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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1378384
審判番号 不服2021-2412  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-24 
確定日 2021-10-12 
事件の表示 特願2016-229521「発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法および発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月31日出願公開,特開2018- 85309,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年11月25日の出願であって,令和2年8月27日付けで拒絶理由通知がされ,同年10月14日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,令和3年1月14日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年2月24日に拒絶査定不服審判の請求がされ,同年6月25日付けで当審から拒絶理由が通知され,同年8月5日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1,2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」,「本願発明2」という。)は,令和3年8月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,2は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
(1)少なくとも,ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂,発泡剤,充填剤,及び滑剤を混合し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製する工程
(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に架橋剤及び架橋助剤を添加してから架橋し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程
(3)前記工程(2)で得られた架橋体を押出し,導体の外周に前記架橋体からなる被覆層を形成する工程,および
(4)前記工程(3)で形成した被覆層を発泡させる工程
を有し,
前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物は,
前記ベース樹脂全体を100重量部としたときに,ポリオレフィン系樹脂を60?95重量部,ゴム成分を5?40重量部含有し,
前記発泡剤を,ベース樹脂100重量部に対し0.1?10重量部含有し,
前記充填剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し10?90重量部含有し,
前記滑剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し0.5?10重量部含有し,
前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に,
前記架橋剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し0.02?0.5重量部添加するとともに,前記架橋助剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し前記架橋剤の1?3倍量添加する,
発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法。
【請求項2】
導体と,前記導体の外周に,発泡しかつベース樹脂を含む被覆層とを有する発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルであって,
前記被覆層の発泡率が3?30%であり,
前記被覆層における前記ポリオレフィン系樹脂の架橋物の径方向の配向が,軸線方向の配向と比較して大きく,
前記被覆層は,
前記ベース樹脂全体を100重量部としたときに,ポリオレフィン系樹脂を60?95重量部,ゴム成分を5?40重量部含有し,
前記充填剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し10?90重量部含有し,
前記滑剤を,ベース樹脂100重量部に対し0.5?10重量部含有する,
発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブル。」

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2016-173918号公報)には,次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下,同様である。)。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,特許文献1の発泡成形物ではベース樹脂として結晶性ポリオレフィンを用いているため,柔軟性に乏しいという問題があった。また,特許文献2の樹脂架橋発泡体では,所定のエチレン-α-オレフィン共重合体とポリエチレン系樹脂を用いているが,柔軟性が不十分という問題があった。
【0006】
本発明は,このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして,本発明の目的は,耐熱性などの機械特性に加え,柔軟性にも優れた絶縁電線およびそれを用いたケーブルを提供することにある。」

「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。なお,図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており,実際の比率と異なる場合がある。
【0014】
本実施形態に係る絶縁電線1は,図1に示すように,導体2と,導体2を被覆する絶縁体5とを備えている。そして,絶縁体5は,導体2側に配置され,導体2を覆う内層3と,内層3を覆う外層4とを有する。
・・・
【0017】
内層3は,ポリオレフィン樹脂とポリオレフィンゴムとを架橋してなる複合樹脂をベース樹脂としている。ポリオレフィン樹脂は優れた絶縁性能と耐熱性能を併せ持つ反面,柔軟性が不十分である。また,ポリオレフィンゴムは柔軟性に優れる反面,軟化点が低く,一部の機械特性(加熱変形性及び加熱老化性など)が劣るため,単独では絶縁体としての要求特性を満たすことができない。そのため,本実施形態では,ポリオレフィン樹脂とポリオレフィンゴムとを混合することにより,機械特性と柔軟性とを両立している。」
・・・
【0029】
また,内層3は,必要に応じて酸化防止剤や滑剤などの添加剤を適量配合してもよい。酸化防止剤としては,フェノール系酸化防止剤,アミン系酸化防止剤,リン系酸化防止剤などが挙げられる。また,滑剤としては,炭化水素系,脂肪酸系,脂肪酸アミド系,エステル系,アルコール系などが挙げられる。また,添加剤としては,金属不活性剤,老化防止剤,充填剤,補強剤,紫外線吸収剤,安定剤,顔料,染料,着色剤,帯電防止剤等が挙げられる。
・・・
【0044】
なお,上述のように,内層3を構成する樹脂組成物は,少なくともポリオレフィン樹脂及びポリオレフィンゴムを含有する。さらに,シラン架橋を施す場合には,シランカップリング剤,架橋剤及び架橋触媒を含有する。そして,内層3を発泡構造とするために,内層3を構成する樹脂組成物は発泡剤を含有する。発泡剤としては,後述する押出成形の際に加熱等によって気体を生じさせ,容易に発泡構造を形成することが可能な有機化学発泡剤を使用することが好ましい。このような有機化学発泡剤としては,例えばアゾジカルボンアミド,アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド,4,4′-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物が挙げられる。この中でも,有機化学発泡剤としては,アゾジカルボンアミド及び4,4′-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが好ましい。なお,有機化学発泡剤は,一種を単独で用いてもよく,複数種を混合して用いてもよい。」

