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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1378653 |
審判番号 | 不服2020-11726 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-08-24 |
確定日 | 2021-10-06 |
事件の表示 | 特願2019-3827「光制御フィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和1年6月13日出願公開,特開2019-91055〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続等の経緯 特願2019-3827号(以下「本件出願」という。)は,2012年(平成24年)5月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年5月25日 米国)を国際出願日とする特願2014-512090号の一部を,平成28年10月26日に新たな外国語書面出願(特願2016-209489号)とし,さらにその一部を,平成31年1月11日に新たな外国語書面出願としたものであって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。 平成31年 1月22日付け:手続補正書(1) 令和 2年 1月 9日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 4月 8日付け:意見書 令和 2年 4月 8日付け:手続補正書(2) 令和 2年 4月22日付け:補正の却下の決定 (当合議体注:手続補正書(2)による補正が却下された。) 令和 2年 4月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 2年 8月24日付け:審判請求書 令和 2年 8月24日付け:手続補正書(3) 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年8月24日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1) 本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の(平成31年1月22日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。 「 光制御フィルムであって、 第1の主表面及び反対側の第2の主表面と、 前記第1の主表面と前記第2の主表面との間に延在する光吸収材料と、 前記第1の主表面と前記第2の主表面との間に少なくとも部分的に延在する複数の光学的に絶縁された光透過性空洞と、を備え、 前記複数の空洞のそれぞれが、前記第1の主表面と一致する第1の開口と、前記第2の主表面に隣接する第2の開口と、前記第1の開口及び前記第2の開口の間に延在する少なくとも1つの側壁と、を備え、 更に、前記第2の開口及び前記第2の主表面が、0.1マイクロメートルを超えるランド厚さを有する前記光吸収材料によって分離され、 前記複数の光学的に絶縁された光透過性空洞のそれぞれが、前記第1の主表面に直交する視野平面と関連付けられる、前記第1の開口と前記第2の開口との間の深さD、第1の開口幅W1、及び第2の開口幅W2を有し、前記視野平面において、D/((W1+W2)/2)が、少なくとも1.25であり、D/((W1+W2)/2)が、8.25以下であり、 前記第1の主表面に平行な前記空洞のそれぞれの断面が、円形、楕円形、又は多角形を含み、 前記光吸収材料が、二官能性及び/又は多官能性モノマーと混合されたアクリル化ウレタンを含む硬化性樹脂を含む、光制御フィルム。」 (2) 本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。下線は,補正箇所を示す。 「 光制御フィルムであって、 第1の主表面及び反対側の第2の主表面と、 前記第1の主表面と前記第2の主表面との間に延在する光吸収材料と、 前記第1の主表面と前記第2の主表面との間に少なくとも部分的に延在する複数の光学的に絶縁された光透過性空洞であって、2つの隣接する光透過性空洞の中心点間の距離が15μm?50μmである光透過性空洞と、を備え、 前記複数の空洞のそれぞれが、前記第1の主表面と一致する第1の開口と、前記第2の主表面に隣接する第2の開口と、前記第1の開口及び前記第2の開口の間に延在する少なくとも1つの側壁と、を備え、 更に、前記第2の開口及び前記第2の主表面が、0.1マイクロメートルを超えるランド厚さを有する前記光吸収材料によって分離され、 前記複数の光学的に絶縁された光透過性空洞のそれぞれが、前記第1の主表面に直交する視野平面と関連付けられる、前記第1の開口と前記第2の開口との間の深さD、第1の開口幅W1、及び第2の開口幅W2を有し、前記視野平面において、D/((W1+W2)/2)が、少なくとも1.25であり、D/((W1+W2)/2)が、8.25以下であり、 前記第1の主表面に平行な前記空洞のそれぞれの断面が、円形又は楕円形であり、 前記光吸収材料が、二官能性及び/又は多官能性モノマーと混合されたアクリル化ウレタンを含む硬化性樹脂を含む、光制御フィルム。」 (3) 本件補正の内容 本件補正のうち,本件補正後の請求項1についてした補正は,本件補正前の請求項1に係る発明の,発明を特定するために必要な事項である,「複数の」「光透過性空洞」について,[A]「2つの隣接する光透過性空洞の中心点間の距離が15μm?50μmである」ものに限定するとともに,[B]「前記空洞のそれぞれの断面が、円形、楕円形、又は多角形を含み」とされていたものを,「前記空洞のそれぞれの断面が、円形又は楕円形であり」とされたものに限定することを含むものである。また,本件補正前の請求項2に係る発明と,本件補正後の請求項1に係る発明の,産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である(明細書の【0001】及び【0004】)。 そして,上記[A]の補正は,本件出願の願書に最初に添付したものとみなされた外国語書面の翻訳文の【0034】の記載に基づくものであり,上記[B]の補正が,当業者によって,同翻訳文のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであることは,明らかである。 そうしてみると,本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に適合するとともに,同条5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。 そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が,同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 2 独立特許要件についての判断 (1) 引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由において引用された特開2007-69603号公報(以下「引用文献2」という。)は,本件出願の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 ア 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は,金型転写により,基材表面をパターニングする方法,パターン形成用のシート,およびそれを用いて基材表面に微粒子を含む表面層が配列したパターンが形成されてなる光学機能性シートに関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年,光学分野,半導体分野などの各種分野で,微細構造を形成する技術の重要性が高まっている。 …省略… 【0006】 そこで,近年,微細構造を容易に賦形する技術として,インプリントリソグラフィーがChouらによって提唱されている(非特許文献1参照)。インプリントリソグラフィーとは,金型上のパターンを樹脂に転写する技術であり,熱式と光式の二種類の方式がある。前者の熱式とは,熱可塑性樹脂を,ガラス転移温度Tg以上融点Tm未満に加熱した後に,その熱可塑性樹脂の表面に凹凸形状のパターンを有する金型を押し付けることで,また,後者の光式とは,光硬化性樹脂に金型を押し付けた状態で,光を照射して硬化させることで,金型上のパターンを,それぞれの樹脂に転写する技術である。 …省略… 【0010】 しかし,これらの方法は,材料に制限を受けたり,非常に煩雑な工程を多数経由しなければならず,結果として生産性が低く工業的には困難である。また,光式のインプリントリソグラフィーを用いた場合には,光硬化性材料に機能材料を混合させることで,金型転写により機能材料をパターン状に配列することは可能であるが,使用できる樹脂が光硬化性材料のみであり,また混合可能な材料も光硬化性材料が感光する波長の光をよく透過するものであるという条件があるなど,用いる材料が制限を受ける。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 そこで,本発明の目的は,かかる従来技術の問題点を克服し,簡単で安価に基材上の機能材料をパターニングするための方法,パターン形成用シート,およびそれを用いて形成した光学機能性シートを提供せんとすることにある。 …省略… 【発明を実施するための最良の形態】 【0030】 本発明者らは,基材上に機能材料をパターン状に形成する方法,およびパターン形成用シートについて鋭意検討し,基材の片側または両側に形成された表面層に凹凸形状を有する金型を押し付けて,表面層を貫通させることよって上記課題を解決し,本発明に到達したものである。 …省略… 【0035】 ここで,本発明における「貫通」の定義を図2を用いて説明する。本発明における「貫通」とは,表面層11を金型凸部21の侵入部分で断裂させ,図2(a)?(c)のように基部4上にパターン5を形成することを示す。ただし,表面層11が金型凸部21の侵入部分で部分的,もしくは全体的に断裂せずに連結し,図2(d)?(f)のように基部4上でパターン5が連結していても,機能的には連結していなければ本発明における「貫通」と見なす。 …省略… 【0045】 金型の材質としては,ガラス,シリコン,ステンレス鋼(SUS),あるいはニッケル(Ni)など各種材料を利用でき,特に限定されるものではないが,金型の加工性の点から,シリコンやガラス,離形性と耐久性からはステンレス鋼(SUS),ニッケル(Ni)などの金属材質が好ましい。 …省略… 【0049】 ここで,本発明のパターン形成方法における積層体1とは,基材層12の表面に表面層11を積層させたものであり,表面層11は少なくとも微粒子を含むことを特徴とする。 【0050】 本発明のパターン形成方法における微粒子とは,マトリックスと非相溶のもののことをいう。