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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D |
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管理番号 | 1379554 |
審判番号 | 不服2020-17368 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-18 |
確定日 | 2021-11-04 |
事件の表示 | 特願2019- 38585「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月 4日出願公開、特開2019-109042〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年12月3日に出願した特願2009-275470号の一部を平成26年5月26日に新たな特許出願(特願2014-108144号)とし、さらにその一部を平成27年10月23日に新たな特許出願(特願2015-208898号)とし、さらにその一部を平成29年4月19日に新たな特許出願(特願2017-82822号)とし、さらにその一部を平成31年3月4日に新たな特許出願としたものであって、令和2年3月9日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年4月30日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年5月26日付けで最後の拒絶の理由が通知され、令和2年7月29日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年9月23日付け(発送日:令和2年9月29日)で補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和2年12月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和2年12月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年12月18日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和2年4月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 内箱と外箱を備える冷蔵庫本体を有する冷蔵庫において、 少なくとも前記内箱および前記外箱の一方に接している複数の断熱パネルと、 複数の前記断熱パネルの間に形成される離間部と、 前記離間部を介して前記冷蔵庫本体の内外を貫通するように設けられた接続手段と、 前記離間部に充填されて断熱する発泡断熱材と、 を備え、 前記離間部には、少なくとも1つの前記断熱パネルが前記内箱または前記外箱から離間した部位があり、この部位にも前記発泡断熱材が充填されている冷蔵庫。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 内箱と外箱を備える冷蔵庫本体を有する冷蔵庫において、 少なくとも前記内箱および前記外箱の一方に接している複数の断熱パネルと、 前記内箱の背面よりも前側において、複数の前記断熱パネルの間に形成される離間部と、 前記離間部を介して前記冷蔵庫本体の内外を貫通するように設けられた接続手段と、 前記離間部に充填されて断熱する発泡断熱材と、 を備え、 前記離間部には、少なくとも1つの前記断熱パネルが前記内箱または前記外箱から離間した部位があり、この部位にも前記発泡断熱材が充填されており、 前記接続手段は、庫内側に、前記発泡断熱材が接触しない部分を有する冷蔵庫。」 2 補正の適否について 本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「離間部」に関して、「前記内箱の背面よりも前側において、複数の前記断熱パネルの間に形成される」と限定するとともに、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「接続手段」に関して、「庫内側に、前記発泡断熱材が接触しない部分を有する」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する (1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用された特開2007-56972号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審にて付したものである。なお、「・・・」は記載の省略を意味する。)。 (1-a)「【0004】 近年、地球温暖化に対する観点から、家電品の消費電力量削減の必要性が望まれている。そして、冷蔵庫は家電品の中で特に消費電力量の多い製品であるため、冷蔵庫の断熱箱体中に真空断熱材を採用して、この断熱箱体の熱漏洩量を低減することが提案されている。この真空断熱材の応用展開を推進するためには、コストアップや断熱性能の低下を招くことなく、被取付け部の形状に沿って真空断熱材を配設できるように変形性及び形状保持性を付与することが重要な課題となっている。 ・・・ 【0008】 本発明の目的は、断熱性能を確保しつつ、被取付け部に沿って変形された形状を保持できる真空断熱材及びそれを用いた冷蔵庫を提供することにある。」 (1-b)「【0015】 まず、本実施形態の冷蔵庫の全体に関して図1を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態の真空断熱材及びそれを用いた冷蔵庫を示す縦断面図である。 【0016】 冷蔵庫は、箱状に形成された冷蔵庫の箱体20と、冷蔵庫の箱体20の前面開口を開閉する扉6とを備えて構成されている。冷蔵庫の箱体20は、外箱23と、内箱21と、外箱23と内箱21とによって形成される断熱壁中に設置された後述する真空断熱材30,80と、前記外箱23や内箱21および前記真空断熱材30,80と接着可能な、それ自身に接着力を有するウレタン等の発泡断熱材22とにより構成されている。この断熱壁は、底壁、両側壁、上壁及び背壁から構成されている。最下部の扉6は、外箱と、内箱と、外箱と内箱とによって形成される断熱壁中に設置された後述する真空断熱材80と、外箱や内箱および前記真空断熱材80と接着可能な、それ自身に接着力を有するウレタン等の発泡断熱材とにより構成されている。上部の扉6に真空断熱材80を設置しても良い。 【0017】 また、冷蔵庫の箱体20は、温度の異なる貯蔵室10?12を複数形成しており、各貯蔵室10?12間には区画壁(図示せず)が設けられている。貯蔵室10は、温度の低い貯蔵室(具体的には冷凍室)であり、複数の貯蔵室における最下部に配置されている。貯蔵室11は、温度の低い貯蔵室10より温度が高い貯蔵室(具体的には野菜室)であり、複数の貯蔵室における中間部に配置されている。貯蔵室12は、温度の低い貯蔵室10より温度が高い貯蔵室(具体的には冷蔵室)であり、複数の貯蔵室における最上部に配置されている。貯蔵室10?12は、圧縮機13、凝縮器14、減圧装置及び冷却器などからなる冷凍サイクル及び冷却ファンなどを用いて冷却される。」 (1-c)「 」 (図1において、当審にて、離間部を示す位置を概略○で図示した。) (1-d)図1には、内箱21および外箱23の一方に接している複数の真空断熱材30が示されている。 (1-e)図1には、内箱21の背面よりも前面において、複数の真空断熱材30の間に形成される離間部(図1において、概略○で囲まれている部分)が示されており、離間部には発泡断熱材22が充填されている。また、離間部には、真空断熱材30が内箱21または外箱23から離間した部位があり、この部位にも発泡断熱材22が充填されていること(図1において、概略○で囲まれた離間部において、内箱21または外箱23と真空断熱材22との間に発泡断熱材22が介在する部分があること)が把握できる。 (1-f)段落【0017】には、「貯蔵室10?12は、圧縮機13、凝縮器14、減圧装置及び冷却器などからなる冷凍サイクル及び冷却ファンなどを用いて冷却される。」と記載されており、図1には、離間部の上部に冷却器が配置されていること(図1において、概略○で囲まれた離間部の上部に四角形状の冷却器があること)が示されている。 上記(1-a)?(1-f)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。 「内箱21と、外箱23を備える冷蔵庫の箱体20を有する冷蔵庫において、 内箱21および外箱23の一方に接している複数の真空断熱材30と、 内箱21の背面よりも前面において、複数の真空断熱材30の間に形成される離間部と、 前記離間部に充填される発泡断熱材22と、 を備え、 前記離間部には、少なくとも1つの真空断熱材30が内箱21または外箱23から離間した部位があり、この部位にも前記発泡断熱材30が充填されており、 前記離間部の上部に冷却器が配置されている冷蔵庫。」 (2)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「内箱21」、「外箱23」、「箱体20」は、それぞれ、本願補正発明の「内箱」、「外箱」、「本体」に相当する。 よって、引用発明の「内箱21と、外箱23を備える冷蔵庫の箱体20を有する冷蔵庫」は、本願補正発明の「内箱と外箱を備える冷蔵庫本体を有する冷蔵庫」に相当する。 イ 引用発明の「真空断熱材30」は、本願補正発明の「断熱パネル」に相当する。 よって、引用発明の「内箱21および外箱23の一方に接している複数の真空断熱材30」は、本願補正発明の「少なくとも前記内箱および前記外箱の一方に接している複数の断熱パネル」に相当する。 ウ 引用発明の「内箱21の背面よりも前面において、複数の真空断熱材30の間に形成される離間部」は、本願補正発明の「前記内箱の背面よりも前側において、複数の前記断熱パネルの間に形成される離間部」に相当する。 エ 引用発明の「離間部に充填される発泡断熱材22」が断熱することは明らかである。 よって、引用発明の「前記離間部に充填される発泡断熱材22」は、本願補正発明の「前記離間部に充填されて断熱する発泡断熱材」に相当する。 オ 引用発明の「前記離間部には、少なくとも1つの真空断熱材30が内箱21または外箱23から離間した部位があり、この部位にも前記発泡断熱材30が充填され」る点は、本願補正発明の「前記離間部には、少なくとも1つの前記断熱パネルが前記内箱または前記外箱から離間した部位があり、この部位にも前記発泡断熱材が充填され」る点に相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「内箱と外箱を備える冷蔵庫本体を有する冷蔵庫において、 少なくとも前記内箱および前記外箱の一方に接している複数の断熱パネルと、 前記内箱の背面よりも前側において、複数の前記断熱パネルの間に形成される離間部と、 前記離間部に充填されて断熱する発泡断熱材と、 を備え、 前記離間部には、少なくとも1つの前記断熱パネルが前記内箱または前記外箱から離間した部位があり、この部位にも前記発泡断熱材が充填されている冷蔵庫。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本願補正発明は、「離間部を介して前記冷蔵庫本体の内外を貫通するように設けられた接続手段」を備え、「接続手段は、庫内側に、発泡断熱材が接触しない部分を有する」のに対し、引用発明は、接続手段について明示されていない点。 (3)判断 ア 上記[相違点]について検討する。 引用発明の冷蔵庫は、離間部の上部に冷却器が配置されているものである。 一方、冷蔵庫において、冷却器からの除霜水を庫外に排水するための排水経路を冷蔵庫本体の内外を貫通するように設けることは周知の技術である。 (例えば、特開平7-269779号公報の段落【0028】、図1に記載された排水口13、特開2006-183897号公報の段落【0030】、図3に記載された排水孔27、特開2007-85613号公報の段落【0009】、図4に記載されたドレンホース9、14、特開2004-257647号公報の段落【0022】、図1の排水管24a、24bを参照のこと。) そして、引用発明の冷却器も発生する除霜水を庫外に排水する必要があることは明らかであるから、引用発明に周知の技術を適用し、冷却部の下部の離間部に排水経路(接続手段)を冷蔵庫本体の内外に貫通するように設けることは、当業者にとって格別困難なことではない。 また、冷蔵庫本体の内外に貫通する排水経路を設ける際に、庫内側に、どの程度、発泡断熱材が接触しない部分を有するようにするかは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 (例えば、上記周知の技術として示した特開2007-85613号公報に記載されたドレンホース9は、庫内側に発泡断熱材が接触しない部分を有しており(図4参照)、特開2004-257647号公報に記載された排水管の排水管24aも、同様に、庫内側に発泡断熱材が接触しない部分を有している(図1参照)) よって、引用発明に周知の技術を適用し、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ 本願補正発明が奏する効果について 本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明及び周知の技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 ウ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において「これに対して、引用文献5(特開平7-269779号公報)は、確かに、冷蔵庫本体の内外を貫通する排水孔13を設けることを開示しているものと見受けられる。しかしながら、この引用文献5の排水口13は、明らかに、「発泡断熱材11が接触しない部分」を庫内側に有していない。 また、引用文献6(特開2006-183897号公報)は、確かに、冷蔵庫本体の内外を貫通する排水手段27を設けることを開示しているものと見受けられる。しかしながら、この引用文献6の排水手段27も、明らかに、「発泡断熱材が接触しない部分」を庫内側に有していない。 以上の通り、引用文献5,6は、何れも、本願発明の特徴点について何ら開示も示唆もしていない。よって、これら引用文献5,6は、本願発明とは明らかに相違する。また、本願発明は、これら引用文献5,6に基づいて容易に想到し得た発明ではない。」と主張する(「(3-3)本願が特許されるべき理由」)。 しかしながら、上記(3)アで指摘したとおり、冷蔵庫本体の内外に貫通する排水経路を設ける際に、庫内側に、どの程度、発泡断熱材が接触しない部分を有するようにするかは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。また、周知の技術を示す文献として追加した特開2007-85613号公報、及び特開2004-257647号公報には、排水経路としての排水管が庫内側に発泡断熱材が接触しない部分を有している点が記載されている。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (4)まとめ 以上のように、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年4月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2[理由]1(1)」に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献4:特開2007-56972号公報(引用例1) 引用文献5:特開平7-269779号公報(周知技術を示す文献) 引用文献6:特開2006-183897号公報(周知技術を示す文献) 3 引用例 引用例1及びその記載事項は、前記「第2[理由]3(1)」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本願補正発明から「離間部」に関して、「前記内箱の背面よりも前側において、複数の前記断熱パネルの間に形成される」との限定を削除するとともに、「接続手段」に関して、「庫内側に、前記発泡断熱材が接触しない部分を有する」との限定を削除するものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3(3)(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-08-27 |
結審通知日 | 2021-08-31 |
審決日 | 2021-09-16 |
出願番号 | 特願2019-38585(P2019-38585) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 庭月野 恭 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
平城 俊雅 山崎 勝司 |
発明の名称 | 冷蔵庫 |
代理人 | 特許業務法人 サトー国際特許事務所 |