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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1378200 |
審判番号 | 無効2018-800090 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2018-07-13 |
確定日 | 2021-07-01 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第6192115号発明「免疫原性組成物を安定化させ、沈殿を阻害する新規製剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第6192115号の請求項1?22に係る特許についての出願は、2007年(平成19年)4月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年4月26日 米国)を国際出願日とする特願2009-507900号の一部を平成26年7月14日に新たな特許出願とする特願2014-144436号に係るものであって、平成29年8月18日にその特許権の設定登録がされた。 請求人メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーションは、平成30年7月13日付け審判請求書によって、上記請求項1?22に係る特許を無効にすることについて、本件無効審判を請求した。 その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年10月31日付け 審判事件答弁書の提出(被請求人) 平成31年 1月 8日付け 審理事項通知書(請求人、日付は起案日) 同 年 1月 8日付け 審理事項通知書(被請求人、日付は起案日 ) 同 年 2月 7日付け 口頭審理陳述要領書(1)(請求人)の提 出 同 年 2月 7日付け 口頭審理陳述要領書(1)(被請求人)の 提出 同 年 2月28日付け 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)の提 出 同 年 3月15日付け 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)の 提出 同 年 3月19日 口頭審理 同 年 3月19日付け 審尋(被請求人、日付は起案日) 同 年 4月16日付け 回答書、上申書(被請求人) 同 年 4月23日付け 審尋(請求人、日付は起案日) 令和 1年 5月28日付け 回答書(請求人) 第2 本件発明 本件特許の請求項1?22に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項より特定される、以下のとおりのものである。 なお、以下、本件特許の請求項1?22に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明22」という。また、本件発明1?22をまとめて「本件発明」ということがある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの、シリコーンにより誘発される凝集を阻害する、シリコーン処理された容器に入れられている製剤であって、 (i)pH緩衝塩溶液、ここで該緩衝液は、約3.5から約7.5のpKaを有する、 (ii)アルミニウム塩および (iii)CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ(S.pneumoniae)血清型4多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6B多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型9V多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型14多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型18C多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19F多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型23F多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型1多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型3多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型5多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6A多糖類、CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型7F多糖類およびCRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19A多糖類を含む多糖類-タンパク質コンジュゲート、 を含む製剤。 【請求項2】 pH緩衝塩溶液が、5.5から7.5のpHを有する請求項1記載の製剤。 【請求項3】 緩衝液がリン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジンまたはクエン酸塩である、請求項1から2のいずれか1項記載の製剤。 【請求項4】 pH緩衝塩溶液における塩が、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムまたはこれらの組み合わせである、請求項1から3のいずれか1項記載の製剤。 【請求項5】 アルミニウム塩が、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムまたは硫酸アルミニウムである、請求項1から4のいずれか1項記載の製剤。 【請求項6】 アルミニウム塩が、リン酸アルミニウムである、請求項1から5のいずれか1項記載の製剤。 【請求項7】 緩衝液がヒスチジンであり、pH緩衝塩溶液における塩が塩化ナトリウムであり、アルミニウム塩がリン酸アルミニウムである、請求項1記載の製剤。 【請求項8】 緩衝液がpH5.8のヒスチジンであり、pH緩衝塩溶液における塩が塩化ナトリウムであり、アルミニウム塩がリン酸アルミニウムである、請求項1記載の製剤。 【請求項9】 ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート85、ポリオキシエチレングリコールノナフェニルエーテルアルキルフェノールエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート、オキシトキシノール40、ノノキシノール-9、トリエタノールアミン、トリエタノールアミンポリペプチドオレエート、ポリオキシエチレン-660ヒドロキシステアレート(PEG-15、Solutol H15)、ポリオキシエチレン-35-リシノール酸塩、大豆レシチンおよびポロキサマーからなる群から選択される界面活性剤をさらに含む、請求項1から8のいずれか1項記載の製剤。 【請求項10】 ポリソルベート80をさらに含む、請求項1から8のいずれか1項記載の製剤。 【請求項11】 製剤中のポリソルベート80の最終濃度が、製剤の少なくとも0.001%から10%ポリソルベート80重量/体積である請求項10記載の製剤。 【請求項12】 緩衝液が、1mMから10mMの最終濃度およびpH5.8から6.0のコハク酸塩である、請求項1から6のいずれか1項記載の製剤。 【請求項13】 コハク酸緩衝液が、最終濃度で5mMである、請求項12記載の製剤。 【請求項14】 1つまたは複数の髄膜炎菌性多糖類、1つまたは複数の髄膜炎菌性抗原タンパク質、またはその組み合わせをさらに含む請求項1から13のいずれか1項記載の製剤。 【請求項15】 1つまたは複数の連鎖球菌多糖類、1つまたは複数の連鎖球菌抗原タンパク質、またはその組み合わせをさらに含む請求項1から13のいずれか1項記載の製剤。 【請求項16】 緩衝液がヒスチジンであり、pH緩衝塩溶液における塩が塩化ナトリウムであり、アルミニウム塩がリン酸アルミニウムである、請求項1記載の製剤。 【請求項17】 緩衝液がpH5.8のヒスチジンであり、pH緩衝塩溶液における塩が塩化ナトリウムであり、アルミニウム塩がリン酸アルミニウムである、請求項1記載の製剤。 【請求項18】 請求項1から17のいずれか1項記載の製剤を含む容器。 【請求項19】 バイアル、シリンジ、フラスコ、発酵槽、生物反応器、チューブ、パイプ、バッグ、ジャー、アンプル、カートリッジおよび使い捨てペンからなる群から選択される請求項18記載の容器。 【請求項20】 容器がガラス、金属またはポリマー製である、請求項19記載の容器。 【請求項21】 容器がシリンジである、請求項19記載の容器。 【請求項22】 容器がガラスシリンジである、請求項19記載の容器。」 第3 当事者の主張及び提出した証拠方法 1 請求人の主張及び証拠方法 (1) 請求人の主張する無効理由1(進歩性違反) 請求人は、「特許第6192115号の請求項1ないし22に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、以下の無効理由1-1?1-3を主張し、証拠方法として、甲第1?3号証、甲第4号証の1、甲第4号証の2、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6?11号証、甲第12号証の1?甲第12号証の6、甲第13号証の1?甲第13号証の3、甲第14号証、甲第15号証の1、甲第15号証の2、甲第16号証、甲第17号証の1?甲第17号証の3、甲第18号証の1、甲第18号証の2、甲第19?26号証、甲27号証の1、甲第27号証の2、甲第28号証の1、甲第28号証の2、甲第29号証、甲第30号証の1、甲第30号証の2、甲第31号証及び甲第32号証を提出している。 ア 無効理由1-1 本件発明1、2、7、8、16及び17は、 (a)本件優先日前に公然実施された発明(公知発明)であるプレベナー並びに (b)甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証の2に記載された事項 又は (a)公知発明であるプレベナー並びに (b)甲第2号証、甲第3号証及び甲第20号証に記載された事項 に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件特許の請求項1、2、7、8、16及び17に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 イ 無効理由1-2 本件発明3は、 (a)公知発明であるプレベナー並びに (b)甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証の2に記載された事項 或いは (a)公知発明であるプレベナー並びに (b)甲第2号証、甲第3号証及び甲第20号証に記載された事項 又は (a)公知発明であるプレベナー並びに (b)甲第2号証、甲第3号証、甲第4の2号証及び甲第5号証の2に記載された事項 或いは (a)公知発明であるプレベナー並びに (b)甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証の2及び甲第20号証に記載された事項 に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件特許の請求項3に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 ウ 無効理由1-3 本件発明4?6、9?15及び18?22は、 (a)公知発明であるプレベナー並びに (b)甲第2号証、甲第3号証、甲第4の2号証及び甲第5号証の2に記載された事項 又は (a)公知発明であるプレベナー並びに (b)甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証の2及び甲第20号に記載された事項 に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件特許の請求項4?6、9?15及び18?22に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2) 証拠方法 甲第1号証:AFFIDAVIT OF CHRISTOPHER BUTLER(2016年11月28日) 甲第2号証:特表2004-538291号公報 甲第3号証:国際公開第2004/071439号 甲第4号証の1:Pharmaceutical Biotechnology, 2002, 14, 表紙及び扉 甲第4号証の2:同 p. 47-127 甲第5号証の1:Pediatrika, 2004, 24(4), 表紙 甲第5号証の2:同 p. 147-155 甲第6号証:Pediatr Infect Dis J, 2002, 21(11), p. 1008-1016 甲第7号証:Seminars in Pediatric Infectious Diseases, 2002, 13(3), p. 155-164 甲第8号証:American Journal of Epidemiology, 2004, 159(7), p. 634-644 甲第9号証:Pediatr Infect Dis J, 2000, 19, p.463-469 甲第10号証:The Journal of Infectious Diseases, 2000, 181, p. 1322-1329 甲第11号証:The Journal of Infectious Diseases, 1999, 180, p. 1569-1576 甲第12号証の1:コーンスタンプ 生化学(第5版)(第10刷1995年9月1日発行)表紙 甲第12号証の2:同 p. 13-18 甲第12号証の3:同 p. 50-52 甲第12号証の4:同 p. 56-58 甲第12号証の5:同 p. 64-65 甲第12号証の6:同 奥付 甲第13号証の1:Journal of Parenteral Science and Technology, Supplement 1988, 42(4S) 表紙及び扉 甲第13号証の2:同 目次 甲第13号証の3:同 p. S4-S13 甲第14号証:European Journal of Parenteral & Pharmaceutical Sciences, 2004, 9(4), p. 123-128 甲第15号証の1:The Pink Sheet, 2001, 63(22) 表紙 甲第15号証の2:同 p. 16 甲第16号証:Pediatric Clinics of North America, 2000, 47, p. 269-285 甲第17号証の1:THE MERCK INDEX THIRTEENTH EDITION, 2001, 表紙及び扉 甲第17号証の2:同 p. 7664 甲第17号証の3:同 奥付 甲第18号証の1:Lehninger PRINCIPLES OF BIOCHEMISTRY, fourth edition, 2005 表紙及び扉 甲第18号証の2:同 p.75-85 甲第19号証:Vaccine, 2005, 23, p. 1502-1506 甲第20号証:ClinicalTrials.gov archive, View of NCT00205803 on 2005_12_08 甲第21号証:無効2018-800024 審判事件答弁書 甲第22号証:無効2018-800025 審判事件答弁書 甲第23号証:特開2000-005309号公報 甲第24号証:Videotaped Deposition of James Thomson, Ph. D. , 2017.10.19 甲第25号証:Biotechnol. Appl. Biochem. , 2001, 33, p. 91-98 甲第26号証:Vaccine, 2001, 19, p. 3189-3200 甲第27号証の1:イタリア共和国の官報 一般シリーズ、年140、番号162 表紙 甲第27号証の2:同 p. 57 甲第28号証の1:イタリア共和国の官報 定期追補、2000.6.8、番号132 表紙 甲第28号証の2:同 p. 30-31 甲第29号証:The Turkish Journal of Pediatrics, 1999, 42, p. 421-427 甲第30号証の1:5th International Symposium on Pneumococci and Pneumococcal Disease, ポスタープログラム 甲第30号証の2:同 ポスター要旨 PO10.21及びPO10.26 甲第31号証:米国特許第8,562,999号公報 甲第32号証:米国特許出願第13/631,573号 2013年6月4日付けREMARKS, p.5-9 2 被請求人の主張及び証拠方法 (1) 被請求人の主張 被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、証拠方法として、乙第1?22号証を提出している。 (2) 証拠方法 乙第1号証:Journal of Clinical Microbiology, 1995, 33(10), p. 2759-2762 乙第2号証:Clinical Microbiology and Infection, 2012, 18(Suppl. 5), p. 15-24 乙第3号証:医薬品インタビューフォーム、ニューモバックス^((R))NP、MSD株式会社(2013年10月改訂(改訂第13版)) (合議体注:(R)はRを○で囲んだマーク。以下、同じ。) 乙第4号証:Infection and Immunity, 2004, 72(9), p. 5383-5391 乙第5号証:医薬品インタビューフォーム、プレベナー13^((R))水泳懸濁注、ファイザー株式会社(2014年6月改訂(第3版)) 乙第6号証:平成26年(行ケ)第10045号 審決取消請求事件 判決 乙第7号証:平成28年(行ケ)第10186号 審決取消請求事件 判決 乙第8号証:タイサブリ点滴静注300mg、バイオジェン・ジャパン株式会社(2016年9月改訂(第4版)) 乙第9号証:European Journal of Biochemistry, 1997, 246, p. 320-327 乙第10号証:プレベナー^((R))水性懸濁皮下注、ファイザー株式会社(2011年7月改訂(第5版)) 乙第11号証:平成20年7月16日付け拒絶理由通知書(特願2003-515261号) 乙第12号証:特許第4509554号公報 乙第13号証:Peter Pardiso博士の宣誓書、2015年11月19日作成 乙第14号証:Study Report: Immunogenicity of Free and Conjugated Capsular Polysaccharides from Streptococcus pneumoniae and Neisseria meningitidis in 13-valent Pneumococcal, 13-valent Pneumococcal/ 4-valent Meningococcal and 4-valent Meningococcal Vaccines, Wyeth 乙第15号証:Int. J. Medical Microbiology, 2004, 294, p. 277-294 乙第16号証:The Pediatric Infectious Disease Journal, 2001, 20(3), p. 272-277 乙第17号証:19th Annual Meeting of the Eur. Sco. Paed. Inf. Dis. (ESPID), poster number 4, P1A Poster Session 1, Istanbul Turkey 乙第18号証:Biophysical Journal, 2004, 86, p. 3-9 乙第19号証:「小児用肺炎球菌結合型ワクチン「シンフロリックス^((R))水性懸濁筋注」承認取得のお知らせ?肺炎球菌感染症を予防する新しいタイプのワクチン?」、ジャパンワクチン株式会社(2015年3月26日) 乙第20号証:Pharmaceutical-Technology.comの「SCHOTT Pharmaceutical Plant Expansion」のウエブページ出力物、<https://www.pharmceutical-technology.com/projects/schott-plant>、平成31年3月13日に被請求人代理人が作成 乙第21号証:schott.comのSHOTT AGの「Pharmaceutical Primary Packaging」のウエブページ出力物、<https://www.schott.com/phamaceutical_packaging/english/index.com>、平成31年3月13日に被請求人代理人が作成 乙第22号証:West phamaceutical Services, Inc.「FORMULATION CHARACTERISTICS」、Version:Revision 1、2016.9.23 第4 証拠の記載事項 1 甲号証の記載事項 請求人が提出した甲第1?3号証、甲第4号証の2、甲第5号証の2、甲第6?11号証、甲第13号証の1、甲第13号証の3、甲第14号証、甲第15号証の2、甲第16号証、甲第20号証、甲第23号証、甲第24号証及び甲第30号証の2には、それぞれ以下の事項が記載されている。 なお、甲第1号証、甲第3号証、甲第4の号証2、甲第5号証の2、甲第6?11号証、甲第13号証の1、甲第13号証の3、甲第14号証、甲第15号証の2、甲第16号証、甲第20号証、甲第24号証及び甲第30号証の2は、外国語で記載されているので、日本語による訳文にて表記する。また、下線は合議体が付した。 (1) 甲第1号証の記載事項 甲1-ア 「クリストファー バトラーの宣誓供述書 1.私はサンフランシスコにあるインターネットアーカイブのオフィスマネージャーです。私は、私自身の個人の知識をここに宣誓します。 2.インターネットアーカイブは、ウエブサイトで有り、インターネットサイトやデジタル形式の他の文化的な人工品のデジタルライブラリーへのアクセスを提供しています。紙のライブラリーのように、我々は、研究者、歴史家、学者、や一般の人々に自由なアクセスを提供しています。インターネットアーカイブは、米国議会図書館を含む様々な協会とパートナーになり、そして、それらからのサポートを受けている。 3.インターネットアーカイブは、ウェイバック マシンとして知られているサービスを作った。ウェイバック マシンは、インターネットアーカイブのウエブアーカイブに保管された450兆頁以上をサーフィンできる。ウェイバック マシンへの訪問者は、URL(すなわち、ウエブアドレス)によって、アーカイブをサーチできる。もしもURLに保管された記録が入手可能ならば、訪問者は入手可能日のリスト付きで提供される。訪問者はそれらの日の一つを選択し、それからウエブの保管されたバージョンのサーフィンを始めても良い。保管されたファイルのリンクは、ウェイバック マシンによって提供されたときに、他のアーカイブされたファイルを示す(HTML頁又はイメージ)。訪問者が、アーカイブされた頁のリンクをクリックすると、ウェイバック マシンは、アーカイブされたファイルをリンクが示しクリックされた頁に最も近い利用可能な日にち付きで提供する。 4.ウェイバック マシンによって見ることができ、拾い読みできるアーカイブされた日付は、ウエブをサーフィンし自動的にウエブファイルのコピーを保管するクローラとして知られるソフトウエアプログラムを使い集められ、捕獲した時点でそれらが存在したようにこれらのファイルを保存している。 5.インターネットアーカイブは、そのサイトに、http://web.archive.org/web/[Year in yyyy][Month in mm][Day in dd][Time code in hh:mm:ss]/[Archived URL]の形式にアーカイブしたファイルにURLを割り当てる。このように、インターネットアーカイブURL http://web.archive.org/web/19970126045828/http:// web.archive.org/ は、1997年1月26日午前4時58分28秒にアーカイブされれたインターネットアーカイブホームページ(http://web.archive.org/)HTMLファイルの保管のためのURLである。ウエブブラウザーは、それからプリンターがフッターにウエブページのURLを示すようなセットである場合があります。インターネットアーカイブにより割り当てられた日付は、HTMLファイルに適用されるが、それにつながったイメージファイルには適用されない。頁に現れるイメージはHTMLファイルとして同日にはアーカイブされないかもしれない。同じように、ウエブサイトがフレーム付きでデザインされていると、インターネットアーカイブにより割り当てられる日付は、全体としてフレームセットに適用され、各フレーム内の個々の頁に適用されない。 6.ここに添付した別紙A(Exhibit A)は、URLのHTMLファイルと各プリントアウトのフッターに特定された日付のインターネットアーカイブの記録のプリントアウトの本当の、正確なコピーである。 7.ここに添付する別紙B(Exhibit B)は、URLのPDFファイルと各プリントアウトのカバーシートに特定された日付のインターネットアーカイブの記録のプリントアウトの本当の、正確なコピーである。 8.私は、前述が真実で正しいと偽証の罰をうけて断言します。 日付:2016年11月28日 クリストファー バトラー」(第1?2頁) 甲1-イ 「プレベナー 改訂2-22/01/04 ・・・ https://web.archive.org/web/20041210120100/http://www.emea.eu.ing/humandocs/Humans/EPAR/Prevenar/Prevenar.htm」(別紙A 標題及びフッター) 甲1-ウ 「https://web.archive.org/web/20050125205137//http://www.emea.eu.nt/humandocs/PDFs/EPAR/Prevenar/413000en4.pdf」(別紙B カバーシート) 甲1-エ 「1.薬用製品の名前 プレベナー(Prevnar)注射用サスペンジョン 肺炎球菌糖コンジュゲートワクチン、吸着されている 2.質的及び量的構成物 各0.5ml投与量が下記を含む: 肺炎球菌多糖類血清型4^(* )2μg 肺炎球菌多糖類血清型6B^(* )4μg 肺炎球菌多糖類血清型9V^(*) 2μg 肺炎球菌多糖類血清型14^(*) 2μg 肺炎球菌多糖類血清型18C^(*) 2μg 肺炎球菌多糖類血清型19F^(*) 2μg 肺炎球菌多糖類血清型23F^(*) 2μg ^(*)CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートされ、リン酸アルミニウム(0.5mg)に吸着 賦形剤は6.1参照 3.剤型 注射用サスペンジョン」(「別紙B添付1 製品特性の要約」の第2頁第1?16行) 甲1-オ 「6.1 賦形剤一覧 塩化ナトリウム 注射用水 ・・・ 6.5 容器の性質と内容 グレイのブチルゴム栓付きバイアル(タイプIガラス)中の注射用サスペンジョン0.5ml-シリンジ/ニードルなしの1及び10バイアルのパックサイズ。」(「別紙B添付1 製品特性の要約」の第7頁第18?31行) 甲1-カ 「1.薬用製品の名前 プレベナー(Prevnar)注射用サスペンジョンプレフィルドシリンジ 肺炎球菌糖コンジュゲートワクチン、吸着されている 2.質的及び量的構成物 各0.5ml投与量が下記を含む 肺炎球菌多糖類血清型4^(* )2μg 肺炎球菌多糖類血清型6B^(*) 4μg 肺炎球菌多糖類血清型9V^(*) 2μg 肺炎球菌多糖類血清型14^(*) 2μg 肺炎球菌多糖類血清型18C^(*) 2μg 肺炎球菌多糖類血清型19F^(*) 2μg 肺炎球菌多糖類血清型23F^(*) 2μg ^(*)CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートされ、リン酸アルミニウム(0.5mg)に吸着 賦形剤は6.1参照 3.剤型 注射用サスペンジョンプレフィルドシリンジ」(「別紙B添付1 製品特性の要約」の第9頁第1?16行) 甲1-キ 「6.1 賦形剤一覧 塩化ナトリウム 注射用水 ・・・ 6.5 容器の性質と内容 プランジャー棒(ポリプロピレン)付きプレフィルドシリンジ(タイプIガラス)中の注射用サスペンジョン0.5ml-ニードルあり又はなしの1及び10バイアルのパックサイズ。」(「別紙B添付1 製品特性の要約」の第14頁第18?31行) (2) 甲第2号証の記載事項 甲2-ア 「【発明の名称】アルミニウムアジュバントおよびヒスチジンを含むワクチン」 甲2-イ 「【要約】 本発明は、抗原、アルミニウム塩およびヒスチジンを含む組成物、ならびこの組成物を製造するためのプロセス(抗原、アルミニウム塩およびヒスチジンを混合する工程を包含する)を提供する。アルミニウム塩を含むワクチンの安定性を改善するために、本発明は、アミノ酸のヒスチジンを使用する。これは、pH安定性およびアジュバント吸着を改善し、そして抗原の加水分解を低減し得る。ヒスチジンは、好ましくは、アルミニウム塩への吸着の間に存在する。ワクチン中の抗原は、タンパク質または糖類であり得、好ましくはN.meningitidis由来である。」 甲2-ウ 「【請求項1】 抗原、アルミニウム塩およびヒスチジンを含む組成物。 【請求項2】 請求項1に記載の組成物であって、前記抗原がタンパク質抗原または糖類抗原である、組成物。 【請求項3】 請求項1または2に記載の組成物であって、前記抗原が、以下からなる群から選択される細菌抗原である、組成物: ・・・ -Streptococcus pneumoniae由来の糖類抗原; ・・・ 【請求項7】 請求項1?6のいずれかに記載の組成物であって、前記抗原が、アルミニウム塩に吸着されている、組成物。 【請求項8】 請求項1?7のいずれかに記載の組成物であって、前記アルミニウム塩が、水酸化物(例えば、酸水酸化物)、リン酸(例えば、ヒドロキシリン酸)、または2つ以上の該塩の混合物である、組成物。 