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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1379460
審判番号 不服2020-11990  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-26 
確定日 2021-11-16 
事件の表示 特願2019- 27350「コミュニケーションシステム、コミュニケーションプログラム、およびコミュニケーション処理方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月31日出願公開、特開2020-135357、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成31年2月19日の出願であって、令和元年7月4日付けで拒絶理由が通知され、令和元年9月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和元年9月19日付けで拒絶理由(最後)が通知され、令和2年1月31日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和2年5月21日付けで令和2年1月31日付けの手続補正書が却下されると共に、拒絶査定がされ、これに対し、令和2年8月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、その後、令和3年7月27日付けで当審より拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由」という。)、令和3年9月21日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年5月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献A-Dに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.韓国登録特許第10-1597819号公報
B.特開2004-234594号公報
C.特開2009-290328号公報
D.特開2016-224681号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は、引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2016-224681号公報(原査定の引用文献D)
2.国際公開第2017/201326号(当審において新たに引用した文献)
3.特開2009-290328号公報(原査定の引用文献C)

第4 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、令和3年9月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ユーザの操作入力を受け付ける入力手段と、情報の表示を行う表示手段と、情報の通信を行う通信手段とを有してユーザに操作されるユーザ端末と、
複数台の前記ユーザ端末と通信して前記ユーザ端末間のコミュニケーションを許容するサーバとを備え、
前記サーバは、
互いにコミュニケーションをとる2以上の前記ユーザ端末に対するメッセージの送受信を行うメッセージ管理機能部を備え、
前記ユーザ端末は、
メッセージ送受信の対象となる相手の選択を受け付ける相手選択部と、
選択された相手から受信したメッセージと操作者自身により送信されたメッセージを時系列に表示する送受信メッセージ表示部とを備え、
前記送受信メッセージ表示部は、
左右のうち一方が自分、他方が自分以外の接続相手となっており、
コミュニケーション方法を選択するコミュニケーション方法選択部と、
前記操作者自身が送信したいメッセージのテキストデータとしての入力を受け付けるメッセージ入力部と、
それまで表示されていなかった手書き描画入力部を表示して手書き入力に移行する手書き入力開始指示部を備え、
前記送受信メッセージ表示部において、前記手書き入力開始指示部が選択された場合、前記手書き描画入力部を即時に表示して手書き入力可能な状態に移行し、
前記コミュニケーション方法選択部は、
通話機能部を機能させて相手と無料通話が可能な通話操作ボタンと、
過去に作成した手書き描画画像を選択して送信する手書き描画画像選択ボタンと、
写真撮影または動画撮影をして送信するカメラボタンと、
撮影済みの写真を選択して送信する写真送信ボタンと、
録画済みの動画を選択して送信する動画送信ボタンと、
指定範囲の地図を送信する地図ボタンとを備え、
前記手書き描画入力部は、
前記操作者自身が手書きで描く手書き描画の入力を受け付ける構成であって選択されているペンによるフリーハンドでの描画を受け付けるとともに、
任意のイラストを選択して配置するイラスト追加を受け付けるイラスト追加手段と、
選択または撮影した写真あるいは任意の地図を背景に合成する背景合成手段と、
描画するペンの少なくとも大きさを変更するペン形状変更ボタンと、
描画するペンの色を変更するペン色変更ボタンと、
描画内容を部分的に消去する消しゴムを選択する消しゴムボタンと、
描画操作を1つ前に戻す戻るボタンと、
戻した描画操作を1つ後に進める進むボタンとを備え、
前記フリーハンドでの描画を用いた手書き描画画像が完成して送信手段が選択されると前記送受信メッセージ表示部へ前記手書き描画画像を送信する構成である
コミュニケーションシステム。」

なお、本願発明2-5の概要は以下のとおりである。

本願発明2-3は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明4は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

本願発明5は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1
当審拒絶理由に引用した引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

ア 段落【0012】-【0013】
「【0012】
図1は、コミュニケーションシステム1のシステム構成を示すブロック図である。
コミュニケーションシステム1は、インターネット3に通信可能に接続されたアプリ配信サーバ5、メインサーバ10、通話サーバ30、及びユーザ端末50を有している。
【0013】
メインサーバ10は、制御部11、通信部12、操作入力部13、表示部14、及び記憶部15を備えている。
通話サーバ30は、制御部31、通信部32、操作入力部33、表示部34、及び記憶部35を備えている。
ユーザ端末50は、制御部51、通信部52、操作入力部53、表示部54、音声入力部55、音声出力部56、記憶部57、および撮影部58を備えている。」

