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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01H 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01H |
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管理番号 | 1378169 |
審判番号 | 不服2021-2685 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-03-01 |
確定日 | 2021-10-05 |
事件の表示 | 特願2016-220945号「接点の構造、接点の製造方法及び配線器具」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月17日出願公開、特開2018-78081号、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年11月11日の出願であって、令和2年6月2日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月11日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出されたが、同年11月27日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、それに対して令和3年3月1日に拒絶査定不服審判の請求と同時に、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出され、同年3月24日付けで前置報告がされ、当審が同年7月8日付けで拒絶理由通知をし、同年8月10日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正をする手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 この出願の下記に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1,8 ・引用文献等 1 ・請求項 2?7 ・引用文献等 1,2 ・請求項 9,10 ・引用文献等 1?3 ・請求項 11,12 ・引用文献等 1?4 ・引用文献等一覧 1.特開昭56-96414号公報 2.特開昭54-150678号公報 3.特開2002-197944号公報 4.特開平11-45639号公報 第3 本願発明 本願の請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明12」という。)は、令和3年8月10日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 台金にかしめ固定される接点の構造であって、 前記台金の第1の面から突出するように形成された接点部と、 前記接点部と連続して形成されており、前記第1の面と反対の面である第2の面に向って前記台金に設けられた挿通孔に通っている挿通部と、 前記接点部とは反対方向に前記挿通部と連続して形成されており、前記挿通孔の周縁に沿って前記挿通孔の中心方向に突出するように前記第1の面から延びて設けられた突出部に接触して前記接点部に近づくにつれて前記挿通孔の中心に近づく方向に傾斜している前記突出部の第3の面に対して係止する抜止部とを有し、 前記抜止部において前記接点部とは反対の面である第4の面の中心部の領域に凹部を設け、 前記凹部は円錐台形状を有し、 前記第4の面における前記凹部の開口の第1径は、前記凹部の底面の第2径よりも大きく、 前記凹部の側面は、前記台金の厚み方向における前記凹部の断面が台形形状となるテーパ面で形成されており、前記台金の前記厚み方向に対する前記テーパ面の角度は、10度である ことを特徴とする接点の構造。 【請求項2】 前記突出部は、前記第2の面に対して離れる方向に反っている ことを特徴とする請求項1に記載の接点の構造。 【請求項3】 前記突出部は、前記第1の面から延びた第5の面を有しており、 前記接点部は、前記第5の面と前記第1の面から前記第2の面に向けて接触し、 前記抜止部は、前記第3の面と前記第2の面から前記第1の面に向けて接触しており、 前記第5の面は、前記第2の面に対して離れる方向に湾曲している ことを特徴とする請求項2に記載の接点の構造。 【請求項4】 前記第4の面における前記凹部の径と前記接点部の最大径との比は、 1:3?1:4の範囲内である ことを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の接点の構造。 【請求項5】 前記凹部の底面は、前記第1の面よりも前記接点部側に位置していない ことを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の接点の構造。 