「【実施例】
【0050】
以下,本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが,本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例及び比較例の絶縁電線を製造するに際し,内層及び外層のベース樹脂,発泡剤,架橋剤,架橋触媒,シランカップリング剤として,表1に示す材料を用いた。具体的には,内層のベース樹脂として,表1に示す密度,メルトフローレート(MFR)及び融点を有し,ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)A1,A2を用いた。また,表1に示すエチレン含有率及びジエン含有率を有し,ポリオレフィンゴムとしてのエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)A3,A4を用いた。さらに,外層のベース樹脂として,表1に示す密度,メルトフローレート(MFR)及び融点を有し,ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)A5,A6を用いた。
【0052】
さらに,内層3に含有する発泡剤として,アゾジカルボンアミドB1及び4,4′-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)B2を用いた。また,内層及び外層のベース樹脂を架橋するための架橋剤としてジクミルパーオキサイドC1を用い,架橋触媒としてジブチル錫ジラウレートC2を用い,シランカップリング剤としてビニルトリエトキシシランC3を用いた。
【0053】
【表1】

【0054】
[実施例1]
まず,二軸押出機を用いて,表2に示す材料及び割合で混合することにより,内層用及び外層用の樹脂組成物を作製した。次に,二台の押出機を用いて内層及び外層を同時押出することにより,導体の周囲に内層及び外層を形成した。なお,内層用押出機におけるダイス部の押出温度は200℃とし,外層用押出機におけるダイス部の押出温度は190℃として押出成形を行った,また,導体の材料としては軟銅を用い,さらに導体サイズは60mm^(2)とした。
【0055】
得られた絶縁電線は,導体の周囲全体を内層及び外層で被覆している。内層及び外層の平均厚さを表2に合わせて示す。
【0056】
【表2】

【0059】
[評価]
実施例1?8及び比較例1?9の絶縁電線について,次の評価を行った。評価結果を表2乃至表5に示す。
・・・
【0064】
(発泡率)
各例の絶縁電線における内層の発泡率は,次の数式2に基づき測定した。
[数2]
発泡率(%)=[(無発泡時の内層用樹脂組成物の比重)-(発泡時の内層用樹脂組成物の比重)]/(無発泡時の内層用樹脂組成物の比重)×100」

「【図1】



以上によれば,引用文献1(特に,実施例3)には,以下の発明が記載されていると認められる。
「二軸押出機を用いて,ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)70質量部,ポリオレフィンゴムとしてのエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)30質量部,発泡剤としてアゾジカルボンアミド3.0質量部,架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.1質量部,架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1質量部,及び,シランカップリング剤としてビニルトリエトキシシラン1.5質量部を混合することにより,内層用の樹脂組成物を作製する工程,
二台の押出機を用いて内層及び外層を同時押出すことにより,前記内層に発泡構造を形成し,導体の周囲に内層及び外層を形成する工程を有し,
前記内層は,前記ポリオレフィン樹脂と前記ポリオレフィンゴムとを架橋してなる複合樹脂をベース樹脂としている絶縁電線の製造方法。」(以下,「引用発明1A」という。)

