• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01Q
管理番号 1378276
審判番号 不服2020-15388  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-06 
確定日 2021-10-18 
事件の表示 特願2016- 39745「2次元で電子的に操向可能な人工インピーダンス表面アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-201789、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月2日(パリ条約による優先権主張2015年4月9日、米国(US))の出願であって、令和元年11月8日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年2月17日付けで手続補正がされ、令和2年6月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和2年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和2年12月9日に前置報告がされ、令和2年12月24日及び令和3年3月18日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和2年6月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-10に係る発明は、以下の文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.米国特許出願公開第2015/0009070号明細書
2.特表2013-539949号公報
3.特開2005-65277号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)


第3 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、令和2年11月6日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
複数の放射素子の各放射素子(123)が複数の表面波チャネルを含み、前記複数の表面波チャネルの各表面波チャネル(125)が表面波の経路を制限するように構成された、複数の放射素子であって、
複数のスイッチ素子(2100)、および
複数のインピーダンス素子(126)を含む、
複数の放射素子と、
複数の表面波フィード(130)のうちの1つの表面波フィードが、前記複数の放射素子のうちの1つの放射素子(123)の前記複数の表面波チャネルのうちの1つの表面波チャネル(125)を、高周波信号(154)を運ぶように構成された伝送線に接続するように構成された、複数の表面波フィード(130)と、
を備え、
前記複数のスイッチ素子(2100)がオン状態及びオフ状態のみを有し、
前記複数のスイッチ素子(2100)がオン状態のとき、動作周波数において前記複数のスイッチ素子(2100)がRL直列回路として働き、前記各表面波チャネル(125)の高い表面インピーダンスに対応し、
前記複数のスイッチ素子(2100)がオフ状態のとき、動作周波数において前記複数のスイッチ素子(2100)がRC並列回路として働き、前記各表面波チャネル(125)の低い表面インピーダンスに対応し、
前記複数のスイッチ素子(2100)が、前記インピーダンス素子間の静電容量結合を変化させるように構成され、
隣り合う前記インピーダンス素子(126)間の距離が、前記スイッチ素子(2100)が配置される位置において最も小さくなるように、各放射素子(123)の前記複数のインピーダンス素子(126)が配置された、
装置。
【請求項2】
前記複数の放射素子および前記複数の表面波フィード(130)が、シータ方向およびファイ方向に電子的に操向されるように構成された人工インピーダンス表面アンテナ(110)を形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数の表面波チャネルの各表面波チャネル(125)の前記複数のスイッチ素子(2100)が、前記各表面波チャネル(125)のための高い表面インピーダンスと低い表面インピーダンスの表面インピーダンスプロファイル(2114)を作成することを可能にする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のスイッチ素子(2100)の各スイッチ素子(2101)が、インダクタンス状態(2105)および静電容量状態(2107)を有するPINダイオードである、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記複数のスイッチ素子(2100)の各スイッチ素子(2101)が、単に2つの状態(2102)を有する、ショットキーダイオード、半導体スイッチ、微小電気機械システムスイッチダイオード、または相変化材料スイッチである、請求項1、2または4に記載の装置。
【請求項6】
前記複数のスイッチ素子(2100)の各スイッチ素子(2101)が、単に2つの状態(2102)を有する高周波ダイオードである、請求項1、2、4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記複数のインピーダンス素子(126)のうちの1つのインピーダンス素子が、一連の同じ形状によって形成されたパターンを有する、請求項1、2、4、5または6に記載の装置。
【請求項8】
アンテナシステム(100)を電子的に操向するための方法であって、前記方法が、
放射パターン(112)を形成するために複数の放射素子の各放射素子に形成された複数の表面波チャネルの各表面波チャネルに沿って表面波を伝播させるステップ(2700)と、
前記複数の放射素子の各放射素子(123)に形成された前記複数の表面波チャネルの各表面波チャネル(125)を、前記複数の放射素子に関連した複数の表面波フィード(130)のうちの1つの表面波フィードを用いて高周波信号(154)を運ぶように構成された伝送線に接続するステップ(2702)と、
前記複数の表面波チャネルの各表面波チャネル(125)の複数のインピーダンス素子(126)を接続している複数のスイッチ素子(2100)に印加される電圧を制御することによって前記放射パターン(112)のメインローブ(116)を電子的に操向するステップ(2704)と、
を含み、
前記複数のスイッチ素子(2100)がオン状態及びオフ状態のみを有し、
前記複数のスイッチ素子(2100)がオン状態のとき、動作周波数において前記複数のスイッチ素子(2100)がRL直列回路として働き、前記各表面波チャネル(125)の高い表面インピーダンスに対応し、
前記複数のスイッチ素子(2100)がオフ状態のとき、動作周波数において前記複数のスイッチ素子(2100)がRC並列回路として働き、前記各表面波チャネル(125)の低い表面インピーダンスに対応し、
前記複数のスイッチ素子(2100)が、前記インピーダンス素子間の静電容量結合を変化させるように構成され、
隣り合う前記インピーダンス素子(126)間の距離が、前記スイッチ素子(2100)が配置される位置において最も小さくなるように、各放射素子(123)の前記複数のインピーダンス素子(126)が配置された、
方法。
【請求項9】
前記メインローブ(116)を電子的に操向するステップが、
前記複数の表面波チャネルの各表面波チャネル(125)のための表面インピーダンスプロファイル(2114)を作成するために、第1レベルの電圧または第2レベルの電圧を、前記複数のスイッチ素子(2100)の各スイッチ素子に印加するステップ
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記メインローブ(116)を電子的に操向するステップが、
高い表面インピーダンスと低表面インピーダンスとの間で変調するように、第1レベルの電圧または第2レベルの電圧を、前記複数のスイッチ素子(2100)の各スイッチ素子に印加するステップ
を含む、請求項8または9に記載の方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1、引用発明について
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2015/0009070号明細書(以下、「引用文献1」という。下線は当審が付与。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0002] This disclosure relates to artificial impedance surface antennas (AISAs).」
「(当審訳)
[0002]本開示は、人工インピーダンス表面アンテナ(AISAs)に関するものである。」

