• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29B
管理番号 1378721
異議申立番号 異議2020-701016  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-25 
確定日 2021-08-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6716835号発明「ギアポンプの制御方法及びギアポンプの制御装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6716835号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3、5-7〕、4、〔8-10〕、11について訂正することを認める。 特許第6716835号の請求項1ないし4、8ないし11に係る特許を維持する。 特許第6716835号の請求項5ないし7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6716835号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成28年3月4日の出願であって、令和2年6月15日にその特許権の設定登録(請求項の数11)がされ、同年7月1日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月25日に特許異議申立人 星 正美(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし11)がされ、令和3年3月12日付けで取消理由が通知され、同年5月12日に特許権者 株式会社神戸製鋼所(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月21日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされたものである。なお、特許異議申立人からは、意見書の提出はなかった。

第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和3年5月12日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果または、前記電動機の負荷に基づいて、」と記載されているのを、「前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて、」に訂正する。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を変更する」と記載されているのを、「前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を変更するギアポンプの制御方法であって、
前記ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2および3についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記ギアポンプの空転が生じているとの判断の結果が得られた場合には、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行い、
前記ギアポンプの空転が生じていないとの判断の結果が得られた場合には、」と記載されているのを、「前記ギアポンプの空転が生じていないとの判断の結果が得られた場合には、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記コントローラが、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断する場合、前記ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のギアポンプの制御方法。」と記載されているのを、「混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラが、前記ギアポンプの回転数を制御するに際しては、
前記コントローラが、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断し、前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を変更するギアポンプの制御方法であって、
前記ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う
ことを特徴とするギアポンプの制御方法。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を制御する構成とされている」と記載されているのを、「前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を制御する構成とされており、「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」との判断が為された場合には、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う」に訂正する。
併せて、請求項8を直接又は間接的に引用する請求項9および10についても、請求項8を訂正したことに伴う訂正をする。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「前記ギアポンプの空転が生じているとの判断の結果が得られた場合には、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行い、
前記ギアポンプの空転が生じていないとの判断の結果が得られた場合には、」と記載されているのを、「前記ギアポンプの空転が生じていないとの判断の結果が得られた場合には、」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11に「前記コントローラは、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断する構成とされていることを特徴とする請求項8?10のいずれかに記載のギアポンプの制御装置。」と記載されているのを、「混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラと、前記ギアポンプの入側圧力の圧力Pinを計測する入側圧力センサと、前記ギアポンプの出側圧力の圧力Poutを計測する出側圧力センサと、を有するギアポンプの制御装置であって、
前記コントローラは、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断し、前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を制御する構成とされており、
前記コントローラは、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う
ことを特徴とするギアポンプの制御装置。」に訂正する。

2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)請求項1の訂正について
請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1における「コントローラ」を、「ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて」、ギアポンプが空転しているかどうかを判断するものに限定した上で、「ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項2の訂正について
請求項2は請求項1を引用していることから、請求項2についての訂正も、請求項1についての訂正と同様である。

(2)請求項3の訂正について
請求項3についての訂正は、請求項1において、「前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を下げる制御を行う」との限定がされたため、請求項1を引用する請求項3の「前記ギアポンプの空転が生じているとの判断の結果が得られた場合には、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行い」との記載を削除したものである。そうすると、請求項3についての訂正も、請求項1についての訂正と同様である。

(3)請求項4の訂正について
請求項4についての訂正は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1ないし3の記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項2及び3を引用するものを削除し、訂正前の請求項1のみを引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立請求項へ改めた上で、「コントローラ」を、「ギアポンプが空転している」と判断した場合に「ギアポンプの回転数を低くする制御を行う」ものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)請求項5ないし7の訂正ついて
訂正事項4ないし6は、訂正前の請求項5ないし7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)請求項8の訂正について
請求項8についての訂正は、訂正前の請求項8における「コントローラ」を、「前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を制御する構成とされており、「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」との判断が為された場合には、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)請求項9の訂正について
請求項9は請求項8を引用していることから、請求項9についての訂正も、請求項8についての訂正と同様である。

(7)請求項10の訂正について
請求項10についての訂正は、請求項8において、「前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を下げる制御を行う」との限定がされたため、請求項8を引用する請求項10の「前記ギアポンプの空転が生じているとの判断の結果が得られた場合には、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行い」との記載を削除したものである。そうすると、請求項10についての訂正も、請求項8についての訂正と同様である。

(8)請求項11の訂正について
請求項11についての訂正は、訂正前の請求項11の記載が訂正前の請求項8ないし10の記載を引用する記載であったものを、訂正前の請求項9及び10を引用するものを削除し、訂正前の請求項8のみを引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、請求項8の記載を引用しないものとし、独立請求項へ改めた上で、「コントローラ」を、「ギアポンプが空転している」と判断した場合に「ギアポンプの回転数を低くする制御を行う」ものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)別の訂正単位とする求めについて
特許権者は、訂正後の請求項1?5及び8?11については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

3 むすび
以上のとおり、請求項1ないし11についての訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、請求項1ないし11についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項2ないし7は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし7は一群の請求項に該当するものである。そして、請求項1ないし7についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。訂正前の請求項9ないし11は訂正前の請求項8を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項8ないし11は一群の請求項に該当するものである。そして、請求項8ないし11についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし11に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3、5-7〕、4、〔8-10〕、11について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-3、5-7〕、4、〔8-10〕、11について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、令和3年5月12日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラが、前記ギアポンプの回転数を制御するに際しては、
前記コントローラが、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断し、前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を変更するギアポンプの制御方法であって、
前記ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う
ことを特徴とするギアポンプの制御方法。
【請求項2】
前記ギアポンプの入側の圧力Pinを計測しておき、前記計測されたギアポンプ入側の圧力Pinが目標の圧力設定値P0よりも高くなった場合に、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断することを特徴とする請求項1に記載のギアポンプの制御方法。
【請求項3】
前記ギアポンプの空転が生じていないとの判断の結果が得られた場合には、前記ギアポンプの回転数を高くすることを特徴とする請求項1又は2に記載のギアポンプの制御方法。
【請求項4】
混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラが、前記ギアポンプの回転数を制御するに際しては、
前記コントローラが、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断し、前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を変更するギアポンプの制御方法であって、
前記ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う
ことを特徴とするギアポンプの制御方法。
【数1】

