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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1378367
審判番号 不服2020-7736  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-04 
確定日 2021-09-22 
事件の表示 特願2018-536489「湿式化学分析器のための洗浄剤を含む標準溶液」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月27日国際公開、WO2017/127232、平成31年 4月11日国内公表、特表2019-510201〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)1月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年1月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和元年8月20日付けで拒絶理由が通知され、同年11月25日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年1月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたのに対し、同年6月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
「【請求項1】
湿式化学分析器のための較正溶液であって、前記較正溶液は、
較正剤;及び
強塩基を含む洗浄剤;
を含み、
前記洗浄剤は、前記湿式化学分析器が同時に洗浄され且つ較正されるように、且つ、前記湿式化学分析器内で使用される試薬に少なくとも部分的に基づいて選択される、
前記溶液。」(下線は補正箇所である。)

(2)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
湿式化学分析器のための較正溶液であって、前記較正溶液は、
較正剤;及び
強塩基を含む洗浄剤;
を含み、
前記洗浄剤は、前記湿式化学分析器が同時に洗浄され且つ較正されるように選択される、
前記溶液。」

2 補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正の請求項1についての補正は、洗浄剤を「前記湿式化学分析器内で使用される試薬に少なくとも部分的に基づいて選択される」ものに限定するもので、いわゆる限定的減縮をしたものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。 そこで、上記1(1)で記載した本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(2)独立特許要件について
ア 引用文献について
(ア)引用文献4について
a 記載事項
本願の優先日前に頒布され、下記第3の2で述べるように、原査定の拒絶の理由において主引用例として引用された引用文献4(米国特許第4865992号明細書)には、次の事項が記載されている。当審訳に付した下線は、以下のbで述べる引用発明の認定に関与する部分である。
(4ア)「The system illustrated in FIG. 1 is useful for quantitative analysis of a solution to determine the concentration of a particular chemical species in the solution. A sample inlet line 30 is adapted to feed the solution to be tested into the reaction vessel 12. Reagent feed lines (i.e., conduits) 21, 23 and 25 extend from the reagent sources to the reaction vessel, as illustrated.」(3欄10?14行)
(当審訳:図1に示されているシステムは、溶液中の特定の化学種の濃度を決定するために溶液の定量分析に用いられる。サンプル導入ライン30は、反応容器12に被検溶液を供給するようになっている。試薬供給ライン(すなわち、管路)21、23及び25は、図示されているように、試薬源から反応容器に延びる。)

(4イ)「Feed line 16 is adapted to feed into the reaction vessel an appropriate cleaning agent for the reaction vessel.」(4欄17?19行)
(当審訳:供給ライン16は、反応容器に対する適切な洗浄剤を反応容器に供給するようになっている。)

(4ウ)「The instrument is calibrated by analyzing a sample with a known concentration of the chemical species to be determined in subsequently tested samples. The analysis is performed and, in the case of a unit volume analysis, the magnitude of property change is noted.
In a volumetric analysis the amount of reagent required to reach the equivalence point is noted. From this data a response factor can be calculated. By means of the response factor, subsequent analyses are ratioed against the response of the known concentration to calculate the concentration of the unknown in the test solution. The calibration is performed using a standard solution.
The reaction vessel is cleaned chemically. A cleaning solution such as a strong acid (e.g., sulfuric acid) or a strong base (e.g., sodium hydroxide) may be introduced into the reaction vessel instead of test solution. After a period of time sufficient to clean the reaction vessel, the cleaning solution is replaced by the test solution.」(6欄8?26行)
(当審訳:装置は、その後の測定されるサンプルにおいて決定される化学種の濃度が既知のサンプルを分析することによって較正される。分析が行われ、そして、それが単位容量当たりの分析の場合には、特性変化の大きさに注目する。
容量分析では、当量点に達するのに必要とされる試薬の量が記録される。このデータから、応答係数を計算することができる。応答係数を用いて、その後の分析によって、既知の濃度の応答に対する比率を求めて、テスト溶液の未知の濃度を計算する。較正は、標準溶液を用いて行われる。
反応容器は化学的に洗浄される。強酸(例えば、硫酸)又は強塩基(例えば、水酸化ナトリウム)のような洗浄溶液は、試験溶液の代わりに反応容器に導入することができる。反応容器を洗浄するのに十分な時間の後、洗浄溶液は、試験溶液によって置換される。)

