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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G09F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G09F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G09F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G09F
管理番号 1377815
異議申立番号 異議2021-700408  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-28 
確定日 2021-08-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6775851号発明「操作表示パネル組込物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6775851号の請求項1?19に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6775851号(以下「本件特許」という。)の請求項1?19に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)10月29日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 平成29年10月28日)、令和2年10月9日にその特許権の設定登録がされ、令和2年10月28日に特許掲載公報が発行された。その後、令和3年4月28日に特許異議申立人鹿川明香(以下「申立人」という。)は、本件特許の請求項1?19に対して、特許異議の申立てを行った。


第2 本件発明
本件特許の請求項1?19の特許に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1?19は次のとおり記載されている。

「【請求項1】
自然の外観と手触りを模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層が、筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル前面全体を少なくとも被覆し前記パネル前面に当接するように、筐体の外周面に配設され、
前記薄層の厚さと前記パネルの輝度が、該パネルに表示されたコンテンツを視認できるように設計され、
前記パネルは、透明基材と、透明導電性シートと、発光素子が2次元配列された発光素子アレイと、発光素子の光の射出方向を導くライトガイド、を少なくとも備えることを特徴とする操作表示パネル組込物品。
【請求項2】
前記薄層は、1?50%の範囲の光透過率を有することを特徴とする請求項1の操作表示パネル組込物品。
【請求項3】
前記薄層の前面には、透明保護層が設けられることを特徴とする請求項1又は2の操作表示パネル組込物品。
【請求項4】
前記薄層の裏面には、透明補強層が設けられることを特徴とする請求項1?3の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項5】
前記ライトガイドは、発光素子アレイの基板に積層される不透明の暗色基材であり、発光素子アレイ全体を囲い込み、それぞれの発光素子の光軸に沿って貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1?4の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項6】
前記ライトガイドの貫通孔の径は、発光素子の発光エリアの径と同等以上であり、アスペクト比は0.5?3.0の範囲内であることを特徴とする請求項5の操作表示パネル組込物品。
【請求項7】
前記パネルにおいて、前記透明基材と、前記透明導電性シートと、前記ライトガイドと、前記発光素子アレイとが順に積層されており、
前記透明基材と前記透明導電性シートは密着しており、前記透明導電性シートと前記ライトガイドとの間にはギャップが設けられていることを特徴とする請求項1?6の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項8】
前記パネルにおいて、前記透明導電性シートと、前記透明基材と、前記ライトガイドと、前記発光素子アレイとが順に積層されており、
前記透明導電性シートと、前記透明基材と、前記ライトガイドは、それぞれ密着していることを特徴とする請求項1?6の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項9】
前記発光素子アレイの発光素子と前記ライトガイドの貫通孔の配置パターンは同じであり、共に同じピッチで配置されており、ピッチ間隔は5mm以下であることを特徴とする請求項5?8の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項10】
前記パネルにおいて、前記透明基材、前記透明導電性シート、前記ライトガイド、および、前記発光素子アレイの基板が、全てフレキシブル性を有することを特徴とする請求項1?9の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項11】
前記筐体の外周面の全部又は一部が曲面形状を呈しており、該曲面に当接するように前記パネルが組込まれていることを特徴とする請求項1?10の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項12】
前記パネルを制御するパネル制御部は、
前記タッチセンサからのデータを判別し、判別結果に基づく前記表示パネルの表示コンテンツに応じて前記発光素子アレイを駆動する、
または、
前記タッチセンサからのデータを判別し、判別結果に基づく前記表示パネルの表示コンテンツに応じて前記発光素子アレイを駆動すると共に、有線もしくは無線による通信を介して外部へデータを送信する、
または、
有線もしくは無線による通信を介して外部からのデータを受信し、受信したデータの判別結果に基づく前記表示パネルの表示コンテンツに応じて前記発光素子アレイを駆動する、
ことを特徴とする請求項1?11の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項13】
スピーカーを更に備え、
前記パネルを制御するパネル制御部は、
前記タッチセンサからのデータを判別し、判別結果に基づいて前記スピーカーに音を出力する、
または、
有線もしくは無線による通信を介して外部からのデータを受信し、受信したデータの判別結果に基づいて前記スピーカーに音を出力する、
ことを特徴とする請求項1?12の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項14】
マイクを更に備え、
前記パネルを制御するパネル制御部は、
前記マイクからの音データを判別し、判別結果に基づく前記表示パネルの表示コンテンツに応じて前記発光素子アレイを駆動する、
または、
前記マイクからの音データを判別し、判別結果に基づく前記表示パネルの表示コンテンツに応じて前記発光素子アレイを駆動すると共に、有線もしくは無線による通信を介して外部へデータを送信する、
ことを特徴とする請求項1?13の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項15】
自然の外観と手触りを模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層と、
タッチセンサ付き表示パネルと、
前記パネルを制御するパネル制御部と、
筐体、
から構成され、
前記薄層は、1?50%の範囲の光透過率を有し、前記筐体の外周面に組込まれた前記パネル前面全体を少なくとも被覆し前記パネル前面に当接するように、前記筐体の外周面に配設され、
前記パネルは、透明基材と、透明導電性シートと、発光素子が2次元配列された発光素子アレイと、発光素子の光の射出方向を導くライトガイドから構成されて其々が積層され、該パネルに表示されたコンテンツを視認できる輝度を有することを特徴とする操作表示パネル組込物品。
【請求項16】
自然の外観と手触りを模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層と、
タッチセンサ付き表示パネルと、
前記パネルを制御するパネル制御部と、
筐体、
から構成され、
前記パネルは、透明基材と、透明導電性シートと、発光素子が2次元配列された発光素子アレイと、発光素子の光の射出方向を導くライトガイドから構成されて其々が積層され、
前記薄層は、1?50%の範囲の光透過率を有し、前記筐体の外周面に組込まれた前記パネル前面全体を少なくとも被覆し前記パネル前面に当接するように、前記筐体の外周面に配設され、該パネルに表示されたコンテンツを視認できる厚みを有することを特徴とする操作表示パネル組込物品。
【請求項17】
前記パネルは、移動体における、利用者に対する表示と、利用者による操作の少なくとも何れかを目的とする部位の全部又は一部を構成することを特徴とする請求項1?16の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項18】
前記パネルは、車両内のインストルメントパネルの全部又は一部を構成することを特徴とする請求項1?17の何れかの操作表示パネル組込物品。
【請求項19】
前記パネルは、車両用のドアトリムとアームレストの少なくとも何れかの全部又は一部を構成することを特徴とする請求項1?17の何れかの操作表示パネル組込物品。」


第3 申立理由の概要及び証拠方法
1 申立理由の概要
(1) 申立理由1
ア 申立理由1-1
(ア) 申立理由1-1(1)
請求項1、15及び16については、タッチセンサ付き表示パネルを構成する薄層について「自然の外観と手触りを模倣して生成された」と限定する記載があるところ、当該記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、また、プロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当するものであるところ、本件明細書の記載からは「不可能・非実際的事情」があるとは認められないから、発明が不明確である。したがって、請求項1、15及び16並びにこれらの請求項の記載を直接又は間接的に引用する請求項に係る特許である、請求項1?19に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

(イ) 申立理由1-1(2)
請求項1、15及び16における「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」との記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。したがって、請求項1、15及び16並びにこれらの請求項の記載を直接又は間接的に引用する請求項に係る特許である、請求項1?19に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

(ウ) 申立理由1-1(3)
請求項1、15及び16における「ライトガイド」という用語の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。したがって、請求項1、15及び16並びにこれらの請求項の記載を直接又は間接的に引用する請求項に係る特許である、請求項1?19に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

イ 申立理由1-2
請求項6の「前記ライトガイドの貫通孔の径は、発光素子の発光エリアの径と同等以上であり、アスペクト比は0.5?3.0の範囲内であることを特徴とする」との記載における「アスペクト比」という用語の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。したがって、請求項6及び請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7?14、17?19に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項6?14、17?19に係る特許は取り消されるべきものである。

ウ 申立理由1-3
請求項7の「前記透明導電性シートと前記ライトガイドとの間にはギャップが設けられていることを特徴とする」との記載における「ギャップ」という用語の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。したがって、請求項7及び請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9?14、17?19に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項7、9?14、17?19に係る特許は取り消されるべきものである。

(2) 申立理由2
ア 申立理由2-1
(ア) 申立理由2-1(1)
請求項1、15及び16については、タッチセンサ付き表示パネルを構成する薄層について「自然の外観と手触りを模倣して生成された」と限定する記載があるところ、当該記載は不明確であり、当該要件を充足するか否かを判断することは不可能であるから、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明1、15及び16を実施することができない。したがって、請求項1、15及び16並びにこれらの請求項の記載を直接又は間接的に引用する請求項に係る特許である、請求項1?19に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

(イ) 申立理由2-1(2)
請求項1、15及び16における「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」との記載は不明確であり、当該要件を充足するか否かを判断することは不可能であるから、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明1、15及び16を実施することができない。したがって、請求項1、15及び16並びにこれらの請求項の記載を直接又は間接的に引用する請求項に係る特許である、請求項1?19に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

(ウ) 申立理由2-1(3)
請求項1、15及び16における「ライトガイド」という用語の記載は不明確であり、当該要件を充足するか否かを判断することは不可能であるから、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明1、15及び16を実施することができない。したがって、請求項1、15及び16並びにこれらの請求項の記載を直接又は間接的に引用する請求項に係る特許である、請求項1?19に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

イ 申立理由2-2
請求項6の「前記ライトガイドの貫通孔の径は、発光素子の発光エリアの径と同等以上であり、アスペクト比は0.5?3.0の範囲内であることを特徴とする」との記載における「アスペクト比」という用語の記載は不明確であるり、当該要件を充足するか否かを判断することは不可能であるから、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明6を実施することができない。したがって、請求項6及び請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7?14、17?19に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項6?14、17?19に係る特許は取り消されるべきものである。

ウ 申立理由2-3
請求項7の「前記透明導電性シートと前記ライトガイドとの間にはギャップが設けられていることを特徴とする」との記載における「ギャップ」という用語の記載は不明確であり、当該要件を充足するか否かを判断することは不可能であるから、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明7を実施することはできない。したがって、請求項7及び請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項9?14、17?19に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項7、9?14、17?19に係る特許は取り消されるべきものである。

(3) 申立理由3
本件発明に規定する「ライトガイド」の定義では、本件発明がその技術的課題を解決し得ない態様を多分にその権利範囲に含んでいることは明らかである。したがって、請求項1?19に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

(4) 申立理由4
ア 申立理由4-1
本件発明1?19は、甲1号証(後記2参照。以下、証拠の番号に従って「甲1」等という。)に記載された発明との間に実質的な相違点が存在しない。したがって、請求項1?19に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

イ 申立理由4-2
本件発明1?19は、甲1に記載された発明、甲2に記載の技術及び甲5?22に記載の周知技術に基づいて容易に想到できたものである。したがって、請求項1?19に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

(5) 申立理由5
ア 申立理由5-1
本件発明1?19は、甲2(後記2参照)に記載された発明との間に実質的な相違点が存在しない。したがって、請求項1?19に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

イ 申立理由5-2
本件発明1?19は、甲2に記載された発明、甲1に記載の技術及び甲5?22に記載の周知技術に基づいて容易に想到できたものである。したがって、請求項1?19に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?19に係る特許は取り消されるべきものである。

