• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1379523
審判番号 不服2021-717  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-19 
確定日 2021-11-01 
事件の表示 特願2018-544449「ログ分析方法、システムおよびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月19日国際公開、WO2018/069950〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2016年10月13日を国際出願日とする特許出願であって,平成31年2月25日に手続補正書が提出され,令和2年4月14日付けで拒絶理由が通知され,同年6月10日に意見書が提出されたが,同年11月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,令和3年1月19日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年11月19日付け拒絶査定)の概要は,請求項1-4,9,10に係る発明は,引用文献1,2に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,また,請求項5-8に係る発明は,引用文献1-3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。
引用文献等一覧
1.特開2015-106334号公報
2.国際公開第2016/132717号
3.国際公開第2015/146086号

第3 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は,平成31年2月25日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下のとおりの発明である。なお,符号「A」?「D」は,当審において付与したものであり,それぞれの構成を,「構成A」などという。
「【請求項1】
A 複数のログを含む分析対象ログを入力する工程と,
B 事象の前後の所定の時間範囲における前記複数のログ間の時系列の相関関係の有無を判定する工程と,
C 前記判定の結果に基づいて,前記事象を検出する工程と,
D を含むログ分析方法。」

また,本願発明2-8は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明9は,本願発明1に対応するプログラムの発明であり,本願発明10は,本願発明1に対応するシステムの発明である。

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2015-106334号公報)には,「障害予兆検知方法,情報処理装置およびプログラム」(発明の名称)として図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与。「・・・」は省略部分を示す。)。

ア「【0001】
本発明は障害予兆検知方法,情報処理装置およびプログラムに関する。
・・・
【0006】
障害の予兆を検知する方法としては,過去に障害が発生したときに現れたメッセージのパターンを学習しておき,学習したメッセージのパターンが収集したメッセージの集合の中に現れたときに,障害の予兆があると判定する方法が考えられる。学習するメッセージのパターンは,例えば,障害発生から所定時間前までに現れる確率が高いメッセージの種類の組み合わせとする。しかし,この検知方法には次のような問題がある。
【0007】
監視対象の情報処理システムから収集されるメッセージの中には,障害との関連性が低く継続的に発生するメッセージがノイズとして含まれていることがある。
・・・
【0009】
1つの側面では,本発明は,収集するメッセージに含まれるノイズが変化しても既存の学習結果を活用することができる障害予兆検知方法,情報処理装置およびプログラムを提供することを目的とする。」

イ「【0015】
以下,本実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は,第1の実施の形態の情報処理装置を示す図である。
【0016】
第1の実施の形態の情報処理装置10は,監視対象のシステムから複数の種類のメッセージを収集し,収集したメッセージに基づいてシステムの障害の予兆を検知する。監視対象のシステムは,1または2以上の電子機器を有し,サーバ装置やストレージや通信装置などの複数の種類の電子機器を有していてもよい。情報処理装置10が取得するメッセージの集合には,2以上または2種類以上の電子機器からのメッセージが混在していてもよい。
・・・
【0018】
記憶部11は,メッセージの集合13a,13bおよび障害情報14を記憶する。
メッセージの集合13aは,ある時点において監視対象のシステムから収集されたメッセージの集合である。メッセージの集合13bは,メッセージの集合13aより後の時点において監視対象のシステムから収集されたメッセージの集合である。メッセージの集合13aは,メッセージの集合13bが取得された時点で記憶部11から削除されていてもよいし,削除されていなくてもよい。後者の場合,メッセージの集合13bが取得された時点で,メッセージの集合13aはログ情報と見ることができる。
【0019】
メッセージの集合13a,13bの中には,障害発生を示すメッセージではないが,電子機器の好ましくない動作の発生を示すメッセージが含まれる。電子機器の好ましくない動作としては,例えば,HDDへのアクセス失敗,キャッシュのオーバーフロー,通信遅延,インタフェースの初期化失敗などが挙げられる。同時期に特定の2種類以上のメッセージが発生した場合に,その後に高い確率で障害が発生することがある。
・・・
【0021】
障害情報14は,監視対象のシステムで過去に発生した障害を示し,例えば,障害発生の時刻を示す情報を含む。システムの障害としては,例えば,HDDの故障や通信インタフェースの故障などのハードウェア障害が挙げられる。障害情報14には,少なくとも,メッセージの集合13aが取得された時期に発生した障害についての情報が含まれる。障害情報14は,ユーザが情報処理装置10に入力してもよいし,監視対象のシステムから収集された障害発生を示すメッセージに基づいて情報処理装置10が生成してもよい。
【0022】
演算部12は,メッセージの集合13aおよび障害情報14から,障害が発生するときに現れるメッセージのパターン15aを学習する。メッセージのパターン15aは,例えば,過去に障害発生から所定時間前までに現れた2種類以上のメッセージの組み合わせを示す。また,演算部12は,メッセージの集合13bからメッセージのパターン15bを生成する。メッセージのパターン15bは,例えば,同時期に現れた2種類以上のメッセージの組み合わせを示す。そして,演算部12は,メッセージのパターン15aとメッセージのパターン15bとを比較することで,障害の予兆を検知する。例えば,演算部12は,メッセージのパターン15bがメッセージのパターン15aと一致するとき,監視対象のシステムに障害の予兆があると判断してユーザに警告する。」

ウ「【0027】
[第2の実施の形態]
図2は,第2の実施の形態の情報処理システムを示す図である。
第2の実施の形態の情報処理システムは,業務で使用される各種の電子機器を集中的に管理する。この情報処理システムは,業務サーバ21,ストレージ22,通信装置23,クライアント24,管理サーバ25および監視サーバ100を有する。情報処理システムに含まれるこれらの装置は,ネットワーク20に接続されている。なお,監視サーバ100は,第1の実施の形態の情報処理装置10の一例である。業務サーバ21,ストレージ22および通信装置23の集合は,監視対象のシステムの一例である。
・・・
【0033】
監視サーバ100は,システムに障害または障害の予兆がないか監視するサーバコンピュータである。監視サーバ100は,監視対象のシステムに属する各電子機器から継続的にメッセージを収集する。メッセージの収集には,SNMP(Simple Network Management Protocol)を含む任意のプロトコルを用いることができる。収集されるメッセージの集合には,HDDの故障や通信ポートの故障などの障害を示すメッセージが含まれ得る。また,収集されるメッセージの集合には,HDDへのアクセス失敗,キャッシュのオーバーフロー,通信遅延,インタフェースの初期化失敗など,障害ではないが好ましくない動作を示す注意喚起のメッセージが含まれ得る。
・・・
【0035】
障害の予兆を検知するために,監視サーバ100は,過去に収集されたメッセージの集合に基づいて,障害発生の所定時間前までに現れる確率の高いメッセージの種類の組み合わせを学習する。監視サーバ100は,現在収集されたメッセージと学習結果とをリアルタイムに比較し,学習結果に合致するメッセージの系列が現れたとき障害の予兆があると判断する。以下,監視サーバ100が行う障害予兆検知を中心に説明する。
【0036】
図3は,メッセージパターンの学習例を示す図である。
第2の実施の形態では,同時期に現れる2種類以上のメッセージの組み合わせをメッセージのパターンとして扱う。監視サーバ100は,収集されたメッセージの集合を用いて,障害発生と相関の高いメッセージのパターンを学習する。これにより,監視サーバ100は,人手では発見が容易でないメッセージと障害との関係を発見することができる。
【0037】
監視サーバ100は,各メッセージに受信時刻の情報を付与することで,収集したメッセージを時系列に管理する。図3に示すように,監視サーバ100は,一定の時間幅(例えば,5分間)のスライディングウィンドウを時間軸に沿ってシフトさせる。スライディングウィンドウに含まれるメッセージの種類の組み合わせが,同時期に現れたメッセージのパターンとして抽出される。このとき,メッセージのパターンにおいては,同じ種類のメッセージの数やメッセージの出現順序は考慮されない。すなわち,メッセージのパターンでは,同時期に現れたメッセージの種類が順不動で列挙されることになる。
・・・
【0039】
このようなメッセージのパターンは,学習時に抽出されると共に,予兆検知時に現在収集したメッセージの集合からリアルタイムに抽出される。学習時には,監視サーバ100は,障害発生から所定時間前までに現れた回数をパターン毎にカウントすることで,パターンと障害発生の相関を学習する。あるパターンが障害発生から所定時間前までに現れるとは,例えば,スライディングウィンドウ内で末尾にある(最も新しい)メッセージの受信時刻またはスライディングウィンドウの末尾の時刻と,障害発生時刻との差が閾値以下であることである。予兆検知時には,監視サーバ100は,障害発生との相関が高いパターンとリアルタイムに抽出するパターンとを比較して,両者の一致不一致を判定する。」

エ「【図1】


オ「【図3】



(2)引用発明の認定
ア 上記(1)ア,イ,エの記載によれば,引用文献1には,「障害予兆検知方法」が記載されており,当該障害予兆検知方法においては,「監視対象のシステムから複数の種類のメッセージを収集し,収集したメッセージに基づいてシステムの障害の予兆を検知すること,メッセージの集合および障害情報から,障害が発生するときに現れるメッセージのパターンを学習すること,当該メッセージのパターンは,過去に障害発生から所定時間前までに現れた2種類以上のメッセージの組み合わせであること,そして,学習したメッセージのパターンと,後の時点のメッセージのパターンとを比較することで,障害の予兆を検知すること」が記載されている。

イ 上記(1)ウ,オの記載によれば,引用文献1には,「システムに障害または障害の予兆がないか監視するサーバコンピュータである監視サーバが,監視対象のシステムに属する各電子機器から継続的にメッセージを収集し,収集されたメッセージに基づいて,障害または障害の予兆を検知すること」が記載されており,当該監視サーバは,「学習時には,障害発生と相関の高いメッセージのパターンを学習すること,そして,予兆検知時には,障害発生との相関が高いパターンとリアルタイムに抽出するパターンとを比較して,両者の一致不一致を判定すること」が記載されている。

ウ 以上より,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお,各構成の符号は,説明のために当審において付与したものである(以下,符号を付した構成をそれぞれ,「構成a」ないし「構成d」という。)。

(引用発明)
a 監視サーバが複数の種類のメッセージの集合を継続的に収集することと,
b 収集した複数の種類のメッセージの集合と,障害発生と相関の高いメッセージのパターンとを比較して,一致不一致を判定することと,
c 前記比較の結果に基づいて障害の予兆を検知することと,
d を含む障害予兆検知方法。

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された,国際公開第2016/132717号(以下,「引用文献2」という。)には,「ログ分析システム,ログ分析方法およびプログラム記録媒体」(発明の名称)として,図面とともに以下の記載がなされている(下線は当審で付与。「・・・
」は省略部分を示す。)。

ア「[0001] 本発明は,情報処理システムが出力するログを分析するログ分析システム,ログ分析方法およびプログラム記録媒体に関する。
・・・
[0019] 本発明の目的は,情報処理システムで発生した障害を高い精度で特定・解析できるログ分析システムを提供することである。」

イ「[0027] (第1の実施形態)
まず,本発明の第1の実施形態に係るログ分析システム11について,図面を用いて説明する。
[0028] [構成]
図1は,本実施形態に係るログ分析システム11の構成を示すブロック図である。図1のように,ログ分析システム11は,ログ読み込み部21,パターン記憶部31,条件記憶部35,正常分析部51,異常分析部52,異常パターン生成部71および結果出力部91を備える。
[0029] ログ分析システム11は,図示しない情報処理システムから出力されたログファイル101(以下,単にログファイルと記載)を取得し,ログファイルに含まれるログメッセージ(ログレコードとも呼ぶ)を分析する。
[0030] 〔ログファイル〕
ログファイルは,少なくとも一つのログメッセージによって構成される。通常,ログファイルは,分析対象であるアプリケーションやシステムにおけるイベントの発生に伴って出力される。ログファイルは,アプリケーションやシステムで発生したイベントと,当該イベントが発生した時刻とが関連付けられた情報であるログメッセージが時系列順に整列された情報を含む。図1には,ログファイルの一例として,syslogやlog4j,Event logをあげている。
[0031] ログファイルは,ログメッセージまたはログメッセージの集合である。これ以降,複数のログメッセージのことをログメッセージ群と呼ぶこともある。また,ログファイルのことを単にログと呼ぶこともある。
・・・
[0035] 〔パターン記憶部〕
パターン記憶部31は,正常パターン41(以下,正常パターン),異常パターン42(以下,異常パターン)および参考ログ43(以下,参考ログ)を記憶する記憶手段である。
・・・
[0043] 参考ログ43(参考情報とも呼ぶ)は,異常ログが発生したときに,その異常ログに付随して発生する構成パターンに合致している正常パターンの情報である。参考ログは,異常ログ発生時に,その異常ログの発生時刻を基準とする所定の時間内に発生した構成パターンに合致する正常パターンの情報である。すなわち,参考ログは,異常ログの発生時刻よりも所定の時間分前の時刻から,異常ログの発生時刻よりも所定の時間分後の時刻までに発生した構成パターンに合致する正常パターンの情報である。なお,異常ログ発生時刻前の所定の時間と,異常ログ発生時刻後の所定の時間とは,異なっていても構わない。また,参考ログは,異常ログの発生時刻を含む第2の時間内に発生した構成パターンに合致する正常パターンの情報であると表現することもできる。
[0044] 参考ログは,異常ログに対応する異常パターンIDと,その異常パターンIDに対応する正常パターンIDの組み合わせで表現される。また,パターン記憶部31に記録された参考ログを第1の参考ログと呼び,異常ログ発生時に正常分析部51によって抽出された参考ログを第2の参考ログと呼ぶ。
・・・
[0046] パターン記憶部31は,正常分析部51および異常分析部52によって参照される。また,パターン記憶部31は,異常パターン生成部71が生成した新たな異常パターンと,その新たな異常パターンに対応する参考ログを記憶する。」

ウ「[0057] [動作]
次に,図6のフローチャートに沿って,本実施形態に係るログ分析システム11の動作について説明する。なお,以下の説明においては,ログ分析システム11を構成する構成要素間のデータの送受信については省略している場合がある。
[0058] 図6において,まず,ログ読み込み部21は,入力されたログファイルを読み込む(図6:ステップS1)。
[0059] 次に,正常分析部51は,読み込まれたログファイルを分析する(図6:ステップS2)。例えば,正常分析部51は,読み込まれたログファイルに含まれる各ログメッセージのログIDの組み合わせまたは時系列順序と,パターン記憶部31に記録された正常パターンとを比較する。
・・・
[0063] 一方,入力されたログファイルに含まれるログメッセージ群の構成パターンが正常パターンと一致しない場合(図6:ステップS3でNo),正常分析部51は,そのログメッセージ群を異常ログとして異常分析部52へ送信する。すなわち,正常分析部51は,規定時間内において正常パターンに含まれる全ての要素を充足しなかったログを異常ログとして異常分析部52へ送信する(ステップS4へ進む)。
・・・
[0070] 異常ログを異常分析部52へ送信する場合,正常分析部51は,当該異常ログの発生時刻から別途定義される参考分析時間内に検出されたログに合致する正常パターンの情報を参考ログとして異常分析部52へ送信する。なお,参考分析時間とは,参考ログを決定するために定義される時間である。例えば,参考分析時間は,異常ログ発生時刻の前後に設定される。
[0071] 図10に,参考ログを説明するための概念図を示す。例えば,参考分析時間が「1分」であり,異常パターンID「1」が付与されることになる異常ログが異常ログ発生時刻「2014/11/30 13:51:49」に発生したとする。すなわち,異常ログ発生時刻の1分前の「2014/11/30 13:50:49」から,2分が経過した「2014/11/30 13:52:49」までの間が第2の時間に相当する。このとき,第2の時間内に検出されたログメッセージ群の構成パターンに合致する正常パターンを当該異常ログに関する参考ログと決定する。図10の例では,「2014/11/30 13:50:49」から,「2014/11/30 13:51:49」までの第2の時間内に発生したログのうち,パターンIDが「10」,「11」,「12」の正常パターンが参考ログに相当する。
・・・
[0075] 次に,異常分析部52は,正常分析部51から受信した異常ログを分析する(図6:ステップS4)。具体的には,異常分析部52が,正常分析部51から受信した異常ログの構成パターンと,パターン記憶部31に記録された異常パターンとを比較する。
・・・
[0079] 一方,異常ログの構成パターンと異常パターンとが合致しない場合(図6:ステップS5でNo),異常分析部52は,その異常ログと,その異常ログに対応する第2の参考ログとを異常パターン生成部71へ送信する(図6:ステップS7へ進む)。同時に,異常分析部52は,結果出力部91へ異常ログを送信する。このとき,異常分析部52は,異常ログとともに,その異常ログに対応する参考ログを結果出力部91へ送信してもよい。
[0080] 次に,異常パターン生成部71は,条件記憶部35に記録された判定条件に基づいて,異常分析部52から受信した異常ログから新たな異常パターンを生成する(図6:ステップS7)。なお,ステップS7の処理については,後で詳細に説明する。
[0081] 次に,パターン記憶部31は,新たな異常パターンと,その新たな異常パターンに対応する参考ログとをパターン記憶部31へ登録する(図6:ステップS8)。
[0082] そして,結果出力部91は,正常分析部51および異常分析部52から受信した結果を出力する(図6:ステップS9)。なお,結果出力部91は,正常分析部51および異常分析部52から受信した結果を個別に出力してもよいし,併せて出力してもよい。」

エ「[図1]



オ「【図6】



カ「【図10】



(2)引用文献2に記載された技術事項
上記(1)ア?カによれば,引用文献2には,「情報処理システムにおいて発生する障害を,ログメッセージの分析により高い精度で特定・解析するログ分析システム」において,その分析及び登録を行うログの範囲を異常ログ発生の1分前から発生の1分後までとすること,すなわち,「異常ログの発生という事象の前後の所定時間範囲を分析や登録の対象とすること」との技術事項が記載されている。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 本願発明1の構成Aと引用発明の構成aについて
引用発明の「複数の種類のメッセージの集合」は,本願発明1の「複数のログを含む分析対象ログ」に相当し,引用発明において,当該メッセージの集合を監視サーバが収集することは,監視サーバに対して当該メッセージの集合を入力する工程とみることができるから,引用発明の構成aは本願発明1の構成Aと一致する。

イ 本願発明1の構成Bと引用発明の構成bについて
引用発明の「障害発生」は,本願発明1でいう「事象」の1つということができ,引用発明の「障害発生と相関の高いメッセージのパターン」は,本願発明1の「複数のログ間の時系列の相関関係」にあたるといえる。そして,引用発明において,「収集した複数の種類のメッセージの集合と,障害発生と相関の高いメッセージのパターンとを比較して,一致不一致を判定する」ことは,本願発明1の「複数のログ間の時系列の相関関係」の「有無を判定する」ことに相当するから,本願発明1の構成Bと引用発明の構成bとは,「前記複数のログ間の時系列の相関関係の有無を判定する工程」である点で一致する。
一方,本願発明1においては,有無の判定の対象とする「複数のログ間の時系列の相関関係」が「事象前後の所定の時間範囲」のものであるのに対し,引用発明では,比較の対象とする「障害発生と相関の高いメッセージのパターン」を,障害発生の「前後の所定の時間範囲」のものとしていない点で相違する。

ウ 本願発明1の構成Cと引用発明の構成cについて
引用発明の「比較の結果」は,本願発明1の「判定の結果」に相当するから,引用発明の構成cは,本願発明1の構成Cと一致する。

エ 本願発明1の構成Dと引用発明の構成dについて
引用発明は,障害の予兆の検知のために「メッセージ」,すなわち,本願でいう「ログ」を分析するものであるから,引用発明の構成dは,本願発明1の構成Dの「ログ分析方法」と一致するといえる。

エ 一致点,相違点
したがって,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
複数のログを含む分析対象ログを入力する工程と,
前記複数のログ間の時系列の相関関係の有無を判定する工程と,
前記判定の結果に基づいて,前記事象を検出する工程と,
を含むログ分析方法。
(相違点)
本願発明1は,有無の判定の対象とする「複数のログ間の時系列の相関関係」が「事象前後の所定の時間範囲」のものであるのに対し,引用発明では,比較の対象とする「障害発生と相関の高いメッセージのパターン」を,障害発生の「前後の所定の時間範囲」のものとしていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点に係る構成について
上記第4の2(2)のとおり,引用文献2において,情報処理システムにおいて発生する障害を,ログメッセージの分析により高い精度で特定・解析するログ分析システムにおいて,その分析及び登録を行うログの範囲を異常ログの発生という事象の前後の所定時間範囲を分析や登録の対象とすることが記載されているように,当該技術分野において,事象の前後の所定時間の範囲を障害の分析を行う対象とすることは,本願発明の出願時において,当業者によって普通に行われていたことといえる。
そして,引用発明1において,学習及び比較の対象とされた「メッセージのパターン」は,上記第4の1(1)アのとおり,「障害発生から所定時間前までに現れた」ものであるが,これに加えて,学習及び比較の対象とする「メッセージのパターン」の範囲を,障害発生後の所定時間範囲まで拡張することで,予兆の検出に加えて,発生した障害について高い精度で特定や分析を行うようにすることは,当業者が必要に応じて適宜採用し得る程度のことに過ぎない。
そうすると,引用発明1において,上記相違点に係る本願発明1の構成を得ることに,当業者が困難を要するものとはいえない。
また,本願発明1に関する作用,効果も,引用文献1の記載ならびに引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が予測できる範囲のものである。

イ 請求人の主張について
請求人は,引用文献1に記載された発明について,「障害の『予兆』という未来の事象を示すものとしての変化を検知することを根幹的な目的としている」として,「『予兆』の検知を根幹的な目的とする引用文献1に記載された発明において,引用文献2に記載された事後的な分析手法を組み合わせて,『すでに発生した事象についても検出可能と』したのでは,引用文献1に記載された発明が,『予兆』の検知というその根幹的な目的に反するものとなり」「事後的なパターンの登録に関する引用文献2に記載された発明は,『主引用発明に適用されると,主引用発明がその目的に反するものとなるような副引用発明』であるから,副引用発明を主引用発明に適用することを阻害する事情がある」旨主張するので,以下検討する。
引用文献1に記載された発明において,「障害発生から所定時間前まで」に現れたメッセージのパターンを学習及び比較の対象とすることに代えて,例えば,「障害発生前後の所定範囲内」に現れたメッセージのパターンを学習及び比較の対象としても,障害の発生前に現れたメッセージのパターンについての学習及び比較は依然として行われるのであるから,障害の発生前に検出し得る予兆に関しては,障害の発生前に検出できることに何ら変わりがないことは,当業者にとって明らかであって,本件出願明細書の【0032】において,本件出願に係る発明の実施例1が「事象E1が発生するよりも前に,予め学習された相関パターンの存在に基づいて事象の予兆を検出することができる」旨の記載があることも,それを裏付けているといえる。
そうすると,引用文献2に記載された技術事項に基づいて,引用文献1に記載された発明において,障害発生前後のメッセージのパターンを学習及び比較の対象として,発生した障害についての特定や分析を可能としたとしても,引用文献1に記載された発明が有する障害の予兆を検知するという機能を直ちに損なうことはなく,また,引用文献1に記載された発明の目的であるとして,上記第4の1(1)アに記載された「収集するメッセージに含まれるノイズが変化しても既存の学習結果を活用する」ことに反するものにもならないのは,当業者に明らかであるといえる。
したがって,引用文献1に記載された発明に対して,引用文献2に記載された技術事項を組み合わせることに,請求人の主張のごとき阻害要因の存在は認められないから,請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2021-08-20 
結審通知日 2021-08-24 
審決日 2021-09-16 
出願番号 特願2018-544449(P2018-544449)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多胡 滋  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 篠原 功一
山澤 宏
発明の名称 ログ分析方法、システムおよびプログラム  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