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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1379561
審判番号 不服2020-10558  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-29 
確定日 2021-11-24 
事件の表示 特願2018-197318「冷却システム、サーバー、及びサーバーシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 8日出願公開、特開2019-133631、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成30年10月19日(パリ条約による優先権主張2018年1月30日,米国、2018年5月21日,米国)の出願であって、令和元年10月29日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月22日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和2年4月24日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和2年7月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、その後、令和3年6月29日付けで当審より拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由」という。)、令和3年9月27日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献A-Eに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特表2016-502714号公報
B.中国実用新案第202587734号明細書
C.特表2015-501480号公報
D.特開2005-229038号公報
E.特開2003-263244号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1-2、4-6に係る発明は、引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.国際公開第2009/034632号(当審において新たに引用した文献)
2.米国特許出願公開第2017/0367217号明細書(当審において新たに引用した文献)
3.中国実用新案第202587734号明細書(原査定の引用文献B)
4.特開2006-66669号公報(当審において新たに引用した文献)
5.特開昭62-204598号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、令和3年9月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であって、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
発熱電子素子を冷却するための冷却システムであって、
冷却装置と、
前記冷却装置からの冷却流体を伝送し、また加熱された前記冷却流体を前記冷却装置に返送するための一体的に接続される複数の金属パイプを含み、発熱する電子素子を冷却するための少なくとも1つの冷却プレートと、
前記金属パイプの各々を前記冷却装置に接続するための複数のシリコンケースと、
前記シリコンケースと前記電子素子との間に設けられるアンチスプレープレートと、
前記冷却装置、前記シリコンケース、及び前記アンチスプレープレートの下に位置し、且つ前記シリコンケースから漏れる如何なる水を収集するためのウォータートレイと、
前記ウォータートレイに接続され、前記ウォータートレイに収集された如何なる水を、前記電子素子を含むシャーシから離させるようにガイドする排水口と、
を含み、
前記アンチスプレープレートは、如何なる噴水を前記電子素子から離させるようにガイドするように、逆に湾曲した上面を有する冷却システム。」

なお、本願発明2-5の概要は以下のとおりである。

本願発明2-3は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明4、5は、それぞれ、本願発明1に対応する「サーバー」、「サーバーシステム」の発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1
当審拒絶理由に引用した引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。


ア 段落[0029]-[0030]
「[0029] 本体筐体12の収容空間にはプリント基板19上に液冷ユニット27が配置される。液冷ユニット27は、第1LSIパッケージ21に受け止められる例えば箱形の第1受熱器28を備える。第1受熱器28は例えばプリント基板19にねじ留めされればよい。第1受熱器28は例えばアルミニウムといった熱伝導性の金属材料から構成される。CPUチップの熱は第1受熱器28に伝達される。その結果、第1受熱器28はCPUチップの熱を奪う。第1受熱器28の内部空間には冷媒の流通路が確立される。液冷ユニット27では、第1受熱器28から一巡する冷媒の循環経路が確立される。冷媒には例えばプロピレングリコール系の不凍液が用いられればよい。

[0030] 循環経路には第2LSIパッケージ22に受け止められる第2受熱器29が組み入れられる。第2受熱器29は第1受熱器28の下流で第1受熱器28に接続される。第2受熱器29は、ビデオチップに受け止められる伝熱板を備える。伝熱板は後述の金属管に取り付けられる。金属管内では冷媒が流通する。伝熱板は例えばプリント基板19にねじ留めされればよい。伝熱板は例えばアルミニウムといった熱伝導性の金属材料から形成されればよい。ビデオチップの熱は伝熱板に伝達される。その結果、第2受熱器29はビデオチップの熱を奪う。」

イ 段落[0036]-[0037]
「[0036] 図3に示されるように、第1受熱器28および第2受熱器29の間、第2受熱器29および熱交換器31の間、熱交換器31およびタンク38の間、タンク38およびポンプ39の間、ポンプ39および第1受熱器28の間はそれぞれ1本の弾性チューブ41で接続される。弾性チューブ41の両端は先端から、第1受熱器28や第2受熱器29、熱交換器31、タンク38、ポンプ39の金属管すなわちニップル42を受け入れる。こうして弾性チューブ41はニップル42に結合される。弾性チューブ41やニップル42は例えば円筒形に形成される。

[0037] 弾性チューブ41は例えばゴムといった可撓性の弾性樹脂材料から構成されればよい。ニップル42は例えばアルミニウムといった熱伝導性の金属材料から形成されればよい。弾性チューブ41の弾性に基づき第1受熱器28や第2受熱器29、熱交換器31、タンク38、ポンプ39の相対的な位置ずれは許容される。弾性チューブ41の長さは、位置ずれを許容する最小値に設定されればよい。弾性チューブ41がニップル42から取り外されると、第1受熱器28や第2受熱器29、熱交換器31、タンク38、ポンプ39はそれぞれ個別に簡単に交換される。」

ウ [図3]




エ 段落[0055]-[0056]
「[0055] 液冷ユニット27には、前述の固定部材52に代えて、図13に示されるように、固定部材74が組み込まれてもよい。固定部材74は、ポンプ本体51の周囲を途切れなく囲む周壁75を区画する。周壁75の一辺に前述の第1溝54および第2溝55が区画される。図14を併せて参照し、周壁75は、ポンプ本体51の底面に向き合わせられる底板76の表面から立ち上がる。こうして周壁75および底板76は協働で器を構成する。ポンプ本体51は器内に収容される。底板76はプリント基板19の表面に受け止められる。こうした固定部材74は前述と同様に防振ゴムから構成される。その他、前述と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。

[0056] こうした固定部材74によれば、たとえ流入側ニップル42aおよび第1弾性チューブ41aの間や、流出側ニップル42bおよび第2弾性チューブ41bの間から冷媒が漏れ出たとしても、漏れ出た冷媒は底板76に受け止められる。周壁75の働きで冷媒は固定部材74内に堰き止められる。固定部材74からプリント基板19の表面に冷媒の漏れ出しは回避される。プリント基板19上の配線パターンや電子部品の間で例えば短絡の発生は回避される。ノートパソコン11の故障はできる限り抑制される。」

オ [図13]




(2) 引用発明
よって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

「第1受熱器28は例えばアルミニウムといった熱伝導性の金属材料から構成され、CPUチップの熱は第1受熱器28に伝達され、
第2受熱器29は、ビデオチップに受け止められる伝熱板を備え、伝熱板は例えばアルミニウムといった熱伝導性の金属材料から形成され、ビデオチップの熱は伝熱板に伝達され、
第1受熱器28および第2受熱器29の間、第2受熱器29および熱交換器31の間、熱交換器31およびタンク38の間、タンク38およびポンプ39の間、ポンプ39および第1受熱器28の間はそれぞれ1本の弾性チューブ41で接続され、弾性チューブ41の両端は先端から、第1受熱器28や第2受熱器29、熱交換器31、タンク38、ポンプ39の金属管すなわちニップル42を受け入れ、
弾性チューブ41は例えばゴムといった可撓性の弾性樹脂材料から構成され、
ニップル42は例えばアルミニウムといった熱伝導性の金属材料から形成され、
弾性チューブ41の長さは、位置ずれを許容する最小値に設定され、
固定部材74は、ポンプ本体51の周囲を途切れなく囲む周壁75を区画し、
周壁75は、ポンプ本体51の底面に向き合わせられる底板76の表面から立ち上がり、こうして周壁75および底板76は協働で器を構成し、ポンプ本体51は器内に収容され、
こうした固定部材74によれば、たとえ流入側ニップル42aおよび第1弾性チューブ41aの間や、流出側ニップル42bおよび第2弾性チューブ41bの間から冷媒が漏れ出たとしても、漏れ出た冷媒は底板76に受け止められ、周壁75の働きで冷媒は固定部材74内に堰き止められる、
液冷ユニット27。」

2 引用文献2-5について

(1) 引用文献2
引用文献2には、段落[0028]、[Fig.1]に、下記の記載がある。

「[0028]Again, referring to FIG. 1 of the drawings, two tubes 17 are connected to tube connectors 18 respectively, a sealing ring for tube connector 21 is connected to one end of the tube connector 18, then a silicon casing tube 16 is coupled to the other end of each of the two tubes 17 such that a connecting tube body is formed, lastly, the two tube bodies are connected to the water inlet port 31 and the water outlet port 32 respectively by using fixtures such that the tube bodies are connected to the assembled radiator unit.・・・(以下略)」
(当審訳:
[0028] 再び、図1を参照すると、2本のチューブ17はチューブコネクタ18に接続され、チューブコネクタ21の封止リングはチューブコネクタ18の一端に接続され、シリコン・ケーシング・チューブ16は2本のチューブ17の他端に接続されることによって、接続チューブ本体が形成される。最後に、2本のチューブ本体は、このような取付具を用いて、それぞれが、水取入れ口31と水取出し口32に接続されることで、チューブ本体が組立てられた放熱ユニットに接続される。・・・(以下略))




引用文献2の上記記載から、パイプの接続部を「シリコン」素材で構成する点は、周知技術であったと認められる。

(2) 引用文献3
引用文献3には、段落[0014]、[図1]に、下記の記載がある。

「段落[0003](当審訳)
図中で、1はヒートパイプ、2は水タンク、3は隔水板、4は蒸発端、5は凝縮端、6は水入力孔、7は水出口孔、8はタンク、9は水冷ヘッド、10は導熱板、1はキャビネット用隔水板である。」





引用文献3の上記記載から、パイプに「隔水版3」を取り付ける点は、公知技術であったと認められる。

(3) 引用文献4-5
ア 引用文献4には、段落【0021】に、下記の記載がある。

「【0021】
そのため本発明では送信機ラック101の最下部に漏水の受け皿115を設けている。この漏水の受け皿115には、漏水センサのコネクタ116、漏水センサ201(漏水検知器または漏水検知部とも言う。)および漏水を外部に排出するドレイン部202が設けられている。」

イ 引用文献5には、第3頁左下欄第16行-右下欄第18行に、下記の記載がある。
「上記の構成の装置において本発明全実施するため用意されたのは上記実装された構成対7の下部に設けられたもれた水を誘導する部材5と受け皿4と共通のセンサ6等であり特徴を構成するのは細部構造や配量関係である。
第1図あるいは第3図に示す如く誘導する部材5は構成対7の夫々の下(実装シェルフ支持構造1aの下でもある)に用意される底に排水孔5bと接続されるダクト5aの付いたまた、上部は受け口として構成対の下をカバーして開口した、また受け口から排水孔の間は傾きを有する誘導壁5cと構造壁5dより構成された全体的に見てじょうご状の部材である。
また受け皿4はさらに誘導する部材5の下に配置され各ダクト5aからの水を必要時以外は下にもらさない様に貯えるもので上部に開口した底4aのある皿を構成する壁構造部4bと壁構造部4bの途中に設けられた水センサを取付けるたな4cとあとは必要時に貯っている水をすてるための排水バルブ4dとドレーンパイプ4eを有するものであり一定量の水を集めてたくわえることとセンサ6が水にぬれて水を検出する条件を設定するものである。」

引用文献4、5の上記記載から、冷却システムなどの熱機器において、冷媒が漏れた場合に備えて「受け皿」や「排水手段」を設ける点は、周知技術であったと認められる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と、引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「CPUチップ」と「ビデオチップ」は、本願発明1の「発熱電子素子」に相当する。
よって、引用発明の「液冷ユニット27」は、本願発明1の「発熱電子素子を冷却するための冷却システム」に相当する。

イ 引用発明の「ポンプ本体51」を含む「ポンプ39」は、本願発明1の「冷却装置」に相当する。

ウ 引用発明の「第1受熱器28および第2受熱器29」の流入側と流出側の「金属管すなわちニップル42」は、「例えばアルミニウムといった熱伝導性の金属材料から形成され」るから、本願発明1の「複数の金属パイプ」に相当する。
よって、引用発明の「金属管すなわちニップル42」を備える「第1受熱器28および第2受熱器29」は、本願発明1の「前記冷却装置からの冷却流体を伝送し、また加熱された前記冷却流体を前記冷却装置に返送するための一体的に接続される複数の金属パイプを含み、発熱する電子素子を冷却するための少なくとも1つの冷却プレート」と、「前記冷却装置からの冷却流体を伝送し、また加熱された前記冷却流体を前記冷却装置に返送するための複数の金属パイプを含み、発熱する電子素子を冷却するための少なくとも1つの冷却プレート」である点で共通するといえる。

エ 引用発明の「弾性チューブ41」は、「弾性チューブ41の両端は先端から、第1受熱器28や第2受熱器29、熱交換器31、タンク38、ポンプ39の金属管すなわちニップル42を受け入れ、弾性チューブ41は例えばゴムといった可撓性の弾性樹脂材料から構成され」、「弾性チューブ41の長さは、位置ずれを許容する最小値に設定され」るから、本願発明1の「前記金属パイプの各々を前記冷却装置に接続するための複数のシリコンケース」と、「前記金属パイプの各々を前記冷却装置に接続するための複数の樹脂材料」である点で共通するといえる。

オ 引用発明の「周壁75および底板76」を含む「固定部材74」は、「固定部材74は、ポンプ本体51の周囲を途切れなく囲む周壁75を区画し、周壁75は、ポンプ本体51の底面に向き合わせられる底板76の表面から立ち上がり、こうして周壁75および底板76は協働で器を構成し、ポンプ本体51は器内に収容され、こうした固定部材74によれば、たとえ流入側ニップル42aおよび第1弾性チューブ41aの間や、流出側ニップル42bおよび第2弾性チューブ41bの間から冷媒が漏れ出たとしても、漏れ出た冷媒は底板76に受け止められ、周壁75の働きで冷媒は固定部材74内に堰き止められる」から、本願発明1の「前記冷却装置、前記シリコンケース、及び前記アンチスプレープレートの下に位置し、且つ前記シリコンケースから漏れる如何なる水を収集するためのウォータートレイ」と、「前記冷却装置、前記樹脂材料の下に位置し、且つ前記樹脂材料から漏れる如何なる水を収集するためのウォータートレイ」である点で共通するといえる。

よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。

[一致点]
「発熱電子素子を冷却するための冷却システムであって、
冷却装置と、
前記冷却装置からの冷却流体を伝送し、また加熱された前記冷却流体を前記冷却装置に返送するための複数の金属パイプを含み、発熱する電子素子を冷却するための少なくとも1つの冷却プレートと、
前記金属パイプの各々を前記冷却装置に接続するための複数の樹脂材料と、
前記冷却装置、前記樹脂材料の下に位置し、且つ前記樹脂材料から漏れる如何なる水を収集するためのウォータートレイと、
を含む冷却システム。」

[相違点1]
本願発明1は、「一体的に接続される」複数の金属パイプを含むのに対して、引用発明の「金属管すなわちニップル42」は、「一体的に接続される」ことが特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1は、樹脂材料として「シリコンケース」を用いるのに対して、引用発明の「弾性チューブ41は例えばゴムといった可撓性の弾性樹脂材料から構成され」、「弾性チューブ41の長さは、位置ずれを許容する最小値に設定され」るものであって、「シリコンケース」であることが特定されていない点。

[相違点3]
本願発明1は、「前記シリコンケースと前記電子素子との間に設けられるアンチスプレープレート」を含み、「前記アンチスプレープレートは、如何なる噴水を前記電子素子から離させるようにガイドするように、逆に湾曲した上面を有する」のに対して、引用発明は、そのような「アンチスプレープレート」を含まない点。

[相違点4]
本願発明1の「ウォータートレイ」は、「前記冷却装置、前記シリコンケース、及び前記アンチスプレープレートの下に位置し、且つ前記シリコンケースから漏れる如何なる水を収集する」のに対して、引用発明の「周壁75および底板76」を含む「固定部材74」は、「前記シリコンケース、及び前記アンチスプレープレート」の下に位置するものではなく、且つ「前記シリコンケース」から漏れる水を収集していない点。

[相違点5]
本願発明では、「前記ウォータートレイに接続され、前記ウォータートレイに収集された如何なる水を、前記電子素子を含むシャーシから離させるようにガイドする排水口」を含むのに対して、引用発明は、「排水口」を含むことが特定されていない点。

(2) 当審の判断
事案に鑑みて、上記[相違点3]について先に検討する。
本願発明1の上記[相違点3]に係る、「前記シリコンケースと前記電子素子との間に設けられるアンチスプレープレート」を含み、「前記アンチスプレープレートは、如何なる噴水を前記電子素子から離させるようにガイドするように、逆に湾曲した上面を有する」構成は、上記引用文献1-5には記載されておらず、周知技術であるともいえない。
特に、引用文献3(上記第5の2(2)を参照。)には、パイプに「隔水版3」(本願発明1の「アンチスプレープレート」に対応するといえる。)を取り付ける点が開示されている。しかしながら、たとえ引用発明に、上記引用文献3に開示される「隔水板3」を設けることが想定できたとしても、さらに、「前記アンチスプレープレートは、如何なる噴水を前記電子素子から離させるようにガイドするように、逆に湾曲した上面を有する」構成とすることまでは開示されておらず、また、そのように構成する起因も見出し難い。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 請求項2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の上記[相違点3]に係る、「前記シリコンケースと前記電子素子との間に設けられるアンチスプレープレート」を含み、「前記アンチスプレープレートは、如何なる噴水を前記電子素子から離させるようにガイドするように、逆に湾曲した上面を有する」構成と、(実質的に)同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定についての判断
令和3年9月27日付けの補正により、補正後の請求項1-5は、本願発明1の上記[相違点3]に係る、「前記シリコンケースと前記電子素子との間に設けられるアンチスプレープレート」を含み、「前記アンチスプレープレートは、如何なる噴水を前記電子素子から離させるようにガイドするように、逆に湾曲した上面を有する」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A-Eには記載されておらず、周知技術でもないので、本願発明1-5は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Eに基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-11-04 
出願番号 特願2018-197318(P2018-197318)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊田 真弓  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 小田 浩
稲葉 和生
発明の名称 冷却システム、サーバー、及びサーバーシステム  
代理人 小林 俊弘  
代理人 好宮 幹夫  

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