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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1378207
審判番号 不服2020-14262  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-09 
確定日 2021-09-13 
事件の表示 特願2016- 21386「積層光学フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-138562〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2016-21386号(以下「本件出願」という。)は、平成28年2月6日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和2年 1月20日付け:拒絶理由通知書
令和2年 7月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年10月 9日提出:審判請求書
令和2年10月 9日提出:手続補正書


第2 令和2年10月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
令和2年10月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の本件出願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「 プリズムシート裏面に拡散シートが接着層を介して貼り合わされた積層光学フィルム、拡散シート裏面にプリズムシートが接着層を介して貼り合わされた積層光学フィルム、又は、互いにレンズ格子が交叉するように上下のプリズムシートが接着層を介して貼り合わされた積層光学フィルムにおいて、
接着層を構成する接着剤と、拡散シートの拡散凹凸面もしくはプリズムシートのレンズ凹凸面との接触角が35°以下であり、
拡散シートの場合は、
拡散凹凸面におけるJIS規格の十点平均高さをRz_(JIS)とし、凹凸頭頂から前記接着剤の接触端までの平均垂直距離をtとした場合に、0.15≦t/2Rz_(JIS)≦0.5の範囲であり、
プリズムシートの場合は、
レンズ凹凸面における凹凸頭頂から前記接着剤の接触端までの平均垂直距離をtとし、凹凸頭頂から凹凸底辺までの垂直高さをhとした場合に、0.15≦t/h≦0.5の範囲であり、
拡散シート及びプリズムシートの樹脂材の屈折率をn_(1)とし、前記接着剤硬化後の屈折率をn_(2)とした場合に、1/n_(1)≦0.85≦n_(2)/n_(1)≦1の範囲である、
ことを特徴とする積層光学フィルム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は当合議体が付与したものであり、補正箇所を示す。

「 拡散シートが接着層を介して裏面に貼り合わされたプリズムシートを下プリズムシートとし、互いにレンズ格子が交叉するように上プリズムシートが積層され、上下のプリズムシートが接着層を介して貼り合わされた積層光学フィルムにおいて、
接着層を構成する液状の接着剤の垂れ部において、前記拡散シートの拡散凹凸面もしくは前記プリズムシートのレンズ凹凸面と前記液状の接着剤との接触角が35°以下であり、
前記拡散シートは、拡散凹凸面におけるJIS規格の十点平均高さをRz_(JIS)とし、凹凸頭頂から前記接着剤の接触端までの平均垂直距離をtとした場合に、0.15≦t/2Rz_(JIS)≦0.5の範囲であり、
前記下プリズムシートは、
レンズ凹凸面における凹凸頭頂から前記接着剤の接触端までの平均垂直距離をtとし、凹凸頭頂から凹凸底辺までの垂直高さをhとした場合に、0.15≦t/h≦0.5の範囲であり、
前記拡散シート及び前記プリズムシートの樹脂材の屈折率をn_(1)とし、前記接着剤硬化後の屈折率をn_(2)とした場合に、1/n_(1)≦0.85≦n_(2)/n_(1)≦1の範囲である、
ことを特徴とする積層光学フィルム。」

2 補正の適否について
(1)本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するための必要な事項である「積層光学フィルム」について、本件出願の願書に最初に添付された明細書及び図面(「以下「出願当初の明細書等」という。)の【0055】?【0058】、【0073】?【0075】、図9等の記載に基づき、「プリズムシート裏面に拡散シートが接着層を介して貼り合わされた積層光学フィルム、拡散シート裏面にプリズムシートが接着層を介して貼り合わされた積層光学フィルム、又は、互いにレンズ格子が交叉するように上下のプリズムシートが接着層を介して貼り合わされた積層光学フィルム」を「拡散シートが接着層を介して裏面に貼り合わされたプリズムシートを下プリズムシートとし、互いにレンズ格子が交叉するように上プリズムシートが積層され、上下のプリズムシートが接着層を介して貼り合わされた積層光学フィルム」とし、「拡散シートの場合は」を「拡散シートは」とし、「プリズムシートの場合は」を「下プリズムシートは」と限定することを含むものである。

(2)また、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するための必要な事項である「接触角」について、出願当初の明細書等の【0068】、図5等の記載に基づき、「接着層を構成する接着剤と、拡散シートの拡散凹凸面もしくはプリズムシートのレンズ凹凸面との接触角が35°以下であり」を「接着層を構成する液状の接着剤の垂れ部において、前記拡散シートの拡散凹凸面もしくは前記プリズムシートのレンズ凹凸面と前記液状の接着剤との接触角が35°以下であり」と限定するとともに、接触角の記載を明らかにすることを含むものである。

(3)そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野(【0001】)及び解決しようとする課題(【0008】)が同一である。
したがって、本件補正のうち請求項1についてした補正は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしているとともに、同条5項2号の特許請求の範囲の減縮及び同条同項4号の不明瞭な記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2 独立特許要件についての判断(進歩性)
(1)本件補正後発明
本件補正後発明は、上記「1」「(2)本件補正後の特許請求の範囲」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献1及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特表2007-502010号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付与したものである。