その材質として,例えば,無機微粒子や有機微粒子,気泡などが挙げられる。 …省略… 【0068】 本発明のパターン形成方法における,積層体1の表面層11のマトリックスおよび基材層12の材質は,いずれも熱可塑性を有する樹脂を主たる成分として構成されることが好ましく,該主成分となり得る熱可塑性樹脂の好ましい具体例としては,ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレン-2,6-ナフタレート,ポリプロピレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂,ポリエチレン,ポリスチレン,ポリプロピレン,ポリイソブチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリイミド系樹脂,ポリエーテル系樹脂,ポリエステルアミド系樹脂,ポリエーテルエステル系樹脂,PMMAなどのアクリル系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリ塩化ビニル系樹脂,これらの共重合体および混合物などが挙げられる。 【0069】 これらの中で共重合するモノマー種の多様性,材料物性制御の容易性などの理由から,特に,ポリエステル系樹脂,ポリオレフィン系樹脂,ポリアミド系樹脂,アクリル系樹脂またはこれらの混合物が好ましい。上述の主成分たる熱可塑性樹脂は,表面層11のマトリックスにおいては全成分中1%以上,より好ましくは2%以上,また基材層12においては,全成分中の50重量%以上占めることが好ましい。また,上述の熱可塑性樹脂は,熱可塑性とともに光硬化性,熱硬化性を併せ持つことも好ましい。 【0070】 また,表面層11のマトリックスおよび基材層12は,主成分たる熱可塑性樹脂以外に,電磁波照射または熱により架橋して硬化する成分を添加することも好ましい。電磁波照射または熱により架橋させることで,形成したパターンまたは基材の機械的強度,熱的安定性を向上させることができる。 【0071】 また,本発明のパターン形成方法において,表面層11には,微粒子の他,染料,顔料,電磁波吸収体,導電材料,磁性材料,液晶材料,発光材料など各種機能性材料を添加してもよい。 …省略… 【0074】 また,基材層12としては,シート自体の機械的強度,耐熱性および取り扱いやすさ等を向上させるために,一軸または二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートなどの樹脂層(シート)を用いてもよい。 …省略… 【0079】 本発明のパターン形成方法は,図1に示すように,積層体1の表面に凹凸形状を有する金型2を押し付けて金型表面形状を転写するとともに,表面層11を貫通させるものである。図1のような平版金型をプレスする方法(平版プレス法)の他に,ロール状の金型を用いるロールtoロールの連続成形も好ましい方法である。ロールtoロール連続成形の場合,生産性の点で平版プレス法より優れている。 …省略… 【0093】 本発明のパターン形成方法により得られた成形品は,そのパターンを構成する材料を適宜選択することによって,ディスプレイ部材,半導体集積材料,意匠部材,光回路,光コネクタ部材,バイオチップなど各種用途に展開可能である。特に,基材層12として透光性基材を用いた場合,各種透光性を有する光学機能性を有するシートを形成することが可能である。その例として,(1)集光シート,(2)視野制御シート,などがあげられる。以下,これらの例の詳細を示す。」 ウ 「【0113】 (2)視野制御シート 本発明のパターン形成方法によって得られる光学機能性シート(2)は,拡散して広がった光のうち,所定角度範囲方向の光のみを選択的に透過し,その他の方向の光は吸収または散乱する視野制御機能を有することを特徴とする。 【0114】 本発明の光学機能性シート(2)は,光線透過性を有する基材層12上に微粒子13として光吸収性材料または光散乱性材料を用いて表面層11を形成した積層体に上述のパターン形成方法によって得ることができ,具体的な形状としては,図16のように基部240の上にパターン状に光吸収層または光散乱層250が形成されていることがあげられるなお,図16は,表面層11が金型凸部の侵入により断裂して,かつ基部240の上にパターン状に光吸収層または光散乱層250が形成されている場合の例を示しているが,これに限定されず,図17(a)?(f)に例示するような構造も好ましく用いられる。図17(a)?(c)は表面層11が金型凸部の侵入部分で破断した状態,図17(d)?(f)は表面層11が部分的,もしくは全体的に連結しているが,機能的に連結しない場合を示しており,またさらに,図17(a),(d)は,凸部全体が表面層を構成する材料で形成されている場合,図17(b),(e)は凸部の表層が表面層11で覆われている場合,図17(c),(f)はこれらの中間の状態の場合をそれぞれ示すものである。これら,図17(a)?(f)に示した構造は,表面層11の材質,厚さL,断面積S1,動的貯蔵弾性率E1’,基材層12の材質,動的貯蔵弾性率E2’金型凸部21の高さH,金型凹部の断面積S2,などを適宜変更することによってそれぞれ形成することができる。なお,本発明の光学機能性シート(2)における機能的に断続しないとは,図11(d)?(f)において,連結部分の膜厚の表面層11を持つ積層体を形成し,その透過率を測定したときに,透過率が50%以上であることを示す。 (当合議体注:文章のつながりからみて,「図11」は,「図17」の誤記である。) 【0115】 本発明の光学機能性シート(2)において,光吸収層または光散乱層250の好ましい形状としては,矩形(図16(a)参照),台形(図16(b)参照),三角形(図16(c)参照),これらが変形したもの(図16(d)?(g)参照),およびこれらの組み合わせ形状などが挙げられるが,これらに限定されることなく,形状を適宜選択することによって任意の視野制御特性を得ることができる。また,隣接するパターン間については,図16(a)?(f)のように平坦部が形成されている場合,または図16(g)のように平坦部が形成されることなく連続的に連結している場合のいずれでもよい。 【0116】 図18(a)?(h)は,それぞれ,本発明の光学機能性シート(2)をその膜面と平行に切断した場合の断面における,光吸収層または光散乱層250の配置を模式的に示す断面図である。図18(a)?(h)のように光吸収層または光散乱層250の形状が,線状,略三角形,略四角形,略六角形,円,楕円等から選ばれる形状を有していてもよい。図18(a)?(c)は光吸収層または光散乱層250がストライプ状である場合,図18(d)は光吸収層250または光散乱層の断面が円形状である場合,図18(e)は三角形状である場合,図18(f)?(g)は四角形状である場合,図18(h)は六角形状である場合を,それぞれ例示するものである。この光吸収層250は,図示した場合のように整列していてもよく,またランダムに配列していたり,異なる形状が混在していてもよい。また,図19(a)?(d)のように,光吸収層または光散乱層250の存在しない部分の形状が,略三角形,略四角形,略六角形,円,楕円等から選ばれる形状を有していてもよい。 【0117】 本発明の光学機能性シート(2)において,微粒子13は,光を吸収,もしくは散乱させる任意の微粒子を用いることができる。ここで,微粒子13として,可視光の全波長領域を吸収するものを用いた場合,斜め方向の光は吸収される結果,斜め方向から観察すると黒色となる視野制御シートとすることができ,また微粒子13として,可視光の全波長領域を散乱させるものを用いた場合は,斜め方向から観察すると白色となる視野制御シートとすることができる。 …省略… 【0119】 また,本発明の光学機能性シート(2)において,シート膜厚方向における凸部の高さH2’と,シート断面における膜面方向の凹部幅w22’との比率(H2’/w22’,アスペクト比)を変更することによって任意の視野制御特性を得ることができる。すなわち,アスペクト比(H2’/w22’)を低くすると視野角が広がり,高くすると視野角を狭くすることが可能となる。アスペクト比(H2’/w22’)の好ましい範囲としては1?10である。 【0120】 ここで,凹部幅w22’は,図16(a)に示したように,シート断面において,凸部と凹部とが交互に繰返し配列する方向での凸部間の長さである。なお,図18(a)?(c)のようにストライプ状パターンの場合や,図18(d)?(h)のように,光吸収層または光散乱層250が円形もしくは多角形状である場合は,光吸収層または光散乱層250間の最短距離を凹部の幅w22’とする。また,図19(a)のように,凹部が円形の場合はその直径が,楕円の場合はその短径が,図19(b)?(d)のように三角形・四角形などの多角形の場合はその内接円の直径が,凹部の幅w22’に相当する。なお,光吸収層または光散乱層250の幅w21’についても同様の定義とする。 【0121】 また,本発明の光学機能性シート(2)は,凹部の幅w22’が5?250μmであることが好ましい。この範囲とすることで,液晶ディスプレイ用途へ使用した場合に,目視でシート上の繰り返しパターンが確認されず,画素パターンとの干渉が生じないため好ましい。また,繰り返しパターンのピッチp2’(=w21’+w22’)は一定であってもよいし,規則的に変化しても,またランダムであってもよい。なお,凹部の幅w22’は,図16(b)等のようにその長さ単位が膜厚方向で異なる場合はその平均値でもって表す。 【0122】 また,本発明の光学機能性シート(2)の凸部の高さH2’は,十分な視野制御性を得るためのパターンの形成しやすさ(プロセス面),および薄型化への対応等を考慮した場合,10?500μmが好ましい。 …省略… 【0124】 本発明の光学機能性シート(2)は,拡散して広がった光のうち,所定角度範囲方向の光のみを選択的に透過し,その他の方向の光は吸収または散乱する視野制御機能を有することを特徴とし,本機能が求められる各種用途に使用することができるが,その例として,特に液晶表示装置や,キャッシュディスペンサーのタッチパネルなどの画像表示媒体の前面に設置することによって,他人からの機密情報ののぞき込みを防止できることがあげられる。 …省略… 【0142】 F.視野制御シートの特性評価方法: F-1視野角特性 携帯電話の液晶表示部分の最前面に光学機能性シート(2)を,パターンが観察者側になるように張り合わせた。画面の情報を法線方向から観察した後,徐々に観察方向を傾けていき,画面の情報が観察されなくなったときの方向と法線方向とのなす角度を求めた。 【0143】 正面方向からは画像情報が確認され,傾けたときに視野制御性が発現した場合:○, 正面方向から画像情報が確認されない場合:×, とした。」 エ 「【実施例】 【0144】 …省略… 【0164】 実施例4 表面層として,マトリックスとなる60℃で4時間静置乾燥させたシクロヘキサンジメタノール66mol%共重合PET(”Easter PET-G”GN-071:イーストマン(株)製)98重量部,および微粒子となるカーボンブラック(”UF-G5”:昭和電工(株)製,平均粒径3μm)2重量部を押出機内で280℃で溶融させ,また,基材層として,150℃で2時間真空乾燥させたシクロヘキサンジメタノール25%共重合PETを別の押出機内で280℃で溶融させて,所定の方法により溶融2層共押出口金からキャストドラム上に共押出して,表面層20μm,基材層480μmからなる総膜厚500μmの2層積層体を得た。 【0165】 得られた積層体,および金型(ストライプパターン(ピッチ60μm,幅w1=40μm,高さH=160μm,アスペクト比H/w1=4(図24(a)参照))の断面を走査型電子顕微鏡で観察し,得られた画像から,積層体の表面層11の膜厚L,断面積S1,金型凸部の高さH,金型凹部の幅w2,断面積S2を求めた。また,積層体の基材層と表面層の層間の剥離強度Fを前述の方法にて測定した。結果を表1,表2に示す。 また,表面層マトリックス,表面層,基材層それぞれについて,単膜とする他は同様の方法で単層シートを作製し,得られたシートについて,ガラス転移温度Tg1,Tg2,室温,及びTg1+30℃での動的貯蔵弾性率E1’,E2’,動的損失弾性率E1”を前述の方法にて測定した。結果を表2に示す。 【0166】 次に,得られた積層体,及び金型をともに110℃に加熱し,シート表面と金型の凹凸面を接触させて20MPaでプレスし,そのまま5分間保持した。その後90℃まで冷却後プレス圧力を解放し,50℃に冷却して金型から離型して樹脂成形品を得た。 【0167】 得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ,金型の形状が転写されているとともに,表面層が貫通しており,ピッチ60μm,幅20μm,深さ160μmのストライプパターン(成形品凸部:幅w21’=20μm,高さH2’=160μm(表面層高さh21’=80μm,土台部分高さh22’=80μm),短軸アスペクト比H2’/w21’=8(図24(b)参照))を形成できていることを確認した。 【0168】 得られたシートを,携帯電話の液晶表示部分に張り合わせて,法線方向から画面の情報を観察したところ,画面の情報がはっきりと確認された。次に,ストライプと垂直方向に観察方向を傾けていくと,法線方向から13°傾けたときに画面の情報が観察できなくなり,視野制御性を有することが確認された。 …省略… 【産業上の利用可能性】 【0181】 本発明のパターン形成方法(および,本発明のパターン形成用シートを用いてパターン形成する方法)によって得られる成形品は,ディスプレイ部材に好適に適用可能であるが,ディスプレイ部材の他にも回路材料,光学素子,半導体集積材料,バイオチップ,意匠部材など各種分野に適用可能である。」 オ 図1,図2,図16?図19及び図24 図1: 「 」 図2: 「 」 図16: 「 」 図17: 「 」 図18: 「 」 図19: 「 」 図24: 「 」 (2) 引用発明2 引用文献2の【0113】?【0124】には,図19(b)?(d)から看取される形状を具備した,「斜め方向から観察すると黒色となる視野制御シート」(【0117】)が記載されている。ここで,引用文献2の【0114】に記載の「上述のパターン形成方法」とは,【0079】に記載の方法のことである。 そうしてみると,引用文献2には,次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。 「 斜め方向から観察すると黒色となる視野制御シートであって, 光線透過性を有する基材層12上に微粒子13として光吸収性材料を用いて表面層11を形成した積層体の表面に凹凸形状を有する金型2を押し付けて金型表面形状を転写するとともに,表面層11を貫通させるパターン形成方法によって得ることができ,基部240の上にパターン状に光吸収層250が形成され, 光吸収層250の存在しない部分の形状が,略三角形,略四角形,略六角形,円,楕円等から選ばれる形状を有し, シート膜厚方向における凸部の高さH2’と,シート断面における膜面方向の凹部の幅w22’とのアスペクト比(H2’/w22’)を低くすると視野角が広がり,高くすると視野角を狭くすることが可能となり,アスペクト比(H2’/w22’)の好ましい範囲としては1?10であり,凹部の幅w22’が5?250μmの範囲とすることで,液晶ディスプレイ用途へ使用した場合に,目視でシート上の繰り返しパターンが確認されず,画素パターンとの干渉が生じないため好ましく,また,繰り返しパターンのピッチp2’は一定であってもよいし,規則的に変化しても,またランダムであってもよく, 所定角度範囲方向の光のみを選択的に透過し,その他の方向の光は吸収する視野制御機能を有することにより,特に液晶表示装置や,キャッシュディスペンサーのタッチパネルなどの画像表示媒体の前面に設置することによって,他人からの機密情報ののぞき込みを防止できる, 視野制御シート。」 (3) 対比 ア 光制御フィルム 引用発明の「視野制御シート」は,「基部240の上にパターン状に光吸収層250が形成され」,「所定角度範囲方向の光のみを選択的に透過し,その他の方向の光は吸収する視野制御機能を有することにより,特に液晶表示装置や,キャッシュディスペンサーのタッチパネルなどの画像表示媒体の前面に設置することによって,他人からの機密情報ののぞき込みを防止できる」ものである。 上記構成からみて,引用発明の「視野制御シート」は,光の角度で光の透過及び吸収を制御できるフィルム状のものといえる。また,引用発明の「光吸収層250」は,その文言が意味するとおり層状のものであるから,「上面」と,反対側の「下面」を有するものであり,「光吸収層250」は,この「上面」と「下面」との間に延在する,光を吸収する材料からなるものといえる。 