イ 段落【0023】-【0024】
「【0023】
連絡先ボタン117が選択されている状態の接続相手選択画面110の上部には、一覧表示部116の接続相手116aを削除等する編集ボタン111、ユーザ端末50に登録されている全ての接続相手を一覧表示して選択可能とする接続相手選択画面110(図示している画面)を表示する接続相手選択タブ112、お気に入りの接続相手を一覧表示するお気に入りタブ113、通常の電話機能における電話帳に登録されている連絡先を一覧表示する連絡先タブ114、複数の接続相手をまとめたグループを作成するグループ作成ボタン115が並べて配置されている。
これらの各要素により、接続相手選択部65(図2参照)は、ユーザによる接続相手の選択を受け付け、選択された接続相手とメッセージによるコミュニケーションを行うメッセージ機能部66へ接続相手を渡す。
【0024】
メッセージ機能部66は、図3(B)のメッセージ表示画面130を表示し、入力されたメッセージの接続相手への送信と、送信した送信メッセージ135および接続相手から受信した受信メッセージ136のタイムライン表示部134への表示を行う。タイムライン表示部134では、左右のうち一方が自分、他方が自分以外の接続相手となっており、送信と受信が一目でわかるように表示される。」

ウ 段落【0028】-【0029】
「【0028】
メッセージ表示画面130の下部には、コミュニケーション方法を選択するコミュニケーション方法選択部137、入力内容を文字かイラストかに切り替えてその入力を受け付ける入力内容切替部138、入力された内容を接続相手に送信する送信ボタン139が設けられている。
【0029】
コミュニケーション方法選択部137が選択されると、図3(D)に示すようにメッセージ表示画面130の下方約半分の領域にコミュニケーション方法一覧150を表示する。このコミュニケーション方法一覧150には、撮影済みの写真を選択して送信する写真送信ボタン151、録画済みの動画を選択して送信する動画送信ボタン152、写真撮影または動画撮影をして送信するカメラボタン153、フリーハンドでのお絵かきをしてできた絵を送信するお絵かきボタン154、接続相手とリアルタイムで双方向にフリーハンドでのお絵かきをするお絵かきトークボタン155、連絡先を送信する連絡先送信ボタンが設けられている。」

エ 段落【0030】
「【0030】
メインサーバ10(図2参照)のメッセージ転送部17は、ユーザ端末50から受信した送信メッセージ135(図3(B)参照)の内容を接続相手のユーザ端末50に転送する。これにより、入力完了したメッセージの双方向でのやり取りを可能にしている。」

オ 段落【0033】
「【0033】
ユーザ端末50のお絵かき機能部69は、お絵かきトーク画面170(図4(B)参照)を表示し、ユーザによるフリーハンドの描画を受け付け、自己のユーザと接続相手がフリーハンドで描画した軌跡をリアルタイムに表示部54(図1参照)に表示する。お絵かきトーク画面170は、画面の大部分を占めてフリーハンドでの描画を受け付けて表示するお絵かき部175を備えている。お絵かきトーク画面170の上部には、お絵かきトークを終了してメッセージ表示画面130に戻る退出ボタン171、接続相手を表示する接続相手表示部172、音声による通話を開始する通話操作ボタン173、お絵かき部175の描画内容を画面上で消去して無地の新しいキャンバスを表示するゴミ箱ボタン174を備えている。お絵かきトーク画面170の下部には、描画するペンの形状(大きさなど)を変更するペン形状変更ボタン176、描画するペンの色を変更するペン色変更ボタン177、描画内容を部分的に消去する消しゴムを選択する消しゴムボタン178、描画内容を記憶部57(図1参照)に記憶または送信(メール送信、短文投稿サイトへの投稿、またはSNSへの投稿など)する描画内容発信部(描画内容保存部)179、写真撮影をしてお絵かき部175にその写真を表示して上から描画できるようにするカメラボタン181、撮影済みの写真を選択しお絵かき部175にその写真を表示して上から描画できるようにする写真選択ボタン182を備えている。」

(2) 引用発明
よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。
「コミュニケーションシステム1は、インターネット3に通信可能に接続されたアプリ配信サーバ5、メインサーバ10、通話サーバ30、及びユーザ端末50を有し、
ユーザ端末50は、制御部51、通信部52、操作入力部53、表示部54、音声入力部55、音声出力部56、記憶部57、および撮影部58を備え、
接続相手選択部65は、ユーザによる接続相手の選択を受け付け、選択された接続相手とメッセージによるコミュニケーションを行うメッセージ機能部66へ接続相手を渡し、
メッセージ機能部66は、メッセージ表示画面130を表示し、入力されたメッセージの接続相手への送信と、送信した送信メッセージ135および接続相手から受信した受信メッセージ136のタイムライン表示部134への表示を行い、タイムライン表示部134では、左右のうち一方が自分、他方が自分以外の接続相手となっており、送信と受信が一目でわかるように表示され、
メッセージ表示画面130の下部には、コミュニケーション方法を選択するコミュニケーション方法選択部137、入力内容を文字かイラストかに切り替えてその入力を受け付ける入力内容切替部138、入力された内容を接続相手に送信する送信ボタン139が設けられ、
コミュニケーション方法選択部137が選択されると、メッセージ表示画面130の下方約半分の領域にコミュニケーション方法一覧150を表示し、このコミュニケーション方法一覧150には、撮影済みの写真を選択して送信する写真送信ボタン151、録画済みの動画を選択して送信する動画送信ボタン152、写真撮影または動画撮影をして送信するカメラボタン153、フリーハンドでのお絵かきをしてできた絵を送信するお絵かきボタン154、接続相手とリアルタイムで双方向にフリーハンドでのお絵かきをするお絵かきトークボタン155、連絡先を送信する連絡先送信ボタンが設けられ、
メインサーバ10のメッセージ転送部17は、ユーザ端末50から受信した送信メッセージ135の内容を接続相手のユーザ端末50に転送し、これにより、入力完了したメッセージの双方向でのやり取りを可能にし、
ユーザ端末50のお絵かき機能部69は、お絵かきトーク画面170を表示し、ユーザによるフリーハンドの描画を受け付け、
お絵かきトーク画面170の上部には、音声による通話を開始する通話操作ボタン173を備え、
お絵かきトーク画面170の下部には、描画するペンの形状(大きさなど)を変更するペン形状変更ボタン176、描画するペンの色を変更するペン色変更ボタン177、描画内容を部分的に消去する消しゴムを選択する消しゴムボタン178、描画内容を記憶部57に記憶または送信(メール送信、短文投稿サイトへの投稿、またはSNSへの投稿など)する描画内容発信部(描画内容保存部)179、写真撮影をしてお絵かき部175にその写真を表示して上から描画できるようにするカメラボタン181、撮影済みの写真を選択しお絵かき部175にその写真を表示して上から描画できるようにする写真選択ボタン182を備えている、
コミュニケーションシステム1。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と、引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「操作入力部53」と「表示部54」と「通信部52」を備える「ユーザ端末50」は、本願発明1の「ユーザの操作入力を受け付ける入力手段」と、「情報の表示を行う表示手段」と、「情報の通信を行う通信手段」とを有する「ユーザに操作されるユーザ端末」に相当する。

イ 引用発明の「メッセージ転送部17」を備える「メインサーバ10」は、本願発明1の「互いにコミュニケーションをとる2以上の前記ユーザ端末に対するメッセージの送受信を行うメッセージ管理機能部」を備える「複数台の前記ユーザ端末と通信して前記ユーザ端末間のコミュニケーションを許容するサーバ」に相当する。

ウ 引用発明の「ユーザ端末50」が、「接続相手選択部65」と、「タイムライン表示部134」を含む「メッセージ表示画面130」とを備えることは、本願発明1の「ユーザ端末」が、「メッセージ送受信の対象となる相手の選択を受け付ける相手選択部」と、「選択された相手から受信したメッセージと操作者自身により送信されたメッセージを時系列に表示する送受信メッセージ表示部」とを備えることに相当する。

エ 引用発明の「メッセージ表示画面130」が、「タイムライン表示部134では、左右のうち一方が自分、他方が自分以外の接続相手となっており、送信と受信が一目でわかるように表示され」ることは、本願発明1の「前記送受信メッセージ表示部」が、「左右のうち一方が自分、他方が自分以外の接続相手となって」いることに相当する。

引用発明の「メッセージ表示画面130」が、「コミュニケーション方法選択部137」を備えることは、本願発明1の「前記送受信メッセージ表示部」が、「コミュニケーション方法を選択するコミュニケーション方法選択部」を備えることに相当する。

ここで、引用発明では、「前記操作者自身が送信したいメッセージのテキストデータとしての入力を受け付けるメッセージ入力部」を備えることが明記されていない。
しかしながら、引用発明の「メッセージ表示画面130」は、「入力内容を文字かイラストかに切り替えてその入力を受け付ける入力内容切替部138」を備えるから、切替後に「文字」入力を受け付けるための「前記操作者自身が送信したいメッセージのテキストデータとしての入力を受け付けるメッセージ入力部」を備えていることは明らかであるといえる。

オ 引用発明の「コミュニケーション方法選択部137」が選択されると表示される「コミュニケーション方法一覧150」が、「お絵かきボタン154」と「カメラボタン153」と「写真送信ボタン151」と「動画送信ボタン152」とを備えることは、
本願発明1の「前記コミュニケーション方法選択部は、
通話機能部を機能させて相手と無料通話が可能な通話操作ボタンと、
過去に作成した手書き描画画像を選択して送信する手書き描画画像選択ボタンと、
写真撮影または動画撮影をして送信するカメラボタンと、
撮影済みの写真を選択して送信する写真送信ボタンと、
録画済みの動画を選択して送信する動画送信ボタンと、
指定範囲の地図を送信する地図ボタンとを備え」ることと、
「前記コミュニケーション方法選択部は、
過去に作成した手書き描画画像を選択して送信する手書き描画画像選択ボタンと、
写真撮影または動画撮影をして送信するカメラボタンと、
撮影済みの写真を選択して送信する写真送信ボタンと、
録画済みの動画を選択して送信する動画送信ボタンと、
を備え」る点で共通するといえる。

カ 引用発明が、「お絵かきトーク画面170の下部」に、「カメラボタン181」及び「写真選択ボタン182」と「ペン形状変更ボタン176」と「ペン色変更ボタン177」と「消しゴムボタン178」とを備え、「描画内容発信部(描画内容保存部)179」により「描画内容を記憶部57に記憶または送信(メール送信、短文投稿サイトへの投稿、またはSNSへの投稿など)する」ことは、
本願発明1の「前記手書き描画入力部は、
前記操作者自身が手書きで描く手書き描画の入力を受け付ける構成であって選択されているペンによるフリーハンドでの描画を受け付けるとともに、
任意のイラストを選択して配置するイラスト追加を受け付けるイラスト追加手段と、
選択または撮影した写真あるいは任意の地図を背景に合成する背景合成手段と、
描画するペンの少なくとも大きさを変更するペン形状変更ボタンと、
描画するペンの色を変更するペン色変更ボタンと、
描画内容を部分的に消去する消しゴムを選択する消しゴムボタンと、
描画操作を1つ前に戻す戻るボタンと、
戻した描画操作を1つ後に進める進むボタンとを備え、
前記フリーハンドでの描画を用いた手書き描画画像が完成して送信手段が選択されると前記送受信メッセージ表示部へ前記手書き描画画像を送信する構成である」ことと、
「前記手書き描画入力部は、
前記操作者自身が手書きで描く手書き描画の入力を受け付ける構成であって選択されているペンによるフリーハンドでの描画を受け付けるとともに、
選択または撮影した写真あるいは任意の地図を背景に合成する背景合成手段と、
描画するペンの少なくとも大きさを変更するペン形状変更ボタンと、
描画するペンの色を変更するペン色変更ボタンと、
描画内容を部分的に消去する消しゴムを選択する消しゴムボタンと、
を備え、
前記フリーハンドでの描画を用いた手書き描画画像が完成して送信手段が選択されると前記送受信メッセージ表示部へ前記手書き描画画像を送信する構成である」点で共通するといえる。

キ 引用発明の「コミュニケーションシステム1」は、本願発明1の「コミュニケーションシステム」に相当する。

ク よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。

[一致点]
「ユーザの操作入力を受け付ける入力手段と、情報の表示を行う表示手段と、情報の通信を行う通信手段とを有してユーザに操作されるユーザ端末と、
複数台の前記ユーザ端末と通信して前記ユーザ端末間のコミュニケーションを許容するサーバとを備え、
前記サーバは、
互いにコミュニケーションをとる2以上の前記ユーザ端末に対するメッセージの送受信を行うメッセージ管理機能部を備え、
前記ユーザ端末は、
メッセージ送受信の対象となる相手の選択を受け付ける相手選択部と、
選択された相手から受信したメッセージと操作者自身により送信されたメッセージを時系列に表示する送受信メッセージ表示部とを備え、
前記送受信メッセージ表示部は、
左右のうち一方が自分、他方が自分以外の接続相手となっており、
コミュニケーション方法を選択するコミュニケーション方法選択部と、
前記操作者自身が送信したいメッセージのテキストデータとしての入力を受け付けるメッセージ入力部と、
を備え、
前記コミュニケーション方法選択部は、
過去に作成した手書き描画画像を選択して送信する手書き描画画像選択ボタンと、
写真撮影または動画撮影をして送信するカメラボタンと、
撮影済みの写真を選択して送信する写真送信ボタンと、
録画済みの動画を選択して送信する動画送信ボタンと、
とを備え、
前記手書き描画入力部は、
前記操作者自身が手書きで描く手書き描画の入力を受け付ける構成であって選択されているペンによるフリーハンドでの描画を受け付けるとともに、
選択または撮影した写真あるいは任意の地図を背景に合成する背景合成手段と、
描画するペンの少なくとも大きさを変更するペン形状変更ボタンと、
描画するペンの色を変更するペン色変更ボタンと、
描画内容を部分的に消去する消しゴムを選択する消しゴムボタンと、
とを備え、
前記フリーハンドでの描画を用いた手書き描画画像が完成して送信手段が選択されると前記送受信メッセージ表示部へ前記手書き描画画像を送信する構成である
コミュニケーションシステム。」