【請求項9】 請求項1?8のいずれかに記載の組成物であって、前記アルミニウム塩が、前記ヒドロキシリン酸であり、そして前記抗原が、酸性抗原である、組成物。 【請求項10】 請求項1?9のいずれかに記載の組成物であって、該組成物中のヒスチジン濃度が、1mM?100mMの間である、組成物。 【請求項11】 請求項10に記載の組成物であって、前記ヒスチジン濃度が約5mM?約10mMの間である、組成物。」 甲2-エ 「【背景技術】 ・・・ 【0006】 アルミニウム塩を使用する場合、抗原適合性と同様に、ワクチンの安定性を考慮することが必要である。例えば、タンパク質吸着に対するアルミニウム塩の能力は、室温で経時的に[5]、およびオートクレーブすることに応じて[6]低下することが示されている。ミョウバン塩はまた、凍結乾燥の際に困難の原因となる[7]。さらに、水酸化アルミニウムは、低温であるとき、そして糖類抗原を加水分解し得[8]、そして抗原がキャリアタンパク質に結合化されるときでさえ、それ故に低減した有効性を導くことが見出されている。 ・・・ 【0008】 アルミニウム塩を含むワクチンの安定性における改善、特にpH安定性(緩衝)および種多々の温度でのアジュバント吸着における改善および/または抗原安定性における改善(例えば、加水分解の低下)を提供することが本発明の目的である。 【発明の開示】 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明は、アミノ酸のヒスチジンが、アルミニウム塩アジュバントを含むワクチンの安定性を増強するという驚くべき知見に基づく。このことは、糖類抗原およびタンパク質抗原の両方において見出されている。本発明は、故に、抗原、アルミニウム塩およびヒスチジンを含む組成物を提供する。本発明はまた、この組成物を製造するためのプロセス(抗原、アルミニウム塩およびヒスチジンを混合する工程を包含する)を提供する。 【0010】 (抗原) この抗原は、好ましくは、タンパク質抗原または糖類抗原(必要に応じて結合体化される)である。好ましい抗原は、細菌由来であり、細菌のNeisseria属(例えば、N.meningitidis)が特に好ましい。 【0011】 本発明での使用のための特定の細菌抗原としては、以下が挙げられる: ・・・ -Streptococcus pneumoniae由来の糖類抗原[例えば、22、23、24]。 ・・・ 【0015】 糖類抗原または炭水化物抗原が使用される場合、それは、好ましくは、抗原性を増強するために、キャリアタンパク質に結合体化される[例えば、参考文献61?70]。好ましいキャリアタンパク質は、細菌の毒素または類毒素(例えば、ジフテリア類毒素または破傷風類毒素)である。CRM_(197)ジフテリア類毒素は、特に好ましい。・・・」 甲2-オ 「【0044】 この組成物は、容器への抗原の吸着を最少にするために界面活性剤(例えば、Tween80のようなTween)を含み得る。」 甲2-カ 「【実施例2】 【0077】 (実施例2-meningococcal C糖類抗原の吸着) 糖結合体は、溶液(「液体」ワクチン)中に存在する場合、加水分解により分解される傾向にある[7,8]。複合体を凍結乾燥させ、これを避けることが可能である[7]が、これは、再構成する際にアジュバントが添加されることを必要とする。糖が加水分解の対象とならない液形態のワクチンを有することが好ましい。 【0078】 これを、CRM_(197)キャリアタンパク質[20]への、meningococcus 血清型Cオリゴ糖結合体ついて、詳細に調べた。CRM_(197)は酸性であり、従って、負電荷のリン酸アルミニウムに全く吸着しない。しかし、ヒスチジンは正電荷であり、これが負電荷をマスクし得ることが考えられた。従って、ヒスチジン緩衝液を、アルミニウムヒドロキシホスフェートに対するMenC-CRM_(197)の吸着の改善を目的に試験した。 【0079】 抗原の吸着を、アジュバントペレットを遠心分離して分離した後、BCAタンパク質アッセイを用いてワクチン上清中のタンパク質濃度を測定することにより、ヒスチジン緩衝液の存在下および非存在下で評価した。このワクチンを、20μg/ml オリゴ糖および45μg/ml CRM_(197)タンパク質として処方した。結果は以下のようであった: 【0080】 【表1】 ![]() 従って、ヒスチジンが処方物内に存在する場合、抗原の吸着が改善され:ヒスチジン非存在下では、吸着は約6%であり;5mM ヒスチジンは、これを36%に上昇させ;10mM ヒスチジンは、吸着を約52%まで上昇させる。 【0081】 従って、ヒスチジンは、アルミニウムヒドロキシホスフェートに対する抗原の吸着の改善に対して、有用な添加剤である。 ・・・ 【実施例7】 【0092】 (実施例7-meningococcal A糖類抗原の吸着) 参考文献94、A型血清meningococcus由来の莢膜オリゴ糖のCRM_(197)結合体を開示する。この結合体は、完全には安定ではなく、従って、凍結乾燥形態で調製され、投薬時の再構成のために準備される。単位用量での再構成後、以下の組成を生じる成分を有するた凍結乾燥形態を調製し: 【0093】 【表3】 ![]() この組成物は、アジュバントを有さないので、その再構成のために、アジュバントを調製した: 【0094】 【表4】 ![]() ^(*)0.84と0.82との間のPO_(4)/Alモル比の非結晶性ヒドロキシホスフェート 【実施例8】 【0095】 (実施例8-meningococcal C、W135およびY糖類抗原の吸着) 参考文献94は、meningococcusの血清型C、血清型W135および血清型Y由来の、莢膜糖類のCRM_(197)結合体を開示する。アルミニウムオキシヒドロキシドアジュバント(2mg/ml)またはアルミニウムヒドロキシホスフェートアジュバント(0.6mg/ml Al^(3+))のいずれか一方に吸着する3つの複合体の三価の混合物を調製した。2つの三価の混合物の組成物は、以下のようであった: 【0096】 【表5】 ![]() ^(*)0.84と0.82との間のPO_(4)/Alモル比の非結晶性ヒドロキシホスフェートオキシヒドロキシド/ヒスチジン処方物について、バルクの混合物中またはバイアルに充填した後の、いずれかの糖類成分の安定性は、以下のようであった: 【0097】 【表6】 ![]() 従って、遊離糖類レベルは、充填の前でも後でも、2?8℃で少なくとも1ヶ月は安定である。 【0098】 熱ストレス条件下で、MenW135およびMenYについて、遊離糖類の小さい増加が長期にわたって見られるが、MenCは安定なままである。 【0099】 30日間にわたり、バイアルおよびバルクのpHは、両方の保存温度で、7.15±0.05で安定であった。 【実施例9】 【0100】 (実施例9-meningococcal A糖類抗原、C糖類抗原、W135糖類抗原およびY糖類抗原の吸着) 実施例8の、2つの三価の組成物を希釈し、そして0.5mlを、実施例7の凍結乾燥MenA結合体の再構成に用いた。生じた3価混合物を、1群あたり10匹のBalb/cマウス(6?8週齢の雌)に、0日目および28日目に、皮下注射により投与した。この混合物は、1用量当り各々糖類を2μg含み、これは単回ヒト用量(SHD)の1/5に相当する。コントロールは、生理食塩水または結合体化していない同族の多糖類であった。免疫化前に出血を実施し、次いで42日目に出血を実施し、血清を-70℃で保存した。 【0101】 使用した全ての結合体は、これらの動物において、安全でありかつ免疫原性であった。GMT post-II ELISA力価(信頼区間95%)は、以下のようであった: 【0102】 【表7】 ![]() 従って、代表的に、力価は、アルミニウムオキシヒドロキシド+ヒスチジン群でより高い。一般的に、血清殺菌力価もまた、アルミニウムオキシヒドロキシド+ヒスチジン群でより良好であった。」 甲2-キ 「【0106】 ・・・ 参考文献(その内容は、本明細書により参考として援用される。) ・・・ 23-Rubin(2000)Pediatr Clin North Am 47:269-285,v.」 (3) 甲第3号証の記載事項 甲3-ア 「1.免疫グロブリンと、 リン酸緩衝液と、 ポリソルベートと、 塩化ナトリウムとを含むことを特徴とする安定な水性の製剤。」(特許請求の範囲の請求項1) 甲3-イ 「 本発明の一態様は、免疫グロブリン(または他のタンパク質)と、リン酸緩衝液と、ポリソルベートと塩化ナトリウムとを含む安定な水性薬剤を提供する。好ましくは、ポリソルベートはポリソルベート80であり、好ましくは約0.001%?約2.0%(w/v)の量で製剤中に存在する。最も好ましくはポリソルベートは約0.02%の量で存在する。他の実施形態において、免疫グロブリンまたは他のタンパク質は、約0.1mg/mL?約200mg/mLの量で製剤中に存在する。好ましくは製剤は、約3.0?約7.0、最も好ましくは約6.0±0.5のpHに緩衝されている。製剤は、好ましくは等張である。製剤は、さらにヒスチジンを含んでいてよい。好ましくは、ヒスチジンはL-ヒスチジンである。」(第2頁第1?9行) 甲3-ウ 「・・・「安定な」製剤は、その中のタンパク質が保存時にその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を本質的に保持するものである。「安定な」も凝集および/または脱アミド化を含む不安定性の徴候をほとんどまたは全く示さない製剤を意味する。例えば、本発明により提供される製剤は、5?8℃の温度で示されたように保存するとき、少なくとも2年間安定であり続けることができる。 ・・・ 抗体またはそのフラグメントのようなタンパク質は、色および/または透明度の目視検査で、あるいはUV光散乱またはサイズ排除クロマトグラフィーにより測定したとき、凝集、沈殿、脱アミド化および/または変性の徴候を示さなければ、製剤中で「その物理的安定性を保持している」。 ・・・ 「安定な」は、凝集および/または脱アミド化を含む不安定性の徴候をほとんどまたは全く示さない製剤を意味する。さらに、「安定な」は、示されたように保存したとき、2年またはそれを超える期間にわたり不安定性の徴候を示さない製剤も指す。」(第7頁第24行?第9頁第28行) 甲3-エ 「実施例1 ポリソルベート80の選択 ナタリズマブを投与する一般的な方法は、静脈内である。静脈内投与は、最終製剤が等張性であることを必要とする。50mM L-ヒスチジン、150mM NaCl、pH6.0中AN100226(ナタリズマブ)5mg/mLの製剤を最初に選択した(製剤番号1)。第II相試験中に、抗体のタンパク質の沈殿が、ナタリズマブの希釈および臨床投与装置内への導入中に認められた。認められたタンパク質の沈殿を解消するために、ポリソルベート80を製剤(製剤番号2)に導入した。好ましくは、本発明用のポリソルベートは、過酸化物が低いもの、すなわち、Sigma製のポリソルベート、製品番号P6479、ロット番号071K7283である。 AN100226抗体の沈殿を加速することが示された2つの因子は、微量のシリコーン油の存在と空気-液体界面における変性である。シリコーン油は、シリコーン処理ゴム栓を装着した標準潤滑ポリプロピレン注射器の使用時に製品中に導入された。シリコーン油の導入は、緩やかな撹拌および室温保存時に製剤番号1中の識別できる抗体の沈殿を引き起こすのに十分である。空気-液体界面における変性によって引き起こされる凝集、脱アミド化およびその後の沈殿は、薬剤がより多くの臨床施設に輸送されることに伴ってより識別できる問題になった。タンパク質の沈殿の両原因は、0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート80の添加によって解消された。 製剤番号2は、製品輸送中および臨床での取り扱い中の安定性の増加をもたらすと同時に、すべてのタンパク質特性確認検定においてヒスチジン/NaCl製剤(製剤番号1)と同等の安定性を示している。 製剤へのポリソルベート80の添加は、より高いタンパク質含量を有する製剤を調製する場合の抗体の沈殿または凝集の問題も克服する。最初の試験は、50mg/mLを含む高たんぱく質濃度での撹拌誘発性凝集に重点を置いた。ボルテックス型混合器を用いて物質を撹拌に供することによって、凝集種がサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)により検出された。このモデルによって、ポリソルベート80が凝集の有効な阻害物質であることが確認されたが、スクロースおよび他の緩衝成分はほとんど有用な効果を示さなかった。 5mg/mLのタンパク質濃度での撹拌誘発性沈殿の予防における0.02%(w/v)ポリソルベート80の添加の有効性を、ナタリズマブ(ロット番号AN100226-0003)のバイアルへの10μLの10%ポリソルベート80溶液の添加後に評価した。バイアルを製剤番号1中ナタリズマブの数個のバイアルとともに横にして水平面内で1分間に150回振とうした。室温でのこの処理の3時間以内に、製剤番号1のバイアルは粒子が蓄積し、混濁して見えたが、0.02%(w/v)ポリソルベート80を含むバイアルは透明のままであり、粒子は存在しなかった。 ポリソルベート80の非存在下でAN100226を完全に満たしたバイアルを長時間振とうした場合にはさらなる粒子の生成は誘発されなかったことから、認められた凝集は空気-液体界面により引き起こされたと推定される。 0.02%(w/v)ポリソルベート80が微量のシリコーンによって促進されるタンパク質の沈殿を抑制する能力の評価を行った。ナタリズマブ(ロット番号AN100226-0003)のバイアルを0.02%(w/v)ポリソルベート80に調整し、市販の潤滑60mLポリプロピレン注射器中に吸引した。物質を室温で数時間放置した。バイアルの視察により、沈殿が発生しなかったことが確認された。次いで、物質を0.2μmフィルターを通して5mLバイアル中に濾過し、視察したところ、数日後に粒子が実質的に存在しないことが認められたが、ポリソルベート80の非存在下で同様に処理したバイアル(製剤番号1)は粒子が蓄積していた。」(第15頁第26行?第17頁第14行) 甲3-オ 「実施例15 凍結乾燥ナタリズマブ製剤 20?200mg/mLの高濃度の抗体のさらなる液体製剤は、3.0?7.0のpH範囲で緩衝作用を有するように2?50mMlの濃度範囲のリン酸塩または他の適切な緩衝剤(ヒスチジン、クエン酸塩、酢酸塩またはコハク酸塩など)から構成されていてよい。最も好ましくは、pHは6.0+/-0.5である。安定性を維持し、等張溶液とするために、塩化ナトリウムとともに様々な量のポリオール(ソルビトールおよびマンニトールなど)、二糖(スクロースまたはトレハロースなど)およびアミノ酸(グリシンなど)を添加することができる。ポリソルベートのような、またこれに限定されない界面活性剤の使用は、0.001?2%の範囲で用いるとき安定性を加える。液体製剤を調製するために、ナタリズマブを約0.06%ポリソルベート80を含む10mMリン酸ナトリウム、140mM塩化ナトリウム、pH6中65mg/mLに濃縮した。得られる溶液は、わずかに乳光性であったが、粒子状物質を含んでいなかった。サンプルは、SECにより、99%を超える単量体を含み、高分子量凝集物または低分子量種は含まれていなかった。 安定な凍結乾燥製剤が得られる。