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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1379152 |
審判番号 | 不服2021-121 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-05 |
確定日 | 2021-11-02 |
事件の表示 | 特願2016-240993「バックライトユニット用光学シート及びバックライトユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日出願公開、特開2017-116930、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続等の経緯 特願2016-240993号(以下「本件出願」という。)は、平成28年12月13日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年12月17日)の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和2年 4月22日付け:拒絶理由通知書 令和2年 5月27日提出:意見書 令和2年 5月27日提出:手続補正書 令和2年10月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和3年 1月 5日提出:審判請求書 令和3年 1月 5日提出:手続補正書 令和3年 6月21日付け:拒絶理由通知書 令和3年 8月18日提出:意見書 令和3年 8月18日提出:手続補正書 2 原査定の概要 原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。 理由1(新規性)本件出願の請求項1?4及び請求項7?11に係る発明(令和2年5月27日にした手続補正後のもの)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2(進歩性)本件出願の請求項1?11に係る発明(令和2年5月27日にした手続補正後のもの)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献A:特開2012-226290号公報 引用文献B:特開2009-300989号公報 引用文献C:特開2002-98810号公報 引用文献D:特開2003-50306号公報 (当合議体注:引用文献Aは主引用例を示す文献である。また、引用文献B?引用文献Dは副引用例を示す文献である。) 3 当合議体が通知した拒絶の理由 令和3年6月21日付け拒絶理由通知書において当合議体が通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)は、概略次のとおりである。 1.(新規性)本件出願の請求項1?3及び請求項6?8に係る発明(令和3年1月5日にした手続補正後のもの)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)本件出願の請求項1?9に係る発明(令和3年1月5日にした手続補正後のもの)は、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2012-13832号公報 引用文献2:再公表特許第2008/084744号 引用文献3:特開2015-4859号公報 (当合議体注:引用文献1?3はそれぞれ主引用例を示す文献である。) 4 本願発明 本件出願の請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」という。)は、令和3年8月18日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項によって特定されるものであるところ、本願発明1は、次のものである。 「 LED光源から出射される光線を表面側に導く液晶表示装置のバックライトユニット用光学シートであって、 少なくとも1つの樹脂層を備え、 上記樹脂層の裏面に特定方向に配向する複数の微細溝が形成されており、 上記樹脂層の裏面が上記光学シートの光入射面を構成しており、かつこの樹脂層が空気層を介してライトガイドフィルム又はライトガイドプレートの表面側に配置され、上記微細溝同士がランダムに配向しつつ、上記微細溝が上記裏面の両端に亘って連続しており、上記微細溝が光線を幅方向に伝搬させることでホットスポットの発生を抑制することを特徴とするバックライトユニット用光学シート。」 本願発明2?6は、本願発明1の「バックライトユニット用光学シート」に対してさらに他の発明特定事項を付加したものである。また、本願発明7?本願発明9は、本願発明1の「バックライトユニット用光学シート」に対してさらに他の発明特定事項を付加した「バックライトユニット」の発明である。 第2 引用文献の記載事項及び引用発明 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 当審拒絶理由に引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1(特開2012-13832号公報)には、以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、画素単位での透過または非透過のレンズシート及びディスプレイ用の光学シート、あるいは、光学シートを備え、透明状態または散乱状態に応じて表示パターンが規定される表示素子が配置された液晶パネルを背面側から照明するバックライトユニット、あるいは、光学シート及びバックライトユニットを備えたディスプレイ装置に関する。