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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H03K
管理番号 1378484
審判番号 不服2020-14283  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-12 
確定日 2021-10-19 
事件の表示 特願2015- 28400「半導体装置及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開、特開2015-173438、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月17日(優先権主張 平成26年2月21日)の出願であって、平成30年10月19日付けで拒絶理由通知がされ、平成31年2月7日付けで手続補正がされ、令和元年7月19日付けで最後の拒絶理由通知がされ、令和元年9月10日付けで手続補正がされ、令和2年2月6日付けで最後の拒絶理由通知がされ、令和2年4月13日付けで手続補正がされ、令和2年7月14日付けで令和2年4月13日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和2年10月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和2年10月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタを有し、
第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタは、同じ導電型を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、第1の配線に電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第2の配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第3の配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3の配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第4のトランジスタのソース又はドレインの一方に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記第1の配線に電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのゲートは、前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第4の配線に電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのゲートは、第5の配線に電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第5の配線に電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのゲートは、前記第5の配線に電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第3の配線に電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのゲートは、前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第1の配線は、第1のクロック信号を供給する機能を有し、
前記第2の配線は、信号を出力する機能を有し、
前記第3の配線は、第1の電源電位を供給する機能を有し、
前記第5の配線は、第2のクロック信号を供給する機能を有する半導体装置。
【請求項2】
第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタを有し、
第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタは、同じ導電型を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、第1の配線に電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第2の配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第3の配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3の配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第4のトランジスタのソース又はドレインの一方に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記第1の配線に電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのゲートは、前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第4の配線に電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのゲートは、第5の配線に電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第5の配線に電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのゲートは、前記第5の配線に電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第5の配線に電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのゲートは、前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第1の配線は、第1のクロック信号を供給する機能を有し、
前記第2の配線は、信号を出力する機能を有し、
前記第3の配線は、第1の電源電位を供給する機能を有し、
前記第5の配線は、第2のクロック信号を供給する機能を有する半導体装置。
【請求項3】
第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタを有し、
第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタは、同じ導電型を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、第1の配線に電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第2の配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第3の配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3の配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第4のトランジスタのソース又はドレインの一方に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記第1の配線に電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのゲートは、前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第4の配線に電気的に接続され、
前記第5のトランジスタのゲートは、第5の配線に電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソース又はドレインの一方は、第6の配線に電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのゲートは、前記第5の配線に電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソース又はドレインの他方は、前記第3の配線に電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのゲートは、前記第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第1の配線は、第1のクロック信号を供給する機能を有し、
前記第2の配線は、信号を出力する機能を有し、
前記第3の配線は、第1の電源電位を供給する機能を有し、
前記第5の配線は、第2のクロック信号を供給する機能を有し、
前記第6の配線は、第2の電源電位を供給する機能を有する半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第4のトランジスタのW(チャネル幅)/L(チャネル長)は、前記第3のトランジスタのW/Lよりも大きい半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記第4のトランジスタの半導体層とゲート電極とが重なる面積は、前記第3のトランジスタの半導体層とゲート電極とが重なる面積よりも大きい半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記第1乃至第4のトランジスタの少なくとも一は、酸化物半導体にチャネル形成領域を有する半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置と、
操作キー、カメラ、マイクロホン又は筐体と、
を有する電子機器。」

第3 令和2年7月14日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1.令和2年7月14日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
令和2年4月13日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1-7に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、独立特許要件を満たさないから、令和2年4月13日付けの補正は却下すべきものである。

2.原査定(令和2年7月14日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-7に係る発明は、特許請求の範囲の記載が次の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)本願の請求項1-3には、「前記第5のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第4の配線に電気的に接続され、」と記載されているが、「第4の配線」ついてこれ以上記載されてないから、第4の配線が第3の配線と接続されるものも含まれる。
一方、発明の詳細な説明には、本願の課題として「シフトレジスタの一部又は当該シフトレジスタが有する順序回路の一部に適用可能な新規の回路構成を提供する」(段落[0007])ことが記載されている。
しかしながら、第4の配線が第3の配線に接続されると、第1のトランジスタ及び第7のトランジスタのゲートは第3の電位にしかなりえないから、シフトレジスタとして機能せず、本願の課題が解決されない。
(2)本願の請求項1-3には、「前記第1の配線は、第1のクロック信号を供給する機能を有し、・・(中略)・・、 前記第5の配線は、第2のクロック信号を供給する機能を有する」と記載されているが、「第1のクロック信号」と「第2のクロック信号」のタイミングについて記載されてないから、上記2つのクロック信号が同相で動作しているもの含まれる。
しかしながら、本願の明細書には、「図2に例示する信号CK1及び信号CK2は、1周期のうちハイレベルである期間とローレベルである期間とが等しく、且つ位相差が180°である。つまり、信号CK1は信号CK2の反転信号となっている。」(段落[0046])と記載されており、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
したがって、請求項1-3、及び、それらを引用する請求項4-7に係る発明は、明細書に記載された範囲を超えるものである。


