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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W |
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管理番号 | 1379394 |
審判番号 | 不服2020-13625 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-09-29 |
確定日 | 2021-11-19 |
事件の表示 | 特願2018-539967「制御プレーンの最適化のためのデータレートを管理するためのシステム、方法、および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月24日国際公開、WO2017/140387、平成31年 2月28日国内公表、特表2019-506076、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)11月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年2月18日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 9月28日 :手続補正書の提出 令和 元年 7月 1日付け :拒絶理由通知書 令和 2年 1月 8日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年 5月22日付け :拒絶査定 令和 2年 9月29日 :拒絶査定不服審判の請求 令和 3年 4月27日付け :拒絶理由通知書(当審) 令和 3年 7月 9日 :意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和2年5月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性):この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1ないし5、7ないし11に対して、引用文献1、3ないし5 ・請求項6、12に対して、引用文献1ないし5 引用文献等一覧 1.米国特許出願公開第2014/0242970号明細書(以下、「引用文献1」という。) 2.特表2015-530838号公報(以下、「引用文献2」という。) 3.特開2011-77896号公報(以下、「引用文献3」という。) 4.特表2012-531165号公報((以下、「引用文献4」という。) 5.特表2014-524222号公報(以下、「引用文献5」という。) 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 理由1(サポート要件)、理由2(明確性)について 請求項1の「・・・前記DL NASメッセージを含むS1層メッセージを送信することを含み・・・」という記載について、発明の詳細な説明には、S1層メッセージという記載は存在しないし、「S1-APメッセージ」(段落28、30、45)という記載は存在するものの、技術常識を参酌しても、S1層メッセージがS1-APメッセージと同義であると解釈することはできない。 よって、「NASメッセ-ジを含むS1層メッセージを送信する」という技術事項は、発明の詳細な説明に記載されていない。 また、上述のとおり、「S1層メッセージ」自体が何を特定するものであるのか、発明の詳細な説明を参酌しても不明である。 請求項7についても同様である。 したがって、請求項1、7に係る発明、及び請求項1、7を引用する請求項、すなわち請求項2-6、8-12に係る発明は明確でなく、発明の詳細な説明に記載されていない。 理由3(進歩性)について ・請求項1ないし5、7ないし11に対して、引用文献1、6、7 ・請求項6、12に対して、引用文献1、2、6、7 引用文献等一覧 1.米国特許出願公開第2014/0242970号明細書 2.特表2015-530838号公報 6.特開2012-104894号公報(以下、「引用文献6」という。) 7.国際公開第2014/112000号(以下、「引用文献7」という。) 第4 本願発明 本願請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、令和3年7月9日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 モビリティ管理エンティティ(MME)(105)において実行されるレート制御方法であって、 前記MMEが、無線通信デバイス(WCD)により送信されたアップリンク(UL)非アクセス層(NAS)メッセージを受信すること(302)と、 前記MMEが、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が所定の閾値より悪化しているかを判定することと、 前記MMEが、前記UL NASメッセージを受信し、かつ、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が前記所定の閾値より悪化していると判定したことに応答して、ダウンリンク(DL)NASメッセージを生成し(306)、前記DL NASメッセージを前記WCDに向かって送信することと、を含み、 前記DL NASメッセージは、ある時間期間内で、前記WCDが前記MMEに送信することが許容されているユーザデータを含むUL NASメッセージの数を示す情報を含む、レート制御方法。 【請求項2】 請求項1に記載のレート制御方法であって、前記DL NASメッセージに含まれる前記情報により示される前記UL NASメッセージの数はゼロである、レート制御方法。 【請求項3】 請求項1または2に記載のレート制御方法であって、前記UL NASメッセージはアタッチ要求を含む、レート制御方法。 【請求項4】 請求項1から3のいずれか1項に記載のレート制御方法であって、前記MMEにより送信された前記DL NASメッセージは、前記ある時間期間を示す情報を含む、レート制御方法。 【請求項5】 請求項1から4のいずれか1項に記載のレート制御方法であって、 前記WCDにより送信された前記UL NASメッセージは、ユーザデータを含み、 前記レート制御方法は更に、前記MMEが、前記ユーザデータを別のデバイスに転送することを含む、レート制御方法。 【請求項6】 請求項1から4のいずれか1項に記載のレート制御方法であって、更に、 前記MMEが、前記WCDにより送信された第2のUL NASメッセージを受信することであって、前記第2のUL NASメッセージは別のデバイス対象のユーザデータを含む、ことと、 前記MMEが、前記MMEが前記別のデバイスへ前記ユーザデータを転送しないように、前記ユーザデータを破棄することを含む、レート制御方法。 【請求項7】 モビリティ管理エンティティ(MME)(105)であって、 無線通信デバイス(WCD)により送信されたアップリンク(UL)非アクセス層(NAS)メッセージを受信するように動作可能なネットワークインタフェース(1205)と、 1つ以上のプロセッサ(1455)を含むデータ処理システム(1202)と、を含み、前記データ処理システムは、 前記MMEと前記WCDとの間の混雑が所定の閾値より悪化しているかを判定し、 前記MMEが前記UL NASメッセージを受信し、かつ、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が前記所定の閾値より悪化していると判定したことに応答して、ダウンリンク(DL)NASメッセージを生成し、前記ネットワークインタフェースを使用して、前記DL NASメッセージを前記WCDに送信するように構成され、 前記DL NASメッセージは、ある時間期間内で、前記WCDが前記MMEに送信することが許容されているユーザデータを含むUL NASメッセージの数を示す情報を含む、MME。 【請求項8】 請求項7に記載のMMEであって、前記DL NASメッセージに含まれる前記情報に より示される前記UL NASメッセージの数はゼロである、MME。 【請求項9】 請求項7または8に記載のMMEであって、前記UL NASメッセージはアタッチ要 求を含む、MME。 【請求項10】 請求項7から9のいずれか1項に記載のMMEであって、前記DL NASメッセージは前記ある時間期間を示す情報を含む、MME。 【請求項11】 請求項7から10のいずれか1項に記載のMMEであって、 前記WCDにより送信された前記UL NASメッセージは、ユーザデータを含み、 前記データ処理システムは更に、前記ユーザデータを別のデバイスに転送するように構成される、MME。 【請求項12】 請求項7から10のいずれか1項に記載のMMEであって、 MMEが、前記WCDにより送信された第2のUL NASメッセージであって、別のデバイスを対象としたユーザデータを含む第2のUL NASメッセージを受信することに応答して、前記データ処理システムは、前記MMEが前記ユーザデータを前記別のデバイスに転送しないように前記ユーザデータを破棄するように構成される、MME。」 第5 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由で引用された、米国特許出願公開第2014/0242970号明細書には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) 「[0042] Small data is encapsulated in a non access stratum (Non Access Stratum, NAS) message and transferred to an MME, the MME routes the small data to an SGW, and the SGW transfers the small data to a PGW by using a user plane bearer on a core network side of the SGW. In this solution, both a UE and the MME need to support this feature, but in the prior art, there is no method about how a network and a UE transfer information about whether a small data feature is supported. (中略) [0130] 901: A UE sends a NAS message to an MME. [0131] 902: The MME obtains a small data transmission parameter from the NAS message, where content of the small data transmission parameter includes, for example, an indication of whether the UE user equipment supports small data transmission, and may further include the number of times of transmission within a duration, a transmission direction, and the like. [0132] 903: The MME determines, according to the foregoing parameter, to use small data transmission optimization to perform transmission, and determines, according to the parameter, a policy for currently performing small data transmission among a plurality of small data transmission policies configured by an operator, and notifies the UE of the policy. [0133] Content of the small data transmission policy corresponds to the foregoing content of the small data transmission parameter, for example, the small data transmission policy that is notified to the UE may include: adoption of small data transmission optimization to perform transmission, the maximum number of times of transmission, and the like. Definitely, a small data transmission policy that is notified to a network side may include more content, for example, content related to a bearer for small data transmission, that is, information about which the MME may further negotiate with another device of the network side when the MME determines the policy for currently performing small data transmission, for example, information related to negotiation about establishment of a dedicated bearer. For details, reference may be made to the description in the embodiments shown in FIG. 10 and FIG. 11. (中略) [0137] 1001: A user equipment (UE) initiates an attach request /PDN connection request /TAU request, where the request may carry a small data transmission parameter. [0138] The parameter may be a service feature of small data, or may simply indicate whether small data transmission is supported; if the parameter is the service feature of the small data, the parameter may include a combination of one or more parameters of the following parameters: the amount of data that is transmitted each time, a data transmission direction (uplink, downlink, or both directions), a duration (a data transmission duration), the number of times of transmission (the number of times of transmission within the duration), and a data size. For example, the parameter may be one parameter or a combination of several parameters, for example, may be (uplink transmission, 5 times, 100 bytes). The UE may also not carry the parameter, and an MME may obtain the parameter from subscription data that is obtained from an HSS. (中略) [0147] 1009: The MME returns Attach Accept/PDN Connection Accept/TAU Accept to the UE, and transfers the small data transmission policy to the UE. Before transmitting data, the UE checks whether a local resource conforms to a requirement of the small data policy. If the local resource conforms to the requirement of the small data policy, small data optimization transmission is used. Moreover, the MME may also indicate to the UE which bearer is used for small data optimization.」 (当審訳: [0042]スモールデータは、非アクセスストラタム(Non Access Stratum、NAS)メッセージにカプセル化されてMMEに転送され、MMEはスモールデータをSGWにルーティングし、SGWはSGWのコアネットワーク側のユーザプレーンベアラを使用してスモールデータをPGWに転送する。このソリューションでは、UEとMMEの両方がこの機能をサポートする必要があるが、先行技術では、ネットワークとUEが、スモールデータ機能がサポートされているかどうかの情報をどのように転送するかについての方法はない。 (中略) [0130]901:UEはMMEにNASメッセージを送信する。 [0131]902:MMEは、NASメッセージからスモールデータ送信パラメータを取得する。スモールデータ送信パラメータの内容は、例えば、UEのユーザ機器がスモールデータ送信をサポートしているかどうかの表示を含み、さらに、継続時間内の送信回数、送信方向などを含んでもよい。 [0132]903:MMEは、前記パラメータに応じて、送信を実行するためにスモールデータ送信最適化を使用することを決定し、オペレータによって構成された複数のスモールデータ送信ポリシーのうち、スモールデータ送信を現在実行するためのポリシーを決定し、UEに通知する。 [0133]スモールデータ送信ポリシーの内容は、前述のスモールデータ送信パラメータの内容に対応しており、例えば、UEに通知されるスモールデータ送信ポリシーには、送信を行うためのスモールデータ送信最適化の採用、送信回数の上限などが含まれていてもよい。間違いなく、ネットワーク側に通知されるスモールデータ送信ポリシーは、より多くの内容、例えば、スモールデータ送信のためのベアラに関する内容、すなわち、MMEが現在スモールデータ送信を行うためのポリシーを決定する際に、ネットワーク側の他のデバイスとさらにネゴシエートする可能性のある情報、例えば、専用ベアラの確立に関するネゴシエートに関する情報を含んでいてもよい。詳細については、図10および図11に示す実施形態における説明を参照することができる。 (中略) [0137]1001:ユーザ機器(UE)は、アタッチ要求/PDN接続要求/TAU要求を開始し、この要求はスモールデータ送信パラメータを運ぶことができる。 [0138]パラメータは、スモールデータのサービス機能であってもよいし、単にスモールデータ送信がサポートされているかどうかを示すものであってもよい。パラメータがスモールデータのサービス機能である場合、パラメータは、毎回送信されるデータ量、データ送信方向(アップリンク、ダウンリンク、または両方向)、継続時間(データ送信継続時間)、送信回数(継続時間内の送信回数)、およびデータサイズのうち、1つまたは複数のパラメータの組み合わせを含んでもよい。例えば、パラメータは、1つのパラメータであっても、複数のパラメータの組み合わせであってもよく、例えば、(アップリンク送信、5回、100バイト)であってもよい。また、UEはパラメータを搭載していなくてもよく、MMEはHSSから取得するサブスクリプションデータからパラメータを取得してもよい。 (中略) [0147]1009:MMEは、アタッチアクセプト/PDN接続アクセプト/TAUアクセプトをUEに返し、スモールデータ送信ポリシーをUEに転送する。データを送信する前に、UEはローカルリソースがスモールデータポリシーの要件に適合しているかどうかをチェックする。ローカルリソースがスモールデータポリシーの要件に適合している場合、スモールデータの最適化伝送が使用される。さらに、MMEは、どのベアラがスモールデータ最適化に使用されるかをUEに示すこともできる。) 「 」 上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。 ア 上記段落130には、「UEはMMEにNASメッセージを送信する。」と記載され、上記段落131には、「MMEは、NASメッセージからスモールデータ送信パラメータを取得する。」と記載され、上記段落137に、「ユーザ機器(UE)は、アタッチ要求/PDN接続要求/TAU要求を開始し、この要求はスモールデータ送信パラメータを運ぶことができる。」と記載されている。そして、アタッチ要求はUL NASメッセージに含まれることは技術常識であるから、引用文献1には、「ユーザ機器(UE)は、MMEにアタッチ要求をUL NASメッセージとして送信し、この要求はスモールデータ送信パラメータを運ぶ」こと、「MMEはNASメッセージからスモールデータ送信パラメータを取得する」ことが記載されているといえる。 イ 上記段落132には、「MMEは、前記パラメータに応じて、・・・、スモールデータ送信を現在実行するためのポリシーを決定し、UEに通知する。」と記載されているから、引用文献1には、「MMEは、前記パラメータに応じて、スモールデータ送信を現在実行するためのポリシーを決定する」ことが記載されているといえる。 ウ 上記段落133には、「スモールデータ送信ポリシーの内容は、前述のスモールデータ送信パラメータの内容に対応しており、・・・、UEに通知されるスモールデータ送信ポリシーには、送信を行うためのスモールデータ送信最適化の採用、送信回数の上限などが含まれていてもよい。」と記載され、上記段落138には、「パラメータは、毎回送信されるデータ量、データ送信方向(アップリンク、ダウンリンク、または両方向)、継続時間(データ送信継続時間)、送信回数(継続時間内の送信回数)、およびデータサイズのうち、1つまたは複数のパラメータの組み合わせを含んでもよい。」と記載されているから、引用文献1には「スモールデータ送信ポリシーはスモールデータ送信パラメータの内容に対応するものであって、パラメータは、毎回送信されるデータ量、データ送信方向(アップリンク、ダウンリンク、または両方向)、継続時間(データ送信継続時間)、送信回数(継続時間内の送信回数)、およびデータサイズを含む」ことが記載されている。 エ 上記段落147には「MMEは、アタッチアクセプト/PDN接続アクセプト/TAUアクセプトをUEに返し、スモールデータ送信ポリシーをUEに転送する。」と記載されており、アタッチアクセプトはDL NASメッセージに含まれることは技術常識である。そして、上記図10の1009からは、MMEからアタッチアクセプト/PDN接続アクセプト/TAUアクセプトがUEに送信されることが見て取れるから、スモールデータ送信ポリシーはアタッチアクセプト/PDN接続アクセプト/TAUアクセプトを介して送信されることは明らかである。そうすると、引用文献1には、「MMEは、DL NASメッセージであるアタッチアクセプトを介して、スモールデータ送信ポリシーをUEに転送する」ことが記載されている。 オ 上記段落42には、「スモールデータは、非アクセスストラタム(Non Access Stratum、NAS)メッセージにカプセル化されてMMEに転送され、MMEはスモールデータをSGWにルーティングし、SGWはSGWのコアネットワーク側のユーザプレーンベアラを使用してスモールデータをPGWに転送する。」と記載されているから、引用文献1には、「スモールデータは、NASメッセージにカプセル化されてMMEに転送され、SGWをルーティングし、ユーザプレーンベアラを使用してスモールデータをPGWに転送する」ことが記載されている。 カ 上記ウ、エで述べたとおり、UEは、MMEから毎回送信されるデータ量、データ送信方向(アップリンク、ダウンリンク、または両方向)、継続時間(データ送信継続時間)、送信回数(継続時間内の送信回数)、およびデータサイズに対応するスモールデータ送信ポリシーを受け取るものであって、上記段落147には、「データを送信する前に、UEはローカルリソースがスモールデータポリシーの要件に適合しているかどうかをチェックする。ローカルリソースがスモールデータポリシーの要件に適合している場合、スモールデータの最適化伝送が使用される。」と記載されているから、UEは、MMEが送信した、毎回送信されるデータ量、データ送信方向(アップリンク、ダウンリンク、または両方向)、継続時間(データ送信継続時間)、送信回数(継続時間内の送信回数)、およびデータサイズを含むスモールデータ送信ポリシーを受け取ることによって、スモールデータの最適化伝送が行われるものである。 そうすると、MMEで決定されUEに送信された、毎回送信されるデータ量、データ送信方向(アップリンク、ダウンリンク、または両方向)、継続時間(データ送信継続時間)、送信回数(継続時間内の送信回数)、およびデータサイズは、最適化伝送を行う際の伝送レートを制御するために用いられるものであるから、MMEがUEの最適化伝送を行う際の伝送レートを制御している、すなわち、引用文献1には、「MMEにおいて実行されるレート制御方法」が記載されているといえる。 以上を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 MMEにおいて実行されるレート制御方法であって、 ユーザ機器(UE)は、MMEにアタッチ要求をUL NASメッセージとして送信し、この要求はスモールデータ送信パラメータを運び、 前記MMEは前記NASメッセージから前記スモールデータ送信パラメータを取得し、 前記MMEは、前記パラメータに応じて、スモールデータ送信を現在実行するためのポリシーを決定し、 前記MMEは、DL NASメッセージであるアタッチアクセプトを介して、スモールデータ送信ポリシーをUEに転送し スモールデータは、NASメッセージにカプセル化されてMMEに転送され、SGWをルーティングし、ユーザプレーンベアラを使用してスモールデータをPGWに転送するものであって、 スモールデータ送信ポリシーはスモールデータ送信パラメータの内容に対応するものであって、パラメータは、毎回送信されるデータ量、データ送信方向(アップリンク、ダウンリンク、または両方向)、継続時間(データ送信継続時間)、送信回数(継続時間内の送信回数)、およびデータサイズを含む、 方法。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由で引用された、特表2015-530838号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) 「【0058】 ステップS32:コアネットワーク機器はアクセスネットワーク機器からのS1メッセージを受信し、当該S1メッセージには、データとデータ送信インディケーションが含まれており、当該データ送信インディケーションについて上述したようなものであり、ここでは詳しく説明しない。 【0059】 ステップS34:コアネットワーク機器はデータを後続コアネットワークノードに送信するか否かを判断し、そうである場合、ステップ36を実行し、そうでない場合、ステップ38を実行する。 【0060】 ステップS36:コアネットワーク機器は当該データを後続コアネットワークノードに送信する。 【0061】 ステップS38:コアネットワーク機器は当該データを破棄する。」 上記段落58ないし61には、コアネットワーク機器はアクセスネットワーク機器からのS1メッセージを受信し、当該S1メッセージには、データとデータ送信インディケーションが含まれており、コアネットワーク機器はデータを後続コアネットワークノードに送信するか否かを判断し、送信すると判断した場合は、当該データを後続コアネットワークノードに送信し、送信しないと判断した場合は、当該データを破棄する、と記載されている。 そうすると、引用文献2には、「コアネットワーク機器はアクセスネットワーク機器からデータとデータ送信インディケーションを含むS1メッセージを受信し、後続コアネットワークノードにデータを送信するか否かを判断し、送信を判断する。」という技術事項が記載されていると認められる。 3 引用文献3ないし5について 原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献3である特開2011-77896号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) 「【0072】 ステップS1007において、交換局MME#2は、交換局MME#1から「(S10-AP)Downlink NAS Non Delivery Indication」を受信すると、ハンドオーバ先のセル(交換局MME#2配下のセル)を収容する無線基地局eNB#2に対して、交換局MME#1から受信した「(S10-AP)Downlink NAS Non Delivery Indication」に含まれる移動局UEに係る「LPP PDU」を含む「(S1-AP)DL NAS Transport」を送信する。」 原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献4である特表2012-531165号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) 「【0029】 (前略) MME130は、eNB120へのNASメッセージを運ぶS1-AP NAS転送メッセージを送信してもよい(ステップ2)。eNB120は、MME130からS1-AP NAS転送メッセージを受信してもよく、NASメッセージを抽出してもよい。次に、eNB120は、UE110へのNASメッセージを運ぶRRCダウンリンク(DL)情報転送メッセージを送信してもよい(ステップ3)。」 原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献5である特表2014-524222号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) 「【0053】 (前略) MME105は、ackメッセージを端末101へNASで伝送するが、NAS自体は、ackメッセージをeNB102へ伝送するために、S1-APにあり得る。そして、eNB102は、ackメッセージを端末101へメッセージ140で転送する。」 上記引用文献3の段落72、引用文献4の段落29、引用文献5の段落53の記載から、「MMEが、無線通信デバイス(UE)に送信するにあたり、MMEがS1-APメッセージを送信する。」という技術事項が周知技術である。 4 引用文献6及び7について 当審拒絶理由で引用された、引用文献6である特開2012-104894号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) 「【0051】 ステップS1015において、移動管理ノードMMEは、無線基地局eNBに対して、「ATTACH ACCEPT」を含む「S1-AP:INITIAL CONTEXT SETUP REQUEST」を送信する。」 当審拒絶理由で引用された、引用文献7である国際公開第2014/112000号には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) 「[0052] (前略) そして、MME6は、NASメッセージ(例えば、Attach Accect)を含む応答メッセージ(S1-APメッセージ)をMeNB1に送信する。 (後略)」 上記引用文献6の段落51及び引用文献7の段落52の記載によれば、「Attach AcceptはS1-APメッセージである。」という技術事項は周知技術である。 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。 ア 引用発明の「MME」は、本願発明1の「モビリティ管理エンティティ(MME)」に相当するから、本願発明1と引用発明は、「モビリティ管理エンティティ(MME)において実行されるレート制御方法」という点で一致する。 イ 引用発明の「ユーザ機器(UE)」は、本願発明1の「無線通信デバイス(WCD)」に含まれ、引用発明の「UL NASメッセージ」は、本願発明1の「アップリンク(UL)非アクセス層(NAS)メッセージ」に相当し、引用発明は「ユーザ機器(UE)は、MMEにアタッチ要求をUL NASメッセージとして送信」するから、引用発明は、MMEが、ユーザ機器により送信されたアップリンク(UL)非アクセス層(NAS)メッセージを受信するものであるといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明は、「MMEが、無線通信デバイス(WCD)により送信されたアップリンク(UL)非アクセス層(NAS)メッセージを受信する」という点で一致する。 ウ 引用発明の「MME」は、受信したNASメッセージからスモールデータ送信パラメータを取得し、前記パラメータに応じて、スモールデータ送信を実行するためのポリシーを決定し、MMEは、DL NASメッセージであるアタッチアクセプトを介して、スモールデータ送信ポリシーをUEに転送するものであり、MMEが受信したNASメッセージはUL NASメッセージであることは明らかであり、DL NASメッセージは、MMEが生成するものであることは技術常識である。そして、引用発明の「UL NASメッセージ」は、本願発明1の「アップリンク(UL)NASメッセージ」に相当するから、引用発明のMMEは、UL NASメッセージを受信し、ダウンリンク(DL)NASメッセージを生成し、DL NASメッセージを無線通信デバイス(WCD)に向かって送信するものであるといえる。 そうすると、本願発明1の「前記MMEが、前記UL NASメッセージを受信し、かつ、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が前記所定の閾値より悪化していると判定したことに応答して、ダウンリンク(DL)NASメッセージを生成し(306)、前記DL NASメッセージを前記WCDに向かって送信すること」と、引用発明の「前記MMEは前記NASメッセージから前記スモールデータ送信パラメータを取得し、 前記MMEは、前記パラメータに応じて、スモールデータ送信を現在実行するためのポリシーを決定し、前記MMEは、DL NASメッセージであるアタッチアクセプトを介して、スモールデータ送信ポリシーをUEに転送」することとは、「MMEがUL NASメッセージを受信し、ダウンリンク(DL)NASメッセージを生成し、DL NASメッセージを無線通信デバイス(WCD)に向かって送信する」という点で一致する。 エ 引用発明の「スモールデータ」はNASメッセージにカプセル化されてMMEに転送され、ユーザプレーンベアラを使用してPGWに転送されるものであるから、転送されるスモールデータはユーザデータであるといえる。そうすると、引用発明のUL NASメッセージはユーザデータを含むものであるといえる。 また、引用発明の「スモールデータ送信ポリシー」は、毎回送信されるデータ量、データ送信方向(アップリンク、ダウンリンク、または両方向)、継続時間(データ送信継続時間)、送信回数(継続時間内の送信回数)、およびデータサイズと対応するものであり、スモールデータポリシーは、DL NASメッセージを介してUEに転送されるものであるから、DL NASメッセージは、毎回送信されるデータ量、データ送信方向(アップリンク、ダウンリンク、または両方向)、継続時間(データ送信継続時間)、送信回数(継続時間内の送信回数)、およびデータサイズと対応する情報を含むものであるといえる。 ここで、DL NASメッセージを介してUEに転送されるスモールデータポリシーは、ユーザデータの送信ポリシーであるといえる。よって、DL NASメッセージに含まれる、毎回送信されるデータ量、データ送信方向(アップリンク、ダウンリンク、または両方向)、継続時間(データ送信継続時間)、送信回数(継続時間内の送信回数)、およびデータサイズと対応する情報とは、ユーザデータに関する情報であり、言い換えると、ある時間期間内で、UEがMMEに送信することが許容されているユーザデータを含むUL NASメッセージの数を示す情報といえる。したがって、引用発明のDL NASメッセージは、ある時間期間内で、UEがMMEに送信することが許容されているユーザデータを含むUL NASメッセージの数を示す情報を含むといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明は「DL NASメッセージは、ある時間期間内で、前記WCDが前記MMEに送信することが許容されているユーザデータを含むUL NASメッセージの数を示す情報を含む」点で一致する。 以上を総合すると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「 モビリティ管理エンティティ(MME)において実行されるレート制御方法であって、 前記MMEが、無線通信デバイス(WCD)により送信されたアップリンク(UL)非アクセス層(NAS)メッセージを受信することと、 前記MMEが前記UL NASメッセージを受信し、ダウンリンク(DL)NASメッセージを生成し、前記DL NASメッセージを前記WCDに向かって送信することとを含み、 前記DL NASメッセージは、ある時間期間内で、前記WCDが前記MMEに送信することが許容されているユーザデータを含むUL NASメッセージの数を示す情報を含む、 レート制御方法。」 (相違点) ダウンリンクNASメッセージを生成し、DL NASメッセージをWCDに向かって送信することに関して、本願発明1では「MMEが、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が所定の閾値より悪化しているかを判定することと」し、「前記MMEと前記WCDとの間の混雑が前記所定の閾値より悪化していると判定したことに応答して」、ダウンリンクNASを生成し、送信するのに対し、引用発明では、当該発明特定事項が特定されていない点。 (2)相違点についての判断 相違点に係る本願発明1の「MMEが、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が所定の閾値より悪化しているかを判定し、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が前記所定の閾値より悪化していると判定したことに応答して」ダウンリンクNASを生成し、送信するという発明特定事項は、引用文献1ないし引用文献7には記載も示唆もされていない。また、当該技術分野において周知技術であるともいえない。 よって、当業者といえども、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の「MMEが、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が所定の閾値より悪化しているかを判定し、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が前記所定の閾値より悪化していると判定したことに応答して」ダウンリンクNASを生成し、送信するものとすることは、容易に想到し得たとはいえない。 2.本願発明2ないし6について 本願発明2ないし6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし7に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3.本願発明7ないし12について 本願発明7ないし12は、本願発明1ないし6の方法をモビリティ管理エンティティ(MME)としたものであって、上記1.で説示した相違点に係る本願発明1の発明特定事項を少なくとも備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし7に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第7 原査定について 1.理由(特許法第29条第2項)について 令和3年7月9日にされた手続補正により、本願発明1ないし12は、「MMEが、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が所定の閾値より悪化しているかを判定し、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が前記所定の閾値より悪化していると判定したことに応答して」ダウンリンクNASを生成し、送信する発明特定事項を備えており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし5に記載された技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由についての判断 1 理由1(サポート要件)、理由2(明確性)について 令和3年7月9日にされた手続補正により、特許請求の範囲が補正され、拒絶の理由の対象であった補正前の請求項1、7の「・・・前記DL NASメッセージを含むS1層メッセージを送信することを含み・・・」という記載は削除された。 したがって、当審の拒絶理由で指摘した上記理由1(サポート要件)、理由2(明確性)は解消されたため、特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものと認められる。 2 理由3(進歩性)について 令和3年7月9日にされた手続補正により、本願発明1ないし12は、「MMEが、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が所定の閾値より悪化しているかを判定し、前記MMEと前記WCDとの間の混雑が前記所定の閾値より悪化していると判定したことに応答して」ダウンリンクNASを生成し、送信する発明特定事項を備えており、当業者であっても、当審拒絶理由通知において引用された引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び引用文献6及び引用文献7に記載された技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、理由3(進歩性)についての当審拒絶理由は全て解消された。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-11-05 |
出願番号 | 特願2018-539967(P2018-539967) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉村 真治▲郎▼ |
特許庁審判長 |
中木 努 |
特許庁審判官 |
本郷 彰 望月 章俊 |
発明の名称 | 制御プレーンの最適化のためのデータレートを管理するためのシステム、方法、および装置 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 渡邉 未央子 |
代理人 | 下山 治 |
代理人 | 特許業務法人大塚国際特許事務所 |