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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1379319
審判番号 不服2020-11921  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-26 
確定日 2021-11-09 
事件の表示 特願2016-170180「無人航空機制御システム、その制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月24日出願公開、特開2017-147718、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月31日(優先権主張 平成28年2月16日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年10月 3日付け 拒絶理由通知書
令和元年12月 9日 意見書、手続補正書の提出
令和2年 5月21日付け 拒絶査定
令和2年 8月26日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和3年 4月20日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和3年 6月18日 意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年5月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-6、8-12
・引用文献等 1、3-4

・請求項 7
・引用文献等 1-4

引用例1:米国特許出願公開第2015/0230207号明細書
引用例2:特開2013-010499号公報
引用例3:特開2012-109973号公報
引用例4:特表2005-513934号公報

第3 本願発明について
本願の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、令和3年6月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし12は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
無人航空機と、前記無人航空機に指示を行うための遠隔操作端末とを含む無人航空機制御システムであって、
前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で第一の通信方式で通信することにより、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信状況を特定する通信状況特定手段と、
前記通信状況特定手段で特定した通信状況に応じて、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で、第一の通信方式で通信するのか、前記第一の通信方式とは異なる第二の通信方式で通信するのかを決定する通信方式決定手段と、
前記通信方式決定手段で決定された通信方式で、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信を行う通信制御手段と、
を備え、
前記第一の通信方式は、SIMカードを用いない通信方式で、前記第二の通信方式は、SIMカードによって提供され、
前記無人航空機が、前記通信状況特定手段によって前記通信状況が特定された後、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信が中断されていない状態でホバリング状態にし、当該ホバリング状態で前記通信方式決定手段により決定された通信方式に切り替えて前記遠隔操作端末からの通信を受け付けることを特徴とする無人航空機制御システム。
【請求項2】
さらに、前記無人航空機と前記遠隔操作端末は前記SIMカードを挿入するカードアダプタを有することを特徴とする請求項1に記載の無人航空機制御システム。
【請求項3】
前記通信状況特定手段は、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で一方から他方に前記第一の通信方式によって所定のパケットを送信し、前記所定のパケットに対する応答の受信有無または応答時間に基づいて通信状況を特定し、
前記通信方式決定手段は、前記通信状況特定手段において、前記応答が無い、あるいは所定時間が経過した場合に、第二の通信方式に決定することを特徴とする請求項1または2に記載の無人航空機制御システム。
【請求項4】
前記通信状況特定手段は、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で一方から他方に前記第一の通信方式によって所定のパケットを送信し、前記所定のパケットに対する応答の受信有無または応答時間に基づいて通信状況を特定し、
前記通信方式決定手段は、前記通信状況特定手段において、所定時間が経過する前に前記応答を受信した場合に、第一の通信方式に決定することを特徴とする請求項1乃至3に記載の無人航空機制御システム。
【請求項5】
前記通信状況特定手段は、前記遠隔操作端末から発信された電波の強度を測定する電波強度測定手段を有し、
前記通信方式決定手段は、前記電波強度測定手段で測定された強度が所定値以下である場合に、第二の通信方式に決定することを特徴とする請求項1または2に記載の無人航空機制御システム。
【請求項6】
前記通信状況特定手段は、前記遠隔操作端末から発信された電波の強度を測定する電波強度測定手段を有し、
前記通信方式決定手段は、前記電波強度測定手段で測定された強度が所定値以上である場合に、第一の通信方式に決定することを特徴とする請求項1または2または5に記載の無人航空機制御システム。
【請求項7】
前記無人航空機は、
前記通信方式決定手段で決定された通信方式で前記遠隔操作端末から通信を受け付けるまでホバリングする飛行制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無人航空機制御システム。
【請求項8】
無人航空機と、前記無人航空機に指示を行うための遠隔操作端末とを含む無人航空機制御システムの制御方法であって、
前記無人航空機制御システムの通信状況特定手段が、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で第一の通信方式で通信することにより、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信状況を特定する通信状況特定ステップと、
前記無人航空機制御システムの通信方式決定手段が、前記通信状況特定ステップで特定した通信状況に応じて、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で、第一の通信方式で通信するのか、前記第一の通信方式とは異なる第二の通信方式で通信するのかを決定する通信方式決定ステップと、
前記無人航空機制御システムの通信制御手段が、前記通信方式決定ステップで決定された通信方式で、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信を行う通信制御ステップと、
を備え、
前記第一の通信方式は、SIMカードを用いない通信方式で、前記第二の通信方式は、SIMカードによって提供され、
前記無人航空機が、前記通信状況特定ステップによって前記通信状況が特定された後、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信が中断されていない状態でホバリング状態にし、当該ホバリング状態で前記通信方式決定ステップにおいて決定された通信方式に切り替えて前記遠隔操作端末からの通信を受け付ける
ことを特徴とする無人航空機制御システムの制御方法。
【請求項9】
無人航空機と、前記無人航空機に指示を行うための遠隔操作端末とを含む無人航空機制御システムの制御方法を実行可能なプログラムであって、
前記無人航空機制御システムを、
前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で第一の通信方式で通信することにより、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信状況を特定する通信状況特定手段と、
前記通信状況特定手段で特定した通信状況に応じて、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で、第一の通信方式で通信するのか、前記第一の通信方式とは異なる第二の通信方式で通信するのかを決定する通信方式決定手段と、
前記通信方式決定手段で決定された通信方式で、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信を行う通信制御手段として機能させるプログラムであって、
前記第一の通信方式は、SIMカードを用いない通信方式で、前記第二の通信方式は、SIMカードによって提供され、
前記無人航空機が、前記通信状況特定手段によって前記通信状況が特定された後、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信が中断されていない状態でホバリング状態にし、当該ホバリング状態で前記通信方式決定手段により決定された通信方式に切り替えて前記遠隔操作端末からの通信を受け付けるように機能を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
前記第一の通信方式は、無線LANまたはRC通信であって、前記第二の通信方式は、移動体通信網を介した通信方式であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の無人航空機制御システム。
【請求項11】
前記第一の通信方式は、無線LANまたはRC通信であって、前記第二の通信方式は、移動体通信網を介した通信方式であることを特徴とする請求項8に記載の無人航空機制御システムの制御方法。
【請求項12】
前記第一の通信方式は、無線LANまたはRC通信であって、前記第二の通信方式は、移動体通信網を介した通信方式であることを特徴とする請求項9に記載のプログラム。」

第4 引用例、引用発明等について
1.引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2015/0230207号明細書(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「[0006] In some embodiments, the plurality of communication modules are carried by a movable object. The movable object can be an unmanned aerial vehicle.」
(当審訳:
[0006] いくつかの実施形態では、複数の通信モジュールは、移動体に搭載されている。移動体は無人航空機とすることができる。)

(2)「[0062](略)Dual-mode communication may be provided between the movable object and terminal, which may result in providing two simultaneous communication links. (略)」
(当審訳:
[0062](略)移動体と端末との間にデュアルモード通信を提供することができ、その結果、2つの同時通信リンクを提供することができる。(略))

(3)「[0066] FIG. 2 illustrates a movable object 200 communicating with a terminal 202 via first and second communication links 204, 206, in accordance with embodiments. Similar to embodiments of FIG. 1 described herein, the first communication link 204 can be a point-to-point or direct communication link, such that data is directly transmitted between the movable object 200 and terminal 202 without any intervening network nodes, and the second communication link 206 can be an indirect communication link, such that data is transmitted between the movable object 200 and the terminal 202 via a series of intermediate network nodes. In some embodiments, the direct communication link 204 can be a WiFi, WiMAX, or COFDM link. The indirect communication link 206 can be a mobile phone network link, such as a 3G or 4G network link. For example, the network nodes of the indirect communication link 206 are depicted in FIG. 2 as mobile stations 208 and network switch 210, with the mobile stations 208 communicating with the network switch 210 via cables 212 and communicating with the movable object 200 and terminal 202 via wireless communication. However, it shall be understood that the indirect communication link 206 can include any suitable number and type of network nodes, and the network nodes can be respectively interlinked using any suitable type of communication method, as previously described herein.」
(当審訳:
[0066] 図2は、実施形態によれば、第1及び第2の通信リンク204、206を介して端末202と通信する移動体200を示している。本明細書で説明された図1の実施形態と同様に、第1の通信リンク204は、ポイントツーポイント又は直接通信リンクとすることができ、データが、介在するネットワークノードなしに移動体200と端末202との間で直接送信されるようにし、第2の通信リンク206は間接通信リンクとすることができ、データが一連の中間ネットワークノードを介して移動体200と端末202との間で送信される。いくつかの実施形態では、直接通信リンク204は、WiFi、WiMAX、又はCOFDMリンクとすることができる。間接通信リンク206は、3G又は4Gネットワークリンクなどの携帯電話ネットワークリンクとすることができる。例えば、移動局208がケーブル212を介してネットワークスイッチ210と通信する、移動局208とネットワークスイッチ210のような間接通信リンク206のネットワークノードが図2に示され、無線通信を介して移動体200及び端末202は通信する。しかしながら、間接通信リンク206は、任意の適切な数及びタイプのネットワークノードを含むことができ、ネットワークノードは、本明細書で前述したように、任意の適切なタイプの通信方法を使用してそれぞれ相互リンクできることを理解されたい。)

(4)「[0073] FIG. 3 is a schematic illustration by way of block diagram of a method 300 for implementing adaptive communication mode switching, in accordance with embodiments. Any suitable device or system can be used to practice the method 300, such as the embodiments described herein. The steps of the method 300 can be practiced by a device or system situated on a movable object and/or a terminal.
[0074] In step 310, the movable object and/or the terminal connects to multiple communication modes.(略)
[0078] In step 320, the characteristics of each of the plurality of established communication modes are evaluated.(略)
[0079] In step 330, at least one communication mode is selected for data transmission (e.g., by a suitable controller or processor as described elsewhere herein) based on the evaluation of step 320 and a switching criterion. (略)
[0089] In step 340, data is transmitted along the one or more selected communication modes.(略)
[0091](略)For example, when switching from a first communication mode to a second communication mode, data transmission can occur via both modes for a certain period of time before switching to transmitting exclusively via the second communication mode. (略)」
(当審訳:
[0073] 図3は、実施形態による、適応通信モード切り替えを実施するための方法300のブロック図による概略図である。本明細書に記載の実施形態など、任意の適切なデバイス又はシステムを使用して、方法300を実施することができる。方法300のステップは、移動体及び/又は端末上に配置されたデバイス又はシステムによって実行することができる。
[0074] ステップ310において、移動体及び/又は端末は、複数の通信モードに接続する。(略)
[0078] ステップ320において、複数の確立された通信モードのそれぞれの特性が評価される。(略)
[0079] ステップ330において、少なくとも1つの通信モードが、ステップ320の評価及びスイッチング基準に基づいて、データ送信のために(例えば、本明細書の他の場所で説明されるような適切なコントローラ又はプロセッサによって)選択される。(略)
[0089] ステップ340において、データは、1つ又は複数の選択された通信モードで送信される。(略)
[0091] 例えば、第1の通信モードから第2の通信モードに切り替えるとき、第2の通信モードのみを介して送信するように切り替える前に、一定期間、両方のモードを介してデータ送信を行うことができる。(略))

(5)「FIG.2



(6)「FIG.3



上記記載及び当業者における技術常識からみて、以下の技術的事項が記載されている。
a.上記(3)の「図2は、・・・第1及び第2の通信リンク204、206を介して端末202と通信する移動体200を示している。」との記載、及び、上記(5)のFIG.2から、引用例1には、移動体と移動体と通信する端末とを含むシステムが記載されているといえる。
更に、上記(1)に「複数の通信モジュールは、移動体に搭載されている。移動体は無人航空機とすることができる。」と記載されていることから、移動体は無人航空機といえる。
よって、引用例1には、無人航空機と無人航空機と通信する端末とを含むシステムが記載されているといえる。

b.上記(2)に「移動体と端末との間にデュアルモード通信を提供することができ、その結果、2つの同時通信リンクを提供することができる。」、上記(3)に「図2は、・・・第1及び第2の通信リンク204、206を介して端末202と通信する移動体200を示している。」、及び、上記(4)の段落74に「ステップ310において、移動体及び/又は端末は、複数の通信モードに接続する。」と記載されていることから、引用例1における通信モードとは通信リンク上での通信モードを示していることは明らかであり、移動体と端末との間の通信モードには第1の通信リンク204の通信モードと第2の通信リンク206の通信モードがあるといえる。
そして、上記(3)に「第1の通信リンク204は、・・・直接通信リンクとすることができ」及び「直接通信リンク204は、WiFi・・・とすることができる。」と記載されていることから、第1の通信リンク204の通信モードはWiFiによる通信モードであるといえる。また、上記(3)に「第2の通信リンク206は間接通信リンクとすることができ、」及び「間接通信リンク206は、3G又は4Gネットワークリンクなどの携帯電話ネットワークリンクとすることができる。」と記載されていることから、第2の通信リンク206の通信モードは携帯電話ネットワークによる通信モードであるといえる。
よって、上記「a」で説示したとおり、移動体は無人航空機といえることから、無人航空機と端末との間の通信モードはWiFiによる通信モードと携帯電話ネットワークによる通信モードがあるといえる。

