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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1378378
審判番号 不服2020-16764  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-04 
確定日 2021-10-12 
事件の表示 特願2019-211660「特徴抽出方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月27日出願公開、特開2021- 82206、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は,令和1年11月22日の出願であって,令和2年4月23日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年6月9日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,令和2年9月11日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされたが,これに対し,令和2年12月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,令和3年6月14日に上申書が提出されたものである。

第2 令和2年9月11日付けの原査定の概要

令和2年9月11日付けの原査定の概要は以下のとおりである。

本願請求項1-4,6-11に係る発明は,以下の引用文献1-2に基づいて,また,本願請求項5に係る発明は,以下の引用文献1-3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2019-096019号公報
2.国際公開第2016/103451号
3.特開2005-092271号公報

第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって請求項1,9-10に「前記ベクトル情報の次元数を低減し,低減したベクトル情報の次元数に対応する座標系の当該ベクトル情報に対応する位置に,前記質問文」「を表示する」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか,また,当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討すると,この事項は,補正前の発明特定事項である「表示する」ことを限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,この事項は,当初明細書等の段落【0083】?【0085】及び図13に記載された事項であるから,新規事項を追加するものではないといえる。

第4 本願発明

本願請求項1-10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は,令和2年12月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。なお,符号「A」?「G」は,当審において付与したものであり,それぞれの構成を,「構成A」などという。

「【請求項1】
A 質問文をベクトル情報に変換し,
B グループの分類に係る条件の設定を受け付け,
C 設定を受け付けた条件に従って,変換したベクトル情報を基に複数の質問文をグループに分類し,
D 分類したグループ毎に,当該グループに含まれる複数の質問文の特徴部分を抽出し,
E 前記ベクトル情報の次元数を低減し,
F 低減したベクトル情報の次元数に対応する座標系の当該ベクトル情報に対応する位置に,前記質問文及び抽出した特徴部分を表示する,
G 特徴抽出方法。」

なお,本願発明2-10の概要は以下のとおりである。
本願発明2-8は,本願発明1をさらに減縮した発明である。
本願発明9-10は,それぞれ本願発明1に対応するコンピュータプログラム及び情報処理装置の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第5 引用文献,引用発明等

1.引用文献1

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2019-096019号公報)には,以下の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。)

「【0049】
文ベクトル算出処理部12は,情報入力受付処理部11で入力を受け付けた文書等情報における文の一部または全部の文について,それぞれ文に分割をし,分割をした各文について文ベクトルを算出する。文書等情報において文を分割するためには,文書等情報における句点を区切りとして各文を分割する方法が一例としてある。また,分割した各文について文ベクトルを算出するには,まず,各文において形態素解析を行い,文に出現する単語を品詞ごとに分解する。そして,分解した単語のうち,品詞が名詞(ただし数,接尾,非自立は除く。また,固有名詞は除いてもよいし,除かなくてもよい)である単語を特定し,特定した単語の単語ベクトルの平均を算出することで文ベクトルを算出する。なお単語ベクトルを算出するために特定する単語としては,品詞が名詞である単語に限られるものではなく,あらかじめ一または複数の品詞を設定し,その品詞の単語を特定すればよい。たとえば品詞として名詞のほか,動詞や形容詞などを設定することもできる。なお,以下の説明では,特段の断りがない限り,品詞が名詞である単語を特定する場合を示す。」

「【0053】
クラスタリング処理部13は,文ベクトル算出処理部12で算出した各文ベクトルを所定のクラスタリング手法でクラスタリング処理をする。クラスタリング処理としては,たとえばx-means法,k-means法,階層クラスタリングなどさまざまな処理方法があり,どのような処理方法を用いてもよい。なおx-means法とは,k-means法においてクラスタ数を自動推定するように拡張したクラスタリング手法である。」

「【0064】
表形式処理部18は,クラスタリングした情報を表形式として表示をする。たとえば表の行方向に処理対象とした文書等情報の入力情報を,表の列方向にクラスタを配置することで,クラスタリングした項目ごとの情報を表形式で表示する。そして表の行に対する項目名として,たとえば文書等情報を識別する情報(ファイル名やウェブページの名称,所定のタイトルなど)を,表の列に対する項目名として項目名特定処理部で特定した項目名を付する。」

「【0066】
文書等情報として,後述するコールセンターにおけるオペレータと顧客との間の会話の音声データをテキスト化したテキストデータ(会話例1乃至会話例12)を入力した場合に,表形式処理部18が出力する表の一例を図14に示す。なお,図14では,項目名特定処理部17は,クラスタの項目名として,出現頻度が最上位の表現(用言を含む)を特定し,出現頻度が最上位の表現が複数ある場合には,それらのすべてを特定した場合を示している。」

