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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
管理番号 1378773
異議申立番号 異議2021-700731  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-27 
確定日 2021-10-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6820739号発明「排ガス浄化触媒」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6820739号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6820739号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成28年12月27日の出願であり、令和3年1月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年7月27日に特許異議申立人森田弘潤(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件発明

請求項1?6に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応して「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
ハニカム基材と、
前記ハニカム基材上の、アルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層と、
前記剥離防止コート層上の触媒コート層と、
を有し、
前記アルミナ粒子のメジアン径が3.0μm以上であり、
前記剥離防止コート層のコート量が、前記ハニカム基材の容量1L当たり20g以上30g以下であり、
前記触媒コート層が、メジアン径2.5μm以下の、触媒金属を担持している担体粒子を主成分とし、且つ、
前記触媒コート層のコート量が、前記ハニカム基材の容量1L当たり150g以上である、
排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記アルミナ粒子のメジアン径が3.5μm以上7.5μm以下である、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記触媒コート層がアルミナ粒子を含有する、請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記剥離防止コート層に含まれる前記アルミナ粒子の細孔容積が、0.3cm^(3)/g以上0.9cm^(3)/g以下である、請求項1?3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記剥離防止コート層が、貴金属を含まない、請求項1?4のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項6】
前記ハニカム基材が、コージェライト又は金属酸化物粒子を主成分とするモノリス構造体である、請求項1?5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。」

第3 特許異議の申立理由

1 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「申立理由1」という。)
本件発明の課題は「低減された排気背圧、触媒コート層の構造的安定性、及び優れた排ガス浄化能のすべてを満足する排ガス浄化触媒を提供すること」であり(本件明細書の【0012】)、本件発明1は、粒径が比較的大きいアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層を介して触媒コート層を配置するとともに、触媒コート層を構成する粒子を小粒径化して触媒コート層の厚さを薄くすることにより、排ガス浄化能を維持しながら、排気背圧を低減しつつも触媒コート層の構造的安定性の改善したものであると言える。具体的には、剥離防止コート層については、メジアン径が3.0μm以上のアルミナ粒子を用いるとともに、層の厚さをウォッシュコート量で20g/L以上30g/L以下とし、触媒コート層については、メジアン径2.5μm以下の触媒担体粒子を用いるとともに、層の厚さをウォッシュコート量で150g/L以上としたものである。
従って、本件特許明細書に記載された実施例1?10のうち、実施例1は、剥離防止コート層のコート量が10g/Lであるから、剥離防止コート層のコート量の観点から比較例(又は参考例)として位置づけられ、実施例4及び5は、触媒コート層の触媒担体粒子のメジアン径がそれぞれ3.0μm及び4.5μmであるから、触媒コート層の触媒担体粒子のメジアン径の観点から比較例(又は参考例)として位置づけられるものと考えられる。
しかしながら、本件発明1の要件を全て充足する実施例10と実施例1(比較例相当)とを対比すると、コート層剥離率[%](ave.)について、実施例10が1.98であるのに対し、実施例1は1.78であり、5m^(3)/分、6m^(3)/分、及び7m^(3)/分での排気背圧[kPa・s]について、実施例10が、それぞれ1.18、1.51及び1.84であるのに対し、実施例1は、それぞれ0.94、1.15及び1.35であり(【表1】、【表2】)、剥離防止コート層のコート量が20g/Lである実施例10よりも、むしろコート量が10g/Lである実施例1の方が、コート層剥離率及び排気背圧の何れにおいても優れた結果となっている。
また、本件発明1の要件を全て充足する実施例3と実施例4及び5(比較例相当)とを対比すると、コート層剥離率[%](ave.)について、実施例3が0.88であるのに対し、実施例4は0.54、実施例5は0.71であり、5m^(3)/分、6m^(3)/分、及び7m^(3)/分での排気背圧[kPa・s]について、実施例3が、それぞれ1.09、1.35及び1.60であるのに対し、実施例4は、それぞれ1.15、1.42及び1.69、実施例5は、それぞれ1.25、1.55及び1.85であり(【表1】、【表2】)、触媒コート層の触媒担体粒子のメジアン径が1.5μmである実施例3よりも、むしろ触媒担体粒子のメジアン径が3.0μm以上である実施例4及び5の方が、コート層剥離率及び排気背圧の何れにおいても優れた結果となっている。即ち、実施例3及び10は本件発明1に包含されるものであるところ、これらの態様は、比較例として位置づけられる本件発明1に包含されない実施例1、4及び5よりも、触媒コート層の構造的安定性及び排気背圧が何れも劣っていることが実証されている。
したがって、本件発明1は、上記した課題を解決し得ない態様をも包含し得ることは明らかであり、本件発明1に記載された事項のみによって課題が解決できると当業者が認識することはできないと言える。よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないことは明らかである。
よって、本件特許1は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 特許法第29条第2号所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「申立理由2」という。)
本件発明1?6は、下記甲第1号証に記載された発明及び下記甲第2号証?甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:特開2010-12428号公報
甲第2号証:特開2013-81883号公報
甲第3号証:特開2002-361089号公報
甲第4号証:Sasol社の高純度焼成アルミナ(PURALOX/CATALOX)の商品カタログ
(以下、「甲第1号証」を「甲1」などという。)

第4 当審の判断

1 申立理由1(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)サポート要件に関する判断
ア 本件発明1の課題について
本件明細書の記載によれば、排ガス浄化触媒としては、ハニカム基材のセル内の表面上に、触媒機能を有する触媒コート層が形成されて成る構成が広く知られているが(【0003】)、排ガスはハニカム基材の細いセルを通過して浄化された後、排出されることになるため、排ガス浄化触媒の存在により、一定の排気背圧(圧損)が発生する(【0004】)。ここで、排ガス浄化触媒の排ガス浄化能を維持しつつ排気背圧を低減するには、コート層に含有される粒子の粒径を小さくすることが有効である(【0006】)が、粒子を小粒径化すると、形成される触媒コート層が構造的に不安定となり、このような触媒コート層は、内燃機関の運転に伴う振動等によってヒビ割れ、脱落等が生じることがある(【0007】)。この点、特開2001-232212号公報には、触媒成分を含む触媒スラリーを担体にコートして触媒成分を担体表面に付着させた排ガス浄化触媒において、触媒コート層の最表面に、厚さが50μm以下の亀裂防止コート層を備えた排ガス浄化触媒が記載され、この亀裂防止コート層として、例えば、平均粒子径が3?7μmのアルミナ、ゼオライト等の粒子の層を用いることができるとしている(【0009】)。
そして、【発明が解決しようとする課題】の記載の後の、上記特許文献1の技術は、排ガス浄化触媒における触媒コート層の構造的安定化の面では有効であるが、排ガス浄化性能に関して更に改良されることが好ましい(【0011】)との記載を受け、本件発明の目的は、低減された排気背圧、触媒コート層の構造的安定性、及び優れた排ガス浄化能のすべてを満足する排ガス浄化触媒を提供することである(【0012】)としている。
そうすると、本件発明の課題は、上記【0012】に記載されるとおり、「低減された排気背圧、触媒コート層の構造的安定性、及び優れた排ガス浄化能のすべてを満足する排ガス浄化触媒を提供すること」にあるといえるが、上記の記載によれば、「低減された排気背圧」については、上記【0006】で「排ガス浄化触媒の排ガス浄化能を維持しつつ排気背圧を低減するには、コート層に含有される粒子の粒径を小さくすることが有効」とされていることから、触媒コート層に含有される粒子の粒径を小さくした排ガス浄化触媒において、「触媒コート層の構造的安定性」が達成されれば、「触媒コート層の構造的安定性」及び「低減された排気背圧」が達成されることになることが理解できる。
また、「優れた排ガス浄化能」については、上記特開2001-232212号公報に記載される技術、すなわち、触媒成分を含む触媒スラリーを担体にコートして触媒成分を担体表面に付着させた排ガス浄化触媒において、触媒コート層の最表面に、厚さが50μm以下の亀裂防止コート層を備えた排ガス浄化触媒、に対し「排ガス浄化性能に関して更に改良されることが好ましい」としているのであるから、この排ガス浄化触媒の排ガス浄化性能を上回ることができれば、「優れた排ガス浄化能」が達成されることになることが理解できる。

