ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
---|---|
管理番号 | 1378270 |
審判番号 | 不服2020-14495 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-10-16 |
確定日 | 2021-10-12 |
事件の表示 | 特願2019-109715「押圧装置および押圧方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月17日出願公開、特開2020-202330、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和元年6月12日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年 4月17日付け :拒絶理由通知書 令和2年 6月17日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 7月15日付け :拒絶査定(原査定) 令和2年10月16日 :審判請求書の提出 令和3年 5月 6日付け :拒絶理由通知書(最後)(当審) 令和3年 7月 7日 :手続補正書の提出 第2 本願発明 本願請求項1?2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明2」という。)は、令和3年7月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?本願発明2は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 押圧面を有する弾性部材で押圧対象物を押圧する押圧手段を備え、 前記押圧面は、前記押圧対象物を付勢せずに当該押圧対象物が前記押圧面から離間するように前記弾性部材が改質処理された改質処理部を備えていることを特徴とする押圧装置。 【請求項2】 押圧面を有する弾性部材で押圧対象物を押圧する押圧工程を実施し、 前記押圧面は、前記押圧対象物を付勢せずに当該押圧対象物が前記押圧面から離間するように前記弾性部材が改質処理された改質処理部を備えていることを特徴とする押圧方法。」 第3 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2002-100595号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、薄型化したウエ-ハをサブプレ-トから剥離するためのウエ-ハ剥離装置及び方法及びこれを用いたウエ-ハ処理装置に関するものである。」 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の解決課題は、上記のようにサブプレ-トに貼り付けて背面を研削した薄いウエ-ハを、短時間に該サブプレ-トから剥離でき、その後の洗浄等も容易にできるようにしたウエ-ハ剥離装置及び方法及びこれを用いたウエ-ハ処理装置を提供することである。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、回路パタ-ン面に接着剤を塗布したウエ-ハをサブプレ-トに貼り付け、その背面を研削して薄型化したウエ-ハを該サブプレ-トから剥離する装置であって、該装置は、ウエ-ハが貼り付けられたサブプレ-トを定位置に保持する保持手段と、ウエ-ハとサブプレ-ト間の接着剤の接着力を弱める接着力消失手段と、上記ウエ-ハの背面を吸着保持する吸着手段と、該吸着手段を上記ウエ-ハに接する位置と上記サブプレ-トから離れる位置に移動させる移動手段を含むことを特徴とするウエ-ハ剥離装置及び方法が提供され、上記課題が解決される。また、このようにして剥離されたウエ-ハを洗浄乾燥してウエ-ハシ-ト(ダイシングテ-プ)に貼り付けできるようにしたウエ-ハ処理装置が提供される。 【0005】 【発明の実施の形態】図1は、サブプレ-ト(1)上に接着剤(2)を介してウエ-ハ(3)を貼り付けた状態の説明図を示し、該ウエ-ハ(3)の回路パタ-ン(デバイス)(4)側に塗布する接着剤としてはウエ-ハのパタ-ン面を損傷することなく、よく馴染む適宜の天然物系接着剤や合成樹脂系接着剤等を用いることができ、またこれらの接着剤のうち、その性質に応じて剥離可能な温度まで加熱することにより溶融して接着力が弱められるものや、紫外線を照射することによって接着力が消失するもの等の接着剤が好適に使用される。