(ア)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学ディスプレイに関し、特に光学ディスプレイに用いる光管理光学フィルムをパッケージ化する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)などの光学ディスプレイはますます一般的になり、例えば携帯電話、携帯情報端末(PDA)から電子ゲームに及ぶハンドヘルドコンピュータデバイスからラップトップコンピュータなどの大型装置、ならびにLCDモニタおよびテレビ画面に用途を見出せる。光学ディスプレイ装置内への光管理フィルムの組み込みにより、ディスプレイ性能が向上する。プリズム状構造化フィルム、反射型偏光子および拡散フィルムを始めとする各種のフィルムは、出力輝度、照明均一性、視野角、およびシステム全体の効率などのディスプレイパラメータを改善させるのに有用である。このような動作特性の向上により装置が使いやすくなるとともに、付随する電池要件の減少により電池のサイズを小さくすることが可能になり、または電池交換間隔が長くなる。電池を使用しないディスプレイにおいても光管理フィルムがディスプレイの複雑さを低減するのに有用であることが多く、輝度、均一性、電力効率、熱管理および他の特性の点で画期的な性能につながる場合がある。
【0003】
光管理フィルムは通例バックライトアセンブリとフラットパネルディスプレイとの間でディスプレイ枠内に1つ1つ積み重ねられる。フィルムのスタックを最適化することにより特定の所望の光学性能を得ることができる。しかし製造の見地からすれば、数枚の個々のフィルム片の取り扱いおよび組立からいくつかの問題が生じる恐れがある。これらの問題には特にライナーを除去する際にフィルムを損傷する危険の増加に加えて個々の光学フィルムから保護ライナーを除去するのに必要な余分な時間がある。さらに個別シートをディスプレイ枠内に挿入してフィルムのスタックを構成することは時間がかかるとともに、さらにフィルムが損傷を受ける可能性が生じる。これらの問題はすべて全体のスループットを低下させまたは歩留まりを減少させる一因となるためシステムコストが高くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した問題に鑑み本発明はディスプレイ枠に挿入する前に光学フィルムを結束する新規のパッケージ化方法に関する。この結束によりフィルムの取り扱いを容易にし、ディスプレイ装置の組立に必要な工程数を減らし、フィルムを損傷する可能性を減少させ、歩留まりを増加させる。
【0005】
一般に本発明はプリズム状構造化光指向フィルムなどの表面構造を有する光学フィルムを接着する手法に関する。本発明は表面形状を形状高さ未満の深さまで接着剤内に貫入させることにより、接着剤層を用いて1つのフィルムの構造化表面を第2のフィルムの対向面に接着させるステップを含む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特定の一実施形態において本発明はディスプレイ内の光を管理する光管理フィルムパッケージに関する。このパッケージは関連するリブ高さを有するプリズム状リブで構造化された第1の表面を有する第1の輝度向上光学フィルムを含む。第2の光学フィルムは第1の光学フィルムの第1の表面と対向する第2の表面を有する。第2の表面上に第1の接着剤層がある。第1の表面のプリズム状リブのうちの少なくともいくつかが第1の接着剤層内に貫入している。第1の接着剤層は第1の接着剤層内に貫入しているリブの関連するリブ高さ未満の厚さを有する。」

