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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1379551 |
審判番号 | 不服2020-14969 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-10-28 |
確定日 | 2021-11-04 |
事件の表示 | 特願2016- 32879「メタルマスクによるスクリーン印刷用の導体ペーストおよびその利用」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-152520〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年2月24日の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。 令和 元年11月28日付け:拒絶理由の通知 令和 2年 3月23日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年 4月23日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知 令和 2年 6月19日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年 8月14日付け:令和2年6月19日付け手続補正書でした 手続補正についての補正却下の決定、拒絶 査定 令和 2年10月28日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 3年 4月23日付け:拒絶理由の通知 令和 3年 6月22日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和3年6月22日付け手続補正書でした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 太陽電池素子の電極を形成するための、メタルマスクを用いるスクリーン印刷用の導体ペーストであって、 導電性粉末と、 ガラスフリットと、 有機バインダと、 分散媒と、 シリコーン樹脂と、を含み、 ここで前記シリコーン樹脂は、25℃、1気圧の条件下において液状のものであり、 導体ペースト全体を100質量%としたときに、有機バインダが1.5質量%以下であり、 導体ペーストの25℃、20rpmにおけるB型回転粘度計を用いて測定した粘度が350Pa・s以上かつ450Pa・s以下であることを特徴とする、導体ペースト(ただし、前記シリコーン樹脂は、BYK330(ビーワイケイ・ケミー・ジャパン社製)を除く)。」 第3 拒絶の理由 令和3年4月23日付けで当審が通知した請求項1についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 [理由](進歩性)本件出願の請求項1に係る発明は、その出願日前に日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開2010-87251号公報 引用文献2.特開2010-199034号公報 引用文献3.特開2015-112832号公報 引用文献4.特開2011-204755号公報 引用文献5.特開2013-146958号公報 第4 引用文献について 1 引用文献1の記載 (1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。 「【請求項1】 バインダー樹脂、溶剤、ガラスフリット、および、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を含有する太陽電池用導電性ペーストであって、Si系有機化合物を含有することを特徴とする太陽電池用導電性ペースト。」 「【0016】 本発明の太陽電池用導電性ペーストにおいては、バインダー樹脂を用いるが、このバインダー樹脂としては公知のバインダー樹脂を用いることができる。 バインダー樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ブチラール樹脂、フェノール樹脂をはじめ、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂;例えば、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂が挙げられ、これらの樹脂は単独で、あるいは2種類以上を混合して利用できる。これらバインダー樹脂は、想定している塗布方法に適合した、固形分比、粘度、チキソ性等、塗布適性に影響を及ぼす物性を考慮して、適宜選定することができる。 これらのバインダー樹脂の中でも、エチルセルロース樹脂とアクリル樹脂が好ましい。エチルセルロース樹脂とアクリル樹脂は、空気中でバインダー樹脂を分解、除去した後、ほぼ完全に分解し、炭素として焼結塗膜中に残留することが少ない。 本発明の太陽電池用導電性ペースト中のバインダー樹脂の含有量は、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末100質量部に対して0.01?30質量部の範囲が好ましく、0.01?15質量部の範囲がさらに好ましく、0.01?5質量部の範囲が最も好ましい。」 「【0018】 本発明の太陽電池用導電性ペーストに使用するSi系有機化合物としては、シランカップリング剤、各種ポリオルガノシロキサンを用いることが出来る。 ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のポリアリールシロキサン、側鎖基や末端基にポリオキシアルキレン基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、水素、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基を有するようなオルガノポリシロキサン等の変性ポリシロキサンを用いることもできる。また、シロキサンユニットを有するブロックコポリマーや、シロキサンユニットを側鎖に持つグラフトコポリマーを用いることも出来る。これらSi系有機化合物の中ではシランカップリング剤、ポリジメチルシロキサン及びポリジメチルシロキサンのポリエーテル変性物からなる群のうちの一つ以上であることが好ましい。 シランカップリング剤は下記の一般式(I)で表されるものが好ましい。 X_(n)R^(2)_(3-n)SiR^(1)-Y (I) (但し、上記の一般式(I)中、Xはメトキシ基またはエトキシ基を表し、Yはビニル基、メルカプト基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、グリシドキシ基、ウレイド基、スルフィド基またはメタクリロキシ基を表し、R^(1)は炭素数2?5のアルキレン基または主鎖の原子数2?5で主鎖に窒素原子を含有する2価の炭化水素基を表し、R^(2)は炭素数1?5のアルキル基を表し、nは1?3の整数を表す。)」 「【0026】 Si系有機化合物は、通常、液体であり、このまま太陽電池用導電性ペーストに配合することができるが、太陽電池用導電性ペーストの製造方法において使用する溶剤に、あらかじめ溶解又は分散させて使用することもできる。 Si系有機化合物は、本発明の太陽電池用導電性ペーストの乾燥塗膜中に均一に存在することが好ましい。Si系有機化合物は、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末、ガラスフリット、無機微粒子等の当該導電性ペーストを構成する種々の粒子間に存在して、焼結時にSi基板と導電性粉末間との接触に好ましい介在物として機能すると考えられる。