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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20189244 審決 特許
不服201913877 審決 特許
異議2017700219 審決 特許
異議2019700446 審決 特許
異議2019700917 審決 特許

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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C12N
審判 全部申し立て 2項進歩性  C12N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C12N
管理番号 1377809
異議申立番号 異議2021-700519  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-05-25 
確定日 2021-08-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第6788329号発明「体細胞の再プログラム化」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6788329号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6788329号の請求項1?12に係る特許(以下、「本件特許」ということがある。)についての出願は、平成20年3月21日(パリ条約による優先権主張 平成19年3月23日(米国)、平成19年9月25日(米国)、平成19年11月19日(米国))を国際出願日とする特願2010-501136号の一部を新たな特許出願として、平成27年5月1日に出願されたものであって、令和2年11月4日にその特許権の設定登録がされ、令和2年11月25日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和3年5月25日に特許異議申立人 和田圭介は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6788329号の請求項1?12の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、特許第6788329号の請求項1?12の特許に係る発明を、その請求項に付された番号順に、「本件特許発明1」等ということがある。また、これらをまとめて「本件特許発明」ということがある。)。

「 【請求項1】
以下の工程を含む、霊長類の胎児又は霊長類の出生後の個体から得られる非胚性細胞を再プログラム化する方法:
前記非胚性細胞を再プログラム化するために十分な条件下で、複数の潜在能力決定因子を、前記非胚性細胞に暴露する工程であって、ここで
前記複数の潜在能力決定因子がOct-4、Sox2及びLin28を含み、
前記暴露工程が、Oct-4及びSox2が1:1の比で連結されている単一ベクターを、前記非胚性細胞に導入する工程を含む、前記工程;及び
暴露された細胞を培養して、前記非胚性細胞よりも高い潜在能力を有する再プログラム化細胞を入手する工程。
【請求項2】
単一ベクターがウイルス系ベクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルス系ベクターがレトロウイルスベクターである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
レトロウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
潜在能力決定因子が再プログラミング配列として、霊長類の胎児又は霊長類の出生後の個体から得られる非胚性細胞に導入され、前記再プログラミング配列では、潜在能力決定因子をコードする核酸配列が異種プロモータに機能的に連結されてある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
再プログラム化細胞が多能性である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
再プログラム化細胞が、(i)Oct-4、SSEA3、SSEA4、Tra-1-60及びTra-1-81から成る群から選択される細胞マーカーを発現し;(ii)多能性細胞に特徴的な形態を示し;さらに(iii)免疫不全動物に導入したときテラトーマを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
以下の工程を含む、霊長類の多能性細胞の濃縮集団の作製方法:
潜在能力決定因子を発現させるために十分な条件下で、複数の潜在能力決定因子を、霊長類の胎児又は霊長類の出生後の個体から得られる非胚性細胞に導入し、それによって前記非胚性細胞を再プログラム化する工程であって、ここで
前記複数の潜在能力決定因子がOct-4、Sox2及びLin28を含み、
前記再プログラム化工程が、Oct-4及びSox2が1:1の比で連結されている単一ベクターを、前記非胚性細胞に導入する工程を含む、前記工程。
【請求項9】
霊長類多能性細胞が、(i)Oct-4、SSEA3、SSEA4、Tra-1-60及びTra-1-81から成る群から選択される細胞表面マーカーを発現し;(ii)多能性細胞に特徴的な形態を示し;さらに(iii)免疫不全動物に導入したときテラトーマを形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
霊長類多能性細胞が集団の少なくとも60%を占める、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
霊長類多能性細胞が集団の少なくとも80%を占める、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
霊長類多能性細胞が集団の少なくとも95%を占める、請求項8に記載の方法。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人 和田圭介は、下記2.に示す証拠を提出し、以下の特許異議申立理由を主張している。

1.特許異議申立理由
(1)甲第1号証を主引例とした進歩性欠如
本件特許発明1?12の構成要件「複数の潜在能力決定因子がOct4、Sox2及びLin28を含み」は、第1優先明細書(甲第3号証)に記載されていないから、本件は、本件特許発明1?12について第1優先権主張の利益は享受できず、新規性進歩性の判断日は、少なくとも第2優先日(平成19年9月25日)である。
そして、本件特許発明1?12は、本件特許の第2優先日前日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第2、4、5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許発明1?12は、取り消すべきものである。

(2)実施可能要件違反、サポート要件違反
本件特許発明1?3、5?12は、甲第6号証の記載を参照すると、特許法第36条第4項第1号及び、同法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるから、本件特許発明1?3、5?12は、取り消すべきものである。

