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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61N
管理番号 1378356
審判番号 不服2020-6538  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-14 
確定日 2021-09-24 
事件の表示 特願2017-527613「様々な刺激系列による効果的な侵襲性神経刺激のためのデバイスおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月 2日国際公開、WO2016/083516、平成29年11月30日国内公表、特表2017-535354〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)11月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年11月27日 DE(ドイツ連邦共和国))を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 1年 8月22日付け:拒絶理由通知
令和 1年11月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年12月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年 5月14日 :審判請求書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1?15に係る発明は、令和1年11月26日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ニューロン(31)を刺激する装置(1、2)であって、
患者の身体内に埋め込むことができる刺激ユニット(11)と、
前記刺激ユニット(11)を制御する制御ユニット(10)と、を備え、
前記刺激ユニット(11)は、複数の刺激(22)によって患者の脳および/または脊髄(30)内のニューロン(31)を刺激するための複数の刺激要素(12?15)を有し、
前記制御ユニット(10)は、前記刺激要素(12?15)が前記刺激(22)の系列を繰り返し生成するように、且つ、前記刺激要素(12?15)が前記刺激(22)を系列内で生成する順序が、順次生成される少なくとも25の系列にわたって一定のままであり、その後変更されるように、前記刺激ユニット(11)を制御する、装置(1、2)。」


第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献.国際公開第2013/117656号


第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献の記載事項
引用文献には、次の記載がある。(原文において、ウムラウトのある文字はウムラウトを付さない文字で、また、エスツェットは「ss」と表記した。付記した訳文は、引用文献のパテントファミリーである特表2015-506260号公報の記載に基づく。)。

ア 「Die Vorrichtung 1 besteht aus einer Steuer- und Analyseeinheit 10, einer Stimulationseinheit 11 und einer Messeinheit 12. Wahrend des Betriebs der Vorrichtung 1 fuhrt die Steuer- und Analyseeinheit 10 u.a. eine Steuerung der Stimulationseinheit 11 durch. Dazu erzeugt die Steuer- und Analyseeinheit 10 Steuersignale 21, die von der Stimulationseinheit 11 entgegengenommen werden. Die Stimulationseinheit 11 wird operativ in den Korper des Patienten implantiert und erzeugt anhand der Steuersignale 21 elektrische Reize 22, die dem Gehirn und/oder Ruckenmark des Patienten verabreicht werden.(第4ページ第16-24行)」(装置1は、制御分析ユニット10と、刺激ユニット11と、測定ユニット12とを備える。装置1の動作時に、制御分析ユニット10は特に、刺激ユニット11の制御を実行する。このため、制御分析ユニット10は、刺激ユニット11によって受け取られる制御信号21を生成する。刺激ユニット11は、患者の身体に外科的に埋め込まれ、制御信号21に基づいて患者の脳および/または脊髄に送られる電気的刺激22を生成する。)

イ 「In Fig. 1 sind beispielhaft vier Stimulationskontakte 25, 26, 27 und 28 dargestellt, die Stimulationseinheit 11 kann selbstver- standlich aber auch eine andere Zahl von Stimulationskontakten aufwei-sen. (第5ページ第23-26行)」(4つの刺激接点25、26、27、および28が一例として図1に示されているが、刺激ユニット11は当然異なる数の刺激接点を有してもよい。)

ウ 「Die Stimulationseinheit 11 stimuliert die krankhaft aktive Neuronenpopulation 30 im Gehirn 29 und/oder Ruckenmark 29 mit den elektrischen Reizen 22 entweder direkt oder aber die Reize 22 werden uber das Nervensystem an die krankhaft aktive Neuronenpopulation 30 weitergeleitet.(第8ページ第20-24行)」(刺激ユニット11は脳29内および/または脊髄29内の病理学的に活性の神経細胞集団30を電気的刺激22によって直接刺激するか、あるいは刺激22が神経系を介して病理学的に活性の神経細胞集団30に送られる。)

エ 「Die bei der CR-Stimulation verabreichten elektrischen Reize 22 bewirken in der Neuronenpopulation 30 ein Zurucksetzen, einen sogenannten Re- set, der Phase der neuronalen Aktivitat der stimulierten Neuronen.(第9ページ第1-3行)」(電気的刺激22は、神経細胞集団30内の刺激を受けたニューロンの神経活動の位相をリセットさせる。)

オ 「Zu den einstellbaren Reizparametern zahlen die Amplitude der Einzelpulse, die Dauer der Einzelpulse, die Pulsfrequenz innerhalb des Pulszugs und die Anzahl der Einzelpulse im Pulszug.(第13ページ第13-15行)」(設定可能な刺激パラメータには、個々のパルスの振幅、個々のパルスの持続時間、パルス列のパルス周波数、およびパルス列中の個々のパルスの数が含まれる。)