2 証拠方法
申立人は、上記申立理由の主張を裏付ける証拠として、次のものを挙げている。

甲1:特開2010-120487号公報
甲2:特開2015-118398号公報
甲3:新村出編、広辞苑第7版、株式会社岩波書店、2018年1月12日(「模倣」について)
甲4:テレビレグザ ウェブサイト「息をのむほどの輝きとコントラスト、深みのある色彩表現を実現 全面直下LEDパネル」(https://www.regza.com/regza/lineup/j10x/quality.html#just_below_full_led_panel)の出力、2021年4月27日出力
甲5:特開2006-294032号公報
甲6:特開2016-97510号公報
甲7:特開2013-230575号公報
甲8:特開2003-71956号公報
甲9:特開2007-50644号公報
甲10:特開2007-50645号公報
甲11:特開2010-247457号公報
甲12:特許第4456130号公報
甲13:国際公開第2016/196540号
甲13の2:特表2018-526663号公報(甲13に対応する日本語翻訳)
甲14:特開2009-234159号公報
甲15:実用新案登録第2571743号公報
甲16:特開2013-161203号公報
甲17:特許第4610416号公報
甲18:特開2016-21235号公報
甲19:特許第6080209号公報
甲20:特許第6202698号公報
甲21:ZURICH ウェブサイト「車のダッシュボードとインパネ(インストルメントパネル)とは?」(https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-dashboard-instrument-panel/)の出力、2021年4月27日出力
甲22:特開2009-9249号公報


第4 引用文献、引用発明等
1 甲1
(1) 甲1に記載された事項
甲1には、以下の記載がある(下線は当審が付した。以下同様である。)。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作表示が設けられる操作プレートと、
操作プレートの上面側または下面側に設けられ、操作表示に対する接触を検出して検出信号を出力するタッチセンサと、
操作プレートの種類の識別情報を提供する識別手段と、
タッチセンサからの検出信号に基き、操作表示に対応する機能を制御する制御手段であって、識別情報に応じて制御する機能を変更する制御手段と、
を備えることを特徴とする車室内スイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車室内スイッチ装置において、
識別手段は、操作プレートに設けられることを特徴とする車室内スイッチ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車室内スイッチ装置において、
操作プレートに設けられるプレート識別部と、
制御手段に設けられた識別情報取得部と、
プレート識別部と識別情報取得部との間を接続する接続手段と、
を備えることを特徴とする車室内スイッチ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車室内スイッチ装置において、
操作プレートには複数の操作表示が設けられており、操作プレートは、複数の操作表示が相互に異なる所定のプレート種類の中から1つが選択されて配置され、
タッチセンサは、各操作表示に対する接触を区別して検出し対応する検出信号を出力し、
識別手段は、所定のプレート種類にそれぞれ対応する所定の識別手段種類の中から、選択されたプレート種類に対応して1つが選択されて配置されることを特徴とする車室内スイッチ装置。
【請求項5】
請求項5に記載の車室内スイッチ装置において、
タッチセンサ側から操作プレートを照明する照明手段を備えることを特徴とする車室内スイッチ装置。」

「【0001】
本発明は、車室内スイッチ装置に係り、特に車両に搭載される機器の操作を行う車室内スイッチ装置に関する。」

「【0007】
本発明の目的は、マスク層の交換のみでスイッチ装置の操作表示である図柄の配置変更を行うと共に、操作表示と電極との対応を正しいものにし、操作表示に対応した意図する動作を行わせることができる車室内スイッチ装置を提供することである。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、車室内スイッチ装置として、乗用車の前席ドアに設けられる加飾パネルを利用したものを説明するが、その設置場所は、前席ドア以外であってもよく、例えば、運転席のフロントパネル、後席ドア等であってもよい。また、以下では、必要なときに加飾パネルの裏側に設けた照明装置を用いてスイッチ装置の操作表示である図柄を加飾パネルに浮かび上がらせるものとして説明するが、照明装置等を省略し、加飾パネルに操作表示である図柄を直接印刷し、常時表示するものとしてもよい。」

「【0023】
図1は、乗用車の前席ドアに設けられる車室内スイッチ装置20の様子を示す図である。ここでは、乗用車の左側前席のドア10に、加飾パネル22が設けられ、必要なときに、例えば、適当な点灯スイッチを操作することで、加飾パネル22にスイッチの操作のための操作表示である図柄30を浮き出させる様子が示されている。図1の上段の図が点灯スイッチをONとして図柄30を浮き出させた場合、下段の図が点灯スイッチをOFFとして図柄30を消失させ、本来の加飾パネル22の木目模様が視認されるようにした場合を示す。
【0024】
図2は、車室内スイッチ装置20の構造を説明するための分解斜視図である。図3は組み立てた状態の断面図である。車室内スイッチ装置20は、加飾パネル22、マスク層24、電極基板32、ホルダ36、ゼブラゴム42、制御基板46を備えて構成される。図2、図3に矢印で示すように、加飾パネル22側が図1で説明した車室内側となる。
【0025】
加飾パネル22は、車室内の装飾を兼ね、必要なときに後述するマスク層24に設けられた操作表示を浮かび上がらせるスクリーン層としての機能を有するパネルである。加飾パネル22は、全体の形状を保持する適当な透光性基材に装飾性の模様を印刷したフィルムを貼付して構成される。
【0026】
透光性基板としては、適当なプラスチック材料を成形したものを用いることができる。その上に貼付されるフィルムとしては、図1の例では木目模様を印刷した透光性のプラスチックフィルムを用いることができる。勿論、木目模様以外のものでもよく、金属光沢等のものであってもよい。なお、フィルムの上面、つまり車室内側の面に、適当な保護層を設けることが好ましい。保護層は無色透明あるいは適当な着色を施したものを用いることができる。
【0027】
マスク層24は、加飾パネル22と共に、ユーザが車搭載機器を動作させるための指示を行なうときに、例えば指を触れて指示できるようにする操作表示26を作り出す基板である。操作表示26は、後述するタッチパネルの複数のセンサ電極であるセンサ電極34の位置に対応して配置されるので、いわば、センサ電極34の位置にユーザの指を誘導する機能を有する。マスク層24は、加飾パネル22の裏面の形状に沿うように配置されるので、例えば、適当な可撓性を有する基板が好ましい。もっとも、加飾パネル22が平板状であるときには、マスク層24も適当に硬い平板基板であってもよい。
【0028】
マスク層24は、ベースシートにパターン化した遮光層を印刷あるいは貼付することで形成される。ベースシートは透明あるいは透光性の高いプラスチックフィルムを用いることができる。例えば、PETフィルム等を用いることができる。遮光層は、操作表示を切り抜くようにしてパターン化される。パターン化された操作表示26は、図1に示されるように、加飾パネル22に浮かび上がるとき、図柄30として、ユーザに視認される。
【0029】
図2の例では、AUTO,OFF,MODE,TEMPのUPとDOWN,VOLのUPとDOWN,TUNEのUPとDOWN,PWR,OFFの合計11の操作表示26である図柄が形成されている。このように、1枚のマスク層24には、複数の操作表示26が配置される。上記では11個の操作表示26が示されているが、これ以上の数であってもよく、また、これ以下の数であってもよい。特別な場合には、1つの操作表示26のみが配置されるものであってもよい。
【0030】
このように、マスク層24は、適当な一定の形状を定めて、その範囲内で、例えば、車両の仕様、車室内のデザインの仕様等にあわせ、操作表示26の配置および数を変更することが可能である。すなわち、マスク層24は、操作表示26の配置が相互に異なる複数種類のものを準備でき、その複数種類の中から1種類を選択して、車室内スイッチ装置20を構成する部品として配置される。」

「【0035】
電極基板32は、マスク層24の下部に設けられ、タッチセンサのセンサ部を構成する部品である。センサ部としては、複数のセンサ電極34が用いられる。タッチセンサは、静電容量型のもので、センサ電極34に人体の指等が近づくと、センサ電極34と人体の指等の間の静電容量が変化することを利用して、センサ電極34に対する接触を検出する機能を有する。タッチセンサは、センサ部、すなわちセンサ電極34以外の要素を含んで構成されるが、それらは制御基板等に搭載される。ここでは、電極基板32がタッチセンサを代表する要素として図示されている。
【0036】
電極基板32は、マスク層24と同様なベースフィルムを用いて、その上に、相互に電気的に分離された導電性で光透過性を有するセンサ電極34を複数配置して構成される。例えば、透明フィルムに、インジウム酸化錫(ITO)等の透明電極材料を所定のパターンに形成したものを電極基板として用いることができる。
【0037】
センサ電極34は、予め定めた配置方法で配置される。図2の例では、2×6の合計12個のセンサ電極34が示されている。各センサ電極34は、図示されていない適当な引出線を用いてそれぞれが制御基板46のタッチセンサの回路部分に接続される。センサ電極34と制御基板46との接続には、例えば、フレキシブル回路基板等を用いることができる。
【0038】
このように電極基板32は、制御基板46と接続されるので、マスク層24が複数種類あって交換可能であるのに対し、固定的であって、1種類である。したがって、予め定めた電極基板32における複数のセンサ電極34の配置位置にちょうど対応するように、それぞれの操作表示26が配置されるように、いずれのマスク層24も構成されなければならない。
【0039】
換言すれば、所定種類の各マスク層24における操作表示26の配置は、電極基板32のセンサ電極34の配置条件に合致する範囲で行われることになる。したがって、1つのマスク層24に配置できる操作表示26の数は、電極基板32のセンサ電極34の数以下である。図2の例では、センサ電極34の数が12、操作表示26の数が11となっている。センサ電極34の数以下であれば、各マスク層24における操作表示26の数が異なっていてもよい。例えば、操作表示26の数が1つのマスク層24を用いることもできる。
【0040】
このように電極基板32は1種類であるので、マスク層24の種類に関する識別情報を制御基板46に伝達し、その識別情報を用いて、各センサ電極34に対応する機器の設定を変更することが行われる。このようにすることで、マスク層24の種類が変更になっても、各センサ電極34と各操作表示26とが正しく対応付けられたものとできる。
【0041】
ゼブラゴム42は、マスク層24の電極パターン28の配置関係に含まれる識別情報を制御基板46に伝達するための接続手段である。ゼブラゴム42は、絶縁体に、縞馬(ゼブラ)の縞模様のように、導電部44が相互に分離して配置されたもので、立体的な接触型コネクタである。図2の例では、マスク層24の電極パターン28が4つの単位パターンの組合せで構成されることに対応して、4つの導電部44が設けられている。
【0042】
ゼブラゴム42は、このように立体的な接触型コネクタであるので、その機能を有するものであれば、他の構成であってもよい。例えば直方体のセラミック体の表面に、導電パターンを形成するものであってもよい。あるいは、複数の金属端子を相互に電気的に分離して配置するものとしてもよい。
【0043】
ホルダ36は、電極基板32等を保持する機能と共に、電極基板32を介してマスク層24に光を導く機能を有する部材である。ホルダ36には、全体の強度保持のためと、光の横漏れを防ぐために、格子状の隔壁38が設けられる。この隔壁38で囲まれた貫通空洞が光通路40となる。
【0044】
ゼブラゴム42は、マスク層24の端部の電極パターン28に対応して設けられるので、マスク層24と制御基板46との間に配置される電極基板32とホルダ36の形状と寸法は、図3の断面図にも示されるように、ゼブラゴム42の配置のために、小さなものとして設定される。
【0045】
制御基板46は、車室内スイッチ装置20における様々な電子部品を搭載する回路基板である。かかる回路基板としては、例えば所望の配線パターンを形成したエポキシ基板等を用いることができる。
【0046】
制御基板46には、1つ目として、タッチセンサにおいてセンサ電極34に接続される各電子部品が搭載される。2つ目として、ホルダ36の光通路40を通り、電極基板32を介してマスク層24に光を照射するための光源としてのLED(Light Emission Device)48が搭載される。LED48は、ホルダ36の光通路40のそれぞれに対応して配置される。LED48に代えて小型ランプを搭載するものとしてもよい。
【0047】
3つ目として、タッチセンサからの検出信号、すなわち、どのセンサ電極34の位置にユーザが接触したかの信号を処理して、対応する車両搭載機器の動作を指示する信号を出力する制御IC50が搭載される。ユーザの指示に応じて車両搭載機器の動作を切り替えるのは制御IC50であるので、制御ICが電子的スイッチ機能を有することになる。なお、制御IC50に1つ目のタッチセンサに関する機能を集積するものとしてもよい。また、制御基板46に、これら以外の電子部品等を搭載するものとしてもよい。」