【請求項6】 前記凹部の底面は、前記第2の面よりも前記接点部側に位置する ことを特徴とする請求項5に記載の接点の構造。 【請求項7】 前記凹部の底面は、前記第1の面を含む平面と同一の平面に位置している ことを特徴とする請求項6に記載の接点の構造。 【請求項8】 台金にかしめ固定される接点の製造方法であって、 前記台金に設けられた挿通孔に線材を通し、 前記台金の第1の面から前記第1の面と反対の面である第2の面に向けて、前記第1の面から突出している前記線材の第1端を押圧して接点部を生成し、 前記台金の前記第2の面から前記第1の面に向けて、前記第2の面から突出している前記線材の第2端を押圧し、当該押圧により形成される面の中心を含む領域に凹部を設け、 前記凹部は円錐台形状を有し、 前記凹部の開口の第1径は、前記凹部の底面の第2径よりも大きく、 前記凹部の側面は、前記台金の厚み方向における前記凹部の断面が台形形状となるテーパ面で形成されており、前記台金の前記厚み方向に対する前記テーパ面の角度は、10度である ことを特徴とする接点の製造方法。 【請求項9】 可動接点と、 固定接点と、 前記可動接点と前記固定接点とが接触状態及び離接状態のいずれかとなるように状態を切り替える操作部とを備え、 前記可動接点及び前記固定接点のうち少なくとも一方は、請求項1?7のいずれか一項に記載の接点の構造を有する ことを特徴とする配線器具。 【請求項10】 前記操作部は、押釦ハンドルを有しており、 前記押釦ハンドルが押されると、前記可動接点と前記固定接点とが接触、または離接する ことを特徴とする請求項9に記載の配線器具。 【請求項11】 前記操作部は、ハンドルを有しており、前記ハンドルを相反する2方向に操作することによって、前記可動接点と前記固定接点とが接触、または離接するように構成されている ことを特徴とする請求項9に記載の配線器具。 【請求項12】 前記ハンドルは揺動操作されるように構成されており、 前記ハンドルが揺動操作されると、前記可動接点と前記固定接点とが接触、または離接する ことを特徴とする請求項11に記載の配線器具。」 第4 引用文献の記載事項等 1 引用文献1について 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。 (1)「本発明は接点材料を減量することができる接点の製造方法に関するものであつて、更に詳しくは台材(1)の透孔(2)に切断された線材片(3)を挿入したのち、この線材片(3)の一面を押圧して凹所(4)を形成するとともに他面に凸部(5)を膨出させ、しかるのちに両面から線材片(3)を押圧して凹所(4)開口縁および線材片(3)の他面側を透孔(2)の各開口縁に塑性変形により密着させて成る接点の製造方法に係るものである。」(1ページ左下欄12行?右下欄1行) (2)「本発明は上記の点に鑑みて為されたものであつて、その目的とするところは塑性変形が施されて接点が形成される線材片の中で本来的に接点機能を有さず、専ら接点を係止する機能を果す部分の材料の量を必要限度にとどめることができる接点の製造方法を提供することにある。」(1ページ右下欄10?15行) (3)「(3)は線材片であつて、断面丸形の線材を切断して形成されたものである。この線材片(3)は第2図(a)に示すように台材(1)に穿設された透孔(2)に挿入したのち、同図(b)に示すように線材片(3)下面を押圧して下面に凹所(4)を形成してチユーブラ化を図るとともに、線材片(3)上面に凸部(5)を膨出させ、次に同図(c)に示すように線材片(3)の両面を押圧して線材片(3)の凹所(4)開口縁を塑性変形して形成された係止部(7)を透孔(2)の下周縁に密着固定し、線材片(3)の上部を塑性変形して形成された接点部(6)を透孔(2)の上周縁に密着固定するのである。」(1ページ右下欄17行?2ページ左上欄7行) 第2図 (4)引用文献1の記載から認められること ア 上記(1)の記載によれば、接点は、台材(1)に対して線材片(3)を塑性変形させることで固定してなるものであると認められる。 イ 第2図において、台材(1)の上側の面を上面、下側の面を下面とする。上記(3)及び第2図によれば、接点部(6)は、台材(1)の上面から突出すること、接点部(6)と係止部(7)との間には、接点部(6)と係止部(7)に接続する中間部材があり、中間部材は、台材(1)に穿設された透孔(2)を通っていること、係止部(7)は、中間部材と接続しており、透孔(2)の下周縁に密着固定すること、透孔(2)の下周縁は、接点部(6)に近づくにつれて透孔(2)の中心に近づく方向に傾斜していること、台材(1)において、透孔(2)の下周縁が設けられた部分はテーパ部を形成し、テーパ部は、台材(1)の下面から透孔(2)の中心方向に向かって延びていること、係止部(7)は、透孔(2)の周縁に沿って、テーパ部に密着すること、接点は、接点部(6)と中間部材と係止部(7)とを有すること、係止部(7)側の略中央に凹部を有すること、及び、凹部の開口の径は、凹部の底面の径より大きいことが認められる。 