また、上記サブプレ-トは、セラミック、サファイヤ、石英、シリコン等で約2mm程度の厚さに構成されている。 【0006】上記のようにサブプレ-ト(1)に貼り付けられたウエ-ハ(3)の裏面は、図示を省いた研削装置により削られ、ウエ-ハ自体の厚さが約30?70μm程度、好ましくは約50μm程度に薄型化される。その後、上記ウエ-ハ付サブプレ-トは、積層化のためのフォトリソ工程、メタル蒸着工程、不要メタル除去工程、ハンダメッキ工程、その他の適宜の処理工程を経た後、剥離工程に搬送される。このように、上記ウエ-ハの裏面は、研削面やバンプ面等の場合があり、また、後記するようにウエ-ハの背面にウエ-ハシ-トを貼り付けてから、剥離工程に搬入してもよい。 【0007】剥離装置(5)は、図2に示すように、ウエ-ハ(3)が貼り付けられたサブプレ-ト(1)を定位置に保持する保持手段と、ウエ-ハとサブプレ-ト間の接着剤の接着力を弱める接着力消失手段と、上記ウエ-ハの背面を吸着保持する吸着手段と、該吸着手段を上記ウエ-ハに接する位置と上記サブプレ-トから離れる位置に移動させる移動手段を含んでいる。 【0008】図において、上記保持手段は、上記サブプレ-ト(1)が嵌着する凹部(6)を有するアルミニウムその他の熱伝導性の良い金属材料で作られた保持体(7)で構成され、該保持体(7)に設けた吸引孔(8)…を真空吸引源(図示略)に連絡することによって、上記凹部(6)に載置したサブプレ-ト(1)を吸着保持する。なお、該凹部(6)は上記サブプレ-ト(1)の外形に対応して形成されるが、該凹部をサブプレ-トよりも大きく形成しておき、該凹部の周壁に沿って嵌合する調整リング(図示略)を形成し、該調整リングを適宜上記凹部に嵌着させることにより外形の異なる複数のサブプレ-トに対応させることもでき、また、周囲の適宜部位には搬送部の爪が入る挿入部(図示略)が有る。 【0009】上記接着力消失手段は、上記ウエ-ハをサブプレ-トに仮接着するのに用いた接着剤と関連して適宜に構成することができる。図においては、接着剤として天然物系接着剤を用いており、この接着剤は剥離温度まで昇温することにより溶融し、接着力が弱められ、剥離可能となるので、接着力消失手段として、ヒ-タ-(9)を埋設した加温プレ-ト(10)を用いている。なお、このヒ-タ-による温度は、温度センサ-や設定時間により管理され、上記ウエ-ハ(3)の回路パタ-ン(デバイス)を破壊しない温度以下で加温しなければならず、例えば250℃以下、好ましくは約145℃程度にしてある。なお、接着剤の性質に応じて接着力消失手段として接着剤を冷却する冷却装置を用いたり、接着力を弱める紫外線照射装置を用いることができる。 【0010】上記ウエ-ハの背面を吸着保持する吸着手段としては、真空チャック(11)が用いられている。真空チャックはウエ-ハに対応する大きさに形成され、それによりそれぞれの大きさのウエ-ハを吸着保持することができる。この場合、チャックのウエ-ハ吸着面の外径を、ウエ-ハの外径よりも少し小さく、例えば約2?20mm程度、好ましくは約4?10mm程度小さく形成するとよい。このようにすれば、後記するようにウエ-ハを吸着保持して横方向にスライドさせる際、溶融した接着剤がウエ-ハの周縁に押されてウエ-ハ上面にもり上るようなことがあっても、ウエ-ハとウエ-ハ吸着面間に入り込まないようにすることができる。 【0011】1つの真空チャックで大きさの異なる複数のウエ-ハを選択可能に吸着できるようにするには、図3に示すようにすればよい。すなわち、チャック本体(12)に複数の外径のウエ-ハに対応するよう個別流路 (13a)…,(13b)…を形成し、これらの各流路を電磁バルブ(図示略)を介して真空吸引源若しくは圧縮空気供給源に接続する。そして、上記各個別流路(13a),(13b) 毎に、例えば3インチウエ-ハ(3a)に対応する吸引孔(14a) …、4インチウエ-ハ(3b)に対応するよ吸引孔(14b) …を開口させてある。この構成により、3インチウエ-ハ(3a)を吸着する際は、上記個別流路(13a) を介して真空吸引作用を吸着面(15)に生じさせ、4インチウエ-ハ(3b)の場合は上記個別流路(13b) を介して吸着面(15)に真空吸引作用を生じさせるようにすればよい。 