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0037】 上述したように、光学シートには、低消費電力や薄型化等により、更なる輝度の均一性が求められているが、この要求には、現在のところ、拡散シートやレンズシートの枚数を増やすことで対応している状況である。 しかしながら、拡散シートやレンズシートの枚数を増やす方法は、現在の低コスト化や薄型化の要求とは相反する方法となる。 【0038】 本発明では、輝度の均一性と高輝度化の二つの機能を有することが可能な光学シート、この光学シートを備えたバックライトユニット及びディスプレイ装置を提供することを目的とする。」 ウ 「【課題を解決するための手段】 【0039】 本発明のうち、請求項1に記載した発明は、透光性基材の光出射面及び光入射面に立体形状が形成された光学シートであって、 前記光入射面に、前記立体形状を形成するための凹凸形状が二方向に沿って形成されており、 前記光入射面と平行な第一方向に沿った当該光入射面の平均粗さをRa(x)、前記第一方向に沿った前記凹凸形状の平均間隔をSm(x)とし、前記光入射面と平行且つ前記第一方向と直交する第二方向に沿った光入射面の平均粗さをRa(y)、前記第二方向に沿った前記凹凸形状の平均間隔をSm(y)とした場合に、 30Ra(x)≧Ra(y)>2Ra(x)且つSm(y)≧0.5Sm(x)の関係が成立していることを特徴とするものである。」 エ 「【発明の効果】 【0044】 本発明によれば、光学シートの光出射面側に、高輝度化を実現するための光学要素を形成し、光学シートの光入射面側に、高い輝度の均一性効果を有するように、凹凸形状を形成する。そして、上記の関係が成立させることにより、凹凸形状に異方性を持たせることで、高い輝度向上性と、高い導光板ドットパターン隠蔽性の両立が可能となる。」 オ 「【発明を実施するための形態】 【0046】 (第一実施形態) 以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。 (構成) 以下、本実施形態に係る光学シートについて、この光学シートを備えたバックライトユニット及びディスプレイ装置と共に説明する。 【0047】 (ディスプレイ装置の構成) まず、図1を用いて、本実施形態のディスプレイ装置1の構成を説明する。 図1は、本実施形態におけるディスプレイ装置1の概略構成を示す図である。 本実施形態のディスプレイ装置1は、直下型のディスプレイ装置であり、図1中に示すように、画像表示素子2と、バックライトユニット4を備えている。なお、図1中において、ディスプレイ装置1、及びディスプレイ装置1が備える各部材の、互いの大きさの対比は、実際とは一致しない場合がある。 【0048】 画像表示素子2は、液晶パネル(液晶表示素子)により形成されている。すなわち、本実施形態のディスプレイ装置1は、液晶表示装置である。 また、画像表示素子2は、表側偏光板6と、裏側偏光板8と、液晶素子10を備えており、表側偏光板6と裏側偏光板8との間に、液晶素子10が挟持されて構成されている。これにより、表側偏光板6及び裏側偏光板8と液晶素子10は、表側偏光板6、液晶素子10、裏側偏光板8の順番で積層している。 ・・省略・・ 【0050】 (バックライトユニットの構成) バックライトユニット4は、ランプハウス12と、拡散板14と、二枚の集光シート16と、光学シート18を備えている。 【0051】 ランプハウス12は、光学シート18の背面に配置されており、複数の光源20と、ランプリフレクタ22を備えている。なお、光学シート18の背面とは、光学シート18の、レンズシート8と対向する面と反対側の面(図1中では、光学シート18の下方の面)である。 複数の光源20は、それぞれ、LEDから形成されており、光学シート18の厚さ方向と直交する方向へ、所定の間隔で配置されている。 【0052】 なお、本実施形態では、光源20をLEDとしたが、光源20の構成は、これに限定するものではなく、光源20を、例えば、冷陰極管(CCFL)、EL、半導体レーザー等としてもよい。 ランプリフレクタ22は、光源20の背面に配置されており、光源20からの光を反射する。 ・・省略・・ 【0061】 (光学シートの詳細な構成) 以下、図1を参照しつつ、図2及び図3を用いて、光学シート18の詳細な構成を説明する。 図2は、光学シート18の俯瞰図である。 図2中に示すように、光学シート18は、基材部28と、光学要素24と、凹凸形状26を備えている。なお、光学シート18は、単層構造でも複層構造でもよく、また、透明層を含んでいてもよい。 【0062】 基材部28は、透光性の樹脂材料を用いて、板状に形成されている。 光学要素24は、基材部28の表面側である光学シート18の光出射面側において、一次元方向からなるプリズム形状に形成されている。 【0063】 凹凸形状26は、基材部28の裏面側である光学シート18の光入射面側において、多数の凹部から形成されている。 また、凹凸形状26の、光学シート18の光入射面から突出した部分の先端は、丸められている。 【0064】 以下、光学シート18の光出射面側に形成した光学要素24を、一次元方向からなるプリズム形状とするとともに、光学シート18の光入射面側に形成した凹凸形状26を多数の凹部とした理由について説明する。 【0065】 従来から、凹凸形状26は、サンドブラスト等により、マット形状を、不規則に光入射面の面内全体に設置することが多い。そのため、光入射面の面内で異方性を持たせた状態で形状を付与することが困難であり、凹凸形状26のみで光の拡散効果に異方性を発揮することが困難であった。 