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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q |
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管理番号 | 1378332 |
審判番号 | 不服2020-17275 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-17 |
確定日 | 2021-10-14 |
事件の表示 | 特願2019-211671「廃棄物搬入量予測装置、廃棄物搬入量予測方法および廃棄物搬入量予測プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月27日出願公開、特開2021- 82207、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和元年11月22日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年 6月11日付け:拒絶理由通知書 令和2年 7月13日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年10月 9日付け:拒絶査定 令和2年12月17日 :審判請求書 令和3年 7月15日付け:拒絶理由通知書 令和3年 8月18日 :意見書、手続補正書の提出 第2 当審で通知した令和3年7月15日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要 1 理由1(明確性) (1)請求項1に記載の「年単位の過去の所定期間のデータ」及び「年単位の将来の所定期間」における「年単位」、請求項2、請求項5に記載された「年単位」がどのような意味で用いられているのか明確でなく、請求項1、2を引用する請求項3、4、請求項5を引用する請求項6、7についても同様に明確でないから、この出願は、特許請求の範囲の請求項1?7の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (2)請求項2に記載された式の記載が明確でないから、この出願は、特許請求の範囲の請求項2?4の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2 理由2(進歩性) この出願の請求項1、3?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1、2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開平10-81402号公報 引用文献2:実願昭58-77432号(実開昭59-181931号)のマイクロフィルム 第3 原査定の拒絶の理由の概要 (進歩性)この出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献2:実願昭58-77432号(実開昭59-181931号)のマイクロフィルム 第4 本願発明 本願の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、令和3年8月18日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 過去に廃棄物を焼却施設に搬入した量である過去廃棄物搬入量データの内、予め設定されるまたは任意に選択される、過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータを、統計処理演算および/または重付け演算(重み係数を積算)し、将来の年単位の所定期間における日々の廃棄物の日単位の搬入量の予測である予測廃棄物搬入量を求める予測演算部を備える、廃棄物搬入量予測装置。 【請求項2】 前記予測演算部は、以下の式で予測廃棄物搬入量を求める、請求項1に記載の廃棄物搬入量予測装置。 予測廃棄物搬入量=第一過去廃棄物搬入量または第一から第n+1過去廃棄物搬入量の平均量+(第一過去廃棄物搬入量-第二過去廃棄物搬入量)×a1+Σ{(第i過去廃棄物搬入量-第i+1過去廃棄物搬入量)×ai} ここで、第一(第i)過去廃棄物搬入量は、前記将来の年単位の所定期間に対応する直前の過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量の実績データであり、第二(第i+1)過去廃棄物搬入量は、第一(第i)過去廃棄物搬入量よりも過去の前記将来の年単位の所定期間における日単位の搬入量の実績データであり、前記(第i過去廃棄物搬入量-第i+1過去廃棄物搬入量)におけるiは2、3、4、・・nである。 【請求項3】 前記予測演算部は、非収集日に対応する日の予測廃棄物搬入量を、当該非収集日以降の直近の収集日の予測廃棄物搬入量に加算する補正演算部を有する、請求項1または2に記載の廃棄物搬入量予測装置。 