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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B43K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B43K
審判 全部申し立て 2項進歩性  B43K
管理番号 1378728
異議申立番号 異議2019-700992  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-05 
確定日 2021-08-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6523770号発明「消し具及び筆記具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6523770号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。 特許第6523770号の請求項2に係る特許を維持する。 特許第6523770号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第特許第6523770号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成27年4月28日に出願され、令和1年5月10日に特許権の設定登録がされ、同年6月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年12月5日に特許異議申立人森田弘潤(以下「申立人」という。)により請求項1ないし2に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年2月19日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年4月8日付けで意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、同年8月26日に意見書を提出した。当審は、同年9月29日付けで取消理由(決定の予告)を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年12月4日付けで意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、当審は、令和3年1月19日付けで訂正拒絶理由を通知し、同年2月19日に特許権者との応対記録を作成した。特許権者は、その指定期間内である同年2月24日付けで意見書、手続補正書及び上申書を提出した。当審は、同年3月16日に特許権者との応対記録を作成し、同年3月25日付けで取消理由(決定の予告)を通知した。申立人は、同年3月30日付けで上申書を提出した。特許権者は、令和3年3月25日付けの取消理由(決定の予告)の指定期間内である同年4月16日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。なお、特許法120条の5第7項の規定により、令和2年4月8日及び令和2年12月4日にされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。)を行った。申立人は、同年6月9日付けで意見書を提出した。当審は、同年7月21日に特許権者との応対記録を作成した。

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求める、というものであるところ、本件訂正は次のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(削除される請求項1)
「【請求項1】
筆記具の後端部に取付けられる消し具であって、
前記筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部に固着され、筆記した描線を変色又は消去可能な消去部と、を備え、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成されると共に、前記嵌合部と前記消去部とは二色成形により一体に形成され、
前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成される、消し具。」