【0066】 凹凸形状26のみで光の拡散効果に異方性を効果的に発揮する方法としては、光学シート18の光入射面にレンズ形状等を付与する方法があるが、レンズは、通常、光の集光効果も求められていることが多い。このため、レンズ形状で光の拡散効果を発揮させようとすると、その分、光の集光効果の低下が起こり、光学シートの性能が低下してしまうこととなる。 【0067】 したがって、効率的な光の集光機能と拡散機能の両方を有するためには、光学シート18の光出射面側には、高い集光機能を有する形状を付与し、光学シート18の光入射面側には、高い輝度の均一性を有する形状を付与するのが最も良い。このためには、光学シート18の光出射面側に形成した光学要素24を、一次元方向からなるプリズム形状とし、光学シート18の光入射面側に形成した凹凸形状26を、多数の凹部とすることが好適である。 【0068】 以上の理由により、本実施形態では、光学シート18の光出射面側に形成した光学要素24を、一次元方向からなるプリズム形状とするとともに、光学シート18の光入射面側に形成した凹凸形状26を、多数の凹部とする。 ・・省略・・ 【0074】 (凹凸形状の詳細な構成) 凹凸形状26は、光学シート18の光入射面において、不規則な形状に形成されている。すなわち、凹凸形状26を形成する多数の凹部は、光学シート18の光入射面において、不規則に配置されている。 【0075】 以下、凹凸形状26を、光学シート18の光入射面において、不規則な形状に形成する理由について説明する。 凹凸形状26を形成する多数の凹部が、光学シート18の光入射面において、不規則に配置されて、凹凸形状26が不規則に形成されると、光入射面や光出射面側の光学要素24との、モアレが回避しやすくなるという利点がある。 ・・省略・・ 【0077】 そのため、上述したモアレを回避するために、凹凸形状26を、光学シート18の光入射面において、不規則な形状に形成することが望ましい。 また、凹凸形状26は、図3中に示すように、光入射面側に最も近い部分の、光学シート18の厚さ方向に沿った断面形状が、楕円形状となるように形成されている。なお、図3は、凹凸形状26の説明図である。また、図3中では、凹凸形状26のうち、光入射面側に最も近い部分の外周のみを、点線で示している。 【0078】 具体的には、凹凸形状26は、楕円形状の長辺方向が、後述する第一方向と平行となるように形成されている。これにより、凹凸形状26は、第一方向と、後述する第二方向とで、異なる光の散乱効果を得ている。 【0079】 (光入射面の詳細な構成) 以下、光学シート18の光入射面の詳細な構成について説明する。 光入射面では、以下の関係式(1)及び関係式(2)が成立している。 30Ra(x)≧Ra(y)>2Ra(x) … (1) Sm(y)≧0.5Sm(x) … (2) ここで、上記の関係式(1)では、 Ra(x):光入射面と平行な第一方向に沿った光入射面の平均粗さ Ra(y):光入射面と平行且つ第一方向と直交する第二方向に沿った光入射面の平均粗さである。 【0080】 また、上記の関係式(2)では、 Sm(x):第一方向に沿った凹凸形状26の平均間隔 Sm(y):第二方向に沿った凹凸形状26の平均間隔 である。 【0081】 なお、光入射面の平均粗さとは、光入射面上における直線方向に沿った光入射面の表面粗さの平均値であり、日本工業規格JISB0601について定義されている数値である。また、平均粗さRa(x)及びRa(y)は、数値が大きいほど、粗さの程度が大きいことを示している。 【0082】 また、本実施形態では、第一方向を、図2中に示すように、光学要素24を形成するプリズム形状と平行な方向とする。これに伴い、本実施形態では、第二方向を、図2中に示すように、光学要素24を形成するプリズム形状と直交する方向とする。 また、上記のRa(x)、Ra(y)、Sm(x)及びSm(y)の単位は、全て、[μm]である。 【0083】 以下、光入射面において、上記の関係式(1)及び関係式(2)を成立させている理由について説明する。 上記の関係式(1)及び関係式(2)は、光入射面においては、第一方向と第二方向で異なる表面粗さを有しており、第一方向と第二方向での、光の散乱効果及び拡散効果が異なっていることを示している。 【0084】 ここで、凹凸形状26自体のサイズが大きいほど、平均粗さRa(x)及びRa(y)は大きくなりやすい。 【0085】 一方、凹凸形状26の平均間隔Sm(x)及びSm(y)は、凹凸形状26の大きさと密度による影響を大きく受ける。 具体的には、凹凸形状26のサイズが大きいと、平均間隔Sm(x)及びSm(y)の値が大きくなり易く、また、凹凸形状26のサイズが小さく且つ存在する凹凸形状26の割合が高くなると、平均間隔Sm(x)及びSm(y)の値は小さくなる。 【0086】 このため、光の散乱効果及び拡散効果は、平均粗さRa(x)及びRa(y)が大きく、平均間隔Sm(x)及びSm(y)の値が小さいほど大きくなる。 したがって、平均粗さRa(x)及びRa(y)と、平均間隔Sm(x)及びSm(y)を光入射面の面内方向で制御することにより、高輝度且つ高拡散性を有する光学シート18を得ることが可能となる。 【0087】 以上により、本実施形態の光学シート18は、第一方向に関しては、表面粗さによる光拡散効果が低く、第二方向に関しては、表面粗さによる光拡散効果が強い必要がある。 しかしながら、凹凸形状26の大きさと割合を変化させると、平均粗さRa(x)及びRa(y)と平均間隔Sm(x)及びSm(y)の、両方の数値が変化するため、平均粗さRa(x)及びRa(y)と平均間隔Sm(x)及びSm(y)を、それぞれ、単独で制御することは困難である。 