【0012】上記吸着手段のウエ-ハ吸着面には、合成ゴム、有弾性合成樹脂材料、多孔質ゴム材料等の耐熱性弾性材料により緩衝作用を奏する緩衝部材(16)が設けられている。該緩衝部材(16)には、上記吸引孔(14a),(14b) が開口しており、上記ウエ-ハ(3)は該緩衝部材(16)の表面の吸着面に接して吸着保持され、後記するように移送され、アンロ-ダコンベア部等において上記吸引孔から空気を噴出することにより該緩衝部材の表面の吸着面から離れる。この際、上記のように薄型化したウエ-ハを損傷することなく容易に離すことができるよう該緩衝部材の表面は、上記ウエ-ハが接着しないよう非接着面とすることが好ましい。そのような非接着表面としては、例えば表面に微細な凹凸形状を設けたり、非接着処理を施したり、非接着性の材料で緩衝部材を構成したりすればよい。また、上記吸着面の表面全体を覆うように通気性が良く、ウエ-ハに非接着のガ-ゼ等の布体(16a)を設けておくと、真空チャックの吸引孔から空気を噴出した際に確実にウエ-ハを離脱させることができる。 【0013】上記吸着手段を移動させる移動手段(17)は、上記ウエ-ハに接する位置と上記サブプレ-トから離れる位置に該吸着手段を移動させることができる機能を有すればよいから、具体的には流体圧シリンダ、モ-タ-シリンダ、 モ-タ-等を適宜組み合せて駆動源とし、上記真空チャック(11)を、好ましくは移動速度を調整できるようにして降下、上昇、水平移動等させるよう適宜に構成してある。 【0014】ウエ-ハを移動させる際、接着剤が加熱溶融されているので、上記ウエ-ハを上記サブプレ-トに対して垂直方向にそのまま引き上げると、面状に広がる上記溶融状態の接着剤層によってウエ-ハが剥離しにくいことがある。そこで、本発明においては、上記移動手段は、真空チャックが上記ウエ-ハを吸着保持した後、上記サブプレ-トに沿ってウエ-ハを横方向に移動させるようにしてある。さらに好ましくは、ウエ-ハをチャック吸着保持した段階で、該真空チャックを時計方向、反時計方向に数度の回転角で交互に正転、反転させ接着剤を線状に寄せ集めて接着力を弱めた後、横方向にスライドすることによりウエ-ハを剥離するようにしている。したがって、そのような接着剤を使用する場合には上記移動手段は、真空チャックを回動させる機能も有する。 【0015】上記剥離装置の剥離部の作用及び剥離方法を図4を参照して説明すると、裏面を研削して薄型化されたウエ-ハ(3)は、サブプレ-ト(1)に天然物系接着剤で仮接着された状態で図4(A)に示すように、適宜のロボットや搬送ア-ムにより保持体(7)の凹部(6)に運ばれる。この際、後工程で移動手段によりウエ-ハをスライドさせるとき、移動方向に対してウエ-ハの強度が弱くならない方向にウエ-ハ方向を定めて搬入する。その後、上記加熱プレ-ト(10)からの加温により接着剤が剥離温度まで加熱され溶融されると、上面から真空チャック(11)が降下してくる。 【0016】上記真空チャック(11)がウエ-ハ(3)を吸着保持すると、該真空チャック(11)は正転、反転方向に数度回動して接着剤を略線状に集めた後、横方向にスライドし、サブプレ-トからウエ-ハを剥離させてアンロ-ダ部(図示略)へ搬出する(図4(B))。その際、真空チャック(11)を回転、スライド後に上昇させてウエ-ハのアンロ-ダ部へウエ-ハを運び出すようにしてもよい(図4(C))。その後、サブプレ-ト(1)を、適宜のロボットや搬送ア-ム等の搬送手段によりサブプレ-トのアンロ-ダ部へ取り出す(図4(D))。 【0017】上記ウエ-ハは、アンロ-ダ部へ移送された後、上記チャックの吸引孔に空気を供給することにより吸着面から離れて落下する。この際、チャックのウエ-ハ吸着面と該ウエ-ハの間に溶融した接着剤が入り込んでいるとウエ-ハの一部が接着して簡単に落下しないおそれもあるが、上記のようにウエ-ハの外径に対してウエ-ハ吸着面の外径を小さく形成しておくと、溶融した接着剤がウエ-ハと吸着面間に入り込まず、そのようなおそれがない。また、上記のようにウエ-ハ吸着面に通気性のある非接着性の布体(16a)を設けておくと、吸引孔から空気を供給した際、一層確実にウエ-ハを落下させることができる。」 