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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C02F
管理番号 1378239
審判番号 不服2020-4524  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-03 
確定日 2021-09-16 
事件の表示 特願2017-520614「シアン含有廃水の処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日国際公開、WO2016/190108〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)5月11日(優先権主張 平成27年5月22日、同年10月19日、平成28年1月25日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年10月18日付け:拒絶理由通知書
令和 1年12月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年12月25日付け:拒絶査定
令和 2年 4月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年4月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年4月3日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
令和2年4月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、本件補正前後の特許請求の範囲のうち、請求項1の記載は、次のとおりである。

(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「アンモニウムイオンを含有するシアン含有廃水に、次亜塩素酸塩および過酸化水素を別々に添加して、該廃水中のシアンの分解および/またはシアンとの水不溶性の化合物の生成を生じさせて該廃水からシアンを除去することからなるシアン含有廃水の処理方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、令和1年12月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「アンモニウムイオンを含有するシアン含有廃水に、次亜塩素酸塩および過酸化水素を同時または別々に添加して、該廃水中のシアンの分解および/またはシアンとの水不溶性の化合物の生成を生じさせて該廃水からシアンを除去することからなるシアン含有廃水の処理方法。」

2 本件補正の適否
(1)目的要件について
本件補正のうち、特許請求の範囲の請求項1についてする補正についてみると、当該補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「次亜塩素酸塩および過酸化水素」の添加の方法について、「同時または別々に添加」するとされていたものを「別々に添加する」とし、選択肢の一部を削除するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件について
前記(1)のとおり、請求項1についてする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
ア 本件補正発明の認定
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。

イ 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開昭52-26762号公報(昭和52年2月28日出願公開。ここでは「引用刊行物」という。)には、次の記載がある。
(ア)「2.特許請求の範囲
1. 酸化剤として、一重項酸素と呼ばれる励起状態で得られる酸素を使用することを特徴とする水の酸化精製法。
2. 一重項酸素を、過酸化水素と次亜塩素酸ナトリウムとの反応により、処理されるべき水中で、その場で製造する特許請求の範囲第1項記載の方法。
・・・(中略)・・・
4. シアン化物を含有する工業排水を精製する特許請求の範囲第1項?第3項のいずれかに記載の方法。」(第1頁左下欄第4?17行)

(イ)「3.発明の詳細な説明
本発明は、一重項(シングレツト)酸素(sing-let oxygen)(^(1)O_(2))として知られている励起状態の酸素を使用して酸化を行うことからなる、水、特に、工業排水および河川から採取した水の処理方法に関する。
過酸化水素、塩素または次亜塩素酸ナトリウムのごとき酸化剤を使用して、水を精製すること、特に、シアン化物、シアンヒドリン、フエノールのごとき有毒物質を含有する工業排水を処理すること、および飲料水を得るために有機物質を含有する水の化学的酸素要求量(COD)を減少させることは既知である。
例えば、シアン化物を含有する水から、毒性があるという理由で特に有害な残留物であるシアン化物を除去するための種々の方法が提案されている。」(第1頁右下欄第1?17行)

(ウ)「 水を精製するための酸化剤の使用について種々研究した結果、今般、本発明者はシアン化物、硫シアン化物、シアンヒドリンフエノール類、亜硝酸塩、硫化物、アルデヒド、6価クロムのごとき有毒物質の当初の濃度に関係なく、特に有利な条件下で、有毒物質を実際上含有していない排水を得ることができそしてまた水の化学的酸素要求量を実質的な割合で低下させ得る方法を開発した。
工業排水および工業用水を処理するためのこの新規な方法は、酸化剤として、一重項酸素(^(1)O_(2))として知られる、電子的に励起された状態で得られる酸素を使用することを特徴とする。」(第2頁左下欄第4?15行)