【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラと、前記ギアポンプの入側圧力の圧力Pinを計測する入側圧力センサと、前記ギアポンプの出側圧力の圧力Poutを計測する出側圧力センサと、を有するギアポンプの制御装置であって、
前記コントローラは、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断し、前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を制御する構成とされており、
「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」との判断が為された場合には、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う
ことを特徴とするギアポンプの制御装置。
【請求項9】
前記計測されたギアポンプ入側の圧力Pinが目標の圧力設定値P0よりも高くなった場合に、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断する構成とされている
ことを特徴とする請求項8に記載のギアポンプの制御装置。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記ギアポンプの空転が生じていないとの判断の結果が得られた場合には、前記ギアポンプの回転数を高くする構成とされている
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のギアポンプの制御装置。
【請求項11】
混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラと、前記ギアポンプの入側圧力の圧力Pinを計測する入側圧力センサと、前記ギアポンプの出側圧力の圧力Poutを計測する出側圧力センサと、を有するギアポンプの制御装置であって、
前記コントローラは、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断し、前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を制御する構成とされており、
前記コントローラは、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う
ことを特徴とするギアポンプの制御装置。
【数3】



第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和2年12月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし4号証に記載された発明に基いてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
なお、申立理由2の具体的理由の概略は次のとおり。
・申立理由2-1
本件特許発明1、6ないし8には、「入側の圧力Pin」が「入側圧力設定値P_(0)」よりも低い場合にも、「入側の圧力Pin」と「出側の圧力Pout」との比較結果に基づく判断が行われる構成が含まれるから、課題を解決できないものも含むものである。
・申立理由2-2
本件特許発明1ないし3、9及び10には、「入側の圧力Pin」と「出側の圧力Pout」との比較結果、又は電動機の負荷がどのような場合に、ギアポンプが空転していると判断するかについての特定がないことから、課題を解決できないものも含むものである。
・申立理由2-3
本件特許発明1には、空転が生じていると判断した場合に、回転数を高くする制御も含まれるから、課題を解決できないものも含むものである。
・申立理由2-4
本件特許明細書の【0050】ないし【0055】には、kは10以上の数となるはずであるところ、本件特許発明4、5、11には「kは1以上の数」と特定されており、「k」を本件特許発明4、5、11の範囲にまで拡張一般化できない。

(3)証拠方法
甲第1号証:特開2006-214410号公報
甲第2号証:特開平5-10273号公報
甲第3号証:特開平6-328546号公報
甲第4号証:シールレスポンプSLシリーズのカタログ、エレポン化工機株式会社、2012年11月1日
以下、順に「甲1」のようにいう。なお、甲号証の表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。

2 取消理由の概要
令和3年3月12日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし3、6、7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1、2、4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、6、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

