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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1379441
審判番号 不服2021-7753  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-15 
確定日 2021-11-16 
事件の表示 特願2017- 93951「離間装置および離間方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月29日出願公開、特開2018-190888、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成29年5月10日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年12月15日付け :拒絶理由通知書
令和3年2月19日 :意見書及び手続補正書の提出
令和3年4月7日付け :拒絶査定
令和3年6月15日 :審判請求書の提出


第2 原査定の概要
原査定(令和3年4月7日付け拒絶査定)の概要は,本願の請求項1,3に係る発明は,本願出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて,また,本願の請求項2,4に係る発明は,本願出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献一覧
1.特開2016-81976号公報
2.特開2006-310438号公報
3.特開2001-308234号公報


第3 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は,令和3年2月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり,そのうちの本願発明1及び2は,それぞれ以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
一方の面と他方の面との少なくとも一方に,複数の被着体または分割されて複数になる被着体が貼付された接着シートの端部を保持する複数の保持手段と,
前記接着シートの端部を保持した前記保持手段を相対移動させ,前記接着シートに張力を付与して前記被着体の相互間隔を広げる離間手段と,
相互間隔が広げられた前記被着体群全体を一塊として認識可能な検知手段とを備え,
前記離間手段は,前記検知手段の検知結果を基にして,各被着体の全体的な集合形状が基の全体的な集合形状に対して相似関係となるように各保持手段を移動させ,当該各被着体の全体的な集合形状を所定の集合形状とし,
前記検知手段は,前記所定の集合形状を一塊と認識し,
前記検知手段の検知結果を基にして,前記一塊の被着体群全体の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする位置決め手段とを備えていることを特徴とする離間装置。」
「【請求項2】
一方の面と他方の面との少なくとも一方に,複数の被着体または分割されて複数になる被着体が貼付された接着シートの端部を保持する保持手段と,
前記接着シートにおける前記複数の被着体が貼付された被着体接着領域よりも外側であって,前記保持手段が保持した保持領域の内側で当該接着シートに当接する当接手段と,
前記接着シートの端部を保持した前記保持手段および当接手段を相対移動させ,前記接着シートに張力を付与して前記被着体の相互間隔を広げる離間手段と,
相互間隔が広げられた前記被着体群全体を一塊として認識可能な検知手段とを備え,
前記離間手段は,前記検知手段の検知結果を基にして,各被着体の全体的な集合形状が基の全体的な集合形状に対して相似関係となるように各保持手段を移動させ,当該各被着体の全体的な集合形状を所定の集合形状とし,
前記検知手段は,前記所定の集合形状を一塊と認識し,
前記検知手段の検知結果を基にして,前記一塊の被着体群全体の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする位置決め手段とを備えていることを特徴とする離間装置。」

本願発明3及び4は,本願発明1及び2の離間装置における各手段に対応する工程からなる離間方法の発明である。


第4 引用文献の記載と引用発明
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2016-81976号公報)には,図面とともに次の記載がある。

「【0012】
図1,図2において,離間装置10は,接着シートAS上の板状部材としての四角形のウエハWFに+X軸方向,-X軸方向,+Y軸方向,-Y軸方向の4方向の張力を付与して,ウエハWFから形成される複数の片状体としてのチップCPの相互間隔を広げる離間装置であって,接着シートASは,ウエハWFが貼付された被着体貼付領域AWを囲む4つの点である頂部APからそれぞれ当該接着シートASの外縁方向に延びてそれら全ての頂部APを結んで形成される包囲領域ACに対して,各引張方向の合成方向に張力が付与されることを防止する不干渉切込CUが形成されており,接着シートASの第1方向としての+X軸方向側を第1支持手段20で支持し,当該第1支持手段20を+X軸方向に移動させて接着シートASに+X軸方向への張力を付与する第1張力付与手段30と,接着シートASの第2方向としての-X軸方向側を第2支持手段40で支持し,当該第2支持手段40を-X軸方向に移動させて接着シートASに-X軸方向への張力を付与する第2張力付与手段50と,接着シートASの第3方向としての+Y軸方向側を第3支持手段60で支持し,当該第3支持手段60を+Y軸方向に移動させて接着シートASに+Y軸方向への張力を付与する第3張力付与手段70と,接着シートASの第4方向としての-Y軸方向側を第4支持手段80で支持し,当該第4支持手段80を-Y軸方向に移動させて接着シートASに第4方向への張力を付与する第4張力付与手段90と,接着シートASを介してウエハWFを支持する支持テーブル100とが設けられ,被着体貼付領域AWを囲む多角形の包囲領域ACの各頂部APを含む不干渉切込CUを形成して離間用接着シートAUを形成可能な切断手段110と,第1?第4張力付与手段30,50,70,90によって相互間隔が広げられた複数のチップCPを,当該相互間隔を維持しながら所定の位置に配置可能な位置調整手段120とを備えている。なお,ウエハWFは,切断刃や加圧水等のウエハ切断手段によりチップCPに個片化されるか,レーザ光や薬液等のウエハ脆弱化手段によりチップCPに個片化可能とされ,接着シートASが貼付されて一体物WKとされている。」

「【0019】
次に,切断手段110が多関節ロボット111を駆動し,カッター刃112を接着シートASに差し込んで移動させ,図2(A)に示すように,各頂部APからそれぞれ接着シートASの外縁方向に延びる2つの辺CSと,上把持部材26,46,66,86の内側縁に沿う補助辺CSSとからなる不干渉切込CUを4つ形成する。これにより,包囲領域ACと,不干渉切込CUと,包囲領域ACの各辺からそれぞれ+X軸方向,-X軸方向,+Y軸方向,-Y軸方向に延びる引張領域ALとを備える離間用接着シートAUが形成される。このとき,支持面101で接着シートASを吸着保持しているので,不干渉切込CUを形成する際に,接着シートASが上下や左右等に揺れて不干渉切込CUを適切に形成できなくなることを防止することができる。その後,支持テーブル100が減圧手段の駆動を停止し,離間用接着シートAUの吸着保持を解除する。」

「【0020】
次に,第1?第4張力付与手段30,50,70,90がリニアモータ31,51,71,91を駆動し,図2(B)に示すように,各引張領域ALを引っ張って包囲領域ACに+X軸方向,-X軸方向,+Y軸方向,-Y軸方向の4方向への張力を付与し,チップCPの相互間隔を広げる。そして,最外周に位置するチップCPが所定の位置に達したことを光学センサや撮像手段等の図示しない検知手段が検知すると,第1?第4張力付与手段30,50,70,90がリニアモータ31,51,71,91の駆動を停止する。このとき,図示しない検知手段の検知結果を基に,第1?第4支持手段20,40,60,80が直動回動モータ21,41,61,81を駆動し,下把持部材23,43,63,83を所定平面内で回動させて首振り動作を行うことで,引張領域ALの伸び方向を矯正することができ,各方向への伸びが不均一になることを防止することができる。」

「【0022】
次いで,図示しない検知手段の検知結果を基に,位置調整手段120がリニアモータ122,124を駆動し,張力が付与された状態にある離間用接着シートAU全体を支持プレート127を介して移動することで,全てのチップCPが位置すべき理論上の位置に当該チップCPを位置決めする。こうすることで,離間用接着シートAUの広がり動作中にウエハWFと理論上の位置との間に位置ずれが生じた場合でも,その位置ずれを解消でき,全てのチップCPを理論上の位置に配置することができる。」







(2)引用発明1
ア 引用文献1の段落0012における「ウエハWFは,切断刃や加圧水等のウエハ切断手段によりチップCPに個片化されるか,レーザ光や薬液等のウエハ脆弱化手段によりチップCPに個片化可能とされ,接着シートASが貼付されて一体物WKとされている。」との記載から,引用文献1の「接着シートAS」には,個片化された複数のチップCP又は複数のチップCPに個片化可能とされたウエハWFが貼付されていると理解できる。

イ 引用文献1の段落0019の記載から,引用文献1における「離間用接着シートAU」は,「包囲領域ACと,不干渉切込CUと,包囲領域ACの各辺からそれぞれ+X軸方向,-X軸方向,+Y軸方向,-Y軸方向に延びる引張領域ALとを備える」接着シートであって,「接着シートAS」に「不干渉切込CU」を4つ形成したものであると理解できる。そうすると,引用文献1の段落0022において「離間用接着シートAU全体を支持プレート127を介して移動する」ことは,実質的には,「接着シートAS」全体を支持プレート127を介して移動することであるといえる。

ウ 以上によれば,引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「個片化された複数のチップCP又は複数のチップCPに個片化可能とされたウエハWFが貼付された接着シートASと,
接着シートASの第1方向としての+X軸方向側を第1支持手段20で支持し,当該第1支持手段20を+X軸方向に移動させて接着シートASに+X軸方向への張力を付与する第1張力付与手段30と,
接着シートASの第2方向としての-X軸方向側を第2支持手段40で支持し,当該第2支持手段40を-X軸方向に移動させて接着シートASに-X軸方向への張力を付与する第2張力付与手段50と,
接着シートASの第3方向としての+Y軸方向側を第3支持手段60で支持し,当該第3支持手段60を+Y軸方向に移動させて接着シートASに+Y軸方向への張力を付与する第3張力付与手段70と,
接着シートASの第4方向としての-Y軸方向側を第4支持手段80で支持し,当該第4支持手段80を-Y軸方向に移動させて接着シートASに第4方向への張力を付与する第4張力付与手段90と,
検知手段と,を備え,
第1?第4張力付与手段30,50,70,90が+X軸方向,-X軸方向,+Y軸方向,-Y軸方向の4方向への張力を付与し,チップCPの相互間隔を広げ,最外周に位置するチップCPが所定の位置に達したことを検知手段が検知すると,第1?第4張力付与手段30,50,70,90の駆動を停止し,検知結果を基に,第1?第4支持手段20,40,60,80を駆動し,所定平面内で回動させて首振り動作を行うことで,引張領域ALの伸び方向を矯正して各方向への伸びが不均一になることを防止し,
検知手段の検知結果を基に,接着シートAS全体を移動することで,全てのチップCPが位置すべき理論上の位置に当該チップCPを位置決めする位置調整手段120と,
を備える離間装置。」

2.引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2006-310438号公報)には,図面とともに次の記載がある。

「【0020】
図1と図2とに示されているように,本実施例に係るエキスパンド装置は,平面視して四辺形状を有する固定板1と,固定板1に対向して設けられた昇降板2とを有する。昇降板2は,固定板1とほぼ同じ平面形状を有するとともに,昇降自在に設けられている。固定板1の四隅付近に設けられた穴にはジャッキ用でプーリ一体型のナット3が嵌装され,各ナット3にはガイド兼用のジャッキねじ(送りねじ)4が挿入され,各ジャッキねじ4はそれぞれベアリング5を介して昇降板2の四隅に取り付けられている。ナット3にはプーリ6が一体的に構成され,各プーリ6にはベルト7が巻回されている。ベルト7は,昇降用モータM1の軸に取り付けられたプーリ8に圧接されている。そして,昇降用モータM1の回転に伴い,ベルト7が図の両矢印の方向に運動し,プーリ6とナット3とを介して各ジャッキねじ4が共に昇降するようにして構成されている。固定板1には円形の穴9が形成されており,本実施例では,この穴9の中心を他の構成要素の位置についての基準にしている。また,昇降板2には,固定板1の穴9に対して同心状に円形の穴10が形成されている。ここで,ウェーハが更に大径化した場合を想定して,機械的強度を向上させるために,ジャッキねじ4及びこれに付随する他の構成要素(プーリ一体型のナット3,ベアリング5)の数を更に増やしておくこともできる。例えば,ジャッキねじ4等の構成要素を,固定板1と昇降板2とが有する各辺の中央部付近に増設してもよい。
【0021】
固定板1には,その穴9の中心の回りを回動自在になるようにして下側テーブル11が取り付けられている。下側テーブル11には,固定板1の穴9に対して同心状に円形の穴12が設けられている。固定板1と下側テーブル11とは,ベアリング(図示なし)を介して接している。下側テーブル11にはベルト13が巻回され,ベルト13は回動用モータM2の軸に取り付けられたプーリ14に圧接されている。すなわち,回動用モータM2が正逆双方向に回転することに伴い下側テーブル11が回動する。また,下側テーブル11には,円筒状であって側面視した場合の凸部15Lとその下に設けられた鍔部とを有する伸張用部材,すなわちエキスパンドリング16Lが,平面視して固定板1に重なり,かつ,これに含まれるようにして取り付けられている。ここで,昇降用モータM1と回動用モータM2とはサーボモータであって,それぞれ指令パルス信号によって制御される。
【0022】
昇降板2には,円環状の上側テーブル17Lが,ベアリング(図示なし)を介して接するようにして回動自在に取り付けられている。上側テーブル17Lには,固定板1の穴9に対して同心状に開口18が設けられている。下側テーブル11の所定の位置には,複数の穴が設けられている。そして,その複数の穴を含むようにして,固定板1の所定の位置には,固定板1の穴9に対して同心状に円弧状の長穴が設けられている。上側テーブル17Lの下面の所定の位置にはピン19が固定され,各ピン19は,下側テーブル11の穴と固定板1の円弧状の長穴とに昇降自在に嵌装されるとともに,固定板1の円弧状の長穴に沿って移動可能に設けられている。これにより,下側テーブル11と上側テーブル17Lとは,回動する方向(図1のθT方向)については一体的に構成されている。したがって,上側テーブル17Lは,固定板1と下側テーブル11とに対しては昇降自在であり,かつ,固定板1と昇降板2とに対しては下側テーブル11と一体的に回動自在である。
【0023】
上側テーブル17Lには,押え部材20Lが取り付けられている。この押え部材20Lは,固定板1の穴9に対して同心状の円環において平面視して中心線を挟む一部が除去されたような形状を有している。また,押え部材20Lは,上述の中心線に沿ってウェーハリング(後述)が搬送されるような向きで,上側テーブル17Lに取り付けられている。また,押え部材20Lには,水平部21と垂直部とが設けられている。そして,押え部材20Lの水平部21の下面と上側テーブル17Lの上面との間には,一定量の隙間が設けられている。この隙間に,ウェーハシート22が張設された状態でその外周部を保持したウェーハリング23が挿入される。このウェーハリング23は枠を有する枠状治具であって,エキスパンド装置の使用者がこれを準備する。ウェーハリング23は,200mm径と300mm径との2種類のウェーハに応じて異なる内径と外径とを有し,いずれの径についても300mm径用の方が200mm径用よりも大きくなっている(図には300mm径のウェーハ用が示されている)。ウェーハシート22の上面は粘着性を有し,その面には,ウェーハが切断されて形成された個片からなるチップ24が格子状に貼り付いている。この状態,すなわちエキスパンド前の状態で,チップ24同士の間隔d1は,ウェーハを切断する際に使用される回転刃の幅にほぼ見合う寸法になっている。したがって,間隔d1は,回転刃の仕様に応じた既知の値である。」

「【0028】
第2の動作は,カメラ28から受け取った画像に基づいて回動用モータM2を所望の角度方向(図1のθM方向)に所望の角度だけ回転させる信号を生成し,その信号を回動用モータM2に供給するという動作である。ここで,チップ24の角度に関する情報についての目標値が予め定められている。この目標値は,チップ24が角度方向(図1のθC方向)に基準線からどれだけずれているかということについての目標値であり,言い換えればチップ24における角度方向のずれの許容値である。作業者がこのずれの目標値をコントローラ29に入力することによって,コントローラ29はその目標値を記憶する。そして,コントローラ29は,受け取った画像に基づいて,ウェーハシート22におけるチップ24の角度に関する情報を取得する。具体的には,画像処理を行ってチップ24の稜線(エッジ)を検出し,その稜線と基準線とがなす角度,すなわちチップ24の実際のずれの量を算出する。そして,コントローラ29は,目標値と実際のずれの量とを比較し,必要に応じて回動用モータM2を回転させる方向と角度とを決定し,その回転に必要な信号を生成して回動用モータM2に供給する。」

「【0036】
本実施例に係るエキスパンド装置の動作を,図1-図2を参照して説明する。まず,図1において,チャック27がウェーハリング23を把持し,アーム26が移動することによって上側テーブル17Lと押え部材20Lとの間の隙間にウェーハリング23を搬入した後に,チャック27が把持を解除する。この状態で,図2(1)に示されるように,チップ24が貼り付けられたウェーハシート22が張設され,そのウェーハシート22の外周部を保持したウェーハリング23が,上側テーブル17Lの上に載置される。
【0037】
次に,ウェーハシート22を伸張させる工程を行う。この工程では,コントローラ29が,チップ24同士の間隔d1を予め設定され最適かつ所望の間隔d2に広げる際に昇降板2を必要な量(下降量)だけ下降させるために,昇降用モータM1を所定の方向に所定の量だけ回転させる駆動信号を生成し,その駆動信号を昇降用モータM1に供給する。これによって,図2(1)に示されている状態から,昇降用モータM1が所定の量だけ回転し,ベルト7によってその回転が伝達された各プーリ6が回転し,各ジャッキねじ4が均等に回転・下降し,昇降板2が平行を保ったまま必要な下降量だけ下降する。この過程において,昇降板2とともに上側テーブル17Lも下降するので,上側テーブル17Lと押え部材20Lとの間の隙間に挿入されたウェーハリング23が,押え部材20Lによって押さえられながら下降する。これにより,図2(2)に示されているように,ウェーハシート22のうち平面視してエキスパンドリング16Lの凸部15Lに重なる部分はその凸部15Lに対して押し当てられ,凸部15Lの外側の部分は斜め下向きに引っ張られる。したがって,ウェーハリング23の内側の部分におけるウェーハシート22が伸張するので,チップ24同士の間隔d1が,予め設定された最適かつ所望の間隔d2に広がる。
【0038】
また,この伸張させる工程では,初期値である間隔d1と目標値である間隔d2との組合せであって少なくとも一方の値が異なる複数の組合せをコントローラ29に記憶させ,それらのうち1つの組合せを事前に指定することができる。これにより,それらの複数の組合せに対応することができる。また,固定板1と昇降板2との四隅に設けられたジャッキねじ4がそれぞれ均等に回転・下降し,昇降板2が平行を保ったまま所定の下降量だけ下降する。したがって,シリンダを使用する場合に比較して,下降量を高精度にすることができるので,広げられた間隔d2の精度が高くなるとともにばらつきが小さくなる。また,エキスパンド前後にわたってウェーハリング23に保持されたウェーハシート22の平行度が良好に保たれる。
【0039】
次に,1個のウェーハリング23における全チップ24の角度方向(図1のθC方向)のずれを一括して補正する工程を行う。この工程では,図2(2)の状態において,カメラ28が,間隔d2を空けて格子状に並んでいるチップ24の画像を撮影し,コントローラ29に画像情報を供給する。コントローラ29は,画像情報に基づいてチップ24の実際のずれの量を算出し,目標値と実際のずれの量とを比較し,必要に応じて回動用モータM2を回転させる方向と角度とを決定し,その回転に必要な信号を生成して回動用モータM2に供給する。そして,回動用モータM2が回転することにより,下側テーブル11と上側テーブル17Lが一体的に回動する。これにより,1個のウェーハリング23における全チップ24の角度方向のずれが一括して解消されて所定の許容値の範囲内になる。なお,伸張させる工程と補正する工程との順序を入れ替えてもよい。」







(2)摘記の整理
以上の摘記によれば,引用文献2には次の事項が記載されているものと理解できる。

ア 固定板1と,固定板1に対向して設けられ,昇降自在に設けられている昇降板2を備えたエキスパンド装置。(段落0020)

イ 固定板1には,その穴9の中心の回りを回動自在になるようにして下側テーブル11が取り付けられていること。(段落0021)

ウ 下側テーブル11には,円筒状であって側面視した場合の凸部15Lとその下に設けられた鍔部とを有するエキスパンドリング16Lが取り付けられていること。(段落0021)

エ 昇降板2には,円環状の上側テーブル17Lが取り付けられていること。(段落0022)

オ 上側テーブル17Lには押え部材20Lが取り付けられ,押え部材20Lの水平部21の下面と上側テーブル17Lの上面との間の隙間に,ウェーハシート22が張設された状態でその外周部を保持したウェーハリング23が挿入されること。(段落0023)

カ ウェーハシート22の上面に,ウェーハが切断されて形成された個片からなるチップ24が格子状に貼り付けられていること。(段落0023)

キ 昇降板2が平行を保ったまま下降し,昇降板2とともに上側テーブル17Lも下降し,上側テーブル17Lと押え部材20Lとの間の隙間に挿入されたウェーハリング23が押え部材20Lによって押さえられながら下降することにより,ウェーハシート22のうち平面視してエキスパンドリング16Lの凸部15Lに重なる部分はその凸部15Lに対して押し当てられ,凸部15Lの外側の部分は斜め下向きに引っ張られてウェーハリング23の内側の部分におけるウェーハシート22が伸張し,チップ24同士の間隔d1が,予め設定された最適かつ所望の間隔d2に広がること。(段落0037)

ク カメラ28が,間隔d2を空けて格子状に並んでいるチップ24の画像を撮影してコントローラ29に画像情報を供給し,コントローラ29は画像処理を行ってチップ24の稜線(エッジ)を検出し,その稜線と基準線とがなす角度であるチップ24の実際のずれの量を算出し,目標値と実際のずれの量とを比較して回動用モータM2を回転させる方向と角度とを決定し,回動用モータM2が回転して下側テーブル11と上側テーブル17Lが一体的に回動することにより,1個のウェーハリング23における全チップ24の角度方向のずれを一括して補正すること。(段落0028,0039)

(3)引用発明2
上記ア?クによれば,引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「固定板1と,固定板1に対向して設けられ,昇降自在に設けられている昇降板2を備えたエキスパンド装置であって,
固定板1には,その穴9の中心の回りを回動自在になるようにして下側テーブル11が取り付けられ,
下側テーブル11には,円筒状であって側面視した場合の凸部15Lとその下に設けられた鍔部とを有するエキスパンドリング16Lが取り付けられ,
昇降板2には,円環状の上側テーブル17Lが取り付けられ,
上側テーブル17Lには押え部材20Lが取り付けられ,押え部材20Lの水平部21の下面と上側テーブル17Lの上面との間の隙間に,ウェーハシート22が張設された状態でその外周部を保持したウェーハリング23が挿入され,
ウェーハシート22の上面には,ウェーハが切断されて形成された個片からなるチップ24が格子状に貼り付けられ,
昇降板2が平行を保ったまま下降し,昇降板2とともに上側テーブル17Lも下降し,上側テーブル17Lと押え部材20Lとの間の隙間に挿入されたウェーハリング23が押え部材20Lによって押さえられながら下降することにより,ウェーハシート22のうち平面視してエキスパンドリング16Lの凸部15Lに重なる部分はその凸部15Lに対して押し当てられ,凸部15Lの外側の部分は斜め下向きに引っ張られてウェーハリング23の内側の部分におけるウェーハシート22が伸張し,チップ24同士の間隔d1が,予め設定された最適かつ所望の間隔d2に広がり,
カメラ28が,間隔d2を空けて格子状に並んでいるチップ24の画像を撮影してコントローラ29に画像情報を提供し,コントローラ29は画像処理を行ってチップ24の稜線(エッジ)を検出し,その稜線と基準線とがなす角度であるチップ24の実際のずれの量を算出し,目標値と実際のずれの量とを比較して回動用モータM2を回転させる方向と角度とを決定し,回動用モータM2が回転して下側テーブル11と上側テーブル17Lが一体的に回動することにより,1個のウェーハリング23における全チップ24の角度方向のずれを一括して補正する,
エキスパンド装置。」

3.引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献3(特開2001-308234号公報)には,次の記載がある。
「【0017】ステップ105では,分割された半導体チップ2が貼り付いたままのダイシングシート9を,エキスパンドアッパーリング12とエキスパンドロワーリング13で固定し,伸長する(図4の(c))。なお,図3の(b)および図4では,ウエハ8の半導体チップ2を形成しない端片は図示省略している。ダイシングシート9を伸長することによって,ダイシングシート9に貼り付いた個片状態の半導体チップ2を同心円状に広げる。広げられた半導体チップ2は,伸長前の半導体チップ2の位置を相似的に保つ。このとき,一つの半導体チップ2に対し図1に示した所定の大きさを持った一つの放熱板3を貼り付けた半導体装置1が得られるように,ダイシングシート9の伸長の程度を決める。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1の対比
本願発明1と引用発明1を対比する。

ア 引用発明1における「個片化された複数のチップCP」「複数のチップCPに個片化可能とされたウエハWF」及び「接着シートAS」は,本願発明1における「複数の被着体」「分割されて複数になる被着体」及び「接着シート」に相当する。

イ 引用発明1における「接着シートASの第1方向としての+X軸方向側」「接着シートASの第2方向としての-X軸方向側」「接着シートASの第3方向としての+Y軸方向側」及び接着シートASの第4方向としての-Y軸方向側」は,本願発明1における「接着シートの端部」に相当し,引用発明1における「第1支持手段20」「第2支持手段40」「第3支持手段60」及び「第4支持手段80」は,本願発明1における「複数の保持手段」に相当する。

ウ 引用発明1における「第1張力付与手段30」「第2張力付与手段50」「第3張力付与手段70」及び「第4張力付与手段90」は,第1?第4支持手段20,40,60,80を,+X軸,-X軸,+Y軸,-Y軸方向へそれぞれ移動させて接着シートASに当該各軸方向への張力を付与するものであり,当該張力の付与によってチップCPの相互間隔を広げるものであるから,本願発明1における「離間手段」に相当し,両者はともに「前記接着シートの端部を保持した前記保持手段を相対移動させ,前記接着シートに張力を付与して前記被着体の相互間隔を広げる」点で一致する。

エ 本願発明1の「離間装置」と引用発明1の「離間装置」は,ともに「検知手段」を備える点で一致し,引用発明1の「検知手段」は,「第1?第4張力付与手段30,50,70,90が+X軸方向,-X軸方向,+Y軸方向,-Y軸方向の4方向への張力を付与し,チップCPの相互間隔を広げ,最外周に位置するチップCPが所定の位置に達したことを」を「検知する」ものであるから,両者の「検知手段」は「相互間隔が広げられた前記被着体を認識可能」である点で共通する。

オ 引用文献1の段落0020及び図2(A),(B)から,引用発明1において「第1?第4張力付与手段30,50,70,90が+X軸方向,-X軸方向,+Y軸方向,-Y軸方向の4方向への張力を付与し,チップCPの相互間隔を広げ,最外周に位置するチップCPが所定の位置に達したことを検知手段が検知すると,第1?第4張力付与手段30,50,70,90の駆動を停止し,検知結果を基に,第1?第4支持手段20,40,60,80を駆動し,所定平面内で回動させて首振り動作を行うことで,引張領域ALの伸び方向を矯正して各方向への伸びが不均一になることを防止」することにより,複数のチップCPは引用文献1の図2(A)の形状から図2(B)の形状に離間されたと理解できる。ここで,引用文献1の図2(A)と図2(B)から,複数のチップCPの全体的な集合形状が,基の全体的な集合形状に対して相似関係となるように離間されていることが見て取れる。また,上記「4方向への張力を付与」とは,具体的には第1?第4支持手段を第1?第4張力付与手段により移動させることであり,当該移動が「検知手段」による検知結果に基づいて行われていると理解できる。
そうすると,引用発明1における上記「第1?第4張力付与手段30,50,70,90が+X軸方向,-X軸方向,+Y軸方向,-Y軸方向の4方向への張力を付与し,チップCPの相互間隔を広げ,最外周に位置するチップCPが所定の位置に達したことを検知手段が検知すると,第1?第4張力付与手段30,50,70,90の駆動を停止し,検知結果を基に,第1?第4支持手段20,40,60,80を駆動し,所定平面内で回動させて首振り動作を行うことで,引張領域ALの伸び方向を矯正して各方向への伸びが不均一になることを防止」することは,本願発明1における「前記離間手段は,前記検知手段の検知結果を基にして,各被着体の全体的な集合形状が基の全体的な集合形状に対して相似関係となるように各保持手段を移動させ,当該各被着体の全体的な集合形状を所定の集合形状と」することに相当する。

カ 引用発明1の「位置調整手段120」は,「検知手段の検知結果を基に,接着シートAS全体を移動することで,全てのチップCPが位置すべき理論上の位置に当該チップCPを位置決めする」手段であるから,本願発明1の「位置決め手段」に対応し,両者は「前記検知手段の検知結果を基にして,被着体群全体の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする」点で共通する。

以上によれば,本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりとなる。

<一致点>
「一方の面と他方の面との少なくとも一方に,複数の被着体または分割されて複数になる被着体が貼付された接着シートの端部を保持する複数の保持手段と,
前記接着シートの端部を保持した前記保持手段を相対移動させ,前記接着シートに張力を付与して前記被着体の相互間隔を広げる離間手段と,
相互間隔が広げられた前記被着体を認識可能な検知手段とを備え,
前記離間手段は,前記検知手段の検知結果を基にして,各被着体の全体的な集合形状が基の全体的な集合形状に対して相似関係となるように各保持手段を移動させ,当該各被着体の全体的な集合形状を所定の集合形状とし,
前記検知手段の検知結果を基にして,被着体群の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする位置決め手段とを備えていることを特徴とする離間装置。」

<相違点1>
本願発明1は,「検知手段」は「前記被着体群全体を一塊として認識可能」であり,「前記検知手段」が「前記所定の集合形状を一塊と認識し」た検知結果を基に,「位置決め手段」が「前記一塊の被着体群全体の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする」のに対し,引用発明1は,「検知手段」及び「位置調整手段120」を備えているものの,当該「検知手段」は「前記被着体群全体を一塊として認識可能」であること,及び,「前記検知手段」の「前記所定の集合形状を一塊と認識し」た検知結果を基に,「位置調整手段120」が「前記一塊の被着体群全体の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする」ことは特定されていない点。

(2)相違点についての判断
上記第4の1.(1)の摘記のとおり,引用文献1には「最外周に位置するチップCPが所定の位置に達したことを検知手段が検知する」(段落0020)ことや,「全てのチップCPが位置すべき理論上の位置に当該チップCPを位置決めする」(段落0022)ことは記載されているものの,本願発明1のように,「検知手段」が「被着体群全体を一塊として認識可能」であることや,「所定の集合形状を一塊として認識し」「前記一塊の被着体群全体の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする」ことは記載も示唆もされていない。
引用文献3には,ダイシングシート9を伸長することによってダイシングシート9に貼付された半導体チップ2を同心円状に広げる際に,広げられた半導体チップ2が伸長前の半導体チップ2の位置を相似的に保つことが記載されているものの,半導体チップ2の集合形状を一塊として認識し,位置決めすることについては記載も示唆もされていないし,また,このことが,本願出願時において周知技術であるともいえない。
したがって,上記相違点1に係る本願発明1の構成は,引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。

2.本願発明2について
(1)本願発明2と引用発明2の対比
本願発明2と引用発明2を対比する。

ア 引用発明2における「エキスパンド装置」,「チップ24」「ウェーハシート22」は,本願発明2における「離間装置」,「被着体」及び「接着シート」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明2において,「ウェーハシート22」は「張設された状態でその外周部」が「ウェーハリング23」に「保持」され,当該「ウェーハリング23」は「押え部材20Lの水平部21の下面と上側テーブル17Lの上面との間の隙間」に「挿入」されることから,引用発明2における「上側テーブル17L」「押え部材20L」及び「ウェーハリング23」は,本願発明2における「接着シートの端部を保持する保持手段」に相当する。

ウ 引用発明2は,「昇降板2」とともに「上側テーブル17L」「押え部材20L」「ウェーハリング23」が下降することにより,「ウェーハシート22のうち平面視してエキスパンドリング16Lの凸部15Lに重なる部分はその凸部15Lに対して押し当てられ,凸部15Lの外側の部分は斜め下向きに引っ張られてウェーハリング23の内側の部分におけるウェーハシート22が伸張し,チップ24同士の間隔d1が,予め設定された最適かつ所望の間隔d2に」広げられるものであるから,引用発明2における「エキスパンドリング16L」が本願発明2の「当接手段」に相当し,引用発明2の「昇降板2」が本願発明2の「離間手段」に相当するといえる。そして,本願発明2と引用発明2は,ともに「前記接着シートの端部を保持した前記保持手段および当接手段を相対移動させ,前記接着シートに張力を付与して前記被着体の相互間隔を広げる離間手段」を備える点で一致する。

エ 引用文献2の図2から,引用発明2の「ウェーハシート22のうち平面視してエキスパンドリング16Lの凸部15Lに重なる部分」は,「チップ24」が「ウェーハシート22」に接着された領域よりも外側であって,「上側テーブル17L」「押え部材20L」「ウェーハリング23」よりも内側であることは明らかである。そうすると,本願発明2の「当接手段」と引用発明2の「エキスパンドリング16L」は,ともに「前記接着シートにおける前記複数の被着体が貼付された被着体接着領域よりも外側であって,前記保持手段が保持した保持領域の内側で当該接着シートに当接する」点で一致する。

オ 引用発明2における「カメラ28」及び「コントローラ29」は,「間隔d2を空けて格子状に並んでいるチップ24の画像を撮影し」「画像処理を行ってチップ24の稜線(エッジ)を検出し,その稜線と基準線とがなす角度であるチップ24の実際のずれの量を算出」するものであるから,本願発明2における「検知手段」に対応し,両者は「相互間隔が広げられた被着体を認識可能な検知手段」である点で共通する。

カ 引用発明2における「回転モータM2」及び「下側テーブル11」は,「コントローラ29」が「算出」した「チップ24の実際のずれの量」を基にして「回動用モータM2が回転して下側テーブル11と上側テーブル17Lが一体的に回動することにより,1個のウェーハリング23における全チップ24の角度方向のずれを一括して補正する」ものであるから,本願発明2における「位置決め手段」に対応し,両者は「前記検知手段の検知結果を基にして,被着体の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする」点で共通する。

上記ア?カによれば,本願発明2と引用発明2の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「一方の面と他方の面との少なくとも一方に,複数の被着体または分割されて複数になる被着体が貼付された接着シートの端部を保持する保持手段と,
前記接着シートにおける前記複数の被着体が貼付された被着体接着領域よりも外側であって,前記保持手段が保持した保持領域の内側で当該接着シートに当接する当接手段と,
前記接着シートの端部を保持した前記保持手段および当接手段を相対移動させ,前記接着シートに張力を付与して前記被着体の相互間隔を広げる離間手段と,
相互間隔が広げられた前記被着体を認識可能な検知手段とを備え,
前記検知手段の検知結果を基にして,前記被着体の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする位置決め手段とを備えていることを特徴とする離間装置。」

<相違点2-1>
本願発明2は,「検知手段」は「前記被着体群全体を一塊として認識可能」であり,「前記検知手段」が「前記所定の集合形状を一塊と認識し」た検知結果を基に,「位置決め手段」が「前記一塊の被着体群全体の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする」のに対し,引用発明2は,「チップ24の稜線(エッジ)を検出し,その稜線と基準線とがなす角度であるチップ24の実際のずれの量を算出」して「1個のウェーハリング23における全チップ24の角度方向のずれを一括して補正する」ものであり,「カメラ28」及び「コントローラ29」が「前記被着体群全体を一塊として認識可能」であることや,「前記所定の集合形状を一塊と認識し」た検知結果を基に「角度方向のずれを一括して補正する」ことは特定されていない点。

<相違点2-2>
本願発明2では,「前記離間手段は,前記検知手段の検知結果を基にして,各被着体の全体的な集合形状が基の全体的な集合形状に対して相似関係となるように各保持手段を移動させ,当該各被着体の全体的な集合形状を所定の集合形状とし」ているのに対し,引用発明2では,「昇降板2」の下降がそのように行われることは特定されていない点。

(2)相違点についての判断
始めに相違点2-1について検討する。上記第4の2.(1)の摘記のとおり,引用文献2には,「チップ24の稜線(エッジ)を検出し,その稜線と基準線とがなす角度,すなわちチップ24の実際のずれの量を算出する」(段落0028)ことは記載されているものの,「検知手段」が「被着体群全体を一塊として認識可能」であることや,「所定の集合形状を一塊として認識し」「前記一塊の被着体群全体の位置と方位との少なくとも一方の位置決めをする」ことは記載も示唆もされていない。また,引用文献3にも,上記第5の1.(2)で検討したとおり,半導体チップ2の集合形状を一塊として認識し,位置決めすることについては記載も示唆もされていないし,このことが本願出願時において周知技術であるともいえない。
そうすると,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明2は,引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明3及び4について
本願発明3は本願発明1における各手段に対応する工程からなる発明であるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。また,本願発明4は本願発明2における各手段に対応する工程からなる発明であるから,本願発明2と同じ理由により,引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明できたものではない。


第6 結言
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-10-27 
出願番号 特願2017-93951(P2017-93951)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 河本 充雄
特許庁審判官 小川 将之
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 離間装置および離間方法  
代理人 杉浦 正知  
代理人 杉浦 拓真  

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