(2)訂正事項2
特許請求の範囲における
「【請求項2】
請求項1に記載の消し具を備えた筆記具であって、当該筆記具の後端部には突出部が形成され、前記突出部の外壁には外ねじが形成され、前記消し具が、前記嵌合部の前記内ねじ及び前記突出部の前記外ねじを介して取付けられる、筆記具。」
との記載を、
「【請求項2】
複数の筆記リフィルを収容した筆記具であって、
当該筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された、消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部と、を備えた消し具を有し、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成され、
前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成され、
当該筆記具の後端部には突出部が形成され、前記突出部の外壁には外ねじが形成され、前記消し具が、前記嵌合部の前記内ねじ及び前記突出部の前記外ねじを介して取付けられ、
前記嵌合部は、ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され、
前記消去部は、可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である、筆記具。」(下線は訂正箇所を示す。)
に変更する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、訂正前の請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項2のうち、「筆記具」の前に「複数の筆記リフィルを収容した」を追加する訂正は、訂正前の請求項2の発明特定事項である「筆記具」について、「複数の筆記リフィルを収容した」ものであることを付加して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)訂正事項2のうち、訂正前の請求項2の「請求項1に記載の消し具を備えた筆記具」との記載(下線は当審で付した。以下同様。)に代えて、訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1の
「筆記具の後端部に取付けられる消し具であって、
前記筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部に固着され、筆記した描線を変色又は消去可能な消去部と、を備え、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成されると共に、前記嵌合部と前記消去部とは二色成形により一体に形成され、
前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成される、消し具」
との記載を、
「筆記具であって、当該筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された、消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部と、を備えた消し具を有し、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成され、
前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成され、」
に変更して書き改める訂正は、
a 訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しない独立形式請求項へ改めるための特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるとともに、
b 訂正前の請求項1に記載された発明特定事項である「筆記具の後端部に取付けられる消し具」が、訂正前の請求項1を引用する請求項2に記載された発明特定事項である「当該筆記具の後端部には突出部が形成され、前記突出部の外壁には外ねじが形成され、前記消し具が、前記嵌合部の前記内ねじ及び前記突出部の前記外ねじを介して取付けられる」ことから自明な構成であって、「消し具」に係る重複した特定となっていたため、「筆記具の後端部に取付けられる」との発明特定事項を削除して、明瞭でない記載を明瞭にするための特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとともに、
c 訂正前の発明特定事項である「筆記した描線を変色又は消去可能な消去部」から択一的記載である「変色」「可能な」ものを省き「消しゴム消去性インクを用いて」筆記した描線を消去可能なものに限定するための特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、
d 訂正前の発明特定事項である「前記嵌合部と前記消去部とは二色成形により一体に形成され」という製造方法によって生産物を特定しようとする記載を「二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された」「消去部」との記載に改めて明瞭でない記載を明瞭にするための特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(ウ)訂正事項2のうち、「前記嵌合部は、ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され、」を追加する訂正は、訂正前の発明特定事項である「嵌合部」について、「ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され」との発明特定事項を付加して限定するための特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(エ)訂正事項2のうち、「前記消去部は、可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上であ」ることを追加する訂正は、訂正前の発明特定事項である「消去部」について、「可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上であ」るとの発明特定事項を付加して限定するための特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(オ)したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明及び同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
(ア)訂正事項2のうち、「筆記具」の前に「複数の筆記リフィルを収容した」を追加する訂正は、「複数の筆記リフィルを収容した」との発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(イ)訂正事項2のうち、訂正前の請求項2の「請求項1に記載の消し具を備えた筆記具」との記載に代えて、訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1の
「筆記具の後端部に取付けられる消し具であって、
前記筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部に固着され、筆記した描線を変色又は消去可能な消去部と、を備え、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成されると共に、前記嵌合部と前記消去部とは二色成形により一体に形成され、
前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成される、消し具」
との記載を、
「筆記具であって、当該筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された、消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部と、を備えた消し具を有し、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成され、
前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成され、」
に変更して書き改める訂正は、
a 訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しない独立形式請求項へ改めるとともに、
b 訂正前の請求項1に記載された発明特定事項である「筆記具の後端部に取付けられる消し具」が、訂正前の請求項1を引用する請求項2に記載された発明特定事項である「当該筆記具の後端部には突出部が形成され、前記突出部の外壁には外ねじが形成され、前記消し具が、前記嵌合部の前記内ねじ及び前記突出部の前記外ねじを介して取付けられる」ことから自明な構成であって、「消し具」に係る重複した特定となっていたため、「筆記具の後端部に取付けられる」との発明特定事項を削除して、明瞭でない記載を明瞭にするとともに、
c 訂正前の発明特定事項である「筆記した描線を変色又は消去可能な消去部」から択一的記載である「変色」「可能な」ものを省き「消しゴム消去性インクを用いて」との発明特定事項を直列的に付加するとともに、
d 訂正前の発明特定事項である「前記嵌合部と前記消去部とは二色成形により一体に形成され」という製造方法によって生産物を特定しようとする記載を「二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された」「消去部」との記載に改めて明瞭でない記載を明瞭にするものであり、
いずれもカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(ウ)訂正事項2のうち、「前記嵌合部は、ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され、」を追加する訂正は、訂正前の請求項2の発明特定事項である「嵌合部」について、「ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され」との発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(エ)訂正事項2のうち、「前記消去部は、可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上であ」ることを追加する訂正は、訂正前の請求項2の発明特定事項である「消去部」について、「可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上であ」るとの発明特定事項を付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(オ)したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)訂正事項2のうち、「筆記具」の前に「複数の筆記リフィルを収容した」を追加する訂正は、本件特許明細書の
「【0018】
図1及び2に示す消し具10は、図3に示すように筆記具100の後端部101に取付けられる消し具10であり、例えば筆記具100の内部に収容された複数の筆記リフィル1により筆記した描線を変色又は消去するために設けられる。」(下線は当審で付した。以下同様。)
「【0036】
以上、図を用いて本発明の実施形態について説明した。本発明の実施形態による消し具によれば、・・・。また、本実施形態は複数の筆記リフィルを収容した筆記具であったが、単数、単色の筆記リフィルを収容した筆記具としてもよい。」
との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(イ)訂正事項2のうち、訂正前の請求項2の「請求項1に記載の消し具を備えた筆記具」との記載に代えて、訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1の
「筆記具の後端部に取付けられる消し具であって、
前記筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部に固着され、筆記した描線を変色又は消去可能な消去部と、を備え、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成されると共に、前記嵌合部と前記消去部とは二色成形により一体に形成され、
前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成される、消し具」
との記載を、
「筆記具であって、当該筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された、消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部と、を備えた消し具を有し、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成され、
前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成され、」
に変更して書き改める訂正について、
a 訂正前の発明特定事項である「筆記した描線を変色又は消去可能な消去部」から「変色」「可能な」ものを省き「消しゴム消去性インクを用いて」との発明特定事項を直列的に付加する訂正は、本件特許明細書の
「【0018】
図1及び2に示す消し具10は、図3に示すように筆記具100の後端部101に取付けられる消し具10であり、例えば筆記具100の内部に収容された複数の筆記リフィル1により筆記した描線を変色又は消去するために設けられる。消し具10は、筆記具100の後端部101と嵌合する嵌合部14と、嵌合部14に固着され、筆記した描線を変色又は消去可能な消去部12とを備える。
【0019】
筆記リフィル1は、消し具10の擦過により消去、消色、変色可能な熱変色インク又は消しゴム消去性インクが収容されている。又は、熱変色芯や鉛筆芯、シャープ芯でもよい。」
との記載に基づくものであり、
b 訂正前の発明特定事項である「前記嵌合部と前記消去部とは二色成形により一体に形成され」という製造方法によって生産物を特定しようとする記載を「二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された」「消去部」との記載に改める訂正は、本件特許明細書の
「【0024】
本実施形態の嵌合部14は筒状に形成されており、消去部12は、二色成形により嵌合部14の外周に固着される。嵌合部14と消去部12とは二色成形により一体に形成されており、そのため消去部12は嵌合部14に強固に取付けられ、消去部12は嵌合部14から容易に脱落することがない。」
との記載に基づくものであり、
c その他の発明特定事項は、訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1の記載に基づくものであるから、これらの訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(ウ)訂正事項2のうち、「前記嵌合部は、ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され、」を追加する訂正は、本件特許明細書の
「【0023】
本実施形態では、・・・。また、嵌合部14は、消去部12を形成する材料より剛性が高い材料から形成され、例えばポリカーボネート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン等の合成樹脂から形成される。」
との記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(エ)訂正事項2のうち、「前記消去部は、可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上であ」ることを追加する訂正は、本件特許明細書の
「【0023】
本実施形態では、消去部12は、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等の熱硬化性ゴムやスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物、可塑剤を含有したプラスチック消しゴムから選ばれる。筆記リフィル1に熱変色性インクを用いる場合は、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪H22でのテーパー摩耗量が15未満であることが好適である。また、消しゴム消去性インクを用いる場合は、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS?17でのテーバー摩耗量が5mg以上であることが好適である。」
との記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(オ)したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項2は、請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1及び2は一群の請求項である。
そして、上記訂正事項1及び上記訂正事項2は、訂正前の請求項1及び2に係る事項を訂正するものであり、一群の請求項に対して請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、同項ただし書第3号及び同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定及び同法第120条の5第4項の規定に適合するので、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。

第3 訂正後の請求項2に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項2に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項2】
複数の筆記リフィルを収容した筆記具であって、
当該筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された、消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部と、を備えた消し具を有し、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成され、
前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成され、
当該筆記具の後端部には突出部が形成され、前記突出部の外壁には外ねじが形成され、前記消し具が、前記嵌合部の前記内ねじ及び前記突出部の前記外ねじを介して取付けられ、
前記嵌合部は、ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され、
前記消去部は、可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である、筆記具。」

第4 令和3年3月25日付けの取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に関して、令和3年3月25日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

(理由1)(新規性)本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証(特開2014-124899号公報、申立人が提示したもの)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

(理由2)(進歩性)本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

(理由3)(明確性)本件特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。

請求項1及び2は「消し具」及び「筆記具」という物の発明であるが、「前記嵌合部と前記消去部とは二色成形により一体に形成され」とのいう記載は、製造に関して経時的な要素の記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
ここで、物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)。
しかしながら、本件特許明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は明確でない。

(理由4)(サポート要件)本件特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。

ア 筆記具本体の構成について
請求項1に係る発明の技術的課題は、「交換可能に筆記具に取り付けられると共に使用時において消去部が脱落し難い消し具を提供する」ことであると理解できる(【0008】)。
しかしながら、このような筆記具への取り付けや使用時において消去部の脱落防止といった効果は、消し具の構造のみによって特定し得るものではなく、消し具が取り付けられる筆記具の構成も特定することが不可欠である。
この点、特許請求の範囲の請求項1では、「前記嵌合部の内壁には内ねじが形成される」と特定されているが、筆記具においてこれに対応する外ねじが存在しなければ、交換可能に筆記具に取り付けられることも、使用時に安定して消去部が脱落し難くなるという効果も得られないことは自明である。
したがって、筆記具本体の構成が全く特定されていない請求項1は、発明の課題を解決し得ない態様も含まれ、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えて特許を請求するものである。

