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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1378593
審判番号 不服2020-8197  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-12 
確定日 2021-10-06 
事件の表示 特願2016-567719「抗PD-1抗体と他の抗癌剤の組み合わせを使用する肺癌の処置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日国際公開、WO2015/176033、平成29年 6月15日国内公表、特表2017-515859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)5月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年5月15日 米国、2014年5月30日 米国、2015年4月24日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年 6月28日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 1月31日付け:拒絶査定
令和 2年 6月12日 :審判請求書の提出
令和 2年 7月28日 :手続補正書(方式)の提出
(審判請求書における請求の理由を補正するもの)

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、令和2年1月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
プラチナダブレット化学療法(PT-DC)との組み合わせにおいて非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象を処置するための、プログラム細胞死1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」)を含む組成物であって;
PT-DCが、(i)1250mg/m^(2)の用量でのゲムシタビンおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチン、(ii)500mg/m^(2)の用量でのペメトレキセドおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチン、または(iii)200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセルおよび標的曲線下面積6mg x 分/ml(AUC6)でのカルボプラチンの組み合わせである、
組成物。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?14に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下、「本願優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?3に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:Clin.Pharmacol.Ther.,2014年 8月,96(2),p.214-223,Epub 2014 Apr.1
引用文献2:J.Clin.Oncol.,2008年 7月20日,26(21),p.3543-3551
引用文献3:Oncology Letters,2013年,5,p.761-767

第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1.引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報である、Clin.Pharmacol.Ther.,2014年 8月,96(2),p.214-223,Epub 2014 Apr.1(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審による。以下、同様。)。なお、原文は英文なので当審による訳文を示す。

1a(214頁左欄1行?4行)
「背景
全肺がんの約85%を占める進行性非小細胞肺がん(NSCLC)の第一選択療法は、プラチナベースの化学療法である。」

1b(216頁右欄下から8行?217頁右欄下から3行)
「完全ヒトIgG4PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体であるニボルマブは、PD-1経路阻害剤の中で、肺がんで最も広範な臨床評価を受けている。扁平上皮および非扁平上皮NSCLCの単剤療法、及び従来の化学療法と組み合わせた活性の証拠が、NSCLCの患者で実証されている(表3)。^(50、51)進行NSCLC患者の前治療において、ニボルマブ単独療法は、免疫関連応答を有する6人の患者を含まない17%(22/129)の全体的な応答率を有していた。^(50)・・・推定応答期間の中央値は74.0週(範囲:> 6.1から> 133.9週)であり、分析の時点で患者の45%で応答が進行中であった。全生存率は1年で42%、2年で24%であった。
ニボルマブは、執筆時点で、NSCLCを含む進行性または転移性固形腫瘍の患者を対象とした試験を含めて、9つの臨床試験が実施されている。^(40)第I相及び第I/II相試験では、ニボルマブは、化学療法、標的薬剤(ベバシズマブまたはエルロチニブ)、又は他の免疫療法(IL-21、イピリムマブ、抗リンパ球活性化遺伝子3、又はNK細胞(・・・)上の主要な阻害性受容体を標的とするリリルマブ)を含む様々な他の療法と組み合わされている。」

1c(218頁左欄下から7行?右欄4行)
「免疫チェックポイント阻害を含む併用戦略もまた、臨床において相加効果をもたらす可能性があるという最初の証拠がある。進行性黒色腫の患者では、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、いずれかの薬剤単独での以前の経験で見られたものよりもはるかに高い予備活性を示した。同時レジメンの患者の40%が客観的反応を示し、65%が臨床活性の証拠を示した。^(52)肺がんにおけるチェックポイント阻害剤の進行中の試験の結果は、新しい治療標的へのさらなる洞察を提供し、現在治療の選択肢が限られている患者におけるチェックポイント阻害剤の使用のためのアプローチを与える。」

1d(219頁表3)