ウ 上記(3)及び第2図の記載によれば、線材片(3)の両面を押圧して線材片(3)の凹所(4)開口縁を塑性変形することで、線材片(3)の下部に係止部(7)を形成しつつ、係止部(7)を透孔(2)の下周縁に密着固定し、線材片(3)の上部を塑性変形して接点部(6)を形成しつつ、接点部(6)を透孔(2)の上周縁に密着固定することが認められる。 (5)上記(4)ア、イを総合すると、引用文献1には、接点として、以下の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されていると認められる。 「台材(1)に対して線材片(3)を塑性変形させることで固定してなる接点であって、 台材(1)の上面から突出する接点部(6)と、 接点部(6)と接続しており、台材(1)に穿設された透孔(2)を通っている中間部材と、 中間部材と接続しており、透孔(2)の周縁に沿って、台材(1)の下面から透孔(2)の中心方向に向かって延びているテーパ部に密着して、接点部(6)に近づくにつれて透孔(2)の中心に近づく方向に傾斜しているテーパ部に密着固定する係止部(7)とを有し、 係止部(7)側の略中央に凹部を有し、 凹部の開口の径は、凹部の底面の径より大きい、 接点。」 (6)上記(3)及び(4)を総合すると、引用文献1には、接点の製造方法として、以下の発明(以下、「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。 「台材(1)に対して線材片(3)を塑性変形させることで固定してなる接点の製造方法であって、 台材(1)に穿設された透孔(2)に線材片(3)を挿入し、 線材片(3)下面を押圧して下面に凹所(4)を形成して、線材片(3)上面に凸部(5)を膨出させ、 線材片(3)の両面を押圧して線材片(3)の凹所(4)開口縁を塑性変形することで、線材片(3)の下部に係止部(7)を形成しつつ、係止部(7)を透孔(2)の下周縁に密着固定し、線材片(3)の上部を塑性変形して接点部(6)を形成しつつ、接点部(6)を透孔(2)の上周縁に密着固定し、 係止部(7)側の略中央に凹部を有し、 凹部の開口の径は、凹部の底面の径より大きい、 接点の製造方法。」 2 引用文献2について 引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「第6図はさらに台板12の角穴13周縁を予め突上げておき、最小の接点材料により接点11の上面と台板13下面との間隔を最大にした例である。」(2頁左下欄17?20行) 第6図 3 引用文献3について 引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ピアノタッチ操作で接点部の接点開閉を行うピアノハンドル式スイッチに関するものである。」 (2)「【0020】・・・開閉子24は接点保持片18dに対向するように配置され、接点保持片18dに設けた固定接点25との対向部位には固定接点25とともに接点100を構成する可動接点29を設けてある。つまり、開閉子24が回動することにより、可動接点29が固定接点25に接離し、端子板15と端子板18とを電気的に接続する状態と分離する状態とが選択される。」 (3)「【0025】ところで、反転ハンドル31において貫通孔52を通してカバー5aの前面側に露出する部位の両側部には前方に突出してスライドカム33に掛合する一対の掛合突起34を突設してある。スライドカム33はカバー5aに設けた押釦ハンドル32の押操作時に反転ハンドル31の位置関係に応じて反転ハンドル31の揺動方向を含む面内において押釦ハンドル32の裏面に沿ってスライドするように構成されている。」 図1 4 引用文献4について 引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電流容量の比較的大きい(たとえば45A用)シーソースイッチに関するものである。」 (2)「【0010】 【発明の実施の形態】 (実施形態1)図1ないし図9に示すように、合成樹脂のような絶縁材料により形成された器体1の前面(図1の上面)に凹面状に形成された操作面を押操作されるハンドル2が露出し、図1におけるハンドル2の左右両端部のうち器体1の前面から突出している側を押操作することによってハンドル2がシーソー動作するように構成される。・・・」 (3)「【0014】各接点装置41は、図1における上面側に山形に突出した揺動支点部42aを備える第1の接点端子板42と、固定接点43aを備えた第2の接点端子板43と、揺動支点部42aを支点として揺動し揺動に伴って可動接点44aを固定接点43aに離接させる開閉子44とからなる。・・・」 図1 5 引用文献5について 前置報告書で提示された特開2000-106052号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、各種スイッチ等における接点として用いられるリベット型接点の台金への固定方法に関するものである。」 (2)「【0007】 【発明の実施の形態】以下、本発明のリベット型接点の台金への固定方法の一実施態様を図面に基づいて説明する。