(4エ)「The reaction between the reagent and the nitrogen in the reaction vessel will produce a film on the glass cell (i.e., reaction vessel) which will interfere with the optical clarity of the vessel unless the film is removed after each analysis. Consequently, repetitive analyses were conducted as a test of the ability to clean or remove this film from the glass surface. After each colorimetric analysis 0.1 ml. of sulfuric acid was added to the reaction vessel to clean the glass surface.」(6欄59?67行)
(当審訳:反応容器における試薬と窒素との反応は、ガラスセル(すなわち、反応容器)に膜を生成することになり、この膜が各分析後に除去されない限り、反応容器の光学的透明性を妨げることになる。その結果、ガラス表面からこの膜を洗浄又は除去する能力を試験するために、繰り返し分析が行われた。各比色分析の後に、0.1mlの硫酸を反応容器に添加し、ガラス表面を洗浄した。)

(4オ)「The system and techniques of this invention are extremely versatile and efficient. The amount of desired reagent(s) to be added to the reaction vessel can be very precisely controlled by opening the appropriate valve for each reagent feed line for a predetermined period of time. No pumps or other such equipment is required in order to move reagent through the feed lines.」
(当審訳:本発明のシステムおよび技術は、非常に融通性があり効率的である。反応容器に添加されるべき所望の試薬の量は、所定の時間周期の間、各試薬供給ラインの適当な弁を開放することによって、高精度に制御することができる。供給ラインを介して試薬を移動させるために、ポンプや他のそのような設備は必要ない。)

b 引用発明について
上記(4ウ)に記載されている標準溶液を用いて行われる較正は、上記(4ア)に記載されている溶液中の特定の化学種の濃度を決定するためのシステムの較正として行われるものである。そこで、上記引用文献4に記載されている発明を、そのシステムの較正に用いる標準溶液の発明として、上記aの記載事項(特に下線部参照)をまとめ、認定することとする。なお、図面における番号は省略して記載した。

「溶液中の特定の化学種の濃度を決定するためのシステムの較正に用いる標準溶液であって、
前記システムは、反応容器に被検溶液を供給するサンプル導入ライン、試薬供給ライン試薬源から反応容器に延びる試薬供給ライン、洗浄剤を反応容器に供給する供給ラインを有し、
前記較正は、化学種の濃度が既知のサンプルを分析することによって較正されるものであり、
洗浄は、強酸(例えば、硫酸)又は強塩基(例えば、水酸化ナトリウム)のような洗浄溶液によって反応容器を化学的に洗浄するものであるところの、
前記標準溶液。」(以下「引用発明」という。)

(イ)引用文献1について
a 記載事項
本願の優先日前に頒布され、下記第3の2で述べるように、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開昭61-114157号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである。
(1ア)「〔発明の技術的背景とその問題点〕
近年、血液や尿の生化学検査は各種技術の発展に伴ない、種々の分析装置が開発されている。そしてこれらの各種分析装置を駆使することで、病態の把握が適切に行なえるようになってきている。
しかしながら従来の分析装置は、測定液ごとの影響を低減し測定精度を高くするために、高速で液体を吸入できるように大トルクのモーターを備えたポンプを使用したり、標準較正液、洗浄液等を吸入させるため多数の切替え弁を備えた流路系を設けたりあるいは各種の液体を吸入させるために液体の吸入ノズルに複雑な動作をさせたりしているので、構成部品が増大し機構部分が複雑化して分析装置が大形になり、その複雑な機構のため故障の原因になったりメンテナンスがむずかしい等の欠点を有していた。
よって、現在では限られた施設に各種分析装置を設置するのに場所を取らない小形で容易に保守点検を行なえる精度の高い分析装置が望まれている。」(2欄6行?3欄5行)

(1イ)「〔発明の目的〕
本発明は上述の問題点においてなされたもので、試料ノズルの洗浄が容易に確実に行なえる機構を有した、小型で高精度の分析装置を提供することである。」(3欄10?14行)