【請求項4】 前記補正演算部は、非収集日が2日以上連続してある場合に、非収集日に対応する日の予測廃棄物搬入量を重付け演算した後に、非収集日以降の直近の収集日の予測廃棄物搬入量に加算する、請求項3に記載の廃棄物搬入量予測装置。 【請求項5】 過去に廃棄物を焼却施設に搬入した量である過去廃棄物搬入量データの内、予め設定されるまたは任意に選択される、過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータを、統計処理演算および/または重付け演算(重み係数を積算)し、将来の年単位の所定期間における日々の廃棄物の日単位の搬入量の予測である予測廃棄物搬入量を求める予測演算ステップを含む、廃棄物搬入量予測方法。 【請求項6】 廃棄物搬入量予測プログラムであって、 少なくとも1つのプロセッサーにより、請求項5に記載の廃棄物搬入量予測方法を実現するプログラム。 【請求項7】 少なくとも1つのプロセッサーと、 前記プロセッサーで実行可能な命令を記憶するためのメモリと、を含み、 前記プロセッサーは、実行可能な命令を実行することにより請求項5に記載の廃棄物搬入量予測方法を実現する、情報処理装置。」 第5 引用文献、引用発明 1 引用文献1、引用発明 (1)当審拒絶理由に引用した引用文献1には、次のとおりの記載がある。(「週開け」は原文のママ)。下線は、当審が付した。 「【0004】一方、ごみ焼却プラント監視装置は、前記ごみ計量装置からのごみ搬入データを入力して搬入実績値データベースに蓄積すると共に、CRT上に数値等で表示する。監視員はこの表示によりごみ搬入状況を判断する。また、ごみ焼却プラント監視装置は、所定の周期で、記憶しているごみ搬入データに基づいて予測値を算出し、それをCRT上に表示する。例えば、1日単位で行なう場合、前日のごみ搬入データに基づいて翌日の予測値を算出する。予測の仕方は、最小2乗法等により行われる。」 「【0026】<第2の実施の形態> 《ごみ焼却プラント監視装置40の構成》図4は本発明に係るごみ焼却プラント監視装置の第2の実施の形態の構成を示すブロック図である。この第2の実施の形態のごみ焼却プラント監視装置40は、第1の実施の形態のごみ焼却プラント監視装置10の構成の他に予測値算出部19と予測値データベース20とを有している。 【0027】予測値算出部19は1日単位で前日の集計値に基づいて予測値を算出する。予測値データベース20は予測値算出部19にて算出された予測値を記憶する。この場合、予測値算出部19は、搬入実績データベース15の内容に変更があればその変更内容を考慮して予測値を算出する。 【0028】表示部16は、キーボード12からのキー信号の内容が予測値表示指令であると判断すると、図5に示すように、搬入量実績値・予測値表示領域43にごみ搬入予測値と実績値とをグラフ表示し、更に搬入量実績値・予測値表示領域46にごみ搬入予測値と実績値とを数値表示する。この図において、44はごみ搬入予測値を示すグラフであり、45はごみ搬入実績値を示すグラフである。 【0029】《ごみ焼却プラント監視装置40の動作》図6、7はごみ焼却プラント監視装置40の動作を示すフローチャートである。なお、ステップS10?ステップS32の処理は前述した図3のフローチャートにおける処理と同様であるので説明を省略する。 【0030】(a)ごみ搬入予測値表示処理 さて、ステップS26で変更内容出力指令が無いと判断すると(ステップS26NO)ステップS40(図6参照)に進み、予測値表示指令が有るか否かを判定する。この判定において、予測値表示指令が有ると判断すると(ステップS40YES)、搬入量実績値・予測値表示領域43、46にごみ搬入予測値と実績値とをグラフおよび数値表示する(ステップS42)。この処理を行なった後、ステップS10に戻る。これに対して、予測値表示指令が無いと判断すると(ステップS40NO)、ステップS32で他の処理を行なってステップS10に戻る。 【0031】(b)ごみ搬入予測値算出処理 図7において、まず、ステップS50で午前0時0分を経過したか否かを判定し、経過していないと判断すると(ステップS50NO)この処理を繰り返す。経過したと判断すると(ステップS50YES)ステップS52に進み。前日の集計値、年末年始、週開け等に基づいてごみ搬入予測値を算出する。この処理を行なった後、ステップS54に進み、算出したごみ搬入予測値を予測値データベース20に書き込み、更にごみ計量装置30へ出力する。この処理を行なった後、ステップS50に戻る。このごみ搬入予測値算出処理は、サブルーチンとして所定周期毎に実行される。 【0032】このように、この第2の実施の形態では、1日単位で、前日の集計値、年末年始、週開け等に基づいてごみ搬入予測値が算出された後、予測値表示指令によりグラフおよび数値表示される。しかも、ごみ搬入データの変更が行なわれた場合にその変更に応じたごみ搬入予測値が得られる。 【0033】したがって、ごみ搬入データの変更があっても、ごみ搬入予測を的確に把握することができる。 【0034】なお、上記実施の形態では、ごみ搬入予測値の算出を1日単位で行なうようにしたが、週単位、月単位または年単位であっても良い。