「【符号の説明】
【0070】
10 ドア、20 車室内スイッチ装置、22 加飾パネル、24,25 マスク層、26 操作表示、28,29 電極パターン、32 電極基板、34 センサ電極、36 ホルダ、38 隔壁、40 光通路、42 ゼブラゴム、44 導電部、46 制御基板、48 LED、50 制御IC、52 (制御基板の)電極パターン、60,62 信号線。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】



図3から、加飾パネル22は、マスク層24を覆い、マスク層24に当接することが見てとれる。

(2) 甲1発明の認定
前記(1)の記載事項をまとめると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲1発明>
「乗用車の前席ドアに設けられ、車両に搭載される機器の操作を行う車室内スイッチ装置であって(【0001】、【0023】)、
加飾パネル22、マスク層24、電極基板32、ホルダ36及び制御基板46を、車室内側からこの順に備えて構成され(【0024】、【図2】)、
加飾パネル22は、マスク層24を覆い、マスク層24に当接し(【図3】)、
加飾パネル22は、透光性基材に装飾性の模様を印刷したフィルムを貼付して構成され(【0025】)、
透光性基材は、プラスチック材料を成形したものであり、フィルムは木目模様を印刷した透光性のプラスチックフィルムであり(【0026】)、
マスク層24は、ユーザが車搭載機器を動作させるための指示を行なうときに、指を触れて指示できるようにする操作表示26を作り出す基板であって、透明なプラスチックフィルムからなるベースシートにパターン化した遮光層を印刷あるいは貼付することで形成され(【0027】、【0028】)、
パターン化された操作表示26は、加飾パネル22に浮かび上がるとき、図柄30として、ユーザに視認され(【0028】)、
マスク層24は、操作表示26の配置が相互に異なる複数種類のものを準備でき、その複数種類の中から1種類を選択して、車室内スイッチ装置20を構成する部品として配置されるものであり(【0030】)、
電極基板32は、タッチセンサのセンサ部を構成する部品であり(【0035】)、
電極基板32は、透明フィルムに、インジウム酸化錫(ITO)等の透明電極材料を所定のパターンに形成したものであり(【0036】)、
ホルダ36は、電極基板32を介してマスク層24に光を導く機能を有する部材であって、光の横漏れを防ぐために、格子状の隔壁38が設けられ、この隔壁38で囲まれた貫通空洞が光通路40となり(【0043】)、
制御基板46には、ホルダ36の光通路40を通り、電極基板32を介してマスク層24に光を照射するための光源としてのLED48が、ホルダ36の光通路40のそれぞれに対応して配置して搭載され(【0046】)、
マスク層の交換のみでスイッチ装置の操作表示である図柄の配置変更を行うことができる(【0007】)、
車室内スイッチ装置。」

(3) 甲1構成の認定
前記(1)の記載事項のうち、【0035】、【0043】、【0046】、【図2】等の記載から、甲1には、次の技術事項(以下「甲1構成」という。)が記載されていると認められる。

<甲1構成>
「車室内スイッチ装置において、LED48を有する制御基板46とタッチセンサのセンサ部を構成する電極基板32の間に、光を導く機能を有するホルダ36を設けること。」

2 甲2
(1) 甲2に記載された事項
甲2には、以下の記載がある。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面体形状の筐体本体と、
前記筐体本体の少なくとも2面以上の外壁の表面に配置されたタッチ入力面と、
前記タッチ入力面の背面側に配置され、点灯時には前記タッチ入力面を透過して外部から視認可能で、フルカラー発光可能な光源部と、
前記タッチ入力面のタッチ操作に反応して前記光源部の点灯状態を制御する点灯制御回路と、
を備えることを特徴とする発光機能付き筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の発光機能付き筐体において、
前記光源部が、複数の発光素子をマトリクス状に配列してなることを特徴とする発光機能付き筐体
【請求項3】
請求項2に記載の発光機能付き筐体において、
前記発光素子は、発光ダイオードであることを特徴とする発光機能付き筐体。
【請求項4】
請求項3に記載の発光機能付き筐体において、さらに
前記タッチ入力面の背面と前記光源部との間に、光拡散層を備えてなることを特徴とする発光機能付き筐体。
【請求項5】
請求項1に記載の発光機能付き筐体において、
前記光源部が液晶パネル又は有機ELパネルである面状光源で、前記タッチ入力面の背面に前記面状光源を積層してタッチパネルを構成しており、
前記タッチパネルを前記筐体本体の外壁の表面に配置してなることを特徴とする発光機能付き筐体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一に記載の発光機能付き筐体において、
複数の筐体間で、互いに情報信号を通信するための通信機構を備えることを特徴とする発光機能付き筐体。」

「【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一に記載の発光機能付き筐体において、
表面が木目調に構成されてなることを特徴とする発光機能付き筐体。
【請求項11】
請求項10に記載の発光機能付き筐体において、
前記木目調の模様が、前記タッチ入力面の表面に積層された木目シートで構成されてなることを特徴とする発光機能付き筐体。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一に記載の発光機能付き筐体において、さらに
前記タッチ入力面のタッチ操作に反応して音を出力するスピーカーを備えてなることを特徴とする発光機能付き筐体。」

「【0001】
本発明は、所望の点灯パターンの光を表層に浮かび上がらせることが可能な発光機能付き筐体に関する。
【0002】
近年、重度の身体障害や、病気や加齢による寝たきり生活の人、知的障害や認知症で意思表示が困難な人、精神的不安定な状態に陥られている人等に対して、より充実した公平な福祉環境を育成しようとする機運が高まりつつある。そして、これまでの単なる治療や介助だけでは不十分で、これらの人に対する自立支援が重要であることが認識されてきており、人が本来具備する感受性を刺激し、向上させることが自立支援に有効であるとされている。
【0003】
そこで、従来、重度の知的障害を有する人との関わり方としてオランダに端を発し、発展してきた「スヌーズレン(snoezelen)」の理念に基づく活動が注目されている。スヌーズレンとは、重度知的障害者を魅了する感覚刺激空間を用いて彼らにとって最適な余暇やリラクゼーション活動を提供する実践であり、またそのプロセスを通して構築されてきた理念でもある。スヌーズレンの実践においては、障害を持つ人々(スヌーズレン利用者)にとって受け取りやすい感覚刺激に満たされた物理的環境が望ましいとされており、人の五感を刺激しやすい器具が望まれている。
【0004】
一方において、健常者においても幼児期の発育の促進のため、同様に五感を刺激する知育遊具が求められていることは周知の通りである。すなわち、このような器具は、使用者が実際に手で触れることができ、かつ手で触れたことに反応して、使用者の五感に訴える何らかの変化、例えば動きや光、音などを発することが望まれている。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のこのような背景に鑑みてなされたものである。すなわち本発明の主な目的は、使用者の操作に反応して五感に訴える変化を生じさせ、使用者の感覚を刺激することが可能な発光機能付き筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の発光機能付き筐体は、多面体形状の筐体本体1と、前記筐体本体1の少なくとも2面以上の外壁4の表面に配置されたタッチ入力面2と、前記タッチ入力面2の背面側に配置され、点灯時には前記タッチ入力面2を透過して外部から視認可能で、フルカラー発光可能な光源部3と、前記タッチ入力面2のタッチ操作に反応して前記光源部3の点灯状態を制御する点灯制御回路11とを備えることを特徴とする。
上記構成の発光機能付き筐体は、筐体本体の表面に配置されたタッチ入力面に対する使用者のタッチ操作に反応して、タッチ入力面の背面側に配置された光源部の点灯状態を制御することで、使用者の触覚と視覚に訴える変化を生じさせ、使用者の感覚を刺激することができる。
【0008】
本発明の発光機能付き筐体は、前記光源部3が、複数の発光素子31をマトリクス状に配列することができる。
上記構成により、光源部の点灯面積を広くして、外部から視認しやすくできることに加えて、光による外部への表示を多種多様にできる。例えば、マトリクス状に配列された複数の発光素子の点灯状態を制御することで、種々の図形や文字、数字、画像等を外部に表示することができる。
【0009】
本発明の発光機能付き筐体は、前記発光素子31を発光ダイオードとすることができる。
上記構成により、光源部を低電圧、低電流で駆動できるため、電力消費量を低減してランニングコストを削減できる。また、高輝度である上、赤・緑・青の3色光を適当な割合で混合することで、さまざまな色を再現できる。さらに、LEDは堅牢で耐衝撃性に優れ、かつ、長寿命であるため、取り替える手間やコストを低減でき、メンテナンスフリーを実現できる。さらにまた、発熱量が小さいため周囲の部材への熱的影響が比較的小さくできる。
【0010】
本発明の発光機能付き筐体は、前記タッチ入力面2の背面と前記光源部3との間に、光拡散層6を備えることができる。
上記構成により、光源部を構成する発光素子の光を拡散させて、外部から見た際における発光素子のドット感を低減できる。
【0011】
本発明の発光機能付き筐体は、前記光源部3を液晶パネル又は有機ELパネルである面状光源31とし、前記タッチ入力面2の背面に前記面状光源31を積層してタッチパネル7を構成し、前記タッチパネル7を前記筐体本体1の外壁4の表面に配置することができる。
上記構成により、タッチ入力面と光源部として、一般的に製造販売されるタッチパネルを使用でき、また、このタッチパネルを筐体本体の表面に固定することで簡単に製造できる。」

「【0015】
本発明の発光機能付き筐体は、表面を木目調に構成することができる。
上記構成により、筐体の外観を木目調として、木質材の持つ優しさと温もりを使用者に与えることができる。
【0016】
本発明の発光機能付き筐体は、前記木目調の模様を、前記タッチ入力面2の表面に積層された木目シート5で構成することができる。
上記構成により、簡単かつ容易に、タッチ入力面の表面に木目シートを積層して、筐体の外観を木目調に仕上げることができる。」

