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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1379455 |
審判番号 | 不服2020-17371 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-18 |
確定日 | 2021-11-16 |
事件の表示 | 特願2018-226577「トラッキングシステム及びそのトラッキング方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月26日出願公開、特開2020- 47239、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年12月3日(パリ条約による優先権主張2018年9月19日、米国)の出願であって、令和2年2月13日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年4月17日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年9月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和2年12月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年9月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-14に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.国際公開第2018/143360号 2.特開2010-240185号公報 3.特開2016-126500号公報 第3 本願発明 本願請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、令和2年12月18日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-14は以下のとおりの発明である(下線部は補正箇所を示す。)。 「 【請求項1】 トラッキングシステムであって、 ユーザの頭に装着され、仮想環境において前記ユーザの体の動きを仮想化するように構成された、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)と、 前記ユーザの足に装着され、前記ユーザの前記体の動きにしたがって、前記ユーザの体の情報を決定し、前記決定された体の情報を前記HMDに送信するように構成された複数のセンサであって、前記複数のセンサの各々が、第1の接続を介して前記HMDに接続され、前記複数のセンサは、第2の接続を介して相互に直接接続され、前記複数のセンサのうち各2つのセンサ間、及び、前記複数のセンサの各々と前記HMDとの間の複数の相互関係が知らされ、前記複数のセンサの各々が、座標を作製するために前記センサの動きを検出する慣性計測装置を含み、前記複数のセンサの各々が、前記複数のセンサの各々の座標を、前記第2の接続を介して相互に、及び、前記第1の接続を介して前記HMDと共用し、前記HMDは、前記決定された体の情報にしたがって、前記ユーザの前記体の動きを仮想化する、複数のセンサと、 を備え、 前記体の情報は、前記複数のセンサのうち各2つのセンサ間、及び、前記複数のセンサの各々と前記HMDとの間の前記複数の相互関係に関連し、 複数のセンサの1つが、前記第2の接続を介した前記共用された座標及び前記第1の接続を介した前記共用された座標にしたがって、前記複数の相互関係のうち前記複数のセンサの1つと別のセンサとの間の相対距離及び相対位置を校正し、前記複数のセンサのうち2つのセンサ間の相対位置及び相対距離が前記複数のセンサのうちの1つのセンサによって知らされる、トラッキングシステム。 【請求項2】 前記複数のセンサは、第1のセンサと第2のセンサを備え、前記第1のセンサは、前記第1のセンサの動きを検出する第1の慣性計測装置(IMU)を備え、前記第2のセンサは、前記第2のセンサの動きを検出する第2のIMUを備え、前記動きは、前記センサの座標を得るために使用される、請求項1に記載のトラッキングシステム。 【請求項3】 前記複数の相互関係は、前記第1のセンサ、前記第2のセンサ及び前記HMDとの間の複数の相対距離、及び前記第1のセンサ、前記第2のセンサ及び前記HMDとの間の相対位置を含む、請求項2に記載のトラッキングシステム。 【請求項4】 前記第1のセンサの座標と、前記第2のセンサの座標は、相互に及び前記HMDと共用されている、請求項2に記載のトラッキングシステム。 【請求項5】 前記HMDは、ブルートゥース(登録商標)を介して、前記複数のセンサに接続されている、請求項1に記載のトラッキングシステム。 【請求項6】 前記複数のセンサは、6自由度(DOF)センサである、請求項1に記載のトラッキングシステム。 【請求項7】 前記複数のセンサは、超音波、レーザ、又は磁力を介して相互に接続されている、請求項1に記載のトラッキングシステム。 【請求項8】 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)システムに対するトラッキング方法であって、前記HMDは、仮想環境においてユーザの体の動きを仮想化し、前記トラッキング方法は、 複数のセンサによって、前記ユーザの前記体の動きにしたがって、前記ユーザの体の情報を決定することと、 前記複数のセンサによって、前記決定された体の情報を前記HMDに送信することと、を含み、 前記HMDは、前記決定された体の情報にしたがって前記ユーザの前記体の動きを仮想化し、 前記体の情報は、前記複数のセンサのうち各2つのセンサ間、及び、前記複数のセンサの各々と前記HMDとの間の複数の相互関係に関連し、 前記HMDは、前記ユーザの頭に装着され、前記複数のセンサは、前記ユーザの足に装着され、前記複数のセンサの各々が、第1の接続を介して前記HMDに接続され、前記複数のセンサは、第2の接続を介して相互に直接接続され、前記複数のセンサのうち各2つのセンサ間、及び、前記複数のセンサの各々と前記HMDとの間の前記複数の相互関係が知らされ、前記複数のセンサの各々が、座標を作製するために前記センサの動きを検出する慣性計測装置を含み、前記複数のセンサの各々が、前記複数のセンサの各々の座標を、前記第2の接続を介して相互に、及び、前記第1の接続を介して前記HMDと共用し、 複数のセンサの1つが、前記第2の接続を介した前記共用された座標及び前記第1の接続を介した前記共用された座標にしたがって、前記複数の相互関係のうち前記複数のセンサの1つと別のセンサとの間の相対距離及び相対位置を校正し、前記複数のセンサのうち2つのセンサ間の相対位置及び相対距離が前記複数のセンサのうちの1つのセンサによって知らされる、トラッキング方法。 【請求項9】 前記複数のセンサは、第1のセンサと第2のセンサを備え、前記第1のセンサは、前記第1のセンサの動きを検出する第1の慣性計測装置(IMU)を備え、前記第2のセンサは、前記第2のセンサの動きを検出する第2のIMUを備え、前記動きは、前記センサの座標を得るために使用される、請求項8に記載のトラッキング方法。 