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図3】 」 「【図4】 」 (2)上記(1)から、引用文献1には次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア ウエ-ハ(3)をサブプレ-ト(1)から剥離する剥離装置を、ウエ-ハ(3)が貼り付けられたサブプレ-ト(1)を保持する保持手段(7)と、ウエ-ハ(3)の背面を吸着保持する吸着手段と、吸着手段をウエ-ハに接する位置とサブプレ-トから離れる位置に移動させる移動手段(17)を含むものとすること。 イ 吸着手段として真空チャック(11)が用いられ、吸着手段のウエ-ハ吸着面に耐熱性弾性部材による緩衝作用を奏する緩衝部材(16)を設けること。緩衝部材(16)の表面は、ウエ-ハ(3)が接着しないよう非接着面とすることが好ましく、そのような非接着表面として、例えば表面に微細な凹凸形状を設けるか、非接着処理を施すこと。 (3)上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ウエ-ハ(3)をサブプレ-ト(1)から剥離する剥離装置であって、 ウエ-ハ(3)が貼り付けられたサブプレ-ト(1)を保持する保持手段(7)と、 ウエ-ハ(3)の背面を吸着保持する吸着手段と、 吸着手段をウエ-ハに接する位置とサブプレ-トから離れる位置に移動させる移動手段(17)とを含み、 吸着手段として真空チャック(11)が用いられ、吸着手段のウエ-ハ吸着面に弾性部材による緩衝作用を奏する緩衝部材(16)が設けられており、ウエ-ハ(3)は該緩衝部材(16)の表面の吸着面に接して吸着保持され、移送されるものであり、緩衝部材(16)の表面は、微細な凹凸形状が設けられたもの、あるいは、非接着処理が施されたものである、 剥離装置。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平8-148541号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、例えばウエハ搬送ラインとウエハ研磨装置等のウエハ処理装置との間でウエハを搬送するウエハ搬送装置に関する。」 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】図6に示すウエハ搬送装置では、ウエハ2は含水吸着パッド22に接触した状態で保持されているので、含水吸着パッド22から取り外した後のウエハ2に含水吸着パッド22の吸着跡が残る。この吸着跡は、例えばシリコン粒子又はシリコン微粒子が付着したものであってウエハ2表面の汚染物となり、その後の洗浄工程にとって大きな負担となる。またウエ-ハ搬送装置が研磨後のウエハ2を搬送する場合は、含水吸着パッド22に研磨砥粒が付着しやすい。そしてウエハ2の搬送を重ねると、含水吸着パッド22に研磨砥粒が堆積し、その後にウエ-ハ搬送装置が搬送するウエハ2の表面を傷つける等、悪影響を及ぼすことがある。」 「【0009】本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、凹状の面とウエハとを接触させ減圧することにより、比較的簡単な構成でウエハ表面の汚染,損傷を招来することなくウエハを搬送することが可能なウエハ搬送装置を提供することを目的とする。また減圧を行いながら純水を供給する構成とすることにより、パーティクルの付着を防止し、洗浄効果が得られるウエハ搬送装置を提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】第1発明に係るウエハ搬送装置は、減圧手段に接続された空気路を有するウエハ保持部にてウエハを保持し、アーム部によりウエハ保持部を回動させてウエハを搬送するウエハ搬送装置において、前記ウエハ保持部は、ウエハと対向する面が凹状をなしており、前記空気路が前記面まで達することを特徴とする。」 「【0018】 【実施例】以下、本発明をその実施例を示す図面に基づき具体的に説明する。 実施例1.図1は、本発明に係るウエハ搬送装置の実施例1を示す模式的断面図である。ウエハ搬送装置5は、略コの字型をなすステンレス鋼製のアーム部6と、平面視で矩形又は円形をなす樹脂製(例えば塩化ビニル,アクリル,テフロン等)のウエハ保持部7とを備える。ウエハ保持部7の上面側にアーム部6の一端が接続されており、アーム部6の他端を回動軸としてウエハ保持部7が水平方向での回動が可能なようになしてある。