(1ウ)「すなわち、洗浄液容器(9)から洗浄液送液管(11)を通して送液ポンプ(13)により送られてきた洗浄液は、吸入ポンプ(4)と測定電極(5)との間の液配管内に流入し、測定電極(5)内を通って、吸入ノズル内を流れその先端部から筒状容器(2)に吐出され、筒状容器(2)の上端部及び切り欠き部(2a)からあふれて液受部(3)及び洗浄廃液排出管(12)を経て廃液容器(10)に送られる。
この時洗浄液中に所定濃度の標準物質を含有させて標準較正液としておくと、洗浄と同時に電極の標準物質(所定濃度)に対応した信号を計測し、較正することができ、この較正結果をもとにして試料液中の物質濃度の測定が行なえるので好ましい。」(5欄12行?6欄5行)

(1エ)「実施例1
本発明の概要に詳述した、第1図(a)で表わした構造を有する分析装置を製作した。測定電極には、それぞれNa^(+)、K^(+)、Cl^(-)のイオンを測定するイオン選択性電極を組み合わせたものを用いた。また吸入ポンプ及び送液ポンプには小型のベリスフポンプを使用し、回転数を制御してその吸入量及び送液量を制御した。さらに、洗浄液には標準較正液を兼ねた洗浄液を用いた。」(8欄8?16行)

(1オ)「(iv)較正
使用したイオン選択性電極は、試料液の測定値と標準較正液の測定値を比較、演算して試料に含まれるイオン濃度を決定する。本装置では(iii)の洗浄の時に標準較正液を兼ねた洗浄液がイオン電極まで達しているのでその時点で較正のための測定を行なう。」(10欄14?20行)

b 技術的事項
上記aの記載事項をまとめると、引用文献1には、以下の技術が記載されているといえる。
標準較正液、洗浄液等を吸入させるため多数の切替え弁を備えた流路系を設け複雑な動作をさせたりしているので、構成部品が増大し機構部分が複雑化して分析装置が大形になり、その複雑な機構のため故障の原因になったりメンテナンスがむずかしい等の課題を解決するために、洗浄液中に所定濃度の標準物質を含有させて標準較正液とし、洗浄と同時に較正するという技術的事項。

イ 対比
補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)湿式化学分析器について
引用発明の「溶液中の特定の化学種の濃度を決定するためのシステム」は、補正発明の「湿式化学分析器」に相当する。

(イ)試薬について
引用発明の「反応容器に」「供給」される「試薬」は、補正発明の「湿式化学分析器内で使用される試薬」に相当する。

(ウ)較正剤を含む較正溶液について
引用発明の「較正」は「化学種の濃度が既知のサンプルを分析することによって較正される」ものであり、「濃度が既知」の「化学種」は「較正剤」に相当することから、引用発明の「化学種の濃度が既知のサンプルを分析することによって較正される」「システムの較正に用いる標準溶液」は、補正発明の「湿式化学分析器のための較正溶液であって、前記較正溶液は、較正剤」「を含」むものに相当する。

(エ)洗浄剤について
引用発明は、「洗浄剤を反応容器に供給」し、「強酸(例えば、硫酸)又は強塩基(例えば、水酸化ナトリウム)のような洗浄溶液によって反応容器を化学的に洗浄するものである」から、「反応容器に供給」され「洗浄溶液」となる「強酸(例えば、硫酸)又は強塩基(例えば、水酸化ナトリウム)」が「洗浄剤」といえる。してみれば、引用発明の「強塩基(例えば、水酸化ナトリウム)」の「洗浄剤」は、補正発明の「強塩基を含む洗浄剤」に相当する。
そして、引用発明の「反応容器を化学的に洗浄するものである」「洗浄剤」は、補正発明の「前記湿式化学分析器が」「洗浄され」「るように」「選択される」「前記洗浄剤」に相当する。

(オ)一致点・相違点について
上記(ア)?(エ)を踏まえると、補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「湿式化学分析器のための較正溶液であって、前記較正溶液は、
較正剤;
を含み、
強塩基を含む洗浄剤;
前記洗浄剤は、前記湿式化学分析器が洗浄されるように選択される、
前記溶液。」