「[0041] FIG. 2A shows an electronically steered artificial impedance surface antenna (AISA) in accordance with the present disclosure that is relatively low cost and capable of steering in both theta (θ) and phi (φ) directions. FIG. 3 is a diagram of a spherical coordinate system showing the theta (θ) and phi (φ) angles. In FIG. 3 the phi (φ) angle is the angle in the x-y plane, and the theta (θ) angle is the angle from the z axis. Because the primary gain lobe of the electronically steered artificial impedance surface antenna (AISA) in accordance with the present disclosure is capable of steering in both theta (θ) and phi (φ) directions, those skilled in the art refer to it as a 2D electronically steered artificial impedance surface antenna (AISA).
[0042] The electronically steered artificial impedance surface antenna (AISA) of FIG. 2A includes a tunable artificial impedance surface antenna (AISA) 101, a voltage control network 102, and a one-dimensional 1D radio frequency (RF) feed network 103. When the tunable artificial impedance surface antenna (AISA) 101 is in the X-Y plane of FIG. 3, the steering of the primary gain lobe of the electronically steered artificial impedance surface antenna (AISA) is controlled in the phi (φ) direction by changing the relative phase difference between the RF surface wave feeds 108 of the 1D RF feed network 103. The theta steering is controlled by varying or modulating the surface wave impedance of the tunable artificial impedance surface antenna (AISA) 101.
[0043] The artificial impedance surface antenna (AISA) 101 in the embodiment of FIG. 2A includes a dielectric substrate 106, a periodic array of metallic strips 107 on one surface of the dielectric substrate 106, varactors 109 electrically connected between the metallic strips 107, and a 1D array of RF surface wave feeds 108. The impedance of the AISA 101 may be varied or modulated by controlling voltages to the metallic strips 107 on the tunable artificial impedance surface antenna (AISA) 101. The voltages on the metallic strips 107 change the capacitance of varactors 109 between the metallic strips 107, which changes the impedance of the AISA 101, thereby steering the primary gain lobe in the theta direction.
[0044] The voltage control network 102 applies direct current (DC) voltages to the metallic strips 107 on the AISA structure. Control bus 105 provides control for the voltage control network 102. The control bus 105 may be from a microprocessor, central processing unit, or any computer or processor.
[0045] Control bus 104 provides control for the 1D RF feed network 103. The control bus 104 may be from a microprocessor, central processing unit, or any computer or processor.」