[相違点1]
本願発明1の「前記送受信メッセージ表示部」は、さらに、「それまで表示されていなかった手書き描画入力部を表示して手書き入力に移行する手書き入力開始指示部を備え、前記送受信メッセージ表示部において、前記手書き入力開始指示部が選択された場合、前記手書き描画入力部を即時に表示して手書き入力可能な状態に移行」するのに対して、引用発明において、「メッセージ表示画面130」には、「手書き入力開始指示部」を備えることが特定されていない点

[相違点2]
本願発明1の「前記コミュニケーション方法選択部」は、さらに、「通話機能部を機能させて相手と無料通話が可能な通話操作ボタン」と、「指定範囲の地図を送信する地図ボタン」とを備えるのに対して、引用発明において、「メッセージ表示画面130」下部の「コミュニケーション方法選択部137」が選択されたときに表示される「コミュニケーション方法一覧150」には、「通話操作ボタン」と、「地図ボタン」とを備えることが特定されていない点。

[相違点3]
本願発明1の「前記手書き描画入力部」は、さらに、「任意のイラストを選択して配置するイラスト追加を受け付けるイラスト追加手段」と、「描画操作を1つ前に戻す戻るボタン」と、「戻した描画操作を1つ後に進める進むボタン」とを備えるのに対して、引用発明の「お絵かきトーク画面170の下部」には、「イラスト追加手段」と「戻るボタン」と「進むボタン」とを備えることが特定されていない点。

(2) 当審の判断
本願発明1の上記[相違点1]に係る、「前記送受信メッセージ表示部」は、さらに、「それまで表示されていなかった手書き描画入力部を表示して手書き入力に移行する手書き入力開始指示部を備え、前記送受信メッセージ表示部において、前記手書き入力開始指示部が選択された場合、前記手書き描画入力部を即時に表示して手書き入力可能な状態に移行」する構成は、上記引用文献1-3には記載されておらず、周知技術であるともいえない。

なお、引用発明は、手書き入力の開始に関して、「メッセージ表示画面130」で「コミュニケーション方法選択部137」が選択されると表示される「接続相手とリアルタイムで双方向にフリーハンドでのお絵かきをするお絵かきトークボタン155」を備えている。
しかしながら、引用発明の「お絵かきトークボタン155」とは、「接続相手とリアルタイムで双方向にフリーハンドでのお絵かきをする」という異なる別のモードを開始するためのボタンであって、本願発明1の「手書き入力開始指示部」のように、選択された相手から受信したメッセージと操作者自身が送信したメッセージを時系列に表示するモードのままで、手書き入力可能な状態に移行するためのボタンとは異なるボタンである。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の上記[相違点1]に係る、「前記送受信メッセージ表示部」は、さらに、「それまで表示されていなかった手書き描画入力部を表示して手書き入力に移行する手書き入力開始指示部を備え、前記送受信メッセージ表示部において、前記手書き入力開始指示部が選択された場合、前記手書き描画入力部を即時に表示して手書き入力可能な状態に移行」する構成と、(実質的に)同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和3年9月21日付けの補正により、補正後の請求項1-5は、本願発明1の上記[相違点1]に係る、「前記送受信メッセージ表示部」は、さらに、「それまで表示されていなかった手書き描画入力部を表示して手書き入力に移行する手書き入力開始指示部を備え、前記送受信メッセージ表示部において、前記手書き入力開始指示部が選択された場合、前記手書き描画入力部を即時に表示して手書き入力可能な状態に移行」するという技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A-Dには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1-5は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Dに基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-10-26 
出願番号 特願2019-27350(P2019-27350)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 義晴  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 富澤 哲生
稲葉 和生
発明の名称 コミュニケーションシステム、コミュニケーションプログラム、およびコミュニケーション処理方法  
代理人 西原 広徳  

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