2.証拠
(1)甲第1号証:国際公開第2007/069666号
(2)甲第2号証:Stem Cells, 2004, Vol.22, Pages 51-64
(3)甲第3号証:米国仮特許出願第60/919687号
(4)甲第4号証:Cell, 2006, Vol.126, Pages 663-676
(5)甲第5号証:Experimental Hematology, 2003, Vol.31, Pages 1007-1014
(6)甲第6号証:Science, 2009, Vol.324, Pages 797-801
(以下、「甲1」、「甲2」等ということがある。)

3.証拠の記載事項
(1)甲第1号証
本願の第1優先権主張の日後であるが、第2優先権主張の日前の平成19年6月21日に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった、甲1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

「核初期化因子に関連する遺伝子の候補として、ES細胞で特異的な発現を示す遺伝子及びES細胞の分化多能性維持における重要な役割が示唆される遺伝子を複数選択し、それらの候補遺伝子が単独で、あるいは適宜組み合わせることにより核初期を惹起するか否かを確認することができる。」(第10ページ7?11行)


「本発明により提供される核初期化因子は、少なくともOctファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、及びMycファミリー遺伝子の遺伝子産物の組合せを含み、例えば0ct3/4、Klf4、及びc-Mycの3種の遺伝子の遺伝子産物の組み合わせを含む。Octファミリー遺伝子としては、例えば、0ct3/4、OctlA、及び0ct6などを挙げることができる。0ct3/4はP0Uファミリーに属する転写因子であり、未分化マーカーとして報告されている(K.Okamoto et al., Cell, 60, pp461-72, 1990)。また、0ct3/4は多能性維持に関与しているとの報告もある(J. Nichols et al., Cell, 95, pp379-91, 1998)。Klfファミリー遺伝子としては、Klfl、Klf2、Klf4、及びKlf5などを挙げることができる。Klf4(Kruppel like factor-4)は腫瘍抑制因子として報告されている(A. M. Ghaleb et al., Cell Res., 15, pp92-6, 2005)。Mycファミリー遺伝子としては、c-Myc、N-Myc、及びL-Mycなどを挙げることができる。c-Mycは細胞の分化及び増殖に関与する転写制御因子であり(S. Adhikary, M. Eilers, Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 6, pp635-45, 2005)、多能性維持に関与しているとの報告がある(P. Cartwright et al., Development, 132, pp885-96, 2005)。0ct3/4、Klf4、及びc-Myc以外の各ファミリー遺伝子のNCB1アセッション番号は以下のとおりである。」(第10ページ下から1行?第11ページ最終行)


「これらの遺伝子はいずれもヒトを含む哺乳類動物において共通して存在する遺伝子であり、本発明において上記遺伝子産物を利用するためには、任意の哺乳類動物由来(例えばマウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ウマ、サルなどの哺乳類動物由来)の遺伝子を用いることが可能である。また、野生型の遺伝子産物のほか、数個(例えば1?10個、好ましくは1?6個、より好ましくは1?4個、さらに好ましくは1?3個、特に好ましくは1又は2個)のアミノ酸が置換、挿入、及び/又は欠失した変異遺伝子産物であって、野生型の遺伝子産物と同様の機能を有する遺伝子産物も利用可能である。例えば、c-Mycの遺伝子産物としては野生型のほか安定型(T58A)などを用いてもよい。他の遺伝子産物についても同様である。
本発明の核初期化因子は、上記の3種の遺伝子産物のほか、他の遺伝子産物を含むことができる。そのような遺伝子産物として、Soxファミリー遺伝子の遺伝子産物を挙げることができる。Soxファミリー遺伝子としては、例えば、Soxl、Sox3、Sox7、Soxl5、Soxl7、及びSoxl8、好ましくはSox2を挙げることができる。少なくともOctファミリー遺伝子(例えば0ct3/4)、Klfファミリー遺伝子(例えばKlf4)、Mycファミリー遺伝子(例えばc-Myc)、及びSoxファミリー遺伝子(例えばSox2)の4種の遺伝子の遺伝子産物の組み合わせを含む核初期化因子は初期化の効率の観点から本発明の好ましい態様であり、特に万能性の獲得のためにSoxファミリー遺伝子の遺伝子産物を組み合わせることが好ましい場合がある。Sox2は初期発生過程で発現し、転写因子をコードする遺伝子である(A. A. Avilion et al., Genes Dev, 17, pp126-40, 2003)。Sox2以外のSoxファミリー遣伝子のNCBIアセッション番号は以下のとおりである。」(第12ページ1行?第13ページ12行)