「【0072】
加えて,上述した「クレーム対応」,「製品故障に修理で対応」,「製品故障の対応法を教える」,「新規購入」などの,表の行方向に対する項目名を類型化した情報を利用者が入力をするのではなく,自動的に生成してもよい。この場合,クラスタソート処理部16においてソートをせずに,クラスタリング処理部13において,上述のようにk?means法,階層クラスタリングなどの各種のクラスタリング手法によりクラスタリング処理を実行する。また表形式処理部18は,クラスタリングで得られたクラスタに属する一部またはすべての行におけるすべての列での出現頻度の高い単語を,表の行方向に対する項目名を類型化した情報として特定する。ここで出現頻度を用いる場合でも,出現頻度が高い上位n個の単語を特定する,あるいは所定の閾値(スコア)以上の単語を特定することでよい。このような処理の結果,「こんにちは 購入したい 住所 おうかがいしたい 失礼します」,「こんにちは 製品 動かない 症状 聞く 詳しい 情報 すると よいです 失礼します」,「こんちは 製品 動かない 症状 聞く 詳しい 情報 修理します 失礼します」,「こんにちは 申し訳ございません 失礼します」のように,表の行方向に対する項目名を類型化した情報を自動的に特定することができる。これを模式的に示すのが図21である。なお,図21では出現頻度がもっとも高い単語を,表の行方向に対する項目名を類型化した情報として特定した場合を示している。また,自動的に特定をした場合,「こんにちは」,「失礼します」のように,定型的な単語で出現頻度が高い単語が特定される場合がある。そのような場合,表の行方向に対する項目名を類型化した情報として,表示をしない(用いない)単語(たとえば挨拶に関する単語や,お礼や謝罪を示す単語などがあるが,それらに限定されず,任意に設定可能である)をあらかじめ登録しておき,それら登録された単語は,類型化した情報として表示しないようにしてもよい。図21の表において,あらかじめ登録した単語として「こんにちは」,「失礼します」を表示しない場合を図22に示す。」

「【図21】



段落0064の「表の行に対する項目名」は,表記は異なるものの,段落0072の「表の行方向に対する項目名」と同じものであることは明らかである。

段落0072の「クラスタに属するすべての行」という記載からは,特に「すべての」という記載に注意すれば,1つの「クラスタに属する」「行」は,“複数”であるといえる。

段落0066には,「行」が含む文が,「コールセンターにおけるオペレータと顧客との間の会話のテキストデータ」でもよいことが記載され,「コールセンターにおけるオペレータと顧客との間の会話」には“質問”が含まれることは明らかであるから,段落0049に記載された「文」は,“質問文”を含むといえる。

図21からは,「クラスタリングで得られたクラスタに属する」「行」には文があることが読み取れるので,段落0064の「クラスタリングした情報」,及び,段落0072の「クラスタに属する」「行」は,“文”であるといえ,さらに,上記の「文」は“質問文”を含むという検討も踏まえれば,“質問文”を含むといえる。

図21からは,“クラスタ毎に”「表の行方向に対する項目名」が「付」されていることが読み取れる。

(2)上記引用文献1の記載(特に下線部の記載)より,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお,符号「a」?「e」は,当審において付与したものであり,それぞれの構成を,「構成a」などという。

「a 各質問文について文ベクトルを算出し,
b 算出した各文ベクトルをクラスタリング処理し,
c クラスタリングで得られたクラスタに属する複数の質問文における出現頻度の高い単語を特定することで,表の行方向に対する項目名を自動的に特定し,
d クラスタ毎に表の行方向に対する項目名を付して,質問文を表形式として表示する,
e 方法。」

2.引用文献2

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(国際公開第2016/103451号)には,以下の事項が記載されている。

「[0002]
コールセンタにおいては,顧客からの問合せに対して,原因究明や解決策の調査を迅速に行い,その顧客に短時間で回答することが要求されている。そこで,従来,過去の問合せ及びその回答を蓄積しておき,新たな問合せがあった場合に,蓄積した過去の事例の中から今回の問合せに対して問合せ内容が類似する事例を検索し,その検索結果に基づいて今回の事例に対する回答を作成することが行われている。」

「[0023]
また関連情報取得装置1は,このようにして算出した事例同士の類似度が予め設定された閾値(以下,これを類似度閾値と呼ぶ)以上の事例同士を相互に関連性を有する事例として検出する。そして関連情報取得装置1は,このようにして検出した事例間の関連性に基づいて各事例を複数のクラスタに分類する。また関連情報取得装置1は,この後,各クラスタについて,そのクラスタを特徴付ける単語をラベルとしてそのクラスタに付与し,さらにクラスタごとに,そのクラスタをそれぞれ代表する事例(以下,これを代表事例と呼ぶ)をそれぞれ抽出する。」

3.引用文献3

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3(特開2005-092271号公報)には,以下の事項が記載されている。