表3の表題「肺癌におけるPD-1剤のこれまでのデータ」
表3の第3段の左側から順に
「化合物名」の欄は、「ニボルマブ」
「タイプ」の欄は、「抗PD-1」
「背景」の欄は、「ステージIIIb/IVのNSCLC」
「フェーズ」の欄は、「I」
「投薬/記述」の欄は、「単剤療法、維持療法、又は様々な薬剤との組み合わせ
アームA:ニボルマブ(10mg/kg)+ゲムシタビン+シスプラチン、n=12扁平上皮、
アームB:ニボルマブ(10mg/kg)+ペメトレキセド+シスプラチン、n=15非扁平上皮、
アームC:ニボルマブ(10mg/kg)+カルボプラチン+パクリタキセル、n=15(3人が扁平上皮、12人が非扁平上皮)、
アームC5:ニボルマブ(5mg/kg)+カルポプラチン+パクリタキセル、n=14(1人が扁平上皮、13人が非扁平上皮);
ニボルマブは進行まで3週間毎に投与し、プラチナダブレット化学療法は通常の投薬で4サイクル投与」
「主要エンドポイント」の欄は、「安全及び忍容性」
「安全データ」の欄は、「投薬を制限する毒性はみられない。治療に関連した有害事象;A、25%;B、47%;C、73%;C5:25%;グレード3/4
治療に関連した有害事象:肺炎(7%)、疲労(5%)、急性腎不全(5%)、貧血(4%);4患者は、グレード3/4の肺炎を含む全体で45%」
「有効性データ」の欄は、「ORR.A、4/12(33%)、B、7/15(47%)、C、7/15(47%);及びC5、7/14(50%);24週でのPFS:A、36%;B、71%;C、38%;及びD、55%」
「予想完了日」の欄は、「2015年8月」
「NCTナンバー、参照文献」の欄は、「NCT01454102、参照文献51」

(2)上記記載から、引用文献1に記載された事項に関して、次のことがいえる。
・記載事項1dの表3の「背景」の欄には、治療対象をステージIIIb/IVのNSCLCとすることが記載されており、記載事項1aによれば、NSCLCとは、非小細胞肺癌のことである。すなわち、引用文献1には、ステージIIIb/IVの非小細胞肺癌患者を治療対象としたことが記載されている。
・記載事項1dの表3の「投薬/記述」の欄には、アームAは、ニボルマブ、ゲムシタビン及びシスプラチンを投与すること、アームBは、ニボルマブ、ペメトレキセド及びシスプラチンを投与すること、アームC及びアームC5は、ニボルマブ、カルボプラチン、パクリタキセルを投与することが記載されている。
・記載事項1dの表3の「投薬/記述」の欄には、ニボルマブは、3週間毎に投与する旨の記載の後に、プラチナダブレット療法は、通常の投薬とすることが記載されていることから、プラチナダブレット療法とは、ニボルマブ以外の薬剤の組み合わせ、すなわち、アームAでは、ゲムシタビン及びシスプラチンの組み合わせ、アームBでは、ペメトレキセド及びシスプラチンの組み合わせ、アームC及びアームC5では、パクリタキセル及びカルボプラチンの組み合わせによる療法を意味するものである。

(3)上記(2)からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「プラチナダブレット療法との組み合わせにおいて非小細胞肺癌に罹患している対象を処置するための、ニボルマブを含む組成物であって、プラチナダブレット療法が、(i)ゲムシタビン及びシスプラチン、(ii)ペメトレキセド及びシスプラチン、又は、(iii)パクリタキセル及びカルボプラチンの組み合わせであり、プラチナダブレット療法は、通常の投薬で投与するものである、組成物。」

2.引用文献2
(1)同じく原査定の拒絶の理由で引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、J.Clin.Oncol.,2008年 7月20日,26(21),p.3543-3551(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。なお、原文は英文なので当審による訳文を示す。

2a(3543頁「要約」の項)
「目的
シスプラチンとゲムシタビンは、進行性非小細胞肺がん(NSCLC)の第一選択治療の標準的なレジメンである。ペメトレキセドと白金化合物の第II相試験でも、この設定での活性が示されている。