「また、Mycファミリー遺伝子の遺伝子産物はサイトカインで置き換えることができる場合がある。サイトカインとしては、例えば、SCF又はbFGFなどが好ましいが、これらに限定されることはない。
さらに好ましい態様として、上記の3種類の遺伝子産物、好ましくは上記の4種類の遺伝子産物に加えて、細胞の不死化を誘導する因子をあげることができる。たとえば、TERT遺伝子の遺伝子産物を含む因子と、下記の遺伝子:SV40 Large T antigen、HPV16 E6、HPV16 E7、及びBmilからなる群から選ばれる1種以上の遺伝子の遺伝子産物を含む因子を、組み合わせることを挙げることができる。TERTはDNA複製時における染色体末端テロメア構造維持のために必須であり、ヒ卜では幹細胞や腫瘍細胞では発現するが、多くの体細胞においては発現が認められない(I. Horikawa, et al., Proc Natl Acad Sci USA. 102, ppl8437-442, 2005)。SV40 Large T antigen、HPV16 E6、 HPV16 E7、またはBmilは、Large T antigen と組み合わせることにより、ヒト体細胞の不死化をもたらすことが報告されている(S. Akiraov et al., Stem Cells, 23, ppl423-1433, 2005; P. Salmon et al., Mol. Ther., 2, pp404-414, 2000)。これらの因子は、特にヒト細胞からiPS細胞を誘導する場合において極めて有用である。TERTおよびBmil遺伝子のNCBIアセッション番号は以下のとおりである。」(第13ページ下から5行?第14ページ12行)


「さらに、下記の群:Fbxl5、Nanog、ERas、ECAT15-2、Tcll、及びβ-cateninからなる群から選ばれる遺伝子のうちの1種又は2種以上を遺伝子産物を組み合わせてもよい。初期化の効率の観点から特に好ましい態様として、FbX15、Nanog、ERas、ECAT15-2、Tcll、及びβ-cateninの遺伝子産物を上記4種類の遺伝子産物と組み合わせた合計10種類の遺伝子産物を含む核初期化因子を挙げることができる。Fbxl5(Y. Tokuzawa et al., Mol Cell Biol., 23, pp2699-708, 2003)、Nanog(K. Mitsui et al., Cell, 113, pp631-42, 2003)、ERas(K. Takahashi, K. Mitsui, S. Yamanaka, Nature, 423, pp541-5, 2003)、及びECAT15-2(A. Bortv in et al., Development, 130, ppl673-80, 2003)はES細胞特異的発現遺伝子であり、TcllはAktの活性化に関与しており(A. Bortvin et al., Development, 130, pp1673-80, 2003)、β-cateninはWntシグナル伝達経路の重要な構成因子であり、多能性維持に関与しているとの報告もある(N. Sato et al, Nat. Med., 10, pp55-63, 2004)。 さらに、本発明の核初期化因子は、例えば、下記の群:ECAT1、Esgl、Dnmt3L、ECAT8、Gdf3、Soxl5、ECAT15-1、Fthll7、Sall4、Rexl、UTF1、Stella、Stat3、及びGrb2からなる群から選ばれる1種以上の遺伝子の遺伝子産物を含んでいてもよい。」(第14ページ下から8行?第15ページ8行)


「本発明の核初期化因子を用いて体細胞から誘導多能性幹細胞を調製する方法は特に限定されず、体細胞及び誘導多能性幹細胞が増殖可能な環境において核初期化因子が体細胞と接触可能であれば、いかなる方法を採用してもよい。例えば、本発明の核初期化因子に含まれる遺伝子産物を培地中に添加してもよく、あるいは本発明の核初期化因子を発現可能な遺伝子を含むベクターを用いて該遺伝子を体細胞に導入するなどの手段を採用してもよい。このようなベクターを用いる場合には、ベクターに2種以上の遺伝子を組み込んでそれぞれの遺伝子産物を体細胞において同時に発現させてもよい。」(第17ページ1行?8行)


「上記実験系を用いて初期化因子の探索を行ない(図1)、初期化因子の候補としてES細胞で特異的な発現を示す遣伝子、及びES細胞の分化多能性維持における重要な役割が示唆される遺伝子を合計24種類選択した。これらの遺伝子を下記の表4及び表5に示す。」(第19ページ1?4行)




」(表4)