「【0025】
実施例1の発光機能付き筐体の斜視図を図1に、図1の筐体の一の面を分解した斜視図を図2に、図1の筐体の使用状態を図3に、図1のIV-IV線における断面図を図4に、発光機能付き筐体のブロック図を図5にそれぞれ示す。以上の図に示す発光機能付き筐体100は、外形を多面体形状とする筐体本体1と、この筐体本体1の少なくとも2面以上の外壁4に配置されたタッチ入力面2と、タッチ入力面2の背面側に配置されて、点灯時にはタッチ入力面2を透過して外部から視認可能で、フルカラー発光可能な光源部3と、タッチ入力面2のタッチ操作に反応して光源部3の点灯状態を制御する点灯制御回路11とを備えている。この発光機能付き筐体100は、外側面に配置されたタッチ入力面2を使用者がタッチ操作すると、点灯制御回路11が所定の点灯パターンで光源部3を点灯させる。光源部3によって点灯される光は、タッチ入力面2を透過して外部から視認できるように表示される。
【0026】
(筐体本体1)
筐体本体1は、その外形を、複数の平面を組み合わせて形成されてなる多面体形状としている。多面体形状である筐体本体1は、例えば、立方体、直方体、角柱、角錐、正四面体、正八面体、正十二面体等とすることができる。図1ないし図3に示す筐体本体1は、外形を立方体としている。外形を立方体とする筐体本体1は、優れた対称性を実現しながら、使用者に親しみやすい外観とすることができる。さらに、図6に示す筐体200は、筐体本体の外形を直方体形状とし、図7に示す筐体300は、筐体本体を三角柱状としている。
【0027】
筐体本体1は、各面を平面状の外壁4で形成しており、複数の外壁4を互いに連結して内部を中空状としている。図に示す筐体本体1は、内部に光源部3を配置しており、光源部3の点灯時には筐体本体1の外壁4とタッチ入力面2を透過して外部から視認できるようにしている。したがって、図に示す筐体本体1は、タッチ入力面2が配置される外壁4を、透光性を有する構造としている。透光性を有する外壁4には、透光性を有するプラスチック製の平板、例えば、アクリル板が使用できる。筐体本体1は、所定の平面形状に切断された複数枚の外壁4を辺で連結して所定の立体形状に形成されている。複数の外壁4で構成される筐体本体1は、外壁4の表面にタッチ入力面2が配置される。さらに、中空状に成形される筐体本体1は、内部を収納部として、光源部3を備える駆動部10を収納している。駆動部10は、詳細には後述するが、外部に光を照射する光源部3を備えており、この光源部3を外壁4の内面側に配置する状態で筐体本体1の内部の定位置に配置されている。図に示す光源部3は、面状の発光パネル30としている。
【0028】
以上の筐体本体は、各面の外壁を、透光性を有する構造としているが、筐体本体は、必ずしも全ての外壁を、透光性を有する構造とする必要はない。例えば、タッチ入力面や光源部が配置されない外壁は、透光性のない部材で構成することもできる。また、詳細には後述するが、光源部を外壁の内側に配置することなく、外壁の外側に配置する筐体においても、筐体本体の外周面を透光性のない外壁で構成することもできる。透光性のない外壁には、透明のアクリル板に限らず、非透明のプラスチック板や金属板、木板等も使用できる。
【0029】
中空状の筐体本体1は、図示しないが、少なくとも一方向に開口部を有する本体部と、この本体部の開口部を閉塞する蓋体とを備えている。この筐体本体は、本体部の開口部から内部に駆動部を構成する部品を収納した後、開口部が蓋体で閉塞される。蓋体は、本体部の開口部に、接着して固定され、あるいはネジ止めして固定され、あるいはまた係止構造で固定されて閉塞する。
【0030】
(タッチ入力面2)
タッチ入力面2は、薄い板状をしており、筐体本体1の外壁4の表面に固定されている。タッチ入力面2は、面状の位置入力装置で、背面に配置される光源部3の発光を透過できる透光性を有している。位置入力装置であるタッチ入力面2は、使用者が指先やタッチペン等で圧力を加えることにより、タッチされた画面位置の情報を感知して、外部に情報信号として出力する。タッチ入力面2は、使用者のタッチ操作を感知して、その入力情報や操作情報を情報信号として出力する。タッチ入力面2は、例えば、押圧された位置を感知して位置入力信号として出力し、あるいは、スワイプ操作を感知して、入力位置と移動方向をスワイプ操作信号として出力する。タッチ入力面2から出力される位置入力信号やスワイプ操作信号の情報信号は、検出回路13に入力される。
【0031】
面状のタッチ入力面2は、好ましくは、外壁4のほぼ全体の領域にわたって配置される。この構造は、筐体本体1の外壁4に配置されるタッチ入力面2の面積を充分に大きくして、使用者がタッチ操作をしやすくできる。また、タッチ入力面2の背面側に配置される面状の発光パネル30の面積を大きくして、発光パネル30の点灯状態を視認しやすくできる。ただ、タッチ入力面は、必ずしも外壁の全体の領域にわたって配置する必要はなく、外壁の外周縁部を除く中央部に配置することもできる。例えば、タッチ入力面は、これが配置される外壁の面積の30%?100%、好ましくは50%?100%の領域に配置することができる。
【0032】
図1ないし図4に示すように、外観を立方体とする筐体は、筐体本体1を構成する6つの外壁4の全てにタッチ入力面2と光源部3を配置している。この筐体は、6つの合同な面の全てにタッチ入力面2と光源部3とを配置することで、優れた対称性を実現でき、使用者の感性をより効果的に刺激できる。ただ、筐体は、必ずしも全ての外壁4にタッチ入力面2と光源部3とを配置する必要はない。例えば、図6に示す直方体形状の筐体200や、図7に示す三角柱状の筐体300においては、長方形の側面のみにタッチ入力面2と光源部3を配置して、両端の底面には配置しない構造とすることもできる。
【0033】
(木目シート5)
図1ないし図4に示す筐体100は、表面を木目調に構成している。この筐体100は、天然の木材に近似する木目模様を印刷してなる木目シート5を表面に積層して木目調の外観としている。この木目シート5は、透光性を有するプラスチックシートの表面に木目の模様を印刷したものである。木目シート5は、光源部3からの出射光を透過可能な厚さとし、具体的には0.1mm?0.5mmが好ましく、さらに好ましくは0.2mm?0.3mmとする。0.1mmより薄い木目シートは、強度が低減されてしまい、意図しない衝撃を受けた際に破断する虞がある。また、厚みが0.5mmを越えると、光の透過性が著しく低減されてしまい点灯パターンの視認性が悪くなると共に、タッチ入力面におけるタッチ操作の感度が低下する虞がある。このため、木目シート5の厚さは前述の半範囲とする。
【0034】
ここで、図1に示す筐体100は、光源部3の非点灯状態を示しており、この状態では、表面に積層された木目シート5が内部を非透過としているため光源部3を認識できない。また、表面に積層された木目シート5により、筐体全体が木目調の外観となっている。この筐体100は、光源部3を点灯させると、図3に示すように、表面の木目シート5を透過して、表面に光が出射され、所望の点灯パターンが表層に浮かび上がる。
【0035】
以上の筐体100は、外観を木目調とするので、木質材の持つ優しさと温もりを使用者に与えることができる。ただ、本発明の筐体は、必ずしも表面を木目調の外観に仕上げる必要はない。この筐体は、例えば、図7に示すように、表面に積層されたタッチ入力面2を表層とし、あるいは、このタッチ入力面の表面に透光性を有する外装シートを積層して表層とすることができる。この筐体300は、光源部が点灯されない状態では、非点灯状態の光源部により暗色の外観となり、光源部が点灯される状態では、光源部による表示パターンがタッチ入力面を透過して外部に表示される。
【0036】
(駆動部10)
筐体本体1に収納される駆動部10は、タッチ入力面2の背面側であって、筐体本体1の外壁4の内面側に配置される光源部3と、この光源部3に電力を供給する電源部12と、タッチ入力面2から出力される情報信号を検出して点灯制御回路11に光源部3の制御信号を出力する検出回路13と、検出回路13から入力される制御信号に基づいて光源部3の点灯状態を制御する点灯制御回路11とを備えている。さらに、図5に示す駆動部10は、タッチ入力面2のタッチ操作に反応して音を出力するための音源17とスピーカー18も備えている。
【0037】
(光源部3)
光源部3は、タッチ入力面2の背面側に配置されて、タッチ入力面2を透過して外部から視認できるように点灯する。図の光源部3は、筐体本体1の内部であって、外壁4の内面に沿って配置されており、外壁4とタッチ入力面2とを透過して外部から視認できるようしている。図2に示す光源部3は、複数の点光源である発光素子31を所定の配列で集合させた面状の発光パネル30で、発光素子31としては放電発光、電界発光など種々の照明光が利用できる。具体的には、発光ダイオード(以下LEDと記載)やレーザーダイオード(LD)などの半導体素子、有機EL、ルミネセンスによる蛍光ランプなどが挙げられる。発光素子31は、使用者の視覚をより効果的に刺激できるように、フルカラー発光可能な素子が使用される。
【0038】
図の例では発光素子31としてLEDを採用している。これにより低電圧、低電流で駆動できるため、消費電力を抑え耐久性、信頼性を向上でき、電力消費量も低減できるため、ランニングコスト削減に加え地球環境にも配慮できる。また高輝度である上、赤・緑・青の3色光を適当な割合で混合すれば、さまざまな色を再現できる。さらに、LEDは堅牢で耐衝撃性に優れる。また、長寿命であるため光源を取り替える手間やコストを低減でき、メンテナンスフリーを実現できる。さらに、発熱量が小さいため周囲の部材への熱的影響が比較的小さい。
【0039】
図2の光源部3は、LEDからなる複数の発光素子31を基板32上にマトリクス状に配列して発光パネル30としている。複数のLEDを複数行複数列のマトリックス状に配列してなる発光パネル30は、表示する点灯パターンの大きさや必要な光量などに応じて使用するLEDの個数が適宜設定される。LEDは電流制御素子であるため、電流量によって発光量を調整できる上、出力のリニアリティにも優れ好ましい。また、LEDとして砲弾型、表面実装型等、種々の形状のLEDを採用できるが、厚さが薄い表面実装型(SMD型)LEDが好ましい。これにより発光パネル30を薄くして、筐体本体1の内部、すなわち、外壁4の内面に沿って省スペースに配置できる。
【0040】
ひとつの発光パネル30に配置するLEDの個数は特に限定されず、LEDの載置個数を増加させれば点灯パターンを構成するドット数が増加するため、出現点灯パターンの輪郭をスムーズに表現できる。一方、載置個数を抑制することで光源による発熱や消費電力を低減できる。なお、外形を正方形とする発光パネルにおいては、一の基板上に行と列に配列されるLEDの数を等しくしてドットマトリクス状に配列し、外形を長方形とする発光パネルにおいては、外形を正方形とする発光パネルの基板を組み合わせて構成し、あるいは、一の基板上に全てのLEDを搭載して、行と列に並べる個数を調整してドットマトリクス状に配列することができる。
【0041】
発光パネル30である光源部3は、筐体本体1の外壁4の内面に沿って配置される。面状の発光パネル30を筐体本体1の内面に配置するために、図4に示す駆動部10は、筐体本体1の内部に収納される基台14を備えている。図に示す基台14は、中空状の筐体本体1の内形に沿う箱形もしくは枠型で、外周面に発光パネル30を固定して定位置に配置している。さらに、図に示す基台14は、中央部に固定プレート15を配置しており、この固定プレート15に点灯制御回路11等を実現する電子部品を実装する回路基板16を固定している。
【0042】
(光拡散層6)
さらに、図4に示す筐体100は、タッチ入力面2と面状の発光パネル30との間に光拡散層6を備えている。図に示す筐体100は、筐体本体1の内部で、外壁4の内面と発光パネル30との間に光拡散層6を設けている。光拡散層6は、発光素子31の指向性を和らげて点灯パターンの視野角を拡大することができる。また、光拡散層6は、視認面における光の通過量が偏在しないよう、すなわち外部に照射される光の通過量を均一化するフィルタの役目を担うことができる。この結果、外部に照射される光のムラを極減できる。さらに、光源部3を複数の点光源からなる発光パネル30とする構造においては、発光素子31のドット感を低減できる特徴もある。図に示す筐体100は、光拡散層6を拡散プレートとし、筐体本体1の外壁の4内面と発光パネル30との間に配置している。拡散プレートは、透過する光を拡散させるように成形してなるプラスチック製のプレートで、透過光を拡散しながら外部に照射する構造としている。ただ、光拡散層には、透過光を拡散させる拡散シートや紙も使用できる。さらに、筐体は、筐体本体の外壁の内面や外面に拡散シートを積層して拡散層とすることもできる。さらにまた、筐体は、筐体本体の外壁を拡散プレートで形成して拡散層とすることもできる。」

「【0048】
(点灯制御回路11)
点灯制御回路11は、タッチ入力面2のタッチ操作に反応して光源部3の点灯状態を制御する。点灯制御回路11は、検出回路13から入力される光源部3の制御信号に基づいて複数の光源部3の点灯状態を制御する。点灯制御回路11は、各光源部3を構成する複数の発光素子31の駆動電流と駆動パターンを制御して、各々の光源部3の点灯状態を制御する。点灯制御回路11は、各発光パネル30を構成する発光素子3の点灯状態を制御して所定の領域を所定の色で点灯し、あるいは、所定の図形や文字等の形状を表示する点灯パターンで点灯させる。点灯制御回路11は、特定の点灯パターンをメモリ(図示せず)に記憶して、検出回路13から入力される制御信号に基づいて、特定のパターンで発光素子31を点灯させることができる。この点灯制御回路11は、例えば、特定の図形や文字等のデータ、また、これ等の点灯色や点灯パターン、点滅等の点灯データをメモリに記憶することができる。点灯制御回路11は、検出回路13から入力される制御信号に基づいて、メモリに記憶された特定の点灯パターンで発光素子31を点灯させることができる。
【0049】
さらに、点灯制御回路11は、タッチ入力面2のタッチ操作に反応して、発光パネル30の点灯パターンや発光色、点滅等の点灯状態を変更することができる。変更される発光パネル30の点灯状態も、点灯制御回路11のメモリ(図示せず)に記憶することができる。この点灯制御回路11は、検出回路13から入力される制御信号に基づいて、メモリに記憶された変更データで発光パネル30の点灯状態を変更させることができる。
【0050】
さらに、点灯制御回路11は、タッチ入力面2でのスワイプ操作入力に反応して、発光パネル30の点灯状態を変化させることができる。点灯制御回路11は、スワイプ操作の移動方向に向かって発光パネル30の点灯状態を変化させることができる。点灯制御回路11は、例えば、タッチ入力面2でのスワイプ操作入力に反応して、発光パネル30の点灯を入力部分からスワイプ操作の方向に向かって移動させることができる。あるいは、点灯制御回路11は、タッチ入力面2でのスワイプ操作入力に反応する発光パネル30の点灯状態の変化を、スワイプ操作の方向に向かって回転するような点灯パターンとすることができる。あるいはまた、点灯制御回路11は、タッチ入力面2でのタッチ操作入力に反応して、タッチ操作された領域を点灯させることができる。以上のように、タッチ入力面2でのスワイプ操作に反応して光源部3の点灯状態を変化させる構成は、多種多様な点灯状態の変化をよりリアルに、しかも速やかに実現できる特徴がある。
【0051】
(音源17、スピーカー18)
さらに、図5に示す筐体100は、タッチ入力面2のタッチ操作に反応して音を発生させる構造としている。図に示す筐体100は、検出回路13から入力される音の制御信号に基づいてスピーカー18から所定の音を出力する。この構造は、使用者の触覚と視覚に加えて聴覚にも刺激を与えて、使用者の感覚をさらに刺激することができる。とくに、タッチ入力面2のタッチ操作に反応して、また、発光パネル30の点灯パターンに対応して、音楽や効果音、言葉、擬音等を出力することで、使用者の感覚をより効果的に刺激できる。」

「【0054】
さらに、本発明の発光機能付き筐体は、通信機能を装備することができる。通信機能を備える筐体は、例えば、図9に示すように、近傍に配置された筐体400同士で相互に情報信号を通信して、互いに同期して、あるいは互いに干渉して、光源部を発光させたり、スピーカーから音を出力することができる。このような通信機能として、赤外線通信やBluetooth(登録商標)等の無線式の通信手段が採用できる。この発光機能付き筐体400は、複数の筐体間で、互いに情報信号を通信するための通信機構を備えている。図8に示す筐体400は、通信機構33として、検出回路13が検出した情報信号を外部に送信する送信機34と、外部から送信される情報信号を受信する受信機35とを備えている。この筐体400は、図9に示すように、複数の筐体400を通信範囲内に配置する状態で、一の筐体400Aを操作して、この筐体400Aから他の筐体400Bに対して送信機34から情報信号を送信する。他の筐体筐体400Bは、受信機35で情報信号を受信すると、該情報信号に従った動作を行う。例えば、他の筐体400Bの発光部を発光させ、あるいはスピーカーから音を出力させることができる。このようにして、複数の筐体を同期して駆動させ、あるいは、互いに干渉して駆動させて、さらに演出を楽しむことができる。」

「【図2】



「【図3】



「【図4】



(2) 甲2発明の認定
前記(1)の記載事項をまとめると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲2発明>
「所望の点灯パターンの光を表層に浮かび上がらせることが可能な発光機能付き筐体であって(【0001】)、
外形を多面体形状とする筐体本体1と、この筐体本体1の外壁4に配置されたタッチ入力面2と、タッチ入力面2の背面側に配置されて、点灯時にはタッチ入力面2を透過して外部から視認可能な光源部3と、タッチ入力面2のタッチ操作に反応して光源部3の点灯状態を制御する点灯制御回路11とを備え(【0025】)、
外壁4には、透光性を有するプラスチック製の平板が使用され(【0027】)、
タッチ入力面2は、薄い板状をしており(【0030】)、
天然の木材に近似する木目模様を印刷してなる木目シート5を表面に積層して木目調の外観としており、この木目シート5は、透光性を有するプラスチックシートの表面に木目の模様を印刷したものであって、光源部3からの出射光を透過可能な厚さとし(【0033】)、
光源部3は、LEDからなる複数の発光素子31を基板32上にマトリクス状に配列して発光パネル30としており(【0039】)、
点灯制御回路11は、発光素子31の点灯状態を制御して所定の図形や文字等の形状を表示する点灯パターンで点灯させ(【0048】)、
タッチ入力面2と面状の発光パネル30との間に光拡散層6を備え、光拡散層6は、発光素子31の指向性を和らげて点灯パターンの視野角を拡大することができるものである(【0042】)、
発光機能付き筐体。」

(3) 甲2構成の認定
前記(1)の記載事項のうち、【0039】、【0048】等の記載から、甲2には、次の技術事項(以下「甲2構成」という。)が記載されていると認められる。

<甲2構成>
「発光機能付き筐体において、光源部3は、LEDからなる複数の発光素子31を基板32上にマトリクス状に配列して発光パネル30としたものであり、発光素子31の点灯状態を制御して所定の図形や文字等の形状を表示する点灯パターンで点灯させること。」

3 甲9及び甲12
(1) 甲9に記載された事項
甲9には、以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、木材の風合いを有する意匠面を備え、車両の内装部品を始めとして、家具や建築材等に使用される立体加飾品に関する。」

「【0018】
これら第一及び第二の立体加飾品11a,11bはいずれも、例えば、インストルメントパネルの本体、グラブボックスのドア、コンソールボックスの蓋部、ステアリングホイールのリム部、アームレストの上面のような自動車の内装材に用いられる。これらの立体加飾品11a,11bでは、立体的な杢目模様に加飾されたフィルム13a,13b側の面(以下、立体加飾品11a,11bの意匠面と記載する)が乗員の視覚に触れる意匠面として機能するように、自動車の車室内に配置される。」

「【0030】
さて、第一の立体加飾品11aは、意匠面に30?200μmの最大高さHmを有する凹凸形状を備えているため、実際に立体的な構造を有している。その結果、視覚的及び触覚的な立体感を与える。さらに、立体加飾品11aの意匠面には、印刷された杢目柄21aが凹凸22に対応するように配置されているため、視覚的な立体感がより一層高められている。よって、この立体加飾品11aは、視覚的及び触覚的に天然の木材の風合いを感じさせる。さらに、第一の立体加飾品11aの意匠面には、凹凸22の尾根部26及び長溝部27に沿って年輪線31が配置されている。このため、年輪線31が凹凸22によって際立って見えるようになるため、立体加飾品11aの意匠面では、視覚的な立体感がより一層高められている。」

「【図1】



(2) 甲12に記載された事項
甲12には、以下の記載がある。

「【0027】
先ず、図1及び図2には、本発明手法に従って製造された加飾樹脂成形品の一例として、自動車用内装部品の一種たる収納ボックスのカバーパネル(蓋体)が、その斜視形態と縦断面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それらの図から明らかなように、カバーパネル10は、その裏面側部分を構成する基材12と、表面側部分を構成する表皮材14とを有し、それらが一体的に積層されてなる一体積層品として構成されている。」

「【0030】
そして、ここでは、特に、図2及び図3に示されるように、表皮材14の表面に、木目調シボ22が、多数形成されている。これら多数の木目調シボ22は、樹脂フィルム16の印刷層20によって表皮材14に付与される木目模様とは別に、様々な長さをもって延びる微細な溝状凹部からなっている。そして、そのような木目調シボ22にあっては、特に、断面形状が、三角形状やU字状、台形状、或いは無定形状等の様々な形状とされていると共に、開口部形状も、別々の木目調シボ22同士の間で、互いに異なる、比較的に複雑な形状とされている。また、かかる木目調シボ22の深さも、別々のもの同士の間で、種々異なる深さとされている。更に、図示されてはいないものの、一つの木目調シボ22においても、浅い部分と深い部分とが存在している。
【0031】
かくして、本実施形態のカバーパネル10にあっては、樹脂フィルム16の印刷層20にて、表皮材14に木目模様が付与されていることに加えて、本木材(天然木)からなる突き板表面に存在する微細な溝状凹部と同様に、様々な長さや深さと各種の複雑な開口部形状や断面形状とを備えた溝状の凹部からなる木目調シボ22が、表皮材14の表面に多数形成されている。これによって、カバーパネル10の表面に、木質感を表現する加飾が、より一層リアルな木質感を表現し得るように施されているのである。
【0032】
また、かかるカバーパネル10においては、多数の木目調シボ22が形成された表皮材14の表面の全面、つまり表皮材14における印刷層18の樹脂フィルム16側とは反対側の全面に、クリヤ塗膜20が、更に積層形成されている。このクリヤ塗膜20は、公知の透明なつや消し塗料が公知の手法により塗布されることで、表皮材14の表面の全面を被覆して、平滑な表面を有するように形成されているのである。これによって、カバーパネル10の表面の触感が、樹脂の硬質な感じではなく、木の柔らかな感じとされ得ており、また、カバーパネル10表面の耐候性や耐衝撃性が高められて、かかるカバーパネル10の表面に疵が付き難くなっている。なお、例えば、かかるクリヤ塗膜20の厚さを、より薄肉とすること等により、クリヤ塗膜20の表面にも、多数の木目調シボ22にそれぞれ対応した微細な溝状凹部を設けることも出来る。それによって、更に一層本木に近い触感が得られることとなる。」

「【図1】



(3) 周知技術1の認定
前記(1)及び(2)より、甲9及び甲12に記載された次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術1」という。)。

<周知技術1>
「基材の表面に木目模様が印刷されたフィルムを設け、木目の外観を備えさせた化飾品において、表面に木のような触感を備えさせること。」

4 甲18及び甲22
(1) 甲18に記載された事項
甲18には、以下の記載がある。

「【0042】
図6から図8を参照すると、本発明の一実施形態によるタッチパネル20は、透明なベースフィルム21と、表示パネル10に面するベースフィルム21の一方の面に形成される感知電極部22と、を備える。ベースフィルム21は、ポリイミドなどの高分子フィルムによって形成されてもよく、タッチパネル20に可撓性を与える。」

「【0045】
本発明の一実施形態によれば、感知電極部22は、透明導電膜によって形成される。透明導電膜は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(indiumzinc oxide;IZO)、インジウム酸化物(In_(2)O_(3))および亜鉛酸化物(ZnO)よりなる群から選択される少なくともいずれか一種を含んでもよい。」

「【図8】



(2) 甲22に記載された事項
甲22には、以下の記載がある。

「【0019】
図1は本発明に係る静電容量式タッチパネルの構成の一実施例を示す斜視概略図、図2は図1の静電容量式タッチパネルにおけるAA断面を示す分解断面図である。これらの図において、静電容量式タッチパネル6は、第1の次元に定位された透明な第1の複数のセンサトレース1と、前記第1の次元に垂直である第2の次元に定位された透明な第2の複数のセンサトレース2と、前記第1の複数のセンサトレース1を前記第2の複数のセンサトレース2と分離する透明な絶縁材料3とを備えた2次元容量センサが2列2行で4個近接して並列配置されてなるものであって、前記各2次元容量センサ6a,6b,6c、6dが一層の透明な絶縁材料3を共用しその領域を分け合っているように構成されている。また、前記センサトレース1は透明で電気的に絶縁された基板4の底面に設けられ、一方、前記センサトレース2は透明で電気的に絶縁された基板5の前に設けられ、両者は接着性の絶縁材料3にて貼り合わせられている。」