また、予測の仕方としては、最小2乗法等、種々考えられる。」 (2)引用発明 上記(1)によると、引用文献1には、 「所定の周期で、記憶しているごみ搬入データに基づいて予測値を算出するごみ焼却プラント監視装置であって、 1日単位でごみ搬入予測値の算出を行う場合、前日のごみ搬入データ、年末年始、週明け等に基づいて予測値を最小2乗法等により算出し、 ごみ搬入予測値の算出は、週単位、月単位または年単位であってもよい、 ごみ焼却プラント監視装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 2 引用文献2、引用発明2 (1)当審拒絶理由に引用した引用文献2には、次のとおりの記載がある。下線は、当審が付した。 「 本考案はごみ焼却量制御装置に関する。ごみ焼却プラントへ搬入されるごみの量は、日々変動しており、日々の焼却量は従来その多くが施設技術管理者の経験に基づいて決定されていた。このため、長期間に渡りごみ焼却量の安定化が難しく、特に燃焼排ガスの余熱利用を行う施設では利用する余熱の過不足を生じる等の欠陥があった。 本考案は、日々のごみ焼却量を安定化することにより、ごみ焼却プラントの運営を容易にするためのものである。 ごみの収集は、週5?6日であり、収集量も、その曜日等により変動している。本考案は、各曜日におけるごみ収集量の変動に着目すると共に、ごみ収集日数、焼却炉稼働日数及びごみピット残量等を考慮し、その日の焼却量を処理量演算装置により予測し、その値を処理量一定制御装置に入力し、設定日のごみ焼却量制御を行うことを特徴とする。 ごみ焼却プラントにおけるごみの搬入から焼却までの概要は第1図に示す通りである。 ごみ1はトラックスケール2に搬入され計量された後、ごみピット3に貯留され、ごみクレーン4により焼却炉5に投入される。 トラックスケール2及びごみピット3の計量等をもとに以下に述べるような手段により、その日の焼却量を処理量演算装置6により予測演算し、その値を処理量一定制御装置7に入力し、焼却炉5の焼却量を決定するものである。 当日(n日とする)のごみ収集量は次の(1)?(4)により予測決定する。 (1)前日([n-1]日)のごみ収集量(W'n-1)を[n-1]日の収集係数(αn-1)で除して[n-1]日における予測週全ごみ収集量(W'w(n-1))とする。 (2)次式によりn日の見掛処理量(Wnf)を求める。 (注1)a:焼却炉の稼働日数(通常7日/週) (注2)(W'w(n-1)):[n-1]日における予測週全ごみ収集量 (注3)(W'w(n-2)):[n-2]日における予測週全ごみ収集量 (3)見掛処理量(Wnf)とn日の前の週の各曜日の収集係数により[n-1]日のごみ搬入完了時のごみピットにおける所用ごみ貯留量(W'p(n-1))を算出する。 ごみピット貯留量の例は第2図に示す。図は各曜日におけるごみピットの所用ごみ貯留量の推移を表す。 設定条件は次のとおりである。 ごみ収集:5.5日/週×6時/日 焼却炉 :7日/週×24時/日 収集係数:月?金→0.182、土→0.09 基準ごみ貯留量:0 (4)n日のごみ焼却量(Wn)は次式により決定される。 Wn=Wnf+1/a・(W'p(n-1)-Wp(n-1)) (注1)Wp(n-1):[n-1]日のごみ搬入完了時のごみピットにおける実ごみピット貯留量。(トラックスケール計量値とクレーン計量値の差) これら(1)?(4)は全て処理量演算装置6により予測演算され、このようにして得られた予測ごみ焼却量を処理量一定制御装置7の設定値として与え、毎日のごみ焼却量の制御を自動的に行う。従来、ごみ焼却プラントにおける日々の焼却量は施設技術管理者の経験に基づいて決定されていたので過剰な処理を行い週末等にごみ不足を生じ、全連続炉でありながら短期(1?2日)の休炉が生じ停止・稼働の繁雑な作業が発生する。 またごみ焼却量が安定しにくく余熱利用において熱源の過不足などの問題があったが本考案は、上述したようにこれらの欠点を改善し常に安定したごみ焼却プラントの運営が計れる効果を奏する。」 (第1頁第13行?第5頁第14行、なお、丸数字を半角カッコ数字で表記した。) (2)引用発明2 上記(1)によると、引用文献2には、 「前日([n-1]日)のごみ収集量(W'n-1)を[n-1]日の収集係数(αn-1)で除して[n-1]日における予測週全ごみ収集量(W'w(n-1))とし(ここで、収集係数(αn-1)=([n-1]日の前の週の[n-1]日と同じ曜日のごみ収集量)/([n-1]日の前の週のごみ全収集量)、(W'w(n-1):[n-1]日における予測週全ごみ収集量)と(W'w(n-2):前々日([n-2]日)における予測週全ごみ収集量)との2乗平均を焼却炉の稼働日数aで除したものを見掛処理量(Wnf)とし、見掛処理量(Wnf)に基づいて日々の焼却炉の焼却量を決定することにより、ごみ焼却プラントの運営の安定化を行うごみ焼却量制御装置。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 第6 当審拒絶理由の理由2(進歩性)について 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「ごみ焼却プラント」は、本願発明1の「焼却施設」に相当し、引用発明において、「ごみ搬入予測値の算出は、週単位、月単位または年単位であってもよい」から、引用発明の「所定の周期」は、本願発明1の「予め設定されるまたは任意に設定される、過去の年単位の所定期間」に相当する。 引用発明において、「年単位」のごみ搬入予測値を算出する場合は、1年全体のごみ搬入予測値を算出するのであり、日々の搬入予測値を算出するのではない。 よって、引用発明の「ごみ焼却プラント」に搬入された「所定の周期で、記憶しているごみ搬入データ」と、本願発明1の「過去に廃棄物を焼却施設に搬入した量である過去廃棄物搬入量データの内、予め設定されるまたは任意に選択される、過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータ」とは、「過去に廃棄物を焼却施設に搬入した量である過去廃棄物搬入量データの内、予め設定されるまたは任意に選択される、過去の年単位の所定期間における搬入量のデータ」である点で共通する。 イ 引用発明において、予測値の算出は、「予測演算部」によって行うものということができ、引用発明の「ごみ搬入データ、年末年始、週明け等に基づいて予測値を最小2乗法等により算出」することと、本願発明1の「統計処理演算および/または重付け演算(重み係数を積算)し、将来の年単位の所定期間における日々の廃棄物の日単位の搬入量の予測である予測廃棄物搬入量を求める」こととは、いずれも、「演算し、将来の年単位の所定期間における廃棄物の搬入量の予測である予測廃棄物搬入量を求める」点で共通する。 ウ 引用発明の「ごみ搬入データ」の予測値を算出する「ゴミ焼却プラント監視装置」は、本願発明1と同様の「廃棄物搬入量予測装置」であるといえる。 エ 以上より、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。 [一致点] 過去に廃棄物を焼却施設に搬入した量である過去廃棄物搬入量データの内、予め設定されるまたは任意に選択される、過去の年単位の所定期間における搬入量のデータを、演算し、将来の年単位の所定期間における廃棄物の搬入量の予測である予測廃棄物搬入量を求める予測演算部を備える、廃棄物搬入量予測装置。 [相違点1] 予測の演算が、本願発明1では、統計処理演算および/または重付け演算(重み係数を積算)であるのに対し、引用発明では、最小2乗法等である点。 [相違点2] 「過去の年単位の所定期間における搬入量のデータ」、及び、「将来の年単位の所定期間における廃棄物の搬入量の予測である予測廃棄物搬入量」が、本願発明1では、「過去の年単位の所定期間における『日単位の』搬入量のデータ、及び、「将来の年単位の所定期間における『日々の』廃棄物の『日単位の』搬入量の予測」であるのに対し、引用発明では、過去の「年単位」の搬入量のデータ、及び、将来の「年単位」の廃棄物の搬入量の予測である点。 (2)相違点についての判断 ア[相違点1]について 引用発明2は、前日と前々日のごみ収集量を収集係数で除して予測した1週間分のごみ収集量の2乗平均をとることによって、1週間分のごみ収集量を予測するものであり、収集係数で除することは重み付け演算といえ、引用発明と引用発明2とは、共にゴミの搬入量を予測する機能を有していることから、引用発明において、引用発明2の当該技術思想を採用することにより、廃棄物の搬入量の予測を統計処理演算および/または重付け演算(重み係数を積算)により演算する構成とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。 イ[相違点2]について 引用発明は、1日単位で、前日のごみ搬入量から当日のごみ搬入量の予測をしても、年単位で、昨年のごみ搬入量から今年のごみ搬入量の予測をしてもよいものであるが、過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータから、将来の年単位の所定期間における日単位のごみ搬入量の予測を行うものではないし、そのような示唆をするものでもない。 引用発明2は、稼働日の前日のごみ収集量から予測週全ごみ収集量、及び、前々日のごみ収集量から予測週全ごみ収集量を算出するが、日単位のごみ搬入量から週単位のごみ搬入量を予測するものであり、過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータから、将来の年単位の所定期間における日単位のごみ搬入量の予測を行うものではない。 また、引用発明2は、稼働日の前日のごみ収集量からの予測週全ごみ収集量、及び、前々日のごみ収集量からの予測週全ごみ収集量に基づいて、見掛処理量を算出するが、見掛処理量は、焼却炉に対する日々の焼却量のことであり、日単位のごみ搬入量とは異なるものである。