」(表4(続き))


「これらの遺伝子のcDNAをレトロウイルスベクターpMX-gwにGatewayテクノロジーにより挿入した。まず24遺伝子を一つずつFbxl50^(βgeo/βgeo)のMEFに感染させ、その後、ES細胞培養条件でG418選択を行った。しかしG418耐性コロニーは一つも得られなかった。次に、全24遺伝子のレトロウイルスを同時にFbxl50^(βgeo/βgeo)のMEFに感染させた。ES細胞培養条件でG418選択を行ったところ、複数の薬剤耐性コロニーが得られた。これらのコロニーを単離し培養を継続した。これらの細胞は長期間にわたって培養が可能であり、またES細胞に類似した形態を示すことが分かった(図2)。」(第22ページ下から8行?最終行)


「次に、24種類の遺伝子の全てが初期化のために必要であるか否かを検討した。1遺伝子ずつ除外した23遺伝子をFbxl50^(βgeo/βgeo)のMEFに感染させた。その結果、10遺伝子については、それを除外した時に、コロニーの形成が阻害されることがわかった」(第23ページ15?18行)


「さらに、この10遺伝子から1遺伝子ずつ除外した9遺伝子をFbxl50^(βgeo/βgeo)のMEFに感染させた。その結果、4種の遣伝子(#14、#15、#20、又は#22)をそれぞれ除外した場合にはG418耐性のiPS細胞コロニーが形成されないことがわかった(図6)。従って、10遺伝子のうち、これら4種の遺伝子が初期化誘導にとって特に重要な役割を果たすことが示唆された。」(第23ページ22?26行)


「例12
胎児由来のHuman dermal fibroblast(HDF)にマウスエコトロピックウイルスレセプターであるsolute carrier family 7(Slc7al、NCBIアクセッション番号NM_007513)をレンチウイルスで発現させた細胞に、マウス0ct3/4遺伝子プロモーター下流に赤色蛍光蛋白質遺伝子を、およびPGKプロモーター下流にハイグロマイシン耐性遺伝子を組み込んだプラスミドをヌクレオフエクションで導入した。ハイグロマイシンによる選択を行い、安定発現株を樹立した。800000個の細胞をマイ卜マイシン処理したST0細胞の上にまき、翌日レトロウイルスにより0ct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc(いずれもヒト由来)を導入した。3週間後に得られたコロニー(図23左)を24個拾い、ST0細胞を播種した24-we11 plateに移して培養した。2週間後に増えてきた1クローンをSTO細胞を播種した6-well plateに継代して培養した結果、ES細胞に形態上において類似した細胞が得られ(図23右)、iPS細胞であることが示唆された。培地は常にマウスES細胞用培地を用いた。
例13
ヒト成体皮膚線維芽細胞(adult HDF)にレンチウイルスでSlc7al(マウスレトロウイルス受容体)を導入した細胞を800000個のフィーダー細胞(マイトマイシン処理STO細胞)上にまき、以下の組み合わせでレトロウイルスにより遺伝子を導入した。
1. 0ct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc, TERT, SV40 Large T antigen
2. 0ct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc, TERT, HPV16 E6
3. 0ct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc, TERT, HPV16 E7
4. 0ct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc, TERT, HPV16 E6,HPV16 E7
5. 0ct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc, TERT, Bmil
(0ct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc, TERTはヒト由来、Bmilはマウス由来)
マウスES細胞の培養条件下で、薬剤選択無しで培養を続けたところ、1の組み合わせで因子を導入したディッシュにおいて、ウイルス感染8日後において、iPS細胞と思われるコロニーが出現した(図24)。他の組み合わせ(2から5)においても、1の組み合わせの場合ほどは明瞭ではないが、iPS細胞様のコロニーが出現した。4因子のみを導入しても、全くコロニーは出現しなかった。」(第32ページ19行?第33ページ20行)


「1.体細胞の核初期化因子であって、下記の3種類の遺伝子:Octファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、及びMycファミリー遺伝子の各遺伝子産物を含む因子。」


「2.下記の3種の遺伝子:0ct3/4、Klf4、及びc-Mycの各遺伝子産物を含む請求項1に記載の因子。」(請求の範囲)


「4.Sox2の遺伝子産物を含む請求項3に記載の因子。」


「11.体細胞の核初期化により誘導多能性幹細胞を製造する方法であって、体細胞に対して請求項1ないし10のいずれか1項に記載の核初期化因子を接触させる工程を含む方法。」


