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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1379369
審判番号 不服2020-11482  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-19 
確定日 2021-10-27 
事件の表示 特願2017-527623「分散メモリパネル、分散メモリパネル用のシステム、分散メモリパネルを実装する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日国際公開、WO2016/105627、平成30年 2月 1日国内公表、特表2018-503112〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)10月8日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張、2014年12月23日、インド国、2015年9月25日、米国)、その出願後の手続の経緯の概略は次のとおりである。

平成29年 6月21日 :国際出願翻訳文提出書
令和 元年11月18日付け :拒絶理由通知書
令和 2年 2月20日 :手続補正書、意見書の提出
令和 2年 4月17日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(原査定の謄本の送達日:令和2年4月21日)
令和 2年 8月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年10月 1日付け :前置報告書
令和 2年11月13日 :上申書の提出

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年8月19日に提出された手続補正書による補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和2年8月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)のうち、請求項1についての補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。

(1)本件補正前
「【請求項1】
パネルと、
前記パネル上のピクセルの1つの発光素子と、
前記パネル上の集積回路と
を備え、
前記集積回路は、
前記発光素子と排他的に関連付けられる1つのメモリ素子を含むメモリであって、前記パネル上に表示される画像が前記発光素子用の値を変化させない限り、前記発光素子用のデータまたは信号が前記集積回路へ送信されない、メモリと、
前記ピクセルの前記発光素子を駆動するドライバと
を有する、分散メモリパネル。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
パネルと、
前記パネル上のピクセルの1つの発光素子と、
前記パネル上の集積回路であって、前記集積回路は各ピクセルまたは発光素子に分散している、前記集積回路と
を備え、
前記集積回路は、
前記発光素子と排他的に関連付けられる1つのメモリ素子を含む、デジタルデータを格納するためのメモリであって、前記パネル上に表示される画像が前記発光素子用の値を変化させない限り、前記発光素子用のデータまたは信号が前記集積回路へ送信されない、メモリと、
前記ピクセルの前記発光素子を駆動するドライバと、
受信したデータをパルス幅変調信号に変換するカウンタベースのデジタル回路と を有し、
前記ドライバは、前記パルス幅変調信号に基づいて前記ピクセルの前記発光素子を駆動する、分散メモリパネル。」

2 本件補正についての当審の判断
本件補正は、
(補正事項1)請求項1の「集積回路」を「前記集積回路は各ピクセルまたは発光素子に分散している」ものに限定し、
(補正事項2)請求項1の「集積回路」に、「受信したデータをパルス幅変調信号に変換するカウンタベースのデジタル回路」を有しているものに限定し、
(補正事項3)請求項1の「メモリ」を「デジタルデータを格納するための」ものに限定し、
(補正事項4)請求項1の「前記発光素子を駆動するドライバ」を「前記パルス幅変調信号に基づいて前記ピクセルの前記発光素子を駆動する」ものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するかについて、以下検討を行う。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由において引用された米国特許出願公開2014/0168037号明細書(2014年6月19日発行。以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。日本語訳は、引用文献1の日本語ファミリー文献である特表2016-508231号公報における対応箇所の記載を段落番号も含めてそのまま引用している。

「[0041] FIG. 1 is a circuit diagram of a smart-pixel micro matrix in accordance with one embodiment. In one embodiment, the smart-pixel micro-matrix 100 replaces the emissive element and the TFT layer of a conventional active matrix display with a micro-scale smart-pixel microcontroller (μC) integrated circuit device 110, to switch and drive one or more LED devices 115. In one embodiment, the smart-pixel micro matrix 100 is manufactured on a receiving substrate, which has been prepared with distribution lines 125 to couple the various μC devices 110 and the LED devices 115. In one embodiment, the distribution lines include scan lines, which are coupled to one or more scan drivers V_(select), and data lines, which are coupled to one or more data drivers V_(data). As illustrated, the LED devices 115 are coupled with a common ground, but may each have a separate ground. In this figure, and in the figures to follow, each illustrated LED device 115 may represent a single LED device, or may represent multiple LED devices arranged in series, in parallel, or a combination of the two, such that that multiple LED devices may be driven from the same control signal. While the exemplary circuit in FIG. 1 illustrates three control inputs and six LED outputs, embodiments are not so limited. A single μC 110 can control multiple pixels on a display, or multiple LED device 115 groupings for a lighting device. In one embodiment, a single μC 110 can control fifty to one hundred pixels.」
(日本語訳:
【0023】
図1は、一実施形態に係るスマートピクセルマイクロマトリックスの回路図である。一実施形態では、スマートピクセルマイクロマトリックス100は、従来のアクティブマトリックスディスプレイの発光素子及びTFT層をマイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110で置き換える。このデバイスは、1つ以上のLEDデバイス115を切り替えて駆動するものである。一実施形態では、スマートピクセルマイクロマトリックス100は、転写先基板上に製作される。この基板には、種々のμCデバイス110及びLEDデバイス115を接続する配線125が用意されている。一実施形態では、配線としては、1つ以上の走査ドライバV_(select)に接続された走査線、及び、1つ以上上のデータドライバV_(data)に接続されたデータ線が挙げられる。図示したように、LEDデバイス115は、共通アースに接続されるが、各々は分離したアースを有してもよい。この図及び後続の図において、各々の説明されるLEDデバイス115は、単一のLEDデバイス又は複数のLEDデバイスを表してもよい。複数のLEDデバイスは、同じ制御信号から駆動することができるように、直列か、並列か、又は両者の組合せで配置することができる。図1の例示的な回路は、3つの制御入力及び6つのLED出力を例示しているが、実施形態は、そのように限定されてはいない。単一のμC 110は、ディスプレイ上の複数のピクセル、又は、照明装置の複数のLEDデバイス115のグループを制御することができる。一実施形態では、単一のμC110は、50?100ピクセルを制御することができる。)

「[0044] FIG. 2 is a block diagram of a smart-pixel μC structure, according to one embodiment. In one embodiment, the smart-pixel μC device 110 has an input block 215 and an output block 225. In one embodiment, the smart-pixel μC device 110 has an additional data storage module 210, which can be an analog data storage module with one or more capacitors, or can be a digital data storage module consisting of static random access memory (SRAM), dynamic random access memory (DRAM), or nonvolatile memory, such as flash memory. The input block 210 couples with input pins for power V_(dd) and ground V_(ss), as well as one or more input pins V_(data(1)) through V_(data(n)). The smart-pixel μC 110 is configurable to accept at least one input, which can control at least one LED device, or at least one group of LED devices in series, parallel, or a combination of the two, such as one or more LED devices which may be used in a white light source. In one embodiment, three input control signals control up to three LED devices (e.g., LED_(1), LED_(2), and LED_(3)) with red, green, and blue output, to create an RGB sub-pixel arrangement. In one embodiment, more than three LED devices can be controlled, to allow sub-pixel arrangements such as red-green-blue-yellow (RGBY), red-green-blue-yellow-cyan (RGBYC), or red-green-blue-white (RGBW), or other sub-pixel schemes where the pixels may have a different number of sub-pixels. In one embodiment, the smart-pixel μC 110 has a V_(select) input pin coupled with a scan driver input, to provide a row select signal. In one embodiment, explicit row select input is omitted in favor of using a data update signal on the data input.」
(日本語訳:
【0026】 図2は、一実施形態に係るスマートピクセルμC構造のブロック図である。一実施形態では、スマートピクセルμCデバイス110は、入力ブロック215及び出力ブロック225を有する。一実施形態では、スマートピクセルμCデバイス110は、追加のデータ記憶モジュール210を有する。それは、1つ以上のコンデンサを有するアナログデータ記憶モジュールとすることができる。あるいは、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、又はフラッシュメモリなどの不揮発性メモリからなるデジタルデータ記憶モジュールとすることができる。入力ブロック210は、電源V_(dd)の入力ピン、及び接地V_(ss)、並びに、V_(data(1))からV_(data(n))までの1つ以上の入力ピンと接続する。スマートピクセルμC 110は、少なくとも1つの入力を受信するように構成可能である。そして、それは、少なくとも1つのLEDデバイス、又は、直列であるか、並列であるか、又は両者の組合せである、1つ以上のLEDデバイスなどの、少なくとも1群のLEDデバイスを制御することができる。その1つ以上のLEDデバイスは、白色の光源に使用することができる。一実施形態では、3つの入力制御信号が、RGBサブピクセル配置を生成するために、赤、緑、及び青の出力を有する最大3つのLEDデバイス(例えば、LED_(1)、LED_(2)及びLED_(3))を制御する。一実施形態では、赤-緑-青-黄(RGBY)、赤-緑-青-黄-シアン(RGBYC)、若しくは赤-緑-青-白(RGBW)、又は、ピクセルが異なる数のサブピクセルを有することができる別のサブピクセル方式などの、サブピクセル配置を可能にするために、3つを超えるLEDデバイスを制御することができる。一実施形態では、スマートピクセルμC 110は、行選択信号を提供するために、走査ドライバ入力と接続したV_(select)入力ピンを有する。一実施形態では、データ入力上のデータ更新信号を使用するために、明示的な行選択入力は省略される。)

「[0046] In one embodiment, the smart-pixel μC 110 has a data storage module 220, to store data values when input is received. The data storage module 220, which may be an analog or digital storage module, stores the data associated with each display update. In one embodiment, the data storage module 220 contains one or more capacitors to store an incoming analog voltage from an analog input block. In one embodiment, the data storage module 220 contains at least one cell of random access memory (RAM), such as static RAM (SRAM) or dynamic RAM (DRAM), to store a digital value. In one embodiment, the data storage module 220 contains flash memory. When the data storage module 220 is enabled, the smart-pixel μC 110 stores the incoming data for each pixel and can continuously display data with minimal or no requirement for regular refreshing of static data. Instead, the pixel can continue to display the stored data until the display controller indicates an update event. Additionally, multiple frames of pixel data can be transmitted to the smart-pixel μC 110 in a burst manner and stored in the storage module 220. The smart-pixel μC 110 can then cycle through the multiple frames at a specific update rate, or based upon an update signal from the display controller.」
(日本語訳:
【0028】 一実施形態では、スマートピクセルμC110は、入力を受信するときにデータ値を保存するデータ記憶モジュール220を有する。データ記憶モジュール220は、アナログ又はデジタル記憶モジュールとすることができるが、各ディスプレイの更新と関連するデータを記憶する。一実施形態では、データ記憶モジュール220は、アナログ入力ブロックから着信するアナログ電圧を記憶する1つ以上のコンデンサを含む。一実施形態では、データ記憶モジュール220は、スタティックRAM(SRAM)又はダイナミックRAM(DRAM)などの、デジタル値を記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)の少なくとも1つのセルを含む。一実施形態では、データ記憶モジュール220は、フラッシュメモリを含む。データ記憶モジュール220がイネーブルされるとき、スマートピクセルμC 110は、各ピクセルに関する着信データを記憶し、静的データの定期的なリフレッシングがほとんど又は全く必要なく、データを連続的に表示することができる。その代りに、ピクセルは、ディスプレイコントローラが更新イベントを知らせるまで、記憶データを表示し続けることができる。更に、ピクセルデータの複数のフレームは、バーストマナーで、スマートピクセルμC 110へ送信することができ、記憶モジュール220に記憶される。続いて、スマートピクセルμC 110は、特定の更新レートで、又はディスプレイコントローラからの更新信号に基づいて、複数のフレームを巡回することができる。)

「[0054] FIG. 8 is a block diagram illustrating another smart-pixel output block, according to one embodiment. In one embodiment, a smart-pixel output block 325 can read from digital memory in the data storage module 220, and has digital control logic 830 coupled with a digital-to-analog converter (DAC) 840. A serial data link from the digital control logic to the DAC can be used to control one or more attached LEDs. It is to be noted that the particular drive methods employed by the output block 325 is for illustration purposes, and alternate LED driving circuits are within the scope of the various embodiments, and can vary based on whether the implementation is display, lighting, or backlight oriented. Additionally, each LED device (e.g., LED_(1), LED_(2), through LED_(n)) can represent a single LED device, or one or more LED devices in parallel, series, or a combination.」
(日本語訳:
【0036】
図8は、一実施形態に係る別のスマートピクセル出力ブロックを説明するブロック図である。一実施形態では、スマートピクセル出力ブロック325は、データ記憶モジュール220のデジタルメモリから読み込むことができ、デジタルアナログ変換器(DAC)840に接続されたデジタル制御論理830を有する。デジタル制御論理からDACへのシリアルデータリンクは、一つ以上の取り付けたLEDを制御するために用いることができる。出力ブロック325で使用される特定の駆動法は、説明目的のためであることに留意されたい。代替のLED駆動回路は種々の実施形態の範囲内であり、実装がディスプレイか、照明かバックライト向けであるかどうかに基づいて異なることに留意されたい。更に、各LEDデバイス(例えば、LED_(1)、LED_(2)からLED_(n)まで)は、単一のLEDデバイスを表すか、又は、並列か、直列か又はその組合せである1つ以上のLEDデバイスを表す。)

「[0056] FIG. 10 is a timing diagram illustrating exemplary pixel update timing according to one embodiment. In the example of FIG. 10, new data is transmitted whenever new content for a sub pixel controlled by one embodiment of the smart-pixel μC device, such as the smart-pixel μC device 922 of FIG. 9. New data can be transmitted to the μC device 922 and stored in a storage module. Each time new data is available for a sub-pixel controlled by the μC device 922, data is transmitted, without following a fixed schedule. A periodic refresh operation is not required, as shown in FIG. 10 by the horizontal lines, which indicate idle periods. In one embodiment, frame data is transmitted faster than the scheduled display update rate, and the pixel data is stored in one embodiment of the μC device storage module (e.g., storage module 220, storage module 320). The pixel data is then read from the storage module at a scheduled update interval. This enables multiple frames of data to be sent in a burst mode, received by an input block of the μC device 922, and read from the storage module at the appropriate interval by the output block.」
(日本語訳:
【0038】
図10は、一実施形態に係る例示的なピクセル更新タイミングを説明するタイミング図である。図10の例では、図9のスマートピクセルμCデバイス922などの、スマートピクセルμCデバイスの一実施形態によって制御される、サブピクセル用の新しいコンテンツ度に、新しいデータは送信される。新しいデータはμCデバイス922に送信され、記憶モジュールに記憶することができる。新しいデータが、μCデバイス922によって制御されるサブピクセルに利用可能となる度に、固定スケジュールに従うことなく、データは送信される。アイドル期間を示す水平線により図10に示すように、定期的なリフレッシュ動作は必要とされない。一実施形態では、フレームデータは、予定されたディスプレイ更新レートより速く送信される。そして、ピクセルデータは、μCデバイス記憶モジュールの一実施形態(例えば、記憶モジュール220、記憶モジュール320)に記憶される。続いて、ピクセルデータは、予定の更新間隔で記憶モジュールから読まれる。これにより、データの複数のフレームは、バースト方式で送信され、μCデバイス922の入力ブロックにより受信されて、出力ブロックにより適切な間隔で記憶モジュールから読まれることが可能となる。)

「[0067] FIG.17 is an illustration of a smart-pixel assembly created from an array of smart-pixels assembled on a lighting or display substrate. In one embodiment, the smart-pixel receiving substrate is a smart-pixel micro-matrix 1730 that is prepared with distribution lines, to couple the micro-matrix of μC devices and LEDs to one or more controllers. The LED smart-pixel micro-matrix can be placed on the prepared substrate 1730 in the manner described in FIG. 16. In one embodiment, the receiving substrate 1735 is a display substrate, and multiple smart-pixel micro-matrix assemblies can couple with each other to form a high-resolution display system. In one embodiment, the receiving substrate 1735 is a lighting substrate, and one or more smart pixel micro matrix assemblies can be used with a yellow phosphor to form a white light source. In one embodiment, one or more sensors, which can be sensors as known in the art, or can be micro-scale sensors with a maximum (x, y) dimension of 1 to 100 μm, can be used to detect a drift in the white point of the display over time, and the display can be re-calibrated from time to time to maintain a consistent white point.」
(日本語訳:
【0049】
図17は、照明又はディスプレイ基板上に組み付けられるスマートピクセルアレイから作製されるスマートピクセルアセンブリの説明図である。一実施形態では、スマートピクセル転写先基板は、μCデバイス及びLEDのマイクロマトリックスを1つまたは複数のコントローラに結合するための分配線が準備されたスマートピクセルマイクロマトリックス1730である。LEDスマートピクセルマイクロマトリックスは、図16に記載された様式で、用意した基板1730の上に載置することができる。一実施形態では、転写先基板1735はディスプレイ基板であり、複数のスマートピクセルマイクロマトリックスアセンブリは、高解像度のディスプレイシステムを形成するために、互いに接続することができる。一実施形態では、転写先基板1735は照明基板であり、一つ以上のスマートピクセルマイクロマトリックスアセンブリは、白色の光源を形成するために、黄色の蛍光体と共に用いることができる。一実施形態では、ディスプレイの白色点の経時変動を検出するために、1つ以上のセンサを使用することができる。これらのセンサは、当技術分野で知られているようなセンサ、又は1?100μmの最大(x,y)寸法を有するマイクロスケールセンサとすることができる。そして、ディスプレイは、一貫した白色点を維持するために、適宜再調整することができる。(下線部のみ当審が作成した。))

「[0070] In the above exemplary embodiments, the 40 PPI pixel density may correspond to a 55 inch 1920×1080p resolution television, and the 326 and 440 PPI pixel density may correspond to a handheld device with retina display. In accordance with embodiments of the invention, the maximum (x,y) dimension of the μLED devices and the μC for a smart-pixel 120 fit within the allotted pixel pitch, such as the exemplary allotted pixel pitches described above with regard to Table 1. For example, in one embodiment a 5″ RGB display with 440 PPI may include a red-emitting μLED device, green-emitting μLED device, and blue-emitting μLED device, each with maximum (x, y) dimension that fits within the corresponding (19 μm, 58 μm) sub-pixel pitch, and a μC device that fits within the (58 μm, 58 μm) pixel pitch. For example, in one embodiment a 55″ RGB display with 40 PPI may include a red-emitting μLED device, green-emitting μLED device, and blue-emitting μLED device, each with maximum (x, y) dimension that fits within the corresponding (211 μm, 634 μm) sub-pixel pitch, and a μC device that fits within the (634 μm, 634 μm) pixel pitch.」
(日本語訳:
【0052】
上述の例示的な実施形態では、15.75ピクセル/cm(40PPI)の画素密度は139.7cm(55インチ)の1920×1080p解像度テレビジョンに対応することができ、128.3及び173.2ピクセル/cm(326と440PPI画素密度)は、網膜ディスプレイを有する携帯用デバイスに対応することができる。発明の実施形態によれば、スマートピクセル120用のμLEDデバイス及びμCの最大(x,y)寸法は、上述の割り当てられた画素ピッチ(表1に関する上述の例示的な割り当てられたピクセルピッチなど)の範囲内に適合する。例えば、一実施形態では、173.2ピクセル/cm(440PPI)を有する12.7cm(5インチ)RGBディスプレイは、赤色放射μLEDデバイス、緑色放射μLED デバイス、及び青色放射μLEDデバイス、並びにμCデバイスを含むことができる。各色のLEDデバイスは、対応する(19μm,58μm)のサブピクセルピッチの範囲内に適合する最大(x,y)寸法を有し、μCデバイスは、(58μm,58μm)のピクセルピッチの範囲内に適合する。例えば、一実施形態では、15.75ピクセル/cm(40PPI)を有する139.7cm(55インチ)RGBディスプレイは、赤色放射μLEDデバイス、緑色放射μLEDデバイス、及び青色放射μLEDデバイス、並びにμCデバイスを含むことができる。各色のLEDデバイスは、対応する(211μm,634μm)のサブピクセルピッチの範囲内に適合する最大(x,y)寸法を有し、μCデバイスは、(634μm,634μm)のピクセルピッチの範囲内に適合する。)

「図1



「図2



「図8



「図10



「図17



引用発明の認定
上記記載内容及び図示内容を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110と([0041])、
種々のマイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110及びLEDデバイス115を接続する走査ドライバV_(select)に接続された走査線、及び、データドライバV_(data)に接続されたデータ線配線125が用意されている転写先基板と、を有し([0041])、
スマートピクセル120用のLEDデバイス及びマイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110の最大寸法は、画素ピッチの範囲内に適合し([0070])、
マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110は、スマートピクセル出力ブロック325を有し([0044]、[0054])、
マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110は、追加のデータ記憶モジュール210を有し([0044])、
スマートピクセル出力ブロック325は、データ記憶モジュール220のデジタルメモリから読み込むことができ、デジタルアナログ変換器(DAC)840に接続されたデジタル制御論理830を有し、デジタル制御論理からDACへのシリアルデータリンクは、一つの取り付けたLEDを制御するために用いることができ([0054])、
データ記憶モジュール220がイネーブルされるとき、マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110は、各ピクセルに関する着信データを記憶し、静的データの定期的なリフレッシングがほとんど又は全く必要なく、データを連続的に表示することができ、ピクセルは、ディスプレイコントローラが更新イベントを知らせるまで、記憶データを表示し続けることができる([0046])、
装置。」

ウ 引用文献2
原査定の拒絶の理由において引用された米国特許出願公開2008/0062158号明細書(2008年3月13日発行。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は当審で付した。日本語訳は当審が作成したものである。
「[0002] The present invention relates generally to displays, and more particularly, using pulse-width modulation to drive one or more display elements of an electro-optical display, for example, to digitally drive pixels from pulse width modulated waveforms in a liquid crystal display, such as a silicon light modulator with digital storage.」
(日本語訳:
[0002]本発明は、ディスプレイ一般、特に、電気光学ディスプレイの表示素子を1つ以上の表示素子を駆動、例えば、デジタルストレージを有するシリコン光変調器のような液晶ディスプレイをパルス幅変調した波形から画素をデジタル的に駆動するためにパルス幅変調を用いるディスプレイに関する。)

「[0003] Pulse-width modulation (PWM) has been employed to drive liquid crystal displays (displays). A pulse-width modulation scheme may control displays, including emissive and non-emissive displays, which may generally comprise multiple display elements. In order to control such displays, the current, voltage or any other physical parameter that may be driving the display element may be manipulated. When appropriately driven, these display elements, such as pixels, normally develop light that can be perceived by viewers.」
(日本語訳:
[0003]パルス幅変調(PWM)は、液晶表示ディスプレイ(ディスプレイ)を駆動するために採用されている。パルス幅変調方式は、一般的に複数の表示素子を有する発光型、非発光型のディスプレイを制御することができる。そのようなディスプレイを制御するため、表示素子を駆動する電流、電圧または他の物理パラメータが操作される。適切に駆動されると、画素などの表示素子は、通常、視聴者が知覚できる光を発生する。)

「[0038] As shown in FIG. 2, in one embodiment, the controller A 55 may incorporate a control logic A 75 and a counter 80 (e.g., n-bit wide). The control logic A 75 may controllably operate each display element based on respective digital information. To this end, the counter 80 may provide global digital information indicative of a dynamically changing common reference, i.e., a count, to each display element.」
(日本語訳:
[0038]図2に示されるように、一実施形態では、コントローラA55が制御ロジックA75やカウンタ80(例えば、nビット幅)を組み込むことができる。制御ロジックA75は、それぞれのデジタル情報に基づき各表示素子を制御可能に動作させることができる。この目的のために、カウンタ80は、各ディスプレイに例えばカウントのような動的に変化する共通リファレンスを示すグローバルデジタル情報を提供することができる。)

「[0039] In the illustrated embodiment, each signal generator 70 of the plurality of signal generators 70(1) through 70(N), may comprise a respective register 85 of a plurality of registers 85(1) through 85(N), a respective comparator 92 of a plurality of comparators 92(1) through 92(N), a respective PWM driver circuitry 94 of a plurality of PWM driver circuitry 94(1) through 94(N) to drive a corresponding pixel electrode 96 of a plurality of pixel electrodes 96(1) through 96(N). Each register 85 of the plurality of registers 85(1) through 85(N) may retain for further processing the associated digital information including a corresponding pixel value 90 of a plurality of pixel values 90(1) through 90(N) and/or the count to generate a corresponding linearly pulse width modulated waveform.」
(日本語訳:
[0039]図示の実施形態では、複数の信号発生器70(1)?70(N)からなる各信号発生器70は、複数の画素電極96(1)?96(N)のうち対応する画素電極96を駆動するために、複数のレジスタ85(1)?85(N)からなる各レジスタ85と、複数の比較器92(1)?92(N)からなる各比較器92と、複数のPWMドライバ回路94(1)?94(N)からなる各PWMドライバ回路94を備え得る。複数のレジスタ85(1)?85(N)からなる各レジスタ85は、対応する線形パルス幅変調波形を生成するために複数の画素値90(1)?90(N)のうち対応する画素値90および/またはカウントを含む関連するデジタル情報をさらに処理するために保持できる。)

「[0060] As shown in FIGS. 2 and 3, in one embodiment, either one of the controllers A 55 or B 105 may operate as follows. In step 1, either one of the control logics A 75 or B 125 may present a "start" signal (e.g., the start signal 22 of FIG. 1) to each PWM driver circuitry (N) 94 or (M) 144, which may generate a corresponding PWM waveform for the attached pixel at each pixel electrode of the pixel electrodes (N) 96 or (M) 146. In step 2, each PWM driver circuitry (N) 94, or (M) 144 in each pixel turns its output "ON" in response to the "start" signal.」
(日本語訳:
[0060]図2、3で示されるように、一実施例では、コントローラA55又はB105のいずれか一方は、以下のように動作する。ステップ1では、制御ロジック75A又は125Bのいずれか一方は、画素電極(N)96又はまたは(M)146の各画素電極の画素に対応するPWM波形を発生させる各PWMドライバ回路要素(N)94又は(M)144への「スタート」信号(例えば、図1の信号22)を提示できる。ステップ2では、各画素のPWMドライバ回路(N)94又は(M)144は、「スタート」信号に応答して出力を「オン」にする。)

「[0061] The n-bit counter 80 (where "n" may be the number of bits in a color component) may begin counting up from zero at a frequency given by 2^(n)/Tr in step 3. In step 4, each pixel monitors the counter value using comparator circuits (N) 92 that compares two n-bit values, i.e., the counter and pixel values "c," "p" for equality. An n-bit register (N) 85 may hold the current pixel value for each pixel. When a pixel finds that the counter value "c" is equal to its pixel value "p," the PWM driver circuitry (N) 94 turns its output "OFF." This process repeats in an iterative manner by repetitively going back to the step 1 based on a particular implementation.」
(日本語訳: [0061]nビットカウンタ80(「n」は色成分のビット数であってよい)は、ステップ3で、2^(n)/Trにより与られた周波数で、0からカウントアップを開始できる。ステップ4では、各画素は、2つのnビット値、すなわち、「c」、「p」に相当するカウンタ値及び画素値を比較する比較回路(N)92を用いてカウンタ値を監視する。nビットレジスタ(N)85は、画素毎に最新の画素値を保持することができる。カウンタ値「c」がその画素値「p」に等しいということを検出したとき、PWMドライバ回路(N)94は、その出力を「オフ」にする。このプロセスは、特定の実装に基づきステップ1に繰り返し戻すことによる反復動作を行う。)

「図2



「図3



「図12



引用文献2の記載事項([0002]?[0003]、[0035]?[0039])から、次の技術事項が認定できる。

[引用文献2記載事項]
「パルス幅変調(PWM)方式は、液晶表示ディスプレイ(ディスプレイ)などの複数の表示素子を有する発光型、非発光型のディスプレイを制御することができ、そのようなディスプレイを制御するため、表示素子を駆動する電流、電圧又は他の物理パラメータが操作され([0003])、
コントローラA55が制御ロジックA75やカウンタ80(例えば、nビット幅)を組み込み([0038])、
信号発生器70は、対応する画素電極96を駆動するために、レジスタ85と、比較器92と、PWMドライバ回路94を備え([0039])、
制御ロジック75Aは、画素電極96の画素に対応するPWM波形を発生させる各PWMドライバ回路94への「スタート」信号(例えば、図1の信号22)を提示し([0060])、
各画素のPWMドライバ回路94は、「スタート」信号に応答して出力を「オン」にする([0060])。
nビットカウンタ80は、与られた周波数で、0からカウントアップを開始し([0061])、
各画素は、カウンタ値及び画素値を比較する比較回路(N)92を用いてカウンタ値を監視する。nビットレジスタ85は、画素毎に最新の画素値を保持することができる。カウンタ値「c」がその画素値「p」に等しいということを検出したとき、PWMドライバ回路(N)94は、その出力を「オフ」にする。([0061])」

エ 引用文献3
当審が新たに引用する特開2006-337597号公報(平成18年12月14日公開。以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。

「【0002】
表示装置の一種として、LED(Light Emitting Diode)や有機EL(electro-luminescence)などの発光素子をマトリクス状に配した表示パネルが用いられている。青色LEDの実用化などにより、256階調や1024階調のフルカラードットマトクリスLEDパネルも実用化されている。このような表示パネルの駆動方法の一つとして、所定の単位周期時間に対する点灯時間の比により点灯の明るさを調整するPWM制御方式がある。」

オ 周知技術・技術常識の認定
(ア) 前記ウの引用文献2記載事項に例示したように、液晶表示ディスプレイ(ディスプレイ)などの複数の表示素子を有する発光型、非発光型のディスプレイの表示素子を駆動する技術として、次のものは周知技術である。
<周知技術>
PWMドライバ回路が、画素に対応する画素値とカウンタ値を比較して、パルス幅変調波形を発生させる表示素子の駆動技術。

(イ)引用文献3の記載事項(【0002】)から明らかなように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識」という。)。

<技術常識>
マトリクス状にLEDを配した表示装置において、LEDをPWM制御方式で駆動すること。

(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「転写先基板」は、「種々のマイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110及びLEDデバイス115を接続する」から、本件補正発明の「パネル」に相当する。

イ 引用発明の「LEDデバイス110」は、「転写先基板」に接続し、「画素ピッチの範囲内に適合する」から、本件補正発明の「パネル上のピクセルの1つの発光素子」に相当する。

ウ 引用発明の「データ記憶モジュール220」は、
(a)「スマートピクセル出力ブロック325は、データ記憶モジュール220のデジタルメモリから読み込むことができ、デジタルアナログ変換器(DAC)840に接続されたデジタル制御論理830を有し、デジタル制御論理からDACへのシリアルデータリンクは、一つの取り付けたLEDを制御するために用いる」る、すなわち、「スマートピクセル出力ブロック325」において、「デジタル制御論理830」と「DAC840」を介して「一つの取り付けたLEDを制御する」ものであるから、「発光素子と排他的に関連づけられる」ものであり、
(b)「デジタルメモリ」を有するから、「一つのメモリ素子を含む、デジタルデータを格納するためのメモリ」であり、
(c)「データ記憶モジュール220がイネーブルされるとき、マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110は、各ピクセルに関する着信データを記憶し、静的データの定期的なリフレッシングがほとんど又は全く必要なく、データを連続的に表示することができ、ピクセルは、ディスプレイコントローラが更新イベントを知らせるまで、記憶データを表示し続けることができる」、すなわち、LED用の値の「更新イベント」があれば「ディスプレイコントローラ」が「知らせる」から、「前記パネル上に表示される画像が前記発光素子用の値を変化させない限り、前記発光素子用のデータまたは信号が前記集積回路へ送信されない」ものである。
したがって、引用発明の「データ記憶モジュール220」は、本件補正発明の「前記発光素子と排他的に関連付けられる1つのメモリ素子を含む、デジタルデータを格納するためのメモリであって、前記パネル上に表示される画像が前記発光素子用の値を変化させない限り、前記発光素子用のデータまたは信号が前記集積回路へ送信されない、メモリ」に相当する。

エ 引用発明の「スマートピクセル出力ブロック325」は、「データ記憶モジュール220のデジタルメモリから読み込むことができ、デジタルアナログ変換器(DAC)840に接続されたデジタル制御論理830を有し、デジタル制御論理からDACへのシリアルデータリンクは、一つの取り付けたLEDを制御するために用いることができ」るから、
本件補正発明の「ピクセルの発光素子を駆動するドライバ」に相当する。

オ 引用発明の「マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110」は、次の2点を有している
(a)「転写先基板」に接続する点。
(b)「マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110」は、「最大寸法は、画素ピッチの範囲内に適合」する。そして、引用文献1の[0041]の「従来のアクティブマトリックスディスプレイの発光素子及びTFT層をマイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110で置き換える」から、「マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110」は、ピクセル単位でマトリクス状に転写先基板に分散配置されている点。
よって、引用発明の「マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110」は、本件補正発明の「パネル上の集積回路であって、前記集積回路は各ピクセルまたは発光素子に分散している、前記集積回路」であって、「メモリ」と「ドライバ」を有するものに相当する。

カ 「データ記憶モジュール220」、「種々のマイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110及びLEDデバイス115を接続する配線125が用意されている転写先基板」、「画素ピッチの範囲内に適合し」た「マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110」を有する「装置」の発明である引用発明と、「パネル」と「集積回路」とを備えた「分散メモリパネル」の発明である本件補正発明とは、「分散メモリパネル」の発明である点で一致する。

上記アからカの対比の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

[一致点]
「パネルと、
前記パネル上のピクセルの1つの発光素子と、
前記パネル上の集積回路であって、前記集積回路は各ピクセルまたは発光素子に分散している、前記集積回路と
を備え、
前記集積回路は、
前記発光素子と排他的に関連付けられる1つのメモリ素子を含む、デジタルデータを格納するためのメモリであって、前記パネル上に表示される画像が前記発光素子用の値を変化させない限り、前記発光素子用のデータまたは信号が前記集積回路へ送信されない、メモリと、
前記ピクセルの前記発光素子を駆動するドライバ、
を有する分散メモリパネル。」

[相違点]
本件補正発明では、「集積回路」が、「受信したデータをパルス幅変調信号に変換するカウンタベースのデジタル回路」を有し、「ドライバ」が、前記パルス幅変調信号に基づいて前記ピクセルの前記発光素子を駆動する」のに対し、引用発明では、そのように構成しているか明らかではない点。

(4)判断
ア 相違点について
(ア)引用発明の「スマートピクセル出力ブロック325」は、「データ記憶モジュール220のデジタルメモリから読み込むことができ、デジタルアナログ変換器(DAC)840に接続されたデジタル制御論理830を有し、デジタル制御論理からDACへのシリアルデータリンクは、一つの取り付けたLEDを制御するために用いることができ」るもの、すなわち、「データ記憶モジュール220のデジタルメモリ」から読み込んだデータをDACで変換したアナログ値を用いてLEDを駆動する方式のものである。
また、引用文献1の[0054]に「出力ブロック325で使用される特定の駆動法は、説明目的のためであることに留意されたい。代替のLED駆動回路は種々の実施形態の範囲内であり、実装がディスプレイか、照明かバックライト向けであるかどうかに基づいて異なることに留意されたい。」とLED駆動回路として他の方式のものを採用してもよいことが示唆されている。
一方、液晶表示ディスプレイ(ディスプレイ)などの複数の表示素子を有する発光型、非発光型のディスプレイの表示素子を駆動する技術として、PWMドライバ回路が、画素に対応する画素値とカウンタ値を比較して、パルス幅変調波形を発生させる表示素子の駆動技術は周知技術である。
そして、マトリクス状にLEDを配した表示装置において、LEDをPWM制御方式で駆動することは技術常識である。

そうすると、引用発明の「スマートピクセル出力ブロック325」は、「データ記憶モジュール220のデジタルメモリから読み込むことができ、デジタルアナログ変換器(DAC)840に接続されたデジタル制御論理830を有し、デジタル制御論理からDACへのシリアルデータリンクは、一つの取り付けたLEDを制御するために用いることができ」るものを、技術常識をもとに「LED駆動回路」を「種々の実施形態の範囲内」で設計して、前記周知技術のようなカウンタ値を比較するようなカウンタベースのデジタル回路とパルス幅変調信号に基づいて発光素子を駆動する構成を採用し、前記相違点に係る本件補正発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本件補正発明の奏する効果について
本件補正発明の奏する効果についても、引用発明、周知技術及び技術常識から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
ア 請求人の主張の内容
請求人は、審判請求書の「4.本願発明が特許されるべき理由」の(2)(c)において、次の主張をしている。
(主張)
「引用文献1に記載の発明によれば、デジタル制御ロジック830はデータ記憶部に格納されたデジタルデータに基づいてLEDを駆動する(引用文献1の段落0054、図8)。しかしながら、引用文献1に記載の発明によれば、当該デジタルデータはデジタル-アナログ変換器(DAC)840によってアナログ信号に変換され、LEDは当該アナログ信号に基づいて駆動されるのであって(引用文献1の段落0054、図8)、本願発明のように受信したデータがカウンタベースのデジタル回路によってパルス幅変調信号に変換され、発光素子が当該パルス幅変調信号に基づいて駆動されるものではない。

引用文献2には、デジタルストレージ35a?35bに格納されたデジタル情報であるピクセル値がPWMデバイス37a?37bによってパルス幅変調信号に変換され、ピクセル電極20が当該パルス幅変調信号に基づいて駆動される構成が記載されている(引用文献2の段落0028、図1)。また、引用文献2に記載のPWMデバイス37a?37bは、ディスプレイシステム10上にあって各ピクセル電極に関連付けられるローカル駆動回路30a?30bに含まれる(引用文献2の段落0026、図1)。しかしながら、引用文献2に記載のPWMデバイス37a?37bは、ローカル駆動回路30a?30bとは別個に設けられたグローバル駆動回路24におけるカウンタ(例えばグローバルカウンタ318)によるカウントと、デジタルストレージ35a?35bに格納されたピクセル値との比較によりパルス幅変調信号を生成する(引用文献2の段落0025、0044、図1-3、8-11等)。すなわち、引用文献2に記載の技術は、各ピクセル電極20に関連付けられるローカル駆動回路30a?30bに含まれるPWMデバイス37a?37bのほか、グローバル駆動回路24に含まれるカウンタによってパルス幅変調信号を生成するのであって、本願発明のように各ピクセルまたは発光素子に分散している集積回路が有するカウンタベースのデジタル回路によってパルス幅変調信号を生成するものではない。

また、引用文献3においても本願発明の上記構成について記載も示唆もない。」(審判請求書の15頁23行?16頁21行)

イ 請求人の主張に対する当審の見解
前記主張について検討すると、引用文献2に記載された事項は、前記周知技術として認定したとおり、PWMドライバ回路が、画素に対応する画素値とカウンタ値を比較して、パルス幅変調波形を発生させる表示素子の駆動技術である。
また、本件補正発明に「カウンタベース」に関する具体的な記載はないものの、カウンタ値を「カウンタベース」の回路として構成する際にどのような回路から提供されるかについては、前記周知技術の範囲で表示装置の構成に応じて適宜設計し得ることである。
そして、引用文献1と本件補正発明との相違点について、前記「(4)ア」で判断したとおり技術常識及び引用文献2を一例とする周知技術をもとに、前記相違点に係る本件補正発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであるから、請求人の上記主張は格別のものではなく、採用することはできない。

ウ 上申書で示した補正案の内容
審判請求人は令和2年11月13日提出の上申書で請求項1について次の補正案を提示している。
「[請求項1の補正案]
パネルと、
前記パネル上のピクセルの1つの発光素子と、
前記パネル上の複数の集積回路であって、前記複数の集積回路のそれぞれが各ピクセルまたは発光素子に分散している、前記複数の集積回路と
を備え、
前記集積回路は、
前記発光素子と排他的に関連付けられる1つのメモリ素子を含む、デジタルデータを格納するためのメモリであって、前記パネル上に表示される画像が前記発光素子用の値を変化させない限り、前記発光素子用のデータまたは信号が前記集積回路へ送信されない、メモリと、
前記ピクセルの前記発光素子を駆動するドライバと、
受信したデータをパルス幅変調信号に変換するカウンタベースのデジタル回路と
を有し、
前記ドライバは、前記パルス幅変調信号に基づいて前記ピクセルの前記発光素子を駆動する、分散メモリパネル。」

エ 補正案に対する当審の見解
補正案で新たに追加した集積回路を複数と限定する事項について、引用発明の「マイクロスケールスマートピクセルマイクロコントローラ(μC)集積回路デバイス110」も「μCの最大寸法は、画素ピッチの範囲内に適合」し、画素数に応じて複数あるから、新たな相違点を有するとはいえない。
したがって、補正案における請求項1に係る発明は、引用発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件補正についての当審の判断のむすび
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1?26に係る発明は、令和2年2月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次の理由3及び理由4である

理由3.本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

理由4.本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:米国特許出願公開2014/0168037号明細書

3 引用文献に記載された事項
前記引用文献1には、前記第2の2(2)イ[引用発明]において認定したとおりの「引用発明」が記載されていると認められる。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明のうち、次の(1)?(4)の限定を省いたものである。
(1)「集積回路」を「前記集積回路は各ピクセルまたは発光素子に分散している」ものに限定すること。
(2)「集積回路」を「受信したデータをパルス幅変調信号に変換するカウンタベースのデジタル回路」を有しているものに限定すること。
(3)「メモリ」を「デジタルデータを格納するための」ものに限定すること。
(4)「前記発光素子を駆動するドライバ」を「前記パルス幅変調信号に基づいて前記ピクセルの前記発光素子を駆動する」ものに限定すること。

そうすると、前記第2の2(3)で示した相違点は存在せず、本願発明と引用発明は同一である。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、また、同法同条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-05-28 
結審通知日 2021-06-01 
審決日 2021-06-14 
出願番号 特願2017-527623(P2017-527623)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 健二  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 居島 一仁
濱本 禎広
発明の名称 分散メモリパネル、分散メモリパネル用のシステム、分散メモリパネルを実装する方法  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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