第4 サポート要件についての当審の判断
請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるか否かについて、以下、検討する。

1 本願における発明が解決しようとする課題について
発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。
「【0007】
本発明の一態様は、新規の回路構成を提供することを課題の一とする。特に、シフトレジスタの一部又は当該シフトレジスタが有する順序回路の一部に適用可能な新規の回路構成を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、電圧を出力する期間を長くすること、又はそれを実現可能な回路構成を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、電圧を出力するためのトランジスタがオンになる期間を長くすること、又はそれを実現可能な回路構成を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、トランジスタの数を減らすことを課題の一とする。本発明の一態様は、消費電力を減らすことを課題の一とする。本発明の一態様は、レイアウト面積を縮小することを課題の一とする。本発明の一態様は、作製工程を削減することを課題の一とする。本発明の一態様は、コストを削減することを課題の一とする。」

「【0029】
(実施の形態1)
本実施の形態では、順序回路(半導体装置ともいう)について説明する。
【0030】
順序回路の構成の一例について図1を参照して説明する。図1は順序回路の回路図の一例である。図1の順序回路は、トランジスタ101乃至トランジスタ107及び配線111乃至配線115を有する。
【0031】
なお、図1に例示するトランジスタ101乃至トランジスタ107はNチャネル型である。ただし、これに限定されず、トランジスタ101乃至トランジスタ107はPチャネル型であってもよい。トランジスタ101乃至トランジスタ107を同じ導電型とすることにより、CMOS回路と比較して、作製工程を簡略化することができ、コストを削減することができる。」
「【図1】


「【0081】
図6(A)に示すように、トランジスタ107の第1の端子を配線115と接続してもよい。図6(A)に示すトランジスタ107はノードN1の電位に基づいて信号CK2をノードN2に供給する。信号CK2は期間T1においてハイレベルになるため、期間T1におけるトランジスタ106及びトランジスタ107に生じる貫通電流を防止することができる。よって、消費電力の削減を図ることができる。また、トランジスタ106のW/Lを大きくする必要がないため、順序回路のレイアウト面積の縮小を図ることができる。」

「【図6】(A)



「【0086】
図7(A)に示すように、トランジスタ106の第1の端子を配線117と接続してもよい。図7(A)に示すトランジスタ106は信号CK2に基づいて電圧VDDをノードN2に供給する。これにより、タイミングのずれ等によりローレベルの信号がノードN2に供給されてしまうことを防止することができる。」

「【図7】(A)




上記記載より、本願における発明が解決しようとする課題は、トランジスタ101乃至トランジスタ107を同じ導電型とすることにより、CMOS回路と比較して、作製工程を簡略化することができ、コストを削減することができる、シフトレジスタの一部又は当該シフトレジスタが有する順序回路の一部に適用可能な新規の回路構成を提供すること、であると認められる。

2 本願発明1について
本願発明1の半導体装置は、「第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタ」を有するものであり、「第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタは、同じ導電型を有」することが特定され、第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタの接続関係、及び第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタと第1の配線乃至第5の配線との接続関係について、図1に示される接続関係が特定されるものである。
また、第1の配線は、第1のクロック信号を供給する機能を有し、第2の配線は、信号を出力する機能を有し、第3の配線は、第1の電源電位を供給する機能を有し、第5の配線は、第2のクロック信号を供給する機能を有することが特定されている。

そうすると、本願発明1は、同じ導電型を有する第1のトランジスタ乃至第7のトランジスタを用いた、シフトレジスタが有する順序回路の一部に適用可能な半導体装置の回路構成が特定されているものといえるから、本願発明1は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」であると認められる。

3 本願発明2について
本願発明2は、上記2と同様に、発明の詳細な説明の【0081】、図6(A)に示される接続関係を特定するものであり、同様に、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」であると認められる。

4 本願発明3について
本願発明3は、上記2と同様に、発明の詳細な説明の【0086】、図7(A)に示される接続関係を特定するものであり、同様に、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」であると認められる。

5 本願発明4?7について
本願発明4?7は、本願発明1?3のいずれかを引用するものであるから、上記2?4と同様に、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」であると認められる。

6 まとめ
したがって、本願発明1?7は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものである。


第5 原査定の理由について
(1)本願発明1?3においては、「第1の配線」乃至「第5の配線」として特定されるものであり、これらの配線は異なる配線として特定されている。
そうすると、本願発明1?7において、第4の配線が第3の配線と接続されることが想定されているとはいえない。
(2)本願発明1?3においては、「第1のクロック信号」、「第2のクロック信号」として特定されるものであり、異なるクロック信号として特定されている。
そうすると、本願発明1?7において、第1のクロック信号と第2のクロック信号が同相である場合が想定されているとはいえない。

したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?7は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものではないから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-09-30 
出願番号 特願2015-28400(P2015-28400)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H03K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹内 亨  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 衣鳩 文彦
伊藤 隆夫
発明の名称 半導体装置及び電子機器  

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