患者と方法
この非劣性の第III相ランダム化試験では、IIIB期またはIV期のNSCLCの化学療法を受けていない1,725人の患者を対象に、固定マージン法(ハザード比[HR]<1.176)を使用した治療群、及び米国東海岸癌臨床試験グループのパフォーマンスステータスが0から1の患者間の全生存期間を比較した。患者は1日目にシスプラチン75mg/m^(2)及び1日目と8日目に1,250mg/m^(2)ゲムシタビンを受けるか(n=863)、又は、1日目にシスプラチン75mg/m^(2)及びペメトレキセド500mg/m^(2)を3週間ごとに最大6サイクルを受けた。

結果
シスプラチン/ペメトレキセドの全生存期間は、シスプラチン/ゲムシタビンより劣っていなかった(生存期間中央値は、それぞれ10.3か月対10.3か月、HR=0.94、95%CI、0.84?1.05)。全生存期間は、シスプラチン/ペメトレキセドとシスプラチン/ゲムシタビンの比較で、腺癌(それぞれn=847;12.6か月v10.9か月)及び大細胞癌組織(それぞれn=153;10.4か月v6.7か月)の患者において、統計的に優れていた。対照的に、扁平上皮細胞組織学の患者では、シスプラチン/ゲムシタビンとシスプラチン/ペメトレキセドの比較で生存率に有意な改善が見られた(それぞれn=473;10.8v9.4か月)。シスプラチン/ペメトレキセドの場合、グレード3又は4の好中球減少症、貧血、及び血小板減少症の発生率(P≦.001);発熱性好中球減少症(P=.002); 脱毛症(P <.001)は有意に低かったのに対し、グレード3又は4の悪心(P=.004)がより一般的であった。

結論
進行したNSCLCでは、シスプラチン/ペメトレキセドは、シスプラチン/ゲムシタビンよりも優れた耐容性とより便利な投与で同様の効果を提供する。これは、組織型に基づく生存率の違いを示す、NSCLCでの最初の前向き第III相試験である。」

(2)上記記載から、引用文献2には、非小細胞肺癌患者に罹患している対象を治療するために、
・1250mg/m^(2)の用量でのゲムシタビン及び75mg/m^(2)の用量でのシスプラチンの組み合わせ、
・500mg/m^(2)の用量でのペメトレキセド及び75mg/m^(2)の用量でのシスプラチンの組み合わせ
を投与することが記載されていると認められる。

3.引用文献3
(1)同じく原査定の拒絶の理由で引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、Oncology Letters,2013年,5,p.761-767(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。なお、原文は英文なので当審による訳文を示す。

3a(761頁「要約」)の項
「カルボプラチンとパクリタキセルの併用は、非小細胞肺がん(NSCLC)の治療に最も一般的に使用されているレジメンの1つである。治療に関連する血液毒性を考慮しながら、この治療の標準的な3週間毎のスケジュールと1週間毎のスケジュールを比較することを目的とした。我々は、遡及的に、未治療の進行NSCLC患者における、毎週[パクリタキセルを1、8、15日目に70mg/m^(2)/週、カルボプラチンを曲線下面積(AUC)=6、4週間毎]と標準の3週間毎(パクリタキセルを200mg/m^(2)、及びカルボプラチンをAUC=6、3週間毎の1日目]のスケジュールを分析した。合計167人の患者がこの研究に登録された。患者の年齢の中央値は65歳であった(範囲、31?79歳)。毎週群と標準群には、それぞれ73人と94人の患者が含まれていた。グレード3または4の好中球減少症および神経障害の発生率は、標準群と比較して毎週群で有意に減少した(37.0対70.2%)。生存期間の中央値と無増悪生存期間は、毎週の治療群でそれぞれ11.8か月と4.2か月、標準治療群でそれぞれ11.6か月と3.1か月であった。多変量解析の結果は、毎週のスケジュール[ハザード比(HR)=0.634、P=0.0262]及びグレード3又は4の好中球減少症(HR=0.372、P=0.0007)が全生存期間において独立した好ましい予後因子であることを示した。結論として、カルボプラチンとパクリタキセルの毎週のスケジュールは、標準的な3週間のスケジュールよりも毒性が低く、潜在的に優れていた。ただし、投与量とスケジュールをさらに最適化する必要がある。」