「12.体細胞がヒト細胞であり請求項11に記載の方法。」

(2)甲第2号証
本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった、甲2には、以下の事項が記載されている。(英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。下線は当審で付した。)


「自已複製し、そして特異的細胞型へ分化する能力を有するヒト胚性幹(ES)細胞株が樹立されている。しかし、自己複製および分化の分子機構は十分に理解されていない。我々は、2つの私有ヒトES細胞株(HES3およびHES4、ES Cell International)についてトランスクリプトームプロファイルを決定し、そしてそれらをマウスES細胞および他のヒト組織と比較した。ヒトおよびマウスES細胞は、発現される遺伝子産物のいくつかを共有しているようであるが、ヒトES細胞における不活性な白血病抑制因子経路、ならびにPOU5FlおよびSOX2のようないくつかの重要な遺伝子の高い優勢を含む、多数の注目すべき差異が存在する。我々は、ヒトES細胞のためのマーカーとして作用し得、そしてまた「幹細胞性」表現型に寄与し得る、既知のES特異的遣伝子および新たな候補から構成される遺伝子のリストを確立した。特に興味深いのは、ES細胞分化の間のDNMT3BおよびLIN28 mRNAの下方制御であった。ヒトおよびマウスES細胞の遺伝子発現プロファイルにおける重複類似性および差異は、その多能性、特異的細胞型への方向付けられた分化、および自己複製のための拡張された能力を支配する、分子および細胞機構の詳細かつ協調的な精査のための基礎を提供する。」(Abstract)


「ヒトES細胞の幹細胞性表現型
ヒトES細胞における幹細胞性に関与するヒトES細胞マーカー候補遺伝子のリストを表6に示す。これらの遺伝子の全ては、本発明者らの192のアップレギュレートされた転写物のリストに存在した。それらのうちの5種、POU5F1、SOX2、REX1、NANOG、およびFLJ10713は、マウスES細胞において以前に同定されており、それらのうちの8種(TGIF、TDGF1、CHEK2、GDF3、GJA1、およびFLJ21837を含む)は、ヒトES細胞トランスクリプトームの最近のマイクロアレイ研究においてアップレギュレートされていると同定されている[47]。残りの遺伝子はいずれも、ヒトES細胞にとって重要であることが以前に示唆されていない。これらの候補ヒトESマーカー遺伝子は、ヒトES細胞において非常に高度に発現されるか(GJA1、CLDN6、CKS1B、ERH、HMGA1)、または高度に制限された発現パターンを示す(LIN28、DNMT3B、FLJ14549、FLJ21837、TNFRSF6、NPM1、OC90)。さらに、これらの新しいマーカー遺伝子のいくつか(LIN28、DNMT3B、FLJ14549、OC90、HESX1)は、ES細胞分化の間に強くダウンレギュレートされた。これらの既知の遺伝子に加えて、本発明者らはまた、高度に発現されかつヒトES細胞に限定される8つのオーファンSAGEタグを同定した。これらの遺伝子はまた、未分化ヒトES細胞のマーカーとして極めて有用であることが証明されるはずである。」(第61ページ右欄4行?最終行)

(3)甲第4号証
本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった、甲4には、以下の事項が記載されている。(英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。)


「分化した細胞は、核内容物を卵母細胞に移すことによって、または胚性幹(ES)細胞と融合させることによって、胚性様状態に再プログラムすることができる。この再プログラミングを誘導する因子についてはほとんど知られていない。ここで、本発明者らは、ES細胞培養条件下で、4つの因子、Oct3/4、Sox2、c-Myc、およびKlf4を導入することによる、マウス胚性線維芽細胞または成体線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導を実証する。」(663ページ左欄2?10行)

(4)甲第5号証
本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった、甲5には、以下の事項が記載されている。(英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。)


「ヒトゲノムの大部分は、現在、配列決定され、約30,000の潜在的なオープンリーディングフレームが同定されており、このことは、我々が、これらの30,000の遺伝子を使用して、我々の生物学的活性を機能的に組織化することを示す。しかし、バイオインフォマティクスならびにトランスジェニックマウスやノックアウトマウスを使用する集中的な努力にもかかわらず、多くの遺伝子の機能は依然として未知である。レトロウイルス媒介性遺伝子導入は、遺伝子機能を理解するために使用され得る強力なツールである。本発明者らは、効率的な機能的発現クローニング法の開発を容易にした種々のレトロウイルスベクターおよび効率的なパッケージング細胞株を開発した。この総説において、本発明者らは、遺伝子機能の研究や機能ベースのスクリーニング手段に使用されるレトロウイルス媒介手法を記載する」(要約)