(相違点1)
補正発明では、較正溶液が「洗浄剤」を含み、湿式化学分析器が「同時に」洗浄され且つ「較正」されるようにされているのに対し、
引用発明では、標準溶液が「洗浄剤」を含むかどうか、システムが「同時に」洗浄され且つ「較正」されるようにされているかどうか不明である点。

(相違点2)
洗浄剤が、補正発明では、「前記湿式化学分析器内で使用される試薬に少なくとも部分的に基づいて選択される」ものであるのに対し、
引用発明では、そのようなものかどうか不明である点。

ウ 判断
(ア)相違点1について
引用文献1には、上記ア(イ)bで記載したように、標準較正液、洗浄液等を吸入させるため多数の切替え弁を備えた流路系を設け複雑な動作をさせたりしているので、構成部品が増大し機構部分が複雑化して分析装置が大形になり、その複雑な機構のため故障の原因になったりメンテナンスがむずかしい等の課題を解決するために、洗浄液中に所定濃度の標準物質を含有させて標準較正液とし、洗浄と同時に較正するという技術的事項が記載されている。
一方、引用発明も、引用文献4の(4オ)に記載されているように、融通性や効率性が求められているものであり、同じ(4オ)に「ポンプや他のそのような設備は必要ない」と記載されているように、上記引用文献1に記載されている上記課題と同様な課題のもと発明されたものともいえる。
そうすると、引用発明においても、システムの複雑な動作、構成部品が増大し機構部分が複雑化することを避けるとの動機のもと、引用文献1に記載されている技術的事項に鑑み「洗浄液中に所定濃度の標準物質を含有させて標準較正液とし、洗浄と同時に較正する」という技術的事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、較正剤を含む洗浄溶液と洗浄剤を含む較正溶液とは、溶液の成分として実質的な相違があるとはいえず、引用発明は「洗浄剤」を反応容器に供給して、反応容器を洗浄「溶液」によって洗浄するものであるところ、引用発明に引用文献1の技術的事項を採用する際に、溶液としての標準「溶液」に「洗浄剤」を含ませた「標準溶液」によって、洗浄と較正を同時に行うことは当業者が適宜なし得たことにすぎない。
よって、相違点1は、引用文献1の技術的事項を採用することにより、当業者が容易になし得たものといえる。

(イ)相違点2について
補正発明の「洗浄剤」が「前記湿式化学分析器内で使用される試薬に少なくとも部分的に基づいて選択される」ものであることは、本願明細書に「洗浄剤238は、湿式化学分析器200内で使用された試薬に基づいて選択されうる。例えば、酸が湿式化学分析器200で使用される場合、強塩基が、酸性降下物の堆積を除去するために好まれうる。しかし、別の実施形態においては、塩基性物質が湿式化学分析器200で使用される場合、強酸が要求されうる。」(【0025】)、「1の実施形態において、ブロック430において使用される較正流体は、洗浄剤を含む。洗浄剤は、湿式化学分析器内で予想される最も可能性のある析出物に基づいて選択することができる。例えば、湿式化学分析器が酸性反応物又は生成物との反応を周期的に行う場合、酸性沈殿剤を溶解させるために強塩基が望ましい場合がある。別の実施形態においては、湿式化学分析器が反応物又は生成物として塩基を用いて実験を行う場合、塩基性沈殿物を除去するために強酸が必要とされうる。」(【0035】)と記載されているように、試薬との反応によって生成される堆積物、析出物、沈殿物等を除去できるように洗浄剤を選択するという技術的意義において特定されたものである。
一方、引用文献4の上記(4エ)には、「反応容器における試薬と窒素との反応は、ガラスセル(すなわち、反応容器)に膜を生成することになり、この膜が各分析後に除去されない限り、反応容器の光学的透明性を妨げることになる。その結果、ガラス表面からこの膜を洗浄又は除去する能力を試験するために、繰り返し分析が行われた。各比色分析の後に、0.1mlの硫酸を反応容器に添加し、ガラス表面を洗浄した。」と記載されており、上記補正発明の技術的意義と同等なことが記載されている。当該記載は洗浄剤として「硫酸」が記載されているが、引用発明の「強酸(例えば、硫酸)又は強塩基(例えば、水酸化ナトリウム)」における「強塩基(例えば、水酸化ナトリウム)」の場合も同様である。
そうすると、引用発明の「試薬」が「供給」される「反応容器を化学的に洗浄するものである」「強酸(例えば、硫酸)又は強塩基(例えば、水酸化ナトリウム)」の「洗浄剤」は、補正発明の「湿式化学分析器内で使用される試薬に少なくとも部分的に基づいて選択される」ものに相当するといえることから、相違点2は実質的な相違点とはいえない。