リン酸緩衝液は凍結時にpH変化を受けるので、リン酸塩の代わりに他の緩衝剤を用いる必要がある。この緩衝液は、3.0?7.0のpH範囲で、最も好ましくは6.0+/-0.5の範囲で効果的に緩衝することができるヒスチジン、クエン酸塩またはコハク酸塩から構成されていてよい。 ポリオール(マンニトールなど)および糖(スクロースなど)の使用は、凍結および分散防護を与えるのに必要である。これらのポリオールは、安定性を与え、張性を調節するために単独または組み合わせて用いることができる。さらに、10?1000mMの濃度のアミノ酸(グリシンなど)は凝集を防止するために用いることができる。 ポリソルベートまたはポロキサマーのような界面活性剤は、凍結乾燥前および再構成の後の安定性を与え、より早い再構成時間を得るために0.001%?2.0%の濃度で用いることができる。 タンパク質は、最終精製工程の後に、濃縮のための限外濾過および緩衝剤交換のための透析濾過を用いて製剤化することができる。タンパク質はまた、緩衝剤交換のためのカラムクロマトグラフィーを用いて製剤化することができる。これらの技術のある種の組合せも用いることができる。 さらに、最終の所望タンパク質濃度は、所望の値より低いタンパク質および添加剤濃度で充填し、より小さい容量で再構成して得ることができる。例えば、40mg/mL溶液の2.5mL充填容量を用いた後、1mLを用いて再構成して100mg/mL溶液を得る。 例えば、5mMヒスチジン、20mg/mLスクロースおよび0.02%ポリソルベート80、pH6を含む溶液中の20mg/mLの濃度のナタリズマブを凍結乾燥した。溶液を10mLホウケイ酸ガラスバイアルにバイアル当たり5mLで充填し、灰色ブチルゴム凍結乾燥栓を取り付けた。凍結乾燥は、Virtis Gensisモデル凍結乾燥装置を用いて行った。製品を-60℃のたな温度で10時間凍結し、次いで、たな温度を-40℃に上昇させた。一次乾燥は、-10℃のたな温度、100mトールのチャンバー圧力で20時間行った。二次乾燥は、25℃のたな温度、100mトールのチャンバー圧力で10時間行った。バイアルに真空下で栓をした。 次いで、バイアルを1mLの滅菌WFIを用いて再構成して、100mL/mLのナタリズマブを含む製剤を得た。凍結乾燥の直後および凍結乾燥した形態で40℃で2週間保存した後にサンプルを分析した。両方の場合に、再構成時間は即時であった。再構成した溶液は透明かつ無色であり、粒子状物質は存在しなかった。サンプルは、SECにより、99%を超える単量体を含み、高分子量凝集体も低分子量種も存在しなかった。40℃で2週間保存した後に、サンプルは対照標準と比較して94%の効力を示した(規格80?125%)。」(第24頁第21行?第26頁第10行) (4) 甲第4号証の2の記載事項 甲4の2-ア 「タンパク質剤形の製剤開発」(標題) 甲4の2-イ 「タンパク質はガラスのバイアルだけでなく、ガラスのカートリッジにも包装されるが、さらに、ガラスのシリンジにも包装され得る。通常、ガラスバイアルはシリコーン処理されないが、ガラスカートリッジ及びシリンジは、ゴムの先端がついたプランジャー棒がガラスの胴のルーメンを通して簡単に動かすことができるよう、シリコーン処理されなければならない。ガラス上のシリコーンとタンパク質又は他の処方成分との間に相互作用がほとんど又は全くないことを確かめるために、調査がなされなければならない。」(第88頁下から第4行?第89頁第3行) (5) 甲第5号証の2の記載事項 甲5の2-ア 「肺炎に対するワクチンの現状及び将来」(標題) 甲5の2-イ 「新しい7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(7血清型)が研究され、続いて上市され、そのワクチンは、肺炎球菌疾患を防ぐことができるかもしれない。・・・7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、ストレプトコッカスニューモニエの7の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F及び23F)の莢膜抗原の精製された多糖類が別々にCRM197(ジフテリア毒素の無毒性突然変異体)タンパク質にコンジュゲートされた糖コンジュゲートを含む。」(第148頁右欄第20?39行) 甲5の2-ウ 「米国の状況 2000年2月に、米国はストレプトコッカスニューモニエの7の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F及び23F)に対する肺炎球菌コンジュゲートワクチン(プレベナー(Prevnar))の使用を承認した。このワクチンは、2001年1月から米国でのワクチン接種スケジュールに含まれた。」(第150頁左欄第1?7行) 甲5の2-エ 「スペインの状況 2001年6月まで、スペインでは、ストレプトコッカスニューモニエの23の血清型の莢膜多糖類からなる、23価の肺炎球菌ワクチンだけだった。2001年6月に7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(プレベナー(Prevnar))がスペインで上市された。」(第150頁右欄第26?32行) 甲5の2-オ 「ほかの肺炎球菌ワクチン 我々が知る限り、現在、肺炎球菌の侵襲性疾患を防ぐために、23価多糖類(VNP-23V)及び7価コンジュゲートワクチン(VNC-7V)の2つのワクチンが利用できる。まだ上市されておらず、進んだフェーズの研究中である他の肺炎球菌コンジュゲートがある。 - 1及び5を追加した9血清型ワクチンは、2歳未満と2?5歳の子供における87%までカバーする。 - 3及び7Fを加えた11血清型ワクチン。血清型3が、スペインの大人において、最も侵襲性の疾患を引き起こすので、これらのワクチンの使用は、この血清型による感染症の発生率に好ましいインパクトを与え得る。 - 6A及び19Aを追加した13血清型のワクチン」(第152頁右欄第20行?末行) 甲5の2-カ 「9価肺炎球菌コンジュゲートワクチン:VCN-9V ・・・ 以下の研究を含む、9価コンジュゲートワクチンの安全性と免疫原性を評価したいくつかの試験がある。 ・DTPワクチンと同時であるが別のシリンジでガンビアの子供たちに投与したVCN-9Vの安全性と免疫原性(23)。 ・・・ ・残りの3つの試験(23,24,25)は、VCN-9Vの安全性と免疫原性を、以下のとおり証明した。 - 含んでいる9つの血清型に対し良好な免疫応答を産生する安全なワクチンである。 - 耐用性の高いワクチンである。 - 抗生物質耐性に起因するIPD発生率の顕著な減少があった。 - ワクチン対象の肺炎球菌の鼻咽頭キャリヤーが減少し、ワクチン対象でない肺炎球菌はそれほど増加しなかった。 - 耐性肺炎球菌のキャリヤーの減少があった。 - 免疫スケジュールのルーチンワクチンとVCN-9Vの同時投与は、安全で、免疫原性である。 したがって、VCN-9Vはコンジュゲートワクチンの分野で新しい機会を開く、安全で、効果的で、免疫原性のワクチンであるといえる。」(第153頁左欄第1行?右欄第17行) 甲5の2-キ 「肺炎球菌ワクチンの将来 ・・・ 7価コンジュゲートワクチンに新たな血清型を追加する研究が行われており、血清型1と5を追加する9価、3と7Fを追加する11価、及び6Aと19Aを追加する13価ワクチンの研究が様々な段階にある。我々は対象範囲の多様性を維持し続けるけれども、これは年齢と国の範囲を広げることができるだろう。」(第153頁右欄第18?48行) (6) 甲第6号証の記載事項 甲6-ア 「子供の急性中耳炎を起こす肺炎球菌血清型の多国間研究」(標題) 甲6-イ 「略語・・・血清型4、6B、9V、14、18C、19F、23Fを含む7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤(PCV-7);PCV-7血清型に1及び5を追加したものを含む9価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤(PCV-9);PCV-9血清型に3及び7Fを追加したものを含む11価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤(PCV-11)」(第1009頁左欄第12?21行) 甲6-ウ 「図2(右)は、臨床試験中であるPCV-9及びPCV-11製剤が6?35か月の子供に最低限役立つのみならず、PCV-11血清型特異的カバー範囲が、もっと幼い及びもっと年上の子供に対しても、それぞれ60%まで及び70%までに増加するであろうということを示している。」(第1013頁右欄第26?32行) 甲6-エ 「 ![]() 図2 データセットと年齢によるワクチン血清型 左:血清型4、6B、9V、14、18C、19F及び23F(PCV-7)、又は、6A、19A、23B等のようなワクチン関連血清型の各データセットの肺炎球菌MEF分離株のパーセンテージ 右:PCV-7血清型を有する、血清型1と5(PCV-9とPCV-11に含まれる)を有してさらに増加する、及び、血清型3と7F(PCV-11に含まれる)を有してさらに増加する、各年齢集団における全肺炎球菌MEF分離株のパーセンテージ」(第1013頁左欄) 甲6-オ 「PCV-11血清型プラス6A及び19Aが、研究された各年齢集団における、全ての主たる血清型を含むように思われる。」(第1014頁右欄第12行?15行) (7) 甲第7号証の記載事項 甲7-ア 「子供の肺炎球菌ワクチン」(標題) 甲7-イ 「7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(プレベナー(Prevnar) 商標)が、現在米国で承認されている。このワクチンは、還元的アミノ化により20μgのCRM_(197) にコンジュゲートした7つの肺炎球菌多糖類抗原(血清型4、6B、9V、14、19F、23F及びオリゴ多糖18C)を含み、PCV7と表示される。推奨される0.5mL投与量には、6Bで推奨される4μgを除き、各抗原2μgを含む。リン酸アルミニウム(0.5mg)がアジュバントとして含まれているが、防腐剤やチメロサールは含まない。」(第158頁右欄下から第10行?末行) 甲7-ウ 「表4 開発中の肺炎球菌コンジュゲートワクチン ![]() 注.フェーズII及びIII試験で試験された他のワクチンの組み合わせ又はコンジュゲートには、破傷風及びジフテリアトキソイドに加えられたコンジュゲート並びに1価調製物(6B)から5価(6B、14、18C、19F及び23F)、7価(PCV7)、9価(PCV7に血清型1及び5を追加)及び11価(9価に3及び7Vを追加)の範囲の肺炎球菌抗原の組み合わせが含まれる。・・・」(第158頁) (8) 甲第8号証の記載事項 甲8-ア 「小児肺炎球菌疾患におけるコンジュゲート肺炎球菌ワクチンの潜在的影響」(標題) 甲8-イ 「表3 米国にて承認済み又は開発中の肺炎球菌コンジュゲートワクチン ![]() ^(*)この製品は、メルク アンド カンパニーによって、もはや開発されていない。 ^(+)この製品は、付随的に投与された無細胞百日咳ワクチンの免疫原性が予想よりも低いためという理由もあり、アベンティス パスツールによってもはや開発されていない。」(第638頁) 甲8-ウ 「7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PnCRM-7)(Prevnar;ワイス ワクチン, Pearl River, New York)が米国及び約50の他の国で承認されている。」(第638頁右欄下から第5行?末行) (9) 甲第9号証の記載事項 甲9-ア 「ガンビアの幼児に、ジフテリア、破傷風及び百日咳ワクチンと同時だが別のシリンジで投与したCRM_(197)にコンジュゲートされた9価肺炎球菌ワクチンの安全性と免疫原性」(標題) 甲9-イ 「結論. 拡大された免疫プログラムのワクチンとPnCVの同時投与は、安全で免疫原性である。複合抗原に対する免疫応答は保護を与えるようである。」(第464頁左欄第25?29行) 甲9-ウ 「ワクチン. 研究に使われた9価肺炎球菌ワクチン(PnCV)は、ワイス-レダール ワクチン アンド ペディアトリクス(Wyeth Lederlw Vaccines and Pediatrics)・・・によって作成された。凍結乾燥形態で作られ、肺炎球菌のタイプ1、4、5、9V、14、19F及び23Fの多糖類2μg、タイプ18Cのオリゴ糖2μg並びにタイプ6Bの多糖類4μgを含んでいる。各多糖類又はオリゴ糖は独立してジフテリア毒素の非毒性変異体であるCRM_(197)に結合され、投与量当たりCRM_(197)の20μgまでが投与される。ワクチンは単投与量バイアルで調整され、投与前に0.75mlのリン酸アルミニウムを含む生理食塩水希釈液で再構築された。各0.5ml投与量は、0.5mgのリン酸アルミニウムを含んでいる。」(第465頁左欄第9?22行) (10) 甲第10号証の記載事項 甲10-ア 「南イスラエルの抗生物質耐性肺炎球菌により起こる中耳炎:コンジュゲートワクチンで免疫するための意味」(標題) 甲10-イ 「7、9及び11価肺炎球菌コンジュゲートワクチンによる急性中耳炎(AOM)を引き起こす抗生物質耐性肺炎球菌の潜在的な適用範囲が南イスラエルで研究された。肺炎球菌AOMの合計876例を様々な臨床的状況で研究した。・・・」(要約) 甲10-ウ 「分類された858の分離株のうち、抗生物質感受性の結果は、823(96%)に見られた。9つの最も一般の血清型は、23F、19F、14、19A、9V、6B、6A、1及び3であった(表1)。・・・我々は、年齢と人種集団に従って様々なコンジュゲートワクチンの候補により、MEF分離株のカバー範囲を調べた(表3)。現在、ヒトで試験されている様々な肺炎球菌コンジュゲートワクチンに従い、分析の目的のためのワクチンを以下のとおりに定めた: 7価ワクチン、血清型4、6B、9V、14、18C、19Fと23F; 9価ワクチン(血清型1及び5を追加する以外は7価ワクチンと同じ); 11価ワクチン(血清型3と7Fを追加する以外は9価ワクチンと同じ)。 予想されたように、ワクチンの血清型の数を7から11に増やしたとき、様々な肺炎球菌コンジュゲートワクチンの候補による肺炎球菌の分離株のカバー範囲は全ての年齢層にとって改善された。ワクチンの候補の間で最も大きな違いは、最も若い年齢層と最も年をとった年齢層(<6か月と≧24か月)にみられた。・・・いずれのワクチンにも含まれない2つの重要な一般的な血清型は、血清型6A及び19Aであり、それぞれ、全分離株の6%及び8%である。」(第1324頁左欄第28行?右欄末行) 甲10-エ 「表1 中耳流体からの肺炎球菌分離株の血清型(血清型が決定された858株の823[96%]の感受性パターンがわかった)による耐性パターン ![]() 」(第1324頁) 甲10-オ 「表3 7、9、及び11価肺炎球菌コンジュゲートワクチン候補によるAOM患者の中央の内耳液からの肺炎球菌の分離株の年齢別ワクチンの保護範囲 ![]() 注:データは特に明記しない限り数(%)。