(5)甲第6号証
本願の原出願日後の平成21年5月8日に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった、甲6には、以下の事項が記載されている。(英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。)

「エピソーマルベクター中で6つの再プログラミング遺伝子を用いた最初のテストでは、ヒトiPS細胞コロニーを生成できなかった(表S2)。この遺伝子の組み合わせにより、トランスフェクション後の最初の1週間に相当量の細胞死が観察された。おそらく、これは高レベルのc-Myc発現の毒性作用によるものである。我々は、c-Myc発現の毒性作用の可能性を打ち消すために、いくつかの組み合わせのうち3つ(すべてOCT4、SOX2、NANOG、LIN28、c-Myc、KLF4、およびSV40LTを含んだ)では、oriP/EBNA1ベースのベクターを使用してヒト包皮繊維芽細胞からiPS細胞コロニーを生成することに成功した(図1A、図S2Dおよび表S2)。」(798ページ右欄12行?799ページ中欄1行)

第4 当審の判断
1.甲第1号証を主引例とした進歩性欠如の理由について
(1)甲1発明
甲1には、
「ヒト細胞の核初期化により誘導多能性幹細胞を製造する方法であって、ヒト細胞に対して0ct3/4、Klf4、c-Myc及びSox2の各遺伝子産物を含む核初期化因子を接触させる工程を含む方法。」(第3 3(1)セ?ツ、以下甲1発明という。)の発明が記載されていると認められる。

(2)対比
甲1発明の「ヒト細胞」は、本件特許発明1の「霊長類の胎児又は霊長類の出生後の個体から得られる非胚性細胞」に相当し、甲1発明の「0ct3/4」は、本件特許発明1の「Oct-4」に相当し、甲1発明の「核初期化因子」は、本件特許発明1の「潜在能力決定因子」に相当する。
また、甲1発明の「核初期化により誘導多能性幹細胞を製造する方法であって、・・・核初期化因子を接触させる工程を含む方法。」は、本件特許発明1の「非胚性細胞を再プログラム化する方法;前記非胚性細胞を再プログラムするために十分な条件下で、複数の潜在能力決定因子を、前記非胚性細胞に暴露する工程であって、・・・暴露された細胞を培養して、前記非胚性細胞よりも高い潜在能力を有する再プログラム化細胞を入手する工程。」に相当する。

したがって、本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、
「以下の工程を含む、霊長類の胎児又は霊長類の出生後の個体から得られる非胚性細胞を再プログラム化する方法;
前記非胚性細胞を再プログラム化するために十分な条件下で、複数の潜在能力決定因子を、前記非胚性細胞に暴露する工程であって、ここで、
前記複数の潜在能力決定因子が0ct-4、Klf4を含み、
暴露された細胞を培養して、前記非胚性細胞よりも高い潜在能力を有する再プログラム化細胞を入手する工程。」である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本件特許発明1では、複数の潜在能力決定因子としてLin28を含むのに対して、甲1発明ではLin28を含まない点。

(相違点2)
本件特許発明1では、暴露工程が、Oct-4及びSox2が1:1の比で連結されている単一ベクターを用いるのに対して、甲1発明ではそのような記載がない点。

(3)判断
(相違点1)について
甲1には、潜在能力決定因子である核初期化因子として、「少なくともOctファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、及びMycファミリー遺伝子の遺伝子産物の組合せ」(第3 3(1)イ)を用い、この3種のほかに、「Soxファミリー遺伝子」を含むこと(第3 3(1)ウ)が記載されている。さらに、好ましい態様として、4種類の遺伝子産物に加えて、「細胞の不死化を誘導する因子」(第3 3(1)エ)、「さらに、下記の群:Fbxl5、Nanog、ERas、ECAT15-2、Tcll、及びβ-cateninからなる群から選ばれる遺伝子のうちの1種又は2種以上」(第3 3(1)オ)、「下記の群:ECAT1、Esgl、Dnmt3L、ECAT8、Gdf3、Soxl5、ECAT15-1、Fthll7、Sall4、Rexl、UTF1、Stella、Stat3、及びGrb2からなる群から選ばれる1種以上の遺伝子の遺伝子産物」(第3 3(1)オ)を用いることが記載されている。
そして、甲1には、初期化因子の探索を行い、「初期化因子の候補としてES細胞で特異的な発現を示す遣伝子、及びES細胞の分化多能性維持における重要な役割が示唆される遺伝子を合計24種類選択」したこと(第3 3(1)キ)、24遺伝子のうち10遺伝子が重要で、さらに、その中の4遺伝子が特に重要であること(第3 3(1)コ?シ)が記載されている。
甲1には、上記のように、核初期化に必要な因子を様々な角度から検討しているが、この中に、Lin28については記載がない。
甲2には、ES細胞で特異的に発現する遺伝子を調査したことが記載されており(第3 3(2)ア)、LIN28、DNMT3B、FLJ14549、OC90、HESX1は、ES細胞分化の間に強くダウンレギュレートされたことが記載されている(第3 3(2)イ)。
ここで、甲1発明において、甲1に例示されていない核初期化因子である遺伝子をさらに選択して用いることは排除されていないとしても、甲1では上記のとおり多数の遺伝子が探索されており、その中で24の遺伝子に絞り込まれている。そして、24遺伝子のうちから、特に重要な遺伝子を4つ選択している。したがって、甲1発明においてさらに別の遺伝子を核初期化の際に追加するには、当該遺伝子を追加で用いることに強い動機付けが必要である。
甲2にはES細胞分化の際にLin28がダウンレギュレートすることが記載されているものの、その他4つの遺伝子も同時にダウンレギュレートすることが記載されている。また、その他多数の遺伝子がES細胞でアップレギュレートすることも記載されている。そうすると、甲2の記載を参照しても、すでに多数の遺伝子が探索され、候補が絞られている甲1発明において特にLin28を選択して追加する動機付けがあるとはいえない。
したがって、甲2の記載を参照しても、甲1発明において相違点1を当業者が容易になし得るとは認められない。

甲4、甲5には、それぞれ、「4つの因子、Oct3/4、Sox2、c-Myc、およびKlf4を導入することによる、マウス胚性線維芽細胞または成体線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導」(第3 3(3)ア)、「遺伝子機能の研究や機能ベースのスクリーニング手段に使用されるレトロウイルス媒介手法」(第3 3(4)ア)が記載されているのみであるから、甲1発明において相違点1を補完するものではない。

(相違点2)
甲1には、核初期化因子を細胞に導入する際に、ベクターを用いてもよいことや、ベクターに2種以上の遺伝子を組み込んで同時に発現させてもよいことが記載されている(第3 3(1)カ)。甲1には、「レトロウイルスにより0ct3/4, Sox2, Klf4, c-Myc(いずれもヒト由来)を導入した」(第3 3(1)ス)との記載があり、特に単一のベクターを用いた旨の記載はないから、4遺伝子を個別にレトロウイルスベクターで導入したものと認められる。
本件特許では、Oct-4及びSox2が1:1の比で連結されている単一ベクターを用いることで、Oct-4、Sox2、Nanog、Lin28を別々のベクターで導入する際に比べて、約4倍の効率向上が達成されており(本件特許 図9B)、当該構成を採用することで一定の効果が得られたと認められる。
一方、甲1には、特にOct-4及びSox2が1:1の比で連結されている単一ベクターを用いることについて記載はなく、甲2、甲4、甲5にもそのような記載はない。そうすると、甲1発明において、Oct-4及びSox2を単一のベクターで導入する構成を採用する動機付けはなく、そのような構成とすることで、核初期化の効率が向上することも予測できないものである。
したがって、甲1、甲2、甲4、甲5を参照しても、甲1発明において、相違点2を当業者が容易になし得るとは認められない。

上記のとおり甲1発明に甲2、甲4、甲5の記載を組み合わせて、相違点1、相違点2を当業者が容易になし得るとはいえないから、第1優先日が認められなかったとしても、本件特許発明1は、甲1、甲2、甲4、甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また仮に、第1優先日が認められるとすれば、甲1が公知文献とならないので、本件特許発明1は、甲1、甲2、甲4、甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件特許発明8は、本件特許発明1に特定される事項のうち、上記(相違点1)、(相違点2)を含むものであり、本件特許発明2?7は請求項1を引用するものであり、本件特許発明9?12については、請求項8を引用するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2?12についても、甲1、甲2、甲4、甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、甲第1号証を主引例とした進歩性欠如の異議申立理由は理由がない。