カ 「Fig. 10 zeigt eine Pause, die wahrend der Applikation der Reize 40 vorgesehen werden kann und wahrend der keine Stimulation erfolgt. Derartige Pausen konnen beliebig lang gewahlt werden und insbesondere ein ganzzahliges Vielfaches der Stimulationsperiode T_(stim) betragen. Ferner konnen die Pausen nach einer beliebigen Anzahl von Stimulationen eingehalten werden. Z.B. kann eine Stimulation wahrend P aufeinander folgender Perioden der Lange T_(stim) durchgefuhrt werden und anschliessend eine Pause wahrend Q Perioden der Lange T_(stim) ohne Stimulation eingehalten werden, wobei P und Q kleine ganze Zahlen sind, z.B. im Bereich von 1 bis 20. Dieses Schema kann entweder periodisch fortgesetzt werden oder stochastisch und/oder deterministisch, z.B. chaotisch, modifiziert werden.(第26ページ第11-21行)」(図10は、刺激40を加える間に設けることができ、かつ刺激が行われないポーズを示す。そのようなポーズとしては任意の長さが選択されてもよく、特に周期T_(stim)を整数倍したものであってもよい。さらに、任意の所望の回数の刺激の後に休止が観察されてもよい。たとえば、長さT_(stim)のP個の相互に連続する周期の間に刺激を実施してもよく、その後、長さT_(stim)のQ個の周期の間刺激なしのポーズが観察されてもよい。この場合、PおよびQは小さい整数であり、たとえば、1?20の範囲内である。この方式は、周期的に継続されても、あるいは確率的および/または決定論的に、たとえば、カオス的に修正されてもよい。)

キ 「Fig. 11 zeigt, dass die Reihenfolge, in welcher die einzelnen Stimulationskontakte die Reize 40 applizieren, pro Periode T_(stim) (oder auch in anderen Zeitschritten) variiert wird.(第26ページ第26-28行)」(図11は、個々の刺激接点が刺激40を加える順序が周期T_(stim)当たりに変更される(または他の時間ステップでも変更される)ことを示す。)

ク 「Die in Fig. 11 gezeigte Randomisierung kann mit der in Fig. 10 gezeigten Stimulationsform kombiniert werden. Beispielsweise kann in jedem der P aufeinander folgenden Stimulationszeitabschnitte der Lange T_(stim) eine erneute Randomisierung durchgefuhrt werden oder aber es erfolgt nach jeder Pause der Lange Q x T_(stim) eine Randomisierung und innerhalb der darauf folgenden P Stimulationszeitabschnitte bleibt die Reihenfolge, in welcher die Stimulationskontakte die Reize 40 applizieren, konstant.(第27ページ第2-8行)」(図11に示す無作為化を図10に示す刺激形式と組み合わせてもよい。たとえば、長さT_(stim)のP個の相互に連続する刺激期間の各々において反復無作為化を実施してもよく、あるいは長さがQxT_(stim)の各ポーズの後に無作為化を行い、刺激接点が刺激40を加える順序をP個の連続する刺激期間内で一定のままにする。)

ケ 上記クの「刺激接点が刺激40を加える順序をP個の連続する刺激期間内で一定のままにする。」との記載を踏まえると、図10には、長さT_(stim)の周期の間に、各刺激接点(チャンネル1?4)においてそれぞれ刺激が実施されることで刺激の系列が構成され、長さT_(stim)のP個の相互に連続する周期の間に、刺激の系列を繰り返し生成する点が記載されているといえる。

コ 「


サ 「



2 引用発明
上記イから、装置1は複数の刺激接点11を有するといえる。
また、上記ケから、各刺激接点において、刺激の系列を構成され、刺激の系列を繰り返し生成することで、複数の刺激が生じているといえる。
そして、上記カ、クに記載される刺激及びポーズの実施は、上記アに記載された制御分析ユニット10が刺激ユニット11を制御することによるものであることは明らかである。
これらのことを踏まえると、上記ア?エ、カ、ク?ケの記載事項より、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「患者の身体に外科的に埋め込まれる刺激ユニット11と、
刺激ユニット11の制御を実行する制御分析ユニット10とを備え、
刺激ユニット11は、
複数の刺激を生じる複数の刺激接点を有し、
患者の脳および/または脊髄に送られる電気的刺激22を生成し、
脳29内および/または脊髄29内の病理学的に活性の神経細胞集団30を電気的刺激22によって直接刺激して、
神経細胞集団30内の刺激を受けたニューロンの神経活動の位相をリセットさせるものであり、
制御分析ユニット10は、
長さT_(stim)のP個の相互に連続する周期の間に、刺激の系列を繰り返し生成するように刺激を実施し、その後、長さT_(stim)のQ個の周期の間刺激なしのポーズを実施し、PおよびQは小さい整数であり、たとえば、Pは1?20の範囲内であり、Qは1?20の範囲内であり、
刺激接点が刺激40を加える順序をP個、すなわち1?20個の連続する刺激期間内で一定のままとするように刺激ユニット11を制御する
装置1。」