「【0024】
各センサトレース1,2の材質は、酸化スズ、酸化インジウム、インジウム・スズ酸化物、酸化亜鉛などの透明な導体材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。各センサトレース1,2のパターン形成方法は、真空蒸着やスッパタリングにより透明な導体で均等に膜形成の後に不要部分をエッチング除去する方法のほか、透明導電材をインキ化して印刷方法により形成する方法がある。」

「【図2】



(3) 周知技術2の認定
前記(1)及び(2)より、甲18及び甲22に記載された次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術2」という。)。

<周知技術2>
「タッチパネルが、透明な絶縁層と透明な導電層を有すること。」


第5 当審の判断
1 申立理由1について
(1) 申立理由1-1(1)(「自然の外観と手触りを模倣して生成された」)について
ア 申立人の主張
申立理由1-1(1)の、より具体的な主張は、次のとおりである(特許異議申立書44頁23行?45頁17行参照)。

「自然の外観と手触りを模倣して生成された」との記載から、「自然の外観と手触りを模倣して生成された」素材を用いることによって、自然な手触り感を実現することができると述べられていることは理解できるものの、実施例10で用いられた樹脂2eが具体的にどのようなものであるか、例えば、どのような外観と手触りを有するものがこれに相当するのか、自然の外観と手触りがどの程度再現されているか等、「模倣して生成された」に該当するか否かを判断する基準は不明というほかない。特に、「模倣」という言葉は「自分で創り出すのではなく、すでにあるものをまねならうこと」(甲第3号証・広辞苑第7版)という、模倣者の主観的な行為を意味するため、「模倣して生成された」という生成者の主観に関わるプロセス、それによって作られた薄膜が具体的にどれだけ自然の外観と手触りに近いかという客観的な構成は、必ずしも明確に対応するものではない。
その結果、「自然の外観と手触りを模倣して生成する」というプロセスと、本件発明に規定する「樹脂から成る薄層」の客観的な構造との対応関係が不明という他なく、第三者において具体的にどのような薄層であれば、「自然の外観と手触りを模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層」に該当するか、判別のしようもなく、また、敢えてそのような曖昧な表現を用いずに発明を規定することが不可能ないし非実際的事情と言えるような事情は何ら存在しない。その他、本件明細書の何処を見ても、「自然の外観と手触りを模倣して生成された」という用語に関する定義の記載はなく、また、技術常識からもその明確な定義はないのであるから、その権利の外延が明確であるとは到底認められない。

イ 判断
本件特許明細書には、以下の記載がある。

「【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決すべく、本発明の操作表示パネル組込物品は、自然由来の木材、天然繊維、天然皮革もしくは天然石材、又は、自然の外観と手触りを模倣して生成された素材である樹脂、合成繊維、合成皮革もしくは人工石から成る薄層が、筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル前面全体を少なくとも被覆しパネル前面に当接するように、筐体の外周面に配設され、薄層の厚さとパネルの輝度が、該パネルに表示されたコンテンツを視認できるように設計された構成とされる。
自然由来の素材又は自然の外観と手触りを模倣して生成された素材を用いることによって、自然な手触り感を実現することができる。したがって、自然の外観や、自然な手触り感を実現するものであれば、薄層の材料として樹脂などの高分子材料を用いることもできる。樹脂は成形が容易であるため、3次元的に複雑な形状の薄層を作製できるという利点がある。ここで、高分子材料とは分子量が大きい材料を示し、モノマーを重合させて得られるポリマーや、天然高分子などの分子量の大きい化合物をいう。また、静電容量式タッチパネルにおいて樹脂を用いる場合には、比誘電率が高く絶縁性の樹脂が用いられることが好ましい。」

上記記載を参酌すると、本件特許明細書において、「自然由来の素材」とは「木材、天然繊維、天然皮革もしくは天然石材」として例示されるものであるところ、「自然の外観と手触りを模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層」とは、「樹脂から成る薄層」であって、そのような「自然由来の素材」に外観及び手触りが類似しているものを意味すると認められる。
「樹脂から成る薄層」の外観及び手触りが「自然由来の素材」に類似しているか否かは、薄層を見て触ってみれば明確に判別できるものである。また、「樹脂から成る薄層」は、表面に何らかの加工を施さない限り、外観及び手触りが「自然由来の素材」に類似することはないから、外観及び手触りが「自然由来の素材」に類似する「樹脂から成る薄層」があれば、それは当然、「自然の外観と手触りを模倣して生成された」ものであるといえる。
よって、「樹脂から成る薄層」が「自然の外観と手触りを模倣して生成された」ものであることを限定する請求項1、15及び16の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすものではなく、明確である。
さらに、「自然の外観と手触りを模倣して生成された」という記載は、「自然由来の素材」に外観及び手触りが類似しているという状態を示すことにより、「樹脂から成る薄層」という物の構造又は特性を特定しているにすぎないから、請求項1、15及び16はプロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当しない(特許・実用新案 審査ハンドブック 2204「物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合」に該当するか否かについての判断 類型(2)参照)。
以上検討のとおり、申立人の主張は採用することができず、「自然の外観と手触りを模倣して生成された」という記載は明確であるから、申立理由1-1(1)は、理由がない。

(2) 申立理由1-1(2)(「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」)について
ア 申立人の主張
申立理由1-1(2)の、より具体的な主張は、次のとおりである(特許異議申立書48頁5行?50頁3行参照)。

「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」について、どのような態様まで包含され得るのか、本件明細書の記載をもっても不明確と言わざるを得ない。具体的には、「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」という構成について、ディスプレイのバックライトの2つのタイプとして「エッジ型」及び「直下型」があるところ(甲第4号証・・・(省略)・・・)、本件明細書の【図1】、【図2】、【図4】?【図6】に開示された構成態様はこのうち「直下型」に相当すると考えられる。従って、本件発明においては主に直下型を想定しており、本件発明において規定されている「2次元配列された発光素子アレイ」とは、典型的には、上記【図1】や下左図に開示されているように、縦方向横方向それぞれに略等間隔で発光素子が規則的に並んでいるような態様を想定しているものと考えられる。
しかしながら、本件発明においては、上記のような「エッジ型」及び「直下型」のような識別は行っておらず、本件明細書では、単にそのような好ましい態様を記載するのみであって、本件明細書の何処を見ても、「2次元配列された」という用語が具体的にどのような配列を意味するのか、その解釈の手掛かりとなる記載は存在しない。従って、上左図のような典型的な上下左右等間隔の配列以外に、具体的に発光素子がどのような法則で並んでいるものが、本件発明にいうところの「2次元配列された」に該当するのか不明という他なく、特に上右図のような画面の左右又は上下にLEDを配置したエッジ型が、ここでいうところの「2次元配列された」に該当するか判別のしようもない。従って、本件発明において規定されている「2次元配列された発光素子アレイ」という規定は、発光素子が具体的にどのように配置されている場合を指すのか不明であり、この点において第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるという他ない。

イ 判断
「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」とは、その記載のとおり、複数の発光素子が2次元状に配列されたものであることは明らかであって、申立人が例示する「エッジ型」であろうと、「直下型」であろうと、その他のタイプであろうと、複数の発光素子の配列が2次元状であれば「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」であり、そうでなければ「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」ではないことは、明確に判別できるものである。
したがって、申立人の主張は採用することができず、「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」という記載は明確であるから、申立理由1-1(2)は、理由がない。

(3) 申立理由1-1(3)(「ライトガイド」)について
ア 申立人の主張
申立理由1-1(3)の、より具体的な主張は、次のとおりである(特許異議申立書50頁4行?51頁24行参照)。

「発光素子の光の射出方向を導くライトガイド」が、どのような態様まで包含され得るのか、本件明細書をもっても不明確と言わざるを得ない。具体的には、「発光素子の光の射出方向を導くライトガイド」という構成は、・・・(省略)・・・となっている。しかしながら、そういった構成は、特許請求の範囲においては、請求項5,6(本件発明5,6)として規定されており、その上位クレームである本件発明1等はこれに限られないと考えられること、さらに段落【0021】、【0022】において「好ましい」と記載されているにすぎないことを考慮すれば、本件発明に規定するライトガイドはこれらの態様に限られるものではないことが読み取れる。
その結果、本件発明に規定する「ライトガイド」の定義としては、せいぜい本件発明1に規定の「発光素子の光の射出方向を導く」という規定しか存在しないことになる。そのため、不透明の暗色基材のような光吸収性部材で貫通孔を有するものであれば、貫通孔が円筒形でない場合や、貫通孔の数や、いわゆるアスペクト比がこれとは大きく異なる場合、特に、発光素子アレイと1:1に対応していないような場合(例えば、1つの貫通孔が複数の発光素子アレイを包含しているような場合)も含まれ得ることになる。
その上、本件発明においては、ライトガイドを含む発光素子アレイの基板に積層される層構成に関しても特定されておらず、また段落【0044】において「ライトガイド5とLED光源7の間にも、ギャップG_(2)が設けられている」発光素子アレイの基板より上に存在し、かつ光吸収性の部分と貫通孔と言いうる部分を有する層であれば、何でも「ライトガイド」に該当し得ることになる。従って、「ライトガイド」の不明確性による影響は極めて甚大であり、第三者への抑止効果は極めて大きいと言える。
また、段落【0021】の「貫通孔が設けられていることが好ましい」という記載ぶりからも明らかなとおり、「ライトガイド」において貫通孔を有することすらもその定義とされていないのであるから、例えば、「光拡散層を配置し、光を拡散することにより射出方向を導く構成」(甲第2号証(特開2015-118398)の段落【0042】等)や、「(孔ではなく)光を吸収する部材を配置し、光を吸収することにより光の射出方向を調整する構成」(後述する甲第1号証(特開2010-120487号)の電極パターン(28)はこの構成に該当し得る)や、「ブラックマトリクスを液晶ディスプレイのガラス基板上に配置する構成」のように、本件明細書に全く記載されていないような構成のものも、ここでの「ライトガイド」に含まれ得ることになる。
しかしながら、本件明細書では「ライトガイド」の好ましい態様を記載するのみであって、その明確な定義がされておらず、また、技術常識からも、具体的にどのようなものが「ライトガイド」に当たるのか判別のしようがない。従って、具体的にどのような暗色基材を発光素子アレイの基板上のどの位置に積層すれば「ライトガイド」を用いたことになるのか、当業者といえども一義的かつ明確に理解することができない。

イ 判断
「ライトガイド」とは、光学分野の技術常識から、光源からの光を所望の方向へ導く部材であることは明らかであって、「発光素子の光の射出方向を導くライトガイド」とは、その記載のとおり、発光素子アレイを構成する発光素子からの光の方向を薄層に到達するように導くものであることは明らかである。
そうすると、ある部材が本件発明の「ライトガイド」に含まれるか否かは、発光素子アレイを構成する発光素子からの光の方向を薄層に到達するように導くものであるか否かを基準として、明確に判別できるものである。
したがって、申立人の主張は採用することができず、「ライトガイド」という用語は明確であるから、申立て理由1-1(3)は、理由がない。

(4) 申立理由1-2(「アスペクト比」)について
ア 申立人の主張
申立理由1-2の、より具体的な主張は、次のとおりである(特許異議申立書52頁15行?53頁1行参照)。