「導体と,前記導体を被覆する絶縁体とを備え,前記絶縁体は,導体側に配置され,前記導体を覆う内層と,前記内層を覆う外層とを有する絶縁電線であって,
前記内層は,ポリオレフィン樹脂とポリオレフィンゴムとを架橋してなる複合樹脂をベース樹脂とし,
二軸押出機を用いて,ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)70質量部,ポリオレフィンゴムとしてのエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)30質量部,発泡剤としてアゾジカルボンアミド3.0質量部,架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.1質量部,架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1質量部,及び,シランカップリング剤としてビニルトリエトキシシラン1.5質量部を混合することにより,内層用の樹脂組成物が作製され,
前記内層及び前記外層は,二台の押出機を用いて同時押出すことにより形成され,
前記内層の発泡率は18.5%である絶縁電線。」(以下,引用発明1B)という。

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2004-149553号公報)には,次の事項が記載されている。

「【請求項1】
芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックAを1個以上と,共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックBを1個以上有し,少なくとも重合体ブロックA部分が架橋されているブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(a),ポリオレフィン系樹脂(b),ゴム用軟化剤(c)および発泡剤(d)からなる熱可塑性発泡体用組成物。
・・・
【請求項5】
請求項1?3のいずれか1項に記載の熱可塑性発泡体用組成物を発泡させてなる発泡体。」

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の押出発泡成形体,特許文献2の発泡性に優れた樹脂組成物は,いずれも柔軟性において必ずしも満足のいくレベルではない。また,特許文献3の発泡樹脂組成物は未水添系のスチレン系熱可塑性エラストマーを用いており,耐熱性に問題があった。上記発泡体に柔軟性を付与させるためには,スチレン系熱可塑性エラストマーを多く配合する,ゴム用軟化剤を多く配合するなどの方法が考えられるが,それらは発泡性を損なうという問題があった。
しかして,本発明の目的は,スチレン系熱可塑性エラストマーの柔軟性を損なうことなく,かつ耐熱性に優れる熱可塑性発泡体用組成物,および該組成物から得られる発泡体を提供することにある。」