イ 嵌合部及び消去部の剛性について
「使用時において消去部が脱落し難い」という作用効果は、嵌合部の材質と消去部の材料の相対的な剛性によって決まるものではなく、消去部の材質より剛性が高くとも比較的剛性の低いゴム弾性材料を嵌合部に用いれば、消し具全体が使用時にかかる力によって非常に不安定に変形され、使用時において消去部が脱落し易くなり、逆に、消去部の材質に比べて嵌合部の材質の方が剛性が低かったとしても、これらの部材がいずれも比較的剛性が高ければ、消し具全体としての安定性が上がり、使用時において消去部が脱落し難くなると考えられる。
このように、「使用時において消去具が脱落し難い」という作用効果は、嵌合部の材質と消去部の材料の相対的な剛性ではなく、それぞれの実際の剛性ないし硬度(絶対値)を規定する必要があり、これを特定していない請求項1及び2は、作用効果を一般化し得ない範囲を含んでおり、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもない。

2 甲各号証の記載
(1)甲第1号証の記載について
本件特許に係る出願の出願前に出願公開された甲第1号証(特開2014-124899号公報)には、次の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具を構成する筒体の一方の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱変色性インキの筆跡を摩擦するときには、摩擦体を特に意識することなく紙面に当接させることが多く、その後、上下方向、左右方向などに摩擦することで、熱変色させている。
【0006】
一方、特許文献1の摩擦体を筆記具のキャップや軸筒等に装着した場合には、熱変色性インキの筆跡の小面積を熱変色させたい場合と、熱変色性インキの筆跡の大面積を熱変色させたい場合とで、摩擦する方向を選択するには、摩擦体の当接した部分から特定方向に摩擦しなければならず、クリップ、操作体、回り止め突部等、熱変色性筆記具の後部に装着した摩擦体を使用するときに、筒体の角度や回転方向を調整することが難しく、摩擦する方向を選択することが困難な場合があるという問題があった。
【0007】
本発明はこれらの従来技術に鑑みてなされたものであって、熱変色性インキの筆跡の小面積や細い幅を熱変色させたい場合や、熱変色性インキの筆跡の大面積や太い幅を熱変色させたい場合等、目的に応じて筆跡を摩擦することのできる熱変色性筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記問題を解決するために、筆記具を構成する筒体の一方の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる摩擦部を有する摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具であって、前記摩擦体の側面の外側に、外筒体を着脱自在に装着するとともに、前記外筒体は、少なくとも一方の端部に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる第二摩擦部を有することを特徴する。尚、本発明において、一方とは、長手方向において前方又は後方を示すものであり、他方とはその反対方向を示すものである。
【0009】
また、前記外筒体の内面及び/又は側面に、硬質樹脂からなり、前記筒体と装着する硬質装着部を具備することを特徴とする。
【0010】
さらにまた、前記外筒体の側面に指先当接部を設けるとともに、該指先当接部を硬質樹脂で形成したことを特徴とする。
【0011】
また、前記外筒体の明度が、前記摩擦体の明度よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
本願発明の第1の構成によれば、前記外筒体は、少なくとも一方の端部に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる第二摩擦部を有することで、熱変色性インキの筆跡の大面積を熱変色させたい場合は、外筒体の第二摩擦部、熱変色性インキの筆跡の小面積を熱変色させたい場合は、外筒体を取り外して、外筒体よりも幅の狭い摩擦体の摩擦部を使用することができる。これは、摩擦体の摩擦部は、外筒体の第二摩擦部よりも紙面を視認しやすく、幅も小さく小面積や細い幅を熱変色しやすいために、所望とする部分のみ、熱変色しやすくすることができるためである。また、外筒体の少なくとも一方の端部に、ゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる第二摩擦部を具備することで、落下衝撃を緩和する効果も奏する。
【0013】
尚、摩擦体及び外筒体の第二摩擦部には、ゴム状弾性を有する軟質樹脂、例えば、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリエステル系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー等、ゴム状弾性を有するゴム、エラストマー等の弾性体が挙げられ、適宜選択して用いることができる。また、摩擦体としては、ショアA硬度40以上、100以下が好ましい。また、外筒体の摩擦部は、着脱性などを考慮して、用いる摩擦体の硬度よりも高く、且つショアA硬度60以上、100以下することが好ましい。
【0014】
本発明の摩擦体は、筒体に嵌着、圧入、螺着、接着、融着によって具備することが挙げられる。さらに、摩擦体は、筒体自体を摩擦体とすること、筒体と摩擦体を二色成形によって一体に成形してあってもよい。さらに、外筒体の第二摩擦部は、外筒体に嵌着、圧入、螺着、接着、融着によって具備することができ、外筒体自体を第二摩擦部とすること、外筒体に第二摩擦部を二色成形によって一体に成形してあってもよい。
【0015】
本願発明の第2の構成によれば、前記外筒体の側面及び/又は内面に、硬質樹脂からなり、前記筒体と装着する硬質装着部を具備することで、繰り返しの着脱等によっても外筒体の装着力の低下を抑制することができる。
【0016】
本願発明の第3の構成によれば、前記外筒体の側面に指先当接部を設けるとともに、該指先当接部を硬質樹脂で形成することで、第二摩擦部の劣化を抑制することができる。これは、外筒体を着脱するときに、外筒体を指で掴む必要があるが、外筒体を掴んだ部分に手油等が付着し、この手油によって第二摩擦部が膨潤するなど不具合が発生する恐れがある。そのため、指先当接部を硬質樹脂で形成することで、前記した摩擦部に手油の付着を抑制するためである。
【0017】
本発明に用いる硬質樹脂には、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等、筆記具の部材として一般的に知られている熱可塑性樹脂等を使用することができる。また、硬質樹脂部は、摩擦部に嵌着、圧入、螺着、接着、融着によって具備することが挙げられ、摩擦部と硬質樹脂を二色成形によって一体に成形することがコスト面で好ましい。」

イ 「【0019】
本発明に用いる熱変色性インキには、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。」