「(当審訳)
[0041]図2Aは、比較的低コストであり、シータ(θ)及びファイ(φ)方向の両方を操向することができる本開示による電子的に操向される人工インピーダンス表面アンテナ(AISA)を示している。図3は、シータ(θ)及びファイ(φ)角度を説明するための球座標系を示す図である。図3にファイ(φ)角度は、x-y平面における角度であり、シータ(θ)角度は、z軸からの角度である。本発明によれば、電子的に操向される人工インピーダンス表面アンテナ(AISA)の一次利得ローブはシータ(θ)及びファイ(φ)の方向の両方を操向できるので、当業者は、2D電子的に操向される人工インピーダンス表面アンテナ(AISA)と呼ぶ。
[0042]図2Aの電子的に操向される人工インピーダンス表面アンテナ(AISA)は、同調可能な人工インピーダンス表面アンテナ(AISA)101、電圧制御ネットワーク102、及び、一次元1D無線周波数(RF)給電ネットワーク103を含む。同調可能な人工インピーダンス表面アンテナ(AISA)101は、図3のX-Y平面内にあるとき、電子的に操向される人工インピーダンス表面アンテナ(AISA)の一次利得ローブの操向は、1D RF給電ネットワーク103のRF表面波給電108間の間の相対位相差を変更することによって、ファイ(φ)方向について制御される。シータの操向は、同調可能な人工インピーダンス表面アンテナ(AISA)101の表面波インピーダンスを変化または変調させることによって制御される。
[0043]図2Aの実施形態では、人工インピーダンス表面アンテナ(AISA)101は、誘電体基板106、誘電体基板106の一方の面上の金属ストリップ107の周期的なアレイ、金属ストリップ107間に電気的に接続されたバラクタ109、およびRF表面波給電108の1Dアレイを含む。AISA101のインピーダンスは、同調可能な人工インピーダンス表面アンテナ(AISA)101上の金属ストリップ107に対する電圧を制御することによって変更または変調することができる。金属ストリップ107上の電圧は、金属ストリップ107間のバラクタ109の容量を変化し、AISA101のインピーダンスを変化し、シータ方向の一次利得ローブを操向する。
[0044]電圧制御ネットワーク102は、AISA構造上の金属ストリップ107に直流(DC)電圧を印加する。制御バス105は、電圧制御ネットワーク102のための制御を提供する。制御バス105は、マイクロプロセッサ、中央処理ユニット、または任意のコンピュータまたはプロセッサとすることができる。
[0045]制御バス104は、1D RF給電ネットワーク103のための制御を提供する。制御バス104は、マイクロプロセッサ、中央処理ユニット、または任意のコンピュータまたはプロセッサとすることができる。」

「[0047] A varactor is a type of diode whose capacitance varies as a function of the voltage applied across its terminals, which makes it useful for tuning applications. When varactors 109 are used between the metallic strips 107, as shown in FIG. 2A, by controlling the voltage applied to the varactors 109 via the metallic strips 107, the capacitances of the varactors 109 vary, which in turn varies or modulates the capacitive coupling and the impedance between the metallic strips 107 to steer a beam in the theta direction.」
「(当審訳)
[0047]バラクタは、その端子間に印加される電圧の関数として容量が変化するダイオードの1つの種類であり、同調回路への応用に有用である。図2Aに示すように、金属ストリップ107間にバラクタ109が使用される場合、金属ストリップ107を介してバラクタ109に印加される電圧を制御することにより、バラクタ109の容量が変化し、次にシータ方向のビームを操向するように金属ストリップ107間の容量結合とインピーダンスを変更または変調する。」

「[0056] To transmit or receive an RF signal, transmit/receive module 110 is connected to the feed network 103. The feed network 103 can be of any type that is known to those skilled in the state of the art of phased array antennas. For the sake of illustration, the feed network 103 shown in FIG. 2A includes a series of RF transmission lines 111 connected to the transmit/receive module 110, power dividers 112, and phase shifters 113. The phase shifters 113 are controlled by voltage control lines 118 from a digital to analog converter (DAC) 114 that receives digital control signals 104 to control the steering in the phi (φ) direction.
[0057] The antenna main lobe is steered in the phi direction by using the feed network 103 to impose a phase shift between each of the RF SW feeds 108. If the RF SW feeds 108 are spaced uniformly, then the phase shift between adjacent RF SW feeds 108 is constant. The relation between the phi (φ) steering angle, and the phase shift may be calculated using standard phased array methods, according to equation,
φ=sin^(?1)(λΔψ/2πd) (7)
where λ is the radiation wavelength, d is the spacing between SW feeds 108, and Δψ is the phase shift between SW feeds 108. The RF SW feeds 108 may also be spaced non-uniformly, and the phase shifts adjusted accordingly.」