ここで、引用発明において、1週の焼却炉の稼働日数aを1週のごみ収集日数に変更すれば、1日のごみ収集量を予測することはできるが、そうであったとしても、前日のごみ収集量及び前々日のごみ収集量から、当日のごみ収集量を予測するものが導き出されるにとどまる。 したがって、引用発明と引用発明2とを組み合わせたとしても、過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータから、将来の年単位の所定期間における日単位のごみ搬入量の予測を行うことが、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。 ウ[作用効果]について 本願発明1は、相違点2に係る構成により、「過去の廃棄物搬入量を考慮しつつ、予測廃棄物搬入量と実廃棄物搬入量との差を小さくすことができる」という明細書の段落【0005】に記載の作用効果を奏するものである。 エ よって、本願発明1は、引用発明及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2について 本願発明2については、当審では進歩性に係る拒絶理由を通知しておらず、進歩性に係る拒絶の理由を発見しない。 3 本願発明3、4について 本願発明3、4は、本願発明1を減縮した発明であり、上記1で検討した相違点2に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、当業者であっても、引用発明及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 4 本願発明5?7について 請求項5に係る発明は、本願発明1とカテゴリ違いの方法の発明であり、請求項6、7は、請求項5の方法の発明を、それぞれ、プログラムの発明、情報処理装置の発明としたものであり、上記1で検討した相違点2に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、当業者であっても、引用発明及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 第7 当審拒絶理由の理由1(明確性)について 当審拒絶理由の理由1(1)は、請求項1の「単位の過去の所定期間のデータ」及び「年単位の将来の所定期間の日々の廃棄物の搬入量」における「年単位」の意味が明確でないというものであったが、令和3年8月18日にされた手続補正による補正により、それぞれ、「過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータ」及び「将来の年単位の所定期間における日々の廃棄物の日単位の搬入量」と補正され、請求項2、請求項5の記載についても同様に補正された。 また、当審拒絶理由の理由1(2)は、請求項2に記載された式の記載が明確でないというものであったが、令和3年8月18日にされた手続補正による補正により、当該式の「n」の取り得る範囲等が補正された。 このため、当審拒絶理由の理由1(明確性)は解消した。 第8 原査定の拒絶の理由について 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の「ごみ焼却プラント」は、本願発明1の「焼却施設」に相当し、引用発明2の前日及び前々日は、「所定期間」といえるから、引用発明2の「ごみ焼却プラント」に搬入された「前日([n-1]日)のごみ収集量(W'n-1)」及び「前々日([n-2]日)のごみ収集量」と、本願発明1の「過去に廃棄物を焼却施設に搬入した量である過去廃棄物搬入量データの内、予め設定されるまたは任意に選択される、過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータ」とは、「過去に廃棄物を焼却施設に搬入した量である過去廃棄物搬入量データの内、予め設定されるまたは任意に選択される、所定期間における日単位の搬入量のデータ」である点で共通する。 イ 引用発明2において、ごみ収集量の予測値の算出は、「予測演算部」によって行うものということができ、引用発明2の「見掛処理量(Wnf)」と本願発明1の「日々の廃棄物の日単位の搬入量の予測である予測廃棄物搬入量」とは、いずれも、「日々の廃棄物の日単位の予測である廃棄物に関する量」である点で共通する。 ウ 引用発明2の「前日([n-1]日)のごみ収集量(W'n-1)を[n-1]日の収集係数(αn-1)で除して[n-1]日における予測週全ごみ収集量(W'w(n-1))とし(ここで、収集係数(αn-1)=([n-1]日の前の週の[n-1]日と同じ曜日のごみ収集量)/([n-1]日の前の週のごみ全収集量)、(W'w(n-1):[n-1]日における予測週全ごみ収集量)と(W'w(n-2):前々日([n-2]日)における予測週全ごみ収集量)との2乗平均」することは、本願発明1の「統計処理演算および/または重付け演算(重み係数を積算)」することに相当する。 エ 引用発明2の「焼却量を決定する」「ゴミ焼却量制御装置」と、本願発明1の「廃棄物搬入量予測装置」とは、いずれも、「廃棄物に関する予測をする装置」である点で共通する。 