(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は液晶ディスプレイなどのディスプレイに適用可能であり、特にこのようなディスプレイを作製する工程数を削減するために有用と思われる。
【0016】
ディスプレイシステム100が図1に概略的に示されている。このシステムは通例2つのガラス層に挟持された液晶ディスプレイ(LCD)パネルなどの電子ディスプレイユニット102を含んでいる。さらにディスプレイユニット102はLCDパネルの上下に、概して偏光による画像を生成するために必要な偏光コントラストを提供する吸収型偏光子を含み得る。ディスプレイユニット102はディスプレイユニット102上に表示される画像を制御する制御ユニット103に結合し得る。
【0017】
ユーザがディスプレイユニット102により形成された画像を視認するには外光が不十分な場合、通例ディスプレイユニット102中に光を提供するバックライトアセンブリ104を用いる。特定の一実施形態ではバックライトアセンブリ104は光源106、導光体108、および1つ以上の反射層110などのいくつかの要素を含み得る。多くの用途におけるディスプレイシステム100の重要な特徴はシステム100の全厚さが薄いということである。従って光源106は一般に導光体108の側部に配置され、導光体108は光源106からの光を上方へシステム100を介してディスプレイ要素の方向へ向ける。光源106は任意の好適なタイプの光源であり得る。多くの用途においてディスプレイ100を白色光で照明することが望ましく、その場合光源106は1つ以上の蛍光灯、色が混合されて白色を作る発光ダイオード列等であり得る。ディスプレイによっては光源106を導光体108の2つ以上の縁部に沿って配置し得る。
【0018】
図示の実施形態において、導光体108には光を導光体108からディスプレイユニット102に向ける拡散反射領域112が設けられている。導光体108は光をディスプレイユニット102に向ける他のタイプの要素、例えばディスプレイ要素に面する導光体108の上面に光抽出領域を含み得る。
【0019】
バックライトアセンブリ104の他の実施形態を用いてもよい。例えばバックライトアセンブリ104に好適な反射キャビティ内に配置した一連のランプを形成してもよく、そのランプを覆う拡散板を有することが多い。バックライトアセンブリ104の設計には他の選択肢がいくつかあるが、バックライトアセンブリ104のこの特定の設計が本発明にとって重要ではないということは理解されたい。
【0020】
通例多数の光管理フィルムを光管理フィルムスタック114内のバックライトアセンブリ104とディスプレイユニット102との間に介挿する。光管理フィルムスタック114は通例ディスプレイユニットに102に入射する光の様々な光学特性を制御する多数のフィルムを含む。例えば光管理フィルムスタックは、フィルムスタック114を介して上方へ通過する光の強度を均一化する第1の拡散フィルム116を含み得る。
【0021】
フィルム118および120は、各々が上面にわたって延びる一列のプリズム形リブ119を有する構造化フィルムであってもよい。プリズム状リブは光をシステム100の軸121に向けるのに役立つ。フィルム118のリブ119は光を図の面内で変向する。フィルム120のリブは通例フィルム118のリブに垂直に配置されているため、フィルム120のリブは光を図の面外の方向に変向する。これを十字構造構成と称し得る。他の実施形態(図示せず)では層118および120をバックライトアセンブリ104から受け取った光を変向する単一構造化光学フィルムに交換し得る。
【0022】
またスタック114は反射型偏光層122も含み得る。この層は不適切な偏光状態のバックライトアセンブリ104からの光をリサイクルして画像光としてディスプレイユニット102を透過させるのに有用である。反射型偏光子122により反射された光は反射板110によって拡散反射され、いくらか偏光混合があるため、反射光の少なくとも一部分は画像光として利用する補正偏光でディスプレイユニット102を通過する。また他の拡散層(図示せず)を反射型偏光子122とディスプレイユニット102との間に介挿し得る。
【0023】
なお実際のシステム設計によっては、層116?122により示される要素のうちのいくつかが無くても追加しても他の機能的要素と置き換えてもよい。例えば1つ以上のシートをカバーシートとして追加してもよく、それが拡散特性を有しても有さなくてもよい。カバーシートは艶消し仕上げまたは画像の欠陥の出現を低減する他のタイプの乱塊表面構造を有してもよい。他の光制御フィルムを含んでもよく、例えば光制御機能を有する拡散シートがフィルムスタックに追加されることが多い。さらにバックライトは電磁遮蔽用のインジウムスズ酸化物(ITO)などの導電性コーティングを含み得る。このような導電性コーティングを別体のフィルムまたはフィルムスタック内の1つ以上の光制御フィルム上に被覆し得る。
【0024】
このようなバックライトアセンブリ104では、個々の光学フィルム層116?122の各々は従来技術では製造中に個別にディスプレイ枠に挿入される。全体のディスプレイ厚さを減少させるためにフィルム116?122の厚さを減少させることが重要であることが多いため、個々のフィルム116?122が非常に薄く作製される場合がある。その結果個々のフィルム剛性は低く、製造中の取り扱い、処理、および組立の難しさが増す恐れがある。またこれらのフィルム層は精密な光学機能性を有することが多いため、引掻またはごみなどの表面欠陥の導入がシステム全体の性能を損なう場合がある。各フィルム層は両面保護ライナーを有する状態でメーカーにより提供されることが多く、バックライトアセンブリに挿入する前に両面保護ライナーを除去しなければならない。ライナー除去動作とその結果バックライトアセンブリへの挿入は精密なフィルムを多くの欠陥導入可能状態にさらす恐れがある。このような欠陥の例には引掻ならびに静電気の蓄積によるフィルム表面への綿埃および他のごみの吸着がある。複数のフィルム層をバックライトアセンブリ内に組み込む場合、欠陥の発生/導入の可能性がさらに増大し、余分な再加工および高単価によって低製造スループットになる恐れがある。
【0025】
本発明は取り扱いおよび最終的バックライト/システムアセンブリ効率を向上させるために様々な光学フィルム層を結束する手法に関する。さらにフィルムの結束は剛性を向上させるとともに機械的により安定したフィルムになり得る。
【0026】
複数の光学層を結束する1つの方法はフィルムの各々間に接着剤層を挿入することを含む。この接着剤層はスタック全体にわたって縁部から縁部まで存在してもよく、スタックの1つ以上の縁部に沿って配置してもよく、またはフィルム層のいくつかまたはすべての領域上にパターン化してもよい。
【0027】
本発明による接着フィルムスタック200を形成する1つの手法が図2Aに概略的に図示されている。層218および220はディスプレイシステム内の光管理フィルムスタック内に見られるような異なる光学層を表している。例えば層218は層220に対向する側に構造化表面222を有する。構造化表面222は通例フィルム218を通過する光を屈折するのに用いられる形状を含む。図示の実施形態において構造化表面222はプリズム状断面を有するリブ224を有するプリズム状表面である。このようなフィルムの一例はミネソタ州セントポールのスリーエム・カンパニー(3M Company(St.Paul, Minnesota))から入手可能なBEF型フィルムである。第2のフィルム222は下面228上に接着剤層226を有する。構造化表面222の一部分は接着剤層226に貫入しているため、下部フィルム218は上部フィルム220に接着することになる。
【0028】
構造化表面222は二等辺三角形の断面を有するプリズムに限定する必要はなく、異なるタイプの断面を有するリブを含み得ることは理解されよう。例えばリブの断面は他のタイプの三角形プリズム、切頭プリズム、丸みのあるプリズム、および正弦曲線または放物線などの曲線を含み得る。さらに構造化表面222はリブで構造化することに限定する必要はなく、角錐および/または支柱で構造化してもよい。
【0029】
上部層220は任意の所望タイプのフィルム、例えば他の構造化フィルム、反射型偏光フィルム、吸収型偏光フィルム、拡散層等であってもよい。反射型偏光フィルムは任意の好適なタイプの反射型偏光子を含み、反射型偏光子には多層高分子反射偏光子、ワイヤグリッド反射型偏光子、コレステリック反射型偏光子、および拡散反射型偏光子があるがこれに限定されない。
【0030】
さらにまた構造化表面222を有する層218は、光がフィルム軸に対して大きな角度で上部層220から下部層218に通過する場合には調整フィルムとして動作する。フィルム軸はフィルムの平面に垂直に位置する。光は1つの表面を介してプリズム状リブ224のうちの1つに進入した後、次の表面で完全に内部反射されてフィルム軸に接近する方向に伝播する。
【0031】
フィルム層218および220の一方に導電性コーティング、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)の層または導電性ポリマーを設けてもよく、または接着剤226が導電性接着剤層であってもよい。導電層を設けることは電気的構成要素を電気ノイズおよび界面からの電気的遮蔽を提供するのに有用であり得る。さらに接着剤層226に顔料または染料を供給してフィルムのスタックを通過する光の可視光スペクトルを調節してもよい。
【0032】
ある状況において、光学フィルム層を接合する手法が任意の表面構造の所望の屈折および反射特性を維持する能力を提供する場合、特に空間が限定された用途においてスタック厚さに対する追加厚さが僅かであるまたは無い場合、光学フィルムのパッケージ化スタックを構成することが望ましい。接着剤層226をフィルムスタックに大きな厚さを追加せずに用いることが可能であり、それは空間が限定された用途において有利である。例えば接着剤226の薄層を、構造化表面222が接着剤226の他方側の表面228まで接着剤を貫通した状態で用いてもよい。
【0033】
状況によっては比較的厚い接着剤層を用いることが望ましい。これらの状況における用語「厚い」は、接着剤層の厚さが構造化表面の構造の高さのかなりの部分、例えば四分の一以上であることを意味する。例えばいくつかの追加機能性を接着剤層226に提供することが望ましく、この場合接着剤層の最適な厚さは構造化表面を下層へ接着するためだけに必要な厚さよりも厚い。このような場合積層プロセスを制御して構造化表面222が確実に制御深さまで接着剤層226に貫入し、図2B参照、接着剤層226の他方側の層220の表面228まで完全に貫通しないようにし得る。接着剤層226内への構造化表面222の貫入が深すぎると、構造化表面222の屈折および反射特性が許容できないほど大きく減少することになる。しかし貫入深さを制御することは構造化層のこのような屈折および反射特性の劣化の可能性を減少させる一方で、構造化表面と下層との間に接着力を提供するとともに接着剤に所望の光学特性を提供する。
【0034】
接着剤層226内に延びる表面形状250の拡大図が概略的に図2Cに図示されている。表面形状の高さはhであり、接着剤層226の厚さはdである。図示の実施形態において形状250は上部層の表面228に達するように接着剤層226内に押し込まれている。構造化表面222の光力、つまり反射および屈折特性は接着剤226の層が薄い場合はあまり影響を受けない。厚さdは高さh未満でなければならないが、好適にはhの50%未満、より好適にはhの20%未満である。図示しない他の実施形態では形状250を表面228に達するように接着剤層226内に押し込まなくてもよい。その代わり形状250を部分的に接着剤層226内に押し込んでもよい。このような場合、接着剤層内への貫入深さがhの50%未満であることが好ましく、hの20%未満であることがより好ましい。
【0035】
本発明の他の形状が図2Dに図示されており、接着剤262の層内に貫入している形状260を示している。形状260に近接する接着剤は必ずしも上部層の表面266に平行に存在せず、形状260の側部に沿って吸い上げてもよい。ウィッキング264の範囲はいくつかの要因、例えば接着剤として用いる材料、接着材料の(流動性)、接着材料の架橋度、接着材料および構造の表面エネルギー、特徴260を接着材料内を貫通させる温度、ならびに積層プロセスの圧力、速度、および温度などの積層プロセスのプロセス条件などによる。
【0036】
光線270の一例が形状260を通過するように示されており、どのように光が屈折面272の部分274に屈折されて表面272と接着剤262との間の間隙276に進入するかを図示している。接着剤262に接する屈折面272の一部分を通過している他の光線278が示されている。全体表面272を光で照明し得る点で全体表面272が活性(アクティブ)であると説明し得る。アクティブ表面272の一部分280が接着剤262に接している一方、他の部分274は接着剤262に接していない。アクティブ表面272が接着剤に接しているとアクティブ表面272の反射および屈折特性が変化するため、接着剤層が薄い場合にアクティブ表面272の反射および屈折特性の変化が減少する。しかし十分な接着力を提供して、例えばディスプレイの製造中に取り扱う際に接着層が互いに剥離しないようにすることも重要である。
【0037】
上記に提案したように、接着剤層は単なる接着よりも機能性を提供し得る。例えば拡散粒子を接着剤内に分散することにより大きな拡散特性を獲得し得る。他の例において接着剤層に染料および/または顔料を提供してフィルムスタックを通過する光を着色し得る。また例えば接着剤に位相が接着剤混合物の残り部分と離れた成分を含むなどの他の方法で拡散特性を追加し得る。
・・・省略・・・
【0055】
積層構造は外観の均一性を向上させる能力を提供する。この特性は以下の作用のうちの1つから生じ得る。1つの作用は検査可能な表面の排除である。シートの中心に生じる欠陥は積層構造の自然拡散によって隠蔽し得るため、これらの異形を非機能化する。他の作用は接着剤層によるプリズム先端の屈折率適合である。損傷を受けたプリズムの先端を接着剤に埋め込んでもよい。そのためプリズムの先端は屈折率が少なくともある程度一致するため、接着剤内に埋め込まれた損傷を受けた先端は大きな欠陥を生じにくい。先端の小さな欠陥は完全に消える一方、先端の大きな欠陥は大きさが減少する。他の作用は積層構造により提供されるさらなる拡散である。これは2つの別の配光から生じると思われる。一方の配光はスタックを通過する光の通常の配光であり、他方は接着剤と接する領域における屈折および反射差により生じる新たな配光である。これらの2つの異なる配光は混合光になり画像をより分解しにくくする。」

(ウ)図1


(エ)図2A


(オ)図2B


(カ)図2C


(キ)図2D


イ 引用発明
引用文献1の【0020】?【0026】、図1には、第1の拡散フィルム116、フィルム118、フィルム120をこの順に含む光管理フィルムスタック114が記載されている。そうしてみると、引用文献1には、光管理フィルムスタック114として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「第1の拡散フィルム116、フィルム118、フィルム120をこの順に含む光管理フィルムスタック114であって、
フィルム118および120は、各々が上面にわたって延びる一列のプリズム形リブを有する構造化フィルムであって、フィルム120のリブはフィルム118のリブに垂直に配置されている十字構造構成であり、
フィルムの各々間に接着剤層を挿入して複数のフィルムを結束する、
光管理フィルムスタック114。」

(3)対比
本件補正後発明と引用発明を対比する。

ア 拡散シート
引用発明の「光管理フィルムスタック114」は、「第1の拡散フィルム116、フィルム118、フィルム120をこの順に含む」。
技術的にみて、引用発明の「第1の拡散フィルム116」は、本件補正後発明の「拡散シート」に相当する。

イ プリズムシート
上記アで述べた構成に加え、引用発明の「フィルム118および120」は、「各々が上面にわたって延びる一列のプリズム形リブを有する構造化フィルムであって、フィルム120のリブはフィルム118のリブに垂直に配置されている十字構造構成であ」る。
これら構成からみて、引用発明の「プリズム形リブ」は、本件補正後発明の「レンズ格子」に相当する(当合議体注:引用発明の「プリズム形リブ」がレンズとして機能することは、引用文献1の【0021】の記載からも確認できる。)。
また、これら構成からみて、引用発明の「フィルム118および120」は、互いに一列のプリズム形リブが交叉するように積層されるといえる。さらに、引用発明の「フィルム118および120」のいずれか一方のフィルムは上であり、もう一方のフィルムは下であるといえる。
そうしてみると、引用発明の「フィルム118および120」は、本件補正後発明の「上下のプリズムシート」に相当する。また、引用発明の「フィルム118および120」は、本件補正後発明の「上下のプリズムシート」の「下プリズムシートと」、「互いにレンズ格子が交叉するように上プリズムシートが積層され」との要件を満たす。

ウ 積層光学フィルム
上記アの構成からみて、引用発明の「光管理フィルムスタック114」はフィルムであるといえる。
上記ア及びイの対比結果並びに上記ア及びイで述べた引用発明の構成を総合すると、引用発明の「光管理フィルムスタック114」は、本件補正後発明の「積層光学フィルム」に相当する。また、引用発明の「光管理フィルムスタック114」は、本件補正後発明の「積層光学フィルム」と、「拡散シート」及び「プリズムシート」を「下プリズムシートとし、互いにレンズ格子が交叉するように上プリズムシートが積層され」との点で共通する。

(4)一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「 拡散シート及びプリズムシートを下プリズムシートとし、互いにレンズ格子が交叉するように上プリズムシートが積層された積層光学フィルム。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は、以下の点で相違するか、一応相違する。

(相違点1)
本件補正後発明は、「下プリズムシート」が「拡散シートが接着層を介して裏面に貼り合わされたプリズムシート」であるとともに、「積層光学フィルム」が「上下のプリズムシートが接着層を介して貼り合わされた」ものであるのに対して、引用発明は、「第1の拡散フィルム116、フィルム118、フィルム120をこの順に含」み、「フィルムの各々間に接着剤層を挿入して複数のフィルムを結束する」ものである点。

(相違点2)
「接着層」が、本件補正後発明は、「接着層を構成する液状の接着剤の垂れ部において、前記拡散シートの拡散凹凸面もしくは前記プリズムシートのレンズ凹凸面と前記液状の接着剤との接触角が35°以下であ」るのに対して、引用発明は、「フィルムの各々間に接着剤層を挿入して複数のフィルムを結束する」ものである点。

(相違点3)
「拡散シート」が、本件補正後発明は、「前記拡散シートは、拡散凹凸面におけるJIS規格の十点平均高さをRz_(JIS)とし、凹凸頭頂から前記接着剤の接触端までの平均垂直距離をtとした場合に、0.15≦t/2Rz_(JIS)≦0.5の範囲であ」るのに対して、引用発明の「第1の拡散フィルム116」は、凹凸面を有するかどうかが明らかでなく、上記範囲を満たすかも明らかでない点。

(相違点4)
「下プリズムシート」が、本件補正後発明は、「レンズ凹凸面における凹凸頭頂から前記接着剤の接触端までの平均垂直距離をtとし、凹凸頭頂から凹凸底辺までの垂直高さをhとした場合に、0.15≦t/h≦0.5の範囲であ」るのに対して、引用発明は、「第1の拡散フィルム116、フィルム118、フィルム120をこの順に含」み、「フィルムの各々間に接着剤層を挿入して複数のフィルムを結束する」ものである点。

(相違点5)
本件補正後発明は、「前記拡散シート及び前記プリズムシートの樹脂材の屈折率をn_(1)とし、前記接着剤硬化後の屈折率をn_(2)とした場合に、1/n_(1)≦0.85≦n_(2)/n_(1)≦1の範囲である」のに対して、引用発明の「散乱シート」、「プリズム118およびプリズム120」及び「接着剤」の屈折率は明らかでなく、引用発明は、そのように特定されていない点。

(5)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「光管理フィルムスタック114」は、「第1の拡散フィルム116、フィルム118、フィルム120をこの順に含む」とともに、「フィルムの各々間に接着剤層を挿入して複数のフィルムを結束する」ものである。
そうしてみると、引用発明の「光管理フィルムスタック114」は、「第1の拡散フィルム116」が「接着剤層」を介して「フィルム120」の裏面に貼り合わされ、さらに、「フィルム118」と「フィルム120」が「接着剤層」を介して貼り合わされたものである。また、引用発明において、「第1の拡散フィルム116」と「フィルム118」を「接着剤層」で貼り合わせたものを「下プリズムシート」と称し、「フィルム120」を上フィルムと称しても、物としての構成は変わらない(当合議体注:本件補正後発明においても、「拡散シートが接着層を介して貼り合わされたプリズムシート」を「下プリズムシート」とし、もう一方のプリズムシートを「上プリズムシート」としている。)。
そうしてみると、引用発明は、「第1の拡散フィルム116」が「接着剤層」を介して裏面に貼り合わされた「フィルム118」を下フィルムとし、上フィルムである「フィルム120」が積層され、上下の「フィルム120」及び「フィルム118」が「接着剤層」を介して貼り合わされたといえる。
したがって、上記相違点1は、実質的な差異ではない。

イ 相違点2について
引用文献1の【0035】、図2C、図2Dにおいて、形状260の側部に沿って接着剤のウィッキングが生じていることが記載されている。ここで、引用文献1の接着剤はウィッキングが生じることから、液状の接着剤であるといえる。また、上記アで述べたように、引用発明の「フィルム118」及び「フィルム120」は、「接着剤層」を介して貼り合わされたといえるから、引用発明の「フィルム118」の「上面にわたって延びる一列のプリズム形リブ」の側部にも、接着剤のウィッキングが生じるものと考えられる。そして、一般に、接着剤は濡れ性をよくするために接触角を小さくするものであるから、引用発明において、「フィルム118」の「上面にわたって延びる一列のプリズム形リブ」と液状の「接着剤」との接触角は35°以下である蓋然性が高い。
したがって、上記相違点2は、実質的な差異ではない。
仮に、相違するとしても、接着剤は濡れ性をよくするために接触角を小さくするものであることを心得た、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば、上記相違点2に係る本件補正後発明の構成とすることは、容易に想到し得ることである。

ウ 相違点3について
拡散フィルムとして、拡散凹凸面を有するものは周知技術であるから、引用発明の「第1の拡散フィルム116」として凹凸面を有するものを用いることは、当業者にとって適宜選択可能な設計事項である。
ここで、引用文献1の【0033】及び【0034】には、それぞれ、「状況によっては比較的厚い接着剤層を用いることが望ましい。これらの状況における用語「厚い」は、接着剤層の厚さが構造化表面の構造の高さのかなりの部分、例えば四分の一以上であることを意味する。例えばいくつかの追加機能性を接着剤層226に提供することが望ましく、この場合接着剤層の最適な厚さは構造化表面を下層へ接着するためだけに必要な厚さよりも厚い。このような場合積層プロセスを制御して構造化表面222が確実に制御深さまで接着剤層226に貫入し、図2B参照、接着剤層226の他方側の層220の表面228まで完全に貫通しないようにし得る。接着剤層226内への構造化表面222の貫入が深すぎると、構造化表面222の屈折および反射特性が許容できないほど大きく減少することになる。しかし貫入深さを制御することは構造化層のこのような屈折および反射特性の劣化の可能性を減少させる一方で、構造化表面と下層との間に接着力を提供するとともに接着剤に所望の光学特性を提供する。」及び「接着剤層226内に延びる表面形状250の拡大図が概略的に図2Cに図示されている。表面形状の高さはhであり、接着剤層226の厚さはdである。図示の実施形態において形状250は上部層の表面228に達するように接着剤層226内に押し込まれている。構造化表面222の光力、つまり反射および屈折特性は接着剤226の層が薄い場合はあまり影響を受けない。厚さdは高さh未満でなければならないが、好適にはhの50%未満、より好適にはhの20%未満である。」と記載されている(当合議体注:下線は当合議体が付与した。)。上記記載から、表面形状の高さhと接着剤層226の厚さの比は、0.25(四分の一以上)≦t/h<0.50(50%未満)であることが好ましいと読み取れる。
引用文献1の上記記載に接した当業者であれば、引用発明の「第1の拡散フィルム116」として凹凸面を有するものを適用するにあたって、「接着剤層」の厚さの「第1の拡散フィルム116」の凹凸面の高さに対する比を0.25以上0.5未満の範囲内とすることは、当然なし得ることである。そして、この範囲は、上記相違点3に係る凹凸頭頂から接着剤の接触端までの平均垂直距離tの拡散シートの拡散凹凸面におけるJIS規格の十点平均高さRz_(JIS)に対する比の数値範囲と重複するものである。
そうしてみると、接着力と反射や屈折特性等の光学特性を考慮して、引用発明の「接着剤層」の厚さの「第1の拡散フィルム」の凹凸面の高さに対する比を上記相違点3に係る数値範囲とすることは、当業者にとって適宜選択可能な設計事項にすぎない(当合議体注:このことは、特開2009-223197号公報において、【0035】における光拡散性基板の十点平均粗さと【0050】の接着材層の厚さとの関係からも確認できる。)。
したがって、上記相違点3に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

エ 相違点4について
上記アで述べたように、引用発明において、「第1の拡散フィルム116」と「フィルム118」を「接着剤層」で貼り合わせたものを下フィルムとし、上フィルムである「フィルム120」が積層され、上下の「フィルム120」及び「フィルム118」が「接着剤層」を介して貼り合わされたといえる。また、上記ウで述べたように、引用文献1の【0033】及び【0034】の記載から、表面形状の高さhと接着剤層226の厚さの比は、0.25(四分の一以上)≦t/h<0.50(50%未満)であることが読み取れる。
引用文献1の上記記載に接した当業者であれば、引用発明の「接着剤層」の厚さの「フィルム118」の「プリズム形リブ」の高さに対する比を0.25以上0.50未満の範囲内とすることは、当然なし得ることである。そして、この範囲は、上記相違点4に係る数値範囲の範囲内である。
したがって、上記相違点4は実質的な差異ではない。
仮に、相違するとしても、上記相違点4に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

オ 相違点5について
引用発明において、「第1の拡散フィルム116」及び「フィルム118およびフィルム120」の反射や屈折特性等の光学特性を得るためには、屈折率をある程度の大きさとしなければならないので、「第1の拡散フィルム116」及び「フィルム118およびフィルム120」の屈折率は、1.19(1/0.85)よりも十分大きいものであることが一般的である。
また、引用文献1の【0055】には、「積層構造は外観の均一性を向上させる能力を提供する。」、「他の作用は接着剤層によるプリズム先端の屈折率適合である。」と記載されている。上記記載に接した当業者であれば、引用発明において、「第1の拡散フィルム116」及び「フィルム118およびフィルム120」の屈折率と「接着剤」の屈折率の差を小さくすることは、当然なし得ることである。
さらに、反射や屈折特性等の光学特性を担うのは「第1の拡散フィルム116」及び「フィルム118およびフィルム120」であるから、「第1の拡散フィルム116」及び「フィルム118およびフィルム120」の屈折率を「接着剤」の屈折率よりも大きくすることはごく自然なことである。
そうしてみると、引用発明において、上記相違点5に係る本件補正後発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(6)発明の効果について
本件補正後発明の効果について、本件出願の明細書の【0019】には、「本発明の積層光学フィルムによれば、フィルム同士の接着力を高めることでシートの撓みの発生を防止できるといった効果を有する。」、「また、レンズ横断方向の視野角輝度特性の輝度半値角範囲の拡大と共に、視野角内の累積輝度増加あるいは平均輝度の増加により、表示装置の広視野角化と共に表示品位向上が図れるといった効果を有する。」と記載されている。
しかしながら、このような効果は、引用発明の構成から当業者が予測できる範囲内のものである。

(7)審判請求人の主張について
審判請求人は、「引用文献1では、プリズム状リブのフィルムを積層したものであり、・・・接着層を構成する液状の接着剤の垂れ部における凹凸面と液状の接触角と、凹凸頭頂から接着剤の接触端までの平均垂直距離tと高さの割合であるr_(d)=t/2R_(ZJIS)やr_(P)=t/hをパラメータと、シートの樹脂材の屈折率と接着剤硬化後の屈折率のパラメータとを用いて、フィルム同士の接着力を高めつつ、視野角輝度特性を向上させるという技術思想の開示乃至示唆は見当たらない。」と主張する。
しかしながら、上記(5)で述べたとおりであるから、審判請求人の上記主張は、採用できない。

(8)小括
本件補正後発明は、本件補正後発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 独立特許要件についての判断(明確性)
(1)本件補正後発明は、「接着層を構成する液状の接着剤の垂れ部において、前記拡散シートの拡散凹凸面もしくは前記プリズムシートのレンズ凹凸面と前記液状の接着剤との接触角が35°以下であり」との構成を具備する。
上記構成からみて、「接着剤の垂れ部」は、「拡散シートの拡散凹凸面」や「プリズムシートのレンズ凹凸面」の形状に依存するものと考えられる。
しかしながら、本件補正後発明において、「接着剤の垂れ部」の形状について具体的な記載はなく、また、「拡散シートの拡散凹凸面」や「プリズムシートのレンズ凹凸面」の形状について具体的な記載もない。さらに、請求項2において、「θ/2法で測定される接触角が35°以下」と記載されているものの、本件補正後発明との関係が不明である。

(2)これに対して、本件明細書において、【0023】には、「UV硬化後の拡散凹凸面及びレンズ凹凸面と接着剤との接触角は35°以下であり」、【0044】には、「図13(2)には、図13(1)における部位F_(2)を拡大して示した断面図である。図13(2)に示すように、接触角G_(2)は20°、接触角G_(3)は21°となっている。」、【0068】には、「接着剤は液状のもの」と記載されているものの、「接触角G_(1)は、略1°となっている」とそれぞれ記載されている。そうすると、【0023】と【0068】の記載は整合しておらず、本件補正後発明の接触角を規定する「接着剤」が硬化後のものであるのか液状であるのかが不明である。また、【0044】、【0068】の接触角についての記載は、いずれも定義や測定方法が不明であり、まして、θ/2で測定されたものともいえない。さらには、接触角の上限である35°の根拠が示されているものでもない。
また、「接着剤の垂れ部」について、本件明細書の【0068】及び図5に「垂れ部が形成される」ことが記載されていることにとどまり、「垂れ部」の具体的な記載はない。「拡散シート」について、本件明細書の【0025】には、「拡散シート5の拡散層5aの凹凸は、ランダムに設けられている。」と記載されていて、図12の記載を参照しても、拡散シート5の拡散層5aの凹凸の形状を特定することができない。「プリズムシート」について、本件の特許請求の範囲の請求項5及び本件明細書の【0015】には、「プリズムシートにおいて、レンズ凹凸頭頂部は、円弧形状のRを有する凸型面、かまぼこ形状の凸型面、半球面、多角錘凸型面、或は、頂点を有する凸形状」と記載されていて、プリズムシートのレンズ凹凸面の種類は多岐にわたるものであり、特定することができない。
仮に、接触角を液状である接着剤がθ/2法で測定されるものと定義した場合、上述したように拡散シート5の拡散層5aの凹凸は不明である上、凹凸面は斜面なので斜面で測定したものを意味するのか、それとも通常の測定法である水平面で測定したものを意味するのか不明である。仮に、接触角を硬化後の接着剤で測定されるものと定義した場合、どこまでの角度を接触角とするのかが不明である。
さらに、本件明細書において上記以外に「接触角」について格別の記載はない。
そうしてみると、本件明細書を参酌しても、本件補正後発明の「接着剤の垂れ部」、「拡散シートの拡散凹凸面」及び「プリズムシートのレンズ凹凸面」の構成を特定することができない。さらに、「前記拡散シートの拡散凹凸面もしくは前記プリズムシートのレンズ凹凸面と前記液状の接着剤との接触角」も同様に特定することができず、本件補正後発明の「接触角」が明確であるとはいえない。

(3)審判請求人は、令和2年10月9日提出の審判請求書において、「補正後の請求項1は、上述のとおり、「接着層を構成する液状の接着剤の垂れ部において、前記拡散シートの拡散凹凸面もしくは前記プリズムシートのレンズ凹凸面と前記液状の接着剤との接触角が35°以下であり、」との記載であり、「接触角」を、通常の意味(液体に対して用いられるものの意味)であることが明確になったと思料する。また、接着層を構成する液状の接着剤の垂れ部において、拡散凹凸面もしくはレンズ凹凸面と液状の接着剤との接触角であることが明確になり、接着層とプリズムシートの間のどの部分の角度を指しているのかも明らかになったと思料する。よって、補正後の請求項1に係る発明は明確である。」と主張している。
しかしながら、上記(1)及び(2)で述べたとおりであるから、審判請求人の上記主張は認められない。

(4)したがって、本件補正後発明は、「接着層を構成する液状の接着剤の垂れ部において、前記拡散シートの拡散凹凸面もしくは前記プリズムシートのレンズ凹凸面と前記液状の接着剤との接触角が35°以下であり」との点において、明確であるということができない。

(5)以上のとおりであるから、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず、本件補正後発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正の却下の決定のむすび
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]1(1)に記載された事項によって特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、[理由1]本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、[理由2]本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない、という理由を含むものである。

3 原査定の拒絶の理由1(進歩性)についての判断
(1)引用文献の記載及び引用発明
引用文献1の記載及び引用発明は、上記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。

(2)対比及び判断
本願発明は、前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から、上記「第2」[理由]1(3)で述べた限定を除いたものである。また、本願発明の構成を全て具備し、これにさらに限定を付したものに相当する本件補正後発明は、上記「第2」[理由]2で述べたとおり、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 原査定の拒絶の理由2(明確性)についての判断
本願発明は、「接着層を構成する接着剤と、拡散シートの拡散凹凸面もしくはプリズムシートのレンズ凹凸面との接触角が35°以下であり」との構成を具備する。
本件補正前の特許請求の範囲の請求項2の「前記拡散凹凸面もしくは前記レンズ凹凸面に対する溶剤希釈のUV硬化接着剤液の濡れ性は、θ/2法で測定される接触角が35°以下であり」との記載されているものの、本願発明において「接着剤」が液状であるかどうかは、不明である。
これに対して、本件明細書の「接触角」についての記載は上記第2「3(2)」で示したとおりであり、本件明細書には、接触角を規定する「接着剤」が硬化後のものも液状のものも記載されている。
そうしてみると、本件明細書を参酌しても、本願発明において、接触角を規定する「接着剤」が硬化後のものであるのか液状であるのかが不明であり、本願発明の「接触角」を特定することができず、この点において、本願発明は、明確であるということができない。
したがって、本件出願の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、また、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-06-25 
結審通知日 2021-06-28 
審決日 2021-07-30 
出願番号 特願2016-21386(P2016-21386)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 537- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 奈津子後藤 慎平  
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 井口 猶二
井亀 諭
発明の名称 積層光学フィルム  
代理人 特許業務法人グローバル知財  
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