c.上記(4)に「ステップ310において、移動体及び/又は端末は、複数の通信モードに接続する。」、「ステップ320において、複数の確立された通信モードのそれぞれの特性が評価される。」、「ステップ330において、少なくとも1つの通信モードが、ステップ320の評価・・・に基づいて、データ送信のために・・・選択される。」及び「ステップ340において、データは、1つ又は複数の選択された通信モードで送信される。」と記載されていることから、引用例1の無人航空機及び/又は端末は、複数の通信モードに接続し、複数の確立された通信モードのそれぞれの特性が評価され、評価に基づいて、データ送信のために少なくとも1つの通信モードが選択され、データは、1つまたは複数の選択された通信モードで送信される。

d.上記(4)の段落91に「第1の通信モードから第2の通信モードに切り替えるとき、第2の通信モードのみを介して送信するように切り替える前に、一定期間、両方のモードを介してデータ送信を行うことができる。」と記載されていることから、無人航空機及び/又は端末は、第1の通信モードから第2の通信モードに切り替えるとき、切り替える前に、一定期間、両方のモードを介してデータ送信を行う。

以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「無人航空機と無人航空機と通信する端末とを含むシステムであって、
無人航空機と端末との間の通信モードにはWiFiによる通信モードと携帯電話ネットワークによる通信モードがあり、
無人航空機及び/又は端末は、複数の通信モードに接続し、複数の確立された通信モードのそれぞれの特性が評価され、評価に基づいて、データ送信のために少なくとも1つの通信モードが選択され、データは、1つ又は複数の選択された通信モードで送信され、
無人航空機及び/又は端末は、第1の通信モードから第2の通信モードに切り替えるとき、切り替える前に、一定期間、両方のモードを介してデータ送信を行う、
システム。」

2.引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2013-010499号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。(下線は当審が付与。)

「【0038】
無人機は、また、ホバリング飛行中、無人機を安定化するための自動で自主的なシステムを有する。その自動安定化システムは、とりわけ、ユーザが電気製品のタッチスクリーンから制御している指を離すとすぐにアクティブ化され、または離陸ステージの終わりに自動的に、あるいは電気製品と無人機間の無線通信の中断時にアクティブ化される。無人機は、そのとき定常的にホバリング状態となり、ユーザの介在なしに自動安定化操縦システムによって定位置を持続する。」

上記記載からみて、引用例2には、次の技術的事項(以下、「技術的事項2」という。)が記載されていると認められる。

「電気製品と無人機間の無線通信の中断時に、無人機はホバリングする。」

3.引用例3及び引用例4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-109973号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

「【0004】
多くのワイヤレスシステム又はネットワークは、サービスにアクセスするためにユーザ識別及び認証を必要とする。例えば、典型的なユニバーサルモバイルテレコミュニケーションズシステム(UMTS)の環境内では、物理的カードフォームファクタユニバーサル集積回路カード(UICC)内で物理的に組み込まれるサブスクライバーアイデンティティモジュール(SIM)と称されるアクセス制御クライアントによりセルラーホンのアクセス制御が支配される。動作中に、SIMカードは、セルラーネットワークに対して加入者を認証する。首尾良く認証された後に、加入者は、セルラーネットワークへアクセスすることが許される。
【0005】
SIMカードが製造されるとき、SIMカードは、そのSIMカードの使用を特定キャリアに制限するキャリア特有の認証情報でプログラムされる。更に、各SIMカードには単一のユーザアカウントが関連され、ユーザアカウントデータは、SIMカードに永久的に記憶される。ユーザがサービスを既存のアカウントから新たなアカウントへ又は既存のキャリアから新たなキャリアへ切り換えたい場合には、ユーザは、新たなSIMカードを必要とする。手短に述べると、ユーザアカウント及びキャリアネットワークは、SIMカードに結合されており、移動装置それ自体には結合されていない。移動装置は、この点に関して若干代替え可能な商品である。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特表2005-513934号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