ウ 「【0023】
図1?図3に、第1実施形態の熱変色性筆記具1を示す。熱変色性筆記具1は、軸筒内に収容したボールペンレフィルからなる筆記体14を、コイルスプリングからなる弾発体11によって、軸筒本体の後端方向に向かって、摺動自在に付勢して収容してある。軸筒本体は、前軸2、中間軸3、連結具4、後軸6からなり、前軸2と中間軸3とを連結具4を介して装着し、中間軸3の後端部には、長手方向に延びる細長状の窓孔6Aを形成した後軸6を装着して軸筒本体を得ている。」

エ 「【0028】
後軸3(当審注:「後軸3」は「後軸6」の誤記と認められる。)の後端部には、熱可塑性エラストマーからなるゴム状弾性を有する白色半透明の摩擦体9を、後軸6の突起部6Bに摩擦体9の突部9Bを乗り越し嵌合することによって装着してある。また、後軸3(当審注:「後軸3」は「後軸6」の誤記と認められる。)の後端部及び摩擦体9の摩擦部9Aの外側には、内外を連通する貫通孔20C以外は後端を閉鎖したドーム状の後端部と円筒状の側面からなり、熱可塑性エラストマーからなるゴム状弾性を有する黒色の外筒体20を着脱自在に、後軸6の雄ねじからなる装着部6Cに外筒体20内面の雌ねじからなる装着部20Bとを螺着して、着脱自在に装着してある。」

オ 「【0036】
筆跡を熱変色するには、図4に示すとおり、摩擦部9Aの後端部が、外筒体20の第二摩擦部20Aよりも長手方向において軸筒先端部側に位置しているため、外筒体20を装着した状態で、外筒体20の第二摩擦部20Aをノート等の筆記面Hに筆記した筆跡に圧接し、擦ることで発生する熱によって、熱変色性インキの筆跡を熱消色させることができる。また、外筒体20を取り外して、外筒体20の径方向の幅に比べ、径方向の幅の小さい摩擦体9の摩擦部9Aをノート等の筆記面Hに筆記した筆跡に圧接し、擦ることで発生する熱によって、熱変色性インキの筆跡を熱消色させることもできる。
【0037】
図5に、第2実施形態の熱変色性筆記具101を示す。熱変色性筆記具101は、後軸6の後端部に、摩擦体9を保護する後軸と同系黒色の外筒体120を着脱自在に、後軸6の雄ねじからなる装着部3C(当審注:「3C」は「6C」の誤記と認められる。)に外筒体120内面の雌ねじからなる硬質装着部120Bとを螺着してある。具体的には、外筒体120は、熱可塑性エラストマー(スチレン系エラストマー)からなるゴム状弾性を有する摩擦部120Aと、側面に熱可塑性樹脂(ポリカーボネート)の硬質樹脂からなり、外筒体120を着脱する時に、指で掴む指先当接部120Dと、内面に熱可塑性樹脂(ポリカーボネート)の硬質樹脂からなる雌ねじ部(硬質装着部)と、内外を連通する貫通孔120Cを具備した以外は、第1実施形態と同様にして熱変色性筆記具101を得ている。
【0038】
筆跡を熱変色するには、外筒体120を装着した状態で、外筒体120の第二摩擦部120Aをノート等の筆記面に筆記した筆跡に圧接し、擦ることで発生する熱によって、熱変色性インキの筆跡を熱消色させることができる。また、外筒体120の指先当接部120Dを掴み、回転して取り外し、外筒体120の径方向の幅に比べ、径方向の幅の小さい摩擦体9の摩擦部9Aをノート等の筆記面に筆記した筆跡に圧接し、擦ることで発生する熱によって、熱変色性インキの筆跡を熱消色させることができる。
【0039】
本実施形態では、軸筒本体と先部材によって軸筒を構成し、便宜上、軸筒本体は、前軸、中間軸、連結具、後軸の4部品で構成しているが、前軸と後軸の2部品等、先部材の有無や部品点数は、特に限定されるものはない。
【0040】
また、筒体として、回転カムからなる出没機構を具備した出没式筆記具の軸筒(後軸)を例示しているが、筆記具を構成する筒体であれば、回転繰り出し等、出没機構は特に限定されるものではなく、キャップ式筆記具の軸筒やキャップ、ノック体を筒体としてあってもよい。また、操作体としてクリップを例示してあるが、操作体の形状やクリップの有無は特に限定されるものではない。但し、操作体の操作部やクリップの幅を摩擦体の最大幅よりも小さくすることで、摩擦体の使用時に、筆記面上の筆跡を視認し易いので、好ましい。」

カ (認定事項1)
段落【0017】の「摩擦部と硬質樹脂を二色成形によって一体に成形する」とは、段落【0015】の「前記外筒体の側面及び/又は内面に、硬質樹脂からなり、前記筒体と装着する硬質装着部を具備する」との記載から、「硬質樹脂」は「第二摩擦部と硬質樹脂からなる硬質装着部を二色成形によって一体に形成する」ことであると認められる。

キ (認定事項2)
段落【0040】の「筒体として・・・軸筒(後軸)を例示している」との記載から、「軸筒(後軸)」と「筒体」とは同一のものであると認められるから、段落【0023】、【0028】及び【0037】に記載された「軸筒本体」の「後軸6の後端部」は、段落【0008】の「筒体の一方の端部」のうちの「後方」の「端部」、すなわち、「筒体の後方の端部」であると認められる。

ク (認定事項3)
段落【0035】及び【0038】の記載に基づけば、段落【0008】の「熱変色可能な」こととは、「熱変色」又は「熱消色」可能なことと認められる。

以上の記載事項及び認定事項から、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「ボールペンレフィルからなる筆記体を収容した熱変色性筆記具であって、
筆記具を構成する筒体の後方の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色又は熱消色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる摩擦部を有する摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具であって、
前記摩擦体の側面の外側に、外筒体を着脱自在に装着するとともに、前記外筒体は、少なくとも後方の端部に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱消色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる第二摩擦部を有し、
前記外筒体の内面及び/又は側面に、硬質樹脂からなり、前記筒体と装着する硬質装着部を具備し、
前記硬質樹脂には、ポリカーボネート又はABS樹脂が使用され、
前記第二摩擦部と前記硬質樹脂からなる前記硬質装着部は二色成形によって一体に成形され、
前記外筒体は、前記筒体の後方の端部の雄ねじからなる装着部に前記外筒体内面の雌ねじからなる前記硬質装着部を螺着して着脱自在に装着してある、熱変色性筆記具。」

