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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04L 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1378526 |
審判番号 | 不服2020-15010 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-10-28 |
確定日 | 2021-10-01 |
事件の表示 | 特願2018-199421「ブロックチェーン式多要素個人身元認証を実現するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月25日出願公開,特開2019-126021〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成28年3月29日に出願した実願2018-002943号(パリ条約による優先権主張2016年3月28日 アメリカ合衆国)を,特許法46条1項の規定により,平成30年7月31日に新たな特許出願とした特願2018-143775号の一部を,特許法44条1項の規定により,平成30年10月23日に新たな特許出願としたものであって, 平成30年10月23日付けで審査請求がなされると共に手続補正がなされ,令和1年9月18日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して令和2年3月18日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,令和2年6月22日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;令和2年6月29日),これに対して令和2年10月28日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,令和3年1月4日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。 第2.令和2年10月28日付けの手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和2年10月28日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 令和2年10月28日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,令和2年3月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲, 「 【請求項1】 ブロックチェーン式個人身元認証を実現するシステムであって, ブロックチェーンを記憶するように構成された1以上のコンピュータ可読記憶媒体と, 1以上のプロセッサを備えるコンピュータシステムとを備え, 前記1以上のプロセッサは,コンピュータプログラム命令を実行するようにプログラミングされ,前記コンピュータプログラム命令は実行されると,前記コンピュータシステムに, 認証済み個人身元を有する個人に対して,前記ブロックチェーンに関連付けられた認証アドレスを割り当てることであって,前記認証アドレスは,情報が格納される前記ブロックチェーン上の特定の場所であり,前記認証アドレスは,公開鍵及び秘密鍵の対に含まれる公開鍵を含むことと, 前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて,前記個人の識別子と,前記個人の生体特徴情報とを記憶することであって,少なくとも前記生体特徴情報は,前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に記憶され,前記生体特徴情報は前記個人の生体特徴データから導出されることと, 前記個人の身元を認証するためのリクエストであって,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスを示すリクエストに応じて,クライアント側装置から,受信した識別子,1以上の受信した生体特徴データ及び受信した生体特徴情報を取得することと, 前記リクエストに示された前記認証アドレスを使用して,前記記憶された生体特徴情報を抽出することであって,少なくとも前記記憶された生体情報が前記ブロックチェーン上の前記特定の場所から得られることと, 受信した秘密鍵が,前記認証アドレスからの前記公知鍵及び秘密鍵の対のうち秘密鍵に一致する場合,及び (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの1以上の場合に,前記個人の身元の認証を提供することと, 前記秘密鍵で前記認証に署名することと を実行させる,システム。 【請求項2】 前記コンピュータシステムに, 前記記憶するステップにおいて,前記認証アドレスに対応する前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に前記識別子を記憶することを実行させる,請求項1に記載のシステム。 【請求項3】 前記コンピュータシステムに, 前記記憶するステップにおいて,前記識別子と前記生体特徴情報とを,前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に記憶することとを実行させる,請求項1に記載のシステム。 【請求項4】 前記コンピュータシステムに, 前記記憶するステップにおいて,前記生体特徴情報を前記生体特徴データのハッシュとして記憶することを実行させる,請求項1に記載のシステム。 