そうしてみると,引用発明の「視野制御シート」,上記の「上面」,「下面」及び「光吸収層250」は,それぞれ本件補正後発明の「光制御フィルム」,「第1の主表面」,「第2の主表面」及び「光吸収材料」に相当する。また,引用発明の「視野制御シート」は,本件補正後発明の「光制御フィルム」における,「光制御フィルムであって」,「第1の主表面及び反対側の第2の主表面と」,「前記第1の主表面と前記第2の主表面との間に延在する光吸収材料と」,「を備え」という要件を満たす。 (当合議体注:本件補正後発明において,「第2の主表面」における「表面」という用語は,必ずしも表面のみならず界面を含む意味で用いられている。また,本件補正後発明において,「光吸収材料」という用語は,成形後の材料の意味(部材と同様の意味)で用いられている。) イ 光透過性空洞 引用発明の「視野制御シート」は,「基部240の上にパターン状に光吸収層250が形成され」,「光吸収層250の存在しない部分の形状が,略三角形,略四角形,略六角形,円,楕円等から選ばれる形状を有し」,「シート膜厚方向における凸部の高さH2’と,シート断面における膜面方向の凹部の幅w22’」を有する。 上記構成からみて,引用発明の「光吸収層250の存在しない部分」は,前記アで述べた「上面」と「下面」との間に延在する複数の光を透過する空洞ということができ,また,各「光吸収層250の存在しない部分」は,「光吸収層250」によって光学的に絶縁されるとともに,前記アで述べた「上面」と一致する面の「開口」と,「下面」側にある「底面」と,「開口」と「底面」の間に延在する「側面」とから形作られ,「凸部の高さH2’」及び「凹部の幅w22’」を具備するものといえる(当合議体注:図17及び図19からも理解できる事項である。)。さらに、引用発明の「視野制御シート」のうち、「光吸収層の存在しない部分」は、上記「下面」及び「底面」とが一致していない、すなわち、貫通していないことから、「上面」と「下面」との間において、部分的に延在する形状を呈するものである。 そうしてみると,引用発明の「光吸収層250の存在しない部分」は,本件補正後発明の「前記第1の主表面と前記第2の主表面との間に少なくとも部分的に延在する複数の光学的に絶縁された」とされる「光透過性空洞」に相当するとともに,引用発明の上記の「開口」,「底面」及び「側面」は,それぞれ本件補正後発明の「第1の開口」,「第2の開口」及び「側壁」に相当する。 また,引用発明の「光吸収層250の存在しない部分」と本件補正後発明の「光透過性空洞」は,「前記複数の空洞のそれぞれが,前記第1の主表面と一致する第1の開口と」,「第2の開口と,前記第1の開口及び前記第2の開口の間に延在する少なくとも1つの側壁と,を備え」る点で共通する。さらに,引用発明の「凸部の高さH2’」,(上記の「開口」における)「凹部の幅w22’」及び(上記の「底面」における)「凹部の幅w22’」は,それぞれ本件補正後発明の「前記第1の開口と前記第2の開口との間の深さD」,「第1の開口幅W1」及び「第2の開口幅W2」に相当する。加えて,引用発明の「光吸収層250の存在しない部分」は,本件補正後発明の「光透過性空洞」における,「前記複数の光学的に絶縁された光透過性空洞のそれぞれが,前記第1の主表面に直交する視野平面と関連付けられる,前記第1の開口と前記第2の開口との間の深さD,第1の開口幅W1,及び第2の開口幅W2を有し」という要件を満たす。そして,引用発明の「視野制御シート」は,本件補正後発明の「光制御フィルム」における「光透過性空洞」「を備え」という要件を満たす。 (4) 一致点及び相違点 ア 一致点 本件補正後発明と引用発明は,次の構成で一致する。 「 光制御フィルムであって, 第1の主表面及び反対側の第2の主表面と, 前記第1の主表面と前記第2の主表面との間に延在する光吸収材料と, 前記第1の主表面と前記第2の主表面との間に少なくとも部分的に延在する複数の光学的に絶縁された光透過性空洞と,を備え, 前記複数の空洞のそれぞれが,前記第1の主表面と一致する第1の開口と,第2の開口と,前記第1の開口及び前記第2の開口の間に延在する少なくとも1つの側壁と,を備え, 前記複数の光学的に絶縁された光透過性空洞のそれぞれが,前記第1の主表面に直交する視野平面と関連付けられる,前記第1の開口と前記第2の開口との間の深さD,第1の開口幅W1,及び第2の開口幅W2を有し, 光制御フィルム。」 イ 相違点 本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する。 (相違点1) 「光透過性空洞」が,本件補正後発明は,「2つの隣接する光透過性空洞の中心点間の距離が15μm?50μmである」のに対して,引用発明は,これが明らかでない(「凹部の幅w22’」は「5?250μmの範囲」だが,凸部の幅は特定されておらず,したがって,「2つの隣接する光透過性空洞の中心点間の距離」は,明らかでない)点。 (相違点2) 「第2の開口」が,本件補正後発明は,「前記第2の主表面に隣接する」ものであり,また,「光制御フィルム」が,本件補正後発明は,「前記第2の開口及び前記第2の主表面が,0.1マイクロメートルを超えるランド厚さを有する前記光吸収材料によって分離され」たものであるのに対して,引用発明は,「光線透過性を有する基材層12上に微粒子13として光吸収性材料を用いて表面層11を形成した積層体の表面に凹凸形状を有する金型2を押し付けて金型表面形状を転写するとともに,表面層11を貫通させるパターン形成方法によって得ることができ」るものである点。 (相違点3) 「光透過性空洞」が,本件補正後発明は,「前記視野平面において,D/((W1+W2)/2)が,少なくとも1.25であり,D/((W1+W2)/2)が,8.25以下であり」,「前記第1の主表面に平行な前記空洞のそれぞれの断面が,円形又は楕円形であり」という要件を満たすものであるのに対して,引用発明は,「アスペクト比(H2’/w22’)の好ましい範囲としては1?10であり」,「略三角形,略四角形,略六角形,円,楕円等から選ばれる形状」である点。 (相違点4) 「前記光吸収材料」が,本件補正後発明は,「二官能性及び/又は多官能性モノマーと混合されたアクリル化ウレタンを含む硬化性樹脂を含む」のに対して,引用発明は,材料が特定されたものではない点。 (5) 判断 ア 相違点1について 引用発明の「視野制御シート」は,「液晶ディスプレイ用途へ使用した場合に,目視でシート上の繰り返しパターンが確認されず,画素パターンとの干渉が生じない」ように設計されるべきである。また,本件優先日前においては,画素が300ppiを上回る液晶表示装置を具備した携帯電話も市販されている。 そうしてみると,引用発明において,「画素パターンとの干渉が生じない」ようにすることを意図した当業者が,「繰り返しパターンのピッチp2’」を,例えば、「15μm?50μm」程度にまで小さくすることは,引用発明の構成それ自体が示唆するものである。 (当合議体注:例えば,画素が326ppi(iPhone4(2010年6月発売):画素ピッチ78μm)の液晶表示装置との関係において,引用発明の「視野制御シート」の「繰り返しパターンのピッチp2’」を30μm程度とすることは,ピッチを画素ピッチの約数と異ならせればモアレ干渉縞がほぼ観察されなくなるという技術常識を心得た当業者における,単なる設計的事項にすぎない。) そうしてみると,引用発明において相違点1に係る本件補正後発明の構成を採用することは,本件優先日前の技術水準を前提とした当業者が設計する範囲内の事項である。 イ 相違点2について 引用発明でいう「貫通」に関して,引用文献2の【0035】には「本発明における「貫通」とは,表面層11を金型凸部21の侵入部分で断裂させ,図2(a)?(c)のように基部4上にパターン5を形成することを示す。ただし,表面層11が金型凸部21の侵入部分で部分的,もしくは全体的に断裂せずに連結し,図2(d)?(f)のように基部4上でパターン5が連結していても,機能的には連結していなければ本発明における「貫通」と見なす。」と記載され,【0113】には「本発明の光学機能性シート(2)における機能的に断続しないとは,図11(d)?(f)において,連結部分の膜厚の表面層11を持つ積層体を形成し,その透過率を測定したときに,透過率が50%以上であることを示す。」と記載されている。そして,引用文献2には,図17(d)のような態様も明示されているから,引用発明の「貫通」を,「凹部」に「表面層11」が0.1μmを僅かに超える程度の厚さで残るものとすることは,引用文献2の記載が明示的に許容する態様といえる。 そうしてみると,引用発明において相違点2に係る本件補正後発明の構成を採用することは,引用文献2の記載が示唆する範囲内の事項である。 ウ 相違点3について 引用発明の「視野制御シート」は,「シート膜厚方向における凸部の高さH2’と,シート断面における膜面方向の凹部の幅w22’とのアスペクト比(H2’/w22’)を低くすると視野角が広がり,高くすると視野角を狭くすることが可能となり,アスペクト比(H2’/w22’)の好ましい範囲としては1?10であ」る。 ここで,引用発明の「視野制御シート」において,例えば,比較的広い視野角が良いと考えた当業者ならば,「アスペクト比(H2’/w22’)」として「2」や「3」を選択すると考えられる。 また,引用発明の「視野制御シート」においては,「光吸収層250の存在しない部分の形状」として「円」が明示的に列挙されている(当業者ならば,このような態様を,図19(a)とともに把握できる。)。 そうしてみると,引用発明において相違点3に係る本件補正後発明の構成を採用することは,引用発明の構成が示唆する範囲内の事項である。 エ 相違点4について 引用文献2の【0070】には,「表面層11のマトリックスおよび基材層12は,主成分たる熱可塑性樹脂以外に,電磁波照射または熱により架橋して硬化する成分を添加することも好ましい。電磁波照射または熱により架橋させることで,形成したパターンまたは基材の機械的強度,熱的安定性を向上させることができる。」と記載されているところ,「電磁波照射または熱により架橋して硬化する成分」に該当するものとして,「二官能性及び/又は多官能性モノマーと混合されたアクリル化ウレタンを含む硬化性樹脂」は以下に示すとおり,周知である。 (ア) 特表2009-524080号公報(以下「周知例1」という。) 請求項1を引用して記載された請求項6に係る発明の,光コリメーティングフィルムの材料は,「ビスフェノール-Aエトキシル化ジアクリレート」(二官能性モノマー)及び「脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー」(アクリル化ウレタン)を含むものである。 (イ) 国際公開第2011/056475号(以下「周知例2」という。) 32頁のTABLE4には,「Photomer6010」及び「SR355」を含む樹脂材料が記載されている。そして,38頁9及び10行には,「SR355」が「ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート」(多官能性モノマー)であることが,同10行には「Photomer6010」が「脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー」(アクリル化ウレタン)であることが記載されている。 (ウ) 特開平1-101316号公報(以下「周知例3」という。) 請求項1には,「一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物」(二官能性モノマー)及び「一般式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物」(アクリル化ウレタン)をラジカル共重合させて得られた光学用材料が記載されている。(当合議体注:請求項1の「一般式(II)」との記載は、「一般式(2)」の誤記と認められる。)一般式(1)及び一般式(2)は以下のとおりである。 (エ) 特表2007-517929号公報(以下「周知例4」という。) 請求項1及び請求項2を引用して記載された請求項6に係る発明の,組成部は,「ヘキサンジオールジアクリレート」(二官能性モノマー)及び「脂肪族ウレタンジアクリレートオリゴマー」(アクリル化ウレタン)を含むものである。 (オ) 特開2010-67621号公報(以下「周知例5」という。) 【0153】【表5】に記載の実施例19?実施例21は,重合性不飽和単量体として「S-10」及び「S-12」を含むところ,【0143】には,「S-10」が「トリメチロールプロパントリアクリレート」(多官能性モノマー),「S-12」が「4官能ウレタンアクリレート」(アクリル化ウレタン)であることが記載されている。 周知例1?周知例5に開示された上記成分は,いずれも成形性に優れるものと理解されるから,引用発明において,周知技術を採用することは,当業者における通常の創意工夫の範囲を超えないものである。 そうしてみると,引用発明において相違点4に係る本件補正後発明の構成を採用することは,引用文献2が示唆する範囲内の事項である。 (6) 発明の効果について 本件出願の発明の詳細な説明には,発明の効果に関する明示的な記載は存在しない。ただし,本件出願の明細書の【0004】には,発明が解決しようとする課題として,「従来の並列溝付きフィルムは,一次元の光制御フィルムであり,即ち,それらはフィルムの左右(又は上下)に対してのみ光制御効果を有する。したがって,従来のフィルムの単一シートは,フィルムの左右及び上下を含むあらゆる方向に安全性を確保する利用者の要求を満たすことができない。」と記載されている。 仮に,本件補正後発明の効果が,この課題の裏返しのもの(フィルムの左右及び上下を含むあらゆる方向に安全性を確保する利用者の要求を満たすこと)と理解するならば,そのような効果は,引用発明も奏する効果である。 (7) 請求人の主張について 請求人は,審判請求書3.2.において,「引用文献2には,2つの隣接する凹部の中心点間距離については明示されておりません。」と主張する。 しかしながら,前記(5)アで述べたとおりである。 (8) 小括 本件補正後発明は,引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて,本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 3 補正の却下の決定のむすび 本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって,前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり,本件補正は却下されたので,本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,前記「第2」[理由]1(1)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,本願発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献2(特開2007-69603号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。 3 引用文献及び引用発明 引用文献2の記載及び引用発明は,前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。 4 対比及び判断 本願発明は,前記「第2」[理由]2で検討した本件補正後発明から,前記「第2」[理由]1(3)で述べた[A]?[B]の限定を除いたものである。また,本件補正後発明は,前記「第2」[理由]2(3)?(8)で述べたとおり,引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 そうしてみると,本願発明は,引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-04-23 |
結審通知日 | 2021-04-27 |
審決日 | 2021-05-18 |
出願番号 | 特願2019-3827(P2019-3827) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B) P 1 8・ 572- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉川 陽吾 |
特許庁審判長 |
里村 利光 |
特許庁審判官 |
河原 正 樋口 信宏 |
発明の名称 | 光制御フィルム |
代理人 | 浅村 敬一 |
代理人 | 赤澤 太朗 |
代理人 | 佃 誠玄 |
代理人 | 野村 和歌子 |