(エ)「 シアン化物を含有する水の処理においては、一重項酸素のシアン化物に対する作用により、つぎの反応式に従つて、シアン酸塩が形成される:
2CN^(-)+^(1)O_(2)→2CNO^(-)
H_(2)O_(2)-NaClOの併用またはH_(2)O_(2)-Br_(2)の併用により生ずる一重項酸素の作用と、これらの酸化剤を別々に使用した場合の作用とを比較することにより、一重項酸素が非常にすぐれた結果を与えることが判る。反応はより速く行われるが、酸化剤は少量しか過剰に使用する必要がない。更に、反応の制御が容易でありまた、処理された水のpHを調整する必要もない。」(第3頁左上欄第9?20行)

(オ)「 本発明の方法のこの好ましい実施態様によれば、H_(2)O_(2)-NaClOの組合せを、NaClO1モルについてH_(2)O_(2)1モルの割合で使用しそして反応媒体のpHを7?12、好ましくは約9に保持しながら、つぎの反応式:
NaClO+H_(2)O_(2)→NaClO+H_(2)O+^(1)O_(2) (1)
に従つて、処理されるべき水または水溶液に作用させる。」(第3頁右上欄第20行?同頁左下欄第7行)

(カ)「 一重項酸素は非常に活性であるため、有毒物質を完全に分解するのに、通常、実質的に過剰の酸化剤を使用する必要はない。」(第3頁右下欄第5?7行)

(キ)「 一重項酸素を発生する酸化剤の、処理されるべき水への添加は任意の順序で行い得る。しかしながら、排水の不連続的処理の場合には、最初に、過酸化水素の全部または一部を1?70%の濃度の水溶液の形で添加しついで塩素含有量(Chlor-metric)1?50°の濃度の次亜塩素酸ナトリウムを導入することが好ましい。排水が濃厚な場合には、排水の加熱を防止するために、両者の酸化剤を稀薄な溶液の形で導入することが多くの場合好ましい。」(第4頁右上欄第2?11行)

引用発明の認定
前記イ(ア)の特許請求の範囲1、2、4の記載をまとめると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「酸化剤として、一重項酸素と呼ばれる励起状態で得られる酸素を使用する水の酸化精製法であって、
一重項酸素を、過酸化水素と次亜塩素酸ナトリウムとの反応により、処理されるべき水中で、その場で製造し、
シアン化物を含有する工業排水を精製する方法。」

エ 本件補正発明と引用発明との対比
(ア)両者の相当関係
a 本件補正発明における「シアン含有廃水」の「シアン」は、本願明細書の【0001】、【0002】などの記載からみて、シアン化物などを広く包含するものと解されるから、引用発明の「シアン化物を含有する工業排水」は、本件補正発明の「シアン含有廃水」に相当する。

b 引用発明の「次亜塩素酸ナトリウム」は、次亜塩素酸塩の下位概念であるから、本件補正発明の「次亜塩素酸塩」に相当する。

c 引用発明の「工業排水を精製する方法」は、工業排水を処理するものであるから、本件補正発明の「廃水の処理方法」に相当する。

(イ)両者の一致点・相違点の認定
前記(ア)の相当関係からみて、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりであると認められる。

【一致点】
「シアン含有廃水に、次亜塩素酸塩および過酸化水素を添加する、シアン含有廃水の処理方法。」

【相違点1】
シアン含有廃水について、本件補正発明は、「アンモニウムイオンを含有する」と特定しているのに対し、引用発明は、そのような特定を有していない点。

【相違点2】
次亜塩素酸塩および過酸化水素の添加の方法について、本件補正発明は、「別々に添加」すると特定しているのに対し、引用発明は、そのような特定を有していない点。

【相違点3】
処理について、本件補正発明は、「廃水中のシアンの分解および/またはシアンとの水不溶性の化合物の生成を生じさせて該廃水からシアンを除去することからなる」と特定しているのに対し、引用発明は、そのような特定を有していない点。