(2)上記記載から、引用文献3には、非小細胞肺癌患者に罹患している対象を治療するために、
・200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセル及びAUC6でのカルボプラチンの組み合わせ
を投与することが記載されていると認められる。

第5 対比
1.本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「プラチナダブレット療法」は、ゲムシタビン及びシスプラチン、ペメトレキセド及びシスプラチン、又は、パクリタキセル及びカルボプラチンの組み合わせといった化学療法剤による療法を意味するから、化学療法である。したがって、引用発明1の「プラチナダブレット療法」は、本願発明の「プラチナダブレット化学療法」に相当する。
また、引用発明1の「ニボルマブ」は、記載事項1bによると、「完全ヒトIgG4PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体」であり、「PD-1経路阻害剤」であって、これはすなわち、「PD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体」のことであるから、本願発明の「プログラム細胞死1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」)」に相当する。

2.以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「プラチナダブレット化学療法(PT-DC)との組み合わせにおいて非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象を処置するための、プログラム細胞死1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(「抗PD-1抗体」)を含む組成物であって;
PT-DCが、(i)ゲムシタビンおよびシスプラチン、(ii)ペメトレキセドおよびシスプラチン、または(iii)パクリタキセルおよびカルボプラチンの組み合わせである、
組成物。」

【相違点】
プラチナダブレット化学療法が、本願発明では、「(i)1250mg/m^(2)の用量でのゲムシタビンおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチン、(ii)500mg/m^(2)の用量でのペメトレキセドおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチン、または(iii)200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセルおよび標的曲線下面積6mg x 分/ml(AUC6)でのカルボプラチンの組み合わせ」であるのに対し、引用発明1では、本願発明の(i)?(iii)で規定する薬剤の組み合わせは記載されているものの、その用量は「通常の投薬」と記載されているに留まる点

第6 判断
以下、相違点について検討する。
1.相違点について
上記第4 2.(2)によれば、引用文献2には、非小細胞肺癌患者に罹患している対象を治療するために、
・1250mg/m^(2)の用量でのゲムシタビン及び75mg/m^(2)の用量でのシスプラチンの組み合わせ、
・500mg/m^(2)の用量でのペメトレキセド及び75mg/m^(2)の用量でのシスプラチンの組み合わせ
を投与することが記載されており、これらは、それぞれ、本願発明に規定された「(i)1250mg/m^(2)の用量でのゲムシタビンおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチン」の組み合わせ、及び「(ii)500mg/m^(2)の用量でのペメトレキセドおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチン」の組み合わせにほかならない。
また、上記第4 3.(2)によれば、引用文献3には、非小細胞肺癌患者に罹患している対象を治療するために、
・200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセル及びAUC6でのカルボプラチンの組み合わせ
を投与することが記載されており、これは、本願発明に規定された「(iii)200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセルおよび標的曲線下面積6mg x 分/ml(AUC6)でのカルボプラチン」の組み合わせにほかならない。

そして、引用発明1と、引用文献2又は3に記載された技術とは、いずれも、「非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象を治療するために(i)ゲムシタビンおよびシスプラチン、(ii)ペメトレキセドおよびシスプラチン、または(iii)パクリタキセルおよびカルボプラチンの組み合わせを投与する技術である点で共通するものであるから、引用発明1に記載の、「(i)ゲムシタビン及びシスプラチン、(ii)ペメトレキセド及びシスプラチン、又は、(iii)パクリタキセル及びカルボプラチンの組み合わせ」であるプラチナダブレット化学療法における「通常の投薬」として、引用文献2又は3に記載された例示的な用量を採用して、「(i)1250mg/m^(2)の用量でのゲムシタビンおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチン、(ii)500mg/m^(2)の用量でのペメトレキセドおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチン、または(iii)200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセルおよび標的曲線下面積6mg x 分/ml(AUC6)でのカルボプラチンの組み合わせ」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