オ 以上より、本願発明1と引用発明2とは、次の一致点、相違点を有する。 [一致点] 過去に廃棄物を焼却施設に搬入した量である過去廃棄物搬入量データの内、予め設定されるまたは任意に選択される、過去の所定期間における日単位の搬入量のデータを、統計処理演算および/または重付け演算(重み係数を積算)し、将来の日々の廃棄物の日単位の予測である廃棄物に関する量を求める予測演算部を備える、廃棄物に関する予測をする装置。 [相違点1a] 予測する廃棄物に関する量が、本願発明1では、「廃棄物の搬入量の予測である予測廃棄物搬入量」であるのに対し、引用発明2では、「ごみ焼却量」である点。 [相違点2a] 廃棄物に関する量の予測の統計処理演算および/または重付け演算(重み係数を積算)の基となる「過去の所定期間における日単位の搬入量のデータ」が、本願発明1では、「過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータ」であるのに対し、引用発明2では、前日および前々日の搬入量のデータである点。 [相違点3a] 予測される廃棄物に関する量が、本願発明1では、「将来の年単位の所定期間における日々の廃棄物の日単位」であるのに対し、引用発明2では、当日の予測である点。 (2)相違点についての判断 ア[相違点1a]について 引用発明2は、稼働日の前日のごみ収集量からの予測週全ごみ収集量、及び、前々日のごみ収集量からの予測週全ごみ収集量に基づいて、見掛処理量を算出するが、週のごみ収集量の予測から、1日のごみ収集量を予測することに格別の困難性はないから、引用発明2において、1週の焼却炉の稼働日数aを1週のごみ収集日数に変更して、1日のごみ収集量を予測することは当業者が容易に想到し得た事項である。 イ[相違点2a]、[相違点3a]について 引用発明2は、稼働日の前日のごみ収集量から予測全ごみ収集量、及び、前々日のごみ収集量から予測週全ごみ収集量を算出するが、日単位のごみ搬入量から週単位のごみ搬入量を予測するものであり、過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータから、将来の年単位の所定期間における日単位のごみ搬入量の予測を行うものではなく、そのような示唆もない。 したがって、引用発明2に基づいて、過去の年単位の所定期間における日単位の搬入量のデータから、将来の年単位の所定期間における日単位のごみ搬入量の予測を行うことが、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。 ウ[作用効果]について 本願発明1は、相違点2a、3aに係る構成により、「過去の廃棄物搬入量を考慮しつつ、予測廃棄物搬入量と実廃棄物搬入量との差を小さくすことができる」という明細書の段落【0005】に記載の作用効果を奏するものである。 エ よって、本願発明1は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2?4について 本願発明2?4は、本願発明1を減縮した発明であり、上記1で検討した相違点2a、3aに係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、当業者であっても、引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 3 本願発明5?7について 請求項5に係る発明は、本願発明1とカテゴリ違いの方法の発明であり、請求項6、7は、請求項5の方法の発明を、それぞれ、プログラムの発明、情報処理装置の発明としたものであり、上記1で検討した相違点2a、3aに係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、当業者であっても、引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 第9 むすび 以上のとおり、本願発明1?7は、当業者が引用発明及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本願発明1?7は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本願請求項1?7の記載は明確であって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす。 したがって、原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-09-30 |
出願番号 | 特願2019-211671(P2019-211671) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 原 忠 |
特許庁審判長 |
畑中 高行 |
特許庁審判官 |
高瀬 勤 松田 直也 |
発明の名称 | 廃棄物搬入量予測装置、廃棄物搬入量予測方法および廃棄物搬入量予測プログラム |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |