現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。
ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
---|---|
管理番号 | 1378617 |
審判番号 | 不服2020-16513 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-01 |
確定日 | 2021-10-26 |
事件の表示 | 特願2017-536730「導電性基板」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 2日国際公開,WO2017/033740,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2016年(平成28年) 8月 9日(優先権主張 2015年(平成27年) 8月26日)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 2月 8日 :国内書面,特許協力条約第19条補正の写し提出書の提出 令和 2年 5月19日付け:拒絶理由通知 令和 2年 7月22日 :意見書,手続補正書の提出 令和 2年 8月26日付け:拒絶査定 令和 2年12月 1日 :審判請求書,手続補正書の提出 令和 3年 7月14日 :上申書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和 2年 8月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-3に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2-5)に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1 中国特許出願公開第104749830号明細書 引用文献2 特開2015-118743号公報 引用文献3 特開2010- 2750号公報 引用文献4 特開2015- 7672号公報 引用文献5 特開2014-186319号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正は,補正前の請求項1を削除し,補正前の請求項2,3を,補正後の請求項1,2とするとともに,補正前の請求項2の「黒化層」の厚さについて,補正後の請求項1に「70nm以下」と限定を加える補正をするものであるから,特許請求の範囲の削除及び限縮を目的とするものである。 また,審判請求時の補正は,本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえ,当該補正によっても,補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。 そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1,2に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1,2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」,「本願発明2」という。)は,令和 2年12月 1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下のとおりの発明である。 「 透明基材と, 前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成され,前記透明基材と対向する第1の金属層表面と,前記第1の金属層表面と反対側に位置する第2の金属層表面とを有する金属層と, 前記第2の金属層表面上に形成され,前記透明基材と対向する第1の黒化層表面と,前記第1の黒化層表面と反対側に位置する第2の黒化層表面とを有する黒化層とを備え, 前記金属層の前記第2の金属層表面の表面粗さRaが0.01μm以上0.1μm以下,前記黒化層の前記第2の黒化層表面の表面粗さRaが0.016μm以上0.09μm以下であり, 波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が20%以下であり, 前記金属層の厚さが50nm以上であり, 前記黒化層の厚さが15nm以上70nm以下である導電性基板。」 なお,本願発明2は,本願発明1のすべての構成要素を備えた発明である。 第5 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について (1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:日本語訳は当審により付記した。また,下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。) 「 ![]() 」 ([0070] 本発明は,タッチパネル装置,電極構造及び製造方法を提供するものであり,タッチパネルは,金属又は金属ベースの電極構造又はワイヤを使用し,電極構造は,金属反射を排除するために,表面処理によって耐食黒化層が形成され,反射防止技術のために構造を厚くする問題を回避しながら,また,導電性の低下の問題をもたらす一般的な黒化処理を回避することができるので,光透過率及び金属導電性に影響を与えることなく,反射を防止できる金属電極ワイヤを有するタッチパネル構造を提案することができる。 [0071] 本発明に開示されるタッチパネル装置に適用される本実施形態の主な構造は,透明な基板と,その基板上の金属電極または導線を含み,一般的なタッチパネルまたはフレキシブルなタッチパネルに適用することができる。 導電金属の表面は,研磨や粗面化,エッチングなどの加工,あるいは電解,スパッタリング,他の材料の蒸着などによって,削光粗化層が形成されている。 また,黒化層を形成することで,反射光のエネルギーを低減するだけでなく,光学的マッチングや構造強化の機能も果たすことができる。 [0072] 導電金属または基板の表面に形成される削光粗化層は薄い層であり,その厚さは1nm以上10μm以下,好ましくは50nm以上2μm以下とすることができる。 導電性金属の表面に形成される黒化層は,反射光エネルギーを低減するためのものであり,黒化層の特性は,色度座標におけるL(明るさ),a(赤緑),b(黄青)の範囲が,それぞれL50, a<-0.1,およびb<-0.1である。 [0073] 実施例1 [0074] 図3は,本発明の基本的な電極構造の1つを示す模式図であり,図3に示すように,基板30上に電極構造32が形成されており,この電極構造32の基本構造は,導電体としての金属導電層301と,削光粗化層302と,黒化層303とから構成されている。 [0075] この例では,電極構造32は,上面または下面を含む基板30上に直接形成することができ,ここでは,電極構造32における主要な導電構造である金属導電層301を,電解,スパッタリング,または印刷によって特定の構造に形成することができる。 [0076] 金属を導電構造とする場合,金属は外光を反射しやすく,表示装置に使用すると視覚的な影響を受ける可能性があるため,本発明ではこの電極構造に粗面化手段を様々な方法,金属導電層301に表面処理を施してもよいし,金属導電層301上に直接,表面構造を有する粗い構造の追加層を形成してもよい,により組み込んでいる。これらの表面構造は,金属導電層301からの反射によって形成される反射光を散乱させることができる。 [0077] 次に本実施形態では,この電極構造32に向けて照射される外光を吸収し,特に画面の色ずれを低減するために,電極構造32に設けられた金属導電層301および削光粗面層302上,例えば金属導電層301の上に黒化層303を形成し,さらに補強や防食などの保護構造としても利用している。) 「 ![]() 」 ([0101] 実施例5 [0102] 図7Aは,表面に削光粗面化構造を有する基板70上に電極構造72が形成されている実施形態の概略図である。 [0103] 電極構造72は,基板70の表面に積層構造の形で形成され,電極構造72の主な構造は,基板70と連結される第1の接着層721を含み,基板70の表面は,図6に示すような削光粗化構造,すなわち,この例では削光粗化層701を形成することができる。 [0104] 第1接着層721には,続いて形成される金属導電層723を補強するために,図示の第2接着層722のような別の接着層を形成してもよく,金属導電層723を形成する方法は上記の実施形態で説明した方法で形成してもよく,金属導電層723によって発生する反射を低減または回避するために,本実施形態では,金属導電層723の上に,電極構造72内に別の削光粗化層724を形成するとともに, 画面の色ずれの影響を低減するために,第1黒化層725を形成し,その上に,耐食性および黒化効果を高める機能を有する別の黒化層,例えば図示の第2黒化層726を形成することができる。 [0105] 本実施例の積層構造では,外周面が削光粗面化構造または黒化構造が形成されているため,基板70や金属導電層723からの反射を低減または回避しつつ,画面の色ずれを低減する効果がある。) 「 ![]() 」 (「[0116] 削光粗化層724は,電極構造72の表面粗さに影響を与えることができ,タッチパネル上に防眩処理膜を追加することなく,光の反射に抵抗し,フォトレジストやサーマルレジストの電極構造72の表面への密着性を高める機能を有しているため,細線のエッチングに影響を与えることなく,コストを低減することができる。 削光粗化層724の好ましい表面粗さの範囲はRa=0.001μm-0.2μmであり,最適な粗さはRa=0.02μm-0.1μmである。 反射光学ヘイズは2以下であることが望ましい。 [0117] 前記第1および/または第2の黒化層725/726の材料は,銅,銀,アルミニウム,モリブデン,ニッケル,クロム,タングステン,チタン,シリコン,亜鉛,スズ,または鉄,あるいはこれらの組み合わせであってもよい。 第1の黒化層725および/または第2の黒化層726の厚さは,好ましくは0.001μmから1μmの範囲であってもよく,第1の黒化層725および/または第2の黒化層726の反射率は,1%から50%の範囲であってもよく,好ましくは30%以下である。) 「 ![]() 」 「 ![]() 」 (2)ここで,引用文献1に記載されている事項を検討する。 ア 段落0071の記載から,引用文献1の「構造」は,「透明な基板と,その基板上の金属電極または導線を含み,一般的なタッチパネル」「に適用することができる」「構造」であると認められる。 イ 段落0101-0105及び図7Aには,「基板70」の上に「電極構造72」が形成されている「構造」が記載されている。 ここで,「電極構造72」は,「金属導電層723」,金属導電層723の上に形成された「削光粗化層724」,削光粗化層724の上に形成された「第1黒化層725」を含んでいると認められる。 ウ 段落0071,0076には,電極構造における「削光粗化層」を,金属導電層に表面処理を施すことにより形成してもよいことが記載されているから,「削光粗化層724」を,「金属導電層723」に表面処理を施すことにより形成してもよいことは明らかである。 また,段落0072の,「削光粗化層」の厚さが,「好ましくは50nm以上」である旨の記載を参酌すると,「削光粗化層724」が「金属導電層723」に表面処理を施すことにより形成される場合,「金属導電層723」の厚さが「50nm以上」であることは明らかである。 エ 段落0116には,「削光粗化層724」の最適な表面粗さRaが「Ra=0.02μm-0.1μm」の範囲である点が,段落0117には,「第1黒化層725」の厚さが,「好ましくは0.001μmから1μmの範囲」であり,反射率が,「1%から50%の範囲であってもよく,好ましくは30%以下である」点が記載されている。 (3) 以上から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 透明な基板と,その基板上の金属電極または導線を含み,タッチパネル装置に適用される構造であって, 基板70上に電極構造72が形成されており,この電極構造72は,金属導電層723と,金属導電層723の上に形成された削光粗化層724と,削光粗化層724の上に形成された第1黒化層725とを含み, 削光粗化層724は,金属導電層723に表面処理を施すことにより形成され, 金属導電層723の厚さは,50nm以上であり, 削光粗化層724の最適な表面粗さはRa=0.02μm-0.1μmの範囲であり, 第1黒化層725の厚さは,好ましくは50nm以上2μm以下であり,第1黒化層725の反射率は,1%から50%の範囲であってもよく,好ましくは30%以下である, 構造。」 2 引用文献2について (1) 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0050】 なお,光の反射率の平均とは,400nm以上700nm以下の範囲内で波長を変化させて測定を行った際の測定結果の平均値を意味している。測定の際,波長を変化させる幅は特に限定されないが,例えば,10nm毎に波長を変化させて上記波長範囲の光について測定を行うことが好ましく,1nm毎に波長を変化させて上記波長範囲の光について測定を行うことがより好ましい。」 3 引用文献3について (1) 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0128】 4.反射率(最低反射率,視感反射率) ディスプレイ用フィルタの裏面(電磁波シールド層形成面の裏面)に黒ビニールテープをハンドローラーを用いて貼り,分光光度計(U-4000 株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて,5°正反射率を測定することにより,低反射膜付き透明基材の反射率(最低反射率,視感反射率)を測定した。400nm?700nmの波長内の最も低い反射率を最低反射率とし,波長400?700nmの範囲における平均反射率を視感反射率とする。結果を表1に示す。」 4 引用文献4について (1) 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0075】 [銀反射層] 銀反射層16は,前記めっき下塗りポリマー層14上に設けられる層であり,入射される光を反射する機能を有する。銀,又は銀を含む合金は,フィルムミラーの可視光領域での反射率を高め,入射角による反射率の依存性を低減できる。可視光領域とは,400nm?700nmの波長領域を意味する。ここで,入射角とは膜面に対して垂直な線に対する角度を意味する。?」 5 引用文献5について (1) 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0039】 (平均反射率) 本反射フィルムは,測定波長400nm?700nmの平均反射率が80%以上であることが重要である。前記平均反射率が80%以上であることにより,フィルムの反射特性を担保することができる。かかる理由により,82%以上であることがさらに好ましく,84%以上であることが特に好ましい。前記平均反射率を80%以上とするためには,前記連続相(I)を形成する熱可塑性樹脂(A)の平均屈折率と前記分散相(II)を形成する熱可塑性樹脂(B)の平均屈折率との差の絶対値や,前記分散相(II)の分散径の制御により,達成可能である。」 「【0058】 (3)透過率,反射率の評価方法 透過率は,分光光度計((株)日立製作所製:U-4000)に積分球を取り付け,標準白色板として,アルミナ白板(日立計測器サービス社製,210-0740)を用いて,測定を行った。測定波長範囲は,300nmから800nmにて行い,測定波長400nmから700nmにおける透過率の平均値を算出した。また,反射率に関しても上記装置により,アルミナ白板(日立計測器サービス社製,210-0740)の反射率が100%となるよう,ベースライン補正を行った後,測定を行い,測定波長400nmから700nmにおける反射率の平均値を算出した。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明において「基板70」は「透明な基板」であるから,本願発明1の「透明基材」に相当する。 イ 引用発明の「電極構造72」における「金属導電層723」が,本願発明1の「金属層」に対応する。 そして,引用発明の「電極構造72」は「基板70」上に形成されており,引用文献1の図7Aを参照すると,「金属導電層723」が,「基板70」と対向する「表面」と,該表面と反対側に位置する「表面」を有することは明らかである。 すると,引用発明の「金属導電層723」と,本願発明1の「金属層」とは,「前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成され,前記透明基材と対向する第1の金属層表面と,前記第1の金属層表面と反対側に位置する第2の金属層表面とを有する金属層」である点で一致する。 ウ 引用発明の「電極構造72」における「第1黒化層725」が,本願発明1の「黒化層」に対応する。 そして,引用文献1の図7Aを参照すると,引用発明の「第1黒化層725」は,「削光粗面層724」上に形成されており,「基板70」と対向する「表面」と,該「表面」と反対側に位置する「表面」を有することは明らかである。 すると,引用発明の「第1黒化層725」と,本願発明1の「黒化層」とは,「前記第2の金属層表面上に形成され,前記透明基材と対向する第1の黒化層表面と,前記第1の黒化層表面と反対側に位置する第2の黒化層表面とを有する黒化層」である点で一致する。 エ 引用発明の「削光粗化層734」は,「金属導電層723に表面処理を施すことにより形成され」るから,「金属導電層723」の一表面が「削光粗化層734」であると認められ,ここで,「削光粗化層734」は,「基板70」と対向する「表面」と反対側に位置している。 すると,引用発明の「削光粗化層734」の「表面」は,本件発明1の「第2の金属層表面」に対応する。 そして,引用発明の「削光粗化層734」は,「最適な表面粗さはRa=0.02μm-0.1μmの範囲」であるから,本件発明1の「第2の金属層表面」と,「表面粗さRaが0.02μm以上0.1μm以下」である点で一致する。 オ 引用発明の「金属導電層723」の厚さは,「50nm以上であ」るから,本願発明1の「金属層」と,「厚さが50nm以上であ」る点で一致する。 カ 引用発明の「構造」は「基板70」の上に「金属導電層723」を含む「電極構造72」を有するものであるから,本願発明1の「導電性基板」に対応する。 キ したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「 透明基材と, 前記透明基材の少なくとも一方の面側に形成され,前記透明基材と対向する第1の金属層表面と,前記第1の金属層表面と反対側に位置する第2の金属層表面とを有する金属層と, 前記第2の金属層表面上に形成され,前記透明基材と対向する第1の黒化層表面と,前記第1の黒化層表面と反対側に位置する第2の黒化層表面とを有する黒化層とを備え, 前記金属層の前記第2の金属層表面の表面粗さRaが0.02μm以上0.1μm以下であり, 前記金属層の厚さが50nm以上である 導電性基板。」 (相違点) (相違点1)本願発明1は,「前記黒化層の前記第2の黒化層表面の表面粗さRaが0.016μm以上0.09μm以下」と特定されているのに対し,引用発明は,「第1黒化層725」の表面粗さRaについて特定されていない点。 (相違点2)本願発明1は,「導電製基板」が,「波長400nm以上700nm以下の光の反射率の平均が20%以下」と特定されているのに対し,引用発明は,「第1黒化層725の反射率は,1%から50%の範囲であってもよく,好ましくは30%以下」ではあるが,「構造」の反射率については特定されていない点。 (相違点3)本願発明1は,「前記黒化層の厚さが15nm以上70nm以下」と特定されているのに対し,引用発明は,「第1黒化層725の厚さは,好ましくは50nm以上2μm以下」である点。 (2)相違点についての判断 ア 相違点1について 引用文献1には,黒化層の第2の表面粗さRaをどの程度の範囲とするのかは,何ら記載されていない。 そして,引用文献2,3,5には,「400nm以上700nm以下」の波長で反射率の測定を行う点が,引用文献4には,可視光の波長領域が「400nm以上700nm以下」である点が,それぞれ記載されているが,黒化層の表面粗さRaをどの程度の範囲とするのかは記載されておらず,また,「前記黒化層の前記第2の黒化層表面の表面粗さRa」を「0.016μm以上0.09μm以下」とすることは,本願の優先日前において周知技術であるともいえない。 そして,本願発明1は,「前記黒化層の前記第2の黒化層表面の表面粗さRa」を「0.016μm以上0.09μm以下」とすることにより,「黒化層表面で光を乱反射させ,導電性基板の光の反射率を特に抑制する」とともに,「ディスプレイの視認性を低下させ」ないという効果を奏するものである(本願明細書【0055】)。 してみると,当業者であっても,引用発明及び周知技術(引用文献2-5)に基いて,本願発明1の相違点1に係る構成とすることは,容易に発明できたものであるとはいえない。 イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び周知技術(引用文献2-5)に基いて,容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2は,本願発明1のすべての構成要素を備えた発明であるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び周知技術(引用文献2-5)に基いて,容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定について 本願発明1,2は,上記「第6 対比・判断」の「1 本願発明1について」の「(1)対比」における相違点1に係る構成を有するものとなっており,拒絶査定において引用された引用文献1及び周知技術(引用文献2-5)に基いて,容易に発明できたものとはいえない。 したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-10-06 |
出願番号 | 特願2017-536730(P2017-536730) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 菅原 浩二 |
特許庁審判長 |
河本 充雄 |
特許庁審判官 |
小田 浩 ▲吉▼澤 雅博 |
発明の名称 | 導電性基板 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠彦 |