アーム部6は減圧機8に接続された空気路6aを備え、ウエハ保持部7は空気路6aと連通された複数の空気路11a を備える。 【0019】ウエハ保持部7の下面は断面視円弧状の凹面7aとなしてあり、複数の空気路11a の端部は凹面7aまで達している。凹面7aは水に対する濡れ性が良好な樹脂等の材料で形成されているか、又は表面の濡れ性を良くするためのコーティングがその表面に施されている。凹面7aの周縁部にはウエハ2の縁部を嵌入するための切り欠き7bが設けられており、ウエハ2はその縁部のみが接触した態様で凹面7aに保持されるようになっている。 【0020】次にウエハ搬送装置5によるウエハ2の搬送方法について説明する。図5に示す搬送ライン1で搬送されてきたウエハ2は指定箇所で停止し、ウエハ2とウエハ搬送装置5のウエハ保持部7との位置を合わせ、ウエハ保持部7を降下させて両者を接触させる。そして減圧機8にて減圧吸引を行うことにより、ウエハ2と凹面7aとの間の空気が減圧されてウエハ2はウエハ保持部7の凹面7aに吸着される。この状態でウエハ2を持ち上げ、ウエハ保持部7を回動させて回転テーブル3の所定位置(例えば図5のウエハ保持台4)まで移動させる。ウエハ保持部7を回転テーブル3に接触するまで降下させ減圧機8の減圧吸引を停止すると、ウエハ2はウエハ保持部7の凹面7aから離脱し回転テーブル3のウエハ保持台4に載置される。減圧吸引の停止は、減圧機8をオフするか、又は減圧機8との間の配管を閉じるかのいずれでもよい。 【0021】本発明では搬送時にウエハ2はその周縁部のみでウエハ保持部7と接触し、その面積は従来より大幅に縮小されているので、ウエハ2表面の汚染又は損傷を防止することができる。また搬送作業の繰り返しによるパーティクルの再付着も防止することができる。 【0022】実施例2.図2は、本発明の実施例2におけるウエ-ハ搬送装置の要部を示す拡大断面図である。本実施例では、ウエハ保持部7の、ウエハ2と接触する切り欠き7bの近傍部分が、摩擦係数が大きいゴム等の弾性体9で形成されている。その他の構成は図1に示すものと同様である。 【0023】このように構成することにより、減圧機8による減圧時の、ウエハ保持部7,ウエハ2間の密着性が向上し、ウエハ2がウエハ保持部(凹面7a)に安定良く保持される。」 「【図1】 」 「【図2】 」 したがって、引用文献2には、ウエハ搬送装置において、減圧吸引によってウエハを吸着し、減圧吸引の停止によってウエハを離脱させるウエハ保持部の、ウエハと接触する部分をゴム等の弾性体で形成する、という技術的な事項が記載されていると認められる。 第4 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「耐熱性弾性部材による緩衝作用を奏する緩衝部材(16)」は、「耐熱性弾性部材による緩衝作用を奏する」ものであるから、本願発明1における「弾性部材」に対応する。 イ 引用発明では「ウエ-ハ(3)の背面を吸着保持する吸着手段」を含み、「吸着手段のウエ-ハ吸着面に弾性部材による緩衝作用を奏する緩衝部材(16)が設けられており、ウエ-ハ(3)は該緩衝部材(16)の表面の吸着面に接して吸着保持され、移送されるもの」であるところ、「吸着面」を有する「緩衝部材(16)」で「ウエ-ハ(3)」を吸着保持する「吸着手段」を備えるものであるといえる。 そうすると、引用発明における「吸着面」、「ウエ-ハ(3)」、「吸着手段」は、それぞれ、本願発明1の「押圧面」、「押圧対象物」、「押圧手段」に対応するといえる。 ウ 上記ア?イから、本願発明1と引用発明とは、「対象物と接触する面を有する弾性部材で対象物と接触する手段を備え」る点で一致する。 エ 引用発明は、「緩衝部材(16)の表面は、微細な凹凸形状が設けられたもの、あるいは、非接着処理が施されたものである」から、引用発明における「(該緩衝部材(16)の表面の)吸着面」は、「微細な凹凸形状が設けられたもの、あるいは、非接着処理が施されたもの」であるといえる。 ここで、引用発明において「微罪な凹凸形状」を設けることや、「非接着処理」を施すことは、本願発明1における「改質処理」に相当する。 また、引用発明において「微細な凹凸形状が設けられた」箇所、あるいは、「非接着処理が施された」箇所は、本願発明1における「改質処理部」に相当する。 そうすると、本願発明1における「押圧面」と、引用発明における「ウエ-ハ吸着面」とは、「改質処理された改質処理部を備えている」点で一致する。 カ 上記ア?オより、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。 (一致点) 「対象物と接触する面を有する弾性部材で対象物と接触する手段を備え、 前記面は、前記弾性部材が改質処理された改質処理部を備えている装置。」 (相違点1) 本願発明1は、「押圧面を有する弾性部材で押圧対象物を押圧する押圧手段」を備えるのに対し、引用発明は、「ウエ-ハ(3)」を押圧する「押圧手段」を備えるものではないので、「緩衝部材(16)」は「押圧面」を有するものではない点。 また、「前記押圧面は、前記押圧対象物を付勢せずに当該押圧対象物が前記押圧面から離間するように前記弾性部材が改質処理された改質処理部を備えている」ものでもない点。 (2)判断 上記相違点1について検討する。 引用文献2に記載された技術的事項は、減圧吸引によってウエハを吸着し、減圧吸引の停止によってウエハを離脱させるウエハ保持部に関するものであり、ウエハを押圧する「押圧手段」を備えるものではなく、上記相違点1に係る本願発明1の構成について記載されていない。 したがって、引用発明、及び、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が上記相違点1に係る本願発明1の構成を容易に想到し得たということはできない。 したがって、本願発明1は、引用発明、及び、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明2は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「押圧対象物を押圧する」構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、及び、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定(令和2年7月15日付け拒絶査定)は、請求項1?4に係る発明について、上記引用文献1?2に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 しかしながら、令和3年7月7日付け手続補正によって、原査定時の請求項1、請求項3は削除された。 また、令和3年7月7日付け手続補正によって補正された請求項1(原査定時の請求項2に対応する。)は、「押圧面を有する弾性部材で押圧対象物を押圧する押圧手段」を備え、「前記押圧面は、前記押圧対象物を付勢せずに当該押圧対象物が前記押圧面から離間するように前記弾性部材が改質処理された改質処理部を備えている」という構成を有し、また、令和3年7月7日付け手続補正によって補正された請求項2(原査定時の請求項4に対応する。)は、請求項1に係る発明の「押圧対象物を押圧する」構成に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1?2は、引用発明、及び、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 当審では、令和3年5月6日付け拒絶理由において、請求項1、3の記載に不備があるとの拒絶の理由を通知しているが、令和2年6月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項3は、令和3年7月7日付けの手続補正により削除されたため、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1?2は、引用発明、及び、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-22 |
出願番号 | 特願2019-109715(P2019-109715) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中田 剛史 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
辻本 泰隆 ▲吉▼澤 雅博 |
発明の名称 | 押圧装置および押圧方法 |
代理人 | 特許業務法人樹之下知的財産事務所 |