「【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性発泡体用組成物を構成する付加重合系ブロック共重合体(a)は,芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックAを1個以上と,共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックBを1個以上有し,少なくとも重合体ブロックA部分が架橋されているものである。
・・・
【0062】
本発明の熱可塑性発泡体用組成物の調製法は特に制限されないが,好適には付加重合系ブロック共重合体(a_(0))(架橋前の付加重合系ブロック共重合体),ポリオレフィン系樹脂(b),ゴム用軟化剤(c)および架橋剤(e),さらに必要に応じて上記した他の重合体や添加剤を混合した混合物を,単軸押出機,二軸押出機,バンバリーミキサーなどの公知の混練機を使用して溶融条件下に動的架橋処理する方法によって,付加重合系ブロック共重合体(a_(0))の少なくとも重合体ブロックA部分に架橋を形成した付加重合系ブロック共重合体(a)を含有する熱可塑性重合体組成物を製造した後,発泡剤(d)をドライブレンドする方法が挙げられる。または,上記した成分と共に発泡剤(d)も混合して,かかる発泡剤(d)の分解温度以下で溶融条件下に動的架橋処理する方法によっても製造することができる。かかる方法を採用することによって,重合体ブロックAに有する構造単位(I)および/または官能基(II)の少なくとも1種の部分で架橋された付加重合系ブロック共重合体(a)を含有する本発明の熱可塑性発泡体用組成物を円滑に製造することができる。
なお,ここで,本明細書における「溶融条件下に動的架橋処理する」とは,溶融状態にした前記混合物に混練によって剪断応力をかけながら架橋することを意味する。
【0063】
付加重合系ブロック共重合体(a_(0))およびポリオレフィン系樹脂(b),ゴム用軟化剤(c),架橋剤(e)を含有する混合物を架橋する場合であっても,ゴムの加硫工程のように,例えばプレス成形機を用いて架橋する様な静的条件下での架橋処理では,ポリオレフィン系樹脂(b)が連続相(マトリックス相)を形成しにくいため,得られる組成物は熱可塑性を示さないものとなり易い。
【0064】
本発明の熱可塑性発泡体用組成物を用いて発泡体を製造するに当たっては,目的とする発泡体の種類,用途,形状などに応じて一般に用いられている種々の発泡成形法や発泡成形装置を使用することができ,何ら限定されない。例えば,射出成形機を用いて本発明の熱可塑性発泡体用組成物を発泡倍率を考慮した充填率で金型内に高速充填した後,金型内で発泡させて成形する射出発泡成形;押出成形機を用いて,本発明の熱可塑性発泡体用組成物を押出機から出る直前に発泡剤の分解温度以上まで加熱し,押出成形機に取り付けた金型に入ったところで発泡させたり,発泡させずに押出成形した後,得られた成形物を加熱炉などにより発泡剤の分解温度以上まで加熱して発泡させて成形する押出発泡成形;本発明の熱可塑性発泡体用組成物を金枠内に発泡倍率を考慮した充填率で充填し,プレス成形機で加熱することにより金枠内で発泡させて成形するプレス発泡成形などの成形法によって製造することができる。
【0065】
本発明の熱可塑性発泡体用組成物から得られる発泡体は,各種用途に用いることができる。具体的には,柔軟性を有し,ソフトな感触の発泡単層,または,一定の強度を得るための硬質材料を基材として持つ発泡複合成型体の形で用いられ,例えば自動車内装品(シート表皮,ピラー,ウエザーストリップなど)や外装部品(モール,トリムなど),工業部品(パイプ,チューブ,電線被覆材など),家具(椅子の座部や肘掛けなど),雑貨(靴,スリッパなど),情報機器などの部品や製品に使用することができる。」

以上によれば,引用文献2には,以下の発明が記載されていると認められる。
「スチレン系熱可塑性エラストマーの柔軟性を損なうことなく,かつ耐熱性に優れる熱可塑性発泡体用組成物を発泡させてなる発泡体の製造方法であって,
前記熱可塑性発泡体用組成物は,芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックAを1個以上と,共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックBを1個以上有し,少なくとも重合体ブロックA部分が架橋されているブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(a),ポリオレフィン系樹脂(b),ゴム用軟化剤(c)および発泡剤(d)からなり,
前記重合体ブロックA部分は,付加重合系ブロック共重合体(a_(0))(架橋前の付加重合系ブロック共重合体),ポリオレフィン系樹脂(b),ゴム用軟化剤(c)および架橋剤(e),さらに必要に応じて他の重合体や添加剤を混合した混合物と共に発泡剤(d)も混合して,かかる発泡剤(d)の分解温度以下で溶融条件下に動的架橋処理し,発泡させずに押出成形した後,得られた成形物を加熱炉などにより発泡剤の分解温度以上まで加熱して発泡させて成形することを含み,
前記発泡体は電線被覆材に用いられる,発泡体の製造方法。」(以下,「引用発明2A」という。)

「芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックAを1個以上と,共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックBを1個以上有し,少なくとも重合体ブロックA部分が架橋されているブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(a),ポリオレフィン系樹脂(b),ゴム用軟化剤(c)および発泡剤(d)からなる熱可塑性発泡体用組成物を発泡させてなる発泡体。」(以下,「引用発明2B」という。)

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平11-189743号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は環状オレフィン系重合体からなる電線被覆材料に関し,更に詳しくは,耐屈曲性,柔軟性に優れた電線被覆材料,該電線被覆材料を導体外周に設けた高圧電力ケーブル,高周波ケーブルなどの電線に関する。」