イ 本件発明1の課題を解決することができることに関する発明の詳細な説明の記載について
本件明細書の【0023】には、「ハニカム基材上に、粒径が比較的大きいアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層を介して触媒コート層を配置することにより、触媒コート層の構造的安定性が顕著に向上する。そのため、触媒コート層を構成する粒子を小粒径化して触媒コート層の厚さを薄くした場合であっても、内燃機関の運転に伴う振動等によってヒビ割れ、脱落等が生じることがない。」、同【0024】の「本発明の排ガス浄化触媒は、コート層の厚さを全体として薄く形成して排ガスの流路幅を大きくすることができるから、排気背圧を低減することができ、内燃機関の出力向上に資する。」及び同【0025】の「本発明の排ガス浄化触媒は、更に、粒径が比較的大きいアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層が最表面に露出しておらず、触媒コート層が最表面にあるため、供給される排ガスが直接に触媒コート層に接触する。従って、触媒コート層による排ガス浄化を効率的に行うことができる。」の記載によれば、ハニカム基材上に、粒径が比較的大きいアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層を介して触媒コート層を配置することにより、「触媒コート層の構造的安定性」を顕著に向上することができること、触媒コート層の構造的安定性が顕著に向上することにより、触媒コート層を構成する粒子を小粒径化して触媒コート層の厚さを薄く形成し排ガスの流路幅を大きくすることができるから、「低減された排気背圧」を達成することができること、さらに、粒径が比較的大きいアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層が最表面に露出しておらず、触媒コート層が最表面にあるため、供給される排ガスが直接に触媒コート層に接触し、「優れた排ガス浄化性能」を達成することができることが理解できる。そして、上記剥離防止コート層の粒径が比較的大きいアルミナ粒子とは、同【0042】の「上記アルミナ粒子のメジアン径は、3.0μm以上であれば、ハニカム基材及び触媒コート層との密着性が高い剥離防止コート層を緻密に形成することができる。」との記載によれば、「3.0μm以上」であること、また、小粒径化された触媒コート層を構成する粒子については、同【0054】の「担体粒子は、触媒コート層を緻密に薄く形成し、排気圧損をできるだけ低減する観点から、小粒径であることが好ましい。具体的には、担体粒子のメジアン径は、5.0μm未満であることが好ましく、4.5μm以下、4.0μm以下、3.5μm以下、3.0μm以下、又は2.5μm以下であってよい。」の記載によれば、メジアン径で、少なくとも5.0μm未満の担体粒子であると理解できる。さらに、触媒コート層を構成する粒子を小粒径化して触媒コート層の厚さを薄く形成できることに関しては、触媒コート層を薄くし過ぎると「優れた排ガス浄化性能」が損なわれることが明らかであるから、同【0062】の「触媒コート層のコート量は、高い排ガス浄化能を確保する観点から、ハニカム基材の容量1L当たり、100g以上、110g以上、120g以上、130g以上、140g以上、又は150g以上であってよく」との記載によれば、触媒コート層のコート量は、ハニカム基材の容量1L当たり、100g以上であれば良いことが理解できる。
そして、同【0076】?【0100】に記載の「実施例」において、ハニカム基材上に、メジアン径が3.0μm以上のアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層を介してメジアン径が、少なくとも5.0μm未満の担体粒子で、コート量が、ハニカム基材の容量1L当たり100g以上である触媒コート層を配置している実施例1?10は、剥離防止コート層が設けられていない比較例1に対して、コート層剥離率[%](ave.)でいずれも優れた結果を示している。
また、実施例の結果を受け、同【0098】に、上記アの特開2001-232212号公報に記載される排ガス浄化触媒に対応する「比較例2(参考例)の触媒は、粒子のメジアン径が1.5μmである場合のコート層剥離率こそ低いものの、最上層に、粒子径が大きい剥離防止コート層を有するため、触媒コート層への排ガスの接触が阻害され、排ガス浄化効率に劣ると考えられる。」、同【0099】に「これらに対して、メジアン径3.0μm以上のアルミナ粒子を含む剥離防止コート層を介して触媒コート層を有する実施例1?10の触媒は、粒子のメジアン径が1.5μmと小さい場合であってもコート層剥離率が1.98%以下と低く、高度の構造的安定性を有していることが検証された。」、同【0100】に、実施例1?10の排気背圧[kPa・s]を示す「上記表2の結果からは、メジアン径3.0μm以上のアルミナ粒子を含む剥離防止コート層を介して触媒コート層を有する実施例1?10の触媒を使用した場合の排気背圧は、触媒コート層に含有される粒子のメジアン径にあまり依存しないことが分かる。」、同【0101】に「これらのことから、本発明の排ガス浄化触媒は、所定の粒径を有するアルミナを含む剥離防止コート層の存在によって、構造安定性が顕著に向上されており、触媒コート層に含有される粒子を小粒径化した場合でも、コート層が剥離脱落する程度が抑制されている。従って本発明の排ガス浄化触媒は、触媒コート層の粒子の小粒径化によってコート層の薄くした場合であっても、実用的な構造強度を維持することができ、構造安定性の向上と排気背圧の低減とが両立されたものである。」及び同【0102】に「更に、本発明の排ガス浄化触媒は、触媒コート層が最表面に位置するため、触媒コート層による所期の排ガス浄化能を発現することができる。」と記載されているように、具体的な「実施例」においても、「低減された排気背圧」、「触媒コート層の構造的安定性」及び「優れた排ガス浄化能」が達成されることが示されているといえる。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明の記載からは、ハニカム基材上に、メジアン径が3.0μm以上のアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層を介してメジアン径が、少なくとも5.0μm未満の担体粒子で、コート量が、ハニカム基材の容量1L当たり100g以上である触媒コート層を配置している排ガス浄化触媒であれば、上記アで述べた本件発明1の課題を解決することができることが理解できる。

ウ 本件明細書の発明の詳細な説明に記載される本件発明1の課題を解決することができると認識できる範囲と本件発明1の対比
上記イで述べたように、ハニカム基材上に、メジアン径が3.0μm以上のアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層を介してメジアン径が、少なくとも5.0μm未満の担体粒子で、コート量が、ハニカム基材の容量1L当たり100g以上である触媒コート層を配置している排ガス浄化触媒であれば、本件発明1の課題を解決することができることが理解できる。
一方、本件発明1は、「ハニカム基材と、
前記ハニカム基材上の、アルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層と、
前記剥離防止コート層上の触媒コート層と、
を有し、
前記アルミナ粒子のメジアン径が3.0μm以上であり、
・・・
前記触媒コート層が、メジアン径2.5μm以下の、触媒金属を担持している担体粒子を主成分とし、且つ、
前記触媒コート層のコート量が、前記ハニカム基材の容量1L当たり150g以上である、
排ガス浄化触媒。」であり、上述の、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される本件発明1の課題を解決することができると認識できる排ガス浄化触媒の条件を全て満足し、その範囲内の排ガス浄化触媒である。
そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件発明1は、サポート要件を満足し、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるというべきである。
したがって、特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)に係る申立理由1には、理由がない。

(3)異議申立人の主張に対する判断
異議申立人の主張は、要は、本件発明1の範囲外の実施例1(比較例相当)の方が、本件発明1の範囲内の実施例10よりも、コート層剥離率及び排気背圧の何れにおいても優れた結果を示していること、及び本件発明1の範囲外の実施例4及び5(比較例相当)の方が、本件発明1の範囲内の実施例3よりも、コート層剥離率及び排気背圧の何れにおいても優れた結果を示していることから、本件発明1は、本件発明1に包含されない実施例1、4及び5よりも、触媒コート層の構造的安定性及び排気背圧が何れも劣っており、発明の課題を解決し得ない態様である実施例3及び10を包含し、本件発明1に記載された事項のみによって課題が解決できると当業者が認識することはできないというものである。
しかしながら、上記の異議申立人の主張は、単に、本件発明の課題を解決することに対応する効果において、本件発明1の範囲外の態様よりも劣る実施例3及び10は、本件発明1の課題を解決できるものではないことを根拠にするものであって、上記(2)アで述べた判断枠組みに基づくものではない。
そして、実施例3及び10は、本件発明1の課題を解決できないものではなく、さらにいえば、実施例1、4及び5も本件発明1の課題を解決できないものではなく、実施例3及び10を含め本件発明1?6が、本件発明1の課題を解決できるものであることは、上記(2)で述べたとおりである。
そうすると、異議申立人の上記主張は、採用することができない。

(4)小括
以上のとおり、本件発明1について、特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、申立理由1には理由がない。

2 申立理由2(特許法第29条第2項(進歩性欠如))について
(1)甲1?甲4に記載の事項
ア 甲1(特開2010-12428号公報)
(ア)「【請求項1】
ハニカム担体と、
耐熱性無機酸化物を含有する第一アンダーコート層と、
貴金属粒子と、前記貴金属粒子と接触し、前記貴金属粒子の移動を抑制する第一化合物と、前記貴金属粒子及び前記第一化合物を内包し、前記貴金属粒子の移動を抑制すると共に第一化合物同士の接触に伴う第一化合物の凝集を抑制する第二化合物とからなり、前記第一化合物は前記貴金属粒子を担持し、さらに、この貴金属粒子を担持した第一化合物の単体又は集合体は前記第二化合物により隔てられた区画内に内包された触媒粉末を含有する排気ガス浄化触媒層と、を備え、 前記第一アンダーコート層は前記ハニカム担体の内表面における後端部に形成され、前記排気ガス浄化触媒層は前記ハニカム担体の内表面全体に、かつ、前記第一アンダーコート層上に形成され、 前記ハニカム担体の前端部における前記排気ガス浄化触媒層のコーナー部の厚さは、前記ハニカム担体の後端部における前記排気ガス浄化触媒層のコーナー部の厚さよりも大きいことを特徴とする排気ガス浄化用触媒。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化用触媒に関する。詳細には、本発明は、低温域においても、排気ガス中に含まれる炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物を高効率で浄化することができる排気ガス浄化用触媒に関する。・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の排気ガス浄化用触媒では、アンダーコート層がハニカム担体の内表面全体に形成され、さらに前記アンダーコート層上に触媒層が形成されている。そのため、触媒全体のコート重量が多くなり、触媒の熱容量が増大するため、貴金属の活性温度に到るまでに時間がかかってしまう。よって、触媒の低温始動性が悪化することから、内燃機関の始動直後における排気ガス低温域において、上記有害ガスを十分に浄化することができなかった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、その目的とするところは、低温始動性に優れ、内燃機関の始動直後における排気ガス低温域においても有害ガスを十分に浄化することができ、さらに高温かつ高空間速度の条件でも、高効率で有害ガスを浄化することができる排気ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排気ガス浄化用触媒は、貴金属粒子と、前記貴金属粒子と接触し、前記貴金属粒子の移動を抑制する第一化合物と、前記貴金属粒子と前記第一化合物を内包し、貴金属粒子の移動を抑制すると共に第一化合物同士の接触に伴う第一化合物の凝集を抑制する第二化合物とからなり、前記第一化合物は、前記貴金属粒子を担持し、かつ、この貴金属粒子を担持した第一化合物の単体又は集合体を、前記第二化合物により隔てられた区画内に含む排気ガス浄化触媒層を備え、ハニカム担体の前端部における前記排気ガス浄化触媒層のコーナー部の厚さは、前記ハニカム担体の後端部における前記排気ガス浄化触媒層のコーナー部の厚さよりも大きいことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の排気ガス用浄化触媒は、ハニカム担体の前端部における排気ガス浄化触媒層のコーナー部の厚さは、前記ハニカム担体の後端部における前記排気ガス浄化触媒層のコーナー部の厚さよりも大きい。さらに、排気ガス浄化触媒層は、貴金属がナノメートルレベルまで微小化されつつも耐熱性が維持された触媒粉末を使用している。このため、低温始動性に優れ、特にコールドHCの浄化性能が極めて高い。また、触媒後端部における触媒層と排気ガスとの接触性も向上しているため、排気ガスが高温かつ高空間速度の状態でも、高い浄化性能を発揮することができ、特に窒素酸化物還元能を大幅に向上させることができる。」

(ウ)「【0009】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態に係る排気ガス浄化用触媒について説明する。図1では、本発明の第一実施形態に係る排気ガス浄化用触媒(以下、触媒ともいう。)10を示す。第一実施形態の排気ガス浄化用触媒10は、複数のセル5を有するハニカム担体1を備えている。排気ガスは、排気ガス流通方向Fに沿って各セル5内を流通し、そこで後述する排気ガス浄化触媒層3と接触することにより浄化される。
【0010】
図2(a)では、排気ガス浄化用触媒10の前端部における各セル5の断面を示しており、図2(b)では、排気ガス浄化用触媒10の後端部における各セル5の断面を示している。さらに、図3では、図1のIII-III線に沿った各セル5の断面を示している。図2及び図3に示すように、排気ガス浄化用触媒10におけるハニカム担体1の内表面には、耐熱性の無機酸化物を含有するアンダーコート層(以下、U/C層ともいう。)2と、前記アンダーコート層2上に形成された排気ガス浄化触媒層(以下、触媒層ともいう。)3とを備えている。図2に示すように、アンダーコート層2は、主として、ハニカム担体1のセル5の角に配置されている。これにより、アンダーコート層2の上に被覆される排気ガス浄化触媒層3中の触媒活性成分がセル角へ局所的に偏在したり、セル平坦部(セル壁部分)にコートされるべき触媒活性成分量が低減したり、触媒層が担体上から脱落することを防ぐことができる。
【0011】
さらに、図3に示すように、前記アンダーコート層2は、排気ガス流通方向Fの下流側たる、ハニカム担体1の後端部に形成された第一アンダーコート層2aと、排気ガス流通方向Fの上流側たる、ハニカム担体1の前端部に形成された第二アンダーコート層2bとからなる。ここで、前端部に形成された第二アンダーコート層2bの、担体1のコーナー部における厚さTf2は、後端部に形成された第一アンダーコート層2aの、担体1のコーナー部における厚さTr2の厚さよりも小さい。これにより、後述するように、第二アンダーコート層2b上に形成された排気ガス浄化触媒層3の厚さTf1が、第一アンダーコート層2a上に形成された排気ガス浄化触媒層3の厚さTr1より大きくなる。
・・・
【0015】
上述のように、本発明の特徴は、ハニカム担体1の前端部における排気ガス浄化触媒層3の厚さTf1は、ハニカム担体1の後端部における排気ガス浄化触媒層3の厚さTr1より大きくなっていることにある。この特徴により、排ガス濃度が著しく高い触媒10の前端部では、アンダーコート層のコート量を低減させた代わりに、排気ガス浄化触媒層のコート量を増加させたため、排気ガスと排気ガス浄化触媒層3が接触性が触媒10の後端部と比較して良好になる。これにより、触媒10の前端部における排気ガス浄化触媒層3は、排気ガスにより早期に活性化される。さらに、早期に活性化された前端部の排気ガス浄化触媒層3により、排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)が高効率で浄化される。
【0016】
ただ、ハニカム担体1の前端部において、排気ガスを高効率で浄化させた場合には、触媒10の後端部では排気ガス中における上記炭化水素等の濃度が低下していることから、触媒層内部における貴金属と炭化水素等との接触率を、前端部と比較して向上させる必要がある。しかし、本発明では、後端部におけるアンダーコート層のコート量を前端部よりも多くしたため、後端部において排気ガスと排気ガス浄化触媒層3との接触率が大幅に向上し、触媒層内部の貴金属も有効に活用することができる。そのため、前端部において浄化しきれなかった上記炭化水素等を後端部で浄化することができるため、触媒全体の排気ガス浄化率を大幅に向上させることができる。」

(エ)「【0020】
また、アンダーコート層2に含有される耐熱性無機酸化物は、アルミナ、シリカアルミナ、ゼオライト、チタニア、ジルコニアおよびセリアからなる群から選ばれる少なくとも一種の酸化物であることが好ましい。これらの酸化物は熱安定性や耐熱衝撃性が高いため、上層に設けられた排気ガス浄化触媒層3の剥離を防止することができる。
【0021】
さらに、排気ガス浄化触媒層3としては、国際公開番号WO2007/052627号に記載の触媒粉末を含有することが好ましい。図4では、排気ガス浄化触媒層3に用いられる触媒粉末の一例を模式的に示している。同図に示す触媒粉末20は、触媒活性を有する貴金属粒子12と、貴金属粒子12と接触し、当該貴金属粒子12の移動を抑制する第一化合物13と、貴金属粒子12と第一化合物13とを内包し、当該貴金属粒子12の移動を抑制すると共に第一化合物13同士の接触に伴う第一化合物13の凝集を抑制する第二化合物14とからなる。第一化合物13は、表面に貴金属粒子12を担持している。また、貴金属粒子12を担持した第一化合物13の複数個の集合体が、第二化合物14により隔てられた区画内に含まれている。
【0022】
図4に示す触媒粉末20は、貴金属粒子12と、第一化合物13とが接触して担持することにより、第一化合物13が化学的結合のアンカー材として作用し、貴金属粒子の移動を抑制する。また、貴金属粒子12が担持された第一化合物13を第二化合物14で覆い、内包する形態とすることにより、貴金属粒子12の移動を物理的に抑制する。更に、第二化合物14により隔てられた区画内に貴金属粒子12と第一化合物13とを含むことにより、第二化合物14により隔てられた区画を越えて第一化合物13が接触し凝集することを抑制する。これらのことから、触媒粉末20は、製造コストや環境負荷を大きくすることなく、貴金属粒子12の凝集による触媒活性低下を防止することができる。また、第一化合物13による貴金属粒子12の活性向上効果を維持することができる。
・・・
【0025】
第二化合物14により隔てられた区画内に含まれる第一化合物13の粒子径に関して、最大粒子径は2μmとすることが好ましい。粒子径が2μmを超えてしまうと、第二化合物14により隔てられた場合でも貴金属粒子12の凝集を抑制することが困難となる。さらに、第一化合物13の好ましい平均粒子径は50nm以下である。第一化合物13の平均粒子径が50nmを超える場合には、アンカー材である第一化合物に担持される貴金属粒子12の量が増え、貴金属粒子12間の距離が短くなり、貴金属粒子12の凝集が促進される。第一化合物13の、より好ましい平均粒子径は30nm以下である。第一化合物13の平均粒子径が30nm以下であることにより、触媒粉末20は、貴金属粒子12の凝集をいっそう抑制することができる。第一化合物13の平均粒子径の最適範囲は、5?15nm程度である。第一化合物13の平均粒子径の下限は、特に限定するものではないが、分析機器(例えばXRD)によって第一化合物13の結晶構造が同定できる大きさとして5nm以上とすることができる。
【0026】
また、貴金属粒子12の平均粒子径が2nm以下である場合、貴金属粒子12自身の移動によって貴金属粒子12のシンタリングが進み、逆に貴金属粒子12の平均粒子径が10nm以上である場合には、貴金属粒子12と排気ガスの反応性が著しく低下する恐れがある。従って、貴金属粒子12の平均粒子径は2nm以上10nm以下の範囲内にあることが好ましい。なお、本明細書において、上記各平均粒子径は、X線回折装置を用いて、各元素に由来するX線回折ピークの半値幅を求め、Scherrerの式より計算して算出することができる。
・・・
【0028】
また、アンカー材としての第一化合物13は、希土類元素、ジルコニウム及びアルカリ土類元素からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の元素の酸化物を含んでいることが好ましい。より具体的には、第一化合物13は、セリウム(Ce)を含む酸化物が好ましい。この酸化物は、酸素吸蔵能を有すると共に、貴金属粒子12、特に白金粒子と結合を作りやすいことが知られているので、アンカー効果をより一層発揮することができる。セリウムを含む酸化物としては、セリア(CeO_(2))やセリウムとジルコニウム(Zr)の複合酸化物であることが好ましい。
【0029】
第二化合物14は、アルミニウム(Al)又はジルコニウム(Zr)の少なくともいずれが一つの元素を含む酸化物であることが好ましい。具体的には、アルミナ(Al_(2)O_(3))やジルコニア(ZrO_(2))を挙げることができる。また、第二化合物14の中にランタン(La)を含有させてもよい。ランタンにはアルミナやジルコニアの耐久性を向上させる効果があるので、このような構成によれば、アルミナやジルコニアの耐熱性を向上させることができる。」

(オ)「【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
[実施例用触媒粉末の調製]
(実施例用ロジウム粉末)
セリア含有ジルコニア粉末(CeO_(2)を10wt%含有)を硝酸ロジウム水溶液に含浸し、120℃で2時間乾燥後、400℃で1時間焼成した。次いで、この粉末を水と混合し、ビーズミルを用いて粉砕処理を行い、メジアン径が150nmのスラリー溶液を得た。更に、このスラリー溶液にベーマイトを投入し、充分に混合・攪拌した後、370℃で乾燥後、550℃で3時間焼成し、実施例用ロジウム粉末を得た。得られた実施例用ロジウム粉末は、ロジウム1wt%-セリア5wt%-ジルコニア44wt%-アルミナ(残部)からなる粉末であった。
【0043】
(実施例用パラジウム粉末1)
セリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末(CeO_(2)を10wt%、BaOを2wt%含有)を硝酸パラジウム水溶液に含浸し、120℃で2時間乾燥後、400℃で1時間焼成した。次いで、この粉末を水と混合し、ビーズミルを用いて粉砕処理を行い、メジアン径が150nmのスラリー溶液を得た。更に、このスラリー溶液にベーマイトを投入し、充分に混合・攪拌した後、370℃で乾燥後、550℃で3時間焼成し、実施例用パラジウム粉末1を得た。得られた実施例用パラジウム粉末1は、パラジウム5wt%-セリア5wt%-酸化バリウム1wt%-ジルコニア34wt%-アルミナ(残部)からなる粉末であった。
・・・
【0055】
(実施例2)
1)U/C層コーティング
γアルミナを20wt%、ベーマイトを2wt%、10%濃度硝酸水溶液を78wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより、U/C層コート用スラリを得た。次に、実施例1で用いたものと同様のコージェライト製ハニカム担体の後端部3cm部分を、上記U/C層コート用スラリにディッピングした。その後、ハニカム担体の前端から後端に向け通風乾燥し、次いで、400℃で1時間焼成し、ハニカム担体の後端部にのみU/C層を形成した。このとき、ハニカム担体1LあたりのU/C層のコート量は18.0g/Lであった。
【0056】
2)触媒内層(第2層)コーティング
実施例用パラジウム粉末1を17.5wt%、ベーマイトを2.5wt%、10%濃度硝酸水溶液を80wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより、触媒内層用スラリを得た。このスラリを上記1)で得たハニカム担体の後端からから投入し、余剰スラリをハニカム担体の後端から前端に向け空気流にて除去した。その後、150℃で通風乾燥し、400℃で1時間焼成し、触媒内層付きハニカム触媒を得た。このときのハニカム担体1Lあたりの触媒内層のコート量は、114g/Lであった。
【0057】
3)触媒表層(第3層)コーティング
上記実施例用ロジウム粉末を15.2wt%、セリア含有ジルコニア粉末(CeO_(2)を20wt%含有)を3wt%、ベーマイトを1.8wt%、10%濃度硝酸水溶液を80wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより、触媒表層用スラリを得た。このスラリを上記2)と同様の手順にて、触媒内層付きハニカム触媒にコーティングし、触媒表層付きハニカム触媒を得た。このときのハニカム担体1Lあたりの触媒表層のコート量は、66g/Lであった。
【0058】
以上の工程により、ハニカム担体1Lあたり、パラジウムを5.0g/L、ロジウムを0.5g/L含む、実施例2の触媒を得た。また、このときの触媒内の前端部及び後端部における触媒層の厚さ及びU/C層の厚さは、表1に記載の通りであった。・・・
【0072】
(比較例3)
実施例2のU/C層を、ハニカム担体の前端から後端まで均一にコーティングし、U/C層のコート量をハニカム担体1Lあたり30g/Lとした以外は実施例2と同様にして、比較例3の触媒を得た。比較例3の触媒では、ハニカム担体1Lあたり、パラジウムを5.0g/L、ロジウムを0.5g/L含んでいた。また、このときの触媒内の前端部及び後端部における触媒層の厚さ及びU/C層の厚さは、表1に記載の通りであった。」

(カ)「【0079】
表1より、実施例1?8の触媒は、比較例1?6の触媒よりも、触媒通過後の排気ガス中におけるHC残存率及びNOx残存率が低く、炭化水素及び窒素酸化物の浄化に優れていることがわかる。具体的には、実施例1?8及び比較例1?4は、図4?6に記載の触媒粉末を用いているが、比較例1?3のようにU/C層をハニカム担体の内表面全体に設けた場合、触媒前端部の熱容量が増加し、低温始動性が悪化するため、コールドHCを十分に浄化できず、HC残存率が増加している。また、比較例4ではU/C層を設けていないため、HC残存率は実施例とほぼ同等であるが、触媒後端部における触媒層と排気ガスとの接触率が低下するため、NOx残存率が大幅に増加している。」

(キ)「【図2】

【図4】



イ 甲2(特開2013-81883号公報)
(ア)「【請求項1】
ガス流路を備える担体と、
上記担体のガス流路側に形成された、触媒成分を含有する触媒を含む触媒層と、
上記担体と上記触媒層との間に形成された、基材を含む下地層と
を具備し、
上記担体の表面側内部及び上記下地層の内部の少なくとも一方に、空隙を含む断熱部位を有する
ことを特徴とする排ガス浄化触媒。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒に関する。更に詳細には、本発明は、触媒の早期活性化を実現し、優れた排ガス浄化性能を発揮し得る排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧損を抑制し、触媒性能を向上させた、低圧損・高浄化性能のセラミック触媒体が提案されている。このセラミック触媒体は、基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体に、主触媒成分及び助触媒成分を担持してなる排ガス浄化用のセラミック触媒体である・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のセラミック触媒体にあっては、本発明者らの検討において、触媒成分がセラミック担体と直に接している部分が極めて多いため、触媒の早期活性化が阻害され、優れた排ガス浄化性能が得られていないという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的とするところは、触媒の早期活性化を実現し、優れた排ガス浄化性能を発揮し得る排ガス浄化触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた。
その結果、ガス流路を備える担体と、該担体のガス流路側に形成された触媒層と、該担体と該触媒層との間に形成された下地層とを具備し、該担体の表面側内部及び該下地層の内部の少なくとも一方に空隙を含む断熱部位を有する構成とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の排ガス浄化触媒は、ガス流路を備える担体と、該担体のガス流路側に形成された、触媒成分を含有する触媒を含む触媒層と、該担体と該触媒層との間に形成された、基材を含む下地層とを具備する。
また、本発明の排ガス浄化触媒においては、上記担体の表面側内部及び上記下地層の内部のいずれか一方又は双方に、空隙を含む断熱部位を有する。【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガス流路を備える担体と、担体のガス流路側に形成された、触媒成分を含有する触媒を含む触媒層と、担体と触媒層との間に形成された、基材を含む下地層とを具備し、担体の表面側内部及び下地層の内部の少なくとも一方に空隙を含む断熱部位を有する構成とした。 そのため、触媒の早期活性化を実現し、優れた排ガス浄化性能を発揮し得る排ガス浄化触媒を提供することができる。」

(ウ)「【0033】
[下地層]
下地層4としては、例えば、自動車用排ガス浄化触媒であれば、図1に示すように担体の表面に触媒層が形成し易いように基材を塗布して形成されたものが好適に用いられるがこれに限定されるものではない。
【0034】
また、下地層に含まれる基材としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、シリカアルミナ、ジルコニアアルミナ、チタニアアルミナ、ジルコニアチタニアアルミナ、マグネシアアルミナ、炭化珪素、ゼオライト、ペロブスカイトなどのセラミックの高比表面積基材を適用することができる。
【0035】
更に、下地層としては、例えば、その表面に、多数の開気孔を有する基材を用いることができる。開気孔は、具体的には、セラミック結晶格子中の欠陥(酸素欠陥または格子欠陥)、セラミック表面の微細なクラック、セラミックを構成する元素の欠損のうち、少なくとも1種類からなり、複数種類を組み合わせて形成することもできる。アルミナの表面に形成される開気孔は、その直径や幅について特に限定されるものではないが、断熱部位を確実に形成するという観点からは、開気孔の直径又は幅が100nm以下で、できるだけ小さい方が好ましい。好ましくは、0.1?100nmである。また、開気孔の深さについても特に限定されるものではないが、上記同様の観点から、開気孔の深さが0.05nm以上であることが好ましい。好ましくは、0.05?100nmである。
【0036】
セラミックスの基材の表面に形成される開気孔のうち、結晶格子の欠陥には、酸素欠陥と格子欠陥(金属空格子点と格子歪)がある。酸素欠陥は、結晶格子を構成するための酸素が不足することにより生ずる欠陥である。また、格子欠陥は、セラミック結晶格子を構成するために必要な量以上の酸素を取り込むことにより生じる格子欠陥で、結晶格子の歪みや金属空格子点によって形成される。これらの開気孔を有する基材を適用すると、触媒成分が担体に直接担持されてしまう可能性が高まるが、詳しくは後述する構成とすることにより、これを回避することができる。また、後述する構成とすることにより、下地層の内部に断熱部位を形成することができるという利点がある。 なお、本発明においては、開気孔を有さない基材を用いることもできる。」

(エ)「【0045】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る排ガス浄化触媒の構造を模式的に示す拡大断面図である。なお、上記実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、本実施形態の排ガス浄化触媒1は、下地層4を構成する基材4aとして、担体2が有する開気孔を塞ぐことができる粗大なものが適用されているという相違点を有している。つまり、担体2の表面側内部の断熱部位I_(2)の空隙v_(2)が、担体2と開気孔の一部が残るように配置された基材4aとで形成されているという相違点を有している。
【0047】
このような構成とすることによっても、触媒成分での触媒反応により生じる熱が担体全体へ熱拡散することをより確実に抑制(遅延化)することができる。そして、触媒成分の早期活性化をより確実に促進することが可能となり、優れた排ガス浄化性能を発揮し得る排ガス浄化触媒となる。」

(オ)「【0057】
(実施例3)
まず、担体を作製した。コーディエライト原料として、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウムを使用し、Si源の5%をW、同じくSi源の5%をCoに置換して、コーディエライトの理論組成点付近となるように調製した。次いで、この原料に、バインダ、潤滑剤、保湿剤及び水分を適量添加し、混練して、セル壁100μm、セル密度400cpsi(1平方インチ当たりのセル個数)、直径50mmのハニカム形状に成形した。しかる後、得られたハニカム成形体を、大気雰囲気、1260℃で焼成して、コーディエライトハニカム構造体よりなるセラミックス担体を得た。
【0058】
次に、セラミックス担体に、コーディエライトより熱伝導率が低い下地層を形成した。基材として、比表面積が200m^(2)/gであり、平均粒径が5μmの粒状のアルミナ粉末を使用した。この粉末に、バインダと、水分とを適量添加し、混合して、下地層スラリを作成した。次いで、担体に下地層スラリを塗布し、余分なスラリを取り除いた後、乾燥させ、大気雰囲気、600℃で焼成して、下地層を形成した。 なお、本例の下地層の開気孔の細孔径は2μmであった。
【0059】
次に、下地層を形成したセラミックス担体に、触媒層を形成した。触媒として白金担持アルミナ(平均粒径:3μm)を使用した。この触媒に、バインダと、水分とを適量添加し、混合して、触媒層(中層)スラリを作成した。次いで、担体に触媒層(中層)スラリを塗布し、余分なスラリを取り除いた後、乾燥させ、大気雰囲気、600℃で焼成して、触媒層(中層)を形成した。更に、触媒として白金・ロジウム担持アルミナ(平均粒径:3μm)を使用した。この触媒に、バインダと、水分とを適量添加し、混合して、触媒層(表層)スラリを作成した。次いで、担体に触媒層(表層)スラリを塗布し、余分なスラリを取り除いた後、乾燥させ、大気雰囲気、600℃で焼成して、触媒層(表層)を形成して、本例の排ガス浄化触媒を得た。」

(カ)「【図5】



ウ 甲3(特開2002-361089号公報)
(ア)「【請求項1】 セル断面が多角形をなす一体構造型担体上に、無機酸化物から成るアンダーコート層を介して触媒層を被覆して成ることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。【請求項2】 上記無機酸化物がアルミナであることを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化用触媒。」

(イ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のような排気ガス浄化用触媒では、貴金属量を低減させていった場合、触媒活性種である貴金属の耐熱性が損なわれるため、十分な浄化性能を発現できなかったり、低温活性を発現させるのにパラジウムを用いているため、貴金属を一定量以上使用しなければ、十分な浄化性能を発現・維持できないという課題があった。
【0007】本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高温条件下(エキゾーストマニフォールド直下の高温位置など)であっても、活性種である貴金属のシンタリングや貴金属を担持する材料の比表面積低下等を抑制することができ、また、貴金属の使用量を従来より低減した場合でも、車両走行時における広範囲のA/F変動下でのNOx、HC及びCOの浄化性能が良好なレベルを有する排気ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、触媒成分を支持する担体上に無機酸化物層を設け、その上に触媒活性成分を含有する触媒層を設けて、各層の被覆量や層厚の比率をバランス良く設定し、コールドスタート時の触媒の低温活性(ライトオフ機能)、熱耐久劣化後の触媒活性を向上させることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明の排気ガス浄化用触媒は、セル断面が多角形をなす一体構造型担体上に、無機酸化物から成るアンダーコート層を介して触媒層を被覆して成ることを特徴とする。」

(ウ)「【0023】
【作用】本発明においては、無機酸化物から成るアンダーコート層と触媒層とを隣接させ、触媒層の厚みを適切に調整した。よって、NOx、HC及びCOの浄化サイクルが有効に行われ、触媒層の全体に亘って均一に上記浄化が行われる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の排気ガス浄化用触媒について詳細に説明する。なお、本明細書において「%」は、特記しない限り質量百分率を示す。
【0025】上述の如く、本発明の排気ガス浄化用触媒は、無機酸化物から成るアンダーコート層と、触媒活性成分を含む触媒層を有し、各層を一体構造型担体、例えばモノリス担体上にアルミナから成るアンダーコート層、三元触媒成分層の順で被覆して形成される。
【0026】ここで、一体構造型担体上に無機酸化物から成るアンダーコート層を設けることにより、図1に示すように、担体のセルの角に無機酸化物層を配置したことになり、このアンダーコート層の上に被覆する触媒層たる触媒活性成分がセル角へ局所的に偏在したり、セル平坦部(セル壁部分)にコートされるべき触媒活性成分量が著しく低減したり、触媒層が担体上から脱落することを防ぐことができ、耐久後の浄化性能の著しい向上が実現される。
・・・
【0028】次に、各層の被覆量や成分などにつき説明する。まず、アンダーコート層に用いられる無機酸化物としては、アルミナが最も効果的であるが、その他にもジルコニア、チタニア、シリカ及びシリカアルミナなどが用いられる。アルミナを用いる場合は、比表面積が大きく嵩の高いアルミナが好ましく、特にγ?アルミナのようなアルミナが望ましい。具体的には、その初期表面積が1g当たり100m^(2)以上のものが適切である。また、アンダーコート層の被覆量は、アンダーコート層及び触媒層を含む総被覆量に対して20?50%の割合であることが好ましい。更に好ましくは、30?40%の範囲が良い。排気ガス浄化用触媒の耐久性向上と浄化性能及びコールドスタート時のライトオフ性能を最大限に引き出し易くするためである。代表的には、アルミナの被覆量が30?120g/Lであることが望ましい。」

(エ)「【0052】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】(実施例1)活性アルミナ粉末(BET比表面積200m^(2)/g、平均粒径6μm)と硝酸水溶液を磁性ボールミルに投入し、混合・粉砕してスラリーを得た後、このスラリー液をコージェライト質モノリス担体(1.0L、900セル/平方インチ)に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを除去・乾燥し、400℃で1時間焼成した。第1コート量として重量75g/L-担体をコートした担体Aを得た。
【0054】ジニトロジアンミン白金水溶液にクエン酸を白金原子比にして2倍量加え、1時間攪拌し、そのクエン酸添加白金水溶液をCe2モル%を添加した活性アルミナ粉末に含浸し、150℃で12時間乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pt担持Ce-アルミナ粉末(粉末A)を得た。この粉末のPt濃度は0.55%であった。
【0055】上記クエン酸添加白金水溶液と同様の溶液を、ランタン1モル%(La_(2)O_(3)に換算して2%)とプラセオジウム10モル%、ジルコニウム22モル%(ZrO_(2)に換算して17%)を含むセリウム酸化物に含浸し、150℃で12時間乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pt担持LaZrPr-セリウム酸化物粉末(粉末B)を得た。この粉末のPt濃度は0.37%であった。
【0056】粉末A、粉末B、ベーマイトアルミナ及び硝酸水溶液を磁性ボールミルに投入し、混合・粉砕してスラリーを得た。このスラリー液を先ほどの担体Aに更に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを除去・乾燥し、400℃で1時間焼成した。第2コート層としてコート重量85g/L-担体の触媒Aを得た。第2コート層の白金担持量は0.38g/Lであった。このとき、アルミナ/セリアへのPt分配比率は62/38であった。
【0057】硝酸ロジウム水溶液をZrを2モル%添加した活性アルミナに含浸し、150℃で12時間乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh担持Zr-アルミナ粉末(粉末C)を得た。この粉末のRh濃度は0.5%であった。また、粉末Aの製法に準じ、Pt担持Ce-アルミナ粉末(粉末A2)を得た。この粉末のPt濃度は1.7%であった。この粉末Cと粉末A2と、Ce20モル%(CeO_(2)に換算して24%)を含有するジルコニウム酸化物粉末、ベーマイトアルミナ及び硝酸水溶液を磁性ボールミルに投入し、混合・粉砕してスラリーを得た。このスラリー液を上記触媒Aに更に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリーを除去・乾燥し、400℃で1時間焼成した。第3コート層としてコート重量60g/L-担体の触媒Bを得た。このとき、第3コートのRh担持量は0.18g/L、Pt担持量は0.15g/Lであった。また、触媒Bの総コート量は220g/L、総貴金属担持量は0.71g/Lであった。」

(オ)「【図1】



エ 甲4(Sasol社の高純度焼成アルミナ(PURALOX/CATALOX)の商品カタログ)
(ア)「

」(第10頁)
(訳文:

)
(訳文は、異議申立人が提出したものである。)

(2)甲1に記載された発明
上記(1)ア(イ)の【0001】には、「本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化用触媒に関する。」とされ、同(オ)に「実施例2」として、以下の記載がある。
「【0055】
(実施例2)
1)U/C層コーティング
γアルミナを20wt%、ベーマイトを2wt%、10%濃度硝酸水溶液を78wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより、U/C層コート用スラリを得た。次に、実施例1で用いたものと同様のコージェライト製ハニカム担体の後端部3cm部分を、上記U/C層コート用スラリにディッピングした。その後、ハニカム担体の前端から後端に向け通風乾燥し、次いで、400℃で1時間焼成し、ハニカム担体の後端部にのみU/C層を形成した。このとき、ハニカム担体1LあたりのU/C層のコート量は18.0g/Lであった。
【0056】
2)触媒内層(第2層)コーティング
実施例用パラジウム粉末1を17.5wt%、ベーマイトを2.5wt%、10%濃度硝酸水溶液を80wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより、触媒内層用スラリを得た。このスラリを上記1)で得たハニカム担体の後端からから投入し、余剰スラリをハニカム担体の後端から前端に向け空気流にて除去した。その後、150℃で通風乾燥し、400℃で1時間焼成し、触媒内層付きハニカム触媒を得た。このときのハニカム担体1Lあたりの触媒内層のコート量は、114g/Lであった。
【0057】
3)触媒表層(第3層)コーティング
上記実施例用ロジウム粉末を15.2wt%、セリア含有ジルコニア粉末(CeO_(2)を20wt%含有)を3wt%、ベーマイトを1.8wt%、10%濃度硝酸水溶液を80wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより、触媒表層用スラリを得た。このスラリを上記2)と同様の手順にて、触媒内層付きハニカム触媒にコーティングし、触媒表層付きハニカム触媒を得た。このときのハニカム担体1Lあたりの触媒表層のコート量は、66g/Lであった。」
これらの記載に基づくと、上記実施例2では、以下の排気ガス浄化用触媒が製造されることになる。
「γアルミナを20wt%、ベーマイトを2wt%、10%濃度硝酸水溶液を78wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより得たU/C層コート用スラリを、コージェライト製ハニカム担体の後端部3cm部分にディッピングし、その後、ハニカム担体の前端から後端に向け通風乾燥し、次いで、400℃で1時間焼成し、ハニカム担体の後端部にのみ、ハニカム担体1LあたりのU/C層のコート量は18.0g/Lである、U/C層を形成し、
実施例用パラジウム粉末1を17.5wt%、ベーマイトを2.5wt%、10%濃度硝酸水溶液を80wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより得た触媒内層用スラリを、上記で得たハニカム担体の後端からから投入し、余剰スラリをハニカム担体の後端から前端に向け空気流にて除去し、その後、150℃で通風乾燥し、400℃で1時間焼成し、ハニカム担体1Lあたりの触媒内層のコート量は114g/Lである、触媒内層付きハニカム触媒を得、
実施例用ロジウム粉末を15.2wt%、セリア含有ジルコニア粉末(CeO_(2)を20wt%含有)を3wt%、ベーマイトを1.8wt%、10%濃度硝酸水溶液を80wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより得た触媒表層用スラリを、上記触媒内層と同様の手順にて触媒内層付きハニカム触媒にコーティングし、ハニカム担体1Lあたりの触媒表層のコート量は66g/Lである、触媒表層付きハニカム触媒を得ることにより製造された、排気ガス浄化用触媒」

そして、同(オ)の【0072】に記載される「比較例3」は、「実施例2のU/C層を、ハニカム担体の前端から後端まで均一にコーティングし、U/C層のコート量をハニカム担体1Lあたり30g/Lとした以外は実施例2と同様にして、比較例3の触媒を得た。」とされているから、比較例3として、実施例2に記載された排気ガス浄化用触媒の「(U/C層コート用スラリを、)コージェライト製ハニカム担体の後端部3cm部分にディッピングし、その後、ハニカム担体の前端から後端に向け通風乾燥し、次いで、400℃で1時間焼成し、ハニカム担体の後端部にのみ、ハニカム担体1LあたりのU/C層のコート量は18.0g/LであるU/C層を形成し」が「コージェライト製ハニカム担体の前端から後端まで均一にコーティングし、その後、ハニカム担体の前端から後端に向け通風乾燥し、次いで、400℃で1時間焼成し、ハニカム担体の前端から後端まで均一に、ハニカム担体1LあたりのU/C層のコート量は30g/LであるU/C層を形成し」である排気ガス浄化用触媒が記載されていることを理解することができる。
すなわち、甲1には、比較例3の排気ガス浄化用触媒として、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

「γアルミナを20wt%、ベーマイトを2wt%、10%濃度硝酸水溶液を78wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより得られたU/C層コート用スラリを、コージェライト製ハニカム担体の前端から後端まで均一にコーティングし、その後、ハニカム担体の前端から後端に向け通風乾燥し、次いで、400℃で1時間焼成し、ハニカム担体の前端から後端まで均一に、ハニカム担体1LあたりのU/C層のコート量は30g/Lである、U/C層を形成し、
実施例用パラジウム粉末1を17.5wt%、ベーマイトを2.5wt%、10%濃度硝酸水溶液を80wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより得た触媒内層用スラリを、上記で得たハニカム担体の後端からから投入し、余剰スラリをハニカム担体の後端から前端に向け空気流にて除去し、その後、150℃で通風乾燥し、400℃で1時間焼成し、ハニカム担体1Lあたりの触媒内層のコート量は114g/Lである、触媒内層付きハニカム触媒を得、
実施例用ロジウム粉末を15.2wt%、セリア含有ジルコニア粉末(CeO_(2)を20wt%含有)を3wt%、ベーマイトを1.8wt%、10%濃度硝酸水溶液を80wt%の割合で混合し、磁性ボールミルに投入し、次いで、5mm径アルミナボールを投入し、1時間振動攪拌することにより得た触媒表層用スラリを、上記触媒内層と同様の手順にて触媒内層付きハニカム触媒にコーティングし、ハニカム担体1Lあたりの触媒表層のコート量は66g/Lである、触媒表層付きハニカム触媒を得ることにより製造された、排気ガス浄化用触媒。」

(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明を対比する。

(ア)甲1発明の「コージェライト製ハニカム担体」、(U/C層の)「γアルミナ・・・ベーマイト」及び「排気ガス浄化用触媒」は、それぞれ本件発明1の「ハニカム基材」、「アルミナ粒子」及び「排ガス浄化触媒」に相当する。