その結果、Si基板と電極との接触抵抗が低下して変換効率の向上につながると考えられる。」 「【0055】 上述の方法により分散が完了した本発明の太陽電池用導電性ペーストは、太陽電池用導電性ペーストとして一般的には公知慣用の塗布方法、または、印刷方法によって半導体基板上に印刷し、これを加熱、焼成して集光電極を形成することができる。 塗布方法としては、種々の塗布方法により塗布物として形成することができる。例えば、ディップコート、あるいは、公知のロール塗布方法等、具体的には、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押し出しコート、エアーナイフコート、スクイズコート、含侵コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート等により電子素子や基体上に塗布物を形成することができる。 また、各種印刷方法を適用することも可能である。印刷方法にはまた、凹版印刷のように最適粘度領域が比較的低粘度領域にあるものと、スクリーン印刷のように高粘度領域にあるものとが存在する。具体的には、孔版印刷方法、凹版印刷方法、平版印刷方法などを用いて基体上に所定の大きさに塗布物を印刷することができる。」 「【0057】 本発明の太陽電池用導電性ペーストを用いて太陽電池の集光電極の製造及び太陽電池の製造を行うためには、以下のような方法で行うことができる。 以下、図1を用いて、太陽電池の集光電極の製造方法及び太陽電池の製造方法の一例を説明する。 まず、p型Si基板1bの一方の表面に、場合によりテクスチャを形成し、その後、P(リン)等を約900℃で熱拡散させて、n型拡散層1aを形成し、p型Si基板1を得る。 次いで、n型拡散層1a上に、窒化ケイ素薄膜、酸化チタン等からなる反射防止膜3をプラズマCVD法等によって50?100nmの膜厚で形成する。 次いで、光入射側の集光電極を形成するために、本発明の太陽電池用導電性ペーストを反射防止膜3上に膜厚約20μmでスクリーン印刷し、乾燥させる。 次に、裏面側の電極を形成するために、裏面電極形成用アルミニウムペーストを、膜厚30?50μmでスクリーン印刷により、p型Si基板1の裏面に印刷し乾燥させる。 次いで、このようにp型Si基板の表面および裏面の両面に電極を印刷したp型Si基板1を最高焼成温度750?850℃で焼成して、光入射側の集光電極2及びアルミニウムからなる裏面電極4を備えた太陽電池セルを得る。 なお、裏面側の電極を形成するに際しては、裏面電極形成用アルミニウムペーストをp型Si基板1の裏面に印刷し乾燥した後、必要に応じて、その上にさらに裏面電極形成用銀ペーストを印刷し乾燥して焼成し、アルミニウムからなる裏面電極4と銀からなる裏面電極(図示しない)を形成することもできる。」 「【0067】 」 (2)引用発明 したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。 「バインダー樹脂、溶剤、ガラスフリット、および、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を含有する太陽電池用導電性ペーストであって、Si系有機化合物を含有し、(【請求項1】) バインダー樹脂としては、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂が挙げられ、バインダー樹脂は、粘度を考慮して、適宜選定することができ、 バインダー樹脂の含有量は、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末100質量部に対して、0.01?5質量部の範囲が最も好ましく、(【0016】) Si系有機化合物としては、ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサン及びポリジメチルシロキサンのポリエーテル変性物を用いることが出来、(【0018】) Si系有機化合物は、通常、液体であり、(【0026】) 太陽電池用導電性ペーストはスクリーン印刷のように高粘度領域にある印刷方法を適用することも可能である、太陽電池用導電性ペースト。(請求項1、【0055】)」 2 引用文献2の記載 (1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「【0049】 上述の方法により分散が完了した本発明の太陽電池用導電性ペーストは、太陽電池用導電性ペーストとして一般的には公知慣用の塗布方法、または、印刷方法によって半導体基板上に印刷し、これを加熱、焼成して集光電極を形成することができる。 塗布方法としては、種々の塗布方法により塗布物として形成することができる。例えば、ディップコート、あるいは、公知のロール塗布方法等、具体的には、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押し出しコート、エアーナイフコート、スクイズコート、含侵コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート等により電子素子や基体上に塗布物を形成することができる。 また、各種印刷方法を適用することも可能である。印刷方法にはまた、凹版印刷のように最適粘度領域が比較的低粘度領域にあるものと、スクリーン印刷のように高粘度領域にあるものとが存在する。具体的には、孔版印刷方法、凹版印刷方法、平版印刷方法などを用いて基体上に所定の大きさに塗布物を印刷することができる。特にスクリーン印刷がインク層の厚さを厚くしやすく、印刷圧も低く、平面ばかりでなく曲面にも印刷できる特徴を有しているため好適に使用される。」 「【0060】 (太陽電池の作製)) B(ボロン)をドープしたP型多結晶シリコン基板(大きさ150mm×150mm、基板厚み200μm)の表面に、ウエットエッチングによってテクスチャを形成した。その後、P(リン)を熱拡散させて、n型拡散層(厚み0.3μm)を形成した。次いで、n型拡散層の上にプラズマCVD法によって、シランガスとアンモニアガスから窒化ケイ素薄膜(厚み約60nm)からなる反射防止膜を形成した。 実施例1?5、比較例1?4で調製した太陽電池用導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷(325メッシュ、ワイヤ径28μm、乳剤厚10μm)により、反射防止膜上に、膜厚が約10?20μmになるように印刷し、乾燥して、この導電性ペーストからなるバス電極とフィンガー電極からなる電極パターンを形成した。バス電極、フィンガー電極の乾燥膜厚は太陽電池用導電性ペーストの構成によって差違があるが、いずれも滲みやはじきのない良好な電極パターンを印刷できた。 次に、裏面電極形成用アルミニウムペースト(商品名:08-6429、東洋アルミニウム社製)を、スクリーン印刷により、P型多結晶シリコン基板の裏面に、膜厚が30?50μmになるように印刷し、乾燥した。 ・・・(中略)・・・ 【0063】 実施例1?4または比較例1?4において使用した太陽電池用導電性ペーストの組成を、下記の表1に示す。また、表1に変換効率の値を示す。カチオン系界面活性剤を使用した本発明の太陽電池用導電性ペーストを用いた実施例1?4は、いずれも、リン酸エステル系のアニオン系界面活性剤を含有した従来の太陽電池用導電性ペーストを使用した比較例1?4に比べて、良好な変換効率を示した。変換効率向上の主要因は導電性ペーストを用いて作製された電極膜厚の増加であって、カチオン系性界面活性剤を用いて作製した導電性ペーストを利用した印刷物の膜厚は、比較例のアニオン系界面活性剤を用いて製造した導電性ペーストを利用した印刷物の膜厚に比べて、同じスクリーン版を利用して、約1.5倍の膜厚が得られることが判明した。 【0064】 」 (2)引用文献2に記載された技術的事項 したがって、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「スクリーン印刷のように高粘度領域にある印刷方法を適用することも可能であり、粘度が、10/secで、295(実施例2)、335(実施例4)、354(比較例2)である太陽電池用導電性ペースト。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末」は、本願発明の「導電性粉末」に、 引用発明の「ガラスフリット」は、本願発明の「ガラスフリット」に、 引用発明の「『セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂が挙げられ』る『バインダー樹脂』」は、本願発明の「有機バインダ」に、 引用発明の「溶剤」は、本願発明の「分散媒」に、 引用発明の「『ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサン及びポリジメチルシロキサンのポリエーテル変性物を用いる』る『Si系有機化合物』」は、本願発明の「シリコーン樹脂」に、 引用発明の「Si系有機化合物は、通常、液体であり」は、本願発明の「シリコーン樹脂は、25℃、1気圧の条件下において液状のものであり」に、 それぞれ相当する。 (2)引用発明の「太陽電池用導電性ペーストはスクリーン印刷のように高粘度領域にある印刷方法を適用することも可能である、太陽電池用導電性ペースト」と、本願発明の「太陽電池素子の電極を形成するための、メタルマスクを用いるスクリーン印刷用の導体ペースト」とは、「太陽電池素子の電極を形成するための、スクリーン印刷用の導体ペースト」である点で一致する。 2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「太陽電池素子の電極を形成するための、スクリーン印刷用の導体ペーストであって、 導電性粉末と、 ガラスフリットと、 有機バインダと、 分散媒と、 シリコーン樹脂と、 を含み、 ここで前記シリコーン樹脂は、25℃、1気圧の条件下において液状のものである、導体ペースト。」 【相違点1】 スクリーン印刷用の導体ペーストについて、本願発明は「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」であると特定されているのに対し、引用発明は「スクリーン印刷のように高粘度領域にある印刷方法を適用することも可能である」点。 【相違点2】 本願発明は「導体ペースト全体を100質量%としたときに、有機バインダが1.5質量%以下であ」るのに対し、引用発明は、「太陽電池用導電性ペースト」が「バインダー樹脂」のほかに「溶剤、ガラスフリット、および、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を含有する」とともに、「バインダー樹脂の含有量は、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末100質量部に対して、0.01?5質量部の範囲」である点。 【相違点3】 導体ペーストの粘度について、本願発明は「25℃、20rpmにおけるB型回転粘度計を用いて測定した粘度が350Pa・s以上かつ450Pa・s以下である」のに対し、引用発明はそのようなものか明らかでない点。 【相違点4】 「シリコーン樹脂」が、本願発明は「BYK330(ビーワイケイ・ケミー・ジャパン社製)を除く」ものであるのに対し、引用発明はそのようなものか明らかでない点。 第6 判断 1 相違点に対する判断 (1)本願発明の技術的意義について ア 相違点の検討に先立ち、本願発明の技術的意義についてみると、本願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本願明細書等」という。)には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、メタルマスクによるスクリーン印刷用の導体ペーストと、該導体ペーストの利用に関する。特に、メタルマスクを用いたスクリーン印刷によって太陽電池素子の導体(以下「電極」という。)を形成する用途の導体ペーストに関する。」 「【0003】 現在主流となっている所謂結晶シリコン型太陽電池素子の受光面には、典型的には、銀等の電導体によって形成されている細線からなるフィンガー電極(グリッド電極ともいう。)と、該フィンガー電極に接続するバスバー電極とが設けられている。以下、これら電極を総称して受光面電極ともいう。このような受光面電極は、導体成分としての銀等の導電性粉末と、有機バインダおよび分散媒からなる有機ビヒクル成分とを含み、ペースト状(スラリー状、インク状等を包含する。以下同じ。)に調製された導電性組成物(以下、かかる導電性組成物を「導体ペースト(conductive paste)」ともいう。)を、スクリーン印刷により所定の電極パターンで太陽電池素子(セル)の受光面に印刷し、焼成することで形成されている。このような太陽電池素子の受光面電極を形成するために用いられる導体ペースト(ペースト状導電性組成物)に関する従来技術として、例えば、特許文献1および2が挙げられる。」 「【0005】 太陽電池素子の受光面において、受光面電極が形成された部分は遮光部分(非受光部分)となる。このため、受光面電極を従来よりもファインライン化すれば、セル単位面積あたりの受光面積が拡大されて、セル単位面積あたりの発電量を向上させることができる。そしてこのとき、細線化された分だけ電極を嵩高く(厚く)することで、電極のライン抵抗の増大を抑制するようにしている。 したがって、太陽電池素子の受光面電極を形成するために使用する導体ペーストには、ダレが少なく高アスペクト比(電極における厚みと線幅との比:厚み/線幅が大きいこと。以下同じ。)の電極形成が可能であることが求められている。 また、太陽電池の利用に際して低コスト化は重要な課題であり、例えば比較的低コストなスクリーン印刷法により量産を行った場合でも、細線化による断線等で不良品率が上がったり品質が低下したりしないことも潜在的に求められている。 【0006】 ところで、スクリーン印刷には、一般的なスクリーンマスク(スクリーンメッシュ)を用いて行う方法の他に、いわゆるメタルマスクを用いてスクリーン印刷を行う方法がある。 メタルマスクを使用することのメリットとして、当該マスクの開口部にメッシュが存在しないため、電極形成用導体ペーストが通過するときの抵抗が小さく、詰まりも少ないため、断線の発生が少ないということが挙げられる。また、一般的なスクリーンマスク(スクリーンメッシュ)と比較してメタルマスクを使用する場合には、電極形成用導体ペーストの吐出量が増大するため、電極の厚み(膜厚)も増大し、より高アスペクト比(厚膜)の微細な線状の受光面電極を形成できることが期待される。 【0007】 しかしながら、メタルマスクを使用した場合には、導体ペーストの吐出量が増大するがゆえに塗布物(電極等の導体膜)からダレ(dripping)が生じやすい。また、従来の電極形成用導体ペーストをそのまま工夫なく使用すると、粘度が低すぎる場合には所望する線幅を超えて大きく広がった低アスペクト比の電極形が形成されたり、あるいは逆に粘度が高すぎてメタルマスク開口部からの抜けが悪くなった場合には、印刷された電極(印刷物)の一部に欠けが生じたりする虞があり好ましくない。 そこで本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、メタルマスクを用いたスクリーン印刷によって太陽電池素子の受光面電極のファインライン化と高アスペクト比を実現するのに好適なペースト状導電性組成物(導体ペースト)を提供することである。また、該ペースト状導電性組成物(導体ペースト)の採用により、メタルマスクを用いて微細な受光面電極が半導体基板上に形成された太陽電池素子(ソーラーセル)とその製法を提供することを他の目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記の目的を実現するべく、本発明によって、メタルマスクを用いるスクリーン印刷によって太陽電池素子の導体(典型的には受光面電極)を形成するための好適なペースト状導電性組成物(導体ペースト)が提供される。 即ち、本発明によって提供されるペースト状導電性組成物は、メタルマスクを用いるスクリーン印刷によって太陽電池素子の電極を形成するための導体ペーストであって、導電性粉末と、ガラスフリットと、有機バインダと、分散媒と、シリコーン樹脂とを含む。 そして、ここで開示される導体ペーストは、含有される上記シリコーン樹脂が、25℃、1気圧の条件下において液状のもの(以下、かかる性状のものを「液状シリコーン樹脂」という。)であることを特徴とする。 【0009】 本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、所定の性状のシリコーン樹脂、具体的には25℃、1気圧の条件下において液体として存在する液状シリコーン樹脂を導体ペーストに配合することで、当該導体ペーストを材料にメタルマスクを用いたスクリーン印刷を行うことによって、優れた高アスペクト比の受光面電極を形成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。 ここで開示される「メタルマスクを用いるスクリーン印刷によって太陽電池素子の電極を形成するための導体ペースト(以下「メタルマスク用導体ペースト」と略称する。)」によると、メタルマスクを用いたスクリーン印刷によって、印刷形状に影響を及ぼすダレや欠けを生じさせることなく良好なアスペクト比の細線化(ファインライン化)された太陽電池素子の電極(典型的には受光面電極)を形成することができる。 【0010】 ここで開示されるメタルマスク用導体ペーストの好ましい一態様では、上記シリコーン樹脂の重量平均分子量(Mw)が5000以上120000以下であることを特徴とする。 重量平均分子量が上記範囲に包含される液状シリコーン樹脂(典型的なものは、シリコーンオイルとも呼称される。)を採用することにより、メタルマスクを用いるスクリーン印刷に使用された際に、好適な粘性を実現し得る。かかる特徴を備えるメタルマスク用導体ペーストによると、メタルマスクを用いるスクリーン印刷により半導体基板の受光面に受光面電極を形成するのに好適な粘度特性を示す。従って、より好適に所定の配線パターンで所望のアスペクト比の細線状の受光面電極(特に集電用のフィンガー電極)を形成することができる。 【0011】 ここで開示されるメタルマスク用導体ペーストの好ましい一態様では、上記導電性粉末100質量部に対する、上記シリコーン樹脂の含有割合が0.005質量以上0.5質量部以下であることを特徴とする。 かかる構成のメタルマスク用導体ペーストによると、メタルマスクからのペースト塗布物の「抜け性」即ち流出(排出)のレベルを特に良好に保つことができる。 また、ここで開示されるメタルマスク用導体ペーストの好ましい他の一態様では、上記導電性粉末を構成する金属種が、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)およびアルミニウム(Al)からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上の元素を含むことを特徴とする。 かかる構成のメタルマスク用導体ペーストによると、これら金属種からなる導電性に優れる良好なアスペクト比の太陽電池素子の電極(典型的には受光面電極)を形成することができる。」 「【0027】 液状シリコーン樹脂は、ここで開示されるメタルマスク用導体ペーストに含まれる必須構成成分である。液状シリコーン樹脂を含有することによって、当該導体ペーストを材料にメタルマスクを用いたスクリーン印刷を行うことによって、優れた高アスペクト比の受光面電極を形成することができる。即ち、液状シリコーン樹脂(典型的にはシリコーンオイル)を導体ペーストに配合することで、メタルマスクを用いるスクリーン印刷に使用された際に、好適な粘性を実現するとともに、メタルマスクの開口部からの抜け性を良好にし、高アスペクト比の厚膜な電極(導体)を太陽電池素子の基板上に形成することができる。従って、焼成後の電極のライン抵抗を低減できる。」 イ 上記各記載によれば、本願発明は、次のような技術的意義をもつものと認められる。 従来より、結晶シリコン型太陽電池素子の受光面には、細線からなるフィンガー電極と該フィンガー電極に接続するバスバー電極とが受光面電極として設けられており、当該受光面電極は、導体成分としての銀等の導電性粉末と、有機バインダおよび分散媒からなる有機ビヒクル成分とを含み、ペースト状に調整された導電性組成物(導体ペースト)を、スクリーン印刷により所定の電極パターンで受光面に印刷し焼成することで形成されていた(【0003】)。ところで、スクリーン印刷としてメタルマスクを使用した場合には、メッシュが存在しないことから、導体ペーストが通過するときの抵抗が小さいとともに吐出量が増大するので、より高アスペクト比の受光面電極を形成できることが期待される一方、吐出量が増大するゆえにダレが生じやすく、また、粘度が低すぎる場合には所望の線幅を超えてしまったり、粘度が高すぎる場合にはメタルマスク開口部からの抜けが悪くなり電極の一部に欠けが生じたりする虞があった(【0006】【0007】)。 そこで、本願発明は、メタルマスクを用いたスクリーン印刷によって太陽電池素子の受光面電極のファインライン化(細線化)と高アスペクト比を実現するのに好適な導体ペーストを提供することを目的とするものである(【0007】)。 本願発明は、メタルマスクを用いるスクリーン印刷によって太陽電池素子の電極を形成するための導体ペーストであって、導電性粉末と、ガラスフリットと、有機バインダと、分散媒と、シリコーン樹脂とを含むペースト状導電性組成物を特徴とする(【0008】)ところ、所定の性状のシリコーン樹脂、具体的には、25℃、1気圧の条件下において液体として存在する液状シリコーン樹脂を導体ペーストに配合し、当該導体ペーストを材料にメタルマスクを用いたスクリーン印刷を行うことによって、優れた高アスペクト比の受光面電極を形成し得るものである(【0009】)。このように、本願発明では、液状シリコーン樹脂を導体ペーストに配合していることから、メタルマスクを用いるスクリーン印刷に使用された際に、好適な粘性を実現するとともに、メタルマスクの開口部からの抜け性を良好にし、高アスペクト比の厚膜な電極(導体)を太陽電池素子の基板上に形成することができる(【0010】【0027】)。ここで、上記シリコーン樹脂の含有割合が導電性粉末100質量部に対する、シリコーン樹脂の含有割合が0.005質量以上0.5質量部以下である場合は、メタルマスクからのペースト塗布物の「抜け性」のレベルを特に良好に保つことができる(【0011】)。 本願発明は、上記の特徴を備えることから、メタルマスクを用いたスクリーン印刷によって、印刷形状に影響を及ぼすダレや欠けを生じさせることなく良好なアスペクト比の細線化(ファインライン化)された太陽電池の電極を形成することができる(【0009】)。 (2)相違点1について ア 相違点1に係る本願発明の特定事項(以下「相違点1特定事項」という。)は、「導体ペースト」が「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」であることであるところ、この特定事項は、いわゆる用途限定に係るものである。 ところで、用途限定が付された物がその用途に特に適した物を意味する場合は、その物を用途限定が意味する形状、構造、組成等を有する物であると解すべきであるが、そうでない場合は、いわゆる用途発明に該当する場合を除き、その用途限定は物を特定するための意味を有していないと解される。そして、用途発明とは、(i)ある物の未知の属性を発見し、(ii)この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明であると解される。 そこで、以下、相違点1特定事項が、「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」に特に適した物を意味しているといえるか、仮にそういえないのであるならば、相違点1特定事項に係る物が用途発明に該当するといえるかどうかについて検討する。 (ア)相違点1特定事項が「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」に特に適した物を意味しているといえるか a 上記(1)で認定した本願発明の技術的意義によれば、本願発明に係る「太陽電池素子の電極を形成するための、メタルマスクを用いるスクリーン印刷用の導体ペースト」は、太陽電池素子の電極を形成するための導体ペーストに液状シリコーン樹脂に配合することにより、メタルマスクを用いるスクリーン印刷に使用された際に、好適な粘性を実現するとともに、メタルマスクの開口部からの抜け性を良好にすることを図ったものであると解される。 そのような観点から相違点1特定事項に係る「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」の意味をみると、相違点1特定事項は、「好適な粘性」及び「良好な抜け性」に関する構造等を実質的に特定したものとみる余地がある。 b しかしながら、本願発明には、上記aのうち「好適な粘性」に係る事項として、粘度の値が既に特定されている。そして、本願明細書等の記載をみても、相違点1特定事項が、本願発明に特定された上記粘度の値を超えて、好適な粘性に関する構造等を実質的に特定しているとはいえない。 また、上記aのうち「良好な抜け性」の点は、上記(1)で認定した本願発明の技術的意義によれば、液状シリコーン樹脂を配合することにより実現されているといえるところ、本願発明には、「25℃、1気圧の条件下において液状の」「シリコーン樹脂」を含むことが既に特定されている。そして、本願明細書等の記載をみても、相違点1特定事項が、本願発明に特定された上記「シリコーン樹脂」を超えて、良好な抜け性に関する構造等を実質的に特定しているとはいえない。 加えて、相違点1特定事項により導体ペーストの組成が特定されている可能性についてみるとしても、本願明細書等の記載からは、そのようなことは読み取れない。 c その他、本願明細書等の記載をみても、相違点1特定事項に係る「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」が、「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」に特に適した物を意味しているとする根拠を見いだせない。 d そうすると、相違点1特定事項に係る「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」が、「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」に特に適した物を意味しているとはいえない。 (イ)相違点1特定事項に係る物が用途発明に該当するといえるか 用途発明とは、上記のとおり、(i)ある物の未知の属性を発見し、(ii)この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明をいうから、相違点1特定事項に係る「太陽電池素子の電極を形成するための、」「導体ペースト」が「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」であることが、これに該当するかについて検討する。 a (i)の要件についての検討 (a)上記(1)で認定した本願発明の技術的意義によれば、上記(ア)bのとおり、本願発明に係る「太陽電池素子の電極を形成するための、メタルマスクを用いるスクリーン印刷用の導体ペースト」は、太陽電池素子の電極を形成するための導体ペーストに液状シリコーン樹脂を配合することにより、メタルマスクを用いるスクリーン印刷に使用された際に、好適な粘性を実現するとともに、メタルマスクの開口部からの抜け性を良好にすることを図ったものであると解される。 (b)上記(a)によれば、本願発明は、太陽電池素子の電極を形成するための導体ペーストのうち、液状シリコーン樹脂を配合したものは、「好適な粘性」とメタルマスクの開口部からの「良好な抜け性」という属性があることを発見した発明であるとみる余地がある。 (c)しかしながら、好適な粘性の実現の意味するところについて本願明細書等の記載をさらにみると、粘度調整が分散媒の調整によるとされている(【0035】【0048】)ともに、液状シリコーン樹脂を配合した場合の導体ペーストの粘度の値(例えば、実施例51-56の450Pa・s)と液状シリコーン樹脂を配合しない場合の導体ペーストの粘度の値(例えば、比較例2の450Pa・s)との間に特段の差異が認められないことから、液状シリコーン樹脂を配合することが、好適な粘性の実現に直接寄与することまでは、本願明細書等には記載されていない。そして、分散媒の調整により粘度調整をすることは技術常識にすぎないことである。 そうすると、太陽電池素子の電極を形成するための導体ペーストのうち、液状シリコーン樹脂を配合したものに好適な粘性という属性があるとしても、それは、分散媒の調整という技術常識の範ちゅうに属する技術的手段によるものであるから、未知の属性とはいえない。 (d)また、メタルマスクの開口部からの良好な抜け性は、液状シリコーン樹脂が有する自明の性質である潤滑性に起因するものといえるから、太陽電池素子の電極を形成するための導体ペーストのうち、液状シリコーン樹脂を配合したものに良好な抜け性という属性があるとしても、それが未知の属性とはいえない。 (e)以上のとおり、これらの属性は、未知の属性であるとはいえない。そして、本願明細書等の記載をみても、本願発明に他に未知の属性があるとする根拠を見いだせない。 よって、相違点1特定事項を備えた本願発明は、(i)の要件を満たさない。 b 上記aによれば、(ii)の要件について検討するまでもなく、本願発明は用途発明とはいえない。 (ウ)したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。 イ 仮に、相違点1が実質的な相違点であった場合について検討する。 (ア)引用発明には「太陽電池用導電性ペーストはスクリーン印刷のように高粘度領域にある印刷方法を適用することも可能である」ことが認定されているところ、この「スクリーン印刷のように高粘度領域にある印刷方法」として「スクリーン印刷」が想定されていることは明らかである。そして、当該「スクリーン印刷」の文言は、以下のとおり、スクリーンメッシュを用いるものに限定されていないと解するのが相当である。 a 引用発明を開示する引用文献1の【0055】には「上述の方法により分散が完了した本発明の太陽電池用導電性ペーストは、太陽電池用導電性ペーストとして一般的には公知慣用の塗布方法、または、印刷方法によって半導体基板上に印刷し、これを加熱、焼成して集光電極を形成することができる。」、「また、各種印刷方法を適用することも可能である。印刷方法にはまた、凹版印刷のように最適粘度領域が比較的低粘度領域にあるものと、スクリーン印刷のように高粘度領域にあるものとが存在する。具体的には、孔版印刷方法、凹版印刷方法、平版印刷方法などを用いて基体上に所定の大きさに塗布物を印刷することができる。」と記載されている。 このように、引用文献1に記載された太陽電池用導電性ペーストは、スクリーン印刷のみならず孔版印刷方法、凹版印刷方法、平版印刷方法といった各種印刷方法を対象としたものであることが把握できる。 b そして、太陽電池に関する技術分野において、スクリーン印刷により電極を形成する場合に、メタルマスクを用いることは、周知技術であり、また、当該技術分野において、「スクリーン印刷」という文言が、メタルマスクを用いる場合にも通常使用されているといえる(以上につき、必要ならば、引用文献3(特に、請求項1、【0022】等参照。)、引用文献4(特に、請求項1、請求項4等参照。)及び引用文献5(特に、請求項8、【0026】、【0049】、【0050】参照。)を参照されたい。)。 c 上記aのとおり、引用文献1に記載された太陽電池用導電性ペーストは、「スクリーン印刷」に限らず各種の印刷方法を対象とするものであるところ、このことに、引用文献1の【0055】は、「スクリーン印刷のように高粘度領域にある印刷方法」と記載されているにとどまり、「メッシュ」に係る記載がないとともに、スクリーン印刷の技術常識に照らせば、「高粘度領域」における「高粘度」という文言は、「メッシュ」にのみ妥当するものではなく、「メタルマスク」にも妥当するものであること、上記bのとおり、太陽電池に関する技術分野においては、「スクリーン印刷」という文言がメタルマスクを用いる場合にも通常に使用されていること、を併せ考慮すれば、引用文献1の【0055】に記載された「スクリーン印刷」の文言はスクリーンメッシュを用いたものに限定されているものではないと解するのが相当である。 d そうすると、当該「スクリーン印刷」の文言に基づいて認定した引用発明における「スクリーン印刷」の文言も、スクリーンメッシュを用いたものに限定されているものではないと解される。 (イ)上記(ア)のとおり、引用発明における「スクリーン印刷」の文言はスクリーンメッシュを用いたものに限定されていないところ、上記(ア)bのとおりの周知技術が認定できることから、引用発明において、「スクリーン印刷」としてメタルマスクを用いるものを選択することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 (3)相違点2について 相違点2に係る本願発明の構成は、「導体ペースト全体を100質量%としたときに、有機バインダが1.5質量%以下であ」る。 他方、引用発明は、「太陽電池用導電性ペースト」が「バインダー樹脂」のほかに「溶剤、ガラスフリット、および、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末を含有する」とともに、「バインダー樹脂の含有量は、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末100質量部に対して、0.01?5質量部の範囲」である。そうすると、引用発明においては、太陽電池用導電性ペースト(本願発明の「導体ペースト」に相当。)に対するバインダー樹脂(本願発明の「有機バインダ」に相当。)の割合が、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末に対するバインダー樹脂の割合(「0.01質量部?5質量部」/「100質量部」×100=0.01質量%?5質量%)よりも小さくなることは、明らかである。 以上によれば、引用発明において、バインダー樹脂の含有量を、銀または銀化合物を主成分とする導電性粉末100質量部に対して、0.01?5質量部の範囲で適宜選択することにより、相違点2に係る構成を満たすようにすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 (4)相違点3について ア 引用発明は「太陽電池用導電性ペーストはスクリーン印刷にように高粘度領域にある印刷方法を適用する」と特定されていることから、引用発明において、高粘度領域の太陽電池用導電性ペーストも考慮している。また、引用発明は「バインダー樹脂としては、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂が挙げられ、バインダー樹脂は、粘度を考慮して、適宜選定することができ」と特定されていることから、引用発明において太陽電池用導電性ペーストの粘度を考慮している。 イ 上記アのとおり、引用発明の太陽電池用導電性ペーストは、「高粘度領域にある印刷方法」である「スクリーン印刷」に適用できる旨特定されているところ、当業者は、引用発明を「スクリーン印刷」に適用して実施するに当たり、上記「高粘度」として具体的にどのような値の導電性ペーストを用いるかを当然に設計するといえる。そして、引用発明と同様の太陽電池用導電性ペーストの技術分野に属する技術的事項を開示する引用文献2には、引用文献2に記載された技術的事項のとおり、スクリーン印刷のように高粘度領域にある印刷方法を適用できる太陽電池用導電性ペーストが開示されている。 そうすると、当業者は、引用発明をスクリーン印刷に適用して実施するに当たり、太陽電池用導電性ペーストとしてどのような粘度のものを採用するかについて、引用文献2に記載された、スクリーン印刷に適用される太陽電池用導電性ペーストの粘度の値を参考にすることができるといえる。 そこで、以下、引用文献2に記載された、スクリーン印刷に適用される太陽電池用導電性ペーストの粘度の値を検討する。 (ア)引用文献2(表1)には、上記引用文献2に記載された技術的事項のとおり、スクリーン印刷に適用される太陽電池用導電性ペーストの「粘度10/sec」として、「295」(実施例2)、「335」(実施例4)及び「354」(比較例2)の数値が記載されている。なお、これらの数値の単位については、明記がないものの、引用文献2では、上記技術的事項のとおり、当該数値が「高粘度」であると記載されているといえることに加え、粘度の単位が一般に「Pa・sec」であることに照らせば、「Pa・sec」であると解され、この理解は、引用文献1と引用文献2が特許出願の公開公報であって、当該特許出願の出願人が一部共通すること、引用文献1の実施例と引用文献2の実施例及び比較例とは、同じ混合溶剤を用い混合割合も大きく違わないことからも首肯される。 (イ)引用文献2に記載された、スクリーン印刷に適用される太陽電池用導電性ペーストの粘度の具体的な値は上記(ア)のとおりであるが、これらの値と相違点3に係る本願発明で特定された粘度の値との関係が直ちに明らかではない。 そこで、両者の関係を明らかにするべく、まずは本願発明で特定された粘度の測定条件(以下「本願粘度測定条件」という。)をみると、本願粘度測定条件は「25℃、20rpmにおけるB型回転粘度計を用いて測定」することであり、本願明細書等の【0047】には、「粘度は、ブルックフィールド社製の回転粘度計(HBT型 DV III+)により、4番スピンドル(スピンドル「SC-4-14」)を使用し、25℃で各回転速度(20rpm)で測定した。」と記載されている。そして、上記「ブルックフィールド社製の回転粘度計」について、令和2年3月23日付け意見書の添付資料として提出されたBrooKField回転粘度計仕様書一覧ver1.2,英弘精機株式会社)の第7頁には、スピンドル「SC4-14」のせん断速度(係数)が「0.4N」であるとともに、「回転数×せん断速度係数(上記○○N)=せん断速度[1/s]」であると記載されている。これらによれば、本願粘度測定条件における「せん断速度」を計算することができ、その値は、回転数である「20(rpm)」にせん断速度係数である「0.4N」を乗じて得られる「8(1/s)」となる。 他方、上記(ア)で説示した引用文献2に記載された「粘度10/sec」の意味も、上記でいう「せん断速度」であることが明らかである。つまり、当該「粘度10/sec」は、引用文献2に記載された粘度の測定条件(以下「引用文献2粘度測定条件」という。)における「せん断速度」である。 このように、「せん断速度」(1/s)の観点で粘度の測定条件を整理すると、本願粘度測定条件においては「8」である一方、引用文献2粘度測定条件においては「10」である。しかるに、粘度とせん断速度とは、導体ペーストのような材料では、せん断速度が小さいほど粘度が高いという関係があると考えられることに照らせば、導体ペーストの粘度を引用文献2粘度測定条件で測定した場合の値は、本願粘度測定条件で測定した場合の値と比べて、概ね20%程度低くなることが推測される。 (ウ)上記(イ)によれば、上記(ア)で説示した引用文献2に記載された、スクリーン印刷に適用される太陽電池用導電性ペーストの本願粘度測定条件に基づいた粘度を推測することができ、具体的には、「295(実施例2)」が350Pa・sec程度、「335(実施例4)」が400Pa・sec程度、「354(比較例2)」が420Pa・sec程度といえるから、350Pa・sec程度-420Pa・sec程度となる。 そうすると、引用文献2に記載された太陽電池用導電性ペーストには、本願粘度測定条件において、350Pa・sec程度-420Pa・sec程度の粘度が含まれるといえる。 ウ 上記ア及びイによれば、当業者は、引用発明をスクリーン印刷に適用して実施するに当たり、太陽電池用導電性ペーストの粘度として、本願粘度測定条件において、350Pa・sec程度-420Pa・sec程度のものを採用できるといえる。 エ そして、引用発明において、溶剤の量等を調整することで、粘度の値を調整できることは明らかである。 そうすると、引用発明において、相違点3に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 (5)相違点4について 引用発明は「Si系有機化合物としては、ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサン及びポリジメチルシロキサンのポリエーテル変性物を用いることが出来」と特定されており、例えば、BYK330(ビーワイケイ・ケミー・ジャパン社製)を除いたような、特定の種類のポリオルガノシロキサン、又はポリジメチルシロキサン及びポリジメチルシロキサンのポリエーテル変性物を選択することは、当業者が適宜なし得た事項である。なお、本願明細書等の記載を参酌しても、BYK330(ビーワイケイ・ケミー・ジャパン社製)を除くことに格別の技術的意義は認められない。 そうすると、引用発明において、相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 (6)以上のとおりであるから、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術を採用して、相違点1ないし4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 2 効果について 本願発明の効果は、【0009】によれば、「25℃、1気圧の条件下において液体として存在する液状シリコーン樹脂を導体ペーストに配合することで、当該導体ペーストを材料にメタルマスクを用いたスクリーン印刷を行うことによって、優れた高アスペクト比の受光面電極を形成し得ること」、「メタルマスクを用いたスクリーン印刷によって、印刷形状に影響を及ぼすダレや欠けを生じさせることなく良好なアスペクト比の細線化(ファインライン化)された太陽電池素子の電極(典型的には受光面電極)を形成すること」と認められる。そして、上記1(2)ア(ア)aで説示したとおり、本願発明は、太陽電池素子の電極を形成するための導体ペーストに液状シリコーン樹脂に配合することにより、メタルマスクを用いるスクリーン印刷に使用された際に、好適な粘性を実現するとともに、メタルマスクの開口部からの抜け性を良好にすることを図ったものであると解されるが、同(イ)a(c)で説示したとおり、上記の「好適な粘性」の実現は、分散媒の調整によるものと解される。 他方、引用発明の太陽電池用導電性ペーストは、ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサン及びポリジメチルシロキサンのポリエーテル変性物を用いることが出来、液体であるSi系有機化合物を含有しているところ、液体であるSi系有機化合物に潤滑性があることは技術常識であることから、引用発明において、メタルマスクの開口部からの抜け性を向上させることができることは予測可能であり、その結果、太陽電池素子の電極に欠けを生じさせないことも予測可能である。また、太陽電池用導電性ペーストの技術分野において、得ようとするアスペクト比を実現するべく粘度を調整することは自明であるから、引用発明において、溶剤等の量を調整することを介して粘度を調整することにより、メタルマスクを用いたスクリーン印刷によって、印刷形状に影響を及ぼすダレ等を生じさせることなく良好なアスペクト比の細線化(ファインライン化)された太陽電池素子の受光面電極を形成することも予測可能である。 よって、本願発明の効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 3 したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 審判請求人の主張について 1 審判請求人は、令和3年6月22日付けの意見書において、 (1)「しかしながら、本願発明1は、上述のように所定の組成及び粘度を有する導体ペーストであり、「メタルマスクを用いたスクリーン印刷によって太陽電池素子の受光面電極のファインライン化と高アスペクト比を実現するのに好適なペースト状導電性組成物(導体ペースト)を提供する」という課題を解決します(本願明細書第0007段落)。この点、本願明細書第0049?0051段落の表1?3に記載のように、本願発明の実施例13?44及び実施例51?56は、印刷形状を考慮した判定がすべて「〇」となっています。このことから、本願明細書には本願発明1により、本願発明1の課題を解決することを実証したことが記載されているといえます。したがって、本願明細書を考慮するならば、本願発明1の「導体ペースト」は、「太陽電池素子の電極を形成するための、メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」という用途発明として、適切な限定を有しているものと思料します。」、 (2)「仮に、引用文献1に記載の「スクリーン印刷」が、「メタルマスクを用いるスクリーン印刷」を含んでいるとすると、「スクリーン印刷」は上位概念であり、「メッシュ状になったスクリーンを用いたスクリーン印刷」及び「メタルマスクを用いるスクリーン印刷」は、下位概念です。また、「スクリーン印刷」の上位概念は、引用文献1明細書の第0055段落に記載の「各種印刷方法」です。となると、引用文献1には、「メタルマスクを用いるスクリーン印刷」の上位概念は記載されていますが、「メタルマスクを用いるスクリーン印刷」の下位概念は記載されていません。本願発明1の「メタルマスクを用いるスクリーン印刷」の構成について、上位概念に基づく認定は適当ではないものと思料いたします。」