2.効果について
(1)奏効率(ORR)について
奏効率(ORR)について検討する。
本願明細書には、本願発明に係る組成物による奏効率(ORR)は、「ニボルマブ10mg/kgと、1250mg/m^(2)の用量でのゲムシタビンおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ10mg/kgと、500mg/m^(2)の用量でのペメトレキセドおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ10mg/kgと、200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセルおよび標的曲線下面積6mg x 分/ml(AUC6)でのカルボプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ5mg/kgと、200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセルおよび標的曲線下面積6mg x 分/ml(AUC6)でのカルボプラチンの組み合わせ」の順に、4/12の33%、7/15の47%、7/15の45%、6/14の43%であることが記載されている(表2)。
一方、引用文献1には、ORRは、「ニボルマブ10mg/kgと、ゲムシタビン及びシスプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ10mg/kgと、ペメトレキセド及びシスプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ10mg/kgと、パクリタキセル及びカルボプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ5mg/kgと、パクリタキセル及びカルボプラチンの組み合わせ」の順に、4/12の33%、7/15の47%、7/15の47%、7/14の50%であることが記載されており(記載事項1d)、これら4つの組み合わせのうち、最初の3つは、まさに本願明細書に記載されたORRと、人数も含めて全く一致するものであるし、4番目の組み合わせでは、むしろ本願明細書に記載された奏効率(43%)が、引用発明1の50%よりも悪い結果となっている。
以上のことからみて、ORRに関して、本願発明は引用発明1に比して、顕著な効果を奏するものとはいえない。

(2)無増悪生存期間(PFS)について
無増悪生存期間(PFS)について検討すると、本願明細書の【0123】には、「処置アーム全体の24週でのPFS率は38?71%の範囲であ」ると記載されているところ、この範囲は、引用文献1に記載された24週でのPFS率である36%?71%の範囲(記載事項1d)とほぼ重複するものであるから、24週でのPFS率に関して、本願発明は引用発明1に比して顕著な効果を奏するものとはいえない。

(3)有害事象(AE)について
有害事象(AE)について検討する。
本願明細書には、本願発明に係る組成物による何らかの有害事象を有する患者の割合は、「ニボルマブ10mg/kgと、1250mg/m^(2)の用量でのゲムシタビンおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ10mg/kgと、500mg/m^(2)の用量でのペメトレキセドおよび75mg/m^(2)の用量でのシスプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ10mg/kgと、200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセルおよび標的曲線下面積6mg x 分/ml(AUC6)でのカルボプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ5mg/kgと、200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセルおよび標的曲線下面積6mg x 分/ml(AUC6)でのカルボプラチンの組み合わせ」の順に、25%、47%、73%、29%であることが記載されている(表5)。
一方、引用文献1には、投薬を制限する毒性はみられなかったことが記載され、治療に関連した有害事象の割合は、「ニボルマブ10mg/kgと、ゲムシタビン及びシスプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ10mg/kgと、ペメトレキセド及びシスプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ10mg/kgと、パクリタキセル及びカルボプラチンの組み合わせ」、「ニボルマブ5mg/kgと、パクリタキセル及びカルボプラチンの組み合わせ」の順に、25%、47%、73%、29%であることが記載されており、これら4つの値は、まさに本願明細書に記載された何らかの有害事象を有する患者の割合と全く一致するものである。
以上のことからみて、有害事象(AE)に関して、本願発明は引用発明1に比して、顕著な効果を奏するものとはいえない。

(4)全生存期間(OS)について
引用文献1には、全生存期間(OS)についての具体的な結果データの記載はないものの、上の(1)?(3)で述べたとおり、引用発明1によって奏されるORRやPFS及びAEに係る諸効果が本願明細書の実施例1の試験結果と同様であることから、引用発明1によりOSにおいても本願明細書の実施例1で示されたのと同様の効果が見込まれるものである。

3.審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、令和2年7月28日手続補正書により補正された審判請求書において、次の事項を主張する。

(ア)引用文献2及び/又は引用文献3が様々なPT-DCに対する投与レジメンを記載しているか否かにかかわらず、本願請求項1に記載されているように、抗PD-1抗体療法と組み合わせられたとき、同じ用量が安全かつ有効であることを、当業者は、引用文献1、引用文献2及び/又は引用文献3の記載から想定することができない。
(イ)本願明細書は、本願請求項に記載の組み合わせ療法が、引用文献2及び引用文献3に開示されているPT-DC療法と比較して改善された特性を有することを示すデータを提供している。特に、本願実施例1は、ニボルマブとPT-DCの組み合わせ療法で処置された患者が、PT-DC単独と比較して、改善された無増悪生存(PFS)及び奏効率(OS)(審決注:原文ママ)を有したことを提供する。
(ウ)引用文献3は、週スケジュールの70mg/m^(2)パクリタキセルおよびAUC6カルボプラチンが、3週スケジュールの200mg/m^(2)パクリタキセルおよびAUC6 カルボプラチンよりも、「毒性が低く、潜在的に優れていた」ことを記載しており(766頁、最終段落およびAbstract)、当業者は、引用文献3を考慮して、抗PD-1抗体と組み合わせて、200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセルおよび6mg x 分/mlの曲線下の標的領域(a target area under the curve)(AUC6)でのカルボプラチンを容易に選択しなかったであろう。

(2)上記主張について検討する。
(ア)及び(イ)について
審判請求人は、引用文献2又は引用文献3に記載されたプラチナダブレット化学療法が、抗PD-1抗体療法と組み合わせられたとき、同じ用量で安全かつ有効であることを主張しており、特に、有効性に関しては、改善された無増悪生存(PFS)、奏効率(ORR)、全生存期間(OS)を有しているものである旨主張する。
しかし、有効性については、上記2において説示したように、本願発明は引用発明1と比して、奏効率(ORR)、24週での無増悪生存(PFS)率、全生存期間(OS)に関して、顕著な効果を奏するものとはいえない。
そして、安全性については、上記2において説示したように、本願発明は引用発明1と比して、有害事象(AE)に関して、顕著な効果を奏するものではない。
また、本願明細書の実施例1に記載された、フェーズIの臨床試験のNCTナンバーは、「NCT01454102」(【0117】)であることが記載されている一方、引用文献1には、記載事項1dの表3の上から3段目のデータについて、「NCTナンバー」の欄には、「NCT01454102」と記載されており、両者は、臨床試験に割り当てられた識別番号であるNCTナンバーが一致するものであることから、本願明細書の実施例1に記載された臨床試験と引用文献1に記載された臨床試験は事実上同じ試験である。そして、この点からみても、本願明細書の実施例1に示される本願発明による(1)ORR、(2)PFS、(3)AE、及び(4)OSに関する諸効果が、引用発明1により奏され得る上記諸効果に比して顕著な効果上の差異をもたらすものとは考えられない。

(ウ)について
引用文献3は、パクリタキセル及びカルボプラチン併用治療においての標準的な治療である3週間毎の投与スケジュールと毎週の投与スケジュールの比較を目的としたものであって(記載事項3a)、「毎週のスケジュールは、標準的な3週間のスケジュールよりも毒性が低く、潜在的に優れていた」と記載されているものの(記載事項3a)、引用文献3には、標準的な用量として、「200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセル及びAUC6でのカルボプラチンの組み合わせ」が記載されている以上は、引用発明1のうち、プラチナダブレット療法として、パクリタキセル及びカルボプラチンの組み合わせを選択した場合に係る発明において、その「通常の投薬」として、引用文献3に標準的な用量として記載された「(iii)200mg/m^(2)の用量でのパクリタキセルおよび標的曲線下面積6mg x 分/ml(AUC6)でのカルボプラチンの組み合わせ」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。

よって、上記審判請求人の主張(ア)?(ウ)を採用することはできない。

4.小括
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-05-07 
結審通知日 2021-05-11 
審決日 2021-05-24 
出願番号 特願2016-567719(P2016-567719)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 潤也  
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 冨永 みどり
大久保 元浩
発明の名称 抗PD-1抗体と他の抗癌剤の組み合わせを使用する肺癌の処置  
代理人 冨田 憲史  
代理人 山尾 憲人  
代理人 稲井 史生  
代理人 笹倉 真奈美  

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