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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1378466 |
審判番号 | 不服2020-7516 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-02 |
確定日 | 2021-09-29 |
事件の表示 | 特願2016-568573「微粉化ホウォートンゼリー」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月26日国際公開、WO2015/179711、平成29年 6月29日国内公表、特表2017-517255〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成27年5月21日(パリ条約による優先権主張 平成26年5月21日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年3月26日付け拒絶理由に対して令和1年8月30日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年1月27日付けで拒絶査定がなされ、令和2年6月2日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に補正書が提出されたものである。 第2 補正却下の決定 [結論] 令和2年6月2日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 令和2年6月2日付け手続補正(以下、「本件補正」)という。)は、請求項1について、補正前の 「【請求項1】 ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子および薬学的に許容される担体から実質的になる組成物であって、 前記粒子は約300μm以下であり、前記組成物は、注射可能な、液体、ゲルまたはペーストである、組成物。」を、補正後の、 「【請求項1】 ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子および薬学的に許容される担体を含む組成物であって、 前記粒子は約25μm以上約300μm以下であり、前記組成物は、羊膜、絨毛膜、骨、骨材料、または骨移植片を含まず、前記組成物は、注射可能な、液体、ゲルまたはペーストである、組成物。」(下線部は補正前からの補正箇所を示す。)とするものである。 2.補正の目的 本件補正は、補正前の組成物に含まれる粒子について「約25μm以上」と下限値を特定し、また、補正前の組成物について「羊膜、絨毛膜、骨、骨材料、または骨移植片を含まず」という特定事項を付加することにより限定するものであって、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすものであるか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。 3.独立特許要件の検討 (1)明確性要件について 本願補正発明の「前記組成物は、羊膜、絨毛膜、骨、骨材料、または骨移植片を含まず」の記載における「骨」、「骨材料」、「骨移植片」の3つの用語で表される物質は、互いに「または」の記載で結ばれる並列の関係であるから互いに異なるものを意味すると認められるが、本願明細書の記載を参酌しても、これら3つの物質を互いに異なるものとして明確に区別できるとはいえず、したがって、「前記組成物は、羊膜、絨毛膜、骨、骨材料、または骨移植片を含まず」の記載を含む本願補正発明は明確でない。 したがって、本願補正発明は特許法第36条第6項第2号の要件を満足しない。 (2)新規性、進歩性について ア 引用文献の記載 拒絶査定において引用文献1として引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2014/058804号には次の記載がある。なお、引用文献1は英文であるため、パテントファミリーである特表平2015-533095号公報の記載を翻訳文として記載する。また、下線は当審で付したものである。 (ア) 「1.(a)1種以上の胎盤成分に由来する微粉化粒子と、(b)1種以上の骨移植片とを含む微粉化組成物。 2.前記胎盤成分は、羊膜嚢、羊膜、絨毛膜、ホウォートンゼリー、盤状胎盤またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。 ・・・・ 7.前記微粉化粒子は、ホウォートンゼリーを含む微粉化羊膜および/または絨毛膜である、請求項1に記載の組成物。 ・・・・ 10.請求項1?9のいずれかに記載の組成物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。 11.前記薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、ハンクス液、緩衝液または非水性媒体を含む、請求項10に記載の組成物。 ・・・・ 15.注射可能である、請求項1?14のいずれかに記載の組成物。 16.泡、ゲル、パテまたはペースト状である、請求項1?14のいずれかに記載の組成物。 ・・・・ 21.請求項1?19のいずれかに記載の組成物を関節に注射する工程を含む、対象の関節における炎症の治療または予防方法。 ・・・・ 23.請求項1?19のいずれかに記載の組成物を空洞に注射する工程を含む、骨の空洞の充填方法。 24.1種以上の胎盤成分に由来する微粉化粒子を含む微粉化組成物を関節に注射する工程を含む、対象の関節における炎症の治療または予防方法。 ・・・・ 26.1種以上の胎盤成分に由来する微粉化粒子を含む微粉化組成物を空洞に注射する工程を含む、骨の空洞の充填方法。」(特許請求の範囲) (イ) 「本明細書で使用する「胎盤組織」という用語は、洗浄および除染された胎盤および臍帯中に存在するあらゆる物質または組織などのあらゆる成分を含む。一態様では、胎盤成分としては、羊膜嚢、羊膜、絨毛膜、ホウォートンゼリーまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。従って、「胎盤組織」および「胎盤成分」を本明細書では同義で使用する。」(5頁10?15行) (ウ) 「特定の態様では、以下の手順を用いて、ホウォートンゼリーを任意に単離することができる。メスまたはハサミを用いて、臍帯を絨毛膜板から切り離す。静脈および動脈を特定したら、静脈または動脈のうちの1つから臍帯を縦方向に下に向かって切り離す。臍帯を切り離したら、手術用ハサミおよび鉗子を使用して、静脈および動脈壁をホウォートンゼリーから切り離すことができる。次に、羊膜を切断することにより、羊膜の外層をホウォートンゼリーから除去する。羊膜をホウォートンゼリーから除去した後、ホウォートンゼリーを切断して細片にすることができる。一態様では、この細片は、およそ1?4cm×10?30cmの大きさであり、およそ1.25cmの厚さである。但し、用途に応じて他の厚さも可能である。」(10頁1?10行) (エ) 「本微粉化組成物は、当該技術分野で知られている機器を用いて生成することができる。例えば、Retsch Oscillating Mill MM400を使用して、本明細書に記載されている微粉化組成物を生成することができる。本微粉化組成物中の物質の粒径も、本微粉化組成物の用途に応じて異なってもよい。一態様では、本微粉化組成物は、1,000μm未満、500μm未満、25μm?500μm、25μm?300μm、25μm?200μmの粒子を有する。別の態様では、本微粉化組成物は、100μm?300μmまたは200μm?300μmの粒子を有する。一態様では、本微粉化組成物は、150μm未満、100μm未満または50μm未満の直径の粒子を有する。他の様態では、より大きな直径(例えば、150μm?350μm)を有する粒子が望ましい。全ての場合において、粒子の直径は、その最長の軸に沿って測定している。」(14頁10?21行) (オ) 「骨移植片を含む微粉化組成物の調製(工程160) 本微粉化粒子を生成したら、それらを1種以上の骨移植片と混合することができる。骨移植片は、骨組織における欠損または欠陥を修復するために使用される組織または材料である。骨移植片は一般に、4つのカテゴリー、すなわち、患者から得られる自家移植片、同種移植片、異種移植片および人工移植片に分類される。骨移植片は一般に、以下の特性:(1)骨形成能(生存細胞の存在)、(2)骨誘導性(細胞を引きつけ、骨形成を誘導し、かつ/または細胞遊走を促進する非コラーゲン性タンパク質を含む)、および(3)骨伝導性(細胞遊走のための足場として機能し、かつリン酸カルシウムを供給する)のうちの1つ以上を有する。 腸骨稜、肋骨、顎または、上顎結節もしくは抜歯部位の口腔内海綿骨から回収した自家移植骨は、骨形成能、骨誘導性および骨伝導性を有する。同種移植片材料は、ヒトの死体から得られた組織を指し、腸骨の海綿骨および骨髄、凍結乾燥した皮質骨および海綿骨ならびに脱灰および凍結乾燥した皮質骨および海綿骨が挙げられる。同種移植片は、骨伝導性および骨誘導性を有する。異種移植片は、非ヒト種由来である。これらの移植片材料は、タンパク性材料の全てまたは大部分を除去すると不活性かつ吸収性のヒドロキシアパタイト足場材料が残るため、骨伝導性特性のみを有する。人工移植片は、合成により製造されたものであり、非多孔性ヒドロキシアパタイト、多孔性ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、生物活性ガラス、フルオロアパタイト、炭酸アパタイト、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムおよびそれらの組み合わせが挙げられ、様々な程度の骨伝導性が得られる。」(17頁18行?18頁9行) (カ) 「本明細書に記載されている医薬組成物は、局所もしくは全身治療のどちらが望まれるかによって、また、治療される領域によって、多くの方法で投与することができる。一態様では、投与は、注射により行うことができ、ここでは、本微粉化組成物は、液体、ゲル、パテ、ペーストまたは海綿状(すなわち、凍結乾燥された状態)に製剤化される。他の様態では、本微粉化組成物を、対象に内服的に投与されるように製剤化することができる。他の様態では、本微粉化組成物を局所的に(例えば、眼内、膣内、直腸内、鼻腔内、経口または皮膚に直接に)投与することができる。局所投与のための製剤としては、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、坐薬、スプレー、液体および粉末を挙げることができる。従来の医薬担体、水性、粉末もしくは油性基剤、増粘剤などが必要であったり望ましかったりすることもある。」(19頁15?25行) (キ) 「実施例1:微粉化粒子の調製 一態様では、注射可能な微粉化ヒト羊膜嚢は、病院で生じた胎盤組織から得られたヒトの羊膜および中間組織層からなり、病院ではこれを、帝王切開分娩時に回収した。当該組織の微粉化は、Retsch Oscillating Mill MM400を用いて行った。リン酸緩衝液を担体として使用した。注射可能な組織の割合は50mg/mLであった。濃度比は、60%(21mg)の羊膜:40%(14mg)の中間組織層であった(0.70mLのリン酸緩衝液を含む)。 実施例2:微粉化組成物の調製 一態様では、本微粉化組成物を、(1)胎盤組織を得る工程、(2)この組織を洗浄する工程、(3)この組織を脱水する工程、(4)脱水した組織を微粉砕、粉砕および/または磨砕する工程、(5)粒子状の胎盤組織を転がして微粉化粒子を形成する工程、(6)微粉化粒子をスクリーニングまたは篩分けして、250μm±50μmの平均粒径を得る工程、(7)乾燥した微粉化粒子をバイアルに詰める工程、(8)最終滅菌工程、および(9)微粉化粒子を骨移植片と混合して、体積基準で50%の微粉化粒子および50%の骨移植片の複合移植片を形成する工程により、調製することができる。」(22頁24行?23頁9行) イ 引用発明 上記ア(ア)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「(a)1種以上の胎盤成分に由来する微粉化粒子、(b)1種以上の骨移植片、及び薬学的に許容される担体を含む組成物であって、注射可能である、組成物。」 ウ 対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 本願補正発明の「ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子」について、本願明細書の実施例には、「ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子」に該当する「微粉化ホウォートンゼリー」を、洗浄、乾燥、微粉化、篩による分別という工程で臍帯組織から調製することが記載されていると認められる。 一方、引用文献1の上記(イ)の記載より、引用発明の「胎盤成分」とは臍帯である場合を含むものと認められる。また、引用文献1の上記(ウ)の記載より、ホウォートンゼリーは臍帯から分離されることが理解される。さらに、引用文献1の実施例には、洗浄、乾燥、微粉化、篩による分別の工程により胎盤組織から微粉化粒子を調製することが記載されていると認められる。 そうすると、引用発明の「(a)1種以上の胎盤成分に由来する微粉化粒子」は、本願補正発明の「ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子」と、「胎盤組織に由来する脱水した微粉化粒子」である点で共通すると認められる。 なお、本願明細書の段落【0013】には「本明細書で使用される「胎盤組織」という用語は、臍帯に存在する成分(例えば、天然ホウォートンゼリー、臍帯静脈/動脈および周囲の羊膜)のいずれも含まない。」と記載されているが、引用文献1に記載された事項については、引用文献1の上記(イ)のとおり「胎盤組織」及び「胎盤成分」の用語は臍帯である場合を含むものとして検討する。 したがって、両者は、 「胎盤組織に由来する脱水した微粉化粒子および薬学的に許容される担体を含む組成物であって、前記組成物は、注射可能な、組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願補正発明では「胎盤組織に由来する脱水した微粉化粒子」として「ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子」が特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。 (相違点2) 本願補正発明では微粉化粒子について「約25μm以上約300μm以下」であることが特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。 (相違点3) 本願補正発明では、組成物が「液体、ゲルまたはペーストである」ことが特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。 (相違点4) 本願補正発明では、組成物が「羊膜、絨毛膜、骨、骨材料、または骨移植片を含ま」ないことが特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。 エ 判断 (相違点1)について 引用発明の「胎盤成分」とは臍帯である場合を含むものであるところ、引用文献1の請求項2には胎盤成分がホウォートンゼリーを含むことが記載されており、上記ア(ウ)のとおり、引用文献1にはホウォートンゼリーが臍帯から得られることも示されているから、引用発明の「(a)1種以上の胎盤成分に由来する微粉化粒子」として、臍帯に由来する「ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子」は、引用文献1に記載されているに等しいといえる。 したがって、相違点1は実質的な相違点ではないか、当業者が容易になし得ることである。 (相違点2)について 引用文献1には、上記ア(エ)のとおり、微粉化組成物の粒子を25μm?300μmとすることが記載されているから、引用発明において微粉化粒子が「約25μm以上約300μm以下」であることは、引用文献1に記載されているか、当業者が適宜なし得ることである。 したがって、相違点2は実質的な相違点ではないか、当業者が適宜なし得ることである。 (相違点3)について 引用文献1の請求項11に記載されるとおり、引用発明は薬学的に許容される担体として水や生理食塩水を用いる場合を包含するものであるから、そのような場合、引用発明の組成物は液体であると認められる。 また、引用文献1の請求項16には、組成物がゲル状やペースト状であることも記載されているから、組成物がゲルやペーストであることも、実質的な相違点でないか、当業者が容易になし得ることである。 したがって、相違点3は実質的な相違点ではないか、当業者が容易になし得ることである。 (相違点4)について 引用発明における「胎盤組織に由来する脱水した微粉化粒子」が、上記(相違点1)について で検討した臍帯に由来する「ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子」である場合、組成物は少なくとも「絨毛膜」を含まないもの、すなわち、「羊膜、絨毛膜、骨、骨材料、または骨移植片を含ま」ないものであるといえる。 また、上記ア(オ)のとおり、引用発明は「骨移植片」としてヒドロキシアパタイトのような人工移植片を用いる場合を包含しており、「骨移植片」が人工移植片である場合、組成物は「骨」や「骨材料」を含まないもの、すなわち、「羊膜、絨毛膜、骨、骨材料、または骨移植片を含ま」ないものであるといえる。 したがって、相違点4は実質的な相違点ではないか、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願補正発明において引用文献1の記載から予測できない効果が奏されたとも認められない。 よって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明は、特許法第29条第1項に該当し特許を受けることができないものであり、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 オ 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求時に補正を行い、当該補正に基づいて、引用文献1は、その組成に骨移植片を必要とするのに対して、本願発明は骨移植片を含まないことを主張していると認められる。 しかし、補正後の請求項1には「前記組成物は、羊膜、絨毛膜、骨、骨材料、または骨移植片を含まず」と特定されており、例えば「絨毛膜」は含まないが「骨移植片」を含む場合を包含しており、このような場合は引用発明と相違しない。 また、引用文献1の請求項24及び請求項26には、 「24. 1種以上の胎盤成分に由来する微粉化粒子を含む微粉化組成物を関節に注射する工程を含む、対象の関節における炎症の治療または予防方法。」 「26. 1種以上の胎盤成分に由来する微粉化粒子を含む微粉化組成物を空洞に注射する工程を含む、骨の空洞の充填方法。」 と記載されており、これらの方法では胎盤成分に由来する微粉化粒子は使用されるが、骨移植片は使用されないと認められる。 そして、仮に本願補正発明が「骨、骨材料、及び骨移植片」を含有しないことを特定するものであったとしても、これらを含有しないことで顕著な効果が奏されるともいえない。 そうすると、本願補正発明が「骨移植片を含まない」発明だったとしても、そのような発明も、また、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 なお、審判請求人は令和2年11月19日付け上申書を提出し、請求項1における「前記組成物は、羊膜、絨毛膜、骨、骨材料、または骨移植片を含まず」を削除すること(補正案1)、または請求項1を「ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子および薬学的に許容される担体からなる組成物であって、 前記粒子は約25μm以上約300μm以下であり、前記組成物は、注射可能な、液体、ゲルまたはペーストである、組成物。」とすること(補正案2)を示しているが、補正案1、2に示された請求項1も、本願補正発明と同様に、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)まとめ 本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 4.小括 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 当審の判断 1.本願発明 令和2年6月2日付け手続補正は却下されたから、本願の請求項1?16に係る発明は、令和1年8月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子および薬学的に許容される担体から実質的になる組成物であって、 前記粒子は約300μm以下であり、前記組成物は、注射可能な、液体、ゲルまたはペーストである、組成物。」 2.令和2年1月27日付け拒絶査定 令和2年1月27日付け拒絶査定は、概ね次の理由を含むものである。 (1)新規性欠如の理由 この出願の請求項1?16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)進歩性欠如の理由 この出願の請求項1?16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (引用文献) 1.国際公開第2014/058804号 2.特表2013-523227号公報 3.特表2012-505188号公報 3.引用文献の記載、引用発明 拒絶査定において引用文献1として引用された文献であって、本願優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2014/058804号には、上記第2の3.(2)アで摘記したとおりの記載があり、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」といい。)が記載されていると認められる。 「(a)1種以上の胎盤成分に由来する微粉化粒子、(b)1種以上の骨移植片、及び薬学的に許容される担体を含む組成物であって、注射可能である、組成物。」 4.対比、判断 本願発明と引用発明を対比する。 本願発明には「・・・から実質的になる組成物」と記載されているが、本願明細書の段落【0046】?【0083】及び【0120】の記載からみて、本願発明は骨材料(骨移植片)を含め任意の他の成分を含有することを除外しているとは認められないから、上記第2の3.(2)ウでの検討と同様に、両者は、 「胎盤組織に由来する脱水した微粉化粒子および薬学的に許容される担体から実質的になる組成物であって、前記組成物は、注射可能な、組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明では「胎盤組織に由来する脱水した微粉化粒子」として「ホウォートンゼリーの脱水した微粉化粒子」が特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。 (相違点2) 本願発明では微粉化粒子について「約300μm以下」であることが特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。 (相違点3) 本願発明では、組成物が「液体、ゲルまたはペーストである」ことが特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。 上記第2の3.(2)エで述べた理由と同様の理由から、(相違点1)?(相違点3)は、実質的な相違点ではないか、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明において引用文献1の記載から予測できない効果が奏されたとも認められない。 よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-04-22 |
結審通知日 | 2021-04-27 |
審決日 | 2021-05-12 |
出願番号 | 特願2016-568573(P2016-568573) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C12N)
P 1 8・ 121- Z (C12N) P 1 8・ 113- Z (C12N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂崎 恵美子 |
特許庁審判長 |
森井 隆信 |
特許庁審判官 |
中島 庸子 松野 広一 |
発明の名称 | 微粉化ホウォートンゼリー |
代理人 | 小田 直 |
代理人 | 高橋 香元 |
代理人 | 岩堀 明代 |
代理人 | 高岡 亮一 |