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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66B
管理番号 1379156
審判番号 不服2021-5423  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-26 
確定日 2021-11-02 
事件の表示 特願2018-66305「エレベータ制御装置」拒絶査定不服審判事件〔令和1年10月10日出願公開、特開2019-172468、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月30日の出願であって、令和2年2月18日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月22日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年7月10日付けで拒絶理由通知(最後の拒絶理由通知)がされ、同年12月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、当該手続補正は、同年12月25日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和3年4月26日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 令和2年12月25日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1 令和2年12月25日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
令和2年12月2日にした手続補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1に係る発明は、引用文献1、2、5、7及び8に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、当該補正後の請求項2及び3に係る発明は、引用文献1、2、5?8に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該補正後の請求項4に係る発明は、引用文献1?3、5?8に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、当該補正後の請求項5に係る発明は、引用文献1?8に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、独立特許要件を満たさないから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第53条第1項の規定により却下する。

引用文献等一覧
引用文献1:特開2005-089095号公報
引用文献2:特開2014-201411号公報
引用文献3:星野 孝道 Takamichi Hoshino,都市空間の発展を支える昇降機製品・サービス,日立評論 第98巻 第12号,日立評論社,2016年12月1日(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2010-137980号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2006-137572号公報
引用文献6:特開2017-057067号公報
引用文献7:特開2006-148252号公報(周知技術を示す文献)
引用文献8:国際公開第2015/056530号(周知技術を示す文献)
なお、引用文献7及び8は令和2年12月25日付けの補正の却下の決定で新たに追加された文献であって、その他の引用文献(引用文献1?6)は、原査定で引用された文献である。

2 原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1に係る発明は、上記引用文献1、2及び5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2及び3に係る発明は、上記引用文献1、2、5及び6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4に係る発明は、上記引用文献1?3、5及び6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項5に係る発明は、上記引用文献1?6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 本願発明
令和2年12月2日にした手続補正は、上記のとおり補正の却下の決定がされたから、本願請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、令和2年6月22日にした手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
エレベータのかごと、
前記かご内の利用者を撮影する撮影部と、