【請求項10】 前記複数の相互関係は、前記第1のセンサ、前記第2のセンサ及び前記HMDとの間の複数の相対距離、及び前記第1のセンサ、前記第2のセンサ及び前記HMDとの間の相対位置である、請求項9に記載のトラッキング方法。 【請求項11】 前記第1のセンサの座標と、前記第2のセンサの座標は、相互に及び前記HMDと共用されている、請求項9に記載のトラッキング方法。 【請求項12】 前記HMDは、ブルートゥース(登録商標)を介して、前記複数のセンサに接続されている、請求項8に記載のトラッキング方法。 【請求項13】 前記複数のセンサは、6自由度(DOF)センサである、請求項8に記載のトラッキング方法。 【請求項14】 前記複数のセンサは、超音波、レーザ、又は磁力を介して相互に接続されている、請求項8に記載のトラッキング方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審において付与した。)。 ア 「[0002] 従来、例えば、複数の装置や機器同士の相対位置を検出するための技術として、例えば特許文献1に示すような装置がある。この特許文献1に示す装置は、操作者の頭部に装着される頭部装着型ディスプレイと、当該ディスプレイに表示された表示物(マニピュレータ)を操作する操作部とを備えるマニピュレータシステムにおいて、頭部装着型ディスプレイと操作部の一方に対する他方の相対位置および相対姿勢を検出する相対位置センサを備えている。そして、この特許文献1に記載の相対位置センサは、頭部装着型ディスプレイと操作部の一方に設けられた指標としてのLEDと、他方に設けられて前方を撮影可能な視野を有するCCDなどの撮像部とで構成されている。 [0003] また、従来複数の装置の相対位置を検出する方法として、GPS(Global Positioning System)やインターネット(通信ネットワーク)など外部からの情報を受信することによって各装置の絶対的な位置情報を取得し、当該取得した各装置の絶対的な位置情報から装置間の相対位置を検出することが一般的に行われている。 [0004] しかしながら、近年、通信端末装置など各種の端末装置の小型化・軽量化及び装置構成の簡素化が進んでいる。そのため、複数の装置や機器、特に小型の装置や機器の相対位置を検出する場合においても、装置の構成要素を可能な限り少なく抑えることで、装置の小型化・軽量化を図ると共に構成及び処理の簡素化や省電力化などを図ることが重要である。この点、相対位置センサの構成部品としてカメラ(撮像手段)を備えると、装置の構成の複雑化、部品点数の増加や装置の大型化につながる。また、GPSなど外部からのデータの提供を受けて絶対的な位置情報を取得する方法では、そのための受信機器などの構成要素が必要になるうえ、受信したデータに基づいて装置間の相対位置を検出するための処理が煩雑になる。」 イ 「[0008] 本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の小型化及び構成や処理の簡素化の妨げにならず、複数の装置間の相対位置を精度良く検出することが可能な相対位置検出システム、及びそれを備えた画像表示システムを提供することにある。」 ウ 「[0023] 図1は、本発明の第一実施形態にかかる相対位置検出システムを含む画像表示システムの全体構成例を示す図である。図1に示す相対位置検出システムを含む画像表示システム1は、腕時計型端末装置(第1端末装置)100と、メガネ型端末装置(第2端末装置)200とを備えている。腕時計型端末装置100は、本体部101と該本体部101を腕に装着するためのバンド102とを有する腕時計の形状をしたウェアラブル端末であり、メガネ型端末装置200は、メガネとして機能する一対のレンズ201,201と該一対のレンズ201,201を支持するフレーム部202とからなるメガネ部分210と、該メガネ部分210のフレーム部202に取り付けた本体部205とで構成され、全体がメガネの形状をしたウェアラブル端末である。 [0024] メガネ型端末装置200は、後述する画像投影部213から投影した画像220をレンズ201に投影する(表示させる)ようになっている。これにより、メガネ型端末装置200を装着している装着者は、レンズ201に投影された画像がレンズ201を通してみた実際の景色の中に存在している(表示されている)ように視認することができる。そして、後述するように、この画像220として、腕時計型端末装置100で実行しているアプリケーションソフトウエアの表示画面などの画像(映像を含む、以下同じ。)を投影することで、この画像220が腕時計型端末装置100の位置又はその近傍位置にある(見える)ように投影される。これにより、メガネ型端末装置200の装着者にとって、表示画面の画像(映像)5があたかも腕時計型端末装置100の真上位置などの近傍位置に表示されているように見える。 [0025] そして、当該画像を表示する際、当該画像が腕時計型端末装置100の近傍位置にあるように表示し、かつ、腕時計型端末装置100の位置(メガネ型端末装置200に対する相対位置)が変化しても、当該画像が常に腕時計型端末装置100を追従してその近傍位置に表示され続けるようにするために、腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200との相対位置の情報を常時取得(把握)できるようにすることが必要である。そのために、本実施形態の画像表示システム1では、表示する画像を常に腕時計型端末装置100の近傍にあるように表示させるための手段として、メガネ型端末装置200と腕時計型端末装置100との相対位置を検出するための相対位置検出機能(相対位置検出システム)を備えている。 [0026] 図2は、腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の機能構成を示すブロック図である。同図に示す腕時計型端末装置100は、制御部(制御手段)111、記憶部(記憶手段)112、表示部(表示手段)113、操作部(入力手段)114、データ送受信部115、加速度センサ116a及び角速度センサ116bを含む位置検出部116を備えて構成されている。 [0027] 制御部111は、腕時計型端末装置100を動作させるための各種処理を実行するための部分であり、マイクロプロセッサ、各種周辺回路等によって構成される。この制御部111は、記憶部112に記憶されたプログラム(アプリケーションソフトウェア、以下単に「アプリケーション」という。)120を実行するための機能などを備えている。 [0028] また、制御部111は、後述するように、腕時計型端末装置100の位置検出部116で検出した位置の情報(データ)とメガネ型端末装置200の位置検出部216で検出した位置の情報(データ)とに基づいて腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置情報を取得(把握)することができる。したがって制御部111は、腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置情報を取得する相対位置情報取得部としても機能する。」 エ 「[0032] 位置検出部116は、腕時計型端末装置100の位置に関するデータを取得するための部分であり、加速度センサ116aと角速度センサ116bを備えて構成されている。これら加速度センサ116aと角速度センサ116bは、一例としてMEMS (Micro Electro Mechanical System) 型のセンサを用いることができる。加速度センサ116aは、地球上の重力加速度と当該腕時計型端末装置100の加速度とからその位置変化を測定することができる。(なお、ここでいう位置変化には、角度(向き・傾き)の変化も含まれる。)また、角速度センサ116bは、腕時計型端末装置100の基準角度からの角度変化を測定する。したがって、角速度センサ116bの検出値で加速度センサ116aの検出値に含まれる角度(向き・傾き)の情報を補正することで、腕時計型端末装置100の向き・傾きの変化を排除したいわゆる純粋な移動(位置)変化(三次元座標値(x,y,z)の変化)を測定することができる。さらに角速度センサ116bの検出値から腕時計型端末装置100の姿勢(位置情報を含まない(同一位置での)角度)変化(三次元座標値(x,y,z)の変化)を測定することができる。 [0033] したがって、本明細書で腕時計型端末装置100について「位置検出」というときは、これら加速度センサ116a及び角速度センサ116bによる腕時計型端末装置100の位置(変化)及び姿勢(変化)の検出を指すものとする。 [0034] また、位置検出部116は、後述する所定のリセット操作が行われた時点で位置検出(計測)したデータをリセットし、その時点から新たに位置検出(計測)を開始するように構成されている。したがって、位置検出部116による位置検出では、データのリセットが行われた時点の位置を初期位置(移動量0)とし、当該初期位置からの移動量(初期位置に対する相対位置)を計測し続けることで現在の位置を検出する。したがって以降の説明で「位置検出」というときは、この初期位置からの移動量の検出を指すものとする。 [0035] データ送受信部115は、制御部111や記憶部112から入力した各種データを含むデータ信号等をメガネ型端末装置200のデータ送受信部215に向けて送信すると共に、メガネ型端末装置200のデータ送受信部215から送信されたデータを受信する機能を備えている。このデータ送受信部115は、位置検出部116で検出した自身(腕時計型端末装置100)の位置に関するデータをメガネ型端末装置200に向けて送信する機能を有する。また、メガネ型端末装置200がその位置検出部216で検出した当該メガネ型端末装置200の位置に関するデータをメガネ型端末装置200のデータ送受信部215から受信する機能を有する。また、データ送受信部115は、後述するアプリケーションの表示画面やウェブブラウザの表示画面のデータ(後述する相対位置情報による修正が施されたデータ)など、メガネ型端末装置200で画像表示をするために必要なデータをメガネ型端末装置200のデータ送受信部215に向けて送信する機能を有する。 [0036] また、メガネ型端末装置200は、図2に示すように、制御部(制御手段)211、記憶部(記憶手段)212、画像投影部213、データ送受信部215、加速度センサ216a及び角速度センサ216bを含む位置検出部216を備えて構成されている。 [0037] 制御部211は、メガネ型端末装置200を動作させるための各種処理を実行するための部分であり、マイクロプロセッサ、各種周辺回路等によって構成される。この制御部211は、腕時計型端末装置100から送信された画像表示に関するデータに基づいて画像投影部213を制御することで、当該画像投影部213によってメガネ型端末装置200のレンズ201に画像220を投影する機能を備えている。 [0038] 記憶部212は、フラッシュメモリ等の記憶媒体である。なお、記憶部212に記憶されているデータは、必要に応じて制御部211により記憶部212から読み出され、制御部211が実行する様々な処理や制御に利用される。また、制御部211は、記憶部212に新たなデータを記憶したり既に記憶されているデータを更新することもできる。記憶部212は、腕時計型端末装置100から送信された画像に関するデータなどの各種データを一時的に記憶することができる。 [0039] 位置検出部216は、メガネ型端末装置200の位置に関するデータを取得するための構成要素であり、腕時計型端末装置100の位置検出部116と同様、加速度センサ216aと角速度センサ216bを備えて構成されている。これら加速度センサ216aと角速度センサ216bは、一例としてMEMS (Micro Electro Mechanical System) 型のセンサを用いることができる。加速度センサ216aは、地球上の重力加速度とメガネ型端末装置200の加速度とから当該メガネ型端末装置200の位置変化を測定する。(ここでいう位置変化には、角度(向き・傾き)の変化も含まれる。)また、角速度センサ216bは、メガネ型端末装置200の基準角度からの角度変化を測定する。したがって、角速度センサ216bの検出値で加速度センサ216aの検出値に含まれる角度(向き・傾き)の情報を補正することで、メガネ型端末装置200の検出値に含まれる角度(向き・傾き)の情報を補正することで、メガネ型端末装置200の向き・傾きの変化を排除したいわゆる純粋な移動(位置)変化(三次元座標値(x,y,z)の変化)を測定することができる。さらに角速度センサ216bの検出値からメガネ型端末装置200の姿勢(位置情報を含まない(同一位置での)角度)変化(三次元座標値(x,y,z)の変化)を測定することができる。 [0040] したがって、本明細書でメガネ型端末装置200について「位置検出」というときは、これら加速度センサ216a及び角速度センサ216bによるメガネ型端末装置200の位置(変化)及び姿勢(変化)の検出を指すものとする。 [0041] データ送受信部215は、制御部211や記憶部212から入力した各種データを含むデータ信号等を腕時計型端末装置100のデータ送受信部115に向けて送信すると共に、腕時計型端末装置100のデータ送受信部115から送信されたデータを受信する機能を備えている。このデータ送受信部215は、位置検出部216で検出した自身(メガネ型端末装置200)の位置に関するデータを腕時計型端末装置100に向けて送信する機能を有する。また、腕時計型端末装置100がその位置検出部216で検出した当該腕時計型端末装置100の位置に関するデータを腕時計型端末装置100のデータ送受信部115から受信する機能を有する。 [0042] 腕時計型端末装置100のデータ送受信部115とメガネ型端末装置200のデータ送受信部215との間でデータの授受を行うための通信手段としては、各種の既知のデジタル機器用の近距離無線通信規格による通信手段などを用いることが可能である。また、ここでの通信手段は、腕時計型端末装置100のデータ送受信部115とメガネ型端末装置200のデータ送受信部215との間で直接的な通信によってデータの授受を行う通信手段だけではなく、例えば、ラジオ波や携帯通信網などの電波や通信網などを用いて遠距離での通信を行うような通信手段も含まれる。」 オ 「[0044] その結果、腕時計型端末装置100において所定のリセット条件が成立する場合(ステップST1-1でYES)には、腕時計型端末装置100の位置検出部116の検出位置情報(データ)をリセットする(ステップST1-2)一方、所定のリセット条件が成立しない場合(ステップST1-1でNO)には、位置検出部116の検出位置情報(データ)をリセットしない。同様に、メガネ型端末装置200において所定のリセット条件が成立する場合(ステップST2-1でYES)には、メガネ型端末装置200の位置検出部216の検出位置情報(データ)をリセットする(ステップST2-2)一方、所定のリセット条件が成立しない場合(ステップST2-1でNO)には、位置検出部216の検出位置情報(データ)をリセットしない。 [0045] なお、図3のフローチャートでは、腕時計型端末装置100における位置検出部116の検出位置情報のリセットの判断(ステップST1-1)及びリセットの処理(ステップST1-2)と、メガネ型端末装置200における位置検出部216の検出位置情報のリセットの判断(ステップST2-1)及びリセットの処理(ST2-2)とを別個の処理として別のタイミングで行うこともできるように示したが、これら腕時計型端末装置100におけるリセットの判断及びリセットの処理とメガネ型端末装置200におけるリセットの判断及びリセットの処理とは同一の処理として同じタイミングで行うようにすることが望ましい。 [0046] 続けて、腕時計型端末装置100では位置検出が行われる(ステップST1-3)。これは、腕時計型端末装置100が備える位置検出部116(加速度センサ116a、角速度センサ116b)の検出による自身の位置の検出である。なお、先のステップST1-1で位置検出部116による検出位置情報のリセットが行われている場合には、位置検出部116の検出データは、リセットされた値(初期値)に対する積算値となる。すなわち、リセットが行われた位置を初期位置とする位置検出(計測)が行われる。一方、メガネ型端末装置200においても、当該メガネ型端末装置200の位置検出が行われる(ステップST2-3)。これは、メガネ型端末装置200が備える位置検出部216(加速度センサ216a、角速度センサ216b)の検出による自身の位置の検出である。なお、この場合にも、先のステップST2-1で位置検出部216による検出位置情報のリセットが行われている場合には、位置検出部216の検出データは、リセットされた値(初期値)に対する積算値となる。すなわち、リセットが行われた位置を初期位置とする位置検出(計測)が行われる。 [0047] そして、メガネ型端末装置200が検出した位置情報が腕時計型端末装置100に送信され(ステップST2-4)、腕時計型端末装置100で当該位置情報が受信される(ステップST1-4)。その後、腕時計型端末装置100では、先のステップST1-3で取得した当該腕時計型端末装置100の位置情報と、ステップST1-4で取得したメガネ型端末装置200の位置情報とに基づいて、腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置情報を取得する(ステップST1-5)。これにより、腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置が把握される。」 カ 「[0061] なお、本実施形態では、腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置の検出を腕時計型端末装置100の機能として行う場合について説明したが、これ以外にも、腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置の検出(図3のステップST1-5の処理)をメガネ型端末装置200の機能として行うように構成することも可能である。」 キ 「[0083] すなわち、上記実施形態では、腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の二つの端末装置の間で相対位置を検出するシステムを例に説明したが、本発明にかかる相対位置検出システムは、三つ以上の端末装置の相対位置を検出するシステムとして構成することも可能である。したがって、たとえば上記実施形態に示すメガネ型端末装置が複数台あってもよい。その場合は、複数台のメガネ型端末装置それぞれで腕時計型端末装置との相対位置を把握することで、複数台のメガネ型端末装置それぞれで共通の画像を見ることができるように設定することも可能である。」 ク 「[図1] 」 以上ア?クより、特に下線部に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「腕時計型端末装置(第1端末装置)100と、メガネ型端末装置(第2端末装置)200とを備え、 腕時計型端末装置100は、本体部101と該本体部101を腕に装着するためのバンド102とを有する腕時計の形状をしたウェアラブル端末であり、メガネ型端末装置200は、メガネとして機能する一対のレンズ201,201と該一対のレンズ201,201を支持するフレーム部202とからなるメガネ部分210と、該メガネ部分210のフレーム部202に取り付けた本体部205とで構成され、全体がメガネの形状をしたウェアラブル端末であり、 メガネ型端末装置200は、画像220をレンズ201に投影する(表示させる)ようになっており、 腕時計型端末装置100は、制御部(制御手段)111、データ送受信部115、加速度センサ116a及び角速度センサ116bを含む位置検出部116を備え、 制御部111は、腕時計型端末装置100の位置検出部116で検出した位置の情報(データ)とメガネ型端末装置200の位置検出部216で検出した位置の情報(データ)とに基づいて腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置情報を取得(把握)することができ、 位置検出部116は、腕時計型端末装置100の位置に関するデータを取得するための部分であり、加速度センサ116aと角速度センサ116bを備えて構成されており、 角速度センサ116bの検出値で加速度センサ116aの検出値に含まれる角度(向き・傾き)の情報を補正することで、腕時計型端末装置100の向き・傾きの変化を排除したいわゆる純粋な移動(位置)変化(三次元座標値(x,y,z)の変化)を測定することができ、さらに角速度センサ116bの検出値から腕時計型端末装置100の姿勢(位置情報を含まない(同一位置での)角度)変化(三次元座標値(x,y,z)の変化)を測定することができ、 位置検出部116による位置検出では、データのリセットが行われた時点の位置を初期位置(移動量0)とし、当該初期位置からの移動量(初期位置に対する相対位置)を計測し続けることで現在の位置を検出し、 データ送受信部115は、位置検出部116で検出した自身(腕時計型端末装置100)の位置に関するデータをメガネ型端末装置200に向けて送信する機能を有し、また、メガネ型端末装置200がその位置検出部216で検出した当該メガネ型端末装置200の位置に関するデータをメガネ型端末装置200のデータ送受信部215から受信する機能を有し、 メガネ型端末装置200は、制御部(制御手段)211、記憶部(記憶手段)212、画像投影部213、データ送受信部215、加速度センサ216a及び角速度センサ216bを含む位置検出部216を備え、 位置検出部216は、メガネ型端末装置200の位置に関するデータを取得するための構成要素であり、腕時計型端末装置100の位置検出部116と同様、加速度センサ216aと角速度センサ216bを備えて構成されており、 