「【0046】
質問/相談文書表示部1501は質問者からのテキスト化された文書が表示される。この際,抽出された重要部1508,1509はそれ以外とはことなり背景に色づけされるなどの強調表示がなされる。また,重要部毎にID1510,1511がふられ,各重要部の隣に表示される。また,各重要部を,異なる背景色や異なる枠で囲むなどの,異なる強調表示をする。これにより,相談文書中に重要部が複数あっても,それぞれの存在を明らかに見分けられる。また文書全体の閲覧が容易である。また重要部として抽出した箇所の近傍の文章も見やすく,重要部の抽出箇所にずれがある場合にも回答作成が容易である。また重要部が抽出されなかった場合にも,回答作成作業を行うことができる。また,複数の重要部を一度に閲覧できることにより,回答作成者が複数の重要部の関係を把握しやすくなるという利点もある。例えば,一つの重要部として抽出されるべきであるにもかかわらず複数の重要部として抽出されてしまった場合にその間違いを容易に把握して訂正できる,また,前後の重要部を一度に閲覧することにより,回答作成者が文脈を考慮してより適切な回答例文を選択することが容易になる,等の効果がある。」

第6 対比・判断

1.本願発明1

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.本願発明1の構成Aと引用発明の構成aについて
引用発明の「質問文」及び「文ベクトル」は,それぞれ本願発明1の「質問文」及び「ベクトル情報」に相当する。
したがって,引用発明の「質問文について文ベクトルを算出」することは,本願発明1の「質問文をベクトル情報に変換」することに相当する。

イ.本願発明1の構成B,Cと引用発明の構成bについて
引用発明の「クラスタリング処理」は,質問文の文ベクトルを,何らかの条件に従って分類することに他ならないから,本願発明1の「グループに分類」することに相当する。
したがって,本願発明1の構成B,Cと,引用発明の構成bとは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“所定の条件に従って,変換したベクトル情報を基に複数の質問文をグループに分類”するものである点で共通する。

ウ.本願発明1の構成Dと引用発明の構成cについて
引用発明の「クラスタに属する複数の質問文における出現頻度の高い単語」について,ある「単語」が「クラスタに属する複数の質問文」において「出現頻度」が「高い」ということは,その「単語」が「クラスタに属する複数の質問文」の“特徴”の一つを構成するものといえ,また,「単語」は「文」の“部分”であるから,引用発明の「クラスタに属する複数の質問文における出現頻度の高い単語」は,本願発明1の「グループに含まれる複数の質問文の特徴部分」に相当するといえる。
引用発明は,「複数の質問文」のうち「単語」のみを「項目名」としているから,「単語」を“抽出”しているといえる。
引用発明は,「単語」を「クラスタに属する複数の質問文」から抽出し,「クラスタ毎」の「表の行方向に対する項目名」として「付して」いるので,「単語」の抽出は,「クラスタ毎に」行っている。
したがって,本願発明1の構成Dと,引用発明の構成cとは,“分類したグループ毎に,当該グループに含まれる複数の質問文の特徴部分を抽出”する点で一致する。

エ.本願発明1の構成E,Fと引用発明の構成dについて
引用発明の「項目名」は,「クラスタに属する複数の質問文における出現頻度の高い単語」であるから,本願発明1の「抽出した特徴部分」に相当する。
したがって,本願発明1と,引用発明とは,下記の点(相違点2)で相違するものの,“前記質問文及び抽出した特徴部分を表示する”ものである点で共通する。

オ.本願発明1の構成Gと引用発明の構成eについて
上記ウ.及びエ.での検討を踏まえれば,本願発明1と,引用発明とは,“特徴抽出方法”である点で一致する。

カ.まとめ
したがって,上記ア.-オ.の検討内容を踏まえると,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「質問文をベクトル情報に変換し,
所定の条件に従って,変換したベクトル情報を基に複数の質問文をグループに分類し,
分類したグループ毎に,当該グループに含まれる複数の質問文の特徴部分を抽出し,
前記質問文及び抽出した特徴部分を表示する,
特徴抽出方法。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1は,「グループの分類に係る条件の設定を受け付け,設定を受け付けた条件に従って」分類するものであるのに対して,引用発明は,「所定の閾値に従って」分類するものである点。

(相違点2)
本願発明1は,「前記質問文及び抽出した特徴部分を表示する」位置が,「ベクトル情報の次元数を低減し,低減したベクトル情報の次元数に対応する座標系の当該ベクトル情報に対応する位置」であるのに対して,引用発明は,「質問文」及び「項目名」を「表示する」位置が,そのような位置ではない点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑み,上記相違点2について先に検討する。

「ベクトル情報の次元数を低減し,低減したベクトル情報の次元数に対応する座標系の当該ベクトル情報に対応する位置に,前記質問文及び抽出した特徴部分を表示する」ことは,上記引用文献2-3には記載されておらず,また,本願の出願日前において周知であったともいえない。

したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,及び,引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-8について

本願発明2-8は,本願発明1をさらに減縮した発明であり,本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,及び,引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明9-10について

本願発明9-10は,それぞれ本願発明1に対応するコンピュータプログラム及び情報処理装置の発明であり,本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明であるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明,及び,引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について

1.理由1(特許法第29条第2項)について

審判請求時の補正により,本願発明1-10は上記第4に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1-3に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり,本願発明1-10は,当業者が引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-09-24 
出願番号 特願2019-211660(P2019-211660)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原 秀人  
特許庁審判長 篠原 功一
特許庁審判官 須田 勝巳
塚田 肇
発明の名称 特徴抽出方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置  
代理人 河野 英仁  
代理人 河野 登夫  

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