なお、補正発明は「前記洗浄剤は、前記湿式化学分析器が同時に洗浄され且つ較正されるように、且つ、前記湿式化学分析器内で使用される試薬に少なくとも部分的に基づいて選択される」と記載されており、文章のつなげ方によっては「洗浄剤は、前記湿式化学分析器が」「較正されるように」「選択される」とも読め、洗浄剤が較正を行うようにも解されるが、「洗浄剤」が「較正」を行うという技術常識もなく、本願明細書には「較正を行う洗浄剤」について記載されていないことから、上記解釈は技術的に正当なものではない。してみると、上記記載は、「湿式化学分析器が同時に洗浄され且つ較正される」という状況において使用される「洗浄剤」を意味しているにすぎず、洗浄剤が「較正」の機能も担っているとは解されない。

(ウ)効果について
本願明細書には、補正発明の効果として「これは、例えば、湿式化学分析器200を同時に洗浄し及び較正することを可能にし、別個の洗浄サイクルの必要性をなくする。洗浄剤238を含む較正流体236の別の利点は、試薬ハウジング230内のタンク、並びに洗浄サイクルに関連する、対応するポンプ、バルブ、及び他の構成要素をより少数しか必要としないことである。このことはより小型の湿式化学分析器を可能にさえする。さらに、別の洗浄サイクルを除くことにより、湿式化学分析器200の寿命を延ばすことができ、別々の較正及び洗浄作業を完了するのに費やす時間を短縮しうる。」(【0025】)と記載されているが、これらは引用文献4及び1の記載(特に引用文献1の記載)から当業者が予期し得るものであり、格別顕著なものとはいえない。

(エ)請求人の主張について
請求人は、審判請求書で、「従って、引用文献4の「較正と洗浄が別工程であり、強塩基性(例えば水酸化ナトリウム)だけでなく、強酸性のものも使用可能な光学的に分析する分析装置」の洗浄剤として、引用文献1の「較正と洗浄を一工程でできる、強塩基性のみ限定して使用可能の測定電極(電気化学的電極)で検出する分析装置」の洗浄剤を適用することは不適切と考えられる。」と主張している。
しかし、引用文献4の「洗浄剤」として引用文献1の「洗浄剤」を適用するとの論理構成は下記第3の原査定の拒絶の理由でも指摘されておらず、反論として適切なものではない。
そして、引用文献4の較正と洗浄を、引用文献1の「較正と洗浄を一工程でできる」ことに鑑みて、容易とすることの阻害要因等について主張していないことから、請求人の主張は、上記(ア)の判断を左右するものではない。

エ 小括
したがって、補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?20に係る発明は、令和元年11月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1?19に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

そして、本願発明については、引用文献1、4に記載された発明は、いずれも分析装置の洗浄と較正を行う点で共通するから、これらの処理を同時に行えるようにするために、引用文献4に記載された発明に、引用文献1に記載された発明を適用することは当業者が容易になし得る事項である旨説示している。

<引用文献等一覧>
1.特開昭61-114157号公報
2.特開2003-014724号公報
3.特開平10-170501号公報
4.米国特許第4865992号明細書

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4及び1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(1)で検討したように、補正発明の洗浄剤について「前記湿式化学分析器内で使用される試薬に少なくとも部分的に基づいて選択される」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、前記第2の[理由]2(2)ウ及びエに記載したとおり、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-04-14 
結審通知日 2021-04-20 
審決日 2021-05-10 
出願番号 特願2018-536489(P2018-536489)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本村 眞也森口 正治  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 三崎 仁
蔵田 真彦
発明の名称 湿式化学分析器のための洗浄剤を含む標準溶液  
代理人 特許業務法人 津国  
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