【請求項5】 前記署名するステップは,前記認証アドレスに含まれる前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち前記秘密鍵を使用する,請求項1に記載のシステム。 【請求項6】 前記コンピュータシステムに, 前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて,前記秘密鍵を前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶することと, 前記個人の身元を認証するための前記リクエストに応じて,前記クライアント側装置から,受信した秘密鍵を取得することと, 前記リクエストに示された前記認証アドレスを使用して,前記記憶された秘密鍵を受信することと, 前記受信した秘密鍵が,前記記憶された秘密鍵に一致するという判定,及び (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの1以上の判定に応じて,前記記憶された秘密鍵を使用して前記個人の身元の前記認証に署名することとを実行させる,請求項5に記載のシステム。 【請求項7】 前記秘密鍵は,前記クライアント側装置にも記憶され,前記クライアント側装置は,前記個人のユーザ装置である,請求項6に記載のシステム。 【請求項8】 前記コンピュータシステムに, 前記個人と異なる第1のユーザが,前記認証アドレスに含まれる前記秘密鍵とは異なる第1の秘密鍵を有するという認証に基づいて,前記第1のユーザが,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて,前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶されたデータにアクセス可能にすることと, 第2の秘密鍵を有すると認証された,前記個人とは異なる第2のユーザの,前記記憶されたデータに対するアクセスを拒否することとを実行させる,請求項1に記載のシステム。 【請求項9】 前記生体特徴データは,指紋,手のひら静脈,顔認証,DNA,掌紋,手の形状,虹彩認証,網膜,臭い,歩き方,又は声に関連付けられた,請求項1に記載のシステム。 【請求項10】 前記生体特徴情報と前記識別子とは互いに異なる,請求項1に記載のシステム。 【請求項11】 前記コンピュータシステムは,サーバ側コンピュータである,請求項1に記載のシステム。 【請求項12】 前記コンピュータシステムに, 前記記憶するステップに先立って,前記1以上のプロセッサを使用して,前記個人が政府発行の身分証明書を使用して前記個人の身元を最初に認証することを実行させる,請求項1に記載のシステム。 【請求項13】 ブロックチェーン式個人身元認証を実現する方法であって,実行されると当該方法を実行するコンピュータプログラム命令を実行する1以上のプロセッサを備えるコンピュータシステムにより実現される方法であって, 前記コンピュータシステムが,前記コンピュータシステムの1以上のコンピュータ可読記憶媒体にブロックチェーンを記憶することと, 前記コンピュータシステムが,認証済み個人身元を有する個人に対して,前記ブロックチェーンに関連付けられた認証アドレスを割り当てることであって,前記認証アドレスは,情報が格納される前記ブロックチェーン上の特定の場所であり,前記認証アドレスは,公開鍵及び秘密鍵の対に含まれる公開鍵を含むことと, 前記コンピュータシステムが,前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて,前記個人の識別子と,前記個人の生体特徴情報とを記憶することであって,少なくとも前記生体特徴情報は,前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に記憶され,前記生体特徴情報は前記個人の生体特徴データから導出されることと, 前記コンピュータシステムが,前記個人の身元を認証するためのリクエストであって,前記認証アドレスを示すリクエストに応じて,クライアント側装置から,受信した識別子,1以上の受信した生体特徴データ及び受信した生体特徴情報を取得することと, 前記コンピュータシステムが,前記リクエストに示された前記認証アドレスを使用して,前記ブロックチェーンから,前記記憶された生体特徴情報を抽出することと, 前記コンピュータシステムが,受信した秘密鍵が,前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち秘密鍵に一致する場合,及び (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの1以上の場合に,前記個人の身元の認証を提供することと, 前記秘密鍵で前記認証に署名することと を含む,方法。 【請求項14】 前記記憶するステップにおいて,前記識別子は,前記認証アドレスに対応する前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に記憶される,請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記記憶するステップにおいて,前記識別子と前記生体特徴情報とを,前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に記憶することとを実行させる,請求項13に記載の方法。 【請求項16】 前記記憶するステップにおいて,前記生体特徴情報は前記生体特徴データのハッシュとして記憶される,請求項13に記載の方法。 【請求項17】 前記署名するステップにおいて,前記認証アドレスに含まれる前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち前記秘密鍵が使用される,請求項13に記載の方法。 【請求項18】 前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶するステップにおいて,前記秘密鍵は,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて記憶され, 前記方法は,さらに, 前記個人の身元を認証するための前記リクエストに応じて,前記クライアント側装置から,受信した秘密鍵を取得するステップと, 前記リクエストに示された前記認証アドレスを使用して,前記記憶された秘密鍵を受信するステップと, 前記受信した秘密鍵が,前記記憶された秘密鍵に一致するという判定,及び (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの1以上の判定に応じて,前記記憶された秘密鍵を使用して前記個人の身元の前記認証に署名するステップとを含む,請求項17に記載の方法。 【請求項19】 前記秘密鍵を前記クライアント側装置にも記憶するステップをさらに含み,前記クライアント側装置は,前記個人のユーザ装置である,請求項18に記載の方法。 【請求項20】 前記個人と異なる第1のユーザが,前記認証アドレスに含まれる前記秘密鍵とは異なる第1の秘密鍵を有するという認証に基づいて,前記第1のユーザが,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて,前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶されたデータにアクセス可能にするステップと, 第2の秘密鍵を有すると認証された,前記個人とは異なる第2のユーザの,前記記憶されたデータに対するアクセスを拒否するステップとをさらに含む,請求項13に記載の方法。 【請求項21】 前記生体特徴データは,指紋,手のひら静脈,顔認証,DNA,掌紋,手の形状,虹彩認証,網膜,臭い,歩き方,又は声に関連付けられた,請求項13に記載の方法。 【請求項22】 前記方法において,前記生体特徴情報と前記識別子とは互いに異なる,請求項13に記載の方法。 【請求項23】 前記方法において,前記コンピュータシステムは,サーバ側コンピュータである,請求項13に記載の方法。 【請求項24】 前記記憶するステップに先立って,前記1以上のプロセッサを使用して,前記個人が政府発行の身分証明書を使用して前記個人の身元を最初に認証するステップをさらに含む。 請求項13に記載の方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は, 「 【請求項1】 ブロックチェーン式個人身元認証を実現するシステムであって, ブロックチェーンを記憶するように構成された1以上のコンピュータ可読記憶媒体と, 1以上のプロセッサを備えるコンピュータシステムとを備え, 前記1以上のプロセッサは,コンピュータプログラム命令を実行するようにプログラミングされ,前記コンピュータプログラム命令は実行されると,前記コンピュータシステムに, 認証済み個人身元を有する個人に対して,前記ブロックチェーンに関連付けられた認証アドレスを割り当てることであって,前記認証アドレスは,情報が格納される前記ブロックチェーン上の特定の場所であり,前記認証アドレスは,公開鍵及び秘密鍵の対に含まれる公開鍵を含むことと, 前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて,前記個人の識別子と,前記個人の生体特徴情報とを記憶することであって,少なくとも前記生体特徴情報は,前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に記憶され,前記生体特徴情報は前記個人の生体特徴データから導出されることと, 前記個人の身元を認証するためのリクエストであって,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスを示すリクエストに応じて,クライアント側装置から,受信した識別子,1以上の受信した生体特徴データ及び受信した生体特徴情報を取得することと, 前記リクエストに示された前記認証アドレスを使用して,前記記憶された生体特徴情報を抽出することであって,少なくとも前記記憶された生体情報が前記ブロックチェーン上の前記特定の場所から得られることと, 受信した秘密鍵が,前記認証アドレスからの前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち秘密鍵に一致する場合であってかつ (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの少なくとも一方の場合に,前記リクエストに応じて前記個人の身元を認証することと, 前記秘密鍵で前記リクエストに対する応答に署名することと を実行させる,システム。 【請求項2】 前記コンピュータシステムに, 前記記憶するステップにおいて,前記認証アドレスに対応する前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に前記識別子を記憶することを実行させる,請求項1に記載のシステム。 【請求項3】 前記コンピュータシステムに, 前記記憶するステップにおいて,前記識別子と前記生体特徴情報とを,前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に記憶することとを実行させる,請求項1に記載のシステム。 【請求項4】 前記コンピュータシステムに, 前記記憶するステップにおいて,前記生体特徴情報を前記生体特徴データのハッシュとして記憶することを実行させる,請求項1に記載のシステム。 【請求項5】 前記署名するステップは,前記認証アドレスに含まれる前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち前記秘密鍵を使用する,請求項1に記載のシステム。 【請求項6】 前記コンピュータシステムに, 前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて,前記秘密鍵を前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶することを実行させる,請求項5に記載のシステム。 【請求項7】 前記秘密鍵は,前記クライアント側装置にも記憶され,前記クライアント側装置は,前記個人のユーザ装置である,請求項6に記載のシステム。 【請求項8】 前記コンピュータシステムに, 前記個人と異なる第1のユーザが,前記認証アドレスに含まれる前記秘密鍵とは異なる第1の秘密鍵を有するという認証に基づいて,前記第1のユーザが,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて,前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶されたデータにアクセス可能にすることと, 第2の秘密鍵を有すると認証された,前記個人とは異なる第2のユーザの,前記記憶されたデータに対するアクセスを拒否することとを実行させる,請求項1に記載のシステム。 【請求項9】 前記生体特徴データは,指紋,手のひら静脈,顔認証,DNA,掌紋,手の形状,虹彩認証,網膜,臭い,歩き方,又は声に関連付けられた,請求項1に記載のシステム。 【請求項10】 前記生体特徴情報と前記識別子とは互いに異なる,請求項1に記載のシステム。 【請求項11】 前記コンピュータシステムは,サーバ側コンピュータである,請求項1に記載のシステム。 【請求項12】 前記コンピュータシステムに, 前記記憶するステップに先立って,前記1以上のプロセッサを使用して,前記個人が政府発行の身分証明書を使用して前記個人の身元を最初に認証することを実行させる,請求項1に記載のシステム。 【請求項13】 ブロックチェーン式個人身元認証を実現する方法であって,実行されると当該方法を実行するコンピュータプログラム命令を実行する1以上のプロセッサを備えるコンピュータシステムにより実現される方法であって, 前記コンピュータシステムが,前記コンピュータシステムの1以上のコンピュータ可読記憶媒体にブロックチェーンを記憶することと, 前記コンピュータシステムが,認証済み個人身元を有する個人に対して,前記ブロックチェーンに関連付けられた認証アドレスを割り当てることであって,前記認証アドレスは,情報が格納される前記ブロックチェーン上の特定の場所であり,前記認証アドレスは,公開鍵及び秘密鍵の対に含まれる公開鍵を含むことと, 前記コンピュータシステムが,前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて,前記個人の識別子と,前記個人の生体特徴情報とを記憶することであって, 少なくとも前記生体特徴情報は,前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に記憶され,前記生体特徴情報は前記個人の生体特徴データから導出されることと, 前記コンピュータシステムが,前記個人の身元を認証するためのリクエストであって,前記認証アドレスを示すリクエストに応じて,クライアント側装置から,受信した識別子,1以上の受信した生体特徴データ及び受信した生体特徴情報を取得することと, 前記コンピュータシステムが,前記リクエストに示された前記認証アドレスを使用して,前記ブロックチェーンから,前記記憶された生体特徴情報を抽出することと, 前記コンピュータシステムが,受信した秘密鍵が,前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち秘密鍵に一致する場合であってかつ (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの少なくとも一方の場合に,前記リクエストに応じて前記個人の身元を認証することと, 前記秘密鍵で前記リクエストに対する応答に署名することと を含む,方法。 【請求項14】 前記記憶するステップにおいて,前記識別子は,前記認証アドレスに対応する前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に記憶される,請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記記憶するステップにおいて,前記識別子と前記生体特徴情報とを,前記ブロックチェーン上の前記特定の場所に記憶することとを実行させる,請求項13に記載の方法。 【請求項16】 前記記憶するステップにおいて,前記生体特徴情報は前記生体特徴データのハッシュとして記憶される,請求項13に記載の方法。 【請求項17】 前記署名するステップにおいて,前記認証アドレスに含まれる前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち前記秘密鍵が使用される,請求項13に記載の方法。 【請求項18】 前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶するステップにおいて,前記秘密鍵は,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて記憶される,ステップを含む,請求項17に記載の方法。 【請求項19】 前記秘密鍵を前記クライアント側装置にも記憶するステップをさらに含み,前記クライアント側装置は,前記個人のユーザ装置である,請求項18に記載の方法。 