(イ)甲1発明のU/C層(アンダーコート層)は、甲1の上記(1)ア(ウ)の【0010】の「図2に示すように、アンダーコート層2は、主として、ハニカム担体1のセル5の角に配置されている。これにより、アンダーコート層2の上に被覆される排気ガス浄化触媒層3中の触媒活性成分がセル角へ局所的に偏在したり、セル平坦部(セル壁部分)にコートされるべき触媒活性成分量が低減したり、触媒層が担体上から脱落することを防ぐことができる。」との記載によれば、「触媒層(アンダーコート層2の上に被覆される排気ガス浄化触媒層)が担体上から脱落することを防ぐ」ものであるから、本件発明1の「剥離防止コート層」に相当すると共に、甲1発明の、コージェライト製ハニカム担体上に形成される、γアルミナ及びベーマイトを成分とするU/C層(アンダーコート層)は、「アルミナ粒子を主成分とする」ものであり、本件発明1の「ハニカム基材上の、アルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層」に相当する。

(ウ)甲1発明におけるU/C層において、「ハニカム担体1LあたりのU/C層のコート量は30g/Lである」ことは、本件発明1の「前記剥離防止コート層のコート量が、前記ハニカム基材の容量1L当たり20g以上30g以下であ」ることに相当する。

(エ)甲1発明の、U/C層上に形成される「触媒内層」及び「触媒表層」は、併せて、本件発明1の「剥離防止コート層上の触媒コート層」に相当する。

(オ)甲1発明において、「ハニカム担体1Lあたりの触媒内層のコート量は114g/Lであ」り、「ハニカム担体1Lあたりの触媒表層のコート量は66g/Lである」ことは、本件発明1の「前記触媒コート層のコート量が、前記ハニカム基材の容量1L当たり150g以上である」ことに相当する。

(カ)甲1発明の触媒内層の「実施例用パラジウム粉末」とは、上記同(オ)の【0043】で、「(実施例用パラジウム粉末1)
セリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末(CeO_(2)を10wt%、BaOを2wt%含有)を硝酸パラジウム水溶液に含浸し、120℃で2時間乾燥後、400℃で1時間焼成した。次いで、この粉末を水と混合し、ビーズミルを用いて粉砕処理を行い、メジアン径が150nmのスラリー溶液を得た。更に、このスラリー溶液にベーマイトを投入し、充分に混合・攪拌した後、370℃で乾燥後、550℃で3時間焼成し、実施例用パラジウム粉末1を得た。得られた実施例用パラジウム粉末1は、パラジウム5wt%-セリア5wt%-酸化バリウム1wt%-ジルコニア34wt%-アルミナ(残部)からなる粉末であった。」とされるものであるところ、甲1の上記(実施例用パラジウム粉末1)は、「実施例」とされることから、甲1の同(ア)の【請求項1】の「貴金属粒子と、前記貴金属粒子と接触し、前記貴金属粒子の移動を抑制する第一化合物と、前記貴金属粒子及び前記第一化合物を内包し、前記貴金属粒子の移動を抑制すると共に第一化合物同士の接触に伴う第一化合物の凝集を抑制する第二化合物とからなり、前記第一化合物は前記貴金属粒子を担持し、さらに、この貴金属粒子を担持した第一化合物の単体又は集合体は前記第二化合物により隔てられた区画内に内包された触媒粉末」の具体的な態様であると解するのが相当である。
そして、上記実施例用パラジウム粉末において、硝酸パラジウムから生成する「パラジウム」が、甲1の同【請求項1】の「貴金属粒子」に、硝酸パラジウム水溶液に含浸され、120℃で2時間乾燥後、400℃で1時間焼成される「セリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末」が、同【請求項1】の「第一化合物」に、上記焼成される「セリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末」を水と混合し、ビーズミルを用いて粉砕処理を行い、得られたメジアン径が150nmのスラリー溶液に投入され、充分に混合・攪拌した後、370℃で乾燥後、550℃で3時間焼成される、ベーマイトから生成する「アルミナ」が、同【請求項1】の「第二化合物」に対応するといえるから、上記実施例用パラジウム粉末は、同【請求項1】の記載形式に則ると、「セリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末はパラジウム粒子を担持し、さらに、このパラジウム粒子を担持したセリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末はアルミナにより隔てられた区画内に内包された触媒粉末」であり、パラジウム粒子を担持したセリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末が、さらにアルミナに担持された触媒と見ることができるものである。
また、甲1発明の触媒表層の「実施例用ロジウム粉末」についても同様に、上記同(オ)の【0042】で、「(実施例用ロジウム粉末)
セリア含有ジルコニア粉末(CeO_(2)を10wt%含有)を硝酸ロジウム水溶液に含浸し、120℃で2時間乾燥後、400℃で1時間焼成した。次いで、この粉末を水と混合し、ビーズミルを用いて粉砕処理を行い、メジアン径が150nmのスラリー溶液を得た。更に、このスラリー溶液にベーマイトを投入し、充分に混合・攪拌した後、370℃で乾燥後、550℃で3時間焼成し、実施例用ロジウム粉末を得た。得られた実施例用ロジウム粉末は、ロジウム1wt%-セリア5wt%-ジルコニア44wt%-アルミナ(残部)からなる粉末であった。」とされるもので、同【請求項1】の記載形式に則ると、「セリア含有ジルコニア粉末はロジウム粒子を担持し、さらに、このロジウム粒子を担持したセリア含有ジルコニア粉末はアルミナにより隔てられた区画内に内包された触媒粉末」であり、ロジウム粒子を担持したセリア含有ジルコニア粉末が、さらにアルミナに担持された触媒と見ることができるものである。
そうすると、甲1発明の触媒内層の、パラジウム粒子を担持したセリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末が、さらにアルミナに担持された実施例用パラジウム粉末、及び触媒表層の、ロジウム粒子を担持したセリア含有ジルコニア粉末が、さらにアルミナに担持された実施例用ロジウム粉末は、本件発明1の「触媒金属を担持している担体粒子」に相当する。また、甲1発明の「触媒内層」及び「触媒表層」は、それぞれ、実施例用パラジウム粉末及び実施例用ロジウム粉末を「主成分とし」ている。

(キ)以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、
「ハニカム基材と、
前記ハニカム基材上の、アルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層と、
前記剥離防止コート層上の触媒コート層と、
を有し、
前記剥離防止コート層のコート量が、前記ハニカム基材の容量1L当たり20g以上30g以下であり、
前記触媒コート層が、触媒金属を担持している担体粒子を主成分とし、且つ、
前記触媒コート層のコート量が、前記ハニカム基材の容量1L当たり150g以上である、
排ガス浄化触媒。」
の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。

<相違点1>
剥離防止コート層について、本件発明1では、アルミナ粒子のメジアン径が3.0μm以上であるのに対し、甲1発明では、アルミナ粒子のメジアン径が明らかでない点。

<相違点2>
触媒コート層について、本件発明1では、主成分である触媒金属を担持している担体粒子のメジアン径が2.5μm以下であるのに対し、甲1発明では、主成分である触媒金属を担持している担体粒子のメジアン径が明らかでない点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
甲1の上記(1)ア(ウ)の【0010】には、アンダーコート層(U/C層)について、「アンダーコート層2は、主として、ハニカム担体1のセル5の角に配置されている。これにより、アンダーコート層2の上に被覆される排気ガス浄化触媒層3中の触媒活性成分がセル角へ局所的に偏在したり、セル平坦部(セル壁部分)にコートされるべき触媒活性成分量が低減したり、触媒層が担体上から脱落することを防ぐことができる。」との記載があるが、アンダーコート層を形成するアルミナ粒子等についてのメジアン径を示す、又はそれを示唆する記載はない。また、甲1に記載される技術は、上記同(イ)の【0007】に記載される「ハニカム担体の前端部における排気ガス浄化触媒層のコーナー部の厚さは、前記ハニカム担体の後端部における前記排気ガス浄化触媒層のコーナー部の厚さよりも大きい。さらに、排気ガス浄化触媒層は、貴金属がナノメートルレベルまで微小化されつつも耐熱性が維持された触媒粉末を使用している。」といったことを技術的な特徴とし、アンダーコート層を形成するアルミナ粒子等についてのメジアン径に着目するものではないから、甲1発明には、アンダーコート層を形成するアルミナ粒子について、メジアン径が3.0μm以上のものを採用する動機付けがあるとはいえないし、甲1発明は、甲1の上記同(ア)の【請求項1】に記載される発明の態様である上記同(オ)の【0055】?【0058】に記載される「実施例2」等に対し、「比較例」となる発明で、上記「実施例2」等の効果の有無を検証するためのものであるから、甲1発明に対し、公知の技術を適用し構成に何らかの改善を行おうとするものではなく、この点でも、甲1発明には、アンダーコート層を形成するアルミナ粒子について、メジアン径が3.0μm以上のものを採用する動機付けがあるとはいえない。
また、異議申立人は、担体上に、アルミナを含むアンダーコート層を介して触媒層を設けた排気ガス浄化用触媒において、アンダーコート層中のアルミナとして、平均粒径が5?6μm程度のものを使用することは技術常識であったことの根拠として甲2及び甲3を提出しているところ、甲2には、従来のセラミック触媒体は、基材セラミック表面に触媒成分を直接担持可能なセラミック担体に、主触媒成分及び助触媒成分を担持してなる排ガス浄化用のセラミック触媒体であるが(上記(1)イ(イ)の【0002】)、このセラミック触媒体にあっては、触媒成分がセラミック担体と直に接している部分が極めて多いため、触媒の早期活性化が阻害され、優れた排ガス浄化性能が得られていないという問題点があったため(同【0004】)、ガス流路を備える担体と、該担体のガス流路側に形成された触媒層と、該担体と該触媒層との間に形成された下地層とを具備し、該担体の表面側内部及び該下地層の内部の少なくとも一方に空隙を含む断熱部位を有する構成とすることにより、この問題点を解決したこと(同【0006】)が記載されている。そして、甲2には、下地層の内部に空隙を含む断熱部位を有する構成として、上記同(カ)の【図5】に記載されるように、下地層4を構成する基材4aとして、担体2が有する開気孔を塞ぐことができる粗大なものが適用され、担体2の表面側内部の断熱部位I2の空隙v2が、担体2と開気孔の一部が残るように配置された基材4aとで形成されている構成とすることにより、触媒成分での触媒反応により生じる熱が担体全体へ熱拡散することをより確実に抑制(遅延化)すること(上記同(エ)の【0046】、【0047】)が記載され、実際の具体例の一つとして、下地層中のアルミナとして、平均粒径が5μmのものを使用することが記載されている(上記同(オ)の【0058】)。
しかしながら、甲2に記載される事項は、触媒の早期活性化を図るために、表面側内部及び該下地層の内部の少なくとも一方に空隙を含む断熱部位を有する構成とする際に、下地層中のアルミナとして、平均粒径が5μmのものを使用したのであって、排気ガス浄化用触媒において、アンダーコート層(下地層)中のアルミナとして、平均粒径が5?6μm程度のものを使用することが技術常識であることまでを示すものではない。
また、甲3には、排気ガス浄化用触媒では、貴金属量を低減させていった場合、触媒活性種である貴金属の耐熱性が損なわれるため、十分な浄化性能を発現できなかったり、低温活性を発現させるのにパラジウムを用いているため、貴金属を一定量以上使用しなければ、十分な浄化性能を発現・維持できなかったという問題点があったので(上記(1)ウ(イ)の【0006】)、高温条件下(エキゾーストマニフォールド直下の高温位置など)であっても、活性種である貴金属のシンタリングや貴金属を担持する材料の比表面積低下等を抑制することができ、貴金属の使用量を従来より低減した場合でも、車両走行時における広範囲のA/F変動下でのNOx、HC及びCOの浄化性能が良好なレベルを有する排気ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供する(同【0007】)ことを発明の課題とし、触媒成分を支持する担体上に無機酸化物層を設け、その上に触媒活性成分を含有する触媒層を設けて、各層の被覆量や層厚の比率をバランス良く設定することにより、コールドスタート時の触媒の低温活性(ライトオフ機能)、熱耐久劣化後の触媒活性を向上させたことが記載されている(同【0008】)。そして、甲3には、実施例において無機酸化物層中のアルミナとして、平均粒径が6μmのものを使用することが記載されている(上記同(エ)の【0053】)。
しかしながら、甲3に記載される事項は、高温条件下(エキゾーストマニフォールド直下の高温位置など)であっても、活性種である貴金属のシンタリングや貴金属を担持する材料の比表面積低下等を抑制することができ、また、貴金属の使用量を従来より低減した場合でも、車両走行時における広範囲のA/F変動下でのNOx、HC及びCOの浄化性能が良好なレベルとすることを目的とした場合に、無機酸化物層中のアルミナとして、平均粒径が6μmのものを使用したものであって、アンダーコート層(無機酸化物層)中のアルミナとして、平均粒径が5?6μm程度のものを使用することが技術常識であることまでを示すものではない。
そして、上述のとおり、甲1発明は、他の公知の技術を適用し構成に何らかの改変を行う動機付けがあるものではないから、甲2及び甲3に、アンダーコート層中のアルミナとして、平均粒径が5μmや6μmのものを使用することが知られているとしても、甲1発明には、この様な事項を採用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、甲4に記載される事項は、上記(1)エ(ア)によれば、アルミナ粒子の細孔容積を示すものであって、上記相違点1に係る本件発明1の構成を示すものではない。
そうすると、上記相違点1に係る本件発明1の事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

(イ)相違点2についての判断
上記ア(カ)で述べたように、本件発明1の「触媒金属を担持している担体粒子」は、甲1発明における「実施例用パラジウム粉末」及び「実施例用ロジウム粉末」、すなわち、「セリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末はパラジウム粒子を担持し、さらに、このパラジウム粒子を担持したセリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末はアルミナにより隔てられた区画内に内包された触媒粉末」及び「セリア含有ジルコニア粉末はロジウム粒子を担持し、さらに、このロジウム粒子を担持したセリア含有ジルコニア粉末はアルミナにより隔てられた区画内に内包された触媒粉末」に対応するものである。
そして、甲1の「実施例用パラジウム粉末」に関する記載として、上記(1)ア(オ)の【0043】には、「セリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末(CeO_(2)を10wt%、BaOを2wt%含有)を硝酸パラジウム水溶液に含浸し、120℃で2時間乾燥後、400℃で1時間焼成した。次いで、この粉末を水と混合し、ビーズミルを用いて粉砕処理を行い、メジアン径が150nmのスラリー溶液を得た。」との記載があるが、このメジアン径が150nmとは、アルミナにより隔てられた区画内に内包された、パラジウム粒子を担持したセリア及び酸化バリウム含有ジルコニア粉末に対応するものであり、また、甲1の「実施例用ロジウム粉末」について記載される同【0042】のメジアン径が150nmとは、アルミナにより隔てられた区画内に内包された、ロジウム粒子を担持したセリア含有ジルコニア粉末に対応するものであるから、甲1には、本件発明1の「触媒金属を担持している担体粒子」に対応する「実施例用パラジウム粉末」及び「実施例用ロジウム粉末」のメジアン径に関する記載はないし、またそれを示唆するような記載もない。
さらに、甲2?甲4にも、上記(1)イ?エに示すように、甲1発明における「実施例用パラジウム粉末」及び「実施例用ロジウム粉末」のメジアン径がどの程度であるかを示す記載はない。また、甲2の上記同イ(オ)の【0059】に記載されるように、触媒層(甲1発明の触媒内層及び触媒表層に対応)を、白金担持アルミナ又は白金・ロジウム担持アルミナのみで形成することは、一般的な事項であるが、甲1発明の触媒内層及び触媒表層は、上記(1)ア(エ)の【0022】に記載される「図4に示す触媒粉末20は、貴金属粒子12と、第一化合物13とが接触して担持することにより、第一化合物13が化学的結合のアンカー材として作用し、貴金属粒子の移動を抑制する。また、貴金属粒子12が担持された第一化合物13を第二化合物14で覆い、内包する形態とすることにより、貴金属粒子12の移動を物理的に抑制する。更に、第二化合物14により隔てられた区画内に貴金属粒子12と第一化合物13とを含むことにより、第二化合物14により隔てられた区画を越えて第一化合物13が接触し凝集することを抑制する。これらのことから、触媒粉末20は、製造コストや環境負荷を大きくすることなく、貴金属粒子12の凝集による触媒活性低下を防止することができる。また、第一化合物13による貴金属粒子12の活性向上効果を維持することができる。」ことを技術的特徴とし、上記第二化合物は甲1発明の「実施例用パラジウム粉末」及び「実施例用ロジウム粉末」において必要な構成であるから、甲1発明において、第二化合物の添加を省略し、触媒内層及び触媒表層を貴金属粒子が担持された第一化合物のみで構成する態様を想到し得るとはいえない。
そうすると、上記相違点2に係る本件発明1の事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
さらに、本件発明1は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲2?4に記載の事項からは予測することができない、本件明細書の【0020】に記載される「低減された排気背圧、触媒コート層の構造的安定性、及び優れた排ガス浄化能のすべてを満足する排ガス浄化触媒が提供される」という効果を奏するものである。

ウ 小括
以上のとおり、上記相違点1及び2に係る本件発明1の事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲2?4に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2?6は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲2?4に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)申立理由2に関するまとめ
以上のとおり、申立理由2には理由がない。

第5 むすび

上記第4で検討したとおり、本件特許1は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとも、本件特許1?6は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるともいうことはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記申立理由では、本件特許1?6を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1?6を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2021-10-05 
出願番号 特願2016-253572(P2016-253572)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (B01J)
P 1 651・ 121- Y (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安齋 美佐子  
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 原 賢一
金 公彦
登録日 2021-01-07 
登録番号 特許第6820739号(P6820739)
権利者 株式会社キャタラー
発明の名称 排ガス浄化触媒  
代理人 古賀 哲次  
代理人 関根 宣夫  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  
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