オ 相違点についての検討(容易想到性についての判断)
(ア)相違点1について
引用刊行物には、過酸化水素、塩素または次亜塩素酸ナトリウムのごとき酸化剤を使用して、シアン化物、シアンヒドリン、フエノールのごとき有毒物質を含有する工業排水を処理することは既知であり(前記イ(イ))、引用発明によれば、シアン化物、硫シアン化物、シアンヒドリンフエノール類、亜硝酸塩、硫化物、アルデヒド、6価クロムのごとき有毒物質の当初の濃度に関係なく、特に有利な条件下で、有毒物質を実際上含有していない排水を得ることができることが記載されているから(前記イ(ウ))、引用発明は、工業排水の種類やそれに含まれる有害物質の種類を限定するものではなく、従来から知られる一般的な工業排水を広く、その対象とするものと理解するのが合理的である。
他方、一般的な工業排水についてみると、周知文献1(特開昭58-180297号公報)には、「都市廃水及び工業廃水により環墳汚染の問題が生じた結果として、これら廃水の処理に関して多大の興味が向けられている。環境保護に関する関心が高まりかつ連邦、州及び地方条例が制定された結果として、多くの研究開発努力が種々の水源からの廃水、特に工場からの廃水の処理に向けられてきた。・・・廃水が工業的操作から生ずる場合には、該廃水は都市廃水中には通常存在しないような問題の汚染物を含有し得る。かゝる廃水は汚染物としてアンモニア、シアン化物、チオシアン酸塩、硫化物及び有機物質を場合によつては錯体の形で含む工業廃水を包含する。さらに、工業廃水は都市廃水中に存在する汚染物含量よりも著しく高濃度の汚染物を含み得る。」(第14頁右下欄第10行?第15頁右上欄第7行)と記載され、周知文献2(特開平8-281279号公報)には、「【0015】本発明が対象とするシアン含有廃水は、特に限定されず、メッキ産業から排出される各種のシアン含有廃液、鉄鋼類の軟窒化処理、液体浸炭処理、化成処理などの表面処理に使用されるシアン液、これらの表面処理過程から排出されるシアン廃液などが例示される。これらのシアン含有廃水は、さらに各種の有機性および無機性の物質(ギ酸、酢酸などの有機酸など)、アンモニアなどの各種の窒素化合物(本明細書においては、シアン化合物以外のアンモニアなどの窒素化合物を単に窒素化合物という)、トリクロロエチレンなどの有機塩素化合物などを併せて含有している場合もある。」(【0015】)と記載されていることからすると、アンモニウムイオンを含有するシアン含有廃水(アンモニウムイオン濃度が高濃度のものに限るものではない。)は、工業排水として特別なものではなく、従来より当業者において、通常の工業排水として認知されていたものと解するのが相当である。
そうすると、引用発明が対象とする工業排水の中には、当業者が通常の工場排水として認知している、アンモニウムイオンを含有するシアン含有廃水が当然に想定されていると理解するのが合理的であり、仮に、そこまでの想定がないとしても、通常の工業排水についてよく知る当業者であれば、引用発明における工業排水として、アンモニウムイオンを含有するシアン含有廃水を対象に加える程度のことは、格別の困難なく容易に想到できる事項というべきである。
したがって、相違点1は実質的なものではないか、仮に実質的なものであるとして、当該相違点1に係る本件補正発明の構成は容易想到の事項であると認められる。
ここで、念のため、本件補正発明において、アンモニウムイオンを含有するシアン含有廃水を対象としていることの意義(相違点1に係る構成に起因する有利な効果)について検討しておく。
本願明細書の記載によれば、本件補正発明は、先行技術では、チオシアン酸イオンやアンモニウムイオンが存在する廃水など、廃水の種類によってはシアン除去の効果が十分でなく、処理後の廃水のシアン濃度を排水基準(1mg/L以下)にすることができず、処理廃水をそのまま下水などに排出することができない場合があったこと(【0005】)に着目したものであり、従来よりも薬剤添加量を極力抑え、チオシアン酸イオンやアンモニウムイオンが存在する廃水の種類に関係なく、簡便な操作で安全にかつ安価に廃水中のシアンを除去し得るシアン含有廃水の処理方法を提供することができるという効果(【0010】)を期待したものであることを理解することができる。