「(当審訳)
[0056]RF信号を送信又は受信するために、送信/受信モジュール110は、給電ネットワーク103に接続されている。給電ネットワーク103は、フェーズドアレイアンテナの最新技術の当業者に知られている任意のタイプのものとすることができる。例示のために、図2Aに示す給電ネットワーク103は、送信/受信モジュール110、電力分配器112、および移相器113に接続されたRF送信線111の直列を含む。移相器113は、ファイ(φ)方向の操向を制御するデジタル制御信号104を受信する、デジタル-アナログ変換器(DAC)114からの電圧制御線118によって制御される。
[0057]アンテナの主ローブは、給電ネットワーク103を使用してRF SW給電108の各々の間に位相シフトを課すことにより、ファイ方向に操向される。RF SW給電108は均一に離間される場合、隣接するRF SW給電108との間の位相シフトは、一定である。ファイ(φ)の操向角度と位相シフトとの間の関係は、次の方程式に従う標準的なフェーズド・アレイ法を使用して計算することができる。
φ=sin^(?1)(λΔψ/2πd) (7)
ここでλは放射の波長であり、dはSW給電108の間隔であり、Δψは、SW給電108の間の位相シフトである。RF SW給電108は不均一に離間されてもよく、位相シフトは、それに応じて調整される。」




上記記載より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電子的に操向される人工インピーダンス表面アンテナは、同調可能な人工インピーダンス表面アンテナ101、電圧制御ネットワーク102、及び、一次元1D無線周波数給電ネットワーク103を含み、
人工インピーダンス表面アンテナ101は、誘電体基板106、誘電体基板106の一方の面上の金属ストリップ107の周期的なアレイ、金属ストリップ107間に電気的に接続されたバラクタ109、およびRF表面波給電108の1Dアレイを含み、
金属ストリップ107を介してバラクタ109に印加される電圧を制御することにより、バラクタ109の容量が変化し、次にシータ方向のビームを操向するように金属ストリップ107間の容量結合とインピーダンスを変更または変調するものであり、
RF信号を送信又は受信するために、送信/受信モジュール110は、給電ネットワーク103に接続され、
給電ネットワーク103を使用してRF SW給電108の各々の間に位相シフトを課すことにより、ファイ方向に操向される、
電子的に操向される人工インピーダンス表面アンテナ。」