【請求項20】 前記個人と異なる第1のユーザが,前記認証アドレスに含まれる前記秘密鍵とは異なる第1の秘密鍵を有するという認証に基づいて,前記第1のユーザが,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて,前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶されたデータにアクセス可能にするステップと, 第2の秘密鍵を有すると認証された,前記個人とは異なる第2のユーザの,前記記憶されたデータに対するアクセスを拒否するステップとをさらに含む,請求項13に記載の方法。 【請求項21】 前記生体特徴データは,指紋,手のひら静脈,顔認証,DNA,掌紋,手の形状,虹彩認証,網膜,臭い,歩き方,又は声に関連付けられた,請求項13に記載の方法。 【請求項22】 前記方法において,前記生体特徴情報と前記識別子とは互いに異なる,請求項13に記載の方法。 【請求項23】 前記方法において,前記コンピュータシステムは,サーバ側コンピュータである,請求項13に記載の方法。 【請求項24】 前記記憶するステップに先立って,前記1以上のプロセッサを使用して,前記個人が政府発行の身分証明書を使用して前記個人の身元を最初に認証するステップをさらに含む。 請求項13に記載の方法。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。 2.補正の適否 本件手続補正が,特許法17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲,及び,図面(以下,これを「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内でなされたものであるかについて,以下に検討する。 (1)本件手続補正によって,補正前の請求項1に記載の, 「受信した秘密鍵が,前記認証アドレスからの前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち秘密鍵に一致する場合,及び (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの1以上の場合に,前記個人の身元の認証を提供することと, 前記秘密鍵で前記認証に署名することと」, が, 「受信した秘密鍵が,前記認証アドレスからの前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち秘密鍵に一致する場合であってかつ (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの少なくとも一方の場合に,前記リクエストに応じて前記個人の身元を認証することと, 前記秘密鍵で前記リクエストに対する応答に署名することと」, と補正され,補正前の請求項13に記載の, 「受信した秘密鍵が,前記認証アドレスからの前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち秘密鍵に一致する場合,及び (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの1以上の場合に,前記個人の身元の認証を提供することと, 前記秘密鍵で前記認証に署名することと」, が, 「受信した秘密鍵が,前記認証アドレスからの前記公開鍵及び秘密鍵の対のうち秘密鍵に一致する場合であってかつ (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの少なくとも一方の場合に,前記リクエストに応じて前記個人の身元を認証することと, 前記秘密鍵で前記リクエストに対する応答に署名することと」, と補正され,補正前の請求項18が, 「前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶するステップにおいて,前記秘密鍵は,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて記憶され, 前記方法は,さらに, 前記個人の身元を認証するための前記リクエストに応じて,前記クライアント側装置から,受信した秘密鍵を取得するステップと, 前記リクエストに示された前記認証アドレスを使用して,前記記憶された秘密鍵を受信するステップと, 前記受信した秘密鍵が,前記記憶された秘密鍵に一致するという判定,及び (i)前記受信した生体特徴データから導出された生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することと, (ii)前記受信した生体特徴情報が,前記記憶された生体特徴情報と一致することとのうちの1以上の判定に応じて,前記記憶された秘密鍵を使用して前記個人の身元の前記認証に署名するステップとを含む,請求項17に記載の方法。」 から, 「前記1以上のコンピュータ可読記憶媒体に記憶するステップにおいて,前記秘密鍵は,前記ブロックチェーンに関連付けられた前記認証アドレスに関連付けて記憶される,ステップを含む,請求項17に記載の方法。」 と補正された。 (2)上記引用の補正事項の内,補正前の請求項1,及び,補正前の請求項13に記載の, 「前記秘密鍵で前記認証に署名すること」, を, 「前記秘密鍵で前記リクエストに対する応答に署名すること」(以下,これを「引用記載1」という) と補正することに関して,当初明細書等には, “秘密鍵で個人の身元を認証するためのリクエストに対する応答に署名すること” と同等の事項は記載されていない。 そこで,当初明細書等の記載内容から,引用記載1の構成が読み取れるかについて検討すると,当初明細書等には,「署名」に関して, a.「【0015】 概して,一対の公開鍵/秘密鍵を,1以上の公開鍵アルゴリズムに応じた暗号化,復号化に使用してもよい。非限定的な例として,一対の鍵をデジタル署名に使用してもよい。当該一対の鍵は,署名用の秘密鍵と,認証用の公開鍵を含んでもよい。秘密鍵は秘密で(例えば,所有者のみが知るものとする),公開鍵は広く公開されてもよい。鍵同士は数学的に関連付けられてもよいが,公開鍵から秘密鍵を計算することは不可能である。」(下線は,当審にて,説明の都合上付加したものである。以下,同じ。) b.「【0030】 いくつかの形態によると,身元認証要素120は,第1の個人の個人身元が,(1)第1の生体特徴データ又は第2の生体特徴データに一致する生体特徴データ及び(2)第1の秘密鍵に一致する秘密鍵の受信に際して,認証されるように構成されてもよい。このような形態では,身元認証用の,より大きな識別情報群のサブセットが求められる,いわゆる「M-of-N」署名が実現され得る。 【0031】 いくつかの形態では,身元認証要素120は,第1の生体特徴データに一致する生体特徴データと,第1の秘密鍵に一致する秘密鍵が,第1の個人の個人身元の認証に署名するために使用され得るように構成されてもよい。 【0032】 暗号署名は,ある個人の所有権を証明する,数学的機構である。ビットコインの場合,ビットコインウォレットと1以上の秘密鍵とは,何らかの秘密の数学的関連付けがなされている。ビットコインソフトウェアが,適切な秘密鍵でトランザクションに署名すると,支払われたビットコインが署名内容に一致することが,ネットワーク全体で確認できるが,秘密鍵が推測されて大事なビットコインが盗まれてしまう虞はない。 【0033】 いくつかの形態では,少なくとも1つの専用ノードが,第1の個人の個人身元の認証の署名を実行する。所与の専用ノードは,1以上のサーバ102を有してもよい。所与の専用ノードは,新たなブロックを生成する,及び/又は認証署名用に構成されたパブリックノード又はプライベートノードであってもよい。」 という記載が存在するのみであって,上記引用の,特に,下線を付加された箇所に記載の内容を検討しても, (秘密鍵で個人の身元を認証するための)「リクエストに対する応答に署名する」, という構成を読み取ることができない。 なお,補正事項1についての,当初明細書等の記載については,上記に検討したとおりであるから,審判請求人が,補正の根拠として挙げている,段落【0025】,段落【0028】,段落【0032】,及び,段落【0048】に記載の内容から,補正事項1が読み取れないことは,明らかである。 (3)以上,(2)において検討したとおりであるから,補正後の請求項1に記載の,引用記載1は,当初明細書等に記載されたものではないので, 本件手続補正は,当初明細書等の記載の範囲内でされたものではない。 3.補正却下むすび したがって,本件手続補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 令和2年10月28日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?本願の請求項24に係る発明(以下,これを「本願発明1」?「本願発明24」という)は,令和2年3月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項24に記載された,上記「第2.令和2年10月28日付けの手続補正の却下の決定」の「1.補正の内容」において,補正前の請求項1?補正前の請求項24として引用した記載により特定されるものである。 第4.原査定の拒絶の理由 原査定の理由である,令和1年9月18日付けの拒絶理由(以下,これを「原審拒絶理由」という)は,概略,次のとおりである。 「●理由2(実施可能要件)について (2)請求項1には「前記個人の身元の認証に署名することとを実行させる」と記載されているものの,当該「認証」とは何を指すのか(特に,本願請求項1の「ブロックチェーン式個人身元認証を実現するシステム」の「個人身元認証」との関係,異同等)が不明である。 また,これに関し,技術常識を参酌すると,「認証」とは,アクセス要求元の正当性等を確認するといった「処理」を指すと解され,一方,「署名」とは,データの正当性等を示す為に,当該データに鍵情報等を用いて署名情報を付加することを指すと解されるから,上記下線部の「認証に署名」するとは,具体的にどのような処理を指すのか明確に把握することができない。 さらに,仮に,上記下線部の「認証に署名」することが,データに対して鍵情報等を用いて署名情報を付加することであるとすると,当該「署名」に用いられる鍵と,請求項1の他の鍵である「秘密鍵」及び「公開鍵」との関係も不明確である。 よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1-30に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 したがって,本件出願は,発明の詳細な説明の記載が不備のため,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。 ●理由3(明確性)について (1)請求項1の「前記個人の身元の認証に署名することとを実行させる」という記載のうち,「認証」が何を指すのか(特に,処理を指すのか,署名の対象となる何かしらのデータを指すのか)が不明であり,また,「認証に署名」するとは,どのような処理を指すのかも不明確である。 さらに,上記下線部の「認証に署名」することが,鍵情報を用いて署名情報を付加することであるとすると,当該「署名」に用いられる鍵と,請求項1の他の鍵である「秘密鍵」及び「公開鍵」との関係も不明である。 請求項2-30についても同様である。 よって,請求項1-30に係る発明は明確でない。 