本件発明におけるライトガイドの貫通孔は、典型的には円筒形を想定していると考えられ、そうであるとすれば、このアスペクト比は底面の直径と高さとの比ということで、特に不明確な点は存在しないと考えられる。しかしながら、本件発明6においては貫通孔の形状を何ら規定していないのであるから、底面の形状について、例えば矩形などの多角形状のものや、そのような形では表現できない歪な形状のもの含まれることとなる。そのような場合、そういった形状の貫通孔のどの部分を横径として採用すればよいか不明であり、技術常識からもそのことが明らかとは認められない。したがって、貫通孔が円筒形以外のライトガイドを用いた場合において、本件発明6の「アスペクト比は0.5?3.0」該当するか否かを判断することが不可能というほかない。

イ 判断
円筒形の貫通孔の「アスペクト比」は、申立人の主張するとおり、底面の直径と高さの比であることは明らかであるところ、底面の形状が厳密な円形ではなくとも、当該底面と同じ面積を有する円の直径と高さの比を「アスペクト比」と定義できることは、明らかである。
したがって、申立人の主張は採用することができず、「アスペクト比」という用語は明確であるから、申立理由1-2は、理由がない。

(5) 申立理由1-3(「ギャップ」)について
ア 申立人の主張
申立理由1-3の、より具体的な主張は、次のとおりである(特許異議申立書54頁11行?55頁2行参照)。

「ギャップ」について、段落【0023】には用語の定義はなく、段落【0043】及び【図2】においては、ライトガイドとタッチパネルシートとが密着せず間隙が設けられた態様が開示されている。然るところ、例えば、ライトガイドとタッチパネルシートとの間に、粘着層を備えることによって、これらが密着していない態様の構成をとることも考えられるところ、この態様が本件発明における「ギャップ」に該当するのか否か、本件明細書のいかなる記載をもっても不明確と言わざるを得ない。
その結果、第三者においてどのような態様であれば本件発明の「ギャップ」に該当するか理解できず、不当に過度な抑止効果を生むことになり、第三者に不測の不利益を及ぼすことは明らかといえる。

イ 判断
本件特許明細書には、以下の記載がある。

「【0043】
・・・(省略)・・・
突板2と透明基材3、又は、透明基材3とタッチパネルシート4は、間隙を設けることなく、貼り合わされている。これに対して、タッチパネルシート4とライトガイド5の間には、ギャップG_(1)が設けられている。これは、ライトガイド5にはガイド孔5aが設けられているため、タッチパネルシート4とライトガイド5を接着すると、タッチパネルを操作した際に、応力にばらつきが生じ、誤作動の原因となるためである。」

上記によると、本件特許明細書において、「ギャップG_(1)」は、「タッチパネルシート4」に「ライトガイド5」から応力が伝わりにくいようにするために空けた間隔であるから、本件発明7における「ギャップ」も、「透明導電性シート」に「ライトガイド」から応力が伝わりにくいように間隔が空けられていればよいのであって、その間隔が何で満たされているか問わないことは明らかである。
以上検討のとおり、申立人の主張は採用することができず、「ギャップ」の意味は明確であるから、申立理由1-3は、理由がない。

(6) まとめ
以上検討のとおり、請求項1、15及び16の「自然の外観と手触りを模倣して生成された」、「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」、「ライトガイド」という記載、請求項6の「アスペクト比」という記載、請求項7の「ギャップ」という記載は、いずれも明確であり、申立理由1-1(1)?申立理由1-3はいずれも理由がなく、請求項1?19に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

2 申立理由2について
(1) 申立理由2-1(1)(「自然の外観と手触りを模倣して生成された」)について
前記1(1)で検討したとおり、請求項1、15及び16の「自然の外観と手触りを模倣して生成された」という記載は明確であり、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明1?19を実施することができることは明らかであるから、申立理由2-1(1)は、理由がない。

(2) 申立理由2-1(2)(「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」)について
前記1(2)で検討したとおり、請求項1、15及び16の「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」という記載は明確であり、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明1?19を実施することができることは明らかであるから、申立理由2-1(2)は、理由がない。

(3) 申立理由2-1(3)(「ライトガイド」)について
前記1(3)で検討したとおり、請求項1、15及び16の「ライトガイド」という用語は明確であり、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明1?19を実施することができることは明らかであるから、申立理由2-1(3)は、理由がない。

(4) 申立理由2-2(「アスペクト比」)について
前記1(4)で検討したとおり、請求項6の「アスペクト比」という用語は明確であり、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明6?14、17?19を実施することができることは明らかであるから、申立理由2-2は、理由がない。

(5) 申立理由2-3(「ギャップ」)について
前記1(5)で検討したとおり、請求項7の「ギャップ」という用語は明確であり、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件発明7、9?14、17?19を実施することができることは明らかであるから、申立理由2-3は、理由がない。

(6) まとめ
以上検討のとおり、申立理由2-1(1)?申立理由2-3はいずれも理由がなく、請求項1?19に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

3 申立理由3について
ア 申立人の主張
申立人は、「本件発明の課題は、空間に自然に調和してユーザにとって視覚的ノイズとならず、かつ、ユーザが使用したいと思ったときや必要な時には、自然素材の手触りを感じながら直感的に操作可能な、操作表示パネルが組み込まれた物品を提供すること」(段落【0013】)であるところ、操作表示パネルに表示されるコンテンツが、視覚的ノイズを適切に遮断して良好な視認性を有することも、本件発明の課題の一つに当然含まれているといえる。」と主張したうえで(特許異議申立書57頁4?9行)、更に次のとおり主張している。

(特許異議申立書61頁8?21行)
「本件発明に規定する『ライトガイド』の定義では、不透明の暗色基材で貫通孔を有するものであれば、貫通孔が円筒形でない場合や、貫通孔と発光素子アレイとが形状及び配置に関して1:1に対応していないような場合(例えば、1つの貫通孔が複数の発光素子アレイを包含しているような場合)も含まれ得ることになる。その結果、本件発明は、その技術的課題を解決し得ない態様を多分にその権利範囲に含んでいることが明らかであるから、本件発明がサポート要件を充足しないことは明らかと言える。また、仮に貫通孔と発光素子アレイとが形状及び配置に関して1:1に対応していたとしても、貫通孔のアスペクト比が小さすぎる場合には、ノイズとなる斜めの光を吸収できずにライトガイドが実質的に意味を持たないことになり、またこれが大きすぎる場合には、光が吸収され過ぎて却って視認性が下がることが当然に予想される。従って、アスペクト比を適切に保つことも本件発明に課題解決において不可欠な解決手段であり、そのような規定のない点においても、本件発明がサポート要件を充足しないことは明らかと言える。」

イ 判断
本件発明の課題は、本件特許明細書の【0013】に記載されているとおり、「空間に自然に調和してユーザにとって視覚的ノイズとならず、かつ、ユーザが使用したいと思ったときや必要な時には、自然素材の手触りを感じながら直感的に操作可能な、操作表示パネルが組み込まれた物品を提供すること」である。
そして、本件発明1、15及び16は、請求項1、15及び16に記載されているとおり、「自然の外観と手触りを模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層」によって「筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル前面全体を少なくとも被覆」することで課題を解決したものであると認められる。
申立人の主張は、「操作表示パネルに表示されるコンテンツが、視覚的ノイズを適切に遮断して良好な視認性を有すること」という本件特許明細書に記載されていない課題を独自に設定したうえで、本件発明に規定する「ライトガイド」の定義では、本件発明が当該課題を解決し得ない態様を多分にその権利範囲に含んでいるというものであり、その主張は、発明の課題の設定に誤りがあるから、採用することはできない。
したがって、申立理由3は理由がなく、請求項1?19に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

4 申立理由4-1及び4-2について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。

(ア) 甲1発明の「車室内スイッチ装置」は、「加飾パネル22」に「図柄30」を浮かび上がらせてユーザに視認させ、ユーザが指を触れて指示して操作できるようにしたものである。よって、本件発明1と甲1発明は、「操作表示パネル組込物品」である点で一致する。

(イ)a 甲1発明の「車室内スイッチ装置」のうち、「加飾パネル22」を除いた部分は、タッチセンサのセンサ部を構成する部品である「電極基板32」と操作表示26を作り出す「マスク層24」を備えるものであるから、本件発明1における「タッチセンサ付き表示パネル」に相当する構成を甲1発明が有していることは明らかである。そして、この部分は「乗用車の前席ドアに設けられ」るものであるから、本件発明1の「筐体」に相当する構成を甲1発明が有しており、上記「タッチセンサ付き表示パネル」に相当する構成がその外周面に組み込まれていることは明らかである。したがって、甲1発明が本件発明1の「筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル」に相当する構成を有していることは明らかである。

b 甲1発明の「加飾パネル22」は、「透光性基材に装飾性の模様を印刷したフィルムを貼付して構成され」たものであって、「透光性基材は、プラスチック材料を成形したものであり、フィルムは木目模様を印刷した透光性のプラスチックフィルム」である。ここで、「木目模様」は、自然物ではないプラスチックフィルムに自然物である木の模様を印刷したものであるから、「自然の外観」を「模倣して生成された」ものであり、「プラスチック材料」は「樹脂」である。よって、甲1発明の「加飾パネル22」は、本件発明1の「自然の外観」「を模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層」に相当する。

c 甲1発明の「加飾パネル22」は、「車室内スイッチ装置」の車室内側の表面を構成するものであって、「マスク層24を覆い、マスク層24に当接」するものである。このことは、本件発明1において、「薄層が、筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル前面全体を少なくとも被覆し前記パネル前面に当接するように、筐体の外周面に配設され」ることに相当する。

d 前記a?cの検討結果をまとめると、本件発明1と甲1発明は、「自然の外観」「を模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層が、筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル前面全体を少なくとも被覆し前記パネル前面に当接するように、筐体の外周面に配設され」ている点で共通する。

(ウ) 甲1発明は、「LED48」からの光が、「ホルダ36の光通路40」を通って「マスク層24」に照射され、「操作表示26」を「加飾パネル22」に浮かび上がらせて「図柄30」としてユーザが視認するものである。よって、本件発明1と甲1発明は、「前記薄層の厚さと前記パネルの輝度」が、パネルに表示されたものをユーザが「視認できるように設計され」ている点で共通する。

(エ)a 甲1発明の「マスク層24」は、「透明なプラスチックフィルムからなるベースシート」により形成されたものであるから、本件発明1の「透明基材」に相当する。

b 甲1発明の「電極基板32」は、「透明フィルム」に「透明電極材料」を所定のパターンに形成したものであるから、本件発明1の「透明導電性シート」に相当する。

c 甲1発明の「制御基板46」は、複数の「LED48」が配置されたものであるから、本件発明1の「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」に相当する。

d 甲1発明の「ホルダ36」は、「LED48」からの光を「光通路40」を通って「マスク層24」及び「加飾パネル22」に到達するように導く機能を有するものであるから、本件発明1の「発光素子の光の射出方向を導くライトガイド」に相当する。

e 前記a?dの検討結果をまとめると、本件発明1と甲1発明は、「前記パネルは、透明基材と、透明導電性シートと、発光素子が2次元配列された発光素子アレイと、発光素子の光の射出方向を導くライトガイド、を少なくとも備える」点で一致する。

(オ) 以上の対比の結果をまとめると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「自然の外観を模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層が、筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル前面全体を少なくとも被覆し前記パネル前面に当接するように、筐体の外周面に配設され、
前記薄層の厚さと前記パネルの輝度が、該パネルに表示されたものを視認できるように設計され、
前記パネルは、透明基材と、透明導電性シートと、発光素子が2次元配列された発光素子アレイと、発光素子の光の射出方向を導くライトガイド、を少なくとも備える操作表示パネル組込物品。」

<相違点1>
本件発明1は、「薄層」が「自然の外観と手触りを模倣して生成された」ものであるのに対して、甲1発明の「加飾パネル22」は、自然の外観を模倣して生成されたものであるものの、自然の手触りをも模倣して生成されたものではない点。