7価:4, 6B, 9V, 14, 18C, 19F, 及び 23F;9価:, 4, 5, 6B, 9V, 14, 18C, 19F,及び23F;11価:1, 3, 4, 5, 6B, 7F, 9V, 14, 18C, 19F,及び23F. AOM急性中耳炎 a P = .05, ユダヤ民族 対 ベドウィン族 b P < .01, ユダヤ民族 対 ベドウィン族 c P < .001, ユダヤ民族 対 ベドウィン族」(第1325頁) (11) 甲第11号証の記載事項 甲11-ア 「乳児における肺炎球菌コンジュゲートワクチンによって誘発される交差反応性血清型に対する免疫」(標題) 甲11-イ 「6B及び19Fを含むが6A又は19Aの血清型を含まない3種の実験的肺炎球菌コンジュゲートワクチンのうちの1種を用いて乳児を免疫化した。それらの血清を、ストレプトコッカスニューモニエの6A、6B、19A及び19Fの血清型をオプソニン化する能力及び4つの血清型に対するIgG抗体のレベルについて研究した。6B(ワクチン)血清型に対する3つのコンジュゲートワクチンで、検出可能なオプソニン作用力価を有する乳児の数の有意な増加が観察されたが、6A(交差反応性)血清型に対しては2つのみで観察された。19F血清型について2つのコンジュゲートワクチンで有意な増加が観察されたが、19A血清型については1つのワクチンのみであった。したがって、いくつかのコンジュゲートワクチンは、他のコンジュゲートワクチンよりも優れた交差防御を引き出すことができる。さらに、オプソニン作用力価とELISAによるIgG抗体レベルとの間の相関は、6B及び19F血清型では高かったが、6A及び19A血清型では低かった。したがって、ELISAは、交差反応性血清型に対するワクチン応答の不適切な代理アッセイであり得る。」(要約) 甲11-ウ 「現在の実験的なコンジュゲートワクチンは、7(例えば、血清型4、6B、9V、14、18C、19F及び23F)又はより多くの血清型[9、10]を含む。保護のためのカバー範囲を増やすために、さらなる血清型(例えば、血清型1、3、5、6A、7F及び19A)は、将来コンジュゲートワクチンに加えられるかもしれない。 しかし、一般に、6Bと19Fコンジュゲートワクチンが、それぞれ、6Aと19A血清型で交差反応している抗体を誘導し(図1)、そして、交差反応を起こし得る抗体が6Aと19A血清型の感染症から保護すると推測されていた[7]。この推測を調べるために、6Bと19F PS(合議体注:多糖類)を含んでいる3つの異なる実験的なコンジュゲートワクチンで、免疫された乳児の血清中のオプソニン活性能力と4つの血清型(6A、6B、19A及び19F)に対するPSに特異的なIgG抗体濃度を測定した。それが肺炎球菌の抗体の機能的な力を直接測るので、オプソニン活性分析が選ばれた。」(第1569頁右欄第3?18行) 甲11-エ 「表1 ワクチン研究グループの概要 ![]() ^(a) CRM_(197)、ジフテリアトキシンの非毒性変異体; NMOPC、ネイセリアメニンジタイディス(Nesseria meningitidis)の外膜タンパク質 ^(b) 6B、19F及び19Aを含むが、6Aは含まない23血清型の多糖類ワクチン」(第1571頁) 甲11-オ 「交差反応性血清型6A及び19A PSに対する免疫反応 交差反応性血清型に対する免疫応答を調べるために、6A及び19A血清型に対するオプソニン作用力価及び抗体レベルを測定した(図3)。6A血清型に関しては、未免疫児のいずれも測定可能な力価を示さなかったが、3つの結合体ワクチンはいずれも、乳児の約半数において測定可能なオプソニン作用力価(>30)を誘発した(図3A;OP及びPPワクチン、それぞれP=0.073及び0.014、フィッシャーの正確な検査)。・・・驚くべきことに、図3Cに示されるように、乳児の3つグループ全てについて、6A血清型に対するIgG抗体のレベルは、免疫されていない乳児に比べてわずかに高いだけだった(P=0.065、未免疫 対 PPワクチン・グループ)。したがって、6A血清型への免疫反応は、ELISAによってではなくオプソニン作用分析によって示された。 19A血清型への免疫反応が調べられたとき、免疫されていない乳児の誰も、検出可能なオプソニン作用力価を持たなかった。PP又はOPワクチンによる免疫化の後でも(図3B)、乳児のわずか10%未満で、検出可能なオプソニン作用力価を発現させたにすぎなかった。これは、免疫されていない乳児と比較したとき、どちらのワクチンも交差オプソニン抗19A抗体の生産を刺激しなかったことを示した(P>0.58)。」(第1571頁左欄下から第9行?右欄第18行) 甲11-カ 「交差反応を起こし得る血清型へのオプソニン反応は、ワクチンの血清型への反応よりも、少しの乳児でしかみられなかった(図2、3)。」(第1571頁右欄下から第6?3行) 甲11-キ 「PPとOPワクチンへの反応が調べられたとき、PPとOPワクチンは半分の幼児で6Aに対するオプソニン力価を誘導し、そして、6Aへの彼らのオプソニン力価は6Bに対するオプソニン力価に相応していた。これらの幼児は、2つのコンジュゲートワクチンに応じてクロス反応性抗体を生産するように見える。乳児の残り半分は、6A血清型に非常に低い(または、ない)オプソニン力価で、6B血清型に高い(100より大)オプソニン力価がある抗体だけを生産した。」(第1572頁左欄第2?10行) 甲11-ク 「交差反応を起こし得る血清型に対するオプソニン力価が大きさでより少なくて、ワクチンの血清型に対する力価よりしばしば誘導されなかったので、コンジュゲートワクチンで乳児に誘導されるクロス・オプソニン抗体はクロス保護を提供するには不十分であるかもしれない。」(第1574頁右欄第32?36行) (12) 甲第13号証の1及び甲第13号証の3の記載事項 甲13の1-ア 「非経口用医薬品包装部品のシリコーン処理」(標題) 甲13の3-イ 「I.範囲 大部分の非経口の包装部品は、何らかの潤滑剤の使用を加工性と機能を向上させるために必要とする。・・・ ・・・ II.序論 医薬の包装のために最もよく使用される潤滑剤の一つは、しばしばシリコーン液として引用されるポリジメチルシロキサン液である。・・・シリコーン液は、通常、バレルの中のプランジャーの動きを容易にするために、プラスチックシリンジバレルやプランジャーバレルとして使用されるガラスカートリッジに適用される。・・・ ・・・ III.潤滑の理由 A.工作性 工作性は、潤滑化された包装部品の使用を通じて大いに改良される。ゴム製品のシリコーン処理は、ゴム栓と機械の間の摩擦を減らす。・・・ ・・・ B.挿入する力の減少-備え付け 栓が上手くバイアルに移された後、挿入されなければならない。シリコーン処理はバイアルと栓の間の摩擦を少なくする。この摩擦の減少はバイアル栓を挿入するために必要な力を適切に減少させる。 C.密閉性 栓のシリコーン処理により、栓とバイアルの密閉の状況が改良することが工業生産過程で見られた。 D.緩める力と押し出す力の最小化 栓と同様に、シリコーン処理によるシリンジプランジャーの潤滑化は、プランジャー表面の摩擦係数を減らす。これは、プランジャーとバレルの間の静止力に打ち勝つために必要なエネルギーを最小化する。・・・ E.シリンジバレルの潤滑化 シリンジバレルの潤滑化は、プランジャーの緩めたり押し出したりする力の値と密接に関係する。プランジャーやバレル上に存在するどんな潤滑剤もこれらの間の摩擦量を大いに減らすであろう。摩擦の減少は、適切な必要な力を減らすことになる。シリンジのシリコーン処理は、組立ての間、シリンジバレルにプランジャーを最初に挿入するのも助ける。 F.皮下注射針の潤滑化 ・・・ G.バイアルの内容物の排出 バイアルのシリコーン処理は、バイアルの内表面の水をはじく薄いフィルムになる。水溶液は、シリコンフィルムを濡らさないので、フィルム表面で球になりやすい。これは、バイアルの内容物の排出を改善する。ガラスのシリコーン処理は、懸濁物の取扱いや保管後の再懸濁のしやすさも改善する。」(第S4頁左欄第1行?第S5頁左欄第5行) 甲13の3-ウ 「基本的に、非経口の構成要素の潤滑のために利用されるすべての処置は、PDMS流体(シリコーンオイル)の使用に基づく。」(第S8頁左欄下から第4行?2行) 甲13の3-エ 「X.非シリコン潤滑化 ポリジメチルシロキサン液の適用以外の潤滑の方法もまた医薬エラストマー部品に対して採用されている。他の潤滑方法は、エラストマーコンパウンドに内部潤滑を追加すること、成形品の塩素化、コーティング及びフィルムの適用、そして基本的なゴムの化学修飾を含むものである。 A.内部潤滑 内部潤滑剤の追加は、エラストマー部品の潤滑性に影響を与えるために用いられてきた最初期の技術の一つである。パラフィンワックスやポリエチレンなどの内部潤滑剤を、エラストマーコンパウンドのその他の成分と混合し、そのコンパウンドを通常の方法で成形する。潤滑剤は、ブルーミングとして知られる現象により部品の表面に移動する。ブルーミングはエラストマーコンパウンド中の潤滑剤の相対的な不溶性に由来するものであり、結果として潤滑剤は表面に常に現れることになる。この技術の利点は、特定の一つのエラストマーに制限されることがなく、潤滑剤が常に封止表面で利用できるという点である。主なデメリットは、潤滑剤がゴム組織に化学結合していないので、薬剤調製の微粒子の負担に寄与する可能性があることである。 B.表面塩素化 塩素化は、内部潤滑剤の問題点を回避するために発展した。エラストマー部品をイオン化塩素を含む溶液に浸す。塩素原子は部品の表面に作用し、ゴムのダングリング分子を取り除く。これらの分子のテール(被請求人注:ダングリング分子)は天然ゴムコンパウンド、特に低いフィラーレベルのガムコンパウンドに見られる粘着性の原因となる。この手法の利点は、一般的に追加の潤滑化が要求されない、円滑で粘着性のない表面を生ずることである。欠点は、方法が一般的に天然ゴム、又は特定の合成エラストマーに対してのみ利用可能であるという点である。用途に対して不一致であるかもしれず、そして過剰な使用は乾燥又は滅菌サイクルにおいて用いられる熱でエラストマー表面の変色を引き起こすかもしれない。 C.フィルムとコーティング フィルムは別の潤滑方法として導入されている。この方法はラッカーコーティングの延長であり、これはストッパーに用いられて、抽出物の放出及び微粒子の問題を防止していた。典型的には、最新のフィルムは、特許プロセスでエラストマー部品にラミネートされたオレフィン又はフルオロカーボンポリマーで構成される。フィルムを適用すると、要求される潤滑剤のレベルは減少する。さらなる利点は、潤滑性に関係するものではないが、フルオロカーボンコーティングにより部品がほとんどの製剤に不活性になることである。欠点は、部品が高価であり、コーディングが表面を完全に被覆しない可能性があることである。コーティングによりクロージャーのフランジ領域を被覆した場合、封止の全体の検証が実施されなければならない。 D.化学修飾 最近の潤滑方法へのアプローチは、化学修飾を通じてゴムの基本的物性を変更することに基づく。新たなエラストマークロージャー処方がこの技術を用いて上市されている。この利点は、方法が単純で安価であり、微粒子を生成せず、そしてゴム部品全体を含むということである。欠点は、安全性と適合性の研究を要する新たな処方であるということである。」(第S11頁右欄第10行?第S12左欄第19行)」 (13) 甲第14号証の記載事項 甲14-ア 「安全性と製品用途の観点から見た管状ガラス製一次包装材料」(標題) 甲14-イ 「同様に、ペンシリンダーと使い捨てシリンジのシリコーン処理は、製品の貯蔵寿命の間中、シリンジの壁に沿ってゴムが先端に付いたプランジャーがスムースに動けることを確実にするために必要である。このタイプの特定の容器のための利用できるオプションは、シリコンエマルジョンで処理され焼成される処理又は高い粘性のシリコーンオイルでの処理を含む。」(第125頁右欄第36?42行) (14) 甲第15号証の2の記載事項 甲15-ア 「ワイスの9価の肺炎球菌/髄膜炎ワクチンは、2004年にEUで、2005年に米国で発売され、2006年に11価の肺炎球菌のワクチン、2007年に4価の髄膜炎ワクチンが世界的に発売されるだろう。 9価の製品による90%と7価による89%に対して、11価の肺炎球菌のワクチンは、米国において92%の株に対する保護範囲を提供するだろう。ワイスのゴールは、最終的に世界的な保護範囲を95%以上に拡大することである。」(第16頁右欄第10?19行) (15) 甲第16号証の記載事項 甲16-ア 「肺炎球菌ワクチン」(標題) 甲16-イ 「表4 子供における肺炎球菌コンジュゲートワクチンのフェーズIII効果試験 ![]() 」(第282頁) (16) 甲第20号証の記載事項 甲20-ア 「説明的な情報 簡潔なタイトル 健康な乳児における肺炎球菌ワクチンを評価する研究 公式なタイトル フェーズI/II、2ステージ、健康な乳児における13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、23F)の安全性、忍容性及び免疫原性の無作為二重盲検試験 概要 この研究の目的は、健康な乳児において13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(13vPnC)の安全性と免疫原性を評価することである。これは、乳児におけるこのワクチンの最初の研究である。 ・・・ 募集情報 状況 募集中 開始日 2004年9月 ・・・ 管理データ 組織名:ワイス ・・・ スポンサー:ワイス 保健当局 米国:食品医薬品局」(第1頁第4行?第2頁第16行) (17) 甲第23号証の記載事項 甲23-ア 「【請求項1】 医療用注射器アセンブリであって、 両端に第1の開口及び第2の開口を有し、内面を有する壁が前記端部間に延びている、管状バレルと、 前記管状バレル内に摺動可能に収納され且つ同管状バレルの前記内面と摺動可能に係合している部分を有するストッパと、 前記管状バレルの前記内面の少なくとも一つの部分の限定された領域に亘って配設された潤滑剤であって、それによって、前記内面と前記ストッパとの間の摩擦を減らすために十分な量の前記潤滑剤が利用できるようになされた潤滑剤と、 を含む注射器アセンブリ。 ・・・ 【請求項5】 請求項1に記載の注射器アセンブリであって、 前記注射器がガラスかプラスチック材料によって作られており、前記潤滑剤がシリコーンを含んでいる、注射器アセンブリ。」(特許請求の範囲) 甲23-イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、医療用注射器に関し、より特定すると、注射器バレル及びストッパの潤滑に関する。 【0002】 【従来の技術】発明の背景として、注射器は、典型的には、管状のバレル部分と、一端にストッパを有するプランジャと、を含んでいる。プランジャとストッパとは、注射器の管状バレル内に挿入される。ストッパ部分は、典型的には、天然ゴム又は合成ゴムのような弾性材料によって作られ、このストッパ部分は、注射器の管状バレルの内側面と係合して、プランジャに圧力がかけられたときに注射器から流体を射出する助けとなるシールを形成する。 【0003】伝統的には、プラスチック又はガラスによって作られた注射器の管状バレルの内側及びストッパの外側は、それら二つの部品間の摩擦を減らすためにシリコーンオイルによって潤滑されてきた。管状バレルの内側及びストッパに塗布されるシリコーンの粘性及び量を選択することによって、これらの部材間の摩擦が所望のレベルまで減じるか又は調整される。 ・・・ 【0005】医療用シリコーンオイルは、典型的には有害ではないけれども、使用されるシリコーンの量を最小化し且つ注射器の構成部品上にシリコーンをより効率良く且つ計略的に配置して、過剰な潤滑剤を除去しながら注射器の可動部品間の摩擦を減らした医療用注射器及び医療用注射器を作る方法を有することが望ましい。医療用注射器に使用されるシリコーンの量を最少化する利点としては、薬剤と一緒に患者の体内に注入されるシリコーンの量を減らすか又は最少化すること、注射器の外部へのシリコーンの漏れを防止して注射器が治療従事者の手の中で滑るというようなことを減らすこと、及び潤滑剤(シリコーン)と注射器の内容物との間の相互作用を最少化すること、が含まれる。潤滑剤と注射器の内容物との間の相互作用を最少化することは、患者に投与される前のある期間貯蔵されるかもしれない特定の注射可能な薬剤が注射器に予め充填される場合には特に重要である。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】従って、注射器バレルとストッパとの間の摩擦の適切な低減を提供するのに十分な量の潤滑剤が注射器の限定された領域にのみ配置される医療用注射器アセンブリ及び同注射器アセンブリを作る方法を有することは望ましく且つ有利である。」 (18) 甲第24号証の記載事項 甲24-ア 「メルク シャープ アンド ドーム コーポレーション、原告 対 ワイス エルエルシー、特許権者 事件番号 IPR2017-00378 特許第8,562,999号 ジェームス・トムソン博士のビデオテープデポジション ・・・ 2017年10月19日 木曜日」(第1頁第5?18行) 甲24-イ 「Q では、カイロンは、1996?2004の間、そのワクチンを貯蔵するためにバイアルに頼った。これは正しいですか。 A はい、彼らはバイアルを使用した。はい。 Q 彼らはプレフィルドシリンジも使用したのか。 A 私の記憶では、彼らはプレフィルドシリンジに入った製品をいくつか持っていた。 Q では、バイアルはストッパーを含んでいた。これは正しいですか。 A 正しいです。 Q 2006年以前、カイロンはシリコーン処理されていないバイアルを使用しましたか。 A ・・・我々は両方の種類のストッパーを使用した。 Q シリコーン処理されていないものとシリコーン処理されたものの両方ですか? A はい、シリコーン処理されたものとです。それは、ワクチンの開発段階によります。 ・・・ A ・・・生産工場においては、ストッパーは、問題なく容器に高速に充填するために、典型的にはシリコーン処理されます。・・・実際、ストッパーにシリコーンオイルが適用される理由です。 しかしながら、他の場合、研究室において、ストッパーが使用される場合、--いつも又は日常的には使用されないが--それらが使われるならば、手作業の充填においては、シリコーンオイルを適用する理由はない。 ・・・ Q カイロンは2006年以前にBD Hypak プレフィルドシリンジを使用しましたか。 A 2006年以前?確証をもって言えない。 ・・・ BDは確かに、私の記憶では、当時、最大ではないもののガラスシリンジバレルの製品のメジャーなものの一つでした。・・・しかし、他のガラスの供給源もあった。 Q BD Hypak ガラスシリンジは、シリコーン処理されていましたか。 A はい。はい、ワクチンの最終パッケージに至る工程のどこかの時点で。」(第36頁第10行?第39頁第5行) 甲24-ウ 「Q ・・・2003年のカイロンの製剤は、シリコーン処理されたストッパーに保存されていなかったというのがあなたの立場ですか。 A はい、それが基本的に私の立場です。・・・私の理解で、それらの研究段階と、それらが研究室で準備されたことを考えれば、そうしたか明らかではない。それらは試験製剤である。 それで、私の宣誓において、当業者がそれらがシリコーン処理された容器に貯蔵されていなかったと理解した、と述べたと考えます。 ・・・ Q それでは、2003年に、カイロンはシリコン処理されたゴム栓付きのバイアルに入った多糖類-タンパク質コンジュゲートワクチンを上市することを企てていたことは、正しいですか。 ・・・ A はい。実際、私はカイロンがそのようなワクチンを上市したことを知っています。 Q どのワクチンでしょうか。 A 特に私が従事していたもので、Menjugate、シリコーン処理されたゴム栓付きのガラスバイアルに入ったMenC-CRMコンジュゲートが上市されたことを知ってます。」(第71頁第20行?第76頁第8行) 甲24-エ 「A 私、当業者は、彼ら(合議体注:カイロン)が市場に出したその時点で流通用に製造した全てのワクチンは、ゴム栓が入っていれば、その栓はシリコーン処理されていると理解しました。高速充填ラインでガラスバイアルを処理して充填できるのはこれが唯一の方法だからです。 ・・・ A それは標準であり、製造プロセスの重要な部分であると強く思います。 しかしながら、前から何度も議論しているように、それは、商業用の高速での充填装置においてです。 開発研究室においては、そのような制限は適用されません。」(第76頁第10?25行) (19) 甲第30号証の2の記載事項 甲30の2-ア 「健常成人における13価肺炎球菌コンジュゲートワクチンの安全性と免疫原性 ・・・ ワイス ワクチン リサーチ・・・ ・・・ Prevenarの影響を拡大するために、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、23Fを含む13価のPnCワクチンが開発されている。健常成人を対象とした2つのフェーズ1試験の結果が示されている。 ・・・ 結論:単回投与したとき、健康成人を対象としたこれらのフェーズ1試験では、13vPnCワクチンは、認可された23vPSワクチンと同様の安全性プロファイルを示した。コンジュゲートワクチンの免疫原性は、血清型に応じて同等以上であった。」(PO10.21の第1?26行) 甲30の2-イ 「カナダにおける7価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV7)導入後の侵襲性肺炎球菌(ISP)感染における血清型置換:拡大13価コンジュゲートワクチンへの影響 ・・・ PCV7血清型であるISP血清型、PCV13(PCV7血清型及び1、3、5、6A、7F、19A、www.clinicaltrials.gov / ct / gui / show / NCT00205803 参照)又はその他(PCV13以外の血清型)の割合を決定するために、PCV7以前の期間(1998-2001)とPCV7使用の最初の2年間(2003-2004)とを比較した。全ての年齢、16歳未満の子供と16歳以上の人の比較も行われた。 ・・・ 結論 PCV7血清型は、現在、全人口の中でISP感染の割合がはるかに小さく、なお減少しているが、拡大したPCV13の他の血清型によって引き起こされる割合はまだ変わっていない。PCV7の導入前に決定されたISP血清型疫学は、もはやいかなる年齢においてもPCV13の範囲を予測するために使用することはできない。」(PO10.26の第1?21行) 2 乙号証の記載事項 被請求人が提出した乙第15?17号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。 これらは全て、外国語で記載されているので、日本語による訳文にて表記する。 (1) 乙第15号証の記載事項 乙15-ア 「最初に実施された試験では1価のワクチンが用いられた(血清型6A/6B、12F)(Fattomら、1990;Lueら、1990;Sarnaikら、1990;Schneersonら、1986; Sigurdardottirら、1997;Vidarssonら、1998)。1990年代初期に2価(血清型6A、12F)(O’Brienら、1996;Steinhoffら、1994)、4価(血清型6B、14、19F、23F)(Ahmanら、1998;Arguedasら、2001;Daganら、1997a;Kayhtyら、1995;Kroonら、2000;Nieminenら、1998、1999)および5価コンジュゲートワクチン(Ahmanら、1996;Ahmedら、1996; Daumら、1997;Kingら、1996;Obaroら、1997;Pichicheroら、1997;Powersら、1996;Shellyら、1997)が試験された。さらにキャリアタンパク質としてOMPCを用いた(Andersonら、1996;Blumら、2000;Chanら、1996;Miernykら、2000;Molrineら、1995;Storekら、1997)またはCRM_(197)を用いた(Barnettら、1999;Blackら、2000、2001、2002;Chooら、2000;Nurkkaら、2001;O’Brienら、2000;Rennelsら、1998;Shinefieldら、1999;Vernacchio ら、1998;Zielenら、2000)2つの7価ワクチン(血清型4、6B、9V、14、18C,19F、23F)製剤を用いて試験された。後者は、ヒトの使用のために承認された最初のコンジュゲートワクチンである。欧州では、小児への使用は2 歳までの小児に承認された、一方米国ではワクチンは5歳までの小児に使用された(アメリカ小児科学会感染症委員会,2000)。 さらに、8価(7vPCVに血清型3を追加)コンジュゲートは破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドを用いて試験された(Jonsdottirら、2000;Nurkkaら、2001)。 現在、9価(血清型1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F;CRM_(197)-コンジュゲート)(Daganら、2003;Goldblattら、2000a;Mbelleら、1999;Mufsonら、1984; Obaroら、2000a)および11価ワクチン製剤(9価プラス血清型3および7F)(Capedingら、2003;Gatchalianら、2001;Puumalainenら、2002;Sigurdardottirら、2000;Wuorimaaら、2001a-c)が臨床開発中である。現在のところ、髄膜炎菌血清型Cワクチンとの組み合わせた9価CRM_(197)コンジュゲート、および11価の、インフルエンザ菌タンパク質を含む混合キャリア肺炎球菌コンジュゲートが、数年以内に利用できるようになる予定である。」 (第283頁左欄第35行から右欄第22行) (2) 乙第16号証の記載事項 乙16-ア 「背景. 肺炎球菌コンジュゲートワクチンの血清型の保護範囲を増加する必要性が存在する。単一キャリアタンパク質の使用はキャリアの過重量を起こし、十分なキャリア特異的Tヘルパー細胞のサポートを供給できないことにより、免疫応答を低減させるかもしれない。破傷風およびジフテリアコンジュゲート多糖の混合からなるワクチンは、この問題に対する、潜在的解決策である。 目的. この研究の目的は、キャリアとして破傷風およびジフテリアの両方をキャリアとして用いた11価肺炎球菌コンジュゲートワクチンの健康幼児における忍耐性および免疫原性を調べる事であった。アルミニウムアジュバンドの安全性の効果および免疫原性を、アジュバンドの有無によるワクチンを比較して調べた。 方法. 20人のフィンランド人および23人のイスラエル人の幼児が、アルミニウムアジュバンド有りあるいは無しのコンジュゲートワクチンを受けた。ワクチンの投与後、5日間、安全性のデータを記録した。免疫前および免疫後28日に、血清を採取した。11価の血清型多糖(PSs)に対するIgG抗体は、酵素免疫アッセイで決定した。 結果. 深刻な有害事象は生じなかった。アジュバンド製剤は局部では殆ど何も誘導しない傾向であったが、アジュバンドを含まない製剤より、全身性の反応を誘導した。両製剤とも、ワクチン特異的PSsに対する特異的IgGの増加を誘導した。3型および7F型は最も免疫原性があった、抗体は全ての対象で1μg/mlに達した。6B、14および23Fのコンジュゲートは、最も弱い免疫原性であった、それぞれ、ノンアジュバンドグループで対象の36、27および32%で、アジュバンドグループで53、38および53%で、抗体は1μg/mlに達した。 結論. 11価の混合キャリア肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、幼児において、安全であり免疫原性を有する。アジュバンドの使用は、意義のある優位性を提供しないようである。」(要約) (3) 乙第17号証の記載事項 乙17-ア 「目的:11価の肺炎球菌(11-Pn)ヒトインフルエンザタンパク質D(PD)コンジュゲートワクチンの乳児における免疫原性の調査 方法:300の対象を、無作為に、11-Pn-PDワクチン(SBBiologicals)あるいは対照を受けるかに、振り分けた。両群はまた、同時に、DTPw-HBV/Hibワクチン(SBBiologicals)も受けた。11-Pn-PDワクチンは、PDにコンジュゲートした、1μgの肺炎球菌血清型1,3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、23Fを含む。乳児は、6、10および14週齢で投与された。血清は、ドーズI投与直前、ドーズIII投与1月後に採取された。抗莢膜抗体およびオプソニン作用の力価を測定し、反応原性が報告された。 結果:ドーズIII投与1月で、抗6B(82%)および抗23F(86%)を除き、92%から100%の対象が、0.5μg/mlの力価を有した。さらに、対照と比較して、11から29倍高いGMCが観察された。11-Pn-PDを受けた57%から98%の対象が、0%から11%の対照と比較して、オプソニン作用抗体に対して血清学的陽性であった。血清型3を除き、オプソニン作用抗Pn GMTは、対照より、11-Pn-PDを受けた対象において、4から50倍高かった。同時に投与された、DTPw-HBV/Hibワクチンによって誘導される免疫応答は、両群で同様であった。安全プロファイルは両群間および11-Pn-PDとDTPw-HBV/Hib間で同様だった。」 (要旨、第1行から第16行) 第5 当審の判断 1 無効理由1-1について (1) 公知発明1について 甲1-ア?甲1-キによれば、本件特許の優先日前に、「プレベナー(Prevnar)」なる肺炎球菌コンジュゲートワクチンの注射用サスペンジョンを含むブチルゴム栓付きバイアル(タイプIガラス)及びプレフィルドシリンジ(タイプIガラス)が使用されていたことが認められ、さらに、「プレベナー(Prevnar)」は、7種類の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F及び23F)の肺炎球菌の多糖類がそれぞれCRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートされたものであり、該注射用サスペンジョン0.5mL投与量は、血清型6Bの多糖類を4μgとそれ以外の血清型の多糖類を2μg、リン酸アルミニウムを0.5mg並びに賦形剤として塩化ナトリウム及び注射用水を含有することが、本件特許の優先日前に知られていたものと認められる。 そうしてみれば、以下の発明が、本件特許の優先日前に外国において公然実施をされていた発明であるといえる(以下、「公知発明1」という。)。 (公知発明1) 「ブチルゴム栓付きガラスバイアル又はプランジャー棒付きガラス製のプレフィルドシリンジ中に含まれる肺炎球菌多糖類-タンパク質コンジュゲートの、ブチルゴム栓付きガラスバイアル又はプランジャー棒付きガラス製のプレフィルドシリンジに入れられているワクチン製剤であって、 (i)塩化ナトリウム溶液、 (ii)リン酸アルミニウム、並びに、 (iii)CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型4 2μg、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型6B 4μg、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型9V 2μg、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型14 2μg、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型18C 2μg、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型19F 2μg、及び CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型23F 2μg を含む多糖類-タンパク質コンジュゲート、 を含むワクチン製剤。」 (2) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と公知発明1を対比する。 公知発明1の「ブチルゴム栓付きガラスバイアル」及び「プランジャー棒付きガラス製プレフィルドシリンジ」は、いずれも本件発明1の「容器」に相当する。 公知発明1の「(ii)リン酸アルミニウム塩」は、本件発明1の「(ii)アルミニウム塩」に相当する。 公知発明1の「(iii)CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型4、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型6B類、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型9V CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型14、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型18C、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型19F及び CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型23F」は、それぞれ 本件発明1の「CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型4多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6B多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型9V多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型14多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型18C多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19F多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型23F多糖類」に相当する。 公知発明1の「ワクチン製剤」は、本件発明1の「製剤」に相当する。 そうすると、両発明は、 「容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの、容器に入れられている製剤であって、 (ii)アルミニウム塩、並びに、 (iii)CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ(S.pneumoniae)血清型4多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6B多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型9V多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型14多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型18C多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19F多糖類及び CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型23F多糖類 を含む多糖類-タンパク質コンジュゲート、 を含む製剤。」 の発明である点において一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 多糖類-タンパク質コンジュゲートについて、本件発明1は、 「CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型4多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6B多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型9V多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型14多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型18C多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19F多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型23F多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型1多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型3多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型5多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6A多糖類、 CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型7F多糖類および CRM_(197)ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19A多糖類」の13種類(13価)の「多糖類-タンパク質コンジュゲート」を含むのに対し、公知発明1は、 「CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖血清型4、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖血清型6B類、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖血清型9V CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖血清型14、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖血清型18C、 CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖血清型19F及び CRM_(197)キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖血清型23F」の7種類(7価)の「多糖類-タンパク質コンジュゲート」を含むワクチン製剤である点。 (相違点2) 本件発明1は、「(i)pH緩衝塩溶液、ここで該緩衝液は、約3.5から約7.5のpKaを有する」を含むのに対し、公知発明1はこれを含まない点。 (相違点3) 容器について、本件発明1は、「シリコーン処理された」容器であるのに対し、公知発明1は、ブチルゴム栓付きガラスバイアル又はプランジャー棒付きガラス製プレフィルドシリンジが「シリコーン処理された」ものであるかが明らかではない点。 (相違点4) 製剤について、本件発明1は、「シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの、シリコーンにより誘発される凝集を阻害する」ものであるのに対し、公知発明1は、このような特定がない点。 イ 相違点について 上記相違点について検討する。 (相違点1について) (A) 甲第5号証の2には、7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンに新たな血清型を追加する研究(血清型1及び5を追加する9価、更に3及び7Fを追加する11価並びに更に6A及び19Aを追加する13価ワクチンの研究)がワクチンの対象となる年齢と国の範囲を広げることができるだろうと記載され、血清型1、4、5、6B、9V、14、18C、19F及び23Fの多糖類がコンジュゲートした9価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンがヒトで免疫原性を示したことが記載されている(摘示事項甲5の2-イ?キ)。 また、甲第6号証には、血清型4、6B、9V、14、18C、19F及び23Fを含む7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤(PCV-7)に血清型1及び5を追加した9価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤(PCV-9)並びにPCV-9に血清型3及び7Fを追加した肺炎球菌コンジュゲートワクチン製剤(PCV-11)は臨床試験中であり、これらの製剤は6?35か月の子供に役立つだけでなく、もっと幼い(0?5か月)やもっと年上(36か月以上)の子供においてもカバー範囲を増加させるであろうと記載され(摘示事項甲6-イ?甲6-エ)、PCV-11に血清型6A及び19Aを追加した13種類の血清型からなる肺炎球菌ワクチンが各年齢集団の子供において主たる血清型を含むと思われると記載されている(摘示事項甲6-オ)。 そして、甲第20号証には、ワイス社の13価のワクチンのフェーズI/II臨床試験の募集に関することが記載されている(甲20-ア)。 さらに、甲第30号証の2には、ワイス社の「健常成人における13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、23F)の安全性と免疫原性」についての健常成人を対象とした「フェーズ1試験」について記載されている(摘示事項甲30の2-ア)。 上記の記載からみて、13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンは、7価の肺炎球菌(エス・ニューモニエ)コンジュゲートワクチンに血液型1、3、5、6A、7F、19Aを追加した、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、23Fからなるものであることは、本件優先日前に当業者に知られていたと認められる。 そうすると、本件特許優先日当時、公知発明1の7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンに、血清型1、3、5、6A、7F、19Aを加えた13価のコンジュゲートワクチンを開発しようとすること自体は、その動機付けがあったものといえる。 (B) しかしながら、まず、上記甲第5号証の2、甲第6号証、甲第20号証、甲第30号証の2、さらに、甲第7?11号証、甲第15号証の2、甲第16号証のいずれにも、13価の肺炎球菌多糖類(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、19A、19F、23F)をCRM_(197)に結合させたコンジュゲートを含む組成物が実際にワクチン製剤として使用し得ることを示唆する記載はない。また、本件優先日当時において多価コンジュゲートワクチンのキャリアタンパク質となり得るタンパク質としては、無毒化したジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、ヒトインフルエンザタンパク質(PD)など、複数のタンパク質が周知であり(摘示事項乙15-ア、乙16-ア、乙17-ア、甲8-イ)、それらの2種以上を組み合わせて使用することも周知であることからすれば(摘示事項乙16-ア)、13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンのキャリアタンパク質の候補となるタンパク質の種類は多数に及ぶものであるから、上記の各甲号証の記載から、13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンを得るためのキャリアタンパク質としてCRM_(197)のみを選択することが当業者に示唆されているともいえない。 ここで、甲第7、8、9、16号証には、キャリアタンパク質としてCRM_(197)のみを用いた9価の肺炎球菌コンジュゲートを含む組成物が第III相試験の段階にあること、あるいは該組成物が免疫原性を有することが記載されている(摘示事項甲7-イ、ウ、甲8-イ、甲9-イ、ウ、甲16-イ)。しかし、低い価数のコンジュゲートワクチンで採用されたキャリアタンパク質と同じキャリアタンパク質をより高い価数のコンジュゲート組成物に採用するのが常套手段であったとは認められないし、同じキャリアタンパク質を採用した場合に高い価数のコンジュゲート組成物においても製剤(ワクチン)としての効果が期待できるのが技術常識であったわけでもないから、甲第7、8、9、16号証における9価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンについての記載から13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンにおけるキャリアタンパク質としてCRM_(197)のみを選択することが当業者に示唆されていたとはいえない。 なお、甲第7、8号証には、CRM_(197)にコンジュゲートした11価の肺炎球菌多糖類コンジュゲートワクチンが「前臨床」の段階にあるとの記載があるが、「前臨床」との記載ではワクチン製剤として有用なものであったのか全く明らかではないから、11価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンとして開示されたものとは到底いえない。 (C) 一方、乙第16号証には、肺炎球菌コンジュゲートワクチンにおいて、血清型の保護範囲を増加する必要があることが記載されており、単一のキャリアタンパク質の使用はキャリアの過重量を起こし、十分なキャリア特異性Tヘルパー細胞のサポートを供給できないことにより、免疫応答を低下させるかもしれないとの指摘がされ、この問題を、破傷風及びジフテリアコンジュゲート多糖の混合からなるワクチンが解決すると記載されている。