「【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明の好ましい実施の形態について,項目に分けて説明する。
・・・
【0026】本発明で用いる環状オレフィン系重合体には,電線被覆材料として使用するために架橋剤,発泡剤,難燃剤,その他の重合体を配合することができる。
・・・
【0036】(難燃剤)難燃剤は必須成分ではないが,特に高圧電力ケーブルなどの大量の電流が流れる電線の場合には添加するのが好ましい。・・・難燃剤の添加量は,重合体100重量部に対して,通常3?150重量部,好ましくは10?140重量部,特に好ましくは15?120重量部である。難燃剤の難燃化効果をより有効に発揮させるための難燃助剤として,例えば,三酸化アンチモン,五酸化アンチモン,アンチモン酸ナトリウム,三塩化アンチモン等のアンチモン系難燃助剤を用いることができる。これらの難燃助剤は,難燃剤100重量部に対して,通常1?30重量部,好ましくは2?20重量部の割合で使用する。
・・・
【0040】(その他の配合剤)本発明で用いる環状オレフィン樹脂には,その他,樹脂工業分野で通常使用される各種配合剤を添加して使用することができる。
・・・
【0042】また,成形性などを改良することを目的として,滑剤が必要に応じて使用される。・・・滑剤の配合量は,使用目的に応じて適宜選択されるが,環状オレフィン系重合体100重量部に対して,通常10重量部以下,好ましくは5重量部以下,より好ましくは3重量部以下の範囲である。但し,滑剤は使用量が多いと成形体表面からにじみ出て,例えば成形体表面に油滴状に付着したり,金型表面に付着して転写性を低下させることもあるので,使用しない,または使用量を1重量部以下程度とすることが好ましい。」

以上によれば,引用文献3には,以下の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「難燃剤の添加量が,重合体100重量部に対して,通常3?150重量部,好ましくは10?140重量部,特に好ましくは15?120重量部であり,滑剤の配合量が,環状オレフィン系重合体100重量部に対して,通常10重量部以下,好ましくは5重量部以下,より好ましくは3重量部以下の範囲である環状オレフィン系重合体からなる電線被覆材料。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1Aとを対比する。
ア 引用発明1Aにおいて,「前記内層は,前記ポリオレフィン樹脂と前記ポリオレフィンゴムとを架橋してなる複合樹脂をベース樹脂としている」から,引用発明1Aの「ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)」は,本願発明1Aの「ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂」に相当する。また,引用発明1の「アゾジカルボンアミドからなる発泡剤」は,本願発明1の「発泡剤」に相当する。

イ ここで,引用発明1Aにおいて,「前記内層は,ポリオレフィン樹脂とポリオレフィンゴムとを架橋してなる複合樹脂をベース樹脂としている」ところ,「二軸押出機を用いて,ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)70質量部,ポリオレフィンゴムとしてのエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)30質量部,発泡剤としてアゾジカルボンアミド3.0質量部,架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.1質量部,架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1質量部,及び,シランカップリング剤としてビニルトリエトキシシラン1.5質量部を混合することにより,内層用の樹脂組成物を作製する工程」は,「架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.1質量部,架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1質量部,及び,シランカップリング剤としてビニルトリエトキシシラン1.5質量部」が混合されているから,この工程において「前記ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)」と「前記ポリオレフィンゴムとしてのエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)」とは架橋され,架橋体が得られているといえる。
そうすると,引用発明1Aは,本願発明1のように工程(1)において,「ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製」し,「前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に架橋剤及び架橋助剤を添加してから架橋し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得」ているとはいえないから,「工程(1)」の「ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製」しているとはいえない。
そうすると,引用発明1Aの「ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)70質量部,ポリオレフィンゴムとしてのエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)30質量部,発泡剤としてアゾジカルボンアミド3.0質量部,架橋剤としてジクミルパーオキサイド0.1質量部,架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1質量部,及び,シランカップリング剤としてビニルトリエトキシシラン1.5質量部を混合すること」と,本願発明1の「(1)少なくとも,ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂,発泡剤,充填剤,及び滑剤を混合し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製する工程」及び「(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に架橋剤及び架橋助剤を添加してから架橋し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程」とは,少なくとも,ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂,発泡剤を混合し,架橋体を得ている点で共通する。

ウ 引用発明1Aの「二台の押出機を用いて内層及び外層を同時押出することにより,前記内層に発泡構造を形成し,導体の周囲に内層及び外層を形成する工程」は,前記イの検討を参酌すれば,架橋体を押出し,導体の外周に前記架橋体からなる内層を形成しているといえるから,引用発明1Aの「内層」は,本願発明1の「被覆層」に相当し,引用発明1Aと本願発明1とは,架橋体を押出し,導体の外周に前記架橋体からなる被覆層を形成する点で共通する。

エ 引用発明1Aにおいて,「絶縁電線」の「内層」は,「前記ポリオレフィン樹脂と前記ポリオレフィンゴムとを架橋してなる複合樹脂をベース樹脂」とするものであって,当該「内層」には「発泡構造」が形成されているから,引用発明1Aの「絶縁電線」と,本願発明1の「発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブル」とは,「発泡ポリオレフィン被覆電線」である点で共通する。

オ 以上から,本願発明1と引用発明1Aの一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「(1)少なくとも,ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂,発泡剤を混合し,
(2)架橋体を得る工程
(3)前記工程(2)で得られた架橋体を押出し,導体の外周に前記架橋体からなる被覆層を形成する工程,
を有する,
発泡ポリオレフィン被覆電線の製造方法。」

<相違点>
相違点1-1:本願発明1は,「(1)少なくとも,ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂,発泡剤,充填剤,及び滑剤を混合し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製する工程」を有しており,「前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物は,前記ベース樹脂全体を100重量部としたときに,ポリオレフィン系樹脂を60?95重量部,ゴム成分を5?40重量部含有し,前記発泡剤を,ベース樹脂100重量部に対し0.1?10重量部含有し,前記充填剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し10?90重量部含有し,前記滑剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し0.5?10重量部含有し,前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に,前記架橋剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し0.02?0.5重量部添加するとともに,前記架橋助剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し前記架橋剤の1?3倍量添加する」のに対し,引用発明1Aは,「ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製」しておらず,「ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物」に「充填剤,及び滑剤を混合し」ていない点。
相違点1-2:本願発明1は,「(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に架橋剤及び架橋助剤を添加してから架橋し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程」を有しているのに対し,引用発明1Aは,そのような工程を有していない点。
相違点1-3:本願発明1は,「(4)前記工程(3)で形成した被覆層を発泡させる工程」を有しているのに対し,引用発明1Aは,「二台の押出機を用いて内層及び外層を同時押出すことにより,前記内層に発泡構造を形成し」ている点。

(2)判断
事案に鑑み,相違点1-2から検討する。
引用発明1Aの「内層用の樹脂組成物」は,「ポリオレフィン樹脂及びポリオレフィンゴム」を「ベース樹脂」とするものであるのに対し,引用発明2は,「ポリオレフィン系樹脂(b)」を含んでいるものの「スチレン系熱可塑性エラストマー」であるから,「ポリオレフィン系樹脂(b)」をベース樹脂とするものであるとはいえない。
また,引用発明1Aは,「ポリオレフィン樹脂とポリオレフィンゴム」とが「架橋」されるのに対し,引用発明2は,「熱可塑性発泡体用組成物」のうちの「重合体ブロックA部分」における「付加重合系ブロック共重合体(a_(0))(架橋前の付加重合系ブロック共重合体)」が「架橋」されるものである。
そうすると,引用発明1Aと引用発明2とは,樹脂の組成,及び,架橋される原材料が,いずれも異なるものであるから,引用発明1Aに引用発明2を適用する動機付けがあるとはいえない。
また,引用文献3には,相違点1-2に係る本願発明1の構成である「(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に架橋剤及び架橋助剤を添加してから架橋し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程」について,記載も示唆もされていない。
したがって,引用発明1Aにおいて,引用発明2及び引用発明3を適用することにより,相違点1-2に係る本願発明1の構成を得ることは,当業者にとって容易に想到し得るものとはいえない。
よって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明1A,引用発明2B及び引用発明3に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明1Bとを対比する。
ア 引用発明1Bの「前記導体を覆う内層」は,「ポリオレフィン樹脂とポリオレフィンゴムとを架橋してなる複合樹脂をベース樹脂とし」,「発泡率は18.5%である」から,導体の外周に,発泡しかつベース樹脂を含む被覆層であるといえ,また,引用発明1Bの「導体と,前記導体を被覆する絶縁体とを備え,前記絶縁体は,導体側に配置され,前記導体を覆う内層と,前記内層を覆う外層とを有する絶縁電線」は,発泡ポリオレフィン被覆電線であるといえる。
したがって,引用発明1Bの「内層」は,本願発明2の「被覆層」に相当し,引用発明1Bと本願発明2とは,「導体と,前記導体の外周に,発泡しかつベース樹脂を含む被覆層とを有する発泡ポリオレフィン被覆電線」であって,「前記被覆層の発泡率」が18.5%である点で共通する。

イ 引用発明1Bにおいて,「内層」は,「ポリオレフィン樹脂とポリオレフィンゴムとを架橋してなる複合樹脂をベース樹脂とし」,「ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)70質量部,ポリオレフィンゴムとしてのエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)30質量部」を含有しているから,「ベース樹脂」全体を100質量部としたときに,「ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)」を「70質量部」,「ポリオレフィンゴムとしてのエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)」を30質量部含有しているといえる。
そして,引用発明1Bの「質量部」と本願発明2の「重量部」とは同義であるから,引用発明1Bの「ポリオレフィン樹脂としてのポリエチレン樹脂(PE)」,「ポリオレフィンゴムとしてのエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)」とは,それぞれ,本願発明2の「ポリオレフィン系樹脂」,「ゴム成分」に相当し,引用発明1Bと本願発明2とは,「ベース樹脂全体を100重量部としたときに,ポリオレフィン系樹脂」を70重量部,「ゴム成分」を30重量部含有している点で共通する。

ウ 以上から,本願発明2と引用発明1Bの一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「導体と,前記導体の外周に,発泡しかつベース樹脂を含む被覆層とを有する発泡ポリオレフィン被覆電線であって,
前記被覆層の発泡率が18.5%であり,
ベース樹脂全体を100重量部としたときに,ポリオレフィン系樹脂を70重量部,ゴム成分を30重量部含有する,
発泡ポリオレフィン被覆電線。」

<相違点>
相違点2-1:本願発明2は,「前記被覆層における前記ポリオレフィン系樹脂の架橋物の径方向の配向が,軸線方向の配向と比較して大きく」しているのに対し,引用発明1Bは,そのような構成を有していない点。
相違点2-2:「被覆層」について,本願発明2は,「前記充填剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し10?90重量部含有し,前記滑剤を,ベース樹脂100重量部に対し0.5?10重量部含有する」のに対し,引用発明1Bは,そのような構成を有していない点。

(2)判断
相違点2-1について検討するに,引用文献2B及び引用文献3のいずれも,相違点2-1に係る本願発明2の「前記被覆層における前記ポリオレフィン系樹脂の架橋物の径方向の配向が,軸線方向の配向と比較して大きく」するとの構成を有していないし,当該構成を,引用発明1B,引用発明2B及び引用発明3のいずれかが有することは,技術常識であるとはいえない。
また,引用文献1?3のいずれにも,相違点2-1に係る本願発明2の構成である「前記被覆層における前記ポリオレフィン系樹脂の架橋物の径方向の配向が,軸線方向の配向と比較して大きく」することについて,記載も示唆もされていない。
したがって,引用発明1Bにおいて,引用発明2B及び引用発明3を適用しても,相違点2-1に係る本願発明2の構成を得ることはできない。
よって,相違点2-2について判断するまでもなく,本願発明2は,引用発明1B,引用発明2B及び引用発明3に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定(令和3年1月14日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。
請求項1,2,4に係る発明は,引用文献1?2に記載された発明に基づいて,当業者が容易になし得たものであり,また,本願の請求項3に係る発明は,引用文献1?3に記載された発明に基づいて,当業者が容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 しかしながら,令和3年8月5日付け手続補正により補正された請求項1は,前記相違点1-2に係る事項,請求項2は,前記相違点2-1に係る事項を有するものとなっており,上記第4 1及び2で検討したとおり,本願発明1は,引用発明1A,引用発明2A及び引用発明3に基づいて,当業者が容易に発明できたものではないし,また,本願発明2は,引用発明1B,引用発明2B及び引用発明3に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号について
(1)当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。
ア 請求項1の「(1)少なくとも,ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂,架橋剤,架橋助剤,及び発泡剤を混合し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製する工程
(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋し,
ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程」との記載と,本願明細書の発明の詳細な説明の【0054】の「[試験電線A1?A99]
表1?4に示す配合量(重量部)に従い,各成分を温度200℃のニーダーにて混練し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製した。
続いて,架橋剤,架橋助剤を添加し,190℃×3分以上で混練することにより架橋させ,架橋体を調製した。」との記載は整合していないから,請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものとはいえない,