第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「装置1」は、「刺激ユニット11」が生成する「電気的刺激22」により、「神経細胞集団30内の刺激を受けたニューロンの神経活動の位相をリセットするものであ」るから、本願発明の「ニューロン(31)を刺激する装置(1、2)」に相当する。
引用発明の「刺激ユニット11」は、本願発明の「刺激ユニット(11)」に相当し、以下同様に、「制御分析ユニット10」は「制御ユニット(10)」に、「複数の刺激接点」は「複数の刺激要素(12?15)」に、「刺激接点が刺激40を加える順序」は「前記刺激要素(12?15)が前記刺激(22)を系列内で生成する順序」に、それぞれ相当する。
引用発明の、「制御分析ユニット10は、長さT_(stim)のP個の相互に連続する周期の間に、刺激の系列を繰り返し生成するように刺激を実施し、その後、長さT_(stim)のQ個の周期の間刺激なしのポーズを実施し、PおよびQは小さい整数であり、たとえば、Pは1?20の範囲内であり、Qは1?20の範囲内であ」る「ように刺激ユニット11を制御する」点は、本願発明の、「前記制御ユニット(10)は、前記刺激要素(12?15)が前記刺激(22)の系列を繰り返し生成するように」「前記刺激ユニット(11)を制御する」点に相当する。

そうすると、両者は、
「ニューロン(31)を刺激する装置(1、2)であって、
患者の身体内に埋め込むことができる刺激ユニット(11)と、
前記刺激ユニット(11)を制御する制御ユニット(10)と、を備え、
前記刺激ユニット(11)は、複数の刺激(22)によって患者の脳および/または脊髄(30)内のニューロン(31)を刺激するための複数の刺激要素(12?15)を有し、
前記制御ユニット(10)は、前記刺激要素(12?15)が前記刺激(22)の系列を繰り返し生成するように、前記刺激ユニット(11)を制御する、装置(1、2)。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、前記刺激要素(12?15)が前記刺激(22)を系列内で生成する順序が、順次生成される少なくとも25の系列にわたって一定のままであり、その後変更されるように、前記刺激ユニット(11)を制御するのに対して、引用発明では、刺激接点が刺激40を加える順序をP個、すなわち1?20個の連続する刺激期間内で一定のままとするように刺激ユニット11を制御する点。


第6 判断
上記相違点について検討する。
上記第4の1カの「この方式は、周期的に継続されても・・・よい。」との記載事項を踏まえれば、引用文献には、Pを1?20の範囲内とした個数の刺激期間内で刺激を加える順序を一定のままとする方式を周期的に継続してもよいことが記載されている。そうすると、P=20としてわずか1回だけ継続した場合であっても40系列にわたって順序が一定のままの電気刺激が生成されることになる。さらに、例えば、P=10として周期的に継続させた場合には、3周期連続で30系列、10周期連続で100系列にわたって、順序が一定のままである電気刺激が生成されることになるのは明らかである。そうすると、引用発明において、少なくとも25以上にわたって刺激の生成される順序が一定のままであるように構成することは、当業者であれば当然に想起し得ることといえる。
また、上記第4の1キの「図11は、個々の刺激接点が刺激40を加える順序が周期Tstim当たりに変更される(または他の時間ステップでも変更される)ことを示す。」との記載事項及び上記第4の1クの「図11に示す無作為化を図10に示す刺激形式と組み合わせてもよい。」との記載事項を踏まえれば、図10に示される順序が一定のまま周期的に継続される電気刺激と、図11に示される変更された電気刺激を組み合わせてもよいことが示唆されていることから、引用発明の刺激の系列を繰り返し生成するにあたり、少なくとも25以上にわたって刺激の生成される順序が一定のままであり、その後変更されるように刺激ユニットを制御することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明は、神経細胞集団の病理学的活動を非同期化させる点において、引用発明と比べて格別な作用効果を奏するものではない。

よって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲

 
審理終結日 2021-04-13 
結審通知日 2021-04-15 
審決日 2021-05-11 
出願番号 特願2017-527613(P2017-527613)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白川 敬寛松浦 陽  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 宮崎 基樹
栗山 卓也
発明の名称 様々な刺激系列による効果的な侵襲性神経刺激のためのデバイスおよび方法  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 松下 満  
代理人 渡邊 徹  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 山本 泰史  
代理人 須田 洋之  
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