<相違点2>
本件発明1は、「パネルに表示されたコンテンツを視認できる」ものであるのに対して、甲1発明は、「図柄30」を視認できるものである点。

イ 判断
(ア) 相違点1について
前記第4の3(3)において周知技術1として認定したとおり、「基材の表面に木目模様が印刷されたフィルムを設け、木目の外観を備えさせた化飾品において、表面に木のような触感を備えさせること」は周知の技術である。
そして、甲1発明は、「加飾パネル22」を指で触れて操作を行うものであるから、木目の外観だけでなく木のような触感をユーザに与えるために、周知技術1を採用する動機を当業者は有していたというべきである。
よって、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明と周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(イ) 相違点2について
甲1発明における「図柄30」とは、「LED48」から照射され「マスク層24」の遮光層で遮られずに透過した光が、パターン化された「操作表示26」として「加飾パネル22」に浮かび上がるものであって、「LED48」のオン・オフに応じて表示・非表示を切り換えることができるにすぎず、「マスク層24」を交換しない限りその表示内容を変えることができないものである。
よって、例えば歩行者用信号に表示された「人」の形の記号が「コンテンツ」ではないと同様に、甲1発明における「図柄30」も本件発明1における「コンテンツ」に相当するとはいえず、相違点2は実質的な相違点である。
そして、甲1発明は、「マスク層の交換のみでスイッチ装置の操作表示である図柄の配置変更を行う」ことを課題とした発明であるから(甲1の【0007】)、「マスク層24」による「図柄30」がスイッチの機能と関連する図柄であることは発明の課題の解決に必要不可欠な大前提であり、関連づけられたスイッチと関係のないコンテンツを表示するように変更することは考えられないことであって、このような変更への動機を当業者は有しないことは明らかである。
したがって、甲1発明に対して甲2構成(前記第4の2(3))を適用し、「LED48」の点灯状態を制御して所定の図形や文字等の形状を表示する点灯パターンで点灯させ、「コンテンツ」を表示させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
また、甲5?22の記載を検討しても、上記と同様の理由により、甲1発明における「マスク層24」による「図柄30」の表示を変更して「コンテンツ」を表示させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。

(ウ) 小括
以上検討のとおり、相違点2は、本件発明1と甲1発明の実質的な相違点であり、相違点2に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明1は、甲1発明との間に実質的な相違点が存在し、甲1発明、甲2に記載の技術及び甲5?22に記載の周知技術に基づいて容易に想到できたものではない。

(2) 本件発明15及び16について
本件発明15及び16は、本件発明1と同様に、「パネルに表示されたコンテンツを視認できる」という構成を備えた「操作表示パネル組込物品」である。
よって、本件発明15及び16と甲1発明との間には、前記相違点2と同じ相違点が存在し、前記(1)イ(イ)で検討したのと同様の理由により、当該相違点は実質的な相違点であり、当該相違点に係る本件発明15及び16の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明15及び16は、甲1発明との間に実質的な相違点が存在し、甲1発明、甲2に記載の技術及び甲5?22に記載の周知技術に基づいて容易に想到できたものではない。

(3) 本件発明2?14及び17?19について
本件発明2?14及び17?19は、本件発明1、15又は16が備える構成を全て備えるものであるから、本件発明1、15又は16と同様の理由により、甲1発明との間に実質的な相違点が存在し、甲1発明、甲2に記載の技術及び甲5?22に記載の周知技術に基づいて容易に想到できたものではない。

(4) まとめ
以上検討のとおり、本件発明1?19は、甲1発明との間に実質的な相違点が存在し、甲1発明、甲2に記載の技術及び甲5?22に記載の周知技術に基づいて容易に想到できたものではない。
したがって、申立理由4-1及び4-2は理由がないから、請求項1?19に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものではなく、特許法29条2項の規定に違反してされたものでもない。

5 申立理由5-1及び5-2について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明を対比する。

(ア) 甲2発明の「発光機能付き筐体」は、「所望の点灯パターンの光を表層に浮かび上がらせることが可能」であって、「タッチ入力面2のタッチ操作」が可能である。よって、本件発明1と甲2発明は、「操作表示パネル組込物品」である点で一致する。

(イ)a 甲2発明の「タッチ入力面2」、「光拡散層6」及び「発光パネル30」は、「筐体本体1の外壁4」を挟んで設けられたものであるから、本件発明1の「筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル」に相当する。

b 甲2発明の「木目シート5」は、「透光性を有するプラスチックシートの表面に木目の模様を印刷したもの」である。ここで、「木目の模様」は、自然物ではないプラスチックシートに自然物である木の模様を印刷したものであるから、「自然の外観」を「模倣して生成された」ものであり、「プラスチックシート」は「樹脂」である。よって、甲2発明の「木目シート5」は、本件発明1の「自然の外観」「を模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層」に相当する。

c 甲2発明の「木目シート5」は、筐体の「表面に積層」したものである。このことは、本件発明1において、「薄層が、筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル前面全体を少なくとも被覆し前記パネル前面に当接するように、筐体の外周面に配設され」ることに相当する。

d 前記a?cの検討結果をまとめると、本件発明1と甲2発明は、「自然の外観」「を模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層が、筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル前面全体を少なくとも被覆し前記パネル前面に当接するように、筐体の外周面に配設され」ている点で共通する。

(ウ) 甲2発明は、「木目シート5」が「光源部3からの出射光を透過可能な厚さ」であって、「点灯制御回路11は、発光素子31の点灯状態を制御して所定の図形や文字等の形状を表示する点灯パターンで点灯させ」るものである。ここで、「所定の図形や文字等」は、「点灯パターン」を変更することにより様々なものとすることが可能であるから、本件発明1における「コンテンツ」に相当するから、本件発明1と甲2発明は、「前記薄層の厚さと前記パネルの輝度が、該パネルに表示されたコンテンツを視認できるように設計され」た点で一致する。

(エ)a 甲2発明の「タッチ入力面2」は、「薄い板状」であって、「光源部3」の光を透過するものである。よって、本件発明1の「透明基材」及び「透明導電性シート」と甲2発明の「タッチ入力面2」は、「透明」な「シート」である点で共通する。

b 甲2発明の「発光パネル30」は、「LEDからなる複数の発光素子31を基板32上にマトリクス状に配列」したものであるから、本件発明1の「発光素子が2次元配列された発光素子アレイ」に相当する。

c 前記a及びbの検討結果をまとめると、本件発明1と甲2発明は、「前記パネルは、透明なシートと、発光素子が2次元配列された発光素子アレイと、を少なくとも備える」点で共通する。

(オ) 以上の対比の結果をまとめると、本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「自然の外観を模倣して生成された素材である樹脂から成る薄層が、筐体の外周面に組込まれたタッチセンサ付き表示パネル前面全体を少なくとも被覆し前記パネル前面に当接するように、筐体の外周面に配設され、
前記薄層の厚さと前記パネルの輝度が、該パネルに表示されたコンテンツを視認できるように設計され、
前記パネルは、透明なシートと、発光素子が2次元配列された発光素子アレイと、を少なくとも備える操作表示パネル組込物品。」

<相違点3>
本件発明1は、「薄層」が「自然の外観と手触りを模倣して生成された」ものであるのに対して、甲2発明の「木目シート5」は、自然の外観を模倣して生成されたものであるものの、自然の手触りをも模倣して生成されたものではない点。

<相違点4>
本件発明1は、「パネル」が「透明基材」と「透明導電性シート」を備えるのに対して、甲2発明が備える「タッチ入力面2」は透明なシートであるものの、「透明基材」と「透明導電性シート」からなるものではない点。

<相違点5>
本件発明1は、「パネル」が「発光素子の光の射出方向を導くライトガイド」を備えるのに対して、甲2発明は、「タッチ入力面2と面状の発光パネル30との間に光拡散層6を備え」るものの、「発光素子の光の射出方向を導くライトガイド」を備えない点。

イ 判断
(ア) 相違点3について
前記第4の3(3)において周知技術1として認定したとおり、「基材の表面に木目模様が印刷されたフィルムを設け、木目の外観を備えさせた化飾品において、表面に木のような触感を備えさせること。」は周知の技術である。
そして、甲2発明は、「木目シート5」越しに「タッチ入力面2」を指で触れて操作を行うものであるから、木目の外観だけでなく木のような触感をユーザに与えるために、周知技術1を採用する動機を当業者は有していたというべきである。
よって、相違点3に係る本件発明1の構成は、甲2発明と周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(イ) 相違点4について
前記第4の4(3)において周知技術2として認定したとおり、「タッチパネルが、透明な絶縁層と透明な導電層を有すること。」は周知の技術である。
そして、甲2発明の「タッチ入力面2」は透明である必要があるから、周知技術2を採用する動機を当業者は有していたというべきである。
よって、相違点4に係る本件発明1の構成は、甲2発明と周知技術2に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(ウ) 相違点5について
甲2発明における「光拡散層6」は、光を拡散することで「発光素子31の指向性を和らげて点灯パターンの視野角を拡大する」ものであって、光を波動光学的に伝播させたり、幾何光学的に伝送したりして光を導く「ライトガイド」とは、光に対する作用が異なり、概念が異なるものである。したがって、甲2発明における「光拡散層6」は、本件発明1における「発光素子の光の射出方向を導くライトガイド」に相当するとはいえず、相違点5は実質的な相違点である。
そして、上記のとおり、「光拡散層」と「ライトガイド」とは、光に対する作用が異なるものであるから、甲2発明における「光拡散層6」を「ライトガイド」に変更することは当業者には思いもよらないことであるというべきである。
したがって、甲2発明に対して甲1構成(前記第4の1(3))を適用し、「発光素子の光の射出方向を導くライトガイド」を設けるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
また、甲5?22の記載を検討しても、上記と同様の理由により、甲2発明において、「発光素子の光の射出方向を導くライトガイド」を設けるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。

(エ) 小括
以上検討のとおり、相違点5は、本件発明1と甲2発明の実質的な相違点であり、相違点5に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明1は、甲2発明との間に実質的な相違点が存在し、甲2発明、甲1に記載の技術及び甲5?22に記載の周知技術に基づいて容易に想到できたものではない。

(2) 本件発明15及び16について
本件発明15及び16は、本件発明1と同様に、「発光素子の光の射出方向を導くライトガイド」を備えた「操作表示パネル組込物品」である。
よって、本件発明15及び16と甲2発明との間には、前記相違点5と同じ相違点が存在し、前記(1)イ(ウ)で検討したのと同様の理由により、当該相違点は実質的な相違点であり、当該相違点に係る本件発明15及び16の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明15及び16は、甲2発明との間に実質的な相違点が存在し、甲2発明、甲1に記載の技術及び甲5?22に記載の周知技術に基づいて容易に想到できたものではない。

(3) 本件発明2?14及び17?19について
本件発明2?14及び17?19は、本件発明1、15又は16が備える構成を全て備えるものであるから、本件発明1、15又は16と同様の理由により、甲2発明との間に実質的な相違点が存在し、甲2発明、甲1に記載の技術及び甲5?22に記載の周知技術に基づいて容易に想到できたものではない。

(4) まとめ
以上検討のとおり、本件発明1?19は、甲2発明との間に実質的な相違点が存在し、甲2発明、甲1に記載の技術及び甲5?22に記載の周知技術に基づいて容易に想到できたものではない。
したがって、申立理由5-1及び5-2は理由がないから、請求項1?19に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものではなく、特許法29条2項の規定に違反してされたものでもない。


第6 むすび
したがって、申立人の主張する理由及び提出した証拠によっては、請求項1?19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-08-19 
出願番号 特願2019-519355(P2019-519355)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (G09F)
P 1 651・ 113- Y (G09F)
P 1 651・ 537- Y (G09F)
P 1 651・ 121- Y (G09F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新井 重雄  
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 岸 智史
岡田 吉美
登録日 2020-10-09 
登録番号 特許第6775851号(P6775851)
権利者 mui Lab株式会社
発明の名称 操作表示パネル組込物品  
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