角速度センサ216bの検出値で加速度センサ216aの検出値に含まれる角度(向き・傾き)の情報を補正することで、メガネ型端末装置200の向き・傾きの変化を排除したいわゆる純粋な移動(位置)変化(三次元座標値(x,y,z)の変化)を測定することができ、さらに角速度センサ216bの検出値からメガネ型端末装置200の姿勢(位置情報を含まない(同一位置での)角度)変化(三次元座標値(x,y,z)の変化)を測定することができ、 データ送受信部215は、位置検出部216で検出した自身(メガネ型端末装置200)の位置に関するデータを腕時計型端末装置100に向けて送信する機能を有し、また、腕時計型端末装置100がその位置検出部216で検出した当該腕時計型端末装置100の位置に関するデータを腕時計型端末装置100のデータ送受信部115から受信する機能を有し、 腕時計型端末装置100のデータ送受信部115とメガネ型端末装置200のデータ送受信部215との間でデータの授受を行うための通信手段としては、各種の既知のデジタル機器用の近距離無線通信規格による通信手段などを用いることが可能であり、 位置検出部116の検出データは、リセットされた値(初期値)に対する積算値となり、すなわち、リセットが行われた位置を初期位置とする位置検出(計測)が行われ、位置検出部216の検出データは、リセットされた値(初期値)に対する積算値となり、すなわち、リセットが行われた位置を初期位置とする位置検出(計測)が行われ、 メガネ型端末装置200が検出した位置情報が腕時計型端末装置100に送信され、腕時計型端末装置100で当該位置情報が受信され、腕時計型端末装置100では、当該腕時計型端末装置100の位置情報と、メガネ型端末装置200の位置情報とに基づいて、腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置情報を取得し、 腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置の検出をメガネ型端末装置200の機能として行うように構成することも可能であり、 三つ以上の端末装置の相対位置を検出するシステムとして構成することも可能である、 相対位置検出システムを含む画像表示システム1。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0019】 図1は、実施の形態に係る動作学習支援装置100の構成を示す図である。動作学習支援装置100は、呼吸センサ10、モーションセンサ20、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)30、カメラ40、制御処理部50を備える。 【0020】 動作学習支援装置100について概説する。ユーザ2の頭部に取り付けられたHMD30には、ユーザ2が学習すべき動作を示す映像(動作ガイダンス映像)と、学習すべき呼吸を可視化した映像(呼吸ガイダンス映像)が表示される。ユーザ2は、そのガイダンスにしたがって体を動かし、呼吸を行う。ユーザ2の動作はモーションセンサ20によってキャプチャされ、ユーザ2をモデリングした画像(オブジェクト)が、HMD30にガイダンスともに表示される。ユーザ2は、自らをモデリングしたオブジェクトを、HMD30に表示されるガイダンスと近づけるように体を動かすことにより、動作を学習する。また、呼吸センサ10よってユーザ2の呼吸がキャプチャされ、キャプチャされた呼吸の強弱が可視化されて、HMD30に表示される。ユーザ2は、可視化された呼吸が、呼吸ガイダンス映像と一致するように呼吸を行うことにより、動作と同期した正確な呼吸を学習する仕組みとなっている。」 「【0037】 図1に戻る。モーションセンサ20は、ユーザ2の動きを検出するデバイスである。モーションセンサ20は、複数の磁気センサ22a?22e(磁気センサ22総称する)、磁気発生源(トランスミッタ)24、インタフェースユニット26を含む。磁気発生源24は、磁界を発生する。複数の磁気センサ22は、ユーザ2の可動部分に取り付けられる。磁気センサ22は、磁気発生源24が発生した磁気を受信する受信機である。磁気発生源24は、各磁気センサ22が受信した磁気にもとづいて、各磁気センサ22の位置(座標)、傾き、向きなどを取得する。モーションセンサ20は市販されるものを利用すればよい。磁界を利用したモーションセンサを利用する代わりに、あるいはそれに加えてジャイロセンサなどを利用したモーションセンサを利用することも可能である。 【0038】 たとえば、磁気センサ22は、頭部(22a)、左右の腕(22b、22c)、左右の足(22d、22e)にそれぞれ取り付けられる。なお、磁気センサ22は、ユーザ2が学習すべき動作に関連する箇所にのみ取り付けられればよいため、上半身のみ、あるいは下半身のみに取り付けられてもよいし、さらに多くの部位に取り付けられてもよい。 【0039】 インタフェースユニット26、キャプチャしたユーザ2の動作に対応するデータ(以下、 という)Dmotを制御処理部50へと出力する。 【0040】 カメラ40は、たとえばカメラ40の頭部、好ましくは目の付近に取り付けられ、ユーザの視点の先にある映像を撮影する。カメラ40によって撮影された映像は、視界データDvisとして制御処理部50へと出力される。 【0041】 制御処理部50には、モーションデータDmot、呼吸データDbrt、視界データDvisが入力される。制御処理部50はこれらのデータにもとづき、HMD30に表示すべき映像を生成する。」 「【0043】 図4に示すように、HMD30に表示される映像70は、動作に関する部分(動作表示領域)72と、呼吸に関する部分(呼吸表示領域)74を含む。2つの領域72、74は、互いに分離していてもよいし、オーバーラップして表示されてもよい。 【0044】 まず動作表示領域72について説明する。動作表示領域72には、講師オブジェクト80、動作ゴールマーカ82、動作ユーザマーカ84、背景86が描画される。動作表示領域72の描画には、一般的な3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)技術が利用される。」 「【0049】 動作ユーザマーカ84は、ユーザ2の視線から、ユーザ自身を描画したものである。動作ユーザマーカ84は、ユーザをモデリングした3次元オブジェクトをレンダリングすることにより生成される。動作ユーザマーカ84の腕や足などの所定の箇所の位置(座標)は、モーションセンサ20によって取得されたモーションデータDmotと連動している。たとえばユーザ2が右腕を上げると、磁気センサ22bの位置が高くなり、モーションデータDmotがその動作に応じた値となる。その結果、レンダリングされる動作ユーザマーカ84の右腕も、ユーザ2の現実の動作と連動して持ち上げられる。」 以上より、特に下線部に着目すると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「呼吸センサ10、モーションセンサ20、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)30、カメラ40、制御処理部50を備える動作学習支援装置100であって、 ユーザ2の動作はモーションセンサ20によってキャプチャされ、ユーザ2をモデリングした画像(オブジェクト)が、HMD30にガイダンスともに表示され、 モーションセンサ20は、複数の磁気センサ22a?22e(磁気センサ22総称する)、磁気発生源(トランスミッタ)24、インタフェースユニット26を含み、 磁界を利用したモーションセンサを利用する代わりに、ジャイロセンサなどを利用したモーションセンサを利用することも可能であり、 磁気センサ22は、頭部、左右の腕、左右の足にそれぞれ取り付けられ、 HMD30に表示される映像70は、動作に関する部分(動作表示領域)72を含み、 動作表示領域72には、動作ユーザマーカ84が描画され、 動作ユーザマーカ84は、ユーザ2の視線から、ユーザ自身を描画したものであり、 動作ユーザマーカ84の腕や足などの所定の箇所の位置(座標)は、モーションセンサ20によって取得されたモーションデータDmotと連動している、 動作学習支援装置100。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0059】 図1は、本実施形態に係るウェアラブル端末装置の概略構成を示すブロック図である。センサ部101は、皮膚電位センサ、または少なくとも加速度若しくは角速度を検出する慣性センサ(以下、加速度・ジャイロセンサともいう)から取得した観測データを、デジタル信号へ変換する。表情推定部103は、センサ部101から取得したデジタル信号を解析し、ユーザの表情を推定して、その表情を予め記憶されているアバターデータに適用しアバターのレンダリングを行なう。第1の通信部107は、ネットワークを介して他のウェアラブル端末装置と接続されており、自身のアバターを相手のウェアラブル端末にレンダリングするためのデータと双方向の音声データの送受信を行なう。1対1の通信だけではなく、ネットワーク上のサーバを介して、複数のウェアラブル端末装置間において会議通話を行なうことも可能な構成となっている。表示部105は、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display:HMD)であり、自分自身のアバターや、通信している他のウェアラブル端末装置から受信した通信相手のアバターを表示することができる。HMDは、マスクウェル視を利用するレーザー走査型網膜投影式のシースルー型HMDを用いることがより好ましい。これらの他、ウェアラブル端末装置1は、音声を入出力するマイクロフォンおよびスピーカ、ユーザの各種操作の入力を受け付けるタッチ操作部を備える。」 「【0102】 (第2の実施形態) ユーザの体や手足の動きを認識するために、ユーザをカメラセンサによる撮像と赤外線深度センサによる画像距離を推定(Kinect(登録商標)のセンサと連携)し、ユーザの全身の動きであるモーションキャプチャデータを取得して、体全体をアバター表現することもできる。 【0103】 図7は、モーションキャプチャ装置の概略構成を示したブロック図である。モーションキャプチャ装置31は、RGBカメラセンサ部301を備え、RGBカメラセンサ部301はユーザの全身を撮像する。赤外線深度センサ部303は、ユーザと背景の奥行き距離の差を計測し、ユーザの全身を検出する。モーションキャプチャ機能部305は、これら各センサ部から検出した結果をスケルトン情報に変換し(図8B)、第2の通信部307からBluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの近距離無線通信を利用して、ウェアラブル端末装置1へ送信する(図8A)。ウェアラブル端末装置1の表情推定部は、受信したスケルトン情報および自装置で推定した表情推定結果に基づき、全身アバターと顔表情アバターを再構成し、自装置の表示部に表示する(図8C)。 【0104】 ユーザのボディランゲージを取得するために、カメラセンサと赤外線深度センサ(Kinect(登録商標)のセンサ)の代わりに、加速度・ジャイロ・地磁気センサ(9軸センサ)を用いたウェストベルト、リストバンド、およびアンクレットのウェアラブル装置を装着して、体全体および手足の動きを推定することにより、体全体をアバターで表現することもできる。 【0105】 図9は、ウェアラブルモーションキャプチャ装置の概略構成を示すブロック図である。ウェアラブルモーションキャプチャ装置(51、53)は、ユーザの手首、足首および腰に装着される(図10)。腰位置に装着されるウェアラブルモーションキャプチャ装置51は、第3の通信部511を備え、第3の通信部511は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)等の近距離無線通信を利用して、四肢のセンサ53および頭部のウェアラブル端末装置1から、加速度・ジャイロのセンシング結果を受信する。図示しないが、ウェアラブル端末装置1にも第3の通信部が設けられており、頭部の加速度・ジャイロセンシング結果を、四肢のセンサ53と同様に腰位置のウェアラブルモーションキャプチャ装置51へ送信する。 【0106】 また、腰位置に装着されるウェアラブルモーションキャプチャ装置51は、モーションキャプチャ機能部507を備え、モーションキャプチャ機能部507は、四肢のセンサ等から受信した加速度・ジャイロセンシング結果と、腰位置での加速度・ジャイロセンシング結果を併せて、スケルトン情報へ変換し(図8C)、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)等の近距離無線通信を利用して、第2の通信部521からウェアラブル端末装置1へ送信する。四肢のセンサ53には、加速度・ジャイロセンサ部503、制御部523および第3の通信部513を備えている。 【0107】 なお、スケルトン情報は、人間の関節が曲げ角度の制約等が予めモデル化されており、四肢の手首、足首および頭部の加速度とジャイロの計測結果を、腰位置の加速度や回転の変化を基準に手首足首頭部の加速度や回転により、スケルトンのモデルの制約に則りスケルトン情報に変換する。 【0108】 腰のウェアラブルモーションキャプチャ装置51のモーションキャプチャ機能部は、ウェアラブル端末装置1に設けられていてもよく、四肢のセンサ、腰のセンサ、および自装置の加速度・ジャイロセンシング結果をウェアラブル端末装置1に集約し、モーションキャプチャしてもよい。」 以上より、特に下線部に着目すると、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「ウェアラブル端末装置の表情推定部103は、センサ部101から取得したデジタル信号を解析し、ユーザの表情を推定して、その表情を予め記憶されているアバターデータに適用しアバターのレンダリングを行ない、表示部105は、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display:HMD)であり、自分自身のアバターを表示することができ、 ウェアラブルモーションキャプチャ装置(51、53)は、ユーザの手首、足首および腰に装着され、 ウェアラブルモーションキャプチャ装置51の第3の通信部511は、近距離無線通信を利用して、四肢のセンサ53および頭部のウェアラブル端末装置1から、加速度・ジャイロのセンシング結果を受信し、 ウェアラブルモーションキャプチャ装置51のモーションキャプチャ機能部507は、四肢のセンサ等から受信した加速度・ジャイロセンシング結果と、腰位置での加速度・ジャイロセンシング結果を併せて、スケルトン情報へ変換し、近距離無線通信を利用して、第2の通信部521からウェアラブル端末装置1へ送信し、 ウェアラブル端末装置1の表情推定部は、受信したスケルトン情報および自装置で推定した表情推定結果に基づき、全身アバターと顔表情アバターを再構成し、自装置の表示部に表示すること。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「メガネ型端末装置200」は、頭に装着されるものであることが明らかであり、「画像220」を表示するための「レンズ201」、すなわちディスプレイを備えるものであるから、本願発明1の「ユーザの頭に装着され、仮想環境において前記ユーザの体の動きを仮想化するように構成された、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」とは、「ユーザの頭に装着されるヘッドマウントディスプレイ(HMD)」である点で共通する。 イ 引用発明の「腕時計型端末装置100」は、「本体部101と該本体部101を腕に装着するためのバンド102とを有する腕時計の形状をしたウェアラブル端末」であり、当該「腕時計型端末装置100」が備える「位置検出部116」は、「腕時計型端末装置100の位置に関するデータを取得するための部分であり、加速度センサ116aと角速度センサ116bを備え」、「データのリセットが行われた時点の位置を初期位置(移動量0)とし、当該初期位置からの移動量(初期位置に対する相対位置)を計測し続けることで現在の位置を検出」し、当該「腕時計型端末装置100」が備える「データ送受信部115」は、「位置検出部116で検出した自身(腕時計型端末装置100)の位置に関するデータをメガネ型端末装置200に向けて送信する」ものである。 ここで、当該「腕時計型端末装置100」は、装着者、すなわちユーザの腕の動きにあわせて位置が移動するものであり、その位置がユーザの腕の位置に対応するものであることは明らかであるから、引用発明の「腕時計型端末装置100の位置に関するデータ」は、本願発明1の「ユーザの体の情報」に相当し、引用発明の「位置検出部116」が「初期位置からの移動量(初期位置に対する相対位置)を計測し続けることで現在の位置を検出」することは、本願発明1の「ユーザの前記体の動きにしたがって、前記ユーザの体の情報を決定」することに相当する。 よって、引用発明の「腕時計型端末装置100」と、本願発明1の「ユーザの足に装着され、前記ユーザの前記体の動きにしたがって、前記ユーザの体の情報を決定し、前記決定された体の情報を前記HMDに送信するように構成された複数のセンサ」とは、「ユーザの体に装着され、前記ユーザの前記体の動きにしたがって、前記ユーザの体の情報を決定し、前記決定された体の情報を前記HMDに送信するように構成されたセンサ」である点で共通する。 ウ 引用発明の「腕時計型端末装置100」が備える「位置検出部116」は、当該腕時計型端末装置10の動きに応じて検出される「角速度センサ116bの検出値」と「加速度センサ116aの検出値」に基づいて、「腕時計型端末装置100の向き・傾きの変化を排除したいわゆる純粋な移動(位置)変化(三次元座標値(x,y,z)の変化)を測定」し、「現在の位置を検出」するものであり、センサの検出結果に基づいて座標として表される「現在の位置」の情報を生成するものであるといえるから、本願発明1の「座標を作製するために前記センサの動きを検出する慣性計測装置」に相当する。 そして、引用発明の「腕時計型端末装置100」が備える「データ送受信部115」は、「メガネ型端末装置200」の「データ送受信部215」との間で、「近距離無線通信規格による通信手段など」を用いて「データの授受」を行うものであるから、「腕時計型端末装置100」は、通信接続を介して「メガネ型端末装置200」に接続されているといえ、当該通信接続を「第1の接続」と称することは任意である。 また、引用発明の「腕時計型端末装置100」が備える「データ送受信部115」は、「位置検出部116で検出した自身(腕時計型端末装置100)の位置に関するデータをメガネ型端末装置200に向けて送信する」ものであるから、「腕時計型端末装置100」は、当該「腕時計型端末装置100」の「位置」、すなわち座標に関する情報を、通信接続を介して「メガネ型端末装置200」に送信して「共用」するものであるといえる。 さらに、引用発明の「腕時計型端末装置100」は、「当該腕時計型端末装置100の位置情報と、メガネ型端末装置200の位置情報とに基づいて」、「腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置情報」、すなわち、これらの装置間の相互関係を取得するものであるから、「腕時計型端末装置100」と「メガネ型端末装置200」との間の「相互関係」が知らされるものであるといえる。 以上の点について上記イで検討した点も踏まえると、引用発明の「腕時計型端末装置100」と、本願発明1の「ユーザの足に装着され、前記ユーザの前記体の動きにしたがって、前記ユーザの体の情報を決定し、前記決定された体の情報を前記HMDに送信するように構成された複数のセンサであって、前記複数のセンサの各々が、第1の接続を介して前記HMDに接続され、前記複数のセンサは、第2の接続を介して相互に直接接続され、前記複数のセンサのうち各2つのセンサ間、及び、前記複数のセンサの各々と前記HMDとの間の複数の相互関係が知らされ、前記複数のセンサの各々が、座標を作製するために前記センサの動きを検出する慣性計測装置を含み、前記複数のセンサの各々が、前記複数のセンサの各々の座標を、前記第2の接続を介して相互に、及び、前記第1の接続を介して前記HMDと共用し、前記HMDは、前記決定された体の情報にしたがって、前記ユーザの前記体の動きを仮想化する、複数のセンサ」とは、「ユーザの体に装着され、前記ユーザの前記体の動きにしたがって、前記ユーザの体の情報を決定し、前記決定された体の情報を前記HMDに送信するように構成されたセンサであって、前記センサが、第1の接続を介して前記HMDに接続され、前記センサと前記HMDとの間の相互関係が知らされ、前記センサが、座標を作製するために前記センサの動きを検出する慣性計測装置を含み、前記センサが、前記センサの座標を、前記第1の接続を介して前記HMDと共用する、センサ」である点で共通する。 エ 引用発明の、ユーザの腕の位置に対応する情報である「腕時計型端末装置100の位置に関するデータ」は、これに基づいて、「腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置情報」、すなわち、これらの装置間の相互関係が取得されるものであるから、引用発明と、本願発明1の「前記体の情報は、前記複数のセンサのうち各2つのセンサ間、及び、前記複数のセンサの各々と前記HMDとの間の前記複数の相互関係に関連し」とは、「前記体の情報は、前記センサと前記HMDとの間の前記相互関係に関連し」との構成を備える点で共通する。 