ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
---|---|
管理番号 | 1379402 |
審判番号 | 不服2020-14097 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-10-07 |
確定日 | 2021-10-29 |
事件の表示 | 特願2019- 18192「プログラム、情報処理装置、ゲームサーバおよびゲームシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月20日出願公開、特開2020-124342〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成31年2月4日に出願したものであって,令和2年2月17日付けで拒絶理由が通知され,同年4月2日に意見書及び手続補正書が提出され,同月22日付けで拒絶理由(最後)が通知され,同年7月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年8月3日付けで同年7月17日に提出された手続補正書が却下されると共に,拒絶査定(原査定)がなされ,これに対して同年10月7日付けで,拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に,手続補正書が提出され,同年12月7日に上申書が提出され,令和3年6月30日付けで令和2年10月7日に提出された手続補正書が却下されると共に,拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年8月23日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 令和3年8月23日に提出の手続補正書の概要 上記当審拒絶理由通知に対し,令和3年8月23日に請求人が提出した手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,特許請求の範囲を補正するものであり,その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下,「本願発明1」という。) 「【請求項1】 特典付与条件に基づいてプレイヤに特典が付与されるゲームを実行させるプログラムで あって,コンピュータを, 前記ゲームの一のプレイヤから,特典付与の条件として所定の位置情報の指定を受け付ける位置情報受付部と, 前記一のプレイヤが前記ゲームをプレイする状況に関するプレイ情報として,少なくとも前記ゲームの実行時の位置情報を取得するプレイ情報取得部と, 前記一のプレイヤによって指定された前記所定の位置情報が第1位置である場合,前記特典の内容を第1内容に設定し,前記一のプレイヤによって指定された前記所定の位置情報が第2位置である場合,前記特典の内容を第2内容に設定し,前記所定の位置情報および前記プレイ情報に含まれる前記ゲームの実行時の位置情報に基づいて,前記一のプレイヤに,設定した内容の特典を付与する特典付与部と, として機能させるプログラム。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由において通知した理由は,次に概略を記した理由を含むものである。 理由1(新規事項の追加) 令和2年4月2日に提出された手続補正書による手続補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 ア 本願補正 令和2年4月2日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本願補正」という。)は,次の補正を含むものである。 (ア)補正事項 請求項1の発明特定事項である「特典付与部」について,「前記プレイヤによって指定された前記位置情報に基づいて前記特典の内容を変更し」との限定を付加した上で,さらに,「特典付与条件」との事項を,「位置情報」のみに減縮する補正(以下「補正事項」という。) イ 補正事項の補正の適否(新規事項の追加の有無について) 補正事項に関して,本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを「当初明細書等」という。)には, 「【0050】 特典付与部254は,特典付与条件およびプレイ情報に基づいて,プレイヤに特典を付与する。特典付与部254は,例えば,特典付与条件242に記憶された特典付与条件と,プレイ情報取得部253が取得したプレイ情報とが一致するかを判断し,一致していれば,プレイヤに特典を付与する。 【0051】 また,特典付与部254は,特典付与条件やプレイ情報に基づいて,付与する特典の内容を変化させてもよい。例えば,特典付与条件として設定されている条件を達成する難易度によって,特典の内容を変えてもよい。