第5 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(甲1を主引用文献とする進歩性)について
(1)証拠に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。以下同様。
・「【請求項1】
ギアポンプ(7)の入口側の吸入圧力値及び出口側の吐出圧力値を用いて前記ギアポンプ(7)のギアポンプ用モータ(9)の回転数を制御するようにしたギアポンプの制御方法において、
前記ギアポンプ(7)に対して適正とされる予め予測された予測ギアポンプ回転数(Nc)と現在運転されている運転ギアポンプ回転数とを比較し、前記比較の結果に基づいて異常と判断された場合、アラーム発生又は前記ギアポンプ(7)の停止を行うことを特徴とするギアポンプの制御方法。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、ギアポンプの制御方法に関し、特に、適正とされる予測ギアポンプ回転数と現在の運転ギアポンプ回転数の比較を行い、その結果によって異常を判断しギアポンプの安全を確保するための新規な改良に関する。
【0002】
従来、合成樹脂原料を混練溶融し押出すためのスクリュ式混練機を主要機器とする押出装置において、高粘度の溶融合成樹脂原料に対し、スクリュ式混練機の先端すなわち下流側にギアポンプを配置し、押出装置の押出機能を強化することが行われている。このように使用されるギアポンプは、所定の押出機能を発揮するために、回転数による制御が行われている。」
・「【0010】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、特に、適正とされる予測ギアポンプ回転数と現在運転されている運転ギアポンプ回転数とを比較し、その比較結果によって異常と判断された時にアラームを発生することにより、回転数が暴走せず、損傷することのないギアポンプの制御方法を提供することを目的とする。」
・「【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明によるギアポンプの制御方法の好適な実施の形態について説明する。図1は、本発明によるスクリュ式混練機を主要機器とする押出装置におけるギアポンプの制御方法を示す概念的な説明図である。尚、図2おける従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。図1において、符号1で示されるものは押出装置であり、この押出装置1はスクリュ式混練機4を中心として、スクリュ式混練機4に回転可能に内挿された図示しないスクリュを回転駆動するための混練機用減速機5および可変回転数の混練機用モータ6がスクリュ式混練機4の後端すなわち上流側に連結され、スクリュ式混練機4の先端すなわち下流側には、ギアポンプ7、濾過装置10および造粒装置11が順次連結されている。このスクリュ式混練機4の上流部に、定量供給装置(フィーダ)3を介して原料貯留槽2が連結され、このギアポンプ7には、内蔵された図示しないギアを回転駆動するためのギアポンプ用減速機8および可変回転数のギアポンプ用モータ9が連結されている。
【0015】
前記ギアポンプ7の上流側(入口側)すなわち吸入側には吸入圧力値を検出するための吸入圧力計測器12が、下流側(出口側)すなわち吐出側には吐出圧力値を検出するための吐出圧力計測器13が、それぞれ設けられている。この吸入圧力計測器12は圧力制御装置14および制御装置15へ圧力信号Pを伝達するように接続されている。前記吐出圧力計測器13は制御装置15へ圧力信号Pを伝達するように接続されている。この圧力制御装置14はギアポンプ用モータ9へ演算後の回転数制御信号を入力するように接続されている。前記定量供給装置3は制御装置15へ供給量信号Qを入力するように接続されている。前記制御装置15には、吸入圧力計測器12および吐出圧力計測器13の圧力値に対するアラーム値および停止値が設定され、ギアポンプ用モータ9の回転数に対するアラーム値および停止値が設定されている。
【0016】
次に動作について説明する。まず、スクリュ式混練機4、ギアポンプ7および濾過装置10の運転起動条件が整った状態で、混練機用モータ6を起動し、混練機用減速機5を介してスクリュ式混練機4のスクリュを回転駆動すると共に、定量供給装置3を起動し、原料貯留槽2に貯留されている合成樹脂原料をスクリュ式混練機4のシリンダ内へ供給する。また、順次、ギアポンプ用モータ9を起動し、ギアポンプ用減速機8を介してギアポンプ7のギアを回転駆動し、造粒装置11の運転を開始する。
【0017】
起動後の押出装置1は、初期の調整運転後の連続運転において、原料貯留槽2内の合成樹脂原料が定量供給装置3を介してスクリュ式混練機4へ定量的に継続して供給される。スクリュ式混練機4において、合成樹脂原料は回転駆動されるスクリュにより混練溶融されながら下流方向へ輸送され、所定の混練状態に溶融された合成樹脂原料が先端からギアポンプ7へ供給される。前記ギアポンプ7から押出された合成樹脂原料は、濾過装置10において不純物が濾過され、造粒装置11へ供給されて造粒される。
【0018】
以上のような連続運転において、ギアポンプ7の吸入側において、溶融合成樹脂原料の吸入圧力が吸入圧力計測器12により計測され、圧力値が圧力制御装置14および制御装置15へ入力される。また、ギアポンプ7の吐出側において、溶融合成樹脂原料の吐出圧力が吐出圧力計測器13により計測され、圧力値が制御装置15へ入力される。尚、定常運転される連続運転中における予想外の運転状態の変化あるいは計画的な運転条件、例えば処理量の変化に対して、ギアポンプ7は、吸入圧力すなわち吸入圧力計測器12の計測値が必要に応じて許容範囲を設けた設定値を維持するように制御される。
【0019】
前記吸入圧力計測器12の圧力値が設定値よりも高くなった場合、ギアポンプ7の上流側において合成樹脂原料の滞留量が増加したことを示しており、ギアポンプ7の処理能力を大きくして吸入側の合成樹脂原料の吸入量を増加させることにより滞留量を減少させて吸入圧力を下げる。そのために、吸入圧力計測器12の圧力値に基いて圧力制御装置14において演算し、必要な回転数の上昇値をギアポンプ用モータ9へ入力し、ギアポンプ7の回転数を上昇させる。回転数の上昇したギアポンプ7はより大きな処理能力で吸入し、滞留量が減少し、その結果、吸入圧力が下がる。
【0020】
同様にして、前記吸入圧力計測器12の圧力値が設定値よりも低くなった場合、ギアポンプ7の上流側において合成樹脂原料の滞留量が必要量以下に減少したことを示しており、ギアポンプ7の処理能力を小さくして吸入側の合成樹脂原料の吸入量を減少させることにより滞留量を増加させて吸入圧力を上げる。そのために、吸入圧力計測器12の計測値に基いて圧力制御装置14において演算し、必要な回転数の下降値をギアポンプ用モータ9へ指示し、ギアポンプ7の回転数を下降させる。回転数の下降したギアポンプ7はより小さな処理能力で吸入し、滞留量が増加し、その結果、吸入圧力が上がる。以上の動作は従来と同様である。
【0021】
前記ギアポンプ用モータ9の回転数信号は常時制御装置15へ入力され、本発明では、前述の制御に加えて、次の回転数制御を適用するものである。すなわち、ギアポンプ7に対して適正とされる予め予測された予測ギアポンプ回転数と現在運転されている運転ギアポンプ回転数とを比較し、前記比較の結果に基づいて異常と判断された場合、アラーム発生又は前記ギアポンプ7の停止を行うことによって、ギアポンプ7の損傷等を未然に防止することができる。
【0022】
前述の適正とされる予め予測されたギアポンプ7の予測ギアポンプ回転数は、次の(1)式で予め得られる。
Nc=Q/(60ηVD)・・・(1)
Q:樹脂供給量(フィーダより与えられる値)Kg/h
Nc:予測ギアポンプ回転数
V:ギアポンプが1回転することにより送ることが出来る樹脂体積m^(3)/回転
D:樹脂の比重Kg/m^(3)
η:送り効率
Ncと実測値Nr(すなわち前述の現在運転されている運転ギアポンプ回転数)を次式(2)、(3)により比較する。
Nr/Nc>H・・・・(2)
Nr/Nc>HH・・・(3)
HおよびHHの値はあらかじめ決められた任意の値であり、ギアポンプの安全率を考慮して決定される。
ここで
H>1
HH>H
であり、(2)の場合警告、(3)の場合ギアポンプ7の停止とする。
ただし、樹脂供給量の振れ、樹脂供給量を変更した時の吸入圧制御の応答性、プロセス上の運転性も考慮し、ある一定以上の時間その状況が継続されたとき、警告、停止を行うようにすることもできる。
もしくは、Nr/Nc>Hの状態を、T時間継続した時、警告、TT時間継続した時、停止する制御を行うこともできる。」
・「【図1】



(イ)甲1に記載された発明
甲1に記載された事項、特に請求項1の記載事項を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「スクリュ式混練機(4)の下流側に設けられて、当該スクリュ式混練機で混練された合成樹脂原料を下流側に送るギアポンプ(7)に対して、前記ギアポンプ(7)を駆動させるギアポンプ用モータ(9)を制御する制御装置(15)が、ギアポンプ(7)の入口側の吸入圧力値及び出口側の吐出圧力値を用いて前記ギアポンプ(7)のギアポンプ用モータ(9)の回転数を制御するようにしたギアポンプの制御方法において、
前記制御装置(15)が、前記ギアポンプ(7)の回転数を制御するに際しては、
前記ギアポンプ(7)に対して適正とされる予め予測された予測ギアポンプ回転数(Nc)と現在運転されている運転ギアポンプ回転数とを比較し、前記比較の結果に基づいて異常と判断された場合、前記ギアポンプ(7)の停止を行うギアポンプの制御方法。」

イ 甲2に記載された事項
甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項1】 ポンプと該ポンプを駆動する直流モータを具備するポンプ装置に、
ポンプ又はモータの回転速度を検出する速度検出部と、
予めポンプの上限回転速度及び下限回転速度を設定した設定部と、
前記速度検出部からの回転速度信号と前記設定部の上限回転速度及び下限回転速度とを比較し、ポンプ又はモータの回転速度が該上限回転速度を越えた場合又は下限回転速度を下回った場合、前記ポンプを停止するポンプ停止信号を出力する処理部を設け、該ポンプ停止信号で前記モータを停止することを特徴とするポンプ装置の軽負荷及び過負荷運転防止装置。」
・「【請求項6】 前記ポンプが遠心ポンプ又は渦流ポンプ又はギアポンプであることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5記載のポンプ装置の軽負荷及び過負荷運転防止装置。」
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポンプを駆動するモータに直流モータを使用するポンプ装置の空運転等の軽負荷及び異物混入等の過負荷状態での運転を防止するポンプ装置の軽負荷及び過負荷運転防止装置に関するものである。」
・「【0006】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、上記問題点を除去し、ポンプの空運転等の軽負荷状態及び異物混入等の過負荷状態を確実に検知し、ポンプ(モータ)を停止することができるポンプ装置の軽負荷及び過負荷運転防止装置を提供することを目的とする。」
・「【0014】
【作用】直流モータのトルク(負荷)-回転数特性は、トルクが増大又は減少すると、回転数は低下する。この傾向は誘導電動機でも同様の傾向にあるが、直流モータの場合はその変化量が誘導電動機に比べて大きい。図3に直流モータのトルクTと回転速度(回転数Nrpm)を示す。直流モータでポンプを駆動すると、ポンプ負荷(トルク)変化と共に、モータ回転数が変化する。即ち、トルクが大きい程回転速度は低下し、トルクが小さくなるに従って回転速度は上昇し、ポンプが空運転状態となった時がポンプ負荷は一番小さくなり、モータ回転速度は図4に示すように一番速くなる。従って、ポンプ吐出弁締切状態から全開状態における回転数及び空運転時の回転速度を事前に測定しておき、空運転時の回転速度以下でポンプ運転点以上の任意の回転速度を上限回転速度として設定し、下限回転速度をポンプ吐出弁締切運転点を含む運転可能な最小流量点から運転可能な最大流量点までの範囲の最低回転速度に設定すれば、ポンプのキャビテーション発生運転、空気混入運転又は空運転の軽負荷運転及び液比重の増大や異物混入かみ込み等の過負荷運転を防止できる。
【0015】
【実施例】以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明のポンプ装置の軽負荷及び過負荷運転防止装置の構成を示す図である。図示するように、交流電源11からの交流を全波整理回路12及び平滑用コンデンサ13等を介して直流に変換し、該直流をパワートランジスタ14でオンオフしてパルスとし、該パルスをコイル15a及びコンデンサ15bから成る平滑回路15により再び直流に変換し、パルスのデューティ比(パワートランジスタ14のオン時間とオフ時間の比)に比例した電圧をブラシ付の直流モータM1に供給する。これにより直流モータM1は供給電圧に応じた回転数で回転し、図示しないポンプを駆動する。前記パワートランジスタ14のオンオフはベース駆動回路部20が出力電圧制御部19から出力されるオンオフ制御信号を受けて行う。
【0016】直流モータM1の回転速度は回転速度検出部16で検出され、該回転速度検出部16の出力は処理部18に出力される。また、該処理部18には設定部17の出力が入力されている。該設定部17には予めポンプの上限回転速度及び下限回転速度が設定されており、処理部18は回転速度検出部16で検出された検出回転速度と設定部17に設定された上限回転速度及び下限回転速度とを比較し、該検出回転速度が上限回転速度を越えた場合又は下限回転速度を下回った場合、出力電圧制御部19にモータ停止信号を出力する。出力電圧制御部19はこのモータ停止信号を受けてパワートランジスタ14をオフするオフ信号をベース駆動回路部20に出力する。ベース駆動回路部20はこのオフ信号を受けて、パワートランジスタ14をオフし、モータM1は停止する。
【0017】図3はモータ回転数(回転速度)N(rpm)とトルクT(kg,cm)の関係を示す図で、図4はポンプ流量Q(リットル/min)と全揚程度H(m)と回転数(回転速度)N(rpm)の関係を示す図である。
【0018】図3に示すように、直流モータM1でポンプを駆動すると、ポンプ負荷(トルクT)変化と共に、モータ回転数Nが変化する。即ち、トルクTが大きい程回転速度は低下し、トルクTが小さくなるに従って回転速度は上昇し、ポンプが空運転状態となった時がポンプ負荷は一番小さくなり、モータ回転速度Nは図4に示すように一番速くなる。従って、ポンプ吐出弁締切状態から全開状態における回転数及び空運転時の回転速度を事前に測定しておき、空運転時の回転速度以下でポンプ運転点以上の任意の回転速度を上限回転速度として設定し、ポンプ最低回転速度を下限回転速度として設定すれば、空運転等の軽負荷状態での運転や液比重の増大や異物混入かみ込み等の過負荷状態での運転を防止することができる。」
・「【0025】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ポンプの回転速度を検出してポンプ空運転等を軽負荷運転或いは液比重増大等の過負荷運転を確実に検出するから、ポンプの軽負荷運転及び過負荷運転を確実に防止できる。特に、ポンプが羽根車を回転させるロータに永久磁石を設けると共にモータ側に設けた該永久磁石と磁気的に結合する磁石を設け磁気的結合でモータ回転力をポンプに伝達する型式のポンプにおいては、軽負荷時のポンプ液中軸受の破損防止及び空運転時の軸受摺動発熱によるプラスチック製ケーシング類の溶融といった決定的なトラブルを防止できるという優れた効果が得られる。」
・「【図3】


・「【図4】



ウ 甲4に記載された事項
甲4には、次の事項が記載されている。
・「



(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「スクリュ式混練機(4)」は、本件特許発明1における「混練設備」に相当し、以下同様に、「合成樹脂原料」は「材料」に、「ギアポンプ用モータ(9)」は「電動機」に、「制御装置(15)」は「コントローラ」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラが、前記ギアポンプの回転数を制御するギアポンプの制御方法。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
ギアポンプの状態を判断するに点に関して、本件特許発明1においては、「コントローラが、ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断」しているものであって、「ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」の関係を満足するときに、「前記ギアポンプが空転していると判断」すると特定されるのに対し、甲1発明においては、「ギアポンプ(7)に対して適正とされる予め予測された予測ギアポンプ回転数(Nc)と現在運転されている運転ギアポンプ回転数とを比較し、前記比較の結果に基づいて異常と判断」しているものである点。
<相違点2>
ギアポンプの状態を判断した後のギアポンプの回転数の制御に関して、本件特許発明1においては、「ギアポンプの回転数を低くする制御を行う」と特定されるのに対し、甲1発明においては、「ギアポンプ(7)の停止を行う」ものである点。

(イ)判断
以下、相違点について検討する。
<相違点1について>
ギアポンプの制御方法において、ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラが、入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが入側の圧力Pin≧出側の圧力Poutの関係を満足するときに、ギアポンプが空転していると判断する構成については、甲1に記載はなく、甲1発明のギアポンプの制御方法を上記構成にする動機付けとなる記載もない。
また、他の甲号証にも、上記構成の記載がない。
したがって、甲1発明のギアポンプの制御方法を上記構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)むすび
したがって、本件特許発明1ないし3に関して、甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。また、本件特許発明6及び7は、本件訂正により削除されている。
よって、本件特許の請求項1ないし3、6及び7に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。

2 取消理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
上記第3のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、混練設備に設けられたギアポンプの制御方法及びギアポンプの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、連続混練機や押出機などの混練設備は、水平方向に沿って長尺に形成された筒状のバレルと、このバレルの内部に挿入されて材料を混練する混練ロータとを備えている。このような混練設備では、バレル内に供給された材料が混練ロータによって混練され、混練設備の最も下流側に位置する排出部から排出される。排出部から排出された材料はスクリーンチェンジャに送られ、スクリーンチェンジャで異物が除去される。
【0003】
このスクリーンチェンジャは目が細かいメッシュを重ね合わせた構造となっており、溶融樹脂をメッシュに通過させることで異物を除去する構成となっている。また、このメッシュを通過させるためには溶融樹脂の圧力を上昇させる必要がある。そのため、特許文献1や特許文献2に示される混練設備では、スクリーンチェンジャの上流側に、溶融樹脂の圧力を高めるギアポンプが配備されている。
【0004】
なお、このギアポンプは、スクリーンチェンジャを通過させる為に材料を昇圧させる機能だけでなく、混練度を調整する為に材料を滞留させる機能も備えている。
つまり、混練機の下流での混練度は、混練機の下流側に溶融樹脂がどの程度滞留しているかに影響を受け、例えば混練機の下流側における材料の充満率が高いほど材料の混練度も高くなる。そして、この混練機の下流側での材料の充満率は、ギアポンプの上流側の圧力が高いほど高くなる。つまり、混練度はギアポンプの回転数によって変化する。
【0005】
そのため、従来の混練設備では、ギアポンプの入側の圧力を計測し、計測された圧力が所望の混練度に見合った圧力となるように、ギアポンプの回転数をPID制御器などを用いて調整している。例えば、計測されたギアポンプの入側の圧力が設定値より高いときには、入側での材料の充満率が高すぎるためであると考えられるので、ギアポンプの回転数を上げ、ギアポンプの出側に送られる樹脂の量を増やす。そうすると、ギアポンプの入側における材料の充満率が低下し、ギアポンプの入側の圧力を下げることができる。このように従来の混練設備では、ギアポンプの回転数を変化させることで、ギアポンプの入側の圧力を所望の圧力に調整していた。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1や特許文献2のギアポンプでは、ギアポンプの入側の圧力が設定値より高いときに、ギアポンプの回転数を上げる操作を行うが、このような操作を行っても圧力が下げられない場合がある。 例えば、ギアポンプの回転数を上げても、出側での吐出量がかえって低下してしまうことがある。このような場合は、回転数をいくら上げても出側での吐出量が一向に増加せず、ギアポンプの上流側から下流側に材料は全く移動しない。一方で、材料は混練設備側から連続して送られてくるため、ギアポンプの入側の圧力はさらに高くなる。その結果、ギアポンプの回転数をさらに上げるといった制御が働くといった悪循環が生じ、最終的には制御が発散して停止する。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、ギアポンプの空転を検知して、ギアポンプを安定して稼働可能とするギアポンプの制御方法及びギアポンプの制御装置を提供することを目的とする。」
・「【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明のギアポンプ1の制御方法及びギアポンプ1の制御装置(ギアポンプの制御機構17)の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
…(中略)…
【0031】
このように従来の混練設備では、ギアポンプ1の入側の圧力P_(in)'を予め設定した設定値(入側圧力設定値P_(0)')に維持するように、ギアポンプ1の回転数を制御している。
ところが、従来のギアポンプ1では、ギアポンプ1の入側の圧力が設定値より高いときに、ギアポンプ1の回転数を上げる操作を行うのであるが、このような操作を行っても圧力が下がらない場合がある。
【0032】
すなわち、回転数をいくら上げても出側での吐出量が一向に増加せず、ギアポンプ1の上流側から下流側に材料は全く移動しなくなる。一方で、材料は混練設備側から連続して送られてくるため、ギアポンプ1の入側の圧力はさらに高くなる。その結果、回転数を上げたにも拘わらず入側の圧力がさらに高くなって、ギアポンプ1の回転数をさらに上げる制御が働くといった悪循環が生じ、最終的には制御が発散して停止する。
【0033】
このように回転数をいくら上げてもギアポンプ1の上流側から下流側に材料は全く移動しないという問題が発生する理由に対し、本発明者らは鋭意研究を行った。その結果、「ギアポンプの空転」が、ギアポンプ内で材料が移動しない原因となっていることがわかってきた。
…(中略)…
【0038】
なお、ギアポンプ1の空転は上述したようにギアポンプ1の内部で起こっている現象に関係するものであるが、ギアポンプ1の入側と出側との圧力差や、ギアポンプ1を駆動する電動機11に加わる負荷を用いて、ギアポンプ1の空転の有無を判断することができる。
そのため、本発明のギアポンプ1の制御方法では、通常のギアポンプ1の制御を行うと共に、ギアポンプ1の入側と出側との圧力差や、ギアポンプ1を駆動する電動機11に加わる負荷を用いて、ギアポンプ1の空転状態を加味したギアポンプ1の制御を行っている。
【0039】
以降では、まず、ギアポンプ1の入側と出側との圧力差に基づいて、ギアポンプ1の空転の有無を判断する例をギアポンプ1の制御方法の第1実施形態として説明する。
まず、第1実施形態の制御方法に用いられるギアポンプ1の制御機構17(ギアポンプ1の制御装置)について説明する。
図4Aは、図1に示すギアポンプ1の制御機構17をブロック図の形で示したものである。図4Aに示す如く、第1実施形態のギアポンプ1において、ギアポンプ1の制御機構17は、ギアポンプ1の入側(材料導入部18、(図2A?図2D、図3A及び図3B、図4Aにおける「A点」))に設けられた入側圧力センサ12と、ギアポンプ1の出側(材料排出部16、(図2A?図2D、図3A及び図3B、図4Aにおける「B点」)に設けられた出側圧力センサ13と、ギアポンプ1を駆動させる電動機11と、電動機11を制御するコントローラ14と、を備えている。入側圧力センサ12で計測されたギアポンプ1の入側の圧力P_(in)及び出側圧力センサ13で計測されたギアポンプ1の出側の圧力P_(out)は、いずれもコントローラ14に送られる。
【0040】
図4Bは、上述したコントローラ14に対する信号の入出力を示したブロック図である。このコントローラ14は、実際にはパソコンやPLCのような装置であり、図4Bに示すように、コントローラ14には入側の圧力計測値P_(in)及び出側の圧力計測値P_(out)以外にも、入側圧力設定値P_(0)が予め入力されている。また、コントローラ14からはギアポンプ1に対してギアポンプ操作量信号、言い換えれば電動機11の回転数に対する制御信号が出力されている。
【0041】
このコントローラ14では、これらのP_(in)、P_(out)、P_(0)、及びギアポンプ操作量信号を用いて、図5に示すような手順で信号処理が行われる。
図5に示すように、まず入側圧力センサ12でギアポンプ1の入側の圧力P_(in)が計測されると共に出側圧力センサ13でギアポンプ1の出側の圧力P_(out)が計測される(S11)。計測された圧力P_(in)及び圧力P_(out)の計測値がコントローラ14に送られる。
【0042】
コントローラ14では、まず入力された入側の圧力P_(in)と、予め入力されていた上限値と下限値を有する入側圧力設定値P_(0)とを比較し、「入側の圧力P_(in)が入側圧力設定値P_(0)の範囲内である」かどうかの判断、言い換えれば、入側の圧力P_(in)が入側圧力設定値P_(0)として設定された数値の範囲内に含まれているかどうかの判断が行われる(S12)。
判断の結果、「入側の圧力P_(in)が入側圧力設定値P_(0)の範囲内である」との判断、言い換えれば「YES」の判断が為された場合には、ギアポンプ1の運転状態を正常なものと考え、ギアポンプ1の運転状態を維持する。つまり、ギアポンプ1の回転数を変更しないものとする(S13)。
【0043】
しかし、判断の結果、「入側の圧力P_(in)が入側圧力設定値P_(0)の範囲内でない」との判断、言い換えれば「NO」の判断が為された場合には、次に進んで、「入側の圧力P_(in)が入側圧力設定値P_(0)より高いか」かどうかの判断が行われる(S14)。
判断の結果、「入側の圧力P_(in)が入側圧力設定値P_(0)より高くない(入側の圧力P_(in)が入側圧力設定値P_(0)より低い)」との判断、言い換えれば「NO」の判断が為された場合には、ギアポンプ1の入側の圧力が下がっていることになるので、ギアポンプ1の回転を下げる(S15)。
【0044】
しかし、判断の結果、「入側の圧力P_(in)が入側圧力設定値P_(0)より高い」との判断、言い換えれば「YES」の判断が為された場合には、ギアポンプ1の入側の圧力が上昇していることになるので、次のステップに進んでギアポンプ1が空転しているかどうかを判断する。
すなわち、次のステップでは、入力された入側の圧力P_(in)と出側の圧力P_(out)とを用いて、「入側の圧力P_(in)が出側の圧力P_(out)より高い」かどうかを判断する(S16)。
【0045】
この「ギアポンプ1に空転が起こっているかどうか」の判断は、正常に運転していれば加圧されて入側より圧力が高いはずの出側の材料の圧力が、入側の材料の圧力よりも低くなっているかどうかで行われる。つまり、次の式(1)の関係が成立した場合に、「ギアポンプ1に空転が起こっている」と判断し、式(1’)の関係が成立した場合に、「ギアポンプ1に空転が起こっていない」と判断するものとなっている。
【0046】
【数3】

【0047】
【数4】

【0048】
判断の結果、「入側の圧力P_(in)<出側の圧力P_(out)」との判断、言い換えれば「YES」の判断が為された場合には、ギアポンプ1は空転していないと判断し、ギアポンプ1の回転数を上げる(S17)。また、「入側の圧力P_(in)≧出側の圧力P_(out)」との判断、言い換えれば「NO」の判断が為された場合には、ギアポンプ1が空転していると判断し、ギアポンプ1の回転数を下げる(S18)。
【0049】
上述したような第1実施形態のギアポンプ1の制御方法を用いれば、ギアポンプ1で空転が起こっている場合には、ギアポンプ1の回転数を下げる制御が行われ、ギアポンプ1の空転を抑制することが可能となる。そのため、ギアポンプ1が空転してまま回転数の制御が行われることもなくなり、制御が発散する問題も起こりにくくなって、より精度の良いギアポンプ1の回転数の制御が可能となる。
「第1実施形態の変形例」
上述した第1実施形態のギアポンプ1の制御方法では、式(1)及び式(1’)に示すように、入側圧力センサ12で計測された入側の圧力P_(in)と出側圧力センサ13で計測された出側の圧力P_(out)とを比較し、入側の圧力P_(in)が出側の圧力P_(out)を下回った場合に、「ギアポンプ1が空転している」と判断している。
【0050】
しかし、ギアポンプ1が空転しているかどうかの判断は、入側の圧力P_(in)が出側の圧力P_(out)を下回るまで低下するのを待つ必要は必ずしもない。例えば、空転を起こさずに回転しているギアポンプ1では、入側の圧力P_(in)が0.5MPa程度、出側の圧力P_(out)が30MPa程度となっていて、ギアポンプ1の入側に比して出側は60倍程度の圧力に加圧されていることが多い。ところが、ギアポンプ1が空転すると、入側に対する出側の圧力の倍率が60倍よりも小さいものとなる。例えば、ギアポンプ1の出側の圧力が入側の10倍程度まで低下すれば、十分に「ギアポンプ1が空転している」と判断することができる。
【0051】
そのため、上述した次の式(1)の関係に代えて式(2)の関係式を用い、次の式(1’)の関係に代えて式(2’)の関係式を用いれば、式(1)や式(1’)を用いるより「ギアポンプ1が空転している」という判断結果を手早く得ることができ、ギアポンプ1の空転を迅速に抑制することが可能となって、より精度の良いギアポンプ1の回転数の制御が可能となる。
【0052】
【数5】

【0053】
【数6】

…(中略)…
【0055】
このことから、正常に回転しているギアポンプ1では、圧力値が0?1MPaである「A点」と、圧力値が10?11MPaである「B点」との間には、10倍程度の圧力差があり、ギアポンプ1の出側の圧力が入側の10倍程度まで低下すれば、ギアポンプ1が空転している」と判断可能であることがわかる。
「第2実施形態」
なお、上述した第1実施形態の制御方法では、ギアポンプ1の入側と出側との圧力差に基づいて、ギアポンプ1の空転が生じているか否かの判断を行った。しかし、ギアポンプ1が空転しているか否かの判断は、ギアポンプ1を駆動している電動機11の負荷(トルク)に基づいて行うこともできる。
【0056】
第2実施形態のギアポンプ1の制御方法は、ギアポンプ1を駆動している電動機11に、この電動機11に加わる負荷を推定し、推定された電動機11の負荷が所定の値以下の場合に、ギアポンプ1が空転していると判断するものである。つまり、空転状態にあるギアポンプ1ではギア歯の凹部5aに材料が入り込んでおらず、ギアポンプ1は殆ど負荷を受けずに回転することができる。そのため、ギアポンプ1を駆動する電動機11にも、あまり負荷が加わらない。
【0057】
そこで、第2実施形態の制御方法では、電動機11に流れる電流の値などを基に、負荷(電動機11のトルク)を推定し、推定した負荷が所定の値より小さくなった場合に、「ギアポンプ1に空転が起こっている」と判断している。なお、電動機11に負荷計測手段15(トルク計)を設けておき、この負荷計測手段15で負荷(電動機11のトルク)を計測してもよい。
【0058】
次に、第2実施形態のギアポンプ1の制御方法について説明する。
まず、第2実施形態の制御方法に用いられるギアポンプ1の制御機構17について説明する。
図6Aは、第2実施形態の制御方法が行われる混練設備2や制御機構17をブロック図の形で示したものである。図6Aに示す如く、第2実施形態のギアポンプ1の制御機構17は、第1実施形態と同様に材料導入部18に入側圧力センサ12を備えたものであるが、ギアポンプ1の出側(材料排出部16)には出側圧力センサ13が設けられていない。また、電流値から推定されたり、負荷計測手段15で計測された電動機11のトルクも、コントローラ14に出力されている。これ以外の制御機構17の構成については、第1実施形態と同様となっている。
【0059】
図6Bは、第2実施形態のコントローラ14に対する信号の入出力を示したブロック図である。
図6Bに示すように、第2実施形態のコントローラ14には、入側の圧力計測値P_(in)以外に、電動機負荷T(ギアトルク信号T)が入力されており、出側の圧力計測値P_(out)は入力されていない。また、第2実施形態のコントローラ14には、入側圧力設定値P_(0)の他に電動機11の負荷の設定である電動機負荷設定値T_(0)が予め入力されている。
【0060】
つまり、第2実施形態のコントローラ14では、これらのP_(in)、P_(0)、ギアトルク信号T及び電動機負荷設定値T_(0)に加えて、ギアポンプ操作量信号を用いて、図7に示すような手順で信号処理が行われる。
図7には、第2実施形態のコントローラ14での信号処理方法、言い換えれば第2実施形態のギアポンプ1の制御方法が示されている。
【0061】
第2実施形態のギアポンプ1の制御方法におけるS21?S25までの動作は、第1実施形態のS11?S15までの動作と同様であるため、説明を省略する。
S24において、「入側の圧力P_(in)が入側圧力設定値P_(0)より高い」との判断がされた場合には、第1実施形態と同様に「ギアポンプ1に空転が起こっているかどうか」の判断が為される。この「ギアポンプ1に空転が起こっているかどうか」の判断は、ギアポンプ1に加わる電動機負荷T(ギアトルク信号T)が、予め入力された所定の電動機負荷設定値T_(0)を下回っているかどうかで行われる。つまり、次の式(3)の関係が成立した場合に、「ギアポンプ1に空転が起こっている」と判断し、式(3’)の関係が成立した場合に、「ギアポンプ1に空転が起こっていない」と判断するものとなっている。
【0062】
【数7】

【0063】
【数8】

【0064】
比較の結果、ギアトルク信号Tが電動機負荷設定値T_(0)より低く、式(3)が成立する場合、言い換えれば「YES」の判断がされた場合には、ギアポンプ1が空転していると判断して、ギアポンプ1の回転数を下げる(S28)。
しかし、比較の結果、ギアトルク信号Tが電動機負荷設定値T_(0)以上、式(3’)が成立する場合、言い換えれば「NO」の判断がされた場合には、ギアポンプ1は空転していないと判断して、ギアポンプ1の回転数を上げる操作が行われる(S27)。
…(中略)…
【0066】
上述したような第2実施形態のギアポンプ1の制御方法を用いても、ギアポンプ1で空転が起こっている場合には、ギアポンプ1の回転数を下げる制御が行われ、ギアポンプ1の空転を抑制することが可能となる。そのため、ギアポンプ1が空転してまま回転数の制御が行われることもなくなり、制御が発散する問題も起こりにくくなって、より精度の良いギアポンプ1の回転数の制御が可能となる。」
・「【図5】


・「【図7】



(4)発明の課題
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】によると、本件特許発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「ギアポンプの空転を検知して、ギアポンプを安定して稼働可能とするギアポンプの制御方法及びギアポンプの制御装置を提供すること」である。

(5)サポート要件についての判断
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載、特に段落【0048】、【0049】、【0066】、【0067】の記載に基づけば、当業者は、「入側の圧力P_(in)≧出側の圧力P_(out)の関係、又は電動機負荷T<動機負荷設定値T_(0)の関係が成立した場合にギアポンプの空転が生じていると判断し、空転が生じていると判断した場合にギアポンプの回転数を下げる」という特定事項を有するものであれば、発明の課題を解決すると認識する。
そして、本件特許発明1及び8は、「ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う」という特定がされている。
また、本件特許発明4及び11は、「ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式

の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う」という特定がされている。
したがって、本件特許発明1、4、8、11は、いずれも、「入側の圧力Pin≧出側の圧力Poutの関係が成立した場合にギアポンプの空転が生じていると判断し、空転が生じていると判断した場合にギアポンプの回転数を下げる」ことを特定しているものといえる。
そして、本件特許発明2及び3、9及び10にも、上記特定がある。

よって、本件特許発明1ないし4及び8ないし11に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

なお、特許異議申立人は、上記第4 1(2)における上記申立理由2-1のように主張しているが、「入側の圧力Pin」が「入側圧力設定値P_(0)」よりも低い場合であったとしても、「入側の圧力Pin≧出側の圧力Poutの関係、又は電動機負荷T<動機負荷設定値T_(0)の関係が成立した場合にギアポンプの空転が生じていると判断し、空転が生じていると判断した場合にギアポンプの回転数を下げる」という特定事項を有するものであれば、発明の課題を解決すると認識する。
また、特許異議申立人は、上記第4 1(2)における上記申立理由2-4のように主張しているが、本件特許明細書の【0050】ないし【0055】の「k」が「10以上」となる旨は、【0050】に記載されるように、あくまで例示に過ぎず、さらに、第1実施形態(【0048】)には、「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」であること、すなわち、「k」が「1」であることが記載されている。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(6)むすび
したがって、本件特許発明1ないし4及び8ないし11に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。また、本件特許発明6及び7は、本件訂正により削除されている。
よって、本件特許の請求項1ないし4及び8ないし11に係る特許は、取消理由2によっては取り消すことはできない。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は申立理由1(進歩性)のうち、本件特許発明4、8ないし11に係る部分である。
そこで、この申立理由について検討する。

1 本件特許発明4について
(1)対比
本件特許発明4と甲1発明を対比する。
甲1発明における「スクリュ式混練機(4)」は、本件特許発明4における「混練設備」に相当し、以下同様に、「合成樹脂原料」は「材料」に、「ギアポンプ用モータ(9)」は「電動機」に、「制御装置(15)」は「コントローラ」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラが、前記ギアポンプの回転数を制御するギアポンプの制御方法。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点3>
ギアポンプの状態を判断するに点に関して、本件特許発明4においては、「コントローラが、ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断」しているものであって、「ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式

の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断」すると特定されるのに対し、甲1発明においては、「ギアポンプ(7)に対して適正とされる予め予測された予測ギアポンプ回転数(Nc)と現在運転されている運転ギアポンプ回転数とを比較し、前記比較の結果に基づいて異常と判断」しているものである点。
<相違点4>
ギアポンプの状態を判断した後のギアポンプの回転数の制御に関して、本件特許発明4においては、「ギアポンプの回転数を低くする制御を行う」と特定されるのに対し、甲1発明においては、「ギアポンプ(7)の停止を行う」ものである点。

(2)判断
以下、相違点について検討する。
<相違点3について>
ギアポンプの制御方法において、ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラが、入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式

の関係を満足するときに、ギアポンプが空転していると判断する構成については、甲1に記載はなく、甲1発明のギアポンプの制御方法を上記構成にする動機付けとなる記載もない。
また、他の甲号証にも、上記構成の記載がない。
したがって、甲1発明のギアポンプの制御方法を上記構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、相違点4について検討するまでもなく、本件特許発明4は甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本件特許発明8について
本件特許発明8は、本件特許発明1とカテゴリが異なるのみであり、本件特許発明1と同様の発明特定事項を有するものであるから、上記第5 1(2)アで検討したとおり、本件特許発明8は甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本件特許発明9及び10について
本件特許発明9及び10は、請求項8を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明8と同様に、甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本件特許発明11について
本件特許発明11は、本件特許発明4とカテゴリが異なるのみであり、本件特許発明4と同様の発明特定事項を有するものであるから、上記1で検討したとおり、本件特許発明11は甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 むすび
したがって、本件特許発明4、8ないし11に関して、甲1発明及び他の甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項4、8ないし11に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。

第7 結語
上記第5及び6のとおり、本件特許の請求項1ないし4、8ないし11に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4、8ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項5ないし7に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項5ないし7に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラが、前記ギアポンプの回転数を制御するに際しては、
前記コントローラが、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断し、前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を変更するギアポンプの制御方法であって、
前記ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う
ことを特徴とするギアポンプの制御方法。
【請求項2】
前記ギアポンプの入側の圧力Pinを計測しておき、前記計測されたギアポンプ入側の圧力Pinが目標の圧力設定値P0よりも高くなった場合に、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断することを特徴とする請求項1に記載のギアポンプの制御方法。
【請求項3】
前記ギアポンプの空転が生じていないとの判断の結果が得られた場合には、前記ギアポンプの回転数を高くすることを特徴とする請求項1又は2に記載のギアポンプの制御方法。
【請求項4】
混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラが、前記ギアポンプの回転数を制御するに際しては、
前記コントローラが、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断し、前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を変更するギアポンプの制御方法であって、
前記ギアポンプの入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutを計測し、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う
ことを特徴とするギアポンプの制御方法。
【数1】

【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラと、前記ギアポンプの入側圧力の圧力Pinを計測する入側圧力センサと、前記ギアポンプの出側圧力の圧力Poutを計測する出側圧力センサと、を有するギアポンプの制御装置であって、
前記コントローラは、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断し、前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を制御する構成とされており、
「入側の圧力Pin≧出側の圧力Pout」との判断が為された場合には、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う
ことを特徴とするギアポンプの制御装置。
【請求項9】
前記計測されたギアポンプ入側の圧力Pinが目標の圧力設定値P0よりも高くなった場合に、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断する構成とされている
ことを特徴とする請求項8に記載のギアポンプの制御装置。
【請求項10】
前記コントローラは、
前記ギアポンプの空転が生じていないとの判断の結果が得られた場合には、前記ギアポンプの回転数を高くする構成とされている
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のギアポンプの制御装置。
【請求項11】
混練設備の下流側に設けられて、当該混練設備で混練された材料を下流側に送るギアポンプに対して、前記ギアポンプを駆動させる電動機を制御するコントローラと、前記ギアポンプの入側圧力の圧力Pinを計測する入側圧力センサと、前記ギアポンプの出側圧力の圧力Poutを計測する出側圧力センサと、を有するギアポンプの制御装置であって、
前記コントローラは、前記ギアポンプの入側の圧力Pinと出側の圧力Poutの比較結果に基づいて、前記ギアポンプが空転しているかどうかを判断し、前記判断の結果に応じて前記ギアポンプの回転数を制御する構成とされており、
前記コントローラは、計測された入側の圧力Pin及び出側の圧力Poutが次式の関係を満足するときに、前記ギアポンプが空転していると判断し、前記ギアポンプの回転数を低くする制御を行う
ことを特徴とするギアポンプの制御装置。
【数3】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-08-03 
出願番号 特願2016-42421(P2016-42421)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B29B)
P 1 651・ 121- YAA (B29B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲高▼村 憲司  
特許庁審判長 細井 龍史
特許庁審判官 大島 祥吾
岩田 健一
登録日 2020-06-15 
登録番号 特許第6716835号(P6716835)
権利者 株式会社神戸製鋼所
発明の名称 ギアポンプの制御方法及びギアポンプの制御装置  
代理人 特許業務法人安田岡本特許事務所  
代理人 特許業務法人安田岡本特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