」「接続し」たものであり、ヒューズ接続板7の両側にそれぞれ接続されているといえるから、甲2発明の「異常電流が流れた場合に溶融、蒸発するヒューズ導体8を、空冷可能な表面積を持つヒューズ接続板7を挟んで複数個直列に接続」することは、本件発明1の「中間導体の両側に、過電流が流れることにより溶融するヒューズ導体がそれぞれ接続された」ことに相当し、甲2発明の「ヒューズ接続板7」と「ヒューズ接続板7を挟んで接続」された「ヒューズ導体8」とからなる構成は、本件発明1の「溶断エレメント」に相当するといえる。
甲2発明の「電極2、3」は、本件発明1の「板状の固定電極」に相当し、甲2発明の「両側のヒューズ導体8のそれぞれを2つの電極2、3に取り付けた」ことは、「ヒューズ接続板7」と「ヒューズ接続板7を挟んで接続」された「ヒューズ導体8」とからなる構成の両側に、電極2、3がそれぞれ接続されることといえるから、本件発明1の「溶断エレメントの両側に板状の固定電極がそれぞれ接続され」ることに相当する。

したがって、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。

[一致点2]
「中間導体の両側に、過電流が流れることにより溶融するヒューズ導体がそれぞれ接続された溶断エレメントの両側に板状の固定電極がそれぞれ接続されている電流遮断素子。」
[相違点2-1]
本件発明1は、「それぞれの前記固定電極の板面が筒状の誘電体の基台の内面に固定材により固定されている」ものであるのに対し、甲2発明の2つの電極2、3の固定手段については特定されていない点。

b.判断
相違点2-1について検討する。
(a)甲第3号証の1に記載の過電流保護装置における、エンドプレート226、228は、円筒形状または管状のハウジング202内部に消弧用充填材232を充填するための空間を構成するためのものであり(甲第3号証の1の段落[0050]?[0053]を参照。)、いわばハウジング202を閉鎖する蓋部材といえ、甲2発明の電極2、3に相当する構成とはいえないから、甲第3号証の1に記載の技術的事項は、本件発明1の「固定電極の板面が筒状の誘電体の基台の内面に固定材により固定されている」に相当する構成とはいえないし、当該構成を示唆するものでもない。また、甲2発明に甲第3号証の1に記載の技術的事項を適用する動機付けも、甲第2及び3号証の1の記載からして存在しない。
そうすると、甲2発明において、甲第3号証の1に記載の過電流保護装置のエンドプレート226、228が、全体的に円筒形状または管状の、非導電材料から作成されるハウジング202の対向する第1の端部210、第2の端部212の内側に固定ピン230によって固定されている構成を参考に、相違点2-1に係る本件発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(b)甲第4号証に記載の電流制限ヒューズの端部ブロック74も、甲第3号証の1に記載の過電流保護装置の、エンドプレート226、228と同様に、管状ハウジング72の内部に難燃充填剤を充填するための空間を構成するためのものであり(甲第4号証の段落【0062】、【0069】を参照。)、いわば管状ハウジング72を閉鎖する蓋部材といえ、甲2発明の電極2、3に相当するものとはいえないから、甲第4号証に記載の技術的事項は、本件発明1の「固定電極の板面が筒状の誘電体の基台の内面に固定材により固定されている」に相当する構成とはいえないし、当該構成を示唆するものでもない。また、甲2発明に甲第4号証に記載の技術的事項を適用する動機付けも、甲第4号証の記載からして存在しない。
そうすると、甲2発明において、甲第4号証に記載の電流制限ヒューズの、一対の端子76は、端部ブロック74と共に、ピン48によって、絶縁性材料からなる管状ハウジング72中に保持される構成を参考に、相違点2-1に係る本件発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(c)甲第5号証に記載の保護素子の外筐体10及び甲第6号証に記載の電流遮断装置の絶縁体ケース7はどちらも、筒状でないから、甲2発明に甲第5号証及び甲第6号証に記載の技術的事項を適用しても相違点2-1に係る本件発明1の構成に至ることはできない。
(d)甲第7号証に記載の技術的事項は、通電遮断を確実に行わせるために、ピン電極1、1からの放熱性を低くする必要があるとされているから(甲第7号証の段落【0033】を参照。)、甲第7号証に記載の技術的事項のピン電極1、1は放熱性が低い構成とされる必要があり、本件発明1の「固定電極」に相当するとはいえない(本件明細書の段落【0030】を参照。)。また、同様にピン電極1、1をケース5の内面に固定する絶縁台座10も、熱絶縁性の性質が必要であるといえるから、甲第7号証に記載の技術的事項の絶縁台座10は、本件発明1の「固定材」に相当するとはいえない(本件明細書の段落【0030】を参照。)。
そして、甲第7号証に記載の技術的事項の過電流発熱性片2は、過電流により発熱するものであるから、機能的に異なる甲2発明の「(空冷可能な表面積を持つ)ヒューズ接続板7」に相当する構成でもないし、本件発明1の「中間導体」に相当するともいえない。
このように、甲第7号証に記載の技術的事項は、本件発明1の「それぞれの前記固定電極の板面が筒状の誘電体の基台の内面に固定材により固定されている」に相当する構成ということはできないし、当該構成を示唆するものでもない。また、甲2発明に甲第7号証に記載の技術的事項を適用する動機付けも、甲2発明の「ヒューズ接続板7」と甲第7号証の過電流発熱性片2とは機能が異なることからして存在しない。
したがって、甲第7号証に記載の技術的事項を参考に、甲2発明において相違点2-1に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことではない。
(e)以上のとおりであるので、本件発明1は、甲2発明及び甲第3号証の1?甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定したものである。
そうすると、本件発明2及び3と甲2発明との間には、少なくとも上記相違点2-1が存在することとなる。
したがって、上記(ア)b.と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲2発明及び甲第3号証の1?甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)特許法第36条第6項第1号について
ア.本件の各請求項に係る発明は、けい砂を充填したヒューズを使用すると、ヒューズの寸法(外径)が大きい(本件明細書の段落【0007】)、また、ヒューズ接続板、電極、及び、ヒューズ導体から構成される電流遮断素子を使用すると、ヒューズ導体が断線・破損しやすく電流遮断素子の寿命が短い(本件明細書の段落【0008】)という従来技術の課題を解決するために、ヒューズ導体の発熱を抑え、その温度上昇を抑えることで、電流遮断素子寿命が短くない、細く小型化できる信頼性の高い電流遮断素子の提供(本件明細書の段落【0010】)することを目的とするものと認められる。
そして、本件発明1?3においては、「固定電極の板面が筒状の誘電体の基台の内面に固定材により固定されている」という構成を発明特定事項として採用することにより、ヒューズ導体で発生する熱を、固定電極から誘電体を通じて放熱することで、ヒューズ導体の発熱を抑制し、その温度上昇を抑えることができるようにするとともに、放熱部材である中間導体の大きさを、従来のものより小さくすることができ、電流遮断素子を細く小型化できるようにしたものといえる(本件明細書の段落【0029】、【0030】、【0036】、【0038】)。
このように、本件発明1?3において、「固定電極の板面が筒状の誘電体の基台の内面に固定材により固定されている」という構成を採用することにより、本件の各請求項に係る発明が解決しようとする課題を解決することができるといえるから、本件発明1?3は、課題を解決するための手段が反映されており、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるとはいえない。
イ.異議申立人は特許異議申立書において、特許法第36条第6項第1号について、概略次のように主張する。
(ア)本件発明の効果である、機械応力によるヒューズ導体の断線発生を抑制するためには、少なくとも中間導体の断面寸法、幅が規定される必要があると考えられるところ、本件発明1?3は、発明特定事項として、中間胴体の断面寸法、幅について特定されていないから、請求項1?3の記載は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。
(イ)本件発明の効果である、細い放電管を使用することができる電流遮断素子を備えたオゾン発生装置を提供するためには、誘電体管の内部に電流遮断素子が設けられていることが必須と考えられるところ、本件発明1?3は、発明特定事項として、誘電体管の内部に電流遮断素子が設けられていることが特定されていないから、請求項1?3の記載は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。
しかしながら、機械応力によるヒューズ導体の断線発生を抑制するため、また、細い放電管を使用することができる電流遮断素子を備えたオゾン発生装置を提供するためには、前者については、少なくとも、放熱部材である中間導体の大きさ(重さ)を従来よりも小さく(軽く)すれば達成が可能であるといえ、また、後者については、ヒューズ導体の発熱を抑制し、放熱性を良くすれば達成が可能であるといえる。
そして、「固定電極の板面が筒状の誘電体の基台の内面に固定材により固定されている」という構成を発明特定事項として採用することにより、ヒューズ導体で発生する熱を、固定電極から誘電体を通じて放熱することで、ヒューズ導体の発熱を抑制し、放熱性を良くできるようにするとともに、放熱部材である中間導体の大きさを、従来のものより小さくすることができるといえる。
したがって、請求項1?3の記載は、課題を解決するための手段が反映されており、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるとはいえない。
よって、異議申立人の、本件特許1?3は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとの主張には理由がない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。



 
異議決定日 2021-08-13 
出願番号 特願2019-521588(P2019-521588)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H01H)
P 1 652・ 537- Y (H01H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 太田 義典  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 中村 大輔
尾崎 和寛
登録日 2020-10-23 
登録番号 特許第6783389号(P6783389)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 電流遮断素子、およびオゾン発生装置  
代理人 特許業務法人ぱるも特許事務所  
代理人 村上 啓吾  
代理人 吉澤 憲治  
代理人 大岩 増雄  
代理人 竹中 岑生  

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