なお、図7?10に示した従来のものと同一構成要素には同一符号を付してその説明を簡略化する。まず、図1に示すように、台金1に穿設された孔部1Aに、リベット型接点4の足部3を下側から挿通した後、うす5に形成された頭部2より少し大きな凹部5Aによって頭部2を拘束した状態で、下端面10Aの中央部に切頭円錐状の突起部10Bが形成されたポンチ10により足部3の先端面3Aの中央部を押圧し、先端面3Aの中央部を下方に押し潰す一次加締めを行う。これにより、図2に示すように、足部3の先端面3Aの中央部に凹部3Bが形成されるとともに、足部3の先端部が増径しリベット型接点4が台金1から抜け落ちないように仮止めされる。 【0008】次いで、図3に示すように、うす7に形成された頭部2の大きさに合致した凹部7Aによって頭部2を拘束した状態で、下端面8Aが平坦なポンチ8により足部3の環状の先端面3A全面を押圧し先端面3A全面を下方に押し潰す本加締めを行う。これにより、図4に示すように、足部3の先端部がさらに増径し台金1の上面と孔部1Aとの角部を包み込むようにして密着するとともに、台金1の孔部1A内の足部3が増径し孔部1Aに密着することにより、リベット型接点4が台金1に固定される。上記リベット型接点4は、例えば、Ag-Sn系の合金、Ag-Sn-In系の合金などからなり、また台金1は、例えばステンレス鋼などからなるものである。」 図1 図2 図3 図4 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1-1とを対比すると、後者の「台材(1)」は、前者の「台金」相当し、以下同様に、「線材片(3)を塑性変形させることで固定してなる」ことは「かしめ固定される」ことに、「接点」は「接点の構造」に、「上面」は「第1の面」に、「突出する」ことは「突出するように形成された」ことに、「接点部(6)」は「接点部」に、「連続して」いることは「連続して形成されて」いることに、「穿設された」ことは「設けられた」ことに、「透孔(2)」は「挿通孔」に、「中間部材」は「挿通部」に、「密着固定する」ことは「係止する」ことに、「係止部」は「抜止部」に、「中央」は「中心部」に、「凹部」は「凹部」に、「開口の径」は「開口の第1径」に、「底面の径」は「底面の第2径」に、それぞれ相当する。 後者の「台材(1)に対して線材片(3)を塑性変形させることで固定してなる接点」は、前者の「台金にかしめ固定される接点の構造」に相当し、後者の「台材(1)の上面から突出する接点部(6)」は、前者の「前記台金の第1の面から突出するように形成された接点部」に相当する。 後者の「透孔(2)」は、台材(1)に穿設されており、台材(1)の上面から下面に貫通するのは明らかであるから、後者の「接点部(6)と接続しており、台材(1)に穿設された透孔(2)を通っている中間部材」は、前者の「前記接点部と連続して形成されており、前記第1の面と反対の面である第2の面に向って前記台金に設けられた挿通孔に通っている挿通部」に相当する。 後者の「係止部(7)」は、接点部(6)と接続している中間部材と接続しており、中間部材を介して接点部(6)とは反対側にあるのは明らかであるから、後者の「係止部(7)側の略中央に凹部を有」することは、前者の「前記抜止部において前記接点部とは反対の面である第4の面の中心部の領域に凹部を設け」ることに相当し、後者の「凹部の開口の径は、凹部の底面の径より大きい」ことは、前者の「前記第4の面における前記凹部の開口の第1径は、前記凹部の底面の第2径よりも大き」いことに相当し、後者の「中間部材と接続しており、透孔(2)の周縁に沿って、台材(1)の下面から透孔(2)の中心方向に向かって延びているテーパ部に密着して、接点部(6)に近づくにつれて透孔(2)の中心に近づく方向に傾斜しているテーパ部に密着固定する係止部(7)」と前者の「前記接点部とは反対方向に前記挿通部と連続して形成されており、前記挿通孔の周縁に沿って前記挿通孔の中心方向に突出するように前記第1の面から延びて設けられた突出部に接触して前記接点部に近づくにつれて前記挿通孔の中心に近づく方向に傾斜している前記突出部の第3の面に対して係止する抜止部」とは、「前記接点部とは反対方向に前記挿通部と連続して形成されており、前記挿通孔の周縁に沿って前記挿通孔の中心方向に延びて設けられた部分に接触して前記接点部に近づくにつれて前記挿通孔の中心に近づく方向に傾斜している前記部分に対して係止する抜止部」という点で共通する。 そうすると、本願発明1と引用発明1-1との一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「台金にかしめ固定される接点の構造であって、 前記台金の第1の面から突出するように形成された接点部と、 前記接点部と連続して形成されており、前記第1の面と反対の面である第2の面に向って前記台金に設けられた挿通孔に通っている挿通部と、 前記接点部とは反対方向に前記挿通部と連続して形成されており、前記挿通孔の周縁に沿って前記挿通孔の中心方向に延びて設けられた部分に接触して前記接点部に近づくにつれて前記挿通孔の中心に近づく方向に傾斜している前記部分に対して係止する抜止部とを有し、 前記抜止部において前記接点部とは反対の面である第4の面の中心部の領域に凹部を設け、 前記第4の面における前記凹部の開口の第1径は、前記凹部の底面の第2径よりも大きい、 接点の構造。」 <相違点1> 抜止部について、本願発明1は、前記挿通孔の周縁に沿って前記挿通孔の中心方向に「突出するように前記第1の面から」延びて設けられた「突出部」に接触して前記接点部に近づくにつれて前記挿通孔の中心に近づく方向に傾斜している「前記突出部の第3の面」に対して係止するのに対し、引用発明1-1は、透孔(2)の周縁に沿って、台材(1)の「下面から」透孔(2)の中心方向に向かって延びている「テーパ部」に密着して、接点部(6)に近づくにつれて透孔(2)の中心に近づく方向に傾斜している「テーパ部」に密着固定しており、上記突出部に相当する構成を有しない点。 <相違点2> 本願発明1は、「前記凹部は円錐台形状を有し、前記凹部の側面は、前記台金の厚み方向における前記凹部の断面が台形形状となるテーパ面で形成されており、前記台金の前記厚み方向に対する前記テーパ面の角度は、10度である」のに対し、引用発明1-1は、凹部について、そのように特定されていない点。 (2)判断 事情に鑑み、まず、相違点2について検討する。 引用発明1-1において、凹部の概形は、第2図(c)で示されており、少なくとも、円錐台形状であるとは認められない。引用文献1には、凹部の形状を円錐台形状とすることについて、記載も示唆もない。そして、板状の部材に固定される接点において、接点分の反対側に円錐台形状の凹部を設けることが、本願出願前の技術常識又は周知技術であることを認めるに足る証拠もない、 よって、引用発明1-1において、相違点2に係る本願発明1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 なお、前置報告には、新たに引用文献5が提示され、引用発明1-1に引用文献5に記載された事項を適用することにより、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである旨記載されている。しかしながら、引用文献5(上記第4 5参照)には、特に、図4に、リベット型接点に凹部3Bとして円錐台形状のものが記載されているようにみえるが、この凹部3Bは、下端面10Aの中央部に切頭円錐状の突起部10Bが形成されたポンチ10で押圧した後に、下端面8Aが平坦なポンチ8で押圧したことで、形成されたものであるところ、引用発明1-1は、台材(1)の下面側には、透孔(2)の中心方向に向かって延びているテーパ部があり、引用文献5に記載のポンチ10とポンチ8による加工を採用すると、ポンチ8で係止部(7)を形成することになるが、係止部(7)はテーパ部に密着することにより固定するものであるところ、ポンチ8は平坦な面を有するものであり、係止部(7)をテーパ部に密着させることは難しく、接点の固定がうまくいかないことは明らかであるから、引用発明1-1に引用文献5に記載された事項を適用することには、阻害要因があるといわざるを得ない。よって、引用発明1-1に引用文献5に記載された事項を適用して、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 (3)小括 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1-1に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2?7について 引用文献2(上記第4 2参照)には、接点について記載されているが、相違点2に係る本願発明1の構成について、何ら記載も示唆もなく、本願発明2?7は、本願発明1の全ての構成を含み、更なる限定を構成に付加するものであるから、上記1で説示したのと同様に、引用発明1-1及び引用文献2に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本願発明9,10について 引用文献3(上記第4 3参照)には、ピアノハンドル式スイッチについて記載されているが、相違点2に係る本願発明1の構成について、何ら記載も示唆もなく、本願発明9,10は、本願発明1の全ての構成を含み、更なる限定を構成に付加するものであるから、上記1で説示したのと同様に、引用発明1-1及び引用文献2又は3に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 本願発明11,12について 引用文献4(上記第4 4参照)には、シーソースイッチについて記載されているが、相違点2に係る本願発明1の構成について、何ら記載も示唆もなく、本願発明11,12は、本願発明1の全ての構成を含み、更なる限定を構成に付加するものであるから、上記1で説示したのと同様に、引用発明1-1及び引用文献2,3又は4に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 5 本願発明8について (1)対比 本願発明8と引用発明1-2とを対比すると、上記1(1)と共通する点はそのまま採用し、それ以外については、後者の「線材片(3)」は、前者の「線材」に相当し、以下同様に、「挿入」することは「通」すことに、「線材片(3)の下部」は「線材の第2端」に、「形成」することは「生成」することに、「線材片(3)の上部」は「線材の第1端」に、それぞれ相当する。 