「【0029】
ステップ202で、認証手順は、第一ネットワーク106で既定のルーチンに従って秘密符号及び/又は証明書を移動体端末100と認証ユニット114間で交換することを伴う。例えば、第一ネットワーク106がGSM/GPRSネットワークなら、移動電話にSIMカードが使用される。異なるネットワーク形式は標準化プロトコルで規定した自身の特定の既定認証手順を持っているが、これについてはこれ以上記述しない。」

以上を総合すると、引用例3及び4には、次の技術的事項(以下、「技術的事項3」という。)が記載されていると認められる。

「携帯電話ネットワークを利用する通信方式が、SIMカードによって提供される。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
a.引用発明の「無人航空機」は、本願発明1の「無人航空機」に相当する。そして、引用発明の「端末」は無人航空機と通信するものであり、無人航空機は端末から制御されることは明らかである。よって、引用発明の端末は無人航空機に処理を指示し制御しているといえることから、引用発明の「無人航空機と通信する端末」は、本願発明1の「無人航空機に指示を行うための遠隔操作端末」に相当し、更に、引用発明の「無人航空機と無人航空機と通信する端末とを含むシステム」は、本願発明1の「無人航空機と、前記無人航空機に指示を行うための遠隔操作端末とを含む無人航空機制御システム」に相当する。

b.引用発明の「通信モード」は通信方式といえることから、本願発明1の「通信方式」に相当する。そこで、引用発明の「WiFiによる通信モード」と「携帯電話ネットワークによる通信モード」はそれぞれ、本願発明1と同様に、「第一の通信方式」と「第二の通信方式」といえる。
そして、引用発明では、「無人航空機及び/又は端末は複数の通信モードに接続し、複数の確立された通信モードのそれぞれの特性が評価」されていることから、少なくとも「WiFiによる通信モード」で接続されて、通信状況を評価し特定しているといえる。そして、引用発明のシステムは通信状況を評価し特定する手段を備えているといえる。
よって、引用発明では「無人航空機及び/又は端末は複数の通信モードに接続し、複数の確立された通信モードのそれぞれの特性が評価」されることから、本願発明1と同様に、引用発明のシステムは「前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で第一の通信方式で通信することにより、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信状況を特定する通信状況特定手段」を備えているといえる。

c.引用発明の「評価に基づいて、データ送信のために少なくとも1つの通信モードが選択され」るとは、通信状況を評価し特定する手段で特定した通信状況に応じて、無人航空機と端末との間で、第一の通信方式である「WiFiによる通信モード」で通信するのか、第二の通信方式である「携帯電話ネットワークによる通信モード」で通信するのかを決定しているといえる。よって、引用発明では「評価に基づいて、データ送信のために少なくとも1つの通信モードが選択され」ることから、本願発明1と同様に、引用発明のシステムは「前記通信状況特定手段で特定した通信状況に応じて、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で、第一の通信方式で通信するのか、前記第一の通信方式とは異なる第二の通信方式で通信するのかを決定する通信方式決定手段」を備えているといえる。

d.引用発明の「データは、1つ又は複数の選択された通信モードで送信され」るとは、選択された通信モードである通信方式で無人航空機と端末との間での通信を行うことといえることから、本願発明1と同様に、引用発明のシステムは「前記通信方式決定手段で決定された通信方式で、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信を行う通信制御手段」を備えているといえる。

e.引用発明の第二の通信方式である「携帯電話ネットワークによる通信モード」はSIMカードによって提供される通信方式であることは技術常識であり、一方、引用発明の第一の通信方式である「WiFiによる通信モード」は、携帯電話ネットワークを使用しないことから、SIMカードを用いない通信方式であることも技術常識である。よって、引用発明の「WiFiによる通信モードと携帯電話ネットワークによる通信モード」は、本願発明1と同様に、「前記第一の通信方式は、SIMカードを用いない通信方式で、前記第二の通信方式は、SIMカードによって提供され」ているといえる。

以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 無人航空機と、前記無人航空機に指示を行うための遠隔操作端末とを含む無人航空機制御システムであって、
前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で第一の通信方式で通信することにより、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信状況を特定する通信状況特定手段と、
前記通信状況特定手段で特定した通信状況に応じて、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間で、第一の通信方式で通信するのか、前記第一の通信方式とは異なる第二の通信方式で通信するのかを決定する通信方式決定手段と、
前記通信方式決定手段で決定された通信方式で、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信を行う通信制御手段と、
を備え、
前記第一の通信方式は、SIMカードを用いない通信方式で、前記第二の通信方式は、SIMカードによって提供される無人航空機制御システム。」

(相違点)
本願発明1では、「前記無人航空機が、前記通信状況特定手段によって前記通信状況が特定された後、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信が中断されていない状態でホバリング状態にし、当該ホバリング状態で前記通信方式決定手段により決定された通信方式に切り替えて前記遠隔操作端末からの通信を受け付ける」のに対し、引用発明では「第1の通信モードから第2の通信モードに切り替えるとき、切り替える前に、一定期間、両方のモードを介してデータ送信を行う」が、当該発明特定事項が特定されていない点。

(2)相違点についての判断
引用発明では、「第1の通信モードから第2の通信モードに切り替えるとき、切り替える前に、一定期間、両方のモードを介してデータ送信を行う」ことから、通信モードが切り替えられる際に通信が中断されない。よって、技術的事項2、3が公知であっても、相違点のようにホバリング状態をする必要性が引用発明にはなく、ホバリング状態とする動機付けが見いだせない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び技術的事項2、3に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし7、9、10、12について
本願発明2ないし7、9、10、12も、本願発明1の「前記無人航空機が、前記通信状況特定手段によって前記通信状況が特定された後、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信が中断されていない状態でホバリング状態にし、当該ホバリング状態で前記通信方式決定手段により決定された通信方式に切り替えて前記遠隔操作端末からの通信を受け付ける」という発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び技術的事項2、3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明8及び11について
本願発明8及び11は、本願発明1及び10に対応する方法の発明であり、本願発明の「前記無人航空機が、前記通信状況特定手段によって前記通信状況が特定された後、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信が中断されていない状態でホバリング状態にし、当該ホバリング状態で前記通信方式決定手段により決定された通信方式に切り替えて前記遠隔操作端末からの通信を受け付ける」に対応する発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び技術的事項2、3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定についての判断
令和3年6月18日の手続補正により補正された本願発明1ないし7、9、10、12は「前記無人航空機が、前記通信状況特定手段によって前記通信状況が特定された後、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信が中断されていない状態でホバリング状態にし、当該ホバリング状態で前記通信方式決定手段により決定された通信方式に切り替えて前記遠隔操作端末からの通信を受け付ける」という発明特定事項を備え、本願発明8及び11は「前記無人航空機が、前記通信状況特定手段によって前記通信状況が特定された後、前記無人航空機と前記遠隔操作端末との間の通信が中断されていない状態でホバリング状態にし、当該ホバリング状態で前記通信方式決定手段により決定された通信方式に切り替えて前記遠隔操作端末からの通信を受け付ける」に対応する発明特定事項を備えるものであるから、上記「第5」のとおり、当業者であっても、請求項1-6、8-12に対しては、原査定において引用された引用例1に記載された発明及び原査定において引用された引用例3、4に記載された周知の事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。また、請求項7に対しては、原査定において引用された引用例1、2に記載された発明及び原査定において引用された引用例3、4に記載された周知の事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由(令和3年4月20日付け拒絶理由通知書)の概要は次のとおりである。

(1)(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



請求項4の第一の通信方式に決定する「前記応答を受信するまでに所定時間が経過した場合」とは、引用している請求項3の第二の通信方式に決定する「所定時間が経過した場合」との違いが不明確であり、どのような場合であるか不明確である。そして、発明の詳細な説明との対応関係も不明である。

2.当審拒絶理由についての判断
令和3年6月18日の手続補正により、補正前の「前記応答を受信した、あるいは前記応答を受信するまでに所定時間が経過した場合に」を「所定時間経過する前に前記応答を受信した場合に」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。




 
審決日 2021-10-20 
出願番号 特願2016-170180(P2016-170180)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石原 由晴  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 中木 努
廣川 浩
発明の名称 無人航空機制御システム、その制御方法、及びプログラム  
代理人 木村 友輔  
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