2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された特表2013-539949号公報(以下、「引用文献2」という。下線は当審が付与。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0018】
表面散乱アンテナの概略図が、図1に示されている。表面散乱アンテナ100は、波伝搬構造104に沿って配置された複数の散乱素子102a,102bを含んでいる。波伝搬構造104は、マイクロストリップ、共面導波管、平行板導波管、誘電体板、閉塞したまたは管状の導波管、もしくは構造に沿ってまたは構造内に誘導波または表面波105が伝搬するのを支持し得る構造であればいかなる構造であってもよい。状線105は、誘導波または表面波を象徴化して示したものであり、誘導波または表面波の実際の波長または振幅を示すことを意図していない。加えて、波状線105が波伝搬構造104内(例えば、誘導波について言えば金属製導波管内)に示されているが、表面波に関しては波伝搬構造の外側に実質的に局在し得る(例えば、TMモードでは1本のワイヤー伝送線上にあり、「疑似プラズモン」では人工的なインピーダンス表面上にあり得る)。散乱素子102a,102bは、波伝搬構造104内に組み込まれているか、波伝搬構造104の表面上に配置されているか、または波伝搬構造104のエバネッセント近傍に配置されたメタマテリアル要素を含んでいてもよい。例えば、散乱素子は、米国特許出願公開第2010/0156573号(D.R.Smithら「表面および導波管のためのメタマテリアル」)に開示されているような、相補的メタマテリアル要素を含むことができる。この文献は参照により本願に含まれる。
【0019】
表面散乱アンテナは、波伝搬構造104を給電構造108に連結するために構成された少なくとも1つの給電コネクタ106も含む。給電構造108(同軸ケーブルとして概略的に示されている)は、伝送線、導波管、または給電コネクタ106を経由して、波伝搬構造104の誘導波または表面波105に送り出され得る電磁信号を供給可能な構造であればいかなる構造であってもよい。給電コネクタ106は、例えば同軸マイクロストリップコネクタ(例えば、SMA-to-PCBアダプタ)、同軸導波管コネクタ、モード適合移行部等であってもよい。図1に「エンドランチ」構造の給電コネクタを示しており、当該構造により誘導波または表面波105が波伝搬構造の周辺領域(例えば、マイクロストリップの先端または平行板導波管の端部)から送り出され得る。しかし、別の実施形態においては、給電構造は、波伝搬構造の非周辺部に取り付けられていてもよく、それにより誘導波または表面波105は、波伝搬構造の非周辺部(例えば、マイクロストリップの中間点、または平行板導波管の上端または下端に空けられた穴)から送り出され得る。また、さらに別の実施形態では、複数の位置(波伝搬構造の周辺の位置および/または非周辺の位置)において波伝搬構造に取り付けられた複数の給電コネクタを提供してもよい。
【0020】
散乱素子102a,102bは、1つ以上の外部入力に応じて調整可能な電磁特性を有する調整可能な散乱素子である。調整可能な散乱素子の様々な実施形態は、例えば既に参照したD.R.Smithらの文献に開示されており、本明細書にさらに開示されている。調整可能な散乱素子は、電圧入力(例えば、能動素子(例えば、バラクタ、トランジスタ、またはダイオード等)または管状誘電性物質を組み込む素子(例えば、強誘電体等)へのバイアス電圧)、電流入力(例えば、能動素子への荷電粒子の直接注入)、光入力(例えば、光活性物質の照明)、フィールド入力(例えば、非線形磁性体を含む素子への磁場)、機械的入力(例えば、MEMS、作動装置、または油圧技術)等に応じて調整可能な素子を含むことができる。図1の概略例では、第1電磁特性を有する第1状態に調整された散乱素子は、第1素子102aとして示されており、第2電磁特性を有する第2状態に調整された散乱素子は、第2素子102bとして示されている。第1および第2電磁特性に対応する第1および第2状態を有している散乱素子の図示は、制限することを意図していない。実施形態は、互いに異なる非連続の複数の電磁特性に対応した非連続の複数の状態の中から選択するために非連続的に調整可能である散乱素子、または互いに異なる連続の電磁特性に対応した連続の状態の中から選択するために連続的に調整可能な散乱素子を提供してもよい。さらに、図1に示されている調整の具体的形態(すなわち、素子102a,102bの交互配列)は、単に模範的な構成であり、制限することを意図していない。
【0021】
図1の例において、散乱素子102a,102bは、それぞれ第1および第2電磁特性の関数である誘導波または表面波105への第1および第2結合を有している。例えば、第1および第2結合は、誘導波または表面波の周波数または周波数帯における散乱素子の第1および第2分極率であってもよい。1つの方法では、第1結合が実質的な非ゼロ結合であるのに対して、第2結合は実質的なゼロ結合である。別の方法では、両方の結合が実質的な非ゼロ結合であるが、第1結合が第2結合よりも実質的に大きい(または小さい)。第1および第2結合に起因して、第1および第2散乱素子102aおよび102bは、それぞれ第1および第2結合の関数(例えば、比例)である振幅を有する複数の散乱電磁波を形成するために誘導波または表面波105に対応する。散乱電磁波の重ね合わせは、本実施例において、表面散乱アンテナ100から放射する平面波110として示されている電磁波を備える。
【0022】
平面波の発生は、散乱素子の調整の具体的なパターン(例えば、図1における第1および第2散乱素子の交互の配置)を、平面波110を形成するために誘導波または表面波105を散乱させる格子を規定するパターンとして見なすことによって理解され得る。このパターンは調整可能なので、表面散乱アンテナのいくつかの実施形態は、調整可能な格子、またはより一般的にホログラムを提供してもよい。この場合、散乱素子の調整パターンは、ホログラフィの原則に従って選択され得る。例えば、誘導波または表面波が波伝搬構造104に沿った位置の関数である複素スカラ入力波Ψ_(in)によって表され、表面散乱アンテナが別の複素スカラ波Ψ_(out)によって表される出力波を形成することが望まれるとする。この場合、波伝搬構造に沿った入力波および出力波の干渉縞に対応する散乱素子の調整パターンが選択され得る。例えば、Re[Ψ_(out)Ψ^(*)_(in)]によって与えられる干渉期間の関数(例えば、比例または階段関数)である誘導波または表面波への結合を提供するために調整されてもよい。このように、選択されたビームパターンに対応する出力波を特定することによって任意のアンテナ放射パターンを提供するために表面散乱アンテナの実施形態を調整し、上述したように散乱素子を調整してもよい。そのため、表面散乱アンテナの実施形態は、例えば選択されたビーム方向(例えば、ビームステアリング)、選択されたビーム幅または形状(例えば、広いまたは狭いビーム幅を有するファンまたはペンシルビーム)、選択されたヌル配置(例えば、ヌルステアリング)、選択された多数のビームの配置、選択された偏向状態(例えば、直線偏向、円偏向、または楕円偏向)、選択された全位相、またはこれらの組み合わせを提供するために調整されてもよい。代わりにまたは加えて、表面散乱アンテナの実施形態は、選択された近接場放射プロファイルを提供するために、例えば近接場集束および/または近接場ヌルを提供するために調整されてもよい。」

【図1】


以上の記載より、引用文献2には、
「マイクロストリップである波伝搬構造104に沿って配置された複数の散乱素子102a,102bと、給電構造108に連結するために構成された少なくとも1つの給電コネクタ106を含む、表面散乱アンテナにおいて、
散乱素子102a,102bは、1つ以上の外部入力に応じて調整可能な電磁特性を有する調整可能な散乱素子であり、
第1素子102aは、第1電磁特性を有する第1状態に調整された散乱素子であり、第2素子102bは、第2電磁特性を有する第2状態に調整された散乱素子であり、
散乱素子の調整の具体的なパターン(第1および第2散乱素子の交互の配置)を、平面波110を形成するために誘導波または表面波105を散乱させる格子を規定するパターンとして見なし、このパターンは調整可能なので、選択されたビーム方向を提供するために調整されてもよい」という技術的事項が記載されていると認められる。


3.引用文献3
原査定の周知技術を示す文献として引用された特開2005-65277号公報(以下、「引用文献3」という。下線は当審が付与。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0009】
オン状態のダイオードは、理想的には、抵抗値およびリアクタンスがそれぞれゼロであることが望ましく、これにより、このダイオードを通過するRF信号に対して電気的に不可視となる。反対に、オフ状態のダイオードは、非常に高いインピーダンスを持つことが望ましく、これにより、開路のようになり、このダイオードに供給されるRF信号を遮断する。実際には、オン状態のダイオードの抵抗値RSはゼロではなく(通常1?2Ω程度)、直列インダクタンスLSもゼロではない(通常0.5nH程度)。同様に、オフ状態のダイオードは有限の抵抗値RPを持ち(通常1,000?10,000Ω程度)、小さな寄生キャパシタンスCPを持つ(通常0.2?0.4pF程度)。図2に、それぞれオン状態およびオフ状態の、PINダイオードの等価回路を2つ示す。図2において、(a)はオフ状態のPINダイオードの等価回路を示し、(b)はオン状態のPINダイオードの等価回路を示している。」

【図2】


以上の記載より、
「ダイオードに関して、オン状態のとき、動作周波数においてRL直列回路として働き、オフ状態のとき、動作周波数においてRC並列回路として働く」ことは、技術常識である。