2.実施可能要件違反、サポート要件違反について
本件特許の発明の詳細な説明には、
「レンチウイルス形質導入後の4つの潜在能力決定因子の限定的セットによる類間葉細胞の再プログラム化」(【0027】)について、「細胞タイプは、上記のヒトH1 Oct4ノックインES細胞から直接分化させた類間葉クローン細胞」(【0027】)であること、「図7Bに示すように、典型的な多能性細胞の形態を有する細胞を含むコロニーの最大数は、Oct-4、Nanog、Sox2及びLin28の全部を用いて得られた。しかしながら、Oct-4、Nanog、Sox2及びLin28の1つが欠落したとき、ES様コロニーの数は顕著に減少するか(例えばNanog又はLin28)又は消失した(例えばOct-4又はSox2)」(【0028】)ことが記載されており、
「レンチウイルスによる形質導入後の分化細胞の再プログラム化及び4つの潜在能力決定因子の発現」(【0031】)について、「分化細胞の多能性への再プログラム化における潜在能力決定因子の限定セットの有用性をさらに明確に示すために、上記の認定方法をATCCカタログ番号CCL-186(IMR-90;ATCC)を用いて繰り返した。前記はヒト胎児肺線維芽細胞である」(【0031】)こと、「分化間葉細胞を用いて得られたデータと同様に、多能性細胞(例えばヒトES細胞)の典型的な形態の細胞を有するコロニーの最大数は、Oct-4、Nanog、Sox2及びLin28の全部を用いて得られた。しかしながら、Oct-4、Nanog、Sox2又はLin28を欠いたとき、ES様コロニーの数は顕著に減少するか(たとえばNanog又はLin28)又は消失した(例えばOct-4又はSox2)。」(【0032】)ことが記載されている。
上記記載から、本件特許発明1について、少なくともヒトH1 Oct4ノックインES細胞から直接分化させた類間葉細胞とヒト胎児肺線維芽細胞について、Oct-4、Nanog、Lin28の3つの潜在能力決定因子で、再プログラム化できることが確認されている。
これに対し、特許異議申立人は甲第6号証を示して、本件特許発明は実施可能要件及びサポート要件を満足しない旨を主張している。しかし、甲第6号証は、本件特許の原出願日以降に公開された文献であり、本件特許発明の優先日当時の技術水準を示すものではない。
念のため、甲第6号証の記載を参照できる場合についても検討する。特許異議申立人は、ヒト包皮繊維芽細胞から、エピソーマルベクターを用いた場合に、OCT4、SOX2、NANOG、LIN28、c-Myc、KLF4の6つの因子ではiPS細胞を作成できなかったが、さらにSV40LTを用いた場合に、多数のエピソーマルベクターの組み合わせのうち3通りでのみ再プログラム化ができたとの甲6の記載を示して、本件特許発明について、本件特許明細書はレンチウイルスベクターで実施できることは記載されているが、それ以外のエピソーマルベクターを含む態様について実施できることは開示されていない旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、Oct-4、Nanog、Lin28の3つの潜在能力決定因子で非胚性細胞が再プログラム化できることは、本件特許明細書に記載されている。そして、再プログラム化の条件を当業者に周知な技術を用いて検討することは、当業者が通常行うことであるから、甲6の記載があったとしても、本件特許発明1を当業者が実施をすることができないとはいえない。

本件特許発明8は、多能性細胞の濃縮集団の作製方法についてであるが、再プログラム化工程については、本件特許発明1と同一の特定事項を含むものであり、本件特許発明2、3、5?7は、請求項1を引用し、その特定事項をさらに限定するものであり、本件特許発明9?12は、請求項8を引用し、その特定事項をさらに限定するものであるから、本件特許発明2、3、5?12についても、当業者が実施をすることができないとはいえない。

本件特許発明の解決しようとする課題は、「分化した霊長類の体細胞を多能性細胞、より具体的にはiPS細胞に再プログラム化する方法」(【0004】)を提供することにある。そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には上記記載があり、Oct-4、Nanog、Lin28の3つの潜在能力決定因子を用いて再プログラム化する方法が提供できたことが記載されている。
したがって、本件特許発明1?3、5?12は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。

したがって、実施可能要件違反、サポート要件違反についての異議申立理由は理由がない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1?12を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1?12を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-08-18 
出願番号 特願2015-94203(P2015-94203)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C12N)
P 1 651・ 536- Y (C12N)
P 1 651・ 121- Y (C12N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川口 裕美子  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 高堀 栄二
松岡 徹
登録日 2020-11-04 
登録番号 特許第6788329号(P6788329)
権利者 ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
発明の名称 体細胞の再プログラム化  
代理人 山崎 一夫  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 市川 さつき  
代理人 星野 貴光  
代理人 服部 博信  

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