しかしながら、本願明細書を子細にみても、アンモニウムイオンを含有することに起因する不具合を解決するに至る機序について詳述した箇所は見当たらず、唯一、【0018】には、「次亜塩素酸塩が有効塩素濃度として0.1モル当量未満では、廃水中のチオシアン酸イオンやアンモニウムイオンなど、廃水の種類によっては次亜塩素酸塩が消費(分解)されるため、シアン除去の効果が不十分になることがある」と記載されていることから、当該不具合に対処するためには、次亜塩素酸塩の濃度が重要であって、前記相違点1に係る構成によりもたらされる有利な効果を認めるには、当該濃度が所定範囲にあることが前提であると解するほかない。そうである以上、当該濃度について規定していない本件補正発明の全般にわたり、当該不具合を解決することができるという効用、すなわち、前記相違点1に係る構成に起因する有利な効果を認めることはできない。
事実、本願明細書に記載された実施例をみても同様のことがいえる。
すなわち、本願明細書の表6には、試験例1-2として、アンモニウムイオンを290mg/L含有するシアン含有廃水B(表6によればシアン含有量T-CNは3.2mg/L)を処理対象とし、そのpHを8.0に調整した試験水に対し、1段処理において、NaClOを5000mg/L、MnCl_(2)を19mg/L添加し、2段処理において、H_(2)O_(2)を175mg/L(実施例8)、350mg/L(実施例9)添加した結果、3.2mg/Lであったシアン含有量T-CNが、0.74mg/L(実施例8)、0.72mg/L(実施例9)にまで低減されたことが記載され、また、同表9には、試験例2-3として、アンモニウムイオンを201mg/L含有するシアン含有廃水C(表7の比較例11(ブランク)からみてシアン含有量T-CNは15.93mg/L)を処理対象とし、1段処理において、NaClOを50mg/L、MnCl_(2)を42mg/L添加し、2段処理において、H_(2)O_(2)を150mg/L添加し、pHを8.0に調整したもの(実施例20)、MnCl_(2)の添加量を7mg/Lに変えた以外は実施例20と同じ条件のもの(実施例21)、pHを8.5に変えた以外は実施例20と同じ条件のもの(実施例22)、MnCl_(2)の添加を「1段処理」から「2段処理」に変更したこと以外は実施例22と同じ条件のもの(実施例24)、NaClOの添加を「1段処理」から「2段処理」に変更し、H_(2)O_(2)の添加を「2段処理」から「1段処理」に変更したこと以外は実施例24と同じ条件のもの(実施例25)について、それぞれシアン含有量T-CNが3.18mg/Lなどにまで低減したことが記載されており、確かに、当該表6、表9の試験結果から、アンモニウムイオンを含有するシアン含有廃水であっても相当程度のシアンの除去が可能であることを理解することができる。
しかしながら、同表の結果からは、次亜塩素酸塩、過酸化水素、マンガン化合物の添加順序、濃度条件及びpHによって、処理液のシアン含有量が広範囲に変化することについても理解できることから、同表が示す効果は、上記次亜塩素酸塩濃度の最適化を含む、次亜塩素酸塩、過酸化水素、マンガン化合物の添加順序、濃度条件及びpHといった諸条件が最適化されていることが前提であると解するのが合理的である。そうである以上、当該諸条件を発明特定事項とするものではない本件補正発明全般にわたって、同様の結果が奏されるとは言い難い。
そうすると、本願明細書に記載された、前記相違点1に係る構成を具備することにより奏される本件補正発明の効果を、本件補正発明全般にわたるものとして認めることはできないから、有利な効果の観点から、前記の容易想到性の判断を覆すこともできない。

(イ)相違点2について
引用刊行物には、次亜塩素酸塩および過酸化水素の廃水への添加の方法について、任意の順序で行うことができ、なおかつ、排水の不連続的処理の場合には、最初に、過酸化水素を添加し、ついで次亜塩素酸ナトリウムを導入することが好ましい旨記載されている(前記イ(キ))。
したがって、引用発明における次亜塩素酸塩および過酸化水素の添加の方法として、引用発明が実質的に選択肢として予定している「別々に添加」することを採用することは、当業者が容易にできたことである。

(ウ)相違点3について
引用発明は、従来から提案されている、シアン化物を含有する水から特に有害な残留物であるシアン化物を除去するための方法の一環としてなされたものであって(前記イ(イ))、その除去過程について、引用刊行物には、次亜塩素酸ナトリウムおよび過酸化水素の反応から生成される一重項酸素のシアン化物に対する作用により、シアン酸塩が形成されること(前記イ(オ))、及び、一重項酸素を使用する処理により、シアン化物が分解されること(前記イ(カ))が、それぞれ記載されている。
そうすると、引用発明における処理も、本件補正発明のような「廃水中のシアンの分解および/またはシアンとの水不溶性の化合物の生成を生じさせて該廃水からシアンを除去する」ものであると解することができるから、相違点3は実質的な相違点ではない。

カ 審判請求人の主張について
審判請求人は、前記引用発明との相違点として、シアン含有廃水の処理方法における反応機構の違いを挙げ、本件補正発明は、引用発明のように一重項酸素によりシアン含有廃水中のシアン化物を分解する反応機構とは根本的に異なるものであって、別々に添加された次亜塩素酸塩および過酸化水素は、両者が廃水中に存在する状態を待って互いに反応するよりはむしろ、既に廃液中に存在するシアン化物と反応するものであるため、一重項酸素がシアン処理に寄与することはほとんどない旨主張する(審判請求書第5、6頁の「(b)対比」の項を参酌した。)。
しかしながら、本件補正発明は、次亜塩素酸塩および過酸化水素を別々に添加することは特定するものの、それらの添加の間隔などについてまで特定するものではないから、本件補正発明においても一重項酸素の寄与を否定することはできないため、上記の主張は、本件補正発明には特定のない事項に基づくものというべきであり採用できない。

キ 独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、前記相違点はそれぞれ、実質的なものではないか、容易想到の事項の範疇のものであり、また、前記相違点を総合的に勘案しても、各相違点に係る構成の組合せによる相乗的効果も認められないから、本件補正発明は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるというほかなく、独立特許要件に適合しない。

3 本件補正についてのむすび
以上の検討のとおり、本件補正発明は独立特許要件に適合するものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年4月3日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和1年12月4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、要するに、この出願の請求項1に係る発明は、引用文献1(特開昭52-26762号公報)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1は、前記第2の[理由]2(2)イに記載した引用刊行物であり、その記載事項及びそこに記載された発明は、前記第2の[理由]2(2)イ、ウのとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(2)で検討した本件補正発明に、「次亜塩素酸塩および過酸化水素」を「同時」に添加するという選択的事項が追加されたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記選択的事項が削除されたものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-07-06 
結審通知日 2021-07-13 
審決日 2021-07-27 
出願番号 特願2017-520614(P2017-520614)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊地 寛関根 崇  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 大光 太朗
金 公彦
発明の名称 シアン含有廃水の処理方法  
代理人 稲本 潔  
代理人 金子 裕輔  
代理人 金子 裕輔  
代理人 稲本 潔  
代理人 野河 信太郎  
代理人 甲斐 伸二  
代理人 澄川 広司  
代理人 野河 信太郎  
代理人 甲斐 伸二  
代理人 澄川 広司  
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