オ 引用発明の「相対位置検出システムを含む画像表示システム1」は、「位置検出部116」により「初期位置からの移動量(初期位置に対する相対位置)を計測し続けることで現在の位置を検出し」、検出した位置に基づいて「腕時計型端末装置100とメガネ型端末装置200の相対位置情報を取得(把握)する」ものであり、位置の追跡(トラッキング)を行っているものといえるから、本願発明1の「トラッキングシステム」に相当する。 (2)一致点・相違点 以上から、本願発明1と引用発明とは、以下の点において一致ないし相違する。 [一致点] 「 トラッキングシステムであって、 ユーザの頭に装着されるヘッドマウントディスプレイ(HMD)と、 前記ユーザの体に装着され、前記ユーザの前記体の動きにしたがって、前記ユーザの体の情報を決定し、前記決定された体の情報を前記HMDに送信するように構成されたセンサであって、前記センサが、第1の接続を介して前記HMDに接続され、前記センサと前記HMDとの間の相互関係が知らされ、前記センサが、座標を作製するために前記センサの動きを検出する慣性計測装置を含み、前記センサが、前記センサの座標を、前記第1の接続を介して前記HMDと共用する、センサと、 を備え、 前記体の情報は、前記センサと前記HMDとの間の前記相互関係に関連する、 トラッキングシステム。」 [相違点] <相違点1> 本願発明1の「ヘッドマウントディスプレイ(HMD)」は、「仮想環境において前記ユーザの体の動きを仮想化するように構成され」ており、「前記決定された体の情報にしたがって、前記ユーザの前記体の動きを仮想化する」のに対し、引用発明では、「メガネ型端末装置200」が、「仮想環境において前記ユーザの体の動きを仮想化する」ことは特定されていない点。 <相違点2> 本願発明1の「センサ」は、「ユーザの足に装着され」、「複数」設けられ、それらのセンサは、「第2の接続を介して相互に直接接続され」ており、これに伴い、「前記複数のセンサのうち各2つのセンサ間」の「相互関係」が「知らされ」、当該「相互関係」に「前記体の情報」が「関連」し、「前記複数のセンサの各々の座標」が「前記第2の接続を介して相互に」「共用」されるものであるのに対し、引用発明の「腕時計型端末装置100」は、ユーザの「腕」に装着されるものであって「足」に装着されるものではなく、「複数」設けられて「第2の接続を介して相互に直接接続され」ると特定されるものでもなく、「前記複数のセンサのうち各2つのセンサ間」の「相互関係」が「知らされ」、当該「相互関係」に「前記体の情報」が「関連」し、「前記複数のセンサの各々の座標」が「前記第2の接続を介して相互に」「共用」されるとの特定もない点。 <相違点3> 本願発明1は、「複数のセンサの1つが、前記第2の接続を介した前記共用された座標及び前記第1の接続を介した前記共用された座標にしたがって、前記複数の相互関係のうち前記複数のセンサの1つと別のセンサとの間の相対距離及び相対位置を校正し、前記複数のセンサのうち2つのセンサ間の相対位置及び相対距離が前記複数のセンサのうちの1つのセンサによって知らされる」のに対し、引用発明では、そのような構成は特定されていない点。 (3)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 引用文献1の段落[0083]には、「本発明にかかる相対位置検出システムは、三つ以上の端末装置の相対位置を検出するシステムとして構成することも可能である。」と記載されているから、「端末装置」を複数設けるようにすることは示唆されているといえるものの、引用文献1には、「ユーザの足に装着され」、「第2の接続を介して相互に直接接続され」る「複数」のセンサを設けることは、記載も示唆もされていない。 また、上記第4の2及び3で示した引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項にあるように、ユーザの足に複数のセンサを装着して、ユーザの動きを検出し、ヘッドマウントディスプレイにおいてユーザの動きを可視化することは、本願の優先日前における周知技術であるといえる。しかしながら、引用発明の「相対位置検出システムを含む画像表示システム1」は、メガネ型端末装置のレンズに表示される画像が、常に腕時計型端末装置を追従してその近傍位置に表示され続けるようにするために、腕時計型端末装置とメガネ型端末装置との相対位置の情報を取得するという構成(段落[0025])を有するものであるから、引用発明において、腕時計型端末装置に代えて、又はこれに加えて、ユーザの足に装着される複数のセンサを設ける上記周知技術を採用する起因、動機付けは見いだしがたい。 さらに、引用文献2には、「磁気センサ22」が「左右の足」に取り付けられる構成(段落【0038】)が記載されており、引用文献3には、「四肢のセンサ53」がユーザの「足首」に装着される構成(段落【0105】)が記載されているものの、ユーザの足に装着される複数のセンサが「第2の接続を介して相互に直接接続され」ることは、引用文献2及び3のいずれにも記載されておらず、そのことは、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。 そうすると、仮に、引用発明において上記周知技術を適用したとしても、上記相違点2に係る本願発明1の、「ユーザの足に装着され」、「第2の接続を介して相互に直接接続され」る「複数」のセンサを設けるという構成には至らない。 したがって、本願発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2-7について 本願発明2-7も、上記相違点2に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3 本願発明8-14について 本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、上記相違点2に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものである。 また、本願発明9-14は本願発明8を減縮した発明である。 そうすると、本願発明8-14も、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 原査定について 令和2年12月18日に提出された手続補正書による補正により、本願発明1-14は、「複数のセンサの各々が、第1の接続を介して前記HMDに接続され、前記複数のセンサは、第2の接続を介して相互に直接接続され、前記複数のセンサのうち各2つのセンサ間、及び、前記複数のセンサの各々と前記HMDとの間の複数の相互関係が知らされ」、「前記複数のセンサの各々が、前記複数のセンサの各々の座標を、前記第2の接続を介して相互に、及び、前記第1の接続を介して前記HMDと共用し」という構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-10-26 |
出願番号 | 特願2018-226577(P2018-226577) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 菅原 浩二 |
特許庁審判長 |
稲葉 和生 |
特許庁審判官 |
小田 浩 北川 純次 |
発明の名称 | トラッキングシステム及びそのトラッキング方法 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |