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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1379444
審判番号 不服2020-2470  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-25 
確定日 2021-11-16 
事件の表示 特願2018-513512「ポストに関連付けられたプライバシー設定のトリガーに基づく変更のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月23日国際公開、WO2017/048242、平成30年10月18日国内公表、特表2018-530821、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)9月15日の国際出願(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年9月14日、米国)であって、平成30年9月14日に手続補正がされ、令和元年7月4日付けで拒絶理由が通知され、同年10月9日に手続補正がされ、同年10月17日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和2年2月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和3年4月28日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月10日に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和元年10月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-20に係る発明は、以下の引用文献A-Cに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特表2012-530321号公報
B.特開2008-262280号公報
C.特開2005-267071号公報

第3 当審拒絶理由の概要
1. 本願請求項1-20に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2. この出願の請求項10、15、20の記載は、矛盾を含む記載となっており、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

引用文献等一覧
1.特開2014-49048号公報

第4 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、令和3年8月10日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
コンピュータが実行する方法であって、
コンピューティングシステムが、ソーシャルネットワーキングシステムを介して公開されるポストを識別するステップと、
前記コンピューティングシステムが、前記ポストに関連するプライバシー設定を変更するためのプライバシースケジュールを決定するステップと、ここで、前記プライバシースケジュールは、少なくとも1つの時間ベースのトリガーの検出時に前記ポストの前記プライバシー設定に適用される1つまたは複数の変更を指定し、
前記コンピューティングシステムが、前記トリガーを検出する前に前記ソーシャルネットワーキングシステムを介して前記ポストを公開するステップと、
前記コンピューティングシステムが、前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第1の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更される前の前記プライバシー設定に基づいて有効にするステップと、
前記コンピューティングシステムが、前記ポストに関連する前記プライバシー設定を変更するトリガーを検出するステップと、
前記コンピューティングシステムが、前記トリガーが検出されたときに、前記プライバシースケジュールに基づいて前記プライバシー設定を変更するステップと、
前記コンピューティングシステムが、前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第2の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更された後の前記プライバシー設定に基づいて有効にするステップと、
を含み、
前記第1の組および前記第2の組の少なくとも1つにエンティティを含めることは、当該エンティティと前記ポストの投稿ユーザとの間の1つまたは複数のつながり信号が閾値を満たすことに基づく、
コンピュータが実行する方法。
【請求項2】
前記第1の組は、前記第2の組よりも大きい、請求項1に記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項3】
前記第2の組は、前記第1の組よりも大きい、請求項1に記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項4】
前記ポストに関連する前記プライバシー設定を変更する第2のトリガーを検出するステップと、
前記第2のトリガーが検出されたときに、前記プライバシースケジュールに基づいて前記プライバシー設定を変更するステップと、
前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第3の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更された後の前記プライバシー設定に基づいて有効にするステップとを更に含む、請求項1に記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項5】
前記ポストは、前記ソーシャルネットワーキングシステムのユーザによって作成され、前記第1の組は公衆の視聴者を含み、前記第2の組は、前記ユーザに関連付けられた1組のソーシャルつながりを含み、前記第3の組は、前記ユーザに関連付けられたソーシャルつながりの選択された一部を含む、請求項4に記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項6】
前記ポストは、前記ソーシャルネットワーキングシステムのユーザによって作成され、前記第1の組は、前記ユーザに関連付けられた1組のソーシャルつながりを含み、前記第2の組は、前記ユーザに関連付けられたソーシャルつながりの選択された一部を含み、前記第3の組は、前記ユーザを含む、請求項4に記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項7】
前記ポストは、前記ソーシャルネットワーキングシステムのユーザによって作成され、前記プライバシースケジュールは、1組のシステム設定および前記ユーザからの1組のコマンドのうちの少なくとも一方に基づいて決定される、請求項1に記載のコンピュータが実行する方法。
【請求項8】
システムであって、
少なくとも1つのプロセッサと、
命令を格納するメモリと
を備え、前記命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによる実行時に、前記システムに
ソーシャルネットワーキングシステムを介して公開されるポストを識別すること、
前記ポストに関連するプライバシー設定を変更するためのプライバシースケジュールを決定すること、ここで、前記プライバシースケジュールは、少なくとも1つの時間ベースのトリガーの検出時に前記ポストの前記プライバシー設定に適用される1つまたは複数の変更を指定し、
前記トリガーを検出する前に前記ソーシャルネットワーキングシステムを介して前記ポストを公開すること、
前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第1の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更される前の前記プライバシー設定に基づいて有効にすること、
前記ポストに関連する前記プライバシー設定を変更するトリガーを検出すること、
前記トリガーが検出されたときに、前記プライバシースケジュールに基づいて前記プライバシー設定を変更すること、および
前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第2の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更された後の前記プライバシー設定に基づいて有効にすること
を行わせ、
前記第1の組および前記第2の組の少なくとも1つにエンティティを含めることは、当該エンティティと前記ポストの投稿ユーザとの間の1つまたは複数のつながり信号が閾値を満たすことに基づく、システム。
【請求項9】
前記命令は前記システムに、
前記ポストに関連する前記プライバシー設定を変更する第2のトリガーを検出すること、
前記第2のトリガーが検出されたときに、前記プライバシースケジュールに基づいて前記プライバシー設定を変更すること、
前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第3の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更された後の前記プライバシー設定に基づいて有効にすることを更に行わせる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
命令を含む非一時的なコンピュータ可読の記憶媒体であって、コンピューティングシステムの少なくとも1つのプロセッサによる実行時に、前記コンピューティングシステムに、
ソーシャルネットワーキングシステムを介して公開されるポストを識別するステップと、
前記ポストに関連するプライバシー設定を変更するためのプライバシースケジュールを決定するステップと、ここで、前記プライバシースケジュールは、少なくとも1つの時間ベースのトリガーの検出時に前記ポストの前記プライバシー設定に適用される1つまたは複数の変更を指定し、
前記トリガーを検出する前に前記ソーシャルネットワーキングシステムを介して前記ポストを公開するステップと、
前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第1の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更される前の前記プライバシー設定に基づいて有効にするステップと、
前記ポストに関連する前記プライバシー設定を変更するトリガーを検出するステップと、
前記トリガーが検出されたときに、前記プライバシースケジュールに基づいて前記プライバシー設定を変更するステップと、
前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第2の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更された後の前記プライバシー設定に基づいて有効にするステップと
を含む方法を行わせ、
前記第1の組および前記第2の組の少なくとも1つにエンティティを含めることは、当該エンティティと前記ポストの投稿ユーザとの間の1つまたは複数のつながり信号が閾値を満たすことに基づく、非一時的なコンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項11】
前記命令は、前記コンピューティングシステムに、
前記ポストに関連するプライバシー設定を変更する第2のトリガーを検出するステップと、
前記第2のトリガーが検出されたときに、前記プライバシースケジュールに基づいて前記プライバシー設定を変更するステップと、
前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第3の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更された後の前記プライバシー設定に基づいて有効にするステップとを更に行わせる、請求項10に記載の非一時的なコンピュータ可読の記憶媒体。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由において引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、新たに登録した情報を時間と共にその開示範囲を広げたり、ある場所にいるときには個人情報を隠してしまうといったきめ細かな開示制御が可能な個人情報開示制御装置及び方法及びプログラムを提供することを目的とする。」

「【0006】
上記の課題を解決するため、本発明(請求項1)は、ソーシャルネットワーキングサービスなどで利用される、ユーザプロフィールと投稿内容を含む個人情報の開示範囲を制御する個人情報開示制御装置であって、
個人情報と、該個人情報を公開する公開範囲を適用する適用時間(以下、「時間ポリシ」と記す)と、該時間ポリシに基づいて公開する公開範囲と、を格納した管理データベースと、
個人情報利用者から個人情報の要求を取得すると、現在時刻と前記管理データベースの前記時間ポリシを比較し、該現在時刻が該時間ポリシに適合する場合には、公開と判定する時間判定手段と、
前記時間判定手段で公開と判定され、前記個人情報利用者が前記管理データベースの前記適用時間に公開する公開範囲に含まれる場合には、前記個人情報を該管理データベースから読み込んで該個人情報利用者の端末に送信する開示制御判定手段と、を有する。」

「【0013】
<時間によるプライバシの開示制御方法>時間による制御では、以下のような公開範囲の設定が可能である。
【0014】
図1に示すように、時間t_(1),t_(2),…,t_(n)が、t_(1)<t_(2)<…<t_(n)の順に並んでいるとする。このとき、t_(i)≦t<t_(i+1)を満たす時間tに対して、公開範囲Xiを適用する。ここで、i∈{1,2,…,n-1}である。また、t_(n)≦tを満たす時間tに対して公開範囲X_(n)を適用する。
【0015】
ここで、公開範囲X_(n)とは、・全世界に公開・友達の友達まで公開・友達に公開・特定の人またはリストに含まれる人に公開・自分のみ、非公開等を含む。」

「【0019】
図5は、本発明の一実施の形態におけるシステム構成を示す。同図に示すシステムは、個人情報保有端末10、個人情報利用端末20、管理DB30、プライバシ開示制御サーバ40、SNSサイト等を構築するWebサーバ50からなり、これらの装置はインターネットなどのネットワークを介して接続されている。」

「【0027】
図7は、図5に示すシステムにおける個人情報の登録と要求のシーケンス(開示制御判定が開示可能となった場合)を示し、図8は、プライバシ開示制御サーバ40の動作のフローチャートを示し、図9は、図8に示すシーケンスにおける管理DB30の更新の様子を示す。
【0028】
ステップ101?103)まず、個人情報保有者端末10の個人情報登録部12は、個人情報をWebサーバ50、プライバシ開示制御サーバ40を介して、管理DB30に登録する。ここで、プライバシ開示制御サーバ40を介すのは、セキュリティの観点から管理DB30にアクセスで切るサーバを限定したいためである。プライバシ開示制御サーバ40は、個人情報登録要求を受信すると、認証部46において当該個人情報登録要求に含まれる送信元の個人ID等により認証を行い、認証が成功した場合に、管理DB30への個人情報登録要求を転送する。
【0029】
ステップ104?106)個人情報保有端末10のプライバシポリシ登録部11は、管理DB30に登録した個人情報に対し、NGプレイスや時間による開示制御などのプライバシポリシを、Webサーバ50とプライバシ開示制御サーバ40を介して管理DB30に登録する。ここで、時間による開示制御の設定方法には、
・GUI(Graphical User Interface)による設定;
・CSV(Comma Separated Values)等特定のファイル形式からのインポート;
・SNS(Social Network Service)のサービス提供者が決めたいくつかの既存設定から、ラジオボタンやプリタブを用いて選択;
等の方法が考えられる。」

「【0032】
以下では、個人情報利用者端末20が個人情報の要求を行い、取得が行われるまでの手順を示す。
【0033】
ステップ107?108)個人情報利用者が個人情報の要求を行うと、その要求内容は個人情報利用者端末20からWebサーバ50経由でプライバシ開示制御サーバ40に送られる。
【0034】
ステップ109?110)プライバシ開示制御サーバ40は、開示制御判定に必要なプライバシポリシ、すなわち、開示要求を行いたい個人情報にまつわる時間ポリシ、位置情報、NGプレイス情報、友人情報などを管理DB30から取得する。
【0035】
ステップ111)プライバシ開示制御サーバ40は、開示制御を行う。当該処理は図8に示すフローチャートによって行われる。
【0036】
まず、要求している個人情報がNGプレイス内のデータであるかどうかが判定され(ステップ203)、個人情報利用者が要求している個人情報に含まれる位置情報がNGプレイス内であった場合には(ステップ203,Yes)この時点で開示不可と判定し(ステップ208)、NGプレイス外であった場合は(ステップ203、No)、以下の2つの処理を[0]行う。1つは、個人情報の現在時刻における開示ポリシを判定する(ステップ204)。個人情報保有者と利用者の友人関係を判定する(ステップ205)。これらの時間による開示ポリシが友人関係を満たす場合のみ(ステップ206、Yes)、個人情報の開示を認め(ステップ207)、それ以外の場合は開示不可と判定する(ステップ208)。
【0037】
ステップ112?115)ステップ111で開示可能と判定された場合は、プライバシ開示制御サーバ40からWebサーバ50経由で個人情報利用者端末20に個人情報が渡されるようになる。」

「【0039】
図9に示した構成例のように、管理DB30は例えば以下のように構成される。
【0040】
●個人情報データベース31は、ユーザID、投稿時刻、緯度、経度、投稿内容、NGプレイス、時間ポリシNoから構成される。
・・・
【0044】
・時間ポリシNo:その個人情報がどの「時間によるプライバシの開示制御方法」に従うかを示す番号である。この番号に従って、時間ポリシデータベース33を参照することで時間による開示制御の判定を可能とする。
・・・
【0046】
●友人データベース34は、ユーザ毎の友人を記録する。
【0047】
●時間ポリシデータベース33は、時間ポリシ番号、公開範囲の適用開始時間と適用終了時間、及び時間による公開範囲からなる。プライバシ開示制御サーバ40の開示制御判定部41により、個人情報データベース31から投稿時刻と共に参照され、時間による開示制御の判定を可能とする。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ソーシャルネットワーキングサービスなどで利用される、ユーザプロフィールと投稿内容を含む個人情報(【0006】)を登録する保有者の端末、この個人情報を利用する利用者の端末、管理DB、プライバシ開示制御サーバ、SNSサイト等を構築するWebサーバからなり、これらの装置がインターネットなどのネットワークを介して接続されているシステム(【0019】)における、プライバシ開示制御サーバが行う処理の方法であって、
ここで、管理DBは、ユーザID、投稿時刻、投稿内容、時間ポリシ番号等から構成される個人情報データベース(【0040】、図9A)、時間ポリシ番号、公開範囲の適用開始時間と適用終了時間及び時間による公開範囲からなる時間ポリシデータベース(【0047】)、ユーザ毎の友人を記録する友人データベース(【0046】)、等のデータベースにより構成されており、この時間ポリシデータベースには、同じ時間ポリシ番号(【0044】)に対し、公開範囲の適用開始時間、適用終了時間及び時間による公開範囲が異なる複数のエントリが登録され得るものとなっており(図9D)、
プライバシ開示制御サーバは、
保有者の端末からWebサーバを経由して個人情報の登録要求を受信し、登録要求の送信元の認証が成功した場合に、管理DBに個人情報の登録要求を転送し(【0028】、図7のS102、103)、
登録された個人情報に対してのプライバシポリシ設定の要求を保有者の端末からWebサーバ経由で受信し、管理DBにこのプライバシポリシ設定の要求を転送し(【0029】、図7のS105、S106)、
利用者の端末からWebサーバ経由で個人情報の取得要求を受信し(【0032】、【0033】、図7のS107、S108)、開示制御判定に必要なプライバシポリシ、友人情報などを管理DBから取得し(【0034】)、個人情報の現在時刻における開示ポリシの判定及び保有者と利用者の友人関係の判定の2つの処理を行い(【0036】、図8のS204、S205)、これらの時間による開示ポリシが友人関係を満たす場合のみ個人情報の開示を認め、それ以外の場合は開示不可と判定し(【0036】、図8のS206、S207,S208)、開示可能と判定された場合は、Webサーバ経由で利用者の端末に個人情報が渡されるようにする(【0037】、図7のS112?S115)、
方法。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「プライバシ開示制御サーバが行う処理の方法」は、本願発明1と同様の「コンピュータが実行する方法」であり、また、「コンピューティンングシステム」が行うものであるといえる。
引用発明の「Webサーバ」に構築された「SNSサイト等」及び「ソーシャルネットワーキングサービスなどで利用される」「ユーザプロフィールと投稿内容を含む個人情報」は、それぞれ、本願発明1の「ソーシャルネットワーキングシステム」及び「ソーシャルネットワーキングシステムを介して公開される」「ポスト」に相当する。
引用発明において、利用者端末からポストの取得要求を受信して「ポスト」に対する開示制御判定を行う際、取得要求したポストが開示制御判定の対象となる所定の「ポスト」であることが識別されるから、引用発明の「開示制御判定」は、本願発明1の「ポストを識別する」ステップを含むものといえる。

イ 引用発明では、時間ポリシデータベースにおいて、同じ「時間ポリシ番号」が異なる複数の「適用開始時間、適用終了時間」と「公開範囲」に対応し得るものとなっており、引用発明のポストである「投稿内容」は、個人情報データベースで「時間ポリシ番号」と対応づけられることによって、複数の異なる「適用開始時間、適用終了時間及び公開範囲」と対応付けられ得るところ、引用発明の、「投稿内容」に対応づけられた複数の「適用開始時間、適用終了時間及び公開範囲」のうちの「公開範囲」は、所定の時刻におけるポストのプライバシー設定であるから、本願発明1の「ポストに関連するプライバシー設定」に相当する。
そして、引用発明の、該「適用開始時間、適用終了時間」は、ポストに関連するプライバシー設定を変更するためのスケジュールとして決定されるものであって、ポストのプライバシー設定に適用される1つまたは複数の変更を指定するものであるから、変更の指定が個人情報の要求の受信をトリガーとしてなされ、「少なくとも1つの時間ベースのトリガーの検出時」になされるものではない(相違点)ものの、本願発明1の「前記ポストに関連するプライバシー設定を変更するため」の「プライバシースケジュール」に対応するものである。また、本願発明1の「前記ポストに関連するプライバシー設定を変更するためのプライバシースケジュールを決定する」ステップと引用発明の該「適用開始時間、適用終了時間」の指定とは、この「プライバシースケジュール」を「決定する」ステップである点で共通する。

ウ 引用発明の、「個人情報データベース」へのポストである「投稿内容」を含む個人情報の登録は、これによってソーシャルネットワーキングシステムを介してポストが公開されるとともに、プライバシー設定の変更の指定に係るトリガーである個人情報の取得要求に先だって行われるから、本願発明1の「トリガーを検出する前」に「前記ソーシャルネットワーキングシステムを介して前記ポストを公開する」ステップに相当する。

エ 引用発明は、個人情報の取得要求の受信に応じて個人情報の現在時刻における開示ポリシの判定及び保有者と利用者の友人関係の判定を行うところ、このうち、現在時刻における開示ポリシの判定は、ポストの取得要求の受信をトリガーとして検出し、トリガーが検出されたときにプライバシースケジュールと投稿内容に対応する投稿時刻に基づいてポストに適用されるべきプライバシー設定を変更することであるといえるから、引用発明における、個人情報の取得要求の受信に応じて個人情報の現在時刻における開示ポリシの判定を行うことは、本願発明1における、「前記ポストに関連するプライバシー設定を変更するトリガーを検出する」ステップ及び「前記トリガーが検出されたときに、前記プライバシースケジュールに基づいて前記プライバシー設定を変更する」ステップに相当するといえる。

以上を踏まえれば、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
コンピュータが実行する方法であって、
コンピューティングシステムが、ソーシャルネットワーキングシステムを介して公開されるポストを識別するステップと、
前記コンピューティングシステムが、ポストに関連するプライバシー設定を変更するためのプライバシースケジュールを決定するステップと、ここで、前記プライバシースケジュールは、トリガーの検出時に前記ポストの前記プライバシー設定に適用される1つまたは複数の変更を指定し、
前記コンピューティングシステムが、前記トリガーを検出する前に前記ソーシャルネットワーキングシステムを介して前記ポストを公開するステップと、
前記コンピューティングシステムが、前記ポストに関連する前記プライバシー設定を変更するトリガーを検出するステップと、
前記コンピューティングシステムが、前記トリガーが検出されたときに、前記プライバシースケジュールに基づいて前記プライバシー設定を変更するステップと
を含むコンピュータが実行する方法。

<相違点>
(相違点1)
本願発明1のトリガーは、「少なくとも1つの時間ベースのトリガー」であるのに対し、引用発明のトリガーは、個人情報の取得要求の受信であって、「少なくとも1つの時間ベースのトリガー」でない点。
(相違点2)
本願発明1は、「前記コンピューティングシステムが、前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第1の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更される前の前記プライバシー設定に基づいて有効にするステップ」及び「前記コンピューティングシステムが、前記ポストを、前記プライバシースケジュールに基づいて定義される第2の組の1つまたは複数のエンティティによってアクセス可能となるように、変更された後の前記プライバシー設定に基づいて有効にするステップ」を含み、「前記第1の組および前記第2の組の少なくとも1つにエンティティを含めることは、当該エンティティと前記ポストの投稿ユーザとの間の1つまたは複数のつながり信号が閾値を満たすことに基づく」のに対し、引用発明は、これらのステップを有しない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1と相違点2は、関連する相違点であるので、まとめて検討する。
引用発明の「時間ポリシデータベース」における「公開範囲」は、ポストにアクセス可能なエンティティの組を定義づけるものである点で、本願発明1の「プライバシー設定」に対応するものといえるものの、引用発明の開示ポリシの判定は、ポストの取得要求の受信をトリガーとして検出し、トリガーが検出されたときに時間ポリシデータベースの適用開始時間、適用終了時間(プライバシースケジュール)と個人情報データベースの投稿内容(ポスト)に対応する投稿時刻に基づいて、アクセス可能なエンティティによる要求であるか否かを判定して、時間の経過に応じたポストへのアクセスが可能である「エンティティ」の「組」の変更を可能とするものであるから、そのために、適用開始時間と適用終了時間が決められた複数の公開範囲を示すプライバシー設定が予めポストに対応付けられている必要がある。いうなれば、引用発明においては、「ポスト」は、ポストへのアクセス可能なエンティティの範囲の変更の前後に跨がって適用される「プライバシー設定」に基づいて予め「有効」にされているものである。
このことを踏まえれば、引用発明を、「ポスト」を「変更される前」の「プライバシー設定」又は「変更された後」の「プライバシー設定」に基づいて「有効」にするステップを有するものに変更したり、そのような変更を前提として「トリガー」を「時間ベース」のものに変更することはできない。そうすると、引用発明には、相違点1及び相違点2を克服する論理付けのための動機付けがなく、むしろ阻害要因がある。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2-7について
本願発明2-7も、本願発明1の上記相違点1及び相違点2に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明8-11について
本願発明8と本願発明10は、それぞれ、方法発明である本願発明1に対応するシステム発明及び媒体発明であり、本願発明1の上記相違点1及び相違点2に係る構成に対応する構成を備えたものである。
また、本願発明9と本願発明11は、それぞれ、本願発明8と本願発明10と同様に、本願発明1の上記相違点1及び相違点2に係る構成に対応する構成を備えたものである。
よって、本願発明8-11は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 当審拒絶理由について
1. 進歩性要件違反の拒絶理由(「第3」の「1.」)については、上記第6に照らして、本願発明1-11について、解消している。
2. 明確性要件違反の拒絶理由(「第3」の「2.」)については、令和3年8月10日にされた手続補正によって拒絶理由の対象請求項が削除されており、解消している。

第8 原査定についての判断
本願発明1の上記相違点1及び相違点2に係る構成は、原査定における引用文献A-Cのいずれにも記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもない。このことを踏まえれば、本願発明1-11は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Cに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-10-26 
出願番号 特願2018-513512(P2018-513512)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
P 1 8・ 537- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮地 匡人  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 後藤 嘉宏
相崎 裕恒
発明の名称 ポストに関連付けられたプライバシー設定のトリガーに基づく変更のためのシステムおよび方法  
代理人 特許業務法人World IP  

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