前記撮影部を前記かごの側面のかご操作盤に設け、
前記撮影部からの映像信号を画像として認識する認識部と、
前記認識部で認識された画像の中から前記利用者の顔画像を検出する検出部と、
車椅子利用者個人を特定する画像データ及び前記画像データ情報とエレベータの出発階及び行先階とを少なくとも含むデータベースとを予め記憶する記憶部と、
前記顔画像と前記画像データを照合する照合部と、をエレベータ制御装置に備え、
前記顔画像と前記画像データの照合が一致し、かつ、前記画像データ情報と紐付けられた前記データベースの出発階と前記利用者の乗車階が一致し、かつ、前記利用者の乗車階からエレベータのかごの走行方向に対して前記画像データ情報と紐付けられた前記データベースに行先階が有る場合、
前記エレベータのかご呼びとして前記行先階を車椅子仕様で自動登録されることを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記かご操作盤は利用者が目的階を登録する複数の登録部を備え、前記複数の登録部の中から自動登録された前記行先階と同じ登録部は、前記利用者の操作で登録された登録部とは異なる色で点灯させることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記かご操作盤は利用者に対して前記行先階が自動登録されたことを音声で報知するスピーカー及び文字で報知する液晶画面を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記撮影部は前記かごの床面から800mm?1200mmの高さに設けられた全方位カメラであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記エレベータは正面ドアと背面ドアを有し、前記撮影部は、前記正面ドアまたは背面ドアの何れか一方の開くドア方向を撮像することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエレベータ制御装置。」

第4 引用文献、引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア「【請求項1】
利用者が建物のエントランス及びエレベータの乗りかごを利用し、建物の目的とする階に移動するエレベータ制御装置において、
前記エントランス及び乗りかご内にそれぞれ設置され、前記利用者の顔画像を撮影する第1及び第2の顔画像撮影手段と、
前記建物内に住む居住者ごとに顔画像参照情報、自宅階情報及びエントランス階情報が記憶され、前記第1又は第2の顔画像撮影手段から送信されてくる利用者の顔画像情報に基づいて前記顔画像参照情報を参照し、当該建物内に住む居住者であるか否かを判断し、居住者と認証した場合、当該居住者の自宅階情報又はエントランス階情報を送出する居住者認証装置と、
この居住者認証装置からの自宅階情報又はエントランス階情報を行き先階として自動登録する行き先階自動登録装置と、
この行き先階自動登録装置によって自動登録された行き先階に基づいて前記乗りかごを運行する運行制御装置とを備えたことを特徴とするエレベータ制御装置。」
イ「【0001】
本発明は、例えば建物の玄関ロックの解除に連動して動作可能な玄関ロック連動エレベータなどに利用されるエレベータ制御装置に関する。」
ウ「【0023】
このエレベータ制御装置としては、エントランス5及び及びエレベータ乗りかご3内に設置され、利用者6の顔画像を撮影する撮影カメラなどの顔画像撮影装置7a、7bと、この顔画像撮影装置7a、7bで撮影された顔画像に基づいて共同住宅に住む真正な居住者(居住者と何らか姻戚関係をもつ者も含む。以下、同じ)であるか否かを認証する居住者認証装置8と、顔画像から利用者6が真正な居住者と認証した場合に当該居住者認証装置8から自動的に発せられる例えば自宅階などの階情報に従つて行き先階を自動登録する行き先階自動登録装置9と、エレベータの運行制御を司る運行制御装置10とで構成されている。
【0024】
前記顔画像撮影装置7a,7bは、例えば可視光で撮影可能なアナログやデジタルの撮影カメラが用いられ、ドアロック機能の有無に拘らず、利用者がエントランス5を通過する際や利用者が乗りかご3内に乗車する際又は乗車した後、エレベータ利用者の顔画像を撮影する。なお、夜間の比較的暗い場所での撮影も可能なように赤外線カメラを用いることも可能である。
【0025】
前記居住者認証装置8は、図2に示すように居住者の顔画像,当該顔画像の特徴情報などの顔画像参照情報(同図a参照)と居住者ごとの自宅階情報、エントランス階情報(同図b参照)とを記憶する認証参照情報記憶部8aと、顔画像撮影装置7a,7bから顔画像情報を受信したとき、認証参照情報記憶部8aに記憶される顔画像参照情報を参照し、真正な居住者であるか否かを判断し、真正な居住者であると認証したとき、当該居住者に関連付けられている自宅階情報又はエントランス階情報を送出する居住者認証処理部8bとが設けられている。
【0026】
前記行き先階自動登録装置9は、居住者認証処理部8bから居住者の自宅階情報又はエントランス階情報を受け取ったとき、当該自宅階情報又はエントランス階情報に従って行き先階の自動登録処理を実行する。また、行き先階自動登録装置9は、乗りかご3内に設置されるかご操作盤11の行き先階ボタンから行き先階登録指示を受けたにも拘らず、居住者認証処理部8bから自宅階情報又はエントランス階情報を受け取っていないとか、或いは自宅階情報又はエントランス階情報を受け取っているが、行き先階ボタンからの行き先階と異なる場合には、行き先階ボタンから行き先階登録指示による行き先階の自動登録を拒否することも可能である。
【0027】
前記運行制御装置10は、各階乗場に設置されるかご呼びボタン操作及び行き先階自動登録装置9による行き先の自動登録処理に従い、エレベータを運行制御する機能をもっている。」
エ「【0029】
この居住者認証装置8を構成する居住者認証処理部8bは所定の周期ごとに顔画像撮影装置7a,7bから顔画像情報を取り込んで認証処理を実行する。具体的には、例えば共同住宅の5階に住む居住者Aがエントランス5に設置される顔画像撮影装置7aに顔を向けると、当該顔画像撮影装置7aから居住者Aの顔画像情報が居住者認証処理部8bに送られる。ここで、居住者認証処理部8bは、顔画像情報有りと判断する一方(S1)、この顔画像情報をもとに予め認証参照情報記憶部8aに登録されている顔画像参照情報(図2(a))を参照し、顔画像情報と等しいか又は所要の値以上の類似度をもつ顔画像参照情報が存在すれば、顔画像撮影装置7aに顔を向けた利用者が真正な居住者であると認証し、それ以外の場合には居住者でないと認証する(S2)。居住者でないと認証された場合、ステップS1に戻る。
【0030】
この居住者認証処理部8bは、真正な居住者であると認証した場合、エントランス5のロック解除指示信号を出力し、ドア制御部(図示せず)を通してエントランス5のドアロックを解除する一方、真正な居住者とされた居住者Aと関連付けられている自宅階又はエントランス階情報を送信するとともに、認証フラグに「1」を設定する(S3)。この認証フラグ「1」は居住者Aが認証され、自宅階又はエントランス階情報を送信したことを示している。
【0031】
ところで、通常、エントランス側顔画像撮影装置7aで撮影された顔画像の場合、居住者Aはエントランス階から自宅階に移動するので、自宅階情報を送信し、一方、乗りかご側顔画像撮影装置7bで撮影された顔画像の場合、居住者Aは自宅階5階からエントランス階に移動するので、エントランス階情報を送信するものである。
【0032】
行き先階自動登録装置9は、居住者認証処理部8bからの自宅階又はエントランス階情報の有無を判断し(S4)、例えば5階の自宅階情報有りと判断された場合、運行制御装置10に対して、5階を行き先階とする自動登録処理を行う(S5)。
【0033】
この自宅階の自動登録処理後及び自宅階等の情報無しと判断された場合、乗りかご3内のかご操作盤11の行き先階ボタンが操作されたか否かを判断し(S6)、行き先階ボタンが操作されたと判断された場合には先に登録処理された5階(認証フラグ“1”)と同じ行き先階か否かを判断し(S7)、同じ行き先階の場合には先に登録された行き先階のもとにボタン操作されたと追認する。先に登録された5階と異なる行き先階ボタンが操作された場合、居住者以外の者であると判断し、行き先階の登録処理を行わない。つまり、行き先階ボタンの操作による登録処理を拒否する。
・・・中略・・・
【0036】
一方、5階に住む居住者Aが乗りかご3に乗り込んで顔画像撮影装置7bに顔を向けると、居住者認証装置8が前述同様に顔画像撮影装置7bからの顔画像情報から5階の居住者であると認証すると(S1,S2)、ロック解除ではなく、エントランス階を行き先階とする行き先階情報を送信し(S3)、以後、同様の処理を実行する(S4?S9)。」
オ「【0039】
(第2の実施の形態)
図4は本発明に係るエレベータ制御装置の第2の実施形態を示す構成図である。なお、同図において、図1と同一又は等価な部分には同一符号を付して説明し、詳しくは図1の説明に譲る。
【0040】
この実施の形態は、利用者の顔画像情報から取得される自宅階だけでなく、居住者の手によるポーズを認識し、予め定める自宅階以外の他居住者階(利用階)に移動できるようにする例である。
【0041】
このエレベータ制御装置は、図1に示す構成と比較し、居住者認証装置8及び行き先階自動登録装置9の構成を異にし、その他の構成は図1と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0042】
すなわち、居住者認証装置8は、認証参照情報記憶部8aと居住者認証処理部8bとからなるが、認証参照情報記憶部8aには、図5に示すように居住者の顔画像参照情報(同図(a)参照)、複数のポーズパターン情報(同図(b)参照)及び居住者ごとに認証フラグエリア、自宅階、エントランス階、ポーズ情報が登録されている。例えば共同住宅の5階に住む居住者Aについては、自宅階:5階、エントランス階:1階、ポーズ情報が「1」、「2」、「3」が登録されている。このポーズ情報「1」は同図(b)のポーズ「1」に相当し、ポーズ情報「2」はポーズ「2」に相当し、以下同様である。
【0043】
前記居住者認証処理部8bは、顔画像撮影装置7a,7bから送られてくる顔画像のもとに同図(a)に示すような居住者の顔画像参照情報を参照し真正な居住者を認証した後、利用者が顔画像撮影装置7a,7bに向けて手によるポーズを行った場合、同様に顔画像撮影装置7a,7bからの手によるポーズの画像のもとに同図(b)に示すポーズパターンとなるポーズ「1」、「2」、…を参照し、真正な居住者の手によるポーズに対応するポーズ情報「1」を取り出し、自宅階情報又はエントランス階情報とともに行き先階自動登録装置9に送信する機能をもっている。
【0044】
この行き先階自動登録装置9は、各居住者ごとのポーズ情報に対する移動階情報が登録されている居住者移動階記憶部9aと、居住者認証処理部8bから送信されてくる居住者の自宅階情報又はエントランス階情報を居住者移動階記憶部9aの所定のエリアに一時記憶するとともに、居住者の手によるポーズのポーズ情報「1」に基づいて居住者移動階記憶部9aに既に設定されている他居住者階情報(移動階情報)を取り出し、行き先階の自動登録を行う行き先階登録処理部9bとが設けられている。
【0045】
次に、以上のように構成されたエレベータ制御装置の動作について説明する。
【0046】
先ず、居住者移動階記憶部9aには、5階に住む居住者Aに対応し、ポーズ情報「1」:3階、ポーズ情報「2」:8階、ポーズ情報「3」:10階が記憶されている。これに伴い、認証参照情報記憶部8aには、居住者Aに対応し、予めポーズ情報が「1」、「2」、「3」が登録されている。
【0047】
以上のような状態において、共同住宅の5階に住む居住者Aがエントランス5に設置される顔画像撮影装置7aに顔を向けるとともに、手によってポーズ「2」をとったものとする。従って、顔画像撮影装置7aからは、利用者の顔画像の他、ポーズ「2」の画像が居住者認証処理部8bに送られる。
【0048】
この居住者認証処理部8bでは、顔画像撮影装置7aからの顔画像情報をもとに認証参照情報記憶部8aに記憶される顔画像参照情報と照合し、真正な居住者と認証すれば、エントランス5のロックを解除する一方、前記ポーズ「2」の画像に基づいて認証参照情報記憶部8aに記憶されるポーズパターンを参照し、ポーズ「2」であることを認識し、図5に示すごとく居住者Aに対する自宅階又はエントランス階、ポーズ情報「2」を取り出し、行き先階自動登録装置9に送出する。
【0049】
この行き先階自動登録装置9の行き先階登録処理部9bは、居住者認証処理部8bから送信されてくる居住者Aの例えば自宅階情報を居住者移動階記憶部9aの適宜なエリアに保存する一方、居住者認証処理部8bからのポーズ情報「2」に基づき、自身の自宅階5階ではなく、予め居住者Aに対して既に登録済みのポーズ情報「2」:8階に基づき、居住者Aがポーズ情報「2」から8階行きを要求していると判断し、8階を行き先階として自動登録する。
【0050】
また、5階に住む居住者Aが乗りかご3に乗車し、顔画像撮影装置7bに顔を向けるとともに手により例えばポーズ「3」をとったものとする。居住者認証処理部8bでは、前述と同様に真正な居住者Aと認証すると、認証参照情報記憶部8aから居住者のエントランス階情報とポーズ「3」の認識に基づくポーズ情報「3」とを取り出し、行き先階自動登録装置9に送信する。この行き先階自動登録装置9は、居住者認証処理部8bから送信されてくるエントランス階情報を居住者移動階記憶部9aの適宜なエリアに保存する一方、居住者認証処理部8bからのポーズ情報「3」に基づき、エントランス階情報ではなく、予め居住者Aに対して既に登録済みのポーズ情報「3」:10階に基づき、居住者Aがポーズ情報「3」から10階行きを要求していると判断し、10階を行き先階として自動登録する。
【0051】
従って、以上のような実施の形態によれば、行き先階自動登録装置9に接続される居住者移動階記憶部9aに予め居住者のポーズ情報と移動階との関係を登録することにより、居住者認証装置8は、顔画像撮影装置7aの顔画像情報から真正な居住者を認証し、かつ、手によるポーズの画像からポーズ情報を取得し、行き先階自動登録装置9に送信するので、当該行き先階自動登録装置9では、当該ポーズ情報から共同住宅の他の居住者と行き来する移動階情報を取り出して行き先階として自動登録できる。これにより、居住者が自宅階以外の階にも容易に移動でき、セキュリティを低下させずに使い易さに優れたエレベータを実現できる。」
カ「【図4】


キ「【図5】



以上の事実から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「利用者が建物のエントランス及びエレベータの乗りかごを利用し、建物の目的とする階に移動するエレベータ制御装置において、
前記エントランス及び乗りかご内にそれぞれ設置され、前記利用者の顔画像を撮影する第1及び第2の顔画像撮影手段と、
前記建物内に住む居住者ごとに顔画像参照情報、自宅階情報及びエントランス階情報が記憶され、前記第1又は第2の顔画像撮影手段から送信されてくる利用者の顔画像情報に基づいて前記顔画像参照情報を参照し、当該建物内に住む居住者であるか否かを判断し、居住者と認証した場合、当該居住者の自宅階情報又はエントランス階情報を送出する居住者認証装置と、
この居住者認証装置からの自宅階情報又はエントランス階情報を行き先階として自動登録する行き先階自動登録装置と、
この行き先階自動登録装置によって自動登録された行き先階に基づいて前記乗りかごを運行する運行制御装置とを備えたエレベータ制御装置。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明の「エレベータ」及び「エレベータの乗りかご」又は「乗りかご」は、それぞれ本願発明1の「エレベータ」及び「エレベータのかご」に相当する。
引用発明の「利用者」及び「撮影手段」は、それぞれ本願発明1の「利用者」及び「撮影部」に相当し、引用発明の「利用者の顔画像を撮影する」ことは、顔を含んだ利用者を撮影することであり、また、引用発明の「乗りかご内に」「設置され」た「前記利用者の顔画像を撮影する」「第2の顔画像撮影手段」は、乗りかご内に設けられた第2の顔画像撮影手段で乗りかご内の利用者を撮影するものであるといえる。したがって、引用発明の「前記エントランス及び乗りかご内にそれぞれ設置され、前記利用者の顔画像を撮影する第1及び第2の顔画像撮影手段と」「を備えた」ことは、本願発明1の「エレベータのかごと、前記かご内の利用者を撮影する撮影部と、前記撮影部を前記かごの側面のかご操作盤に設け」たこととの対比において、「エレベータのかごと、前記かご内の利用者を撮影する撮影部と、前記撮影部を前記かご内に設け」たことの限度で一致する。
引用発明の「居住者認証装置」は、「第1又は第2の顔画像撮影手段から送信されてくる利用者の顔画像情報に基づいて前記顔画像参照情報を参照」するものであるから、顔画像撮影手段からの映像信号である撮影画像の情報の中から利用者の顔画像を認識し検出するものといえ、本願発明1の「前記撮影部からの映像信号を画像として認識する認識部と、前記認識部で認識された画像の中から前記利用者の顔画像を検出する検出部」に相当する構成を具備しているといえる。
引用発明の「顔画像参照情報」は、本願発明1の「画像データ」又は「画像データ情報」に相当し、そして、引用発明の「前記建物内に住む居住者ごと」の「顔画像参照情報」は、エレベータ利用者個人を特定するための画像データであるといえ、本願発明1の「車椅子利用者個人を特定する画像データ」との対比において、「エレベータ利用者個人を特定する画像データ」の限度で一致する。
引用発明の「自宅階情報」及び「エントランス階情報」は、それぞれ、エレベータ利用者の出発階及び行先階のデータベースであるといえるから、引用発明の「前記建物内に住む居住者ごと」の「顔画像情報、自宅階情報及びエントランス階情報」は、本願発明1の「前記画像データ情報とエレベータの出発階及び行先階とを少なくとも含むデータベース」に相当し、そして、引用発明の「居住者認識装置」は、予め「前記建物内に住む居住者ごとに顔画像参照情報、自宅階情報及びエントランス階情報が記憶され」る記憶部を具備し、顔画像参照情報と自宅階情報及びエントランス階情報を紐付けて保存しているものであるといえる。
引用発明の「顔画像情報」は、本願発明1の「顔画像」に相当し、また、引用発明の「参照」は本願発明1の「照合」に相当する。そして、引用発明の「居住者認識装置」は、「前記第1又は第2の顔画像撮影手段から送信されてくる利用者の顔画像情報に基づいて前記顔画像参照情報を参照」するものでもあり、顔画像情報と顔画像参照情報を照合するものといえるから、本願発明1の「前記顔画像と前記画像データを照合する照合部」を具備しているといえる。
引用発明の「当該建物内に住む居住者であるか否かを判断し、居住者と認証した場合」とは、利用者の顔画像情報に基づいて顔画像参照情報を参照した結果、両者が一致する場合であるから、本願発明1の「前記顔画像と前記画像データの照合が一致」する場合に相当する。
引用発明の「自宅階情報」、「エントランス階情報」は、そのどちらか一方が、本願発明1の「出発階」又は「乗車階」に、他方が「行先階」に相当する。そして、引用発明の「居住者認証装置」が「当該居住者の自宅階情報又はエントランス階情報を送出」し、「行き先階自動登録装置」が、「この居住者認証装置からの自宅階情報又はエントランス階情報を行き先階として自動登録する」ことは、居住者として認識された利用者の乗車階、例えばエントランス階(あるいは自宅階)からエレベータの乗りかごの走行方向に対して利用者の自宅階(あるいはエントランス階)がある場合、エレベータのかご呼びとして、自宅階を行き先階として自動登録することといえるから、本願発明1の「前記利用者の乗車階からエレベータのかごの走行方向に対して前記画像データと紐付けられた前記データベースに行先階がある場合、前記エレベータのかご呼びとして前記行き先階を車椅子仕様で自動登録される」こととの対比において、「前記利用者の乗車階からエレベータのかごの走行方向に対して前記画像データと紐付けられた前記データベースに行先階がある場合、前記エレベータのかご呼びとして前記行き先階を自動登録される」との限度で一致する。
引用発明の「エレベータ制御装置」は、本願発明1の「エレベータ制御装置」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「エレベータのかごと、
前記かご内の利用者を撮影する撮影部と、
前記撮影部を前記かご内に設け、
前記撮影部からの映像信号を画像として認識する認識部と、
前記認識部で認識された画像の中から前記利用者の顔画像を検出する検出部と、
エレベータ利用者個人を特定する画像データ及び前記画像データ情報とエレベータの出発階及び行先階とを少なくとも含むデータベースとを予め記憶する記憶部と、
前記顔画像と前記画像データを照合する照合部と、をエレベータ制御装置に備え、
前記顔画像と前記画像データの照合が一致し、かつ、前記利用者の乗車階からエレベータのかごの走行方向に対して前記画像データ情報と紐付けられた前記データベースに行先階が有る場合、
前記エレベータのかご呼びとして前記行先階を自動登録されるエレベータ制御装置。」

[相違点1]
本願発明1は、「撮影部」が「かご内の側面のかご操作盤」に設けられているのに対し、引用発明は、「第2の顔画像撮影縦断」が「かご内に」「設置され」ている点。
[相違点2]
本願発明1は、エレベータの「車椅子利用者個人を特定」し、行先階自動登録が、車椅子仕様とされるものであるのに対し、引用発明は、「建物内に住む居住者」を認証し、行き先階を自動登録するものである点。
[相違点3]
本願発明1は、行先階自動登録において「前記画像データ情報と紐付けられた前記データベースの出発階と前記利用者の乗車階が一致」することを条件の一つとしているのに対し、引用発明の行き先階自動登録は、斯かる条件を必要としていない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
本願の明細書段落【0041】?【0051】、【図4】及び【図5】の記載からすれば、本願発明1が、行先階自動登録の条件として、画像データ情報と紐付けられたデータベースの出発階と利用者の乗車階が一致することを要求する、すなわち相違点3に係る構成を発明特定事項として具備するのは、出発階と行先階の移動の組み合わせとして複数(例えば、ロビーと執務室間の移動の組み合わせに加え、執務室と会議室間の移動という組み合わせ)に対応するために、まず、出発階と乗車階が一致することを要求し、斯かる条件が満足されたなら、さらに、当該出発階(乗車階)からエレベータのかごの走行方向に対して利用者の行き先階がデータベースに登録されているか否かを判定するものであると理解できる。
一方、引用発明は、主にはエレベータ利用者である建物居住者のエントランス階と自宅階間の移動について、行き先階が自動登録されるものであって、エントランス階と自宅階間以外へのボタン操作は拒否され、エントランス階と自宅階以外の行き先階に移動するには、エレベータ利用者のさらに他の操作を要求するものとされている(以下、「引用文献1に記載された技術的事項」という。引用文献1の段落【0033】、【0039】?【0051】、【図4】及び【図5】を参照。)。
このように、引用文献1には、出発階と行き先階の移動の組み合わせとして複数に対応するために、行き先階自動登録の条件として、まず出発階と乗車階が一致することを要求することについては、記載も示唆もされていないから、当業者といえども、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項から相違点3に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
また、拒絶査定で引用された引用文献2?6並びに補正の却下の決定で新たに追加された引用文献7及び8にも、相違点3に係る構成については記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点1及び2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2及び5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2?5について
本願発明2?5は、本願発明1を引用した発明であり、本願発明1と同様に「前記画像データ情報と紐付けられた前記データベースの出発階と前記利用者の乗車階が一致」することを行先階自動登録の条件の一つとしているのであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献1、2及び5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本願発明2及び3は、引用文献1、2、5及び6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本願発明4は、引用文献1?3、5及び6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたもののではなく、本願発明5は、引用文献1?6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-10-18 
出願番号 特願2018-66305(P2018-66305)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B66B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今野 聖一  
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 杉山 健一
尾崎 和寛
発明の名称 エレベータ制御装置  
代理人 浅野 哲平  
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