(2)甲第2号証(特開2013-49192号公報)の記載
甲第2号証には、次の事項が記載されている。
ア 「【0014】
・・・前記軸筒の後端部に、頭冠をネジ嵌合によって着脱自在に装着し、前記弾性部が、前記軸筒の後端部に当接することで、頭冠と軸筒とのネジの緩みを防止することができる効果を奏する。」

イ 「【0016】
・・・また、弾性部は、頭冠と一体に形成又は別部材にて装着してあってもよい。」

(3)甲第3号証(特開2015-36192号公報)の記載
甲第3号証には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、該軸筒内に配置され且つ一端に筆記部を有する筆記体と、消去部材と、を具備する筆記具であって、
前記消去部材は、前記軸筒の前端に設けられ且つ前記筆記部が突出可能な貫通孔が形成され、前記消去部材の一部が、軸線方向前方に向かって延在する突出部を形成していることを特徴とする筆記具。
・・・
【請求項4】
当該筆記具が熱変色性筆記具であり、前記消去部材が、擦過した際に生じる摩擦熱によって当該筆記具の筆跡を熱変色可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の筆記具。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消去部材を備えた筆記具、特に熱変色性インクによる筆跡を擦過して変色又は消色する消去部材を備えた筆記具に関する。」

ウ 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2及び特許文献3に記載された筆記具では、擦過動作時において、消去部材の筆記面に対する接触面積が、形状に起因して筆跡に対して小さい場合がある。
【0008】
本発明は、筆記動作から擦過動作への持ち替え動作を最小限にしつつ安定した擦過動作が可能である筆記具であって、十分な接触面積が得られる消去部材を備えた筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、軸筒と、該軸筒内に配置され且つ一端に筆記部を有する筆記体と、消去部材と、を具備する筆記具であって、前記消去部材は、前記軸筒の前端に設けられ且つ前記筆記部が突出可能な貫通孔が形成され、前記消去部材の一部が、軸線方向前方に向かって延在する突出部を形成していることを特徴とする筆記具が提供される。」

エ 「【0012】
また、請求項4に記載の発明によれば請求項1から3のいずれか1つに記載の発明において、当該筆記具が熱変色性筆記具であり、前記消去部材が、擦過した際に生じる摩擦熱によって当該筆記具の筆跡を熱変色可能であることを特徴とする筆記具が提供される。」

オ 「【発明の効果】
【0015】
各請求項に記載の発明によれば、従来のいわゆるノック式筆記具における、一般的である軸筒の前端孔から筆記部を出没させる形態を行わないことにより、筆記動作から擦過動作への持ち替え動作を最小限にしつつ安定した擦過動作が可能である筆記具であって、十分な接触面積が得られる消去部材を備えた筆記具を提供するという共通の効果を奏する。」

カ 「【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態による筆記具1の筆記状態の斜視図であり、図2は、図1の筆記具1の筆記状態の正面図であり、図3は、図1の筆記具1の筆記状態の縦断面図である。」

キ 「【0028】
リフィル5として、熱変色インクを収容したボールペン、熱変色芯を収容したシャープペンシル、鉛筆ホルダ等を使用することができる。本実施形態におけるリフィル5 は、熱変色性インクを収容する。従って、筆記具1は熱変色性筆記具であり、消去部材である口先部材3の消去部3cの突出部3fによって擦過した際に生じる摩擦熱によって、筆記具
1の筆跡を熱変色可能である。」

ク 「【0030 】
口先部材3の消去部3cを形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材質やスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物、市販されている消しゴム等が挙げられる。口先部材3の消去部3cは、特にポリプロピレン樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物、またはポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの混合物から形成され、その配合比率がそれぞれ重量比で1:1?1:4であり、研磨剤、可塑剤、充填剤を含有せず、JIS K6251に規定されたデュロメータ硬度A が70°?100°となる材質からなり、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%以下のものである可塑剤を含有しない低摩耗性の弾性材料から形成される。それによって、口先部材3の消去部3cは、擦過時に消しカスが生じにくく、熱変色性も優れているので有効である。
【0031】
なお、本発明における「消去」とは、上記熱変色性インクを用いた場合以外にも、筆記した描線、文字等を消しゴム等の消去部材で吸着又は削ぎ落とすことをいう。従って、本発明は、筆記した描線を、消去部を用いて消去する任意の筆記具にも適用可能である。」

(4)甲第4号証(admin パーマリンク,プラスチック素材辞典 ABS樹脂,[online],[令和2年8月24日出力],インターネット<URL:https://www.plastics-material.com/abs/>)の記載
甲第4号証には、次の事項が記載されている。

「ABS樹脂
・・・
特性
・・・
・アクリロニトリル(AN)、ブタジエン(BD)、スチレン(ST)の成分比を変えることで多くの種類が製造可能。
・・・
・衝撃強さは種々のものが販売されている。」(出力1/6頁?2/6頁)

(5)甲第5証(日本工業規格JIS K7204:1999 プラスチック-摩耗輪による摩耗試験方法,[online],[令和3年6月9日出力],インターネット<URL:http://kikakurui.com/k7/K7204-1999-01.html>)の記載
甲第5号証には、次の事項が記載されている。

ア 「日本工業規格 JIS
K7204:1999
プラスチック?摩耗輪による
摩耗試験方法 」(出力2/14頁)

イ 「 表1 摩耗輪選択表

記号 摩耗輪 構成要素 推奨荷重 ・・・
タイプ 範囲N ・・・
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
CS17 弾力性 ゴム及び研磨紙 4.9?9.8 ・・・」
(出力6/14頁)

ウ 「9.結果の表し方 結果は、次の方法の一つで表す。
・・・
c)密度の似かよった材料では、規定した一連の条件の下で試験を行ったとき、1000回転した後の質量の減少をkg単位で表す。」(出力7/14頁)

(6)甲第6号証(特開2012-200908号公報)の記載
甲第6号証には、次の事項が記載されている。

「【0002】
従来、プラスチック消しゴムは、通常、基材樹脂に可塑剤と、必要に応じて、安定剤や着色剤等のその他の添加剤を適宜に加えて均一に攪拌した後、適宜の成形手段を用いて加熱、成形して製造されている。」

(7)甲第7号証(特開2016-140976号公報)の記載
甲第7号証には、次の事項が記載されている。

「【0036】
消去具11は、特許文献1に記載されるような従来の消し具に較べて、紙面を傷めないように、適度に摩耗するように形成される。具体的には、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS?17でのテーバー摩耗量が5mg以上であることが好適である。テーバー摩耗量が5mg未満の消去具だと、擦過時に消しゴム消去性インクの筆跡が消去できないことに加え、紙面等を傷めてしまう。」

(8)甲第8号証(特開2016-140976号公報に係る出願に対して通知された2018年11月12日付け拒絶理由通知)の記載
甲第8号証には、次の事項が記載されている。

ア 「引用文献1に記載された消しゴムは、粒径5?200μmの球状無機粒子を含有することにより、「消去時に、紙面を傷めること無く」、「より小さい力で摩耗する」ものであるから、本願請求項1で特定された「JIS K7204に規定されたテーバー摩耗試験によるテーバー摩耗量がCS-17で5mg以上である」という事項を満たす蓋然性が高い。」
(出力1/3頁?2/3頁)

イ 「<引用文献等一覧>
1.特開平9-175087号公報」(出力2/3頁)

(9)甲第9号証(特開平9-175087号公報)
甲第9号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】 粒径5?200μmの球状無機粒子を含有することを特徴とする消しゴム。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉛筆やシャープペンシル等の筆跡を消去するための消しゴムに関するものであり、更に詳細には、消去時力を入れずに消すことができ、手が疲れにくい消しゴムに関する。」

ウ 「【0011】即ち、本発明が解決しようとする課題は、消去時に、紙面を傷めること無く、しかも、小さな力で消すことができる、疲れにくく、使いやすい消しゴムを提供することである。」

エ 「【0023】
【作用】本発明で使用する粒子径5?200μm以下の球状無機粒子は、配合された物の物理強度を弱くする劣化剤としての作用を有するため、消しゴムがより小さい力で摩耗するようになる。」

3 当審の判断
(1)理由1(新規性)について
ア 対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
(ア)本件発明の「複数の筆記リフィルを収容した筆記具」と、甲1発明の「ボールペンレフィルからなる筆記体を収容した熱変色性筆記具」とは、「筆記リフィルを収容した筆記具」の点で共通する。

(イ)甲1発明の「筒体の後方の端部の雄ねじからなる装着部」及び「硬質装着部」は、それぞれ本件発明の「後端部」及び「嵌合部」に相当する。
また、本件発明は「前記嵌合部の内壁には内ねじが形成され、当該筆記具の後端部には突出部が形成され、前記突出部の外壁には外ねじが形成され、前記消し具が、前記嵌合部の前記内ねじ及び前記突出部の前記外ねじを介して取付けられ」るものであることから、本件発明の「前記筆記具の後端部と嵌合する」のうちの「嵌合する」とは、ねじを介して取り付けられることを含む概念である。
したがって、甲1発明の「筆記具を構成する」「筒体の後方の端部の雄ねじからなる装着部に」「螺着して着脱自在に装着される」「前記外筒体内面の雌ねじからなる硬質装着部」は、本件発明の「前記筆記具の後端部と嵌合する嵌合部」に相当する。

(ウ)甲1発明の「前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱消色可能な」「第二摩擦部」は、本件発明の「筆記した描線を消去可能な消去部」に相当する。
また、甲1発明の「前記硬質樹脂からなる前記硬質装着部」が「二色成形によって一体に成形され」た「前記第二摩擦部」は、硬質装着部が固着されたものといえるから、本件発明の「二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された」「消去部」に相当する。
したがって、本件発明の「二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された、消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部」と、甲1発明の「前記硬質樹脂からなる前記硬質装着部」と「二色成形によって一体に成形され」、「前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱消色可能な」「第二摩擦部」とは、「二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された、筆記した描線を消去可能な消去部」の点で共通する。

(エ)甲1発明の「外筒体」は、「熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を」「熱消色可能な」「第二摩擦部」を「有」するから、「消し具」といえる。
したがって、甲1発明の「外筒体」は、本件発明の「消し具」に相当する。

(オ)甲1発明において、「硬質装着部」の材料の「硬質樹脂」が、「第二摩擦部」の材料の「ゴム状弾性を有する軟質樹脂」より剛性が高い材料であることは明らかである。
したがって、甲1発明の「ゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる第二摩擦部を有し」、「硬質樹脂からな」る「硬質装着部」は、本件発明の「前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成され」る「嵌合部」に相当する。

(カ)甲1発明の「雌ねじ」は、本件発明の「内ねじ」に相当する。
そして、甲1発明の「硬質装着部」が「雌ねじからなる」ことは、硬質装着部の内壁に内ねじが形成されるといえるから、本件発明の「前記嵌合部の内壁には内ねじが形成され」ることに相当する。

(キ)甲1発明の「筆記具を構成する」「筒体の後方の端部」に「雄ねじからなる装着部」を有することは、筒体の後方の端部から雄ねじからなる装着部が突出して突出部が形成されているといえるから、本件発明の「当該筆記具の後端部には突出部が形成され」ていることに相当する。

(ク)甲1発明の「雄ねじ」は、本件発明の「外ねじ」に相当する。
そして、甲1発明において、「硬質装着部」の「雌ねじ」及び「熱変色性」「筆記具を構成する」「筒体の後方の端部の」「装着部」の「雄ねじ」を介して、「外筒体」が「装着」されるといえるから、甲1発明は、本件発明の「前記突出部の外壁には外ねじが形成され、前記消し具が、前記嵌合部の前記内ねじ及び前記突出部の前記外ねじを介して取り付けられ」ることに相当する構成を有するといえる。

(ケ)甲1発明の「前記硬質装着部」が「硬質樹脂からなり」、「前記硬質樹脂には、ポリカーボネート又はABS樹脂が使用され」ることは、本件発明の「前記嵌合部は、ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され」ることに相当する。

そうすると、本件発明と甲1発明とは、
「筆記リフィルを収容した筆記具であって、
当該筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された、筆記した描線を消去可能な消去部と、を備えた消し具を有し、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成され、
当該筆記具の後端部には突出部が形成され、前記突出部の外壁には外ねじが形成され、前記消し具が、前記嵌合部の前記内ねじ及び前記突出部の前記外ねじを介して取付けられ、
前記嵌合部は、ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成される、筆記具。」
の点で、一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件発明は「複数の筆記リフィルを収容した筆記具」であるのに対し、甲1発明は「ボールペンレフィルからなる筆記体を収容した熱変色性筆記具」であり、複数のボールペンレフィルからなる筆記体を収容した熱変色性筆記具ではない点。