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「誘電体基板106、誘電体基板106の一方の面上の金属ストリップ107の周期的なアレイ、金属ストリップ107間に電気的に接続されたバラクタ109、およびRF表面波給電108の1Dアレイを含」む「人工インピーダンス表面アンテナ」は、「RF信号を送信又は受信する」ものであるから、「放射素子」であるといえる。
b 本願の明細書【0034】に「複数のインピーダンス素子126は複数の金属ストリップ132の形態を取り」の記載があるから,引用発明の「金属ストリップ」は、本願発明1の「インピーダンス素子」に相当する。
c 引用発明の「バラクタ」は、「金属ストリップ107間の容量結合とインピーダンスを変更または変調するもの」であるから、本願発明の「スイッチ素子」とは、いずれも「容量結合素子」である点で共通する
d 「RF信号」は「高周波信号」であり、引用発明の「RF表面波給電」は、RF信号を送信又は受信する給電ネットワークを使用して位相シフトが課されるから、本願発明1の「高周波信号を運ぶように構成された伝送線に接続するように構成された」「表面波フィード」である点で一致する。
e 引用発明の「電子的に操向される人工インピーダンス表面アンテナ」は、「装置」に含まれる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「放射素子であって、
複数の容量結合素子、および
複数のインピーダンス素子を含む、
放射素子と、
複数の表面波フィードのうちの1つの表面波フィードが、高周波信号を運ぶように構成された伝送線に接続するように構成された、複数の表面波フィードと、
を備え、
前記複数の容量結合素子が、前記インピーダンス素子間の静電容量結合を変化させるように構成された、
装置。」

<相違点>
相違点1:本願発明1は、放射素子が「複数」であることが特定されているのに対して、引用発明は、当該特定を有しない点。

相違点2:本願発明1は、「各放射素子が複数の表面波チャネルを含み、前記複数の表面波チャネルの各表面波チャネルが表面波の経路を制限するように構成され」、「表面波フィード」が「1つの放射素子の前記複数の表面波チャネルのうちの1つの表面波チャネルを」、高周波信号を運ぶように構成された伝送線に接続するように構成されていることが特定されているのに対して、引用発明は、当該特定を有しない点。

相違点3:「容量結合素子」に関して、本願発明1は、「スイッチ素子」であって、「前記複数のスイッチ素子(2100)がオン状態及びオフ状態のみを有し、
前記複数のスイッチ素子(2100)がオン状態のとき、動作周波数において前記複数のスイッチ素子(2100)がRL直列回路として働き、前記各表面波チャネル(125)の高い表面インピーダンスに対応し、
前記複数のスイッチ素子(2100)がオフ状態のとき、動作周波数において前記複数のスイッチ素子(2100)がRC並列回路として働き、前記各表面波チャネル(125)の低い表面インピーダンスに対応」するのに対して、引用発明は、「バラクタ」であって、「金属ストリップ107を介してバラクタ109に印加される電圧を制御することにより、バラクタ109の容量が変化」する点。

相違点4:本願発明1は、「隣り合う前記インピーダンス素子(126)間の距離が、前記スイッチ素子(2100)が配置される位置において最も小さくなるように、各放射素子(123)の前記複数のインピーダンス素子(126)が配置され」ているのに対して、引用発明は、当該特定を有しない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点4について、検討する。
引用文献1に記載される「金属ストリップ107」は、図2Aより、長方形であり、隣り合う金属ストリップ間の距離は、いずれの場所においても同じであるといえる。
そうすると、引用発明は、隣り合う金属ストリップ間の距離が、バラクタが配置される位置において最も小さくなるように金属ストリップが配置されているとはいえない。
また、当該構成は、引用文献2、3にも開示されていない。

したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2、3に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-7について
本願発明2-7は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明8について
本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明8と引用発明とは、上記相違点1ないし4が存在する。
したがって、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明9-10について
本願発明9-10は、本願発明8の発明特定事項を全て含むものであり、本願発明8が、上記3のように当業者であっても、容易に発明できたものであるとはいえないから、本願発明8と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。


第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-7は、いずれも上記第5の1(1)の相違点4に係る「隣り合う前記インピーダンス素子(126)間の距離が、前記スイッチ素子(2100)が配置される位置において最も小さくなるように、各放射素子(123)の前記複数のインピーダンス素子(126)が配置され」るという事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-3に基いて、容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明8-10も、上記相違点4の構成を有するものである。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-09-30 
出願番号 特願2016-39745(P2016-39745)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福田 正悟久々宇 篤志  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 伊藤 隆夫
衣鳩 文彦
発明の名称 2次元で電子的に操向可能な人工インピーダンス表面アンテナ  
代理人 崔 允辰  
代理人 阿部 達彦  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