そして、キャリアとして破傷風及びジフテリアを用いた11価の混合キャリア肺炎球菌コンジュゲートワクチンが、アルミニウムアジュバントの有無にかかわらず、安全であり、免疫原性を有することが記載されている(摘示事項乙16-ア)。 つまり、乙第16号証には、肺炎球菌コンジュゲートワクチンにおいて血清の保護範囲を拡大するに当たって、単一のキャリアタンパク質を使用することはキャリアの過重量を起こし、免疫応答を低下させるかもしれないとの問題を認識し、その解決のために11価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンにおいて、DT(無毒化したジフテリアトキソイド)、TT(破傷風トキソイド)の2つのキャリアタンパク質を用いたことが示されており、この記載から価数の高い肺炎球菌コンジュゲートワクチンにおいては、単一のキャリアタンパク質を用いた場合には免疫低下が起きるおそれがあるため、複数のキャリアタンパク質を用いるのが本件特許の優先日における当業者の理解であったことがうかがえる。 (D) 上記(B)、(C)の点を踏まえれば、製剤(ワクチン)として使用できることを期待して、13価の肺炎球菌多糖類に結合させるキャリアタンパク質としてCRM_(197)のみを選択することはむしろ避けられることであり、当業者が容易に想到することはなかったといえる。 したがって、本件発明1は、公知発明1と、甲第5号証の2?11号証、甲第15号証の2、甲第16号証、甲第20号証、甲第30号証の2に記載された事項から当業者が容易になし得たものではない。 (相違点4について) 上記(A)?(D)で述べたとおり、公知発明1の7価の肺炎球菌多糖類-CRM_(197)コンジュゲートを13価の肺炎球菌多糖類-CRM_(197)コンジュゲートとすること自体当業者に容易なことではないが、この点を措き、仮に、上記7価のコンジュゲートを上記13価のコンジュゲートとするとしても、公知発明1(甲第1号証)はもちろん、請求人の提出するいずれの証拠を見ても、本件特許の優先日当時、当業者が、上記13価のコンジュゲートのシリコーンによる凝集の可能性を認識し得たと認めるべき記載は全くないから、13価のワクチン製剤を製造するに当たって、これを「シリコーンにより誘発される凝集を阻害する」ものとする、すなわち、公知発明1における7価の肺炎球菌多糖類-CRM_(197)コンジュゲートを13価の肺炎球菌多糖類-CRM_(197)コンジュゲートに変更するのと併せてシリコーンによる凝集を阻害するための手段を適用することなど、当業者はおよそ想到し得ない。 なお、甲第3号証には、免疫グロブリン(AN100226抗体)の沈殿を加速する因子の一つとしてシリコーン油の存在が挙げられているが(摘示事項甲3-エ)、免疫グロブリンと肺炎球菌多糖類-CRM_(197)コンジュゲートとは、タンパク質部分を有する点で共通するとはいえ、全く異なる物質であるから、同号証の記載からでは、13価の肺炎球菌多糖類-CRM_(197)コンジュゲートの沈殿(凝集)がシリコーン油によって加速されると当業者が認識し得るとはいえない。 ウ 本件発明1の効果について 本件発明1は、CRM_(197)をキャリアタンパク質とする、13価の肺炎球菌コンジュゲートを含む製剤に、リン酸アルミニウム塩と、約3.5から約7.5のpKaを有するpH緩衝塩溶液とを配合することにより、シリコーン処理された容器に入れても該製剤における沈殿を阻害できるとの効果を奏するものである。 そして、そのような効果は、シリコーンにより誘発される肺炎球菌多糖類-タンパク質コンジュゲートの凝集について当業者に何ら示唆しない公知発明1から予測できるものではないし、また、他のいずれの甲号証にも肺炎球菌多糖類-タンパク質コンジュゲートに対するシリコーンの影響やその解決手段について何も記載されていないから、それらの甲号証から本件発明の効果を予測することも困難であるというほかはない。 したがって、本件発明1は、格別顕著な効果を奏するものである。 エ 小括 以上のとおりであるから、相違点2、3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第4号証の2、甲第6?11号証、甲第13号証の3、甲第14号証、甲第15号証の2、甲第16号証、甲第23号証、甲第24号証、甲第30号証の2に記載された事項を参酌しても、公知発明1並びに甲第2号証、甲第3号証、及び甲第5号証の2又は甲第20号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 請求人の主張について (ア) 請求人は、相違点1について概略、以下のとおり主張する。 主張a: 本件優先日当時、多価コンジュゲートワクチンにおいて、単一のキャリアタンパク質を用いることによる明らかなメリット、例えば、効率、コスト、単純さ、有害反応の危険性の最小化、があった。 また、制度的に、過去の成功した経験とノウハウがある特定の担体タンパク質の選択も一般的であった。 したがって、優先日当時の当業者は、ワクチン中の各血清型がCRM_(197)にコンジュゲートしている7価ワクチンから9価、11価ワクチンへのワイスによる進歩により、甲第20号証に開示された13価ワクチンはCRM_(197)にコンジュゲートしていると理解した。 しかし、請求人の提出する甲号証のいずれにも、肺炎球菌の多価コンジュゲートワクチンにおいて、効率性やコスト等の問題から単一のキャリアタンパク質を用いることや過去の成功した経験とノウハウがある特定のキャリアタンパク質を選択するのが一般的であったことを述べる記載はないし、ましてや、肺炎球菌の多価コンジュゲートワクチンにおいて、単一のキャリアタンパク質を用いると免疫低下のおそれがあることが知られていてもなお、効率性やコスト等や過去の成功した経験やノウハウの点から単一のキャリアタンパク質を用いることなど全く示されていない。 よって、請求人の主張aには理由がなく、これを採用することはできない。 (イ) 請求人は相違点3に係るシリコーン処理の有無についても、概略以下のとおり主張するので、これについても触れておく。 主張b: 「本件優先日前に頒布された甲第13号証、甲第14号証の記載からみて、シリコンプランジャー、シリンジ筒の内側、バイアルゴム栓のような包装の構成要素をシリコーン処理により潤滑することが標準的な業界の慣習であったので、本件優先日当時の当業者であれば、プレベナープレフィルドシリンジはシリコーン処理された容器に入れられた製剤と理解する」(審判請求書第86頁第10行?第87頁第7行)。 確かに甲第4号証の2、甲第13号証の3、甲第14号証、甲第23号証(摘記事項甲4の2-イ、甲13の3-イ?エ、甲14-イ、甲23-ア、イ)を見ると、シリンジやバイアル栓などが潤滑化のためシリコーン処理されることが少なくないことは理解できる。 しかし、他方で、上記の甲号証の記載は、製品化された全てのシリンジやバイアル栓が潤滑化のために必ずシリコーン処理されていることまで述べているものではない。加えて、甲第13号証の3にも記載のとおり(摘示事項甲13の3-エ)、医薬エラストマー部品においてシリコーン処理以外の潤滑方法が様々知られていたことや、甲第1号証に公知発明1の容器がシリコーン処理されていることをうかがわせるような記載もないことを踏まえれば、公知発明1におけるガラスバイアルのブチルゴム栓やガラス製プレフィルドシリンジを「シリコーン処理された」ものと認定することはできない。ここで、甲第13号証の3に記載のシリコーン処理以外の潤滑方法は、医薬エラストマー部品についてのものであるが、公知発明1のブチルゴム栓が「医薬エラストマー部品」であるのは明らかであり、ガラス製プレフィルドシリンジのプランジャーの先端部分にはゴム(エラストマー)部品が設けられるから、甲第13号証の3に記載のシリコーン処理以外の潤滑方法は、公知発明1の各容器にも適用し得るものである。 また、甲第24号証に記載のジェームス・トムソン氏の宣誓供述書は、「カイロン」が市場に出したワクチンのガラスバイアルゴム栓のシリコーン処理に関する同氏個人の理解について述べたものに過ぎないから、これを以て、公知発明1の容器がシリコーン処理されていたと認めることはできない。 よって、主張bも採用できない。 主張c: 被請求人が販売していた製剤である公知発明1の容器を構成する部分のうちのいずれかがシリコーン処理されていたのか、又は、全くシリコーン処理された部分はないのかを被請求人が知っていることは明らかであるところ、この点について回答しないのは、公知発明1がシリコーン処理された容器に入っていたことを承認したに等しい(令和1年5月28日付け回答書第3頁第7行?第4頁第1行)。 要するに、請求人は、公知発明1の容器がシリコーン化されていたか否かを回答しないことを公知発明1がシリコーン処理されていたことの根拠とするようであるが、被請求人が回答しないという事実と公知発明1がシリコーン化されていたか否かといった技術的事項とは関係がないから、被請求人からの回答がないことをもって、公知発明1がシリコーン化されていたと認めることはできない。 よって、主張cも採用できない。 カ まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当しない。 よって、本件請求項1に係る特許は無効とすべきものではない。 (3) 本件発明2、7、8、16、17について 本件発明2は、本件発明1について、さらに、pH緩衝塩溶液のpHを5.5から7.5とし、本件発明7、8、16、17は、緩衝液をヒスチジン又はpH5.8のヒスチジンとし、pH緩衝液における塩を塩化ナトリウムとし、アルミニウム塩をリン酸アルミニウムと特定するものである。 本件発明2、7、8、16、17は、公知発明1と少なくとも、相違点1、4で相違することは本件発明1と同じであり、上記(2)で述べたのと同じ理由で、甲第4号証の2、甲第6?11号証、甲第13号証の3、甲第14号証、甲第15号証の2、甲第16号証、甲第23号証、甲第24号証、甲第30号証の2に記載された事項を参酌しても、公知発明1並びに甲第2号証、甲第3号証、及び甲第5号証の2又は甲第20号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、これらの発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当しない。 よって、本件請求項2、7、8、16及び17に係る特許は無効とすべきものではない。 2 無効理由1-2について 本件発明3について 本件発明3は、本件発明1について、緩衝液がリン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン又はクエン酸塩であることを特定するものであるが、本件発明1、2と同様に、公知発明1と少なくとも相違点1、4で相違するものであるから、上記1(2)で述べたのと同じ理由により、甲第4号証の2、甲第6?11号証、甲第13号証の3、甲第14号証、甲第15号証の2、甲第16号証、甲第23号証、甲第24号証、甲第30号証の2に記載された事項を参酌しても、公知発明1並びに甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証の2又は甲第20号証、あるいは、甲第2号証、甲第3号証、第4号証の2及び甲第5号証の2又は甲第20号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、この発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当しない。 よって、本件請求項3に係る特許は無効とすべきものではない。 3 無効理由1-3について 本件発明4?6、9?15、18?22について 本件発明4は、本件発明1について、pH緩衝塩溶液における塩を特定し、本件発明5、6は、アルミニウム塩を特定し、本件発明9、10は、ポリソルベート80等の界面活性剤をさらに含むことを特定し、本件発明11は、製剤中のポリソルベート80の最終濃度を特定し、本件発明12、13は、緩衝液の最終濃度及びpH値の範囲を特定したコハク酸塩を用いることを特定し、本件発明14は、さらに髄膜炎菌性多糖類又は髄膜炎菌性抗原タンパク質が含まれることを特定し、本件発明15は、さらに連鎖球菌性多糖類又は連鎖球菌性抗原タンパク質が含まれることを特定するものである。また、本件発明18?22は、本件発明1の製剤を含む容器に係るものである。 これらの発明は、公知発明1と少なくとも相違点1、4で相違することは本件発明1と同じであるから、上記1(2)で述べたのと同じ理由により、甲第4号証の2、甲第6?11号証、甲第13号証の3、甲第14号証、甲第15号証の2、甲第16号証、甲第23号証、甲第24号証、甲第30号証の2に記載された事項を参酌しても、公知発明1並びに甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証の2又は甲第20号証、あるいは、甲第2号証、甲第3号証、第4号証の2及び甲第5号証の2又は甲第20号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、これらの発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当しない。 よって、本件請求項4?6、9?15、18?22に係る特許は無効とすべきものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本件の請求項1?22に係る特許について請求人が主張する無効理由にはいずれも理由がなく、これらの特許は無効とすべきものではない。 審判費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり、審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-09-17 |
結審通知日 | 2019-09-20 |
審決日 | 2019-10-03 |
出願番号 | 特願2014-144436(P2014-144436) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Y
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 馬場 亮人、井上 明子 |
特許庁審判長 |
關 政立 |
特許庁審判官 |
冨永 みどり 岡崎 美穂 |
登録日 | 2017-08-18 |
登録番号 | 特許第6192115号(P6192115) |
発明の名称 | 免疫原性組成物を安定化させ、沈殿を阻害する新規製剤 |
代理人 | 鈴木 佑一郎 |
代理人 | 龍田 美幸 |
代理人 | 中岡 起代子 |
代理人 | 四本 能尚 |
代理人 | 今井 優仁 |
代理人 | 本阿弥 友子 |
代理人 | 泉谷 玲子 |
代理人 | 窪田 英一郎 |
代理人 | 池田 理愛 |
代理人 | 今井 浩人 |
代理人 | 矢野 恵美子 |
代理人 | 森下 梓 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 飯村 敏明 |
代理人 | 柿内 瑞絵 |
代理人 | 乾 裕介 |