(相違点2)
本件発明は「消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部」であって、「可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」「消去部」を有するのに対し、甲1発明は「熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱消色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる第二摩擦部」を有する点。

(相違点3)
本件発明は「前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され」るのに対し、甲1発明は「外筒体」の「少なくとも後方の端部に」「第二摩擦部を有」し、「前記外筒体の内面及び/又は側面に、硬質樹脂からな」「る硬質装着部を具備」するものであるが、「第二摩擦部」が「硬質装着部」の外周に固着されるものであるか否か特定されていない点。

イ 判断
上記アで述べたように、本件発明と甲1発明とは、相違点1ないし3で相違するから、本件発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず特許を受けることができないものではないから、本件特許の請求項2に係る特許は、同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(2)理由2(進歩性)について
ア 対比
本件発明と甲1発明との一致点及び相違点は上記(1)アで述べたとおりである。

イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
(相違点2について)
甲1発明は、上記2(1)アの段落【0001】ないし【0007】に記載されているように、筆記具を構成する筒体の一方の端部に、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具に関して、摩擦体を筆記具のキャップや軸筒等に装着した場合に、熱変色性インキの筆跡の小面積を熱変色させたい場合と、熱変色性インキの筆跡の大面積を熱変色させたい場合とで、摩擦する方向を選択する構造を備える従来技術においては、摩擦体の当接した部分から特定方向に摩擦しなければならず、クリップ、操作体、回り止め突部等、熱変色性筆記具の後部に装着した摩擦体を使用するときに、筒体の角度や回転方向を調整することが難しく、摩擦する方向を選択することが困難な場合があるという問題に鑑み、熱変色性インキの筆跡の小面積や細い幅を熱変色させたい場合や、熱変色性インキの筆跡の大面積や太い幅を熱変色させたい場合等、目的に応じて筆跡を摩擦することのできる熱変色性筆記具を提供することを課題とするものであるところ、甲1発明の「熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱消色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる第二摩擦部」は、熱変色性インキの筆跡の大面積や太い幅を熱変色させたい場合に筆跡を摩擦することができるものであって、このような甲1発明の熱変色させたい場合に、「消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部」であって、「可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」「消去部」を適用する動機付けは見いだせない。

この点、申立人は、令和3年6月9日付けの意見書において、主に熱変色性インクによる筆跡を擦過して変色又は消色する消去部材を備えた筆記具に関する発明に係る甲第3号証の段落【0030】に「口先部材3の消去部3cを形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材質やスチレン系エラストマー、・・・市販されている消しゴム等が挙げられる」と記載され、段落【0032】に「口先部材3の基部3b及び消去部3cは、二色成形等による一体成形や同種材料による一体成形にしてもよい」と記載されており、甲1発明のような熱変色性筆記具においても、摩擦部の部材として消しゴムを用いることは、当然に選択肢の一つとして考慮されるべきものであり、それによって何ら特段予測できない顕著な効果を奏するものではなく、そして、「消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部」という規定が単に消去具の性能を規定するものだとすれば、消しゴムを選択した場合、この構成を充足することになるのは自明であるから、この点は、当業者が通常の創作能力の発揮として行う設計事項に過ぎないと主張する。

しかしながら、甲第3号証には、
(ア)技術分野が、消去部材を備えた筆記具、特に熱変色性インクによる筆跡を擦過して変色又は消色する消去部材を備えた筆記具に関する(【0001】参照)ものであり、発明が解決しようとする課題が、従来の筆記具では、擦過動作時において、消去部材の筆記面に対する接触面積が、形状に起因して筆跡に対して小さい場合があるという問題に対して、筆記動作から擦過動作への持ち替え動作を最小限にしつつ安定した擦過動作が可能である筆記具であって、十分な接触面積が得られる消去部材を備えた筆記具を提供することであり(【0007】及び【0009】参照)、発明の効果が、従来のいわゆるノック式筆記具における、一般的である軸筒の前端孔から筆記部を出没させる形態を行わないことにより、筆記動作から擦過動作への持ち替え動作を最小限にしつつ安定した擦過動作が可能である筆記具であって、十分な接触面積が得られる消去部材を備えた筆記具を提供するという共通の効果を奏するものであり、いずれも、熱変色性インクによる筆跡を擦過して変色又は消去する消去部材を備えた筆記具に限定されるものではないこと、
(イ)課題を解決する手段及び特許請求の範囲の記載において、請求項1では、筆記具が熱変色性筆記具であり、前記消去部材が、擦過した際に生じる摩擦熱によって当該筆記具の筆跡を熱変色可能であることは特定されず、請求項4において初めて特定されていること(請求項1及び4、【0009】、【0012】参照)、
(ウ)「消去」とは、上記熱変色性インクを用いた場合以外にも、筆記した描線、文字等を消しゴム等の消去部材で吸着又は削ぎ落とすことをいうものであること(【0031】参照)
が記載されており、これらの記載からすれば、「【0030】・・・消去部3cを形成する材用として・・・市販されている消しゴム」「が挙げられる」との記載が、熱変色性インクによる筆跡を擦過して変色又は消去する消去部材を意味するのか、熱変色性インクを用いた場合以外に筆記した描線、文字等を吸着又は削ぎ落とす消しゴムの消去部材を意味するのか、不明である。
そして、甲第3号証に、熱変色インクによる筆跡を擦過して変色又は消去する消去部材は、可塑剤を含有しない低摩耗性の弾性材料から形成されることによって、擦過時に消しカスが生じにくく、熱変色性も優れているので有効であると記載されているように(【0030】参照)、熱変色性筆記具において、摩擦部の部材として消しゴムを用いれば、不要な消しカスが生じるとともに摩擦力が低下し熱変色性が劣ることとなることは明らかであるから、甲1発明のような熱変色性筆記具においても、摩擦部の部材として消しゴムを用いることが、当然に選択肢の一つとして考慮されるべきものであるとの申立人の主張は採用できない。

また、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第9号証の記載を参酌しても、甲1発明の「熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱消色可能なゴム状弾性を有する軟質樹脂からなる第二摩擦部」を、「消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部」であって、「可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」「消去部」とする動機付けは見いだせない。

したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことということはできず、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第9号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件特許の請求項2に係る特許は、同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(3)(理由3)(明確性)について
訂正前の「前記嵌合部と前記消去部とは二色成形により一体に形成され」という製造方法によって生産物を特定しようとする明確でない記載は、訂正後の請求項2において「二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された」「消去部」との記載に改められた。
そして、「二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された」「消去部」との記載は、二色成形により嵌合部に一体的に固着されたという状態を示すことにより消去部の構造又は特性を特定しているにすぎず、製造方法によって生産物を特定しようとする記載に該当せず、明確でないとはいえない。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえず、本件特許の請求項2に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(4)(理由4)(サポート要件)について
ア 筆記具本体の構成について
筆記具本体の構成が特定されていないとして取消理由の対象とされた請求項1は、本件訂正により削除されたため、この取消理由は解消された。

イ 嵌合部及び消去部の剛性について
訂正後の請求項2においては、「嵌合部」が「ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され」ること、及び「消去部」が「消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能」であり「可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」ことが特定されたため、「前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成され」との記載について、嵌合部及び消去部の具体的な剛性値が特定されていなくても、当業者であれば、消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能であり、可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である消去部を形成する材料に比べて、より剛性が高い材料であるであるポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンという硬質プラスチック材料により嵌合部が形成されることで、「使用時において消去部が脱落し難い」という作用効果を奏することによって、発明の課題を解決できると認識できるものといえる。

ウ したがって、本件特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえず、本件特許の請求項2に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由について
1 申立理由における申立人の主張の概要
(1)異議申立書で主張する「剛性」に関する明確性要件違反について
申立人は、訂正前の請求項1及び2において、「前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成される」との記載は、「剛性」の定義が存在せず、具体的に何を指標として嵌合部の材料と消去部の材料の剛性を比較して、「剛性が高い材料」と定義しているのか理解できず、具体的にどのような材質を嵌合部として用いれば請求項1及び2に係る発明の技術的範囲に含まれるか理解することもできないのであるから、明確でなく、請求項1及び2に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張する。

(2)令和3年6月9日付けの意見書で主張する明確性要件違反について
ア 「筆記リフィル」と「消去部」の範囲について
申立人は、訂正後の請求項2において、「消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部」を備えること、並びに「前記消去部は、可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」ことが特定されたが、筆記リフィルとして消しゴム消去性インク以外のインクが権利範囲に含まれるのか、消去部として消しゴム以外も権利範囲に含まれるのか、その権利範囲の外延が明確でないから、請求項2に係る特許は、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張する。

イ JIS K7204との整合について
申立人は、訂正後の請求項2において、「テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」という発明特定事項の条件部分である「摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下」という点が、JIS K7204とは整合しておらず、それゆえ、「テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」という発明特定事項が具体的にどのような範囲を示しているのか認識することができず明確でないから、請求項2に係る特許は、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張する。

2 当審の判断
(1)異議申立書で主張する「剛性」に関する明確性要件違反について
訂正後の請求項2においては、「嵌合部」が「ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され」ること、及び「消去部」が「消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能」であり「可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」ことが特定されたため、「前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成され」との記載の「剛性」について、嵌合部及び消去部の具体的な剛性値が特定されていなくても、当業者であれば、消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能であり、可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である消去部を形成する材料に比べて、剛性、すなわち、圧縮・ずれ・ねじれなどの外力に対する、物体の変形しにくい性質が高い材料であるであるポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンという硬質プラスチック材料により嵌合部が形成されることを特定するものであることを理解できるものといえ、明確でないとはいえない。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえず、本件特許の請求項2に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(2)令和3年6月9日付けの意見書で主張する明確性要件違反について
ア 「筆記リフィル」と「消去部」の範囲について
訂正後の請求項2において、「消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部」を備えること、並びに「前記消去部は、可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」ことが特定されているのであるから、筆記リフィルは消しゴム消去性インクを用いるものであり、消去部は消しゴムを用いるものであることは明らかであるから、「筆記リフィル」と「消去部」の範囲が明確でないとはいえない。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえず、本件特許の請求項2に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

イ JIS K7204との整合について
JIS K7204を説明する甲第5号証には、JIS K7204のプラスチック-摩耗輪による摩耗試験方法の説明として、表1の摩耗輪選択表に、記号CS17で示される摩耗輪の推奨荷重範囲が4.9?9.8Nであることが示され、結果は、1000回転した後の質量で表すことが示されていることから、訂正後の請求項2の発明特定事項である「テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」という発明特定事項の条件部分である「摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下」という点は、「荷重9.8N」がJIS K7204の推奨荷重範囲に整合するものであり、この環境下での「テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である」という発明特定事項は、荷重9.8N、摩耗輪CS-17の回転速度1000rpmで1000回転した後の摩耗による質量の減少が5mg以上であることを意味することは当業者にとって明らかであり、明確でないとはいえない。
したがって、本件特許請求の範囲の請求項2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえず、本件特許の請求項2に係る特許は、同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当しないから、取り消されるべきものではない。

(3)小括
よって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由によっては、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由によっては、本件請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
複数の筆記リフィルを収容した筆記具であって、
当該筆記具の後端部と嵌合する嵌合部と、二色成形により前記嵌合部に一体的に固着された、消しゴム消去性インクを用いて筆記した描線を消去可能な消去部と、を備えた消し具を有し、
前記嵌合部は前記消去部を形成する材料より剛性が高い材料により形成され、
前記消去部は前記嵌合部の外周に固着され、
前記嵌合部の内壁には内ねじが形成され、
当該筆記具の後端部には突出部が形成され、前記突出部の外壁には外ねじが形成され、前記消し具が、前記嵌合部の前記内ねじ及び前記突出部の前記外ねじを介して取付けられ、
前記嵌合部は、ポリカーボネート又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから形成され、
前記消去部は、可塑剤を含有し、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)の荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が5mg以上である、筆記具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-08-11 
出願番号 特願2015-91896(P2015-91896)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B43K)
P 1 651・ 121- YAA (B43K)
P 1 651・ 537- YAA (B43K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤井 達也  
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 畑井 順一
藤田 年彦
登録日 2019-05-10 
登録番号 特許第6523770号(P6523770)
権利者 三菱鉛筆株式会社
発明の名称 消し具及び筆記具  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 青木 篤  
代理人 田原 正宏  
代理人 田原 正宏  
代理人 三橋 真二  
代理人 三橋 真二  
代理人 伊藤 公一  
代理人 伊藤 公一  
代理人 前島 一夫  
代理人 廣瀬 繁樹  
代理人 前島 一夫  
代理人 廣瀬 繁樹  
代理人 島田 哲郎  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 青木 篤  
代理人 島田 哲郎  

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