、 (3)「引用文献1及び2に記載の発明は、異なった発明であり、異なった課題を解決するための発明です。したがって、引用文献1及び2に記載の発明の両方の数値範囲を用いて、所定の数値範囲を想到することは、当業者にとって容易とはいえません。」、 (4)「比較例1の粘度は280Pa・sであり、比較例2の粘度は450Pa・sです。比較例1の印刷形状(表1参照)は、「幅」及び「膜厚」は共に「形状不良」であり、印刷性は「×」ですが、比較例2の印刷形状(表3参照)は、「幅」及び「膜厚」に測定値が記載されており、印刷性は「〇」になっています。となると、比較例1と比較例2とを比較して、粘度が280Pa・sの場合と、粘度が450Pa・sの場合には、比較例1と比較例2との間に臨界的意義が認められるといえます。」 旨主張している。 2 上記主張についての検討 (1)上記1(1)について 審判請求人は、本願明細書等に記載された実施例によれば、本願発明により、本願発明の課題を解決することが実証されたことをもって、本願発明が「太陽電池素子の電極を形成するための、メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」という用途発明である旨を主張するものであるが、そのことによって、本願発明に係る物にいかなる未知の属性があるのかを明らかにしたものではないから、当該主張は、本願発明の用途発明該当性の判断を左右するものではない。そして、本願発明がある物の未知の属性を発見したものではないことは、上記第6の1(2)ア(イ)で判断したとおりである。 (2)上記1(2)について 審判請求人の主張は、本願発明の「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」との特定事項が物を特定する事項として意味があるとの理解を前提に、引用文献1には、「スクリーン印刷」という上位概念が記載されているにとどまり、本願発明の「メタルマスクを用いるスクリーン印刷」という下位概念が記載されているとはいえないから、引用文献1の上記記載をもって、当該下位概念が記載されていると判断するのは誤りである、というものと解される。 しかしながら、本願発明の「メタルマスクを用いるスクリーン印刷用」との特定事項は、上記第6の1(2)アのとおり、物を特定する事項として意味をもつものではないから、請求人の主張はその前提が失当である。また、本願発明の上記特定事項が物を特定する事項として意味をもつものであるとしても、上記第6の1(2)イで判断したとおりであるところ、この判断に際しては、引用文献1に記載された「スクリーン印刷」の文言をもって、本願発明の「メタルマスクを用いるスクリーン印刷」が記載されていると判断したものではないから、請求人の主張は説示を正解しないものである。 (3)上記1(3)について 引用文献1には、【発明の解決しようとする課題】について【0006】には「結晶系シリコン太陽電池のn型半導体(n型拡散層)にオーミック接触させる電極において、無鉛ガラスフリットを含有しても高い変換効率が安定して得られる太陽電池用導電性ペースト、および当該導電性ペーストを印刷して焼成してなる太陽電池用の集光電極、ならびに当該集光電極を備えた太陽電池を提供することにある。」と記載されている。また、引用文献2には、【発明の解決しようとする課題】について【0009】には「太陽電池用の導電性ペースト、とくに結晶系シリコン太陽電池のn型半導体(n型拡散層)にオーミック接触させる電極の形成に対して好ましく用いられる導電性ペーストであって、当該導電性ペーストの盛り量を高く、厚膜で印刷することができるため、無鉛ガラスフリットを用いたとしても高い変換効率が安定して得られる太陽電池用導電性ペーストを提供することである。さらに本発明の目的は、そのような太陽電池用導電性ペーストを製造する製造方法を提供することである。さらに本発明の目的は前記太陽電池用導電性ペーストを厚膜印刷し、焼成してなる、太陽電池の変換効率を向上させることが可能な太陽電池用の集光電極、および当該集光電極を備えた太陽電池を提供することにある。」と記載されている。そうすると、引用文献1及び2に記載された発明の解決しようとする課題は、いずれも、無鉛ガラスフリットを用いたとしても高い変換効率が安定して得られる太陽電池用導電性ペーストを提供することであるから、引用文献1及び2に記載された発明が、異なった課題を解決しているとはいえない。 また、仮に異なった課題を解決しているとしても、第6の1(4)イで説示したとおり、当業者は、引用発明をスクリーン印刷に適用して実施するに当たり、太陽電池用導電性ペーストとしてどのような粘度のものを採用するかについて、引用文献2に記載された、スクリーン印刷に適用される太陽電池用導電性ペーストの粘度の値を参考にすることができるといえる。 (4)上記1(4)について、 審判請求人は、本願発明には粘度に関し臨界的意義がある旨主張し、その根拠として、比較例1(280Pa・s)と比較例2(450Pa・s)とは、印刷性の観点において、後者が「○」であるが前者が「×」であることを挙げる。 しかしながら、比較例1及び比較例2は、本願発明の範囲に含まれないことを措くとしても、これらの2つの例は、粘度280Pa・sの例と粘度450Pa・sの例であるにとどまり、臨界的意義を示すものではない。すなわち、本願発明で特定された粘度の下限及び上限は、それぞれ、「350Pa・s」及び「450Pa・s」であるところ、これら2つの例の値は、当該下限の値との間に相当程度の違いがある上、当該上限の値を超える例が存在しないことから、これらの2つの例から、粘度「350Pa・s」及び「450Pa・s」の前後においていわゆる「臨界的意義」が示されているということはできない。 そして、本願明細書等の【0035】には、「例えば25℃,20rpmにおける粘度が350?450Pa・s程度に調整されたここで開示のメタルマスク用導体ペーストによると、ダレや欠けを防いで、高アスペクト比の細線化された電極を容易に形成することができる。」と記載されているが、この記載は、定性的なものにとどまり、粘度に関する臨界的意義を明らかにしたものとはいえないものである。また、本願明細書等に記載された実施例及び比較例には、表1?表3にあるとおり、粘度として、100、280、350及び450Pa・sの例のみが記載されているから、上記と同様の理由で、粘度「350Pa・s」及び「450Pa・s」の前後において臨界的意義が示されているとはいえない。さらにいえば、本願明細書等に記載された表1によれば、粘度が「100Pa・s」(本願発明で特定された粘度の範囲に含まれないものである。)であるにもかかわらず印刷性が「○」である実施例(実施例1)が存在する一方で、粘度が「350Pa・s」及び「450Pa・s」(本願発明で特定された粘度の範囲に含まれるものである。)であるにもかかわらず印刷性が「△」の実施例(それぞれ、実施例13及び25)が存在しており、このような実施例等からみても、本願発明に、粘度に関し臨界的意義があるとは認められない。 (5)以上のとおりであるから、審判請求人の主張は採用することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-08-27 |
結審通知日 | 2021-08-31 |
審決日 | 2021-09-17 |
出願番号 | 特願2016-32879(P2016-32879) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 幹 |
特許庁審判長 |
山村 浩 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 野村 伸雄 |
発明の名称 | メタルマスクによるスクリーン印刷用の導体ペーストおよびその利用 |
代理人 | 特許業務法人 津国 |