したがって,本件出願は,特許請求の範囲の記載が不備のため,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。」 第5.原査定の理由についての当審の判断 1.36条4項1号について (1)令和2年3月18日付けの手続補正により,平成30年10月23日付けの手続補正により補正された請求項1に記載の, 「前記個人の身元の認証に署名することとを実行させる」, が, 「前記個人の身元の認証を提供することと,前記秘密鍵で前記認証に署名することとを実行させる」, と補正されているが,「認証に署名する」ことに関して,本願明細書の発明の詳細な説明には, 上記「第2.令和2年10月28日付けの手続補正の却下の決定」の「2.補正の適否」における(2)においてa.,及び,b.として引用した事項が記載されるのみであり,上記b.段落【0030】の「(1)第1の生体特徴データ又は第2の生体特徴データに一致する生体特徴データ及び(2)第1の秘密鍵に一致する秘密鍵の受信に際して,認証される」との記載から,「認証」とは,「認証する」という行為を指すものと解される,そして,上記a.及び上記b.に記載された内容を検討しても,「個人の個人身元」を「認証」するという行為について「署名」するという処理が,どのように行われるものであるか,不明である。 なお,本願明細書の発明の詳細な説明には,審判請求人が,令和2年3月18日付けの意見書において, 『一実施形態では,システムは,秘密鍵で認証標示に署名すること,つまり,認証標示に署名情報を付加することにより,認証のより安全な標示を提供することができます。「個人の身元の認証」とは「ブロックチェーン式個人身元認証を実現するシステム」の「個人身元認証」に相当するものであり,「個人の身元の認証を提供」し,「前記秘密鍵で前記認証に署名する」こととは,提供された個人の身元の認証(データ)に対して鍵情報等を用いて署名情報を付加することであります。』 旨主張しているが,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された,「認証」を,「認証指標」であるとする点は,本願明細書の発明の詳細な説明からは読み取れない事項であるから,審判請求人の上記引用の主張は採用することができない。 (2)以上,上記(1)に検討したとおりであるから,令和2年3月18日付けの手続補正による補正内容を加味しても,当業者が本願発明1?本願発明24を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 2.36条6項2号について (1)本願の請求項1,及び,本願の請求項13に記載の「認証に署名する」に関して, 上記「1.36条4項1号について」において検討したとおり,本願においては,「認証」とは,“認証する”という行為を意味するものと解されるところ, 本願の請求項1,及び,本願の請求項13に記載の「個人の身元の認証を提供する」は,“個人の身元を認証することを提供する”ことであると解されるので,前記「認証に署名する」こととは,“認証することに対して署名を行う”と解される。 しかしながら,本願の請求項1,及び,本願の請求項13に記載された内容,及び,本願の他の請求項に記載された内容を検討しても,“認証することに対して署名を行う”というものがどのようなものであるか,及び,どのように実現しているのか不明であり,この点について,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された内容を検討しても,「認証に署名する」ことについては,上記a.,及び,上記b.に記載された程度の内容しか存在しないので,「認証に署名する」ことが,具体的にどのようなものであるか,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された内容を検討しても不明である。 そして,本願の請求項2?本願の請求項12は,本願の請求項1を直接・間接に引用するものであり,本願の請求項14?本願の請求項24は,本願の請求項13を直接・間接に引用するものであるから,令和2年3月18日付けの手続補正により補正された内容を加味しても,本願発明1?本願発明24は,明確ではない。 第6.むすび 以上のとおり,本願は,発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしておらず,特許請求の範囲の記載が同条6項2号に規定する要件を満たしていないから,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-04-28 |
結審通知日 | 2021-05-10 |
審決日 | 2021-05-21 |
出願番号 | 特願2018-199421(P2018-199421) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(H04L)
P 1 8・ 561- Z (H04L) P 1 8・ 537- Z (H04L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉田 歩 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
塚田 肇 石井 茂和 |
発明の名称 | ブロックチェーン式多要素個人身元認証を実現するシステム及び方法 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 工藤 嘉晃 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 那須 威夫 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 上杉 浩 |