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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1379621
審判番号 不服2020-4438  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-02 
確定日 2021-11-11 
事件の表示 特願2017-124326「エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物の製造方法、熱伝導材料前駆体、Bステージシート、プリプレグ、熱伝導材料、積層板、金属基板及びプリント配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 8日出願公開、特開2018- 21180〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月1日に出願した特願2013-76333号(以下、「出願6」という。)の一部を平成29年6月26日に新たな特許出願(特願2017-124326号)としたものであって、平成30年4月27日付け拒絶理由通知に対し、同年7月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年12月18日付け拒絶理由通知に対し、平成31年3月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、令和1年5月21日付け拒絶理由通知に対し、同年7月25日に意見書が提出されたが、同年12月24日付けで拒絶査定がなされ、令和2年4月2日にこれを不服とする審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?16に係る発明は、平成31年3月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1及び2は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
表面の酸素原子濃度が1.5at%以上の窒化ホウ素粒子と、下記一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーと、硬化剤と、を含むエポキシ樹脂組成物。

〔一般式(1)中、Xは単結合又は下記化学式で表される2価の基からなる群(I)より選ばれる少なくとも1つから構成される連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1?8の脂肪族炭化水素基、炭素数1?8の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0?4の整数を示し、kは0?7の整数を示し、mは0?8の整数を示し、lは0?12の整数を示す。〕

【請求項2】
前記窒化ホウ素粒子の含有率が、全固形分中20質量%?95質量%である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。
(同日出願)この出願の請求項2に係る発明は、同日出願された以下の出願6に係る発明と同一と認められ、かつ、出願6に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

「・請求項 1
・引用文献 6
・備考
・・・
本願発明1と先願発明1とを対比すると、「表面の酸素原子濃度」について、前者では「1.5at%以上」と特定するのに対し、後者では「1.5at%以上5at%以下」と特定する点で一見相違するが、当該特定された数値範囲が「1.5at%以上5at%以下」の範囲で重複する部分を包含するものであり、しかも、当該数値範囲を「5at%」の範囲に減縮したことによる臨界的意義もみあたらないから、この点は相違点ではない。
また、両者は、「窒化ホウ素粒子の含有率」の含有量について、前者では特定がないのに対し、後者では「全固形分中20質量%?95質量%」と特定する点で一見相違するが、当該特定された数値範囲が「全固形分中20質量%?95質量%」の範囲で重複する部分を包含するものであり、しかも、当該数値範囲を「全固形分中20質量%?95質量%」の範囲に減縮したことによる臨界的意義も見当たらないから、この点も相違点ではない。
そうすると、両者は全ての点で一致しており相違点はない。
よって、本願発明1は、先願発明1と同一である。
・・・
・請求項 2
・引用文献 6
・備考
本願発明2は、同発明1において、窒化ホウ素粒子の含有率を「前固形分中20質量%?95質量%」と規定するものである。
よって、窒化ホウ素粒子の含有率が「前固形分中20質量%?95質量%」であることを規定する先願発明1とは、相違しないものである。
よって、本願発明2は、先願発明1と同一である。
・・・
<引用文献等一覧>
6.特願2013-76333号(特許第6411010号)」

第4 当審の判断
第1で述べたように、本願は、出願6の一部を新たな特許出願としたものであり、適法に出願されたものであるから、特許法第44条第1項の規定により、出願6の出願日にされたものとみなされる。

1 本願発明及び本願明細書に記載された事項
(1)本願の請求項2に係る発明
本願の請求項2に係る発明は第2で述べたとおりの事項により特定されるものであり、請求項2に係る発明を独立形式で表現すると、以下のようになる。

「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上の窒化ホウ素粒子と、下記一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーと、硬化剤と、を含むエポキシ樹脂組成物であり、
前記窒化ホウ素粒子の含有率が、全固形分中20質量%?95質量%であるエポキシ樹脂組成物。

〔一般式(1)中、Xは単結合又は下記化学式で表される2価の基からなる群(I)より選ばれる少なくとも1つから構成される連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1?8の脂肪族炭化水素基、炭素数1?8の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0?4の整数を示し、kは0?7の整数を示し、mは0?8の整数を示し、lは0?12の整数を示す。〕

」(以下、請求項2に係る発明を「本願発明」という。)

(2)本願明細書に記載された事項
本願明細書には、次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
近年、電子機器の小型化によるエネルギー密度の増加に伴い、単位体積当たりの発熱量が増加傾向にあることから、電子機器を構成する絶縁材料には高い熱伝導性が求められている。また、絶縁材料には、絶縁耐圧の高さ及び成型の容易さの観点から、広くエポキシ樹脂が用いられている。エポキシ樹脂の高熱伝導化の方法として、例えば特許文献1には、配向性の高いメソゲン基を有するモノマーを含む樹脂組成物を重合させた液晶性エポキシ樹脂を利用することが有効であることが記載されている。
【0003】
更に、エポキシ樹脂の熱伝導性を高めるために、熱伝導率が高く、絶縁性のフィラーを樹脂に添加する方法が一般に用いられている。熱伝導率が高く、絶縁性のフィラーとしては、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム、アルミナ等がある。
・・・
【0005】
しかし、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物粒子と液晶性エポキシ樹脂とをコンポジット化すると、液晶性エポキシ樹脂の配向を無機窒化物粒子が阻害し、熱伝導率が低下する場合があった。
そこで本発明の課題は、硬化物としたときに熱伝導率に優れるエポキシ樹脂組成物、熱伝導材料前駆体、Bステージシート、プリプレグ、熱伝導材料、積層板、金属基板、及びプリント配線板を提供することにある。」

イ 「【0033】
(窒化ホウ素粒子)
本発明における窒化ホウ素粒子は、表面の酸素原子濃度が1.5at%以上である。
一般的に窒化ホウ素粒子の表面エネルギーは小さく、窒化ホウ素粒子はエポキシ樹脂に対する分散性に優れない傾向にある。そこで本発明者らは、窒化ホウ素粒子のエポキシ樹脂に対する分散性を向上させるために、窒化ホウ素粒子の表面エネルギーを高めることを検討した。その鋭意検討の過程で、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を1.5at%以上にすると、窒化ホウ素粒子の表面エネルギーを向上させることができ、窒化ホウ素粒子を含むエポキシ樹脂組成物中の液晶性エポキシモノマーの配向性、更にはエポキシ樹脂組成物の硬化物中の液晶性エポキシ樹脂の配向性が向上することを導き出した。これは、以下のように考えることができる。
【0034】
元来窒化ホウ素粒子は、n-ヘキサデカン、n-テトラデカン、n-ドデカン、n-ウンデカン、n-デカン、n-ノナン、n-オクタン等の非極性化合物に対する親和性が高く疎水性を示すが、水、ジヨードメタン、テトラブロモエタン、テトラクロロエタン、グリセリン、ホルムアミド等の極性化合物に対する親和性は低く親水性に乏しい。ここで、液晶性エポキシモノマーのエポキシ基は親水性基であることから、液晶性エポキシモノマーの配向性を高めるためには、窒化ホウ素粒子の表面を適度に親水性化して、窒化ホウ素粒子と液晶性エポキシモノマーとの親和性を向上させることが有効であると考えられる。
液晶性エポキシモノマーの配向性の向上に効果的な、窒化ホウ素粒子の適度な親水性化の状態が、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度1.5at%以上であるものと考えられる。
【0035】
このように、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を1.5at%以上とすることで、液晶性エポキシモノマーの配向が阻害されにくくなる。そのため、本発明のエポキシ樹脂組成物の半硬化物及び硬化物中に含まれる、液晶性エポキシモノマーと硬化剤とに由来する液晶性エポキシ樹脂の配向も窒化ホウ素粒子によって阻害されにくくなり、エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導性が向上する。
【0036】
より液晶性エポキシモノマーの配向性を高める観点から、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度は、2at%以上であることがより好ましい。これは、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を高めることにより、窒化ホウ素粒子の表面エネルギーが高くなって、液晶性エポキシモノマーの配向性が向上するためと考えられる。また、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度が高くなり過ぎて窒化ホウ素粒子の表面の酸化層自体が熱抵抗となり熱伝導性が低下するのを抑える観点から、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度は、5at%以下であることが望ましい。」

ウ 「【実施例】
【0131】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0132】
(実施例1)
体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子(水島合金鉄(株)商品名:HP-40)に卓上型光表面処理装置(セン特殊光源(株)装置名:Photo Surface Processor PL21-200)を用いて、攪拌しながら200Wの低圧水銀灯により10分間紫外線照射した。
【0133】
紫外線の照射強度は、紫外線積算光量計(USHIO UIT-150)により254nm光の光量を測定し、254nm光の平均照射強度として求めた。より具体的には、表面処理装置に紫外線積算光量計を入れて照射強度を測定し、光量計に表示された値を10秒毎に記録した。その後に記録した値の総和を紫外線照射時間で除して平均照射強度を求めた。
【0134】
紫外線照射した窒化ホウ素粒子をX線光電子分光装置(XPS)(島津/KRATOS社製:AXIS-HS)により、走査速度20eV/min(0.1eVステップ)で測定した。詳細な測定条件としては、X線源として、モノクロAl(管電圧;15kV、管電流;15mA)を使い、レンズ条件は、HYBRID(分析面積;600μm×1000μm)とし、分解能は、Pass Energy 40として測定した。測定により得られた、酸素、窒素、ホウ素及び炭素のピーク面積値をそれぞれの元素の感度係数で補正した。補正した、酸素、窒素、ホウ素及び炭素の総量に対する酸素の比を求めることにより、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を測定した。表面の酸素原子濃度は、2.5at%であった。
【0135】
測定により得られた、酸素、窒素、ホウ素及び炭素のピーク面積値にそれぞれの元素の感度係数で補正する方法は、具体的には、酸素に対しては、528eVから537eVのピーク面積値を、酸素に対する感度係数0.780で除し、窒素に対しては、395eVから402eVのピーク面積値を、窒素に対する感度係数0.477で除し、ホウ素に対しては、188eVから194eVのピーク面積値を、ホウ素に対する感度係数0.159で除し、炭素に対しては、282eVから289eVのピーク面積値を、炭素に対する感度係数0.278で除した。
【0136】
紫外線照射した窒化ホウ素粒子、液晶性エポキシ樹脂(1-(3-メチル-4-オキシラニルメトキシフェニル)-4-(オキシラニルメトキシフェニル)-1-シクロヘキセン、一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマー)(以下、「樹脂1」ともいう)と、硬化剤(1,5-ジアミノナフタレン)と、溶剤(シクロヘキサノン)と、を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。液晶性エポキシモノマー及び硬化剤の配合量は、液晶性エポキシモノマーのエポキシ基に対する硬化剤のアミンの活性水素のモル比が、1対1となるように調整した。また硬化後のエポキシ樹脂組成物における窒化ホウ素含有率が60質量%となるように窒化ホウ素の添加量を調整した。
【0137】
調製したエポキシ樹脂組成物を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、300μmの厚さで塗工した後、エポキシ樹脂組成物をPETフィルムで挟み、140℃、1MPa、2分間で真空プレスすることによりBステージシートを得た。
【0138】
得られた半硬化物であるBステージシートの周期構造由来の回折角度を、広角X線回折装置(リガク製RINT2500HL)により測定した。詳細な測定条件としては、X線源として、Cuを用い、X線出力を50kV、250mAとし、発散スリット(DS)を1.0度とし、散乱スリット(SS)を1.0度とし、受光スリット(RS)を0.3mmとし、走査速度を1.0度/分として測定した。
測定した回折角度を、下記ブラッグの式で1周期の長さに換算した。
【0139】
2dsinθ=nλ
【0140】
ここで、dは1周期の長さ、θは回折角度、nは反射次数、λはX線波長(0.15406nm)を示している。
【0141】
得られたBステージシートの両面のPETフィルムを剥がし、代わりに表面が粗化された銅箔(古河電工社製、商品名:GTS)で挟み160℃で真空プレスを行い、銅箔に圧着させた。これを更に、140℃で2時間、更に190℃で2時間加熱することにより硬化させ、シート状の銅圧着硬化物を得た。
【0142】
得られた銅圧着硬化物の両面の銅箔を200g/Lの過硫酸アンモニウム及び5ml/Lの硫酸の混合溶液を用いた酸エッチングにより除去し、シート状のエポキシ樹脂硬化物を得た。
【0143】
得られたシート状のエポキシ樹脂硬化物を1cm角に切出し、熱拡散率を測定するための試験片とした。フラッシュ法装置(Bruker製、NETZSCH,nanoflash LFA447)を用いて、切出した試験片の熱拡散率を測定し、これにアルキメデス法により測定した密度とDSC法により測定した比熱とを乗じて、厚さ方向の熱伝導率を求めた。
【0144】
得られたシート状のエポキシ樹脂硬化物の周期構造由来の回折角度を、Bステージシートの場合と同様にして測定した。
【0145】
エポキシ樹脂硬化物に含まれる窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を測定するため、大気下において600℃で30分間加熱することにより樹脂分を分解させた。その後に残存した窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度をX線光電子分光装置(島津/KRATOS社製:AXIS-HS)により、走査速度20eV/min(0.1eVステップ)で測定した。得られた結果を表1に示す。
【0146】
詳細な測定条件としては、X線源として、モノクロAl(管電圧;15kV、管電流;15mA)を使い、レンズ条件は、HYBRID(分析面積;600×1000μm)とし、分解能は、PassEnergy40とした。
【0147】
(実施例2)
実施例1において、紫外線照射時間を20分としたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0148】
(実施例3)
実施例1において、紫外線照射時間を30分としたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0149】
(実施例4)
実施例3において、紫外線照射処理の前処理として、150℃の恒温槽で10分間熱処理をしたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0150】
(実施例5)
実施例4において、熱処理の温度を250℃としたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0151】
(実施例6)
実施例5において、熱処理の時間を30分としたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0152】
(実施例7)
実施例1において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例1と同様に紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0153】
(実施例8)
実施例2において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例2と同様に紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例2と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0154】
(実施例9)
実施例3において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例3と同様に紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例3と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0155】
(実施例10)
実施例4において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例4と同様に熱処理と紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例4と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0156】
(実施例11)
実施例5において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例5と同様に熱処理と紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例5と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0157】
(実施例12)
実施例6において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例6と同様に熱処理と紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例6と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0158】
(比較例1)
実施例6において、液晶性エポキシ樹脂(1-(3-メチル-4-オキシラニルメトキシフェニル)-4-(オキシラニルメトキシフェニル)-1-シクロヘキセンをエポキシモノマー(三菱化学製:jER828、一般式(1)とは異なる)に代えたこと以外は同様に実施例6と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、実施例1と同様に1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0159】
(比較例2)
窒化ホウ素粒子を処理せずに、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0160】
(比較例3)
実施例1において、紫外線照射時間を6秒としたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0161】
(比較例4)
窒化ホウ素粒子に150℃の恒温槽で10分間熱処理をした。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0162】
(比較例5)
窒化ホウ素粒子とアルミナ粒子を加熱処理も紫外線照射処理も行わずに、実施例7と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0163】
(比較例6)
実施例7において、窒化ホウ素粒子とアルミナ粒子の紫外線照射時間を6秒としたこと以外は同様の方法で粒子の処理を行った。実施例7と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0164】
(比較例7)
実施例7において、紫外線照射の代わりに150℃の恒温槽で10分間熱処理をしたこと以外は同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0165】
【表1】



2 出願6に係る発明及び出願6の明細書に記載された事項
(1)出願6に係る発明
出願6の請求項1に係る発明は、以下の事項により特定されるとおりのものである。

「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上5at%以下の窒化ホウ素粒子と、下記一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、前記窒化ホウ素粒子の含有率が、全固形分中20質量%?95質量%であるエポキシ樹脂組成物。

〔一般式(1)中、Xは単結合又は下記化学式で表される2価の基からなる群(I)より選ばれる少なくとも1つから構成される連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1?8の脂肪族炭化水素基、炭素数1?8の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0?4の整数を示し、kは0?7の整数を示し、mは0?8の整数を示し、lは0?12の整数を示す。〕

」(以下、出願6の請求項1に係る発明を「出願6発明」という。)

(2)出願6の明細書に記載された事項
出願6の明細書には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0002】
近年、電子機器の小型化によるエネルギー密度の増加に伴い、単位体積当たりの発熱量が増加傾向にあることから、電子機器を構成する絶縁材料には高い熱伝導性が求められている。また、絶縁材料には、絶縁耐圧の高さ及び成型の容易さの観点から、広くエポキシ樹脂が用いられている。エポキシ樹脂の高熱伝導化の方法として、例えば特許文献1には、配向性の高いメソゲン基を有するモノマーを含む樹脂組成物を重合させた液晶性エポキシ樹脂を利用することが有効であることが記載されている。
【0003】
更に、エポキシ樹脂の熱伝導性を高めるために、熱伝導率が高く、絶縁性のフィラーを樹脂に添加する方法が一般に用いられている。熱伝導率が高く、絶縁性のフィラーとしては、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム、アルミナ等がある。
・・・
【0005】
しかし、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物粒子と液晶性エポキシ樹脂とをコンポジット化すると、液晶性エポキシ樹脂の配向を無機窒化物粒子が阻害し、熱伝導率が低下する場合があった。
そこで本発明の課題は、硬化物としたときに熱伝導率に優れるエポキシ樹脂組成物、熱伝導材料前駆体、Bステージシート、プリプレグ、熱伝導材料、積層板、金属基板、及びプリント配線板を提供することにある。」

イ 「【0033】
(窒化ホウ素粒子)
本発明における窒化ホウ素粒子は、表面の酸素原子濃度が1.5at%以上である。
一般的に窒化ホウ素粒子の表面エネルギーは小さく、窒化ホウ素粒子はエポキシ樹脂に対する分散性に優れない傾向にある。そこで本発明者らは、窒化ホウ素粒子のエポキシ樹脂に対する分散性を向上させるために、窒化ホウ素粒子の表面エネルギーを高めることを検討した。その鋭意検討の過程で、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を1.5at%以上にすると、窒化ホウ素粒子の表面エネルギーを向上させることができ、窒化ホウ素粒子を含むエポキシ樹脂組成物中の液晶性エポキシモノマーの配向性、更にはエポキシ樹脂組成物の硬化物中の液晶性エポキシ樹脂の配向性が向上することを導き出した。これは、以下のように考えることができる。
【0034】
元来窒化ホウ素粒子は、n-ヘキサデカン、n-テトラデカン、n-ドデカン、n-ウンデカン、n-デカン、n-ノナン、n-オクタン等の非極性化合物に対する親和性が高く疎水性を示すが、水、ジヨードメタン、テトラブロモエタン、テトラクロロエタン、グリセリン、ホルムアミド等の極性化合物に対する親和性は低く親水性に乏しい。ここで、液晶性エポキシモノマーのエポキシ基は親水性基であることから、液晶性エポキシモノマーの配向性を高めるためには、窒化ホウ素粒子の表面を適度に親水性化して、窒化ホウ素粒子と液晶性エポキシモノマーとの親和性を向上させることが有効であると考えられる。
液晶性エポキシモノマーの配向性の向上に効果的な、窒化ホウ素粒子の適度な親水性化の状態が、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度1.5at%以上であるものと考えられる。
【0035】
このように、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を1.5at%以上とすることで、液晶性エポキシモノマーの配向が阻害されにくくなる。そのため、本発明のエポキシ樹脂組成物の半硬化物及び硬化物中に含まれる、液晶性エポキシモノマーと硬化剤とに由来する液晶性エポキシ樹脂の配向も窒化ホウ素粒子によって阻害されにくくなり、エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導性が向上する。
【0036】
より液晶性エポキシモノマーの配向性を高める観点から、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度は、2at%以上であることがより好ましい。これは、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を高めることにより、窒化ホウ素粒子の表面エネルギーが高くなって、液晶性エポキシモノマーの配向性が向上するためと考えられる。また、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度が高くなり過ぎて窒化ホウ素粒子の表面の酸化層自体が熱抵抗となり熱伝導性が低下するのを抑える観点から、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度は、5at%以下であることが望ましい。
【0037】
他方、窒化ホウ素粒子内部は、酸素原子濃度が低いことが好ましい。窒化ホウ素粒子内部の酸素原子濃度が高いと、酸素原子が窒化ホウ素の結晶格子の欠陥となり、熱伝導を阻害する場合がある。」

ウ 「【実施例】
【0131】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0132】
(実施例1)
体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子(水島合金鉄(株)商品名:HP-40)に卓上型光表面処理装置(セン特殊光源(株)装置名:Photo Surface Processor PL21-200)を用いて、攪拌しながら200Wの低圧水銀灯により10分間紫外線照射した。
【0133】
紫外線の照射強度は、紫外線積算光量計(USHIO UIT-150)により254nm光の光量を測定し、254nm光の平均照射強度として求めた。より具体的には、表面処理装置に紫外線積算光量計を入れて照射強度を測定し、光量計に表示された値を10秒毎に記録した。その後に記録した値の総和を紫外線照射時間で除して平均照射強度を求めた。
【0134】
紫外線照射した窒化ホウ素粒子をX線光電子分光装置(XPS)(島津/KRATOS社製:AXIS-HS)により、走査速度20eV/min(0.1eVステップ)で測定した。詳細な測定条件としては、X線源として、モノクロAl(管電圧;15kV、管電流;15mA)を使い、レンズ条件は、HYBRID(分析面積;600μm×1000μm)とし、分解能は、Pass Energy 40として測定した。測定により得られた、酸素、窒素、ホウ素及び炭素のピーク面積値をそれぞれの元素の感度係数で補正した。補正した、酸素、窒素、ホウ素及び炭素の総量に対する酸素の比を求めることにより、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を測定した。表面の酸素原子濃度は、2.5at%であった。
【0135】
測定により得られた、酸素、窒素、ホウ素及び炭素のピーク面積値にそれぞれの元素の感度係数で補正する方法は、具体的には、酸素に対しては、528eVから537eVのピーク面積値を、酸素に対する感度係数0.780で除し、窒素に対しては、395eVから402eVのピーク面積値を、窒素に対する感度係数0.477で除し、ホウ素に対しては、188eVから194eVのピーク面積値を、ホウ素に対する感度係数0.159で除し、炭素に対しては、282eVから289eVのピーク面積値を、炭素に対する感度係数0.278で除した。
【0136】
紫外線照射した窒化ホウ素粒子、液晶性エポキシ樹脂(1-(3-メチル-4-オキシラニルメトキシフェニル)-4-(オキシラニルメトキシフェニル)-1-シクロヘキセン、一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマー)(以下、「樹脂1」ともいう)と、硬化剤(1,5-ジアミノナフタレン)と、溶剤(シクロヘキサノン)と、を加えてエポキシ樹脂組成物を調製した。液晶性エポキシモノマー及び硬化剤の配合量は、液晶性エポキシモノマーのエポキシ基に対する硬化剤のアミンの活性水素のモル比が、1対1となるように調整した。また硬化後のエポキシ樹脂組成物における窒化ホウ素含有率が60質量%となるように窒化ホウ素の添加量を調整した。
【0137】
調製したエポキシ樹脂組成物を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、300μmの厚さで塗工した後、エポキシ樹脂組成物をPETフィルムで挟み、140℃、1MPa、2分間で真空プレスすることによりBステージシートを得た。
【0138】
得られた半硬化物であるBステージシートの周期構造由来の回折角度を、広角X線回折装置(リガク製RINT2500HL)により測定した。詳細な測定条件としては、X線源として、Cuを用い、X線出力を50kV、250mAとし、発散スリット(DS)を1.0度とし、散乱スリット(SS)を1.0度とし、受光スリット(RS)を0.3mmとし、走査速度を1.0度/分として測定した。
測定した回折角度を、下記ブラッグの式で1周期の長さに換算した。
【0139】
2dsinθ=nλ
【0140】
ここで、dは1周期の長さ、θは回折角度、nは反射次数、λはX線波長(0.15406nm)を示している。
【0141】
得られたBステージシートの両面のPETフィルムを剥がし、代わりに表面が粗化された銅箔(古河電工社製、商品名:GTS)で挟み160℃で真空プレスを行い、銅箔に圧着させた。これを更に、140℃で2時間、更に190℃で2時間加熱することにより硬化させ、シート状の銅圧着硬化物を得た。
【0142】
得られた銅圧着硬化物の両面の銅箔を200g/Lの過硫酸アンモニウム及び5ml/Lの硫酸の混合溶液を用いた酸エッチングにより除去し、シート状のエポキシ樹脂硬化物を得た。
【0143】
得られたシート状のエポキシ樹脂硬化物を1cm角に切出し、熱拡散率を測定するための試験片とした。フラッシュ法装置(Bruker製、NETZSCH,nanoflash LFA447)を用いて、切出した試験片の熱拡散率を測定し、これにアルキメデス法により測定した密度とDSC法により測定した比熱とを乗じて、厚さ方向の熱伝導率を求めた。
【0144】
得られたシート状のエポキシ樹脂硬化物の周期構造由来の回折角度を、Bステージシートの場合と同様にして測定した。
【0145】
エポキシ樹脂硬化物に含まれる窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を測定するため、大気下において600℃で30分間加熱することにより樹脂分を分解させた。その後に残存した窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度をX線光電子分光装置(島津/KRATOS社製:AXIS-HS)により、走査速度20eV/min(0.1eVステップ)で測定した。得られた結果を表1に示す。
【0146】
詳細な測定条件としては、X線源として、モノクロAl(管電圧;15kV、管電流;15mA)を使い、レンズ条件は、HYBRID(分析面積;600×1000μm)とし、分解能は、PassEnergy40とした。
【0147】
(実施例2)
実施例1において、紫外線照射時間を20分としたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0148】
(実施例3)
実施例1において、紫外線照射時間を30分としたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0149】
(実施例4)
実施例3において、紫外線照射処理の前処理として、150℃の恒温槽で10分間熱処理をしたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0150】
(実施例5)
実施例4において、熱処理の温度を250℃としたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0151】
(実施例6)
実施例5において、熱処理の時間を30分としたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0152】
(実施例7)
実施例1において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例1と同様に紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0153】
(実施例8)
実施例2において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例2と同様に紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例2と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0154】
(実施例9)
実施例3において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例3と同様に紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例3と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0155】
(実施例10)
実施例4において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例4と同様に熱処理と紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例4と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0156】
(実施例11)
実施例5において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例5と同様に熱処理と紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例5と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0157】
(実施例12)
実施例6において、体積平均粒子径40μmの窒化ホウ素粒子に、体積平均粒子径0.4μmのアルミナ粒子(住友化学社製、商品名:AA04)を加えた後、実施例6と同様に熱処理と紫外線照射を施し、硬化後の樹脂における窒化ホウ素含有量が60質量%、アルミナ粒子含有量が20質量%となるようにエポキシ樹脂組成物を調製したこと以外は同様の方法でエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例6と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0158】
(比較例1)
実施例6において、液晶性エポキシ樹脂(1-(3-メチル-4-オキシラニルメトキシフェニル)-4-(オキシラニルメトキシフェニル)-1-シクロヘキセンをエポキシモノマー(三菱化学製:jER828、一般式(1)とは異なる)に代えたこと以外は同様に実施例6と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、実施例1と同様に1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0159】
(比較例2)
窒化ホウ素粒子を処理せずに、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0160】
(比較例3)
実施例1において、紫外線照射時間を6秒としたこと以外は同様の方法で窒化ホウ素粒子の処理を行った。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0161】
(比較例4)
窒化ホウ素粒子に150℃の恒温槽で10分間熱処理をした。処理した窒化ホウ素粒子を用いて、実施例1と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0162】
(比較例5)
窒化ホウ素粒子とアルミナ粒子を加熱処理も紫外線照射処理も行わずに、実施例7と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0163】
(比較例6)
実施例7において、窒化ホウ素粒子とアルミナ粒子の紫外線照射時間を6秒としたこと以外は同様の方法で粒子の処理を行った。実施例7と同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0164】
(比較例7)
実施例7において、紫外線照射の代わりに150℃の恒温槽で10分間熱処理をしたこと以外は同様にBステージシート及びエポキシ樹脂硬化物を作製し、1周期の長さ及び熱伝導率を求めた。
【0165】
【表1】
(当審注:表1は省略)」

3 本願発明と出願6発明の対比及び判断
(1)本願発明の課題とその解決手段について
本願発明が解決しようとする課題は、エポキシ樹脂に窒化ホウ素粒子等の無機窒化物粒子を絶縁性のフィラーとして添加することが一般に行われているが、液晶性エポキシ樹脂の配向を無機窒化物粒子が阻害し、熱伝導率が低下する場合があったことから(本願明細書の【0003】及び【0005】)、硬化物としたときに熱伝導率に優れるエポキシ樹脂組成物を提供することであると解される(【0005】)。
そして、窒化ホウ素粒子の「表面の酸素原子濃度」に関して、本願明細書には、「液晶性エポキシモノマーのエポキシ基は親水性基であることから、液晶性エポキシモノマーの配向性を高めるためには、窒化ホウ素粒子の表面を適度に親水性化して、窒化ホウ素粒子と液晶性エポキシモノマーとの親和性を向上させることが有効である・・・液晶性エポキシモノマーの配向性の向上に効果的な、窒化ホウ素粒子の適度な親水性化の状態が、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度1.5at%以上である。」【0034】、「窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を1.5at%以上とすることで、液晶性エポキシモノマーの配向が阻害されにくくなる。そのため、本発明のエポキシ樹脂組成物の半硬化物及び硬化物中に含まれる、液晶性エポキシモノマーと硬化剤とに由来する液晶性エポキシ樹脂の配向も窒化ホウ素粒子によって阻害されにくくなり、エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導性が向上する。」【0035】と記載され、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度を1.5at%以上とすることにより、エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導性を向上することが示されている。
また、本願発明は、窒化ホウ素粒子の「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上」であり、上記酸素原子濃度に上限を設けないものであるが、本願明細書には、「窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度が高くなり過ぎて窒化ホウ素粒子の表面の酸化層自体が熱抵抗となり熱伝導性が低下するのを抑える観点から、窒化ホウ素粒子の表面の酸素原子濃度は、5at%以下であることが望ましい。」【0036】と記載され、上記酸素原子濃度を5at%以下とすることにより、エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導性が低下するのを抑えることが示されている。
さらに、本願明細書には、表面の酸素原子濃度が2.5?2.7at%である実施例1?6が記載され、実施例1?6は、表面の酸素原子濃度が1.1?1.3である比較例2?4と比べて熱伝導性に優れることを具体的に確認することができる。
このように、本願発明は、「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上」と特定することにより、硬化物としたときに熱伝導率に優れるエポキシ樹脂組成物を提供するという本願発明の課題を解決し、また、「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上」の範囲における5at%以下では、エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が低下するのを抑え、上記課題を解決するものであると解される。

(2)出願6発明の課題とその解決手段について
出願6の明細書には、出願6発明が解決しようとする課題に関して、上記(1)で述べた本願明細書の記載と同じ事項が記載されている(出願6の明細書の【0003】及び【0005】)。
また、出願6発明における「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上5at%以下」に関して、出願6の明細書には、上記(1)で述べた本願明細書の記載と同じ事項が記載されており(【0035】、【0036】及び実施例1?6)、「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上5at%以下」とすることにより、上記課題を解決するものと解される。
このように、本願発明と出願6発明は、解決しようとする課題及びその解決手段は同一であるといえる。

(3)本願発明と出願6発明の対比
本願発明と出願6発明とを対比すると、両者は、窒化ホウ素粒子と、下記一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーと、硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物であり、前記窒化ホウ素粒子の含有率も同じである。

そうすると、本願発明と出願6発明とは、
「窒化ホウ素粒子と、下記一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーと、硬化剤と、を含み、前記窒化ホウ素粒子の含有率が、全固形分中20質量%?95質量%であるエポキシ樹脂組成物。

〔一般式(1)中、Xは単結合又は下記化学式で表される2価の基からなる群(I)より選ばれる少なくとも1つから構成される連結基を示す。Yはそれぞれ独立に、炭素数1?8の脂肪族炭化水素基、炭素数1?8の脂肪族アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、又はアセチル基を示す。nは各々独立に0?4の整数を示し、kは0?7の整数を示し、mは0?8の整数を示し、lは0?12の整数を示す。〕

」の点で一致し、次の点で一応相違する。

相違点:窒化ホウ素粒子は、本願発明では「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上」であるのに対して、出願6発明では、「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上5at%以下」である点

(4)相違点の検討
上記(1)及び(2)で述べたように、本願明細書及び出願6の明細書には、解決しようとする課題及びその解決手段に関する記載が同じものであり、本願発明と出願6発明の課題及びその解決手段は同一である。
そして、本願発明の「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上の窒化ホウ素粒子」は、表面の酸素原子濃度の上限を特定しないものであるが、1.5at%以上5at%以下の範囲を含むことは明らかであるし、本願明細書の上記1(2)イの【0036】及び上記1(2)ウの実施例では、上記表面の酸素原子濃度が1.5at%以上5at%以下である窒化ホウ素粒子のみが記載されているといえることから、出願6発明の「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上5at%以下の窒化ホウ素粒子」と、本願発明の「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上の窒化ホウ素粒子」とは、実質的に同一のものであると解される。
そうすると、本願発明において上記酸素原子濃度が1.5at%以上とするものは、出願6発明と同じ発明であるということができ、上記相違点は実質的なものではない。
したがって、本願発明と出願6発明は同一であるといえる。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、審査基準(第4章先願(特許法第39条)の「3.2.2他の出願が同日出願である場合」)を引用し、「上位概念・下位概念の関係にある同日出願の場合には、同一発明と判断されることはない。本願発明1と先願発明1(当審注:「本願発明」と「出願6発明」)との関係は、上位概念・下位概念の関係にあることから、同一発明であるとの判断は誤りである。」と主張するので、これについて検討する。
まず、本願発明は「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上」を特定事項とし、出願6発明は「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上5at%以下」を特定事項とするものであるが、本願発明の「表面の酸素原子濃度」と出願6発明の「表面の酸素原子濃度」は、同じ方法により測定した同じ物性であり、これらの間に上位概念と下位概念の関係はない。
そして、上記(4)で述べたように、「表面の酸素原子濃度」に関する特定事項に関して、「1.5at%以上」である本願発明と、「1.5at%以上5at%以下」である出願6発明とは、実質的に同一の発明であり、エポキシ樹脂組成物に係る発明の概念として、本願発明と出願6発明との関係が上位概念・下位概念の関係にあるとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は、本願発明と出願6発明との関係が上位概念と下位概念の関係にあるとの誤った前提に立ったものであり、採用することはできない。

上記(4)で検討したように、本願発明と出願6発明は同一の発明であるが、念のため、請求人が審判請求書で引用した審査基準(第4章先願(特許法第39条)の「3.2.2 他の出願が同日出願である場合」)の判断手法に沿って、本願発明と出願6発明が同一の発明であるか否かを検討する。

ア 本願を先願とし、出願6を後願と仮定したとき
上述のとおり、本願発明の「表面の酸素原子濃度」と出願6発明の「表面の酸素原子濃度」は、同じ方法により測定した同じ物性であり、同一の技術概念であるから、これらの間に上位概念と下位概念の関係はない。
そして、本願発明は、上記「表面の酸素原子濃度」の上限を設けないものであるが、上記(4)で述べたように、本願発明の「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上の窒化ホウ素粒子」と、出願6発明の「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上5at%以下の窒化ホウ素粒子」とは、実質的に同一のものであると解され、上記表面の酸素原子濃度以外の特定事項においても相違しない。
そうすると、本願発明において上記酸素原子濃度が1.5at%以上5at%以下とするものは、出願6発明と同じ発明である。

イ 出願6を先願とし、本願を後願と仮定したとき
上記アで述べたように、出願6発明と本願発明は、いずれも窒化ホウ素粒子と、一般式(1)で表される液晶性エポキシモノマーと、硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物であり、上記窒化ホウ素粒子の含有率も同じである。
そして、本願発明は、上記「表面の酸素原子濃度」の上限を設けないものであるが、上記(4)で述べたように、出願6発明の「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上5at%以下の窒化ホウ素粒子」と、本願発明の「表面の酸素原子濃度が1.5at%以上の窒化ホウ素粒子」とは、実質的に同一のものであると解され、上記表面の酸素原子濃度以外の特定事項においても相違するところはない。
そうすると、本願発明と出願6発明との間に相違点はなく、出願6を先願とし、本願を後願と仮定したときも、本願発明は出願6発明と同一である。

ウ 小括
したがって、本願と出願6のいずれを先願と仮定したときも、本願発明と出願6発明は同一であるといえる。

(6)まとめ
本願発明は、出願6発明と同一であるから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-08-26 
結審通知日 2021-08-31 
審決日 2021-09-21 
出願番号 特願2017-124326(P2017-124326)
審決分類 P 1 8・ 4- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 督  
特許庁審判長 杉江 渉
特許庁審判官 近野 光知
橋本 栄和
発明の名称 エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物の製造方法、熱伝導材料前駆体、Bステージシート、プリプレグ、熱伝導材料、積層板、金属基板及びプリント配線板  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
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