例えば,特典付与条件として設定された,ゲームに参加するプレイヤの人数が多いほど,難易度が高いとして,付与する特典を多くする,よりゲームの進行が有利になるパラメータ設定とするなどしてもよい。難易度の判断は,予めゲーム開発者が設定しておいてもよいし,プレイヤが設定してもよい。 【0052】 しかしながら,特典の内容は,特典付与条件が変更されても,変わらずに維持されることが望ましい。様々な特典を取得するためにプレイヤが特典付与条件を変更し,その達成のために無理な生活スタイルになってしまうことを防止するためである。」 「【0076】 また,特典付与条件に対し,当該条件を受け付けてから所定の期間経過(または所定回数のプレイ)をしないと,新たに受け付けることができないように時間制限を設けてもよい。これにより,例えば,所定の期間一定の生活リズムで行動したいプレイヤに対し,特典付与条件の変更に時間制限を設け,当該条件を所定の期間継続して達成するように促すことで,その生活リズムを維持するモチベーションを与えることができる。」 と記載されている。 ここで,「特典の内容」を変更することについて,上記のとおり,当初明細書等の【0051】には,特典付与条件やプレイ情報に基づいて,付与する特典の内容を変化させてもよいと記載されているものの,特典付与条件として具体的に記載されているものは,ゲームに参加するプレイヤの人数のみだけである。 また,特典付与条件には,位置情報が指定できるところ,当初明細書等には,位置情報に難易度が設定可能であるとは記載されていないし,位置情報に難易度を設定可能であることが,当初明細書等から自明でもないから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,補正事項は,新たな技術的事項を導入するものである。 ウ まとめ したがって,本願補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 第4 当審の判断 1 本件補正事項 本願発明1には,令和3年8月23日に提出された手続補正書により,請求項1の発明特定事項である「プレイヤ」について,「一の」との限定を付加し,「プレイ情報」について,「(プレイ情報)として,少なくとも前記ゲームの実行時の位置情報」との限定を付加し,「前記プレイヤによって指定された前記位置情報に基づいて前記特典の内容を変更し,前記位置情報および前記プレイ情報に基づいて,前記プレイヤに特典を付与する特典付与部」について,「前記一のプレイヤによって指定された前記所定の位置情報が第1位置である場合,前記特典の内容を第1内容に設定し,前記一のプレイヤによって指定された前記所定の位置情報が第2位置である場合,前記特典の内容を第2内容に設定し,前記所定の位置情報および前記プレイ情報に含まれる前記ゲームの実行時の位置情報に基づいて,前記一のプレイヤに,設定した内容の特典を付与する特典付与部」と補正するものであって,特に,「位置情報に基づいて前記特典の内容を変更」を「所定の位置情報が第1位置である場合,前記特典の内容を第1内容に設定し,前記一のプレイヤによって指定された前記所定の位置情報が第2位置である場合,前記特典の内容を第2内容に設定」と補正することを,以下「本件補正事項」という。 2 本件補正事項の補正の適否(新規事項の追加の有無について) 上記本件補正事項に関して,本願の当初明細書等には, 「【0013】 <実施形態1> (実施形態1の概要) 本実施形態では,特典付与条件に基づいてプレイヤに特典が付与されるゲームにおいて,ゲームのプレイヤから特典付与条件を受け付ける。従来,ゲーム開発者は,開発者側の都合によって設定された条件( 例えば,連続ログイン日数や,キャンペーン期間のログインについての条件) が満たされた場合に特典を付与して,ゲームの娯楽性を高めていた。しかしながら,生活スタイルが多様化する現代において,プレイヤがゲームを楽しむ環境はさまざまであり,ゲーム開発者が一義的に設定した条件では,プレイヤによってその条件を達成できる難易度は異なり,ゲームを続けるモチベーションの低下を招く要因ともなりうる。そこで,本実施形態では,プレイヤから受け付けた,位置情報を含む特典付与条件に基づいて,プレイヤに特典を付与する。これにより,プレイヤの満足度を向上させつつ,ゲームの娯楽性を高めることができる。」 「【0050】 特典付与部254は,特典付与条件およびプレイ情報に基づいて,プレイヤに特典を付与する。特典付与部254は,例えば,特典付与条件242に記憶された特典付与条件と,プレイ情報取得部253が取得したプレイ情報とが一致するかを判断し,一致していれば,プレイヤに特典を付与する。 【0051】 また,特典付与部254は,特典付与条件やプレイ情報に基づいて,付与する特典の内容を変化させてもよい。例えば,特典付与条件として設定されている条件を達成する難易度によって,特典の内容を変えてもよい。例えば,特典付与条件として設定された,ゲームに参加するプレイヤの人数が多いほど,難易度が高いとして,付与する特典を多くする,よりゲームの進行が有利になるパラメータ設定とするなどしてもよい。難易度の判断は,予めゲーム開発者が設定しておいてもよいし,プレイヤが設定してもよい。 【0052】 しかしながら,特典の内容は,特典付与条件が変更されても,変わらずに維持されることが望ましい。様々な特典を取得するためにプレイヤが特典付与条件を変更し,その達成のために無理な生活スタイルになってしまうことを防止するためである。」 「【0076】 また,特典付与条件に対し,当該条件を受け付けてから所定の期間経過(または所定回数のプレイ)をしないと,新たに受け付けることができないように時間制限を設けてもよい。これにより,例えば,所定の期間一定の生活リズムで行動したいプレイヤに対し,特典付与条件の変更に時間制限を設け,当該条件を所定の期間継続して達成するように促すことで,その生活リズムを維持するモチベーションを与えることができる。」 と記載されている。 ここで,「特典の内容」を変更することについて,上記のとおり,当初明細書等の【0051】には,特典付与条件やプレイ情報に基づいて,付与する特典の内容を変化させてもよいと記載されているものの,特典付与条件として具体的に記載されているものは,ゲームに参加するプレイヤの人数のみだけである。 また,特典付与条件には,位置情報が指定できるところ,当初明細書等には,位置情報に難易度が設定可能であるとは記載されていないし,位置情報に難易度を設定可能であることが,当初明細書等から自明でもないし,また,特典の内容として,異なる位置(「第1位置」及び「第2位置」)毎に特典の内容を設定することは記載されていないし,異なる位置毎に特典の内容を設定可能であることが,当初明細書等から自明でもないから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,本件補正事項は,新たな技術的事項を導入するものである。 3 まとめ したがって,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 審判請求人は,令和3年8月23日に提出された意見書で, 「【0051】の記載は,特典付与条件がプレイヤの人数に限定される記載ではありません。」(3頁8?12行) 「【0013】で示すように,特典付与条件には,位置情報が含まれるため,得点付与条件としての位置情報に基づいて,付与する特典の内容を変化させるのは,明細書から十分に読み取ることが可能です。」(3頁13?15行) 「【0051】の記載から,特典付与条件で設定された人数が変わると,特典の内容が変更されると理解できます。そうすると,【0051】の記載は,特典付与条件として設定された人数が第1人数である場合,得点が第1内容となり,設定された人数が第2人数である場合,特典が第2内容となることが書かれていると解釈できます。」(3頁16?21行) と主張する。 しかし,特典付与条件としての位置情報が設定可能であったとしても,上記のとおり,異なる位置(「第1位置」及び「第2位置」)毎に特典の内容を設定することは記載されていないし,異なる位置毎に特典の内容を設定可能であることが,当初明細書から自明であるともいえないのであるから,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,本件補正事項は,新たな技術的事項を導入するものである。 よって,上記審判請求人の主張は採用できない。 したがって,本願の請求項1を引用する請求項2乃至7,請求項1の「プログラム」を,それぞれ,「情報処理装置」,「ゲームサーバ」及び「ゲームシステム」とした請求項8乃至10に係る発明も,上記本件補正事項と同様の補正がなされていることから,本願の請求項1乃至10に係る発明は,いずれも,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものである。 したがって,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 第5 むすび 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず特許を受けることができないものである。 したがって,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-08-31 |
結審通知日 | 2021-09-02 |
審決日 | 2021-09-14 |
出願番号 | 特願2019-18192(P2019-18192) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
WZ
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 古川 直樹、赤坂 祐樹 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 藤本 義仁 |
発明の名称 | プログラム、情報処理装置、ゲームサーバおよびゲームシステム |
代理人 | IPTech特許業務法人 |