後者の「台材(1)に対して線材片(3)を塑性変形させることで固定してなる接点の製造方法」は、前者の「台金にかしめ固定される接点の製造方法」に相当し、後者の「台材(1)に穿設された透孔(2)に線材片(3)を挿入」することは、前者の「前記台金に設けられた挿通孔に線材を通」すことに相当する。 第2図(b)を参酌すると、後者の「線材片(3)の上部」は台材(1)の上面から突出し、後者の「線材片(3)の下部」は台材(1)の下面側から突出していることを勘案すると、後者の「線材片(3)の両面を押圧して」「線材片(3)の上部を塑性変形して接点部(6)を形成」することは、前者の「前記台金の第1の面から前記第1の面と反対の面である第2の面に向けて、前記第1の面から突出している前記線材の第1端を押圧して接点部を生成」することに相当し、後者の「線材片(3)の両面を押圧して線材片(3)の凹所(4)開口縁を塑性変形することで、線材片(3)の下部に係止部(7)を形成」することと、前者の「前記台金の前記第2の面から前記第1の面に向けて、前記第2の面から突出している前記線材の第2端を押圧し、当該押圧により形成される面の中心を含む領域に凹部を設け」ることは、「前記台金の前記第2の面から前記第1の面に向けて、前記第2の面側から突出している前記線材の第2端を押圧し、当該押圧により形成される面の中心を含む領域に凹部を設け」るという点で共通する。 そうすると、本願発明8と引用発明1-2との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。 <一致点> 「台金にかしめ固定される接点の製造方法であって、 前記台金に設けられた挿通孔に線材を通し、 前記台金の第1の面から前記第1の面と反対の面である第2の面に向けて、前記第1の面から突出している前記線材の第1端を押圧して接点部を生成し、 前記台金の前記第2の面から前記第1の面に向けて、前記第2の面側から突出している前記線材の第2端を押圧し、当該押圧により形成される面の中心を含む領域に凹部を設け、 前記凹部の開口の第1径は、前記凹部の底面の第2径よりも大きい、 接点の製造方法。」 <相違点3> 前記第2の面側から突出している前記線材の第2端について、本願発明8は、「前記第2の面」から突出しているのに対し、引用発明1-2は、台材(1)の下面から突出しているのか不明である点。 <相違点4> 本願発明8は、「前記凹部は円錐台形状を有し、前記凹部の側面は、前記台金の厚み方向における前記凹部の断面が台形形状となるテーパ面で形成されており、前記台金の前記厚み方向に対する前記テーパ面の角度は、10度である」のに対し、引用発明1-2は、凹部について、そのように特定されていない点。 (2)判断 事情を鑑み、まず、相違点4から検討する。 相違点4は、相違点2と実質的に同じであるから、上記1で説示したのと同様に、相違点3について検討するまでもなく、本願発明8も、引用発明1-2に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定について 上記第5で説示したとおり、当業者であっても、本願発明1,8は、引用文献1に記載された発明に基いて、本願出願前に容易に発明をすることができたものとはいえず、本願の請求項2?7、9?12に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2,3又は4に記載された事項に基いて、本願出願前に容易に発明することができたものとはいえない。 したがって、原査定の拒絶理由は維持できない。 第7 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第2項について 当審では、請求項12における「前記可接接点」なる記載の前に、「可接接点」なる記載がないことから、不明確であるとの拒絶理由を通知したが、令和3年8月10日の手続補正において、「前記可動接点」と補正されて、当該拒絶理由は解消した。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-14 |
出願番号 | 特願2016-220945(P2016-220945) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01H)
P 1 8・ 537- WY (H01H) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
畔津 圭介 八木 誠 |
発明の名称 | 接点の構造、接点の製造方法及び配線器具 |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |