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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E05F |
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管理番号 | 1379389 |
審判番号 | 不服2021-200 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-06 |
確定日 | 2021-11-16 |
事件の表示 | 特願2019- 71951「車両用ドア開閉装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月29日出願公開、特開2019-143469、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年3月31日に出願した特願2017-70110号(以下、「原出願」という。)の一部を、新たな特許出願として平成31年4月4日に出願したものであって、令和2年2月26日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年9月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和3年1月6日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年9月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.本願請求項1及び2に係る発明は、以下の引用文献1?3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2007-284958号公報 2.特開2007-162459号公報 3.特開2015-21237号公報 第3 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)。 「【請求項1】 車体の側部に形成された前側開口部及び後側開口部と、 前記前側開口部を開閉するフロントドアと、 前記後側開口部を開閉するリアスライドドアと、 該リアスライドドアを自動開閉するドア駆動機構と、 前記ドア駆動機構を介して前記リアスライドドアを開閉するために、前記車体の側部下方位置に設けられ、人の足を検知する検知ユニットと、 前記検知ユニットが前記足を検知した場合に、前記リアスライドドア及び前記フロントドアが開状態にあるときには、前記リアスライドドアを閉状態に向けて駆動せず前記リアスライドドアを開状態のまま維持する制御部と、を備えることを特徴とする車両用ドア開閉装置。 【請求項2】 請求項1に記載の車両用ドア開閉装置において、 前記検知ユニットは、 前記フロントドアのサイドシル下に配置されている ことを特徴とする車両用ドア開閉装置。」 第4 引用発明等について 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 ア 「【0025】 本発明の第一実施形態に係るスライドドア装置10が適用された車両では、図1に示される如く、車体のリア側面にドア開口12が設けられている。この車両において、ドア開口12の下縁は、ロッカ部14とされており、このロッカ部14には、車両の前後方向に並設された一対のリンクアーム16の一端がヒンジベース18を介してそれぞれ回動自在に連結されている。また、この一対のリンクアーム16の他端は、リアサイドドアとしてのスライドドア20にドアヒンジ22を介してそれぞれ回動自在に連結されている。そして、このスライドドア20は、リンクアーム16の揺動によってドア開口12を閉じるドア全閉位置とドア開口12よりも車両前後方向後方側のドア開口12を開くドア全開位置との間でスライドされる構成となっている。 【0026】 また、図1に示されるように、ロッカ部14に連結された一対のリンクアーム16のうち車両前後方向後方側のリンクアーム16のロッカ部14との固定部には、駆動手段としてのドアモータ24が設けられている。そして、一対のリンクアーム16のうち車両前後方向後方側のリンクアーム16は、このドアモータ24により電動で揺動されるようになっている。 【0027】 なお、本実施形態において、スライドドア20は、上述のリンクアーム16の揺動によってドア厚さ方向(車両幅方向)の往復移動を伴ってスライドしドア開口12を開閉する。つまり、図1に示されるように、スライドドア20は、ドア開方向へスライドする場合、二点鎖線で示される全閉位置から実線で示されるドア厚さ方向最大突出位置までスライドするときにはドア厚さ方向外側に移動し、実線で示されるドア厚さ方向最大突出位置から三点鎖線で示される全開位置までスライドするときにはドア厚さ方向内側に移動する。 【0028】 同様に、スライドドア20は、ドア閉方向へスライドする場合、三点鎖線で示される全開位置から実線で示されるドア厚さ方向最大突出位置までスライドするときにはドア厚さ方向外側に移動し、実線で示されるドア厚さ方向最大突出位置から二点鎖線で示される全閉位置までスライドするときにはドア厚さ方向内側に移動する。 【0029】 また、本実施形態に係る車両では、図1に示される如く、スライドドア20の車両幅方向同じ側に隣接して他のドアとしてのフロントドア26が設けられている。このフロントドア26は、そのフロント側の部分が車体に回動自在に連結された回動式のドアとされている。 【0030】 図2に示されるように、本実施形態に係るスライドドア装置10には、車両の適宜位置に制御手段としてのドア制御用ECU28(エレクトロニック・コントロール・ユニット)が設けられている。そして、このドア制御用ECU28の入力部には、オートドア開作動スイッチ30、オートドア閉作動スイッチ32、ボデー制御用ECU34、ドア全閉位置検出スイッチ36、ドア全開位置検出スイッチ38の各出力部が接続されており、ドア制御用ECU28の出力部には、ドアモータ24が接続されている。 【0031】 オートドア開作動スイッチ30及びオートドア閉作動スイッチ32は、例えば、車体の外側又は内側に設けられ、乗員によって操作されたことに応じてドア制御用ECU28にドア開操作信号、ドア閉操作信号をそれぞれ出力するように構成されている。」 イ 「【0036】 (ドア開動作) 乗員によってオートドア開作動スイッチ30が操作されると、このオートドア開作動スイッチ30から出力されたドア開操作信号がドア制御用ECU28に出力される。ドア制御用ECU28は、オートドア開作動スイッチ30から出力されたドア開操作信号を入力すると、図3のフローチャートで示されるプログラムの処理を開始する。 【0037】 ドア制御用ECU28は、図3のフローチャートで示されるプログラムの処理を開始すると、先ず、カーテシスイッチ40からの出力信号に基づいてフロントドア26の開閉状態を検出(ステップS1)し、フロントドア26が閉まっているか否かを判断する(ステップS2)。このとき、フロントドア26が閉まっている場合には、カーテシスイッチ40からドア閉状態検出信号が出力され、フロントドア26が開いている場合には、カーテシスイッチ40からドア開状態検出信号が出力される。 【0038】 従って、カーテシスイッチ40からドア閉状態検出信号が出力されている場合には、ドア制御用ECU28は、フロントドア26が閉まっていると判断する(ステップS2:YES)。そして、この場合には、通常の速度V1でドアモータ24を作動させ、スライドドア20をドア開方向へスライドさせる(ステップS3)。 【0039】 一方、カーテシスイッチ40からドア開状態検出信号が出力されている場合には、ドア制御用ECU28は、フロントドア26が閉まっていない、すなわち、フロントドア26が開けられていると判断する(ステップS2:NO)。そして、この場合には、通常の速度V1よりも遅いV2でドアモータ24を作動させ、スライドドア20を低速度でドア開方向へスライドさせる(ステップS4)。 【0040】 このように、本発明の第一実施形態に係るスライドドア装置10では、スライドドア20に隣接して設けられたフロントドア26が開けられている場合には、スライドドア20の外側に人がいると推測されて、スライドドア20が通常の速度(基準速度)よりも低い速度でドア開方向へスライドされる。」 ウ 「【0044】 (ドア閉動作) 乗員によってオートドア閉作動スイッチ32が操作されると、このオートドア閉作動スイッチ32から出力されたドア閉操作信号がドア制御用ECU28に出力される。ドア制御用ECU28は、オートドア閉作動スイッチ32から出力されたドア閉操作信号を入力すると、図4のフローチャートで示されるプログラムの処理を開始する。 【0045】 ドア制御用ECU28は、図4のフローチャートで示されるプログラムの処理を開始すると、先ず、カーテシスイッチ40からの出力信号に基づいてフロントドア26の開閉状態を検出(ステップS11)し、フロントドア26が閉まっているか否かを判断する(ステップS12)。このとき、フロントドア26が閉まっている場合には、カーテシスイッチ40からドア閉状態検出信号が出力され、フロントドア26が開いている場合には、カーテシスイッチ40からドア開状態検出信号が出力される。 【0046】 従って、カーテシスイッチ40からドア閉状態検出信号が出力されている場合には、ドア制御用ECU28は、フロントドア26が閉まっていると判断する(ステップS12:YES)。そして、この場合には、通常の速度V1でドアモータ24を作動させ、スライドドア20をドア閉方向へスライドさせる(ステップS13)。 【0047】 一方、カーテシスイッチ40からドア開状態検出信号が出力されている場合には、ドア制御用ECU28は、フロントドア26が閉まっていない、すなわち、フロントドア26が開けられていると判断する(ステップS12:NO)。そして、この場合には、通常の速度V1よりも遅いV2でドアモータ24を作動させ、スライドドア20を低速度でドア閉方向へスライドさせる(ステップS14)。 【0048】 このように、本発明の第一実施形態に係るスライドドア装置10では、スライドドア20に隣接して設けられたフロントドア26が開けられている場合には、スライドドア20の外側に人がいると推測されて、スライドドア20が通常の速度(基準速度)よりも低い速度でドア閉方向へスライドされる。」 エ 「【0054】 以上詳述したように、本発明の第一実施形態に係るスライドドア装置10によれば、スライドドア20に隣接して設けられたフロントドア26が開いていること(若しくは途中で開いたこと)が検知された場合には、スライドドア20の外側に人がいると推測されてスライドドア20が基準速度よりも低い速度でスライドされる。従って、例えば、スライドドア20が全閉位置又は全開位置にあるときに、このスライドドア20の外側に人(例えば、フロントドア26から乗降しようとする人)が立っており、この状態でスライドドア20がスライドされた場合でも、スライドドア20の開閉速度が低下させられるので、このスライドドア20の外側にいる人に対し、スライドドア20が不意に迫って来て不安感を感じさせることを抑制できる。これにより、スライドドア装置10の使い勝手を向上させることが可能となる。 【0055】 また、上述のように、スライドドア20の開閉速度を低下させることで、ドアモータ24での速度変化に基づく挟み込み検出が容易となり、また、スライドドア20の挟み込み荷重の低減を図ることができる。」 オ 図1及び4 図1 「 」 図4 「 」 カ 上記アの記載に照らして、上記オの図1から、フロントドア26は車体のフロント側面のドア開口を開閉していることが看取される。 (2)引用文献1記載の発明 上記(1)の記載を踏まえると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 引用発明1 「車体のリア側面にドア開口12が設けられており、 リアサイドドアとしてのスライドドア20は、リンクアーム16の揺動によってドア開口12を閉じるドア全閉位置とドア開口12よりも車両前後方向後方側のドア開口12を開くドア全開位置との間でスライドされ、 車両前後方向後方側のリンクアーム16は、ドアモータ24により電動で揺動され、 スライドドア20の車両幅方向同じ側に隣接して他のドアとしてのフロントドア26が設けられ、 フロントドア26は車体のフロント側面のドア開口を開閉しており、 車両の適宜位置に制御手段としてのドア制御用ECU28が設けられ、 オートドア開作動スイッチ30及びオートドア閉作動スイッチ32が、例えば、車体の外側又は内側に設けられ、 ドア開動作において、乗員によってオートドア開作動スイッチ30が操作されると、このオートドア開作動スイッチ30から出力されたドア開操作信号がドア制御用ECU28に出力されて、通常の速度V1又は通常の速度V1よりも遅い速度V2でドアモータ24を作動させ、スライドドア20をドア開方向へスライドさせ、 ドア閉動作において、乗員によってオートドア閉作動スイッチ32が操作されると、このオートドア閉作動スイッチ32から出力されたドア閉操作信号がドア制御用ECU28に出力され、 ドア制御用ECU28は、フロントドア26の開閉状態を検出して、フロントドア26が閉まっているか否かを判断し、 フロントドア26が開けられていると判断する場合には、通常の速度V1よりも遅い速度V2でドアモータ24を作動させ、スライドドア20を低速度でドア閉方向へスライドさせる、 スライドドア装置10。」 2 引用文献2について (1)引用文献2の記載事項 引用文献2には、以下の記載がある。 ア 「【0036】 図2には、本実施形態によるハンズフリー車両ドア開扉装置が適用されたミニバンタイプの車両80が示されている。より具体的には、ハンズフリー車両ドア開扉装置12は、車両80の側部に設けられたスライドドア82に対して適用されている。このような場合、レーザ送受信器52またはキックスイッチ56が、開扉させたいドアの下または近くに設置される。繰り返しになるが、レーザ送受信器52とキックスイッチ56の両方が図2に図示されているが、ハンズフリー車両ドア開扉装置12を動作させるためには、1つの検出装置が搭載されていれば良い。 【0037】 スライドドア82を備えるミニバンなどの車両80に適用されたときも、ハンズフリー車両ドア開扉装置12は、ヒンジ回転ドア16が開扉される上述した例と類似した動作を行う。すなわち、スライドドア82の場合も、スマートECU20と電子キー18との通信に基づいて、電子キー18のIDコードが認証されると、ユーザは、レーザビーム54の下で足などを動かすことによって、あるいは、上部接点60と下部接点62が接して電気回路を形成するように下方回転板58を足で押圧することにより、レーザ送受信器52もしくはキックスイッチ56に検知動作を行わせる。そのような動作に基づいて、スマートECU20は、ドアロックECU70と通信し、ドアロックモータ88によってドアロック90を解錠させる。ドアロック90が解錠されると、ドア解放ソレノイド92が、ドアラッチ94を解放、すなわちアンラッチする。 【0038】 引き続き図2を参照し、スライドドア82がアンラッチされると、スライドドア82の内部もしくはルーフ86に設置されたモータ84が電気的に駆動され、スライドドア82をスライドさせて開く。このようにして、ハンズフリー車両ドア開扉装置12の動作が完了し、ユーザは、両手に持った荷物などを車両80内に載せることが可能になる。」 (2)引用文献2記載の技術事項 上記(1)の記載を踏まえると、引用文献2には、以下の技術事項(以下「引用技術事項2」という。)が記載されていると認められる。 引用技術事項2 「ハンズフリー車両ドア開扉装置12において、 レーザ送受信器52が、車両80の側部に設けられたスライドドア82の下または近くに設置され、 レーザビーム54の下で足などを動かすことによって、レーザ送受信器52に検知動作を行わせ、 検知動作に基づいて、スマートECU20は、ドアロック90を解錠させて、ドアロック90が解錠されると、ドアラッチ94を解放、すなわちスライドドア82がアンラッチされ、スライドドア82がアンラッチされると、モータ84が電気的に駆動され、スライドドア82をスライドさせて開く点。」 3 引用文献3について (1)引用文献3の記載事項 引用文献3には、以下の記載がある。 ア 「【0040】 (第2実施形態) 本発明の第2実施形態では、ユーザが車両に近づきサイドバンパ(又はエアロパーツやシルカバー)内部に設置された静電センサへ向けて足部をかざすと、自動的にスライドドアが開閉されることを実現する車両ドア開閉装置に関する。」 イ 「【0050】 ステップS611:スライドドア109が開いている場合、制御部107cは、SD駆動装置109aに駆動信号を出力し、それに応じてSD駆動装置109aはスライドドア109を閉駆動する。 ステップS612:制御部107cは、第4のセンサ104を監視し、検知対象までの距離xが安全距離x2以上であるかどうかを監視する。x2≦xであるならば(ステップS612のYES)、ステップS611が繰り返される。 ステップS610:x<x2であるならば(ステップS612のNO)、検知対象の安全性が保たれないため、制御部107cは、SD駆動装置109aに駆動停止信号を出力する。該駆動停止信号に応じてSD駆動装置109aは、スライドドア109の閉駆動を停止し、車両ドア開閉装置100の作動は終了する。 ステップS613:バックドア108の閉駆動が終了すると、制御部107cはSD駆動装置109aに駆動信号を出力し、それに応じてSD駆動装置109aはスライドドア109を施錠する。そして、車両ドア開閉装置100の作動は終了する。 なお、上記各ステップの順番は用途に応じて適宜変更できるものである。」 ウ 図6 「 」 エ 上記イの記載に照らして、上記ウの図6から、ステップS611の後にステップS612が位置し、ステップS612の後にステップS610が位置することが看取される。 (2)引用文献3記載の技術事項 上記(1)の記載を踏まえると、引用文献3には、以下の技術事項(以下「引用技術事項3」という。)が記載されていると認められる。 引用技術事項3 「ユーザが車両に近づきサイドバンパ、エアロパーツ又はシルカバー内部に設置された静電センサへ向けて足部をかざすと、自動的にスライドドアが開閉される車両ドア開閉装置において、 スライドドア109が開いている場合、SD駆動装置109aに駆動信号を出力し、それに応じてSD駆動装置109aはスライドドア109を閉駆動するステップS611と、 第4のセンサ104を監視し、検知対象までの距離xが安全距離x2以上であるかどうかを監視するステップS612と、 距離x<安全距離x2であるならば、検知対象の安全性が保たれないため、SD駆動装置109aに駆動停止信号を出力し、該駆動停止信号に応じて、SD駆動装置109aはスライドドア109の閉駆動を停止し、車両ドア開閉装置100の作動が終了するステップS610と、を備え、 ステップS611の後にステップS612が位置し、ステップS612の後にステップS610が位置する点。」 第5 対比・判断 1 請求項1 (1)対比 本願発明1と引用発明1を対比する。 ア 引用発明1の「車体のフロント側面のドア開口」、「ドア開口12」、「フロントドア26」、「リアサイドドアとしてのスライドドア20」、「リンクアーム16」及び「ドアモータ24」は、それぞれ本願発明1の「前側開口部」、「後側開口部」、「フロントドア」、「リアスライドドア」、「ドア駆動機構」に相当する。 よって、引用発明1の「車体のフロント側面のドア開口」及び「車体のリア側面に」「設けられ」た「ドア開口12」、「フロント側面の開口部を開閉」する「フロントドア26」、「リンクアーム16の揺動によってドア開口12を閉じるドア全閉位置とドア開口12よりも車両前後方向後方側のドア開口12を開くドア全開位置との間でスライドされ」る「リアサイドドアとしてのスライドドア20」、「スライドドア20」を「ドア全閉位置と」「ドア全開位置との間でスライド」させる「リンクアーム16」及び「リンクアーム16」を「電動で揺動」する「ドアモータ24」は、それぞれ本願発明1の「車体の側部に形成された前側開口部及び後側開口部」、「前記前側開口部を開閉するフロントドア」、「前記後側開口部を開閉するリアスライドドア」、「該リアスライドドアを自動開閉するドア駆動機構」に相当する。 イ 引用発明1の「オートドア開作動スイッチ30」及び「オートドア閉作動スイッチ32」は、「車体の外側又は内側に設けられ」るものであるとともに、「乗員によ」る「操作」によってそれぞれ「スライドドア20をドア開方向へスライドさせ」るもの、「スライドドア20を低速度でドア閉方向へスライドさせる」ものであるから、当該「オートドア開作動スイッチ30」及び「オートドア閉作動スイッチ32」と、本願発明1の「前記ドア駆動機構を介して前記リアスライドドアを開閉するために、前記車体の側部下方位置に設けられ、人の足を検知する検知ユニット」とは、「前記ドア駆動機構を介して前記リアスライドドアを開閉するために、前記車体に設けられたドア始動装置」である点で共通する。 ウ 引用発明1の「ドア制御用ECU28」は、本願発明1の「制御部」に相当する。 また、引用発明1の「スライドドア20」の「ドア閉動作」において、「フロントドア26が開けられていると判断する場合」は、本願発明1の「前記フロントドアが開状態にあるとき」に相当するとともに、「ドア閉動作」である以上、「スライドドア20」が開状態にあることは明らかである。 さらに、引用発明1の「通常の速度V1よりも遅い速度V2でドアモータ24を作動させ、スライドドア20を低速度でドア閉方向へスライドさせる」ことと、本願発明1の「前記リアスライドドアを閉状態に向けて駆動せず前記リアスライドドアを開状態のまま維持する」こととは、「前記リアスライドドアの閉動作を制御する」点で共通する。 よって、引用発明1の「ドア閉動作において、乗員によってオートドア閉作動スイッチ32が操作されると、このオートドア閉作動スイッチ32から出力されたドア閉操作信号がドア制御用ECU28に出力され、ドア制御用ECU28は、フロントドア26の開閉状態を検出して、フロントドア26が閉まっているか否かを判断し、フロントドア26が開けられていると判断する場合には、通常の速度V1よりも遅い速度V2でドアモータ24を作動させ、スライドドア20を低速度でドア閉方向へスライドさせる」ことと、本願発明1の「前記検知ユニットが前記足を検知した場合に、前記リアスライドドア及び前記フロントドアが開状態にあるときには、前記リアスライドドアを閉状態に向けて駆動せず前記リアスライドドアを開状態のまま維持する」こととは、「前記ドア始動装置が作動した場合に、前記リアスライドドア及び前記フロントドアが開状態にあるときには、前記リアスライドドアの閉動作を制御する」点で共通する。 エ 引用発明1の「スライドドア装置10」は、「車体のリア側面に」「設けられ」た「ドア開口12」を「リアサイドドアとしてのスライドドア20」により開閉するものであるから、「フロントドア26」や「スライドドア20」とともに本願発明1の「車両用ドア開閉装置」に相当する構成を構成する。 オ 以上のことから、本願発明1と引用発明1は、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 (一致点) 「車体の側部に形成された前側開口部及び後側開口部と、 前記前側開口部を開閉するフロントドアと、 前記後側開口部を開閉するリアスライドドアと、 該リアスライドドアを自動開閉するドア駆動機構と、 前記ドア駆動機構を介して前記リアスライドドアを開閉するために、前記車体に設けられたドア始動装置と、 前記ドア始動装置が作動した場合に、前記リアスライドドア及び前記フロントドアが開状態にあるときには、前記リアスライドドアの閉動作を制御する制御部と、を備える車両用ドア開閉装置。」 (相違点) 車体に設けられたドア始動装置、及び、当該ドア始動装置が作動した場合に、リアスライドドア及びフロントドアが開状態にあるときの制御部の制御について、本願発明1では、当該ドア始動装置は、車体の側部下方位置に設けられ、人の足を検知する検知ユニットであり、当該制御として、リアスライドドアを閉状態に向けて駆動せずリアスライドドアを開状態のまま維持するのに対し、引用発明1では、当該ドア始動装置は、車体の外側又は内側に設けられた、乗員によって操作されるオートドア開作動スイッチ30及びオートドア閉作動スイッチ32であり、当該制御として、通常の速度V1よりも遅い速度V2でドアモータ24を作動させ、スライドドア20を低速度でドア閉方向へスライドさせる点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 ア まず、相違点に係る構成が他の引用文献に記載されているかについて検討する。 引用技術事項3には、「スライドドア109の閉駆動を停止」する「ステップS610」が記載されているが、当該ステップは「スライドドア109を閉駆動するステップS611」の後になされるステップであるから、スライドドア109の閉駆動を停止する前に、当該スライドドア109の閉駆動は開始されている。また、引用文献3には「上記各ステップの順番は用途に応じて適宜変更できる」(上記第4の3(1)イを参照。)ことが示唆されているものの、当該示唆から、上記スライドドア109の閉駆動を開始しないことまでも具体的に把握することができるとはいえない。 また、引用技術事項2には、「スライドドア82」(本願発明1の「リアスライドドア」に相当)を閉駆動すること自体が特定されていない。 よって、引用技術事項3及び引用技術事項2は、相違点に係る本願発明1のリアスライドドアを閉状態に向けて駆動せずリアスライドドアを開状態のまま維持する構成を有しているとはいえない。 したがって、引用発明1に、引用技術事項3の構成又は引用技術事項2の構成を適用しても、相違点に係る本願発明1の構成には至らない以上、当該相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 イ 次に、引用発明1において、引用技術事項2の足の動きを検知する「レーザ送受信器52」を、ドア始動装置として採用して、リアスライドドアを閉状態に向けて駆動せずリアスライドドアを開状態のまま維持するような構成とすることが、当業者が容易になし得たことであるといえるかについて検討する。 引用発明1の「オートドア開作動スイッチ30」及び「オートドア閉作動スイッチ32」に換えて、引用技術事項2の「レーザ送受信器52」を採用する動機付けの有無について検討するに、引用技術事項2の足の動きを検知する「レーザ送受信器52」は、荷物などを両手に持ったユーザ(上記第4の2(1)アの段落【0038】参照。)によるハンズフリー開扉という特定の用途に用いられる一方、引用発明1の「オートドア開作動スイッチ30」及び「オートドア閉作動スイッチ32」は、「スライドドア20」の通常の開閉に用いるものであるから、引用発明1の「オートドア開作動スイッチ30」及び「オートドア閉作動スイッチ32」に換えて、引用技術事項2の「レーザ送受信器52」を採用する動機付けがあるとは認められない。 さらに、引用発明1において「オートドア開作動スイッチ30」及び「オートドア閉作動スイッチ32」に加えて引用技術事項2の「レーザ送受信器52」を採用する場合を検討するに、引用発明1は、スライドドア20がスライドされた場合であっても、スライドドア20の外側にいる人に対しスライドドア20が不意に迫って来て不安感を感じさせることを抑制でき、また、スライドドア20の挟み込み検出について、検出容易性や挟み込み荷重の低減の点で改善する効果を期待するもの(上記第4の1(1)エを参照。)であるから、「スライドドア20がスライドされ」て「挟み込み検出」が発生し得ること、すなわちスライドドア20が閉状態に向けて駆動することに特徴があるといえる。そうすると、引用発明1において「オートドア開作動スイッチ30」及び「オートドア閉作動スイッチ32」に加えて引用技術事項2の「レーザ送受信器52」を採用した場合であっても、スライドドア20が閉状態に向けて駆動するようにするのが自然であり、証拠からは、あえて相違点に係る本願発明1のリアスライドドアを閉状態に向けて駆動せずリアスライドドアを開状態のまま維持する構成を採用する動機付けは認められない。 したがって、引用発明1において、引用技術事項2の足の動きを検知する「レーザ送受信器52」を、ドア始動装置として採用して、リアスライドドアを閉状態に向けて駆動せずリアスライドドアを開状態のまま維持する構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 ウ そして、本願発明1は、相違点に係る構成を備えることにより、リアスライドドアを閉める意思がないにも関わらずリアスライドドアが閉状態に向けて駆動されることを回避することができ、リアスライドドアを開いたままでの作業等を支障なく行うことができると共に、使用者に違和感が生じることがないようにできる(本願明細書の段落【0009】参照。)という効果を奏するものである。 エ よって、本願発明1は、引用発明1並びに引用技術事項2及び3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)小括 以上検討したように、本願発明1は、当業者であっても引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 請求項2 (1)対比及び判断 本願発明2は、本願発明1の構成を全て含み、さらに付加的構成を加えた発明であるから、上記1の本願発明1に係る検討のとおり、引用発明1並びに引用技術事項2及び3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)小括 以上検討したように、本願発明2は、当業者であっても引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 原査定について 1 理由(特許法第29条第2項)について 本願発明1及び2は、上記第5での対比及び判断のとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?3に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-11-01 |
出願番号 | 特願2019-71951(P2019-71951) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(E05F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤脇 昌也 |
特許庁審判長 |
長井 真一 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 田中 洋行 |
発明の名称 | 車両用ドア開閉装置 |
代理人 | 千葉 剛宏 |
代理人 | 坂井 志郎 |
代理人 | 千馬 隆之 |
代理人 | 関口 亨祐 |
代理人 | 仲宗根 康晴 |
代理人 | 宮寺 利幸 |