イ 本願発明が解決しようとする課題は,「切裂き易さや皮むき性を改善し,優れた施工性を有するとともに十分な機械的特性も兼ね備えた発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法および発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルを提供すること」(本願明細書【0007】。以下,「本願発明の課題」という。)であり,本願明細書の発明の詳細な説明において,請求項1,4のポリオレフィン系樹脂及びゴム成分の含有量の数値範囲を満たしていない表5,6の試験電線B1?B46の総合評価がB又はCとなっていることからすると,
(1)総合評価がB,C又はDである表6の試験電線B47?B50,表7の試験電線B51?B70,表8の試験電線B95?B100,表9の試験電線B101?B125,表10の試験電線B126?B146を含んでいる請求項1,4に係る発明,
(2)総合評価がB又はCである表6の試験電線B47?B50,表7の試験電線B51?B70を含んでいる請求項2に係る発明,及び,
(3)総合評価がB,C又はDである表5?10の試験電線B1?B146を含んでいる請求項1を引用する請求項3に係る発明は,
必ずしも上記本願発明の課題を解決できるとはいえないから,請求項1,2,4に係る発明及び請求項1を引用する請求項3に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものとはいえない,

(2)これに対し,令和3年8月5日にした手続補正によって,補正前の請求項1の「(1)少なくとも,ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂,架橋剤,架橋助剤,及び発泡剤を混合し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製する工程
(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を架橋し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程」は,「(1)少なくとも,ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂,発泡剤,充填剤,及び滑剤を混合し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物を作製する工程
(2)前記工程(1)で作製したポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に架橋剤及び架橋助剤を添加してから架橋し,ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物の架橋体を得る工程」と補正され(当審注:下線は補正箇所を示すため当審が付与した。以下、同様である。),また,請求項1の「ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物」は,「前記発泡剤を,ベース樹脂100重量部に対し0.1?10重量部含有し,
前記充填剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し10?90重量部含有し,
前記滑剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し0.5?10重量部含有し,
前記ポリオレフィン系発泡性樹脂組成物に,
前記架橋剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し0.02?0.5重量部添加するとともに,前記架橋助剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し前記架橋剤の1?3倍量添加する」ことが特定され,さらに,請求項2の「被覆層」は,「前記充填剤を,前記ベース樹脂100重量部に対し10?90重量部含有し,
前記滑剤を,ベース樹脂100重量部に対し0.5?10重量部含有する」ことが特定された。

(3)以上によれば,補正後の請求項1の記載と,本願明細書の発明の詳細な説明の【0054】の記載は整合しており,また,補正後の請求項1,2に係る発明は,総合評価がB,C又はDであるいずれの試験電線も含まないものとなったから,請求項1,2に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって,当審拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおりであるから,原査定の理由及び当審拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-09-22 
出願番号 特願2016-229521(P2016-229521)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01B)
P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神田 太郎  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 河本 充雄
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブルの製造方法および発泡ポリオレフィン被覆電線・ケーブル  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
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