【0088】 具体的には、Ra(y)≦2Ra(x)の場合、第一方向と第二方向の拡散効果の差が小さく、平均粗さRa(x)及びRa(y)の値が小さいと、充分な光の散乱効果がないため、輝度の均一性が確保できない。 また、平均粗さRa(x)及びRa(y)の値が大きいと、輝度の均一性は確保できるものの、輝度の低下が非常に大きくなってしまう。また、凹凸形状26を不規則に配置する場合、30Ra(x)≧Ra(y)を達成するためには、第一方向の平均粗さRa(x)が、非常に小さい必要がある。 【0089】 つまり、第一方向の表面粗さが非常に小さいことになり、第一方向の平均粗さRa(x)だけでなく、第一方向の平均間隔Sm(x)も変動する。このため、第一方向の平均間隔Sm(x)が大きくなる傾向にある。すると、第一方向において、隣接する凹凸形状26同士の距離が大きくなり、結果的に、輝度の均一性が低下する現象が生じてしまう。 【0090】 また、第一方向の平均間隔Sm(x)だけに着目した場合、光の拡散効果のみを考えると、第一方向の平均間隔Sm(x)の値が小さいほうが、光の拡散性効果が発揮されやすい。そのため、第一方向の平均間隔Sm(x)は、大きいほど光の拡散性が低く、輝度の低下を生じにくいことになる。 【0091】 しかしながら、第一方向の平均粗さRa(x)が小さい場合、第一方向の平均間隔Sm(x)が小さくても、光の散乱効果は低いことが分かっている。また、サンドブラスト等を用いて、光入射面全体へ、同じ凹凸形状を非常に多数配置する場合、第一方向の平均間隔Sm(x)を大きいままで維持することは難しい。 【0092】 そのため、上記の関係式(1)が成立していれば、第一方向の平均間隔Sm(x)が第二方向の平均間隔Sm(y)より小さくても、Sm(x)とSm(y)との大小関係が、上記の関係式(2)が成立する範囲内であれば、第一方向の光散乱効果は小さく、大幅な輝度低下は生じない。 ・・省略・・ 【0140】 (応用例) 以下、第一実施形態の応用例を列挙する。 (1)第一実施形態では、ディスプレイ装置1を、直下型のディスプレイ装置としたが、これに限定するものではなく、図5中に示すように、ディスプレイ装置1を、エッジライト型のディスプレイ装置としてもよい。なお、図5は、第一実施形態の変形例におけるディスプレイ装置1の概略構成を示す図である。 【0141】 なお、図5中に示すように、エッジライト型のディスプレイ装置1は、バックライトユニット4の構成を除き、直下型のディスプレイ装置1と同様の構成である。すなわち、エッジライト型のディスプレイ装置1が備えるバックライトユニット4は、導光板40と、導光板40の両端部に配列された、LEDからなる複数の光源20を備えている。これに加え、エッジライト型のディスプレイ装置1が備えるバックライトユニット4は、導光板40の背面側に、複数の反射ドット42が配置されている。 ・・省略・・ 【0146】 (4)第一実施形態では、図3中に示したように、凹凸形状26を、光入射面側に最も近い部分の、光学シート18の厚さ方向に沿った断面形状が、楕円形状となるように形成したが、凹凸形状26の構成は、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図9中に示すように、凹凸形状26を、光入射面側に最も近い部分の、光学シート18の厚さ方向に沿った断面形状が、直線状となるように形成してもよい。なお、図9は、第一実施形態の変形例における、凹凸形状26の説明図である。また、図9中では、凹凸形状26のうち、光入射面側に最も近い部分のみを、点線で示している。 【0147】 また、例えば、図10中に示すように、凹凸形状26を、光入射面側に最も近い部分の、光学シート18の厚さ方向に沿った断面形状が、曲線状となるように形成してもよい。なお、図10は、第一実施形態の変形例における、凹凸形状26の説明図である。また、図10中では、凹凸形状26のうち、光入射面側に最も近い部分のみを、点線で示している。 【0148】 凹凸形状26を、光入射面側に最も近い部分の、光学シート18の厚さ方向に沿った断面形状が、直線状や曲線状である場合、特に、凹凸形状26の長手方向を、第一方向に対して、比較的平行に配置することで、第二方向への高い光散乱効果を得ることができる。 ここで、凹凸形状26の形状は、これらの形状に限られることはない。また、凹凸形状26の密度や配置方法は、特に限定するものではなく、あくまで、第一方向と第二方向の、表面粗さの関係が成立していればよい。」 カ 「【図1】 ![]() 【図2】 ![]() 【図3】 ![]() 【図5】 ![]() 【図9】 ![]() 【図10】 ![]() 」 (2)引用発明1 引用文献1の【0140】、【0141】には、第一実施形態の応用例として、「ディスプレイ装置1」を「エッジライト型のディスプレイ装置」とすることが記載され、また、「バックライトユニット4」は「LEDからなる複数の光源20」を備えていることが記載されている。 また、引用文献1の【0141】には、「図5中に示すように、エッジライト型のディスプレイ装置1は、バックライトユニット4の構成を除き、直下型のディスプレイ装置1と同様の構成である」との記載があることから、直下型のディスプレイ装置1についての記載である【0048】の記載から「ディスプレイ装置1」は「液晶表示装置」であること、【0050】の記載から「光学シート18」は「バックライトユニット4」に用いられていることを理解できる。 さらに、図5から「光学シート18」が「導光板40」上に設けられることを看取できる。 以上より、引用文献1からは、第一実施形態の応用例として、LEDからなる複数の光源20を備える液晶表示装置のバックライトユニット4に用いられ、導光板40上に設けられる光学シートを把握することができる。 そうすると、引用文献1には、以下の「光学シート」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「基材部28と、光学要素24と、凹凸形状26を備え、 基材部28は、透光性の樹脂材料を用いて、板状に形成され、 光学要素24は、基材部28の表面側である光学シートの光出射面側において、一次元方向からなるプリズム形状に形成され、 凹凸形状26は、基材部28の裏面側である光学シートの光入射面側において、多数の凹部から形成され、 凹凸形状26を形成する多数の凹部は、光学シートの光入射面において、不規則に配置され、 凹凸形状26は、光入射面側に最も近い部分の、光学シート18の厚さ方向に沿った断面形状が、楕円形状となるように形成され、 凹凸形状26は、楕円形状の長辺方向が、第一方向と平行となるように形成され、これにより、凹凸形状26は、第一方向と、第二方向とで、異なる光の散乱効果を得ており、 光入射面では、以下の関係式(1)及び関係式(2)が成立しており、 30Ra(x)≧Ra(y)>2Ra(x) … (1) Sm(y)≧0.5Sm(x) … (2) Ra(x):光入射面と平行な第一方向に沿った光入射面の平均粗さ Ra(y):光入射面と平行且つ第一方向と直交する第二方向に沿った光入射面の平均粗さ Sm(x):第一方向に沿った凹凸形状26の平均間隔 Sm(y):第二方向に沿った凹凸形状26の平均間隔 第一方向は、光学要素24を形成するプリズム形状と平行な方向であり、第二方向は、光学要素24を形成するプリズム形状と直交する方向である、 LEDからなる複数の光源20を備えるエッジライト型の液晶表示装置のバックライトユニット4に用いられ、導光板40上に設けられる光学シート。」 2 引用文献2について 当審拒絶理由に引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献2(再公表特許第2008/084744号)には、図2及び【0040】?【0074】の記載からみて、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「透光性基材12と、その透光性基材12の一方の面S1に設けられた、単位プリズム14又は単位レンズを複数配列してなる光学要素16と、前記一方の面S1と光学要素16との間に及び/又は透光性基材12の他方の面S2上に設けられた光拡散層18とを有しており、 光拡散層18のうち少なくとも一方の面(S1又はS2)に設けられた光拡散層18が、光拡散要素としての空隙部22を多数有しており、 空隙部22の平面視形状は、1軸方向に配向した略楕円形である 光学シート。」 3 引用文献3について 当審拒絶理由に引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献3(特開2015-4859号公報)の【請求項1】には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。 「 ポリカーボネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂及び微粒子を含む中間層の両面に、 ポリカーボネート樹脂を含む外層を備えた、 少なくとも3層を有する異方性光拡散フィルムであって、 下記(1)?(4)の要件を満たす、異方性光拡散フィルム。 (1)ヘイズが75%以上90%以下、 (2)光拡散角度が、MD方向は半値角で5°以上、TD方向は半値角で3°以上、 (3)一方の最外層の外面側に、表面粗度Ra=1?5μmのランダムな凹凸形状を備え、 (4)他方の最外層の外面側に、1?10μmの山谷の深さを有し、かつ、その山の頂点の間隔が1?30μmであるスジ状の凹凸形状を備える。」 4 引用文献Aについて 原査定の拒絶の理由に引用され、先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献A(特開2012-226290号公報)には、【0016】の記載からみて、以下の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。 「少なくとも一方の表面に、複数本の溝を有し、各溝の中心線が略平行であり、複数本の溝の断面形状、ピッチ及び深さのうち少なくとも1つがランダム(不規則)に異なっている拡散シート。」 第3 対比及び判断 1 引用文献1を主引例とする場合 (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明1を対比すると、以下のとおりとなる。 (ア)微細溝 引用発明1の「凹凸形状26」は、「多数の凹部から形成され」、「光入射面側に最も近い部分の、光学シート18の厚さ方向に沿った断面形状が、楕円形状となるように形成され」ており、「楕円形状の長辺方向が、第一方向と平行となるように形成され」ている。 また、引用文献1の【0087】、【0092】等の記載から、引用発明1は「第一方向」の「光の散乱効果」が小さくなっており、「第一方向」の「光の散乱効果」よりも「第二方向」の「光の散乱効果」の方が大きくなっていると認められる。 そうすると、引用発明1の「凹凸形状26」は、本願発明1の「微細溝」に相当する。また、引用発明1の「凹凸形状26」は、「楕円形状」の短辺方向である「第二方向」(このことは、「楕円形状の長辺方向が、第一方向と平行」であり、かつ、「第一方向」と「第二方向」が直交していることから明らかである。)の「光散乱効果」が大きくなっていることから、「上記微細溝が光線を幅方向に伝搬させる」との要件を満たしている。 なお、「ホットスポットの発生を抑制する」との特定については、「上記微細溝が光線を幅方向に伝搬させる」ことにより、そのような作用を有するものとなっていると認められる。 (イ)樹脂層 引用発明1の「基材部28」は、「透光性の樹脂材料を用いて、板状に形成され」たものであり、「板状」であることから「層」状になっているといえる。 また、引用発明1は、「凹凸形状26は、基材部28の裏面側である光学シートの光入射面側において、多数の凹部から形成され」ていることから、「基材部28の裏面側」に複数の「凹凸形状26」が形成されているといえる。 さらに、引用発明1の「凹凸形状26」は、「楕円形状の長辺方向が、第一方向と平行となるように形成され」ていることから、特定方向に配向して形成されているものと認められる。 そうすると、引用発明1の「基材部28」は、本願発明1の「樹脂層」に相当する。また、引用発明1の「基材部28」は、本願発明1の「樹脂層の裏面に特定方向に配向する複数の微細溝が形成されて」いるとの要件を満たす。 なお、本願発明1の「上記樹脂層の裏面が上記光学シートの光入射面を構成しており、かつこの樹脂層が空気層を介してライトガイドフィルム又はライトガイドプレートの表面側に配置され」との特定に関して、当該特定によって「バックライトユニット用光学シート」の物として具体的な構成の特定がなされるとは認められない。仮に何らかの構成が特定されるとしても、引用発明1は「基材部28の裏面側」が「光学シートの光入射面側」となっており、「光学シート」は「導光板40上に設けられ」ている。また、技術常識を踏まえると、引用発明1の「光学シート」が「導光板40上に設けられ」た際には、「凹部」は空隙になっていると考えられる(なお、「凹部」を空隙とすることは、当業者にとって格別の困難性はないとも言える。)。したがって、引用発明1の「基材部28」は、本願発明1の「上記樹脂層の裏面が上記光学シートの光入射面を構成しており、かつこの樹脂層が空気層を介してライトガイドフィルム又はライトガイドプレートの表面側に配置され」という要件を満たすともいえる。 (ウ)光学シート 引用発明1の「光学シート」は、本願発明1の「光学シート」に相当する。 また、引用発明1の「光学シート」は、「基材部28」を備えていることから、本願発明1の「少なくとも1つの樹脂層を備え」るとの要件を満たす。 さらに、引用発明1の「光学シート」は、「LEDからなる複数の光源20を備えるエッジライト型の液晶表示装置のバックライトユニット4に用いられ」るものであり、引用文献1の図5等から「バックライトユニット4」は「LEDからなる複数の光源20」からの光を表面側に導く機能を有することは明らかであるから、引用発明1の「光学シート」は、本願発明1の「LED光源から出射される光線を表面側に導く液晶表示装置のバックライトユニット用」との要件を満たす。 イ 一致点及び相違点 以上より、本願発明1と引用発明1とは、 「 LED光源から出射される光線を表面側に導く液晶表示装置のバックライトユニット用光学シートであって、 少なくとも1つの樹脂層を備え、 上記樹脂層の裏面に特定方向に配向する複数の微細溝が形成されており、 上記樹脂層の裏面が上記光学シートの光入射面を構成しており、かつこの樹脂層が空気層を介してライトガイドフィルム又はライトガイドプレートの表面側に配置され、上記微細溝が光線を幅方向に伝搬させることでホットスポットの発生を抑制することを特徴とするバックライトユニット用光学シート。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 「微細溝」について、本願発明1では「上記微細溝同士がランダムに配向しつつ、上記微細溝が上記裏面の両端に亘って連続して」いるのに対して、引用発明1ではそのような特定がない点。 ウ 判断 上記相違点1について検討する。 引用発明1の「凹凸形状26」は、「楕円形状の長辺方向が、第一方向と平行となるように形成され、これにより、凹凸形状26は、第一方向と、第二方向とで、異なる光の散乱効果を得」るものである。また、引用文献1には応用例として、「図9中に示すように、凹凸形状26を、光入射面側に最も近い部分の、光学シート18の厚さ方向に沿った断面形状が、直線状となるように形成してもよい。」(【0146】)、「図10中に示すように、凹凸形状26を、光入射面側に最も近い部分の、光学シート18の厚さ方向に沿った断面形状が、曲線状となるように形成してもよい。」(【0147】)との記載があるが、このような場合でも「凹凸形状26の長手方向を、第一方向に対して、比較的平行に配置することで、第二方向への高い光散乱効果を得ることができる」(【0148】)と記載されている。 このように、引用文献1には「凹凸形状26の長手方向を、第一方向に対して、比較的平行に配置」することが記載されているものの、引用発明1の「凹凸形状26」同士をランダムに配向させることが、引用文献1に記載されているとは認められず、また、引用文献1の記載等からこのようにすることが動機づけられるとも認められない。このことは、引用文献2、3に記載の事項を踏まえても同様である。 次に、「微細溝」が「裏面の両端に亘って連続して」いる事項についても、このような事項が引用文献1に記載されているとは認められない。また、引用発明1の「凹凸形状26」を「裏面の両端に亘って連続」することが、引用文献1の記載等から動機づけられるとも認められない。また、このことは、引用文献2、3に記載の事項を踏まえても同様である。(なお、引用文献3の図1からは「スジ状の凹凸形状」が両端に亘って連続している構成を看取できるが、以下に示すように引用文献3の「スジ状の凹凸形状」は幅方向に光を拡散する機能を有していないことから、引用発明1の「凹凸形状26」と作用が異なるものである。) 以上より、引用発明1において、相違点1に係る要件を満たすようにすることが当業者にとって容易に想到できることであると認められない。 (2)本願発明2?9について 本願発明2?9は、本願発明1の構成を全て具備するものであるから、本願発明2?9も、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3の記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。 (3)小括 以上のとおり、本願発明1?9は、引用文献1に記載された発明でない。また、本願発明1?9は、当業者であっても、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3の記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 2 引用文献2を主引例とする場合 (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明2とを対比すると、本願発明1と引用発明2は、少なくとも以下の点で相違する。 (相違点2) 微細溝について、本願発明1では「上記微細溝同士がランダムに配向しつつ、上記微細溝が上記裏面の両端に亘って連続して」いるのに対して、引用発明2ではそのような特定がない点。 イ 判断 上記相違点2について検討する。 引用発明2の「空隙部22」は、「平面視形状」が「1軸方向に配向した略楕円形」となっている。そして、このような構成により、引用発明2は、引用文献2の【0059】に記載された「透過光の短軸方向の成分がより強く拡散することになり、光拡散性を非等方的とすることができ」る作用を有するが、引用文献2には、「空隙部22」同士をランダムに配向させることが記載されているとは認められない。また、引用発明2の「空隙部22」同士をランダムに配向させることが、引用文献2の記載等から動機づけられるとも認められない。このことは、引用文献1、3に記載の事項を踏まえても同様である。 次に、「微細溝」が「裏面の両端に亘って連続して」いる事項についても、このような事項が引用文献2に記載されているとは認められず、また、引用発明2の「空隙部22」を「裏面の両端に亘って連続」することが、引用文献2の記載等から動機づけられるとも認められない。また、このことは、引用文献1、3に記載の事項を踏まえても同様である。 以上より、引用発明2において、相違点2に係る要件を満たすようにすることが当業者にとって容易に想到できることであると認められない。 (2)本願発明2?9について 本願発明2?9は、本願発明1の構成を全て具備するものであるから、本願発明2?9も、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献2に記載された発明及び引用文献1、3に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。 (3)小括 以上のとおり、本願発明1?9は、当業者であっても、引用文献2に記載された発明及び引用文献1、3に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 3 引用文献3を主引例とする場合 (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明3とを対比すると、本願発明1と引用発明3は、少なくとも以下の点で相違する。 (相違点3-1) 微細溝について、本願発明1では「上記微細溝同士がランダムに配向し」ているのに対して、引用発明3ではそのような特定がない点。 (相違点3-2) 微細溝について、本願発明1では「上記微細溝が光線を幅方向に伝搬させることでホットスポットの発生を抑制する」のに対して、引用発明3の「スジ状の凹凸形状」にはそのような特定がない点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (ア)相違点3-1について 引用発明3の「スジ状の凹凸形状」について、引用文献3の【0058】には「スジ状の凹凸形状は、MD方向に沿って形成されるのが好ましい。」との記載、【0075】には「スジ状の凹凸形状はMD方向に沿って形成され」との記載があるものの、引用文献3には、「スジ状の凹凸形状」同士をランダムに配向させることが記載されているとは認められない。また、引用発明3の「スジ状の凹凸形状」同士をランダムに配向させることが、引用文献3の記載等から動機づけられるとも認められない。このことは、引用文献1、2に記載の事項を踏まえても同様である。 (イ)相違点3-2について 引用発明3の「スジ状の凹凸形状」について、引用文献3の【0075】には「スジ状の凹凸形状はMD方向に沿って形成され」た実施例1が記載されており、【表1】からは、実施例1の「MD方向の半値角」及び「TD方向の半値角」は、それぞれ、9°、3°であることが読み取れ、実施例1の「異方性光拡散フィルム」は「MD方向の半値角」の方が、「スジ状の凹凸形状」の幅方向である「TD方向の半値角」よりも大きなものとなっている。また、「スジ状の凹凸形状」が形成されていない比較例と比べても、「スジ状の凹凸形状」を形成することにより「MD方向の半値角」が大きくなると認めることもできない。(なお、これらのことは他の実施例でも同様である。) そうすると、引用発明3の「スジ状の凹凸形状」は、幅方向に光を拡散させるために形成されているものとは認められない。 したがって、引用発明3の「スジ状の凹凸形状」が「光線を幅方向に伝搬させる」ものであることは、引用文献3に記載されておらず、また、そのようにすることの動機付けがあると認めることもできない。このことは、引用文献1、2に記載の事項を踏まえても同様である。 以上より、引用発明3において、相違点3-1及び相違点3-2に係る要件を満たすようにすることが当業者にとって容易に想到できることであると認められない。 (2)本願発明2?9について 本願発明2?9は、本願発明1の構成を全て具備するものであるから、本願発明2?9も、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献3に記載された発明及び引用文献1、2に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。 (3)小括 以上のとおり、本願発明1?9は、引用文献3に記載された発明でない。また、本願発明1?9は、当業者であっても、引用文献3に記載された発明及び引用文献1、2に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 4 引用文献Aを主引例とする場合 (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明Aとを対比すると、本願発明1と引用発明Aは、少なくとも以下の点で相違する。 (相違点A-1) 微細溝について、本願発明1では「上記微細溝同士がランダムに配向し」ているのに対して、引用発明Aでは「各溝の中心線が略平行であ」る点。 (相違点A-2) 微細溝について、本願発明1では「上記微細溝が光線を幅方向に伝搬させることでホットスポットの発生を抑制する」のに対して、引用発明Aの「溝」にはそのような特定がない点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (ア)相違点A-1について 引用発明Aは、「複数本の溝」が「各溝の中心線が略平行」となっているものである。そして、引用文献Aに「複数本の溝」同士をランダムに配向させることが記載されているとは認められず、また、引用発明Aの「複数本の溝」同士をランダムに配向させることが、引用文献Aの記載等から動機づけられるとも認められない。このことは、引用文献B?Dに記載の事項を踏まえても同様である。 (イ)相違点A-2について 引用文献Aには、「本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、エッジライト方式の面光源装置において、簡易な構成で、輝線や暗線を発生させることなく、光の広がりの少ないローカルディミングを実現することを目的とする。」との記載があり(【0010】)、そのために、「導光板の出光面及び/又はその対向面に、導光板内における光の伝播方向に略平行で(すなわち、入光面に垂直で)ランダムな溝構造を有する拡散シートを積層すると、光源からの光を直線的に出光させることができ、輝線や暗線も発生しないことを見出した。」と記載されている(【0011】)。また、引用文献Aの【0016】?【0023】には、溝構造による光の直進化の効果を十分に発揮することについての記載がある。 これらの記載からみて、引用発明Aの「溝」は、光の直進させるためのものであり、「光線を幅方向に伝搬させる」ものではないと認められる。 そうすると、引用発明Aの「溝」を、作用の異なる「光線を幅方向に伝搬させる」ようにすることは、引用文献Aに記載されておらず、また、そうすることの動機付けがあると認めることもできない。また、このことは、引用文献B?Dに記載の事項を踏まえても同様である。 以上より、引用発明Aにおいて、相違点A-1及び相違点A-2に係る要件を満たすようにすることが当業者にとって容易に想到できることであると認められない。 (2)本願発明2?9について 本願発明2?9は、本願発明1の構成を全て具備するものであるから、本願発明2?9も、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献Aに記載された発明及び引用文献B?Dに記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたということができない。 (3)小括 以上のとおり、本願発明1?9は、引用文献Aに記載された発明でない。また、本願発明1?9は、当業者であっても、引用文献Aに記載された発明及び引用文献B?Dに記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 第4 原査定の拒絶の理由について 上記「第3」4に述べたとおりである。 第5 当合議体が通知した拒絶の理由について 上記「第3」1?3に述べたとおりである。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の拒絶の理由及び当合議体が通知した拒絶の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。 また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-10-18 |
出願番号 | 特願2016-240993(P2016-240993) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 川口 聖司、菅原 奈津子 |
特許庁審判長 |
榎本 吉孝 |
特許庁審判官 |
早川 貴之 関根 洋之 |
発明の名称 | バックライトユニット用光学シート及びバックライトユニット |
代理人 | 天野 一規 |