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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05F
管理番号 1379623
審判番号 不服2020-6147  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-07 
確定日 2021-11-11 
事件の表示 特願2018-504867「ソーラー駆動システムおよび太陽電池アレイの最大電力点に追従する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日国際公開、WO2017/021379、平成30年 8月 2日国内公表、特表2018-521428〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2016年8月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年7月31日(以下,「優先日」という。),英国)を国際出願日とする出願であって,平成31年2月22日付けで拒絶の理由が通知され,令和1年7月29日に意見書とともに手続補正書が提出され,同年12月24日付けで拒絶査定(謄本送達日令和2年1月7日)がなされ,これに対して令和2年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年7月15日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,同年10月28日に上申書が提出され,同年11月18日付けで当審により拒絶の理由が通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)され,令和3年3月23日に意見書が提出されたものである。


第2 本願発明

本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,令和2年5月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。(下線は,補正箇所を示す。)

「ソーラー駆動システム(1)であって、
DC電流(Ipv)を発生する少なくとも1つの太陽電池アレイ(2)と、
前記DC電流(Ipv)をAC電流に変換するために前記太陽電池アレイ(2)に電気的に接続された少なくとも1つのインバータ(3)と、
前記AC電流を電気モータ(4)に供給するために前記インバータ(3)に電気的に接続された少なくとも1つの電気モータ(4)と、
前記電気モータ(4)上に配置されかつ前記インバータ(3)に電気的に接続された、前記電気モータ(4)の現時点の回転数を求めるための少なくとも1つの装置(6)であって、該装置(6)は、前記電気モータ(4)の前記現時点の回転数を求めるための少なくとも1つのセンサエレメントを含むか、または、前記電気モータ(4)のモータエレクトロニックの1つのコンポーネントであり、前記センサエレメントまたは前記モータエレクトロニックの前記コンポーネントは、有線または無線によって前記インバータ(3)に接続されている、装置(6)と、
を有し、
前記インバータ(3)は、摂動および観測最大電力点追従法を実施することによって前記太陽電池アレイ(2)の最大電力点に追従し、前記電気モータ(4)の前記現時点の回転数を用いて、前記摂動および観測最大電力点追従法のステップ方向を決定する、ように構成されている、
ソーラー駆動システム(1)。」


第3 当審拒絶理由通知の概要

令和2年11月18日付けの当審拒絶理由通知の概要は以下のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1,2
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特開2002-247896号公報


第4 引用例

1 引用例に記載された事項

当審拒絶理由通知において引用した,本願の優先日前に既に公知である,特開2002-247896号公報(平成14年8月30日公開。以下,これを「引用例」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態のソーラポンプシステムの全体構成を示す。このソーラポンプシステムは、電源としての太陽電池10と、この太陽電池10の直流出力を交流電圧に変換するコントローラ12と、このコントローラ12で変換された交流電圧で駆動されるブラシレス直流モータ14とを備え、この直流モータ14にポンプ16が連結されて該モータ14の回転に伴ってポンプ16が駆動するようになっている。コントローラ12は、例えば、一般のインバータと同様なパワー回路構成を有している。
【0016】図2は、コントローラ12及び直流モータ14の基本構成を示す。このコントローラ12は、位置センサレスのブラシレス直流モータ14を駆動するものであり、スイッチング素子部20、スイッチング素子部20のスイッチング制御を行うゲートドライブ部22、ゲートドライブ部22の制御や幾つかの保護制御のためのPWM生成部24及び速度制御部25、最大電力点追跡制御部26及び速度指令設定部27から主に構成されている。」

B 「【0018】最大電力点追跡制御部26は、直流モータ14の運転速度を検出する速度検出部26a、直流モータ14の運転電流を検出する電流検出部26b、これら両者26a,26bの出力を乗算して直流モータ14の出力の近似値を演算する乗算部26c、この乗算部26cの出力を記憶するサンプルホールド回路26d、このサンプルホールド回路26dにホールドされた前回の乗算値と乗算部26cで乗算された現在の乗算値とを比較する比較部26eから構成されている。
【0019】この最大電力点追跡制御部26は、直流モータ14の出力が最大値になるように該直流モータ14の回転速度を制御するもので、乗算部26cは、常に直流モータ14の出力の現在値と等価な値、すなわち速度検出値(直流モータ14の回転角速度ω)とコントローラ12の出力電流(直流モータ14の運転電流I)の積(ω・I)_(i)をモニタしている。この乗算部26cの出力は、サンプルホールド回路26dによって前回の乗算値(ω・I)_(i-1)としてホールドされ、比較部26eで乗算部26cの出力の現在値(ω・I)_(i)と比較され、その比較結果をもって、速度指令設定部27にて直流モータ14の速度指令が決定される。」

C 「【0021】ここで、図3の左上向きの矢印で示すように、直流モータ14の回転角速度ωと等価な値である速度指令値fを高めた時に、比較部26eの出力〔(ω・I)i-(ω・I)i-1 〕がプラスであれば、直流モータ14の出力が前回の値よりも増加しているので、更に速度指令値fが一定の割合Δfだけ増加(+Δf)するように制御する。このようにして、速度指令値fを高めて行くと、太陽電池10の出力のピーク点(最大電力点)を超えて、比較部26eの出力〔(ω・I)i-(ω・I)i-1 〕がマイナスになる場合が出現する。そこで、このように速度指令値fが一定の割合Δfだけ増加(+Δf)するように制御した時に、比較部26eの出力がマイナスとなった場合に、速度指令値fをΔfだけ小さく(-Δf)するように制御し、太陽電池10の出力がその最大出力点の近傍で動作するようにコントローラ12の運転速度を制御する。」

D 「【0024】なお、上述の説明では、最大電力点追跡制御部26をアナログ回路の構成した例を示しているが、実際のコントローラでは、乗算部、比較部、サンプルホールド回路、制御部の機能をマイクロコンピュータのソフトウエアに置き換えることができる。これによって、図2に示したような回路を付加することなく、効果的で経済性にも優れた最大電力点追跡制御が実現できる。また、本実施例では、位置検出器のないブラシレス直流モータとその駆動用インバータに関する例を示したが、当然位置検出器を有したブラシレス直流モータとその駆動用インバータ、或いはエンコーダ付ブラシレス直流モータ(サーボモータ)とサーボアンプについても同様の制御を行うことが可能である。」

E 「

図2」

2 引用発明

(1)上記記載事項Aの「ソーラポンプシステムは、電源としての太陽電池10と、この太陽電池10の直流出力を交流電圧に変換するコントローラ12と、このコントローラ12で変換された交流電圧で駆動されるブラシレス直流モータ14とを備え」との記載のうち,「ブラシレス直流モータ14」は,“直流モータ”の一例であることから,引用例には,“電源としての太陽電池10と,この太陽電池10の直流出力を交流電圧に変換するコントローラ12と,このコントローラ12で変換された交流電圧で駆動される直流モータ14とを備えるソーラポンプシステム”が記載されているといえる。

(2)上記記載事項Aの「コントローラ12は、…(中略)…直流モータ14を駆動するものであり、スイッチング素子部20、スイッチング素子部20のスイッチング制御を行うゲートドライブ部22、ゲートドライブ部22の制御や幾つかの保護制御のためのPWM生成部24及び速度制御部25、最大電力点追跡制御部26及び速度指令設定部27から主に構成され」るとの記載から,引用例には,“コントローラ12は,直流モータ14を駆動するものであり,スイッチング素子部20,スイッチング素子部20のスイッチング制御を行うゲートドライブ部22,ゲートドライブ部22の制御や幾つかの保護制御のためのPWM生成部24及び速度制御部25,最大電力点追跡制御部26及び速度指令設定部27から主に構成され”ることが記載されているといえる。

(3)上記記載事項Eの図2の回路図を参照すると,コントローラ12を構成するスイッチング素子部20は,太陽電池10からの電力が供給されるとともに,直流モータ14に電気的に接続されている態様を読み取ることができるから,引用例には,“スイッチング素子部20は,太陽電池10に電気的に接続されるとともに,直流モータ14に電気的に接続され”ていることが記載されているといえる。

(4)上記記載事項Bの「最大電力点追跡制御部26は、直流モータ14の運転速度を検出する速度検出部26a、直流モータ14の運転電流を検出する電流検出部26b、これら両者26a,26bの出力を乗算して直流モータ14の出力の近似値を演算する乗算部26c、この乗算部26cの出力を記憶するサンプルホールド回路26d、このサンプルホールド回路26dにホールドされた前回の乗算値と乗算部26cで乗算された現在の乗算値とを比較する比較部26eから構成され…(中略)…この最大電力点追跡制御部26は、直流モータ14の出力が最大値になるように該直流モータ14の回転速度を制御するもので、乗算部26cは、…(中略)…直流モータ14の回転角速度ω…と…(中略)…直流モータ14の運転電流I…の積…をモニタしている」との記載から,引用例には,“最大電力点追跡制御部26は,直流モータ14の運転速度を検出する速度検出部26a,直流モータ14の運転電流を検出する電流検出部26b,これら両者26a,26bの出力を乗算して直流モータ14の出力の近似値を演算する乗算部26c,この乗算部26cの出力を記憶するサンプルホールド回路26d,このサンプルホールド回路26dにホールドされた前回の乗算値と乗算部26cで乗算された現在の乗算値とを比較する比較部26eから構成され,この最大電力点追跡制御部26は,直流モータ14の出力が最大値になるように該直流モータ14の回転速度を制御するもので,乗算部26cは,直流モータ14の回転角速度ωと直流モータ14の運転電流Iの積をモニタし”ていることが記載されているといえる。

(5)上記記載事項Eの図2の回路図を参照すると,速度検出部26aは,直流モータ14に電気的に接続されている態様を読み取ることができるから,引用例には,“速度検出部26aは,直流モータ14に電気的に接続され”ていることが記載されているといえる。

(6)上記記載事項Cの「直流モータ14の回転角速度ωと等価な値である速度指令値fを高めた時に、比較部26eの出力…(中略)…がプラスであれば、直流モータ14の出力が前回の値よりも増加しているので、更に速度指令値fが一定の割合Δfだけ増加…するように制御する。…速度指令値fを高めて行くと、太陽電池10の出力のピーク点(最大電力点)を超えて、比較部26eの出力…(中略)…がマイナスになる場合が出現する。…(中略)…マイナスとなった場合に、速度指令値fをΔfだけ小さく(-Δf)するように制御し、太陽電池10の出力がその最大出力点の近傍で動作するようにコントローラ12の運転速度を制御する」との記載から,引用例には,“直流モータ14の回転角速度ωと等価な値である速度指令値fを高めた時に,比較部26eの出力がプラスであれば,直流モータ14の出力が前回の値よりも増加しているので,更に速度指令値fが一定の割合Δfだけ増加するように制御し,速度指令値fを高めて行くと,太陽電池10の出力のピーク点(最大電力点)を超えて,比較部26eの出力がマイナスになった場合,速度指令値fをΔfだけ小さく(-Δf)するように制御し,太陽電池10の出力がその最大出力点の近傍で動作するようにコントローラ12の運転速度を制御”することが記載されているといえる。

(7)上記記載事項Dの「本実施例では、位置検出器のないブラシレス直流モータとその駆動用インバータに関する例を示したが、当然位置検出器を有したブラシレス直流モータとその駆動用インバータ、或いはエンコーダ付ブラシレス直流モータ(サーボモータ)とサーボアンプについても同様の制御を行うことが可能である」との記載のうち,「本実施例で」例示される「位置検出器のないブラシレス直流モータ」は,上記(1)の認定事項における,“直流モータ14”を意味することから,引用例には,“直流モータ14は,位置検出器を有したブラシレス直流モータ,或いはエンコーダ付ブラシレス直流モータであっても同様の制御を行うことが可能である”ことが記載されているといえる。

(8)以上,上記(1)?(7)より,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「電源としての太陽電池10と,この太陽電池10の直流出力を交流電圧に変換するコントローラ12と,このコントローラ12で変換された交流電圧で駆動される直流モータ14とを備えるソーラポンプシステムであって,
コントローラ12は,直流モータ14を駆動するものであり,スイッチング素子部20,スイッチング素子部20のスイッチング制御を行うゲートドライブ部22,ゲートドライブ部22の制御や幾つかの保護制御のためのPWM生成部24及び速度制御部25,最大電力点追跡制御部26及び速度指令設定部27から主に構成され,
スイッチング素子部20は,太陽電池10に電気的に接続されるとともに,直流モータ14に電気的に接続され,
最大電力点追跡制御部26は,直流モータ14の運転速度を検出する速度検出部26a,
直流モータ14の運転電流を検出する電流検出部26b,これら両者26a,26bの出力を乗算して直流モータ14の出力の近似値を演算する乗算部26c,この乗算部26cの出力を記憶するサンプルホールド回路26d,このサンプルホールド回路26dにホールドされた前回の乗算値と乗算部26cで乗算された現在の乗算値とを比較する比較部26eから構成され,この最大電力点追跡制御部26は,直流モータ14の出力が最大値になるように該直流モータ14の回転速度を制御するもので,乗算部26cは,直流モータ14の回転角速度ωと直流モータ14の運転電流Iの積をモニタし,
速度検出部26aは,直流モータ14に電気的に接続され,
直流モータ14の回転角速度ωと等価な値である速度指令値fを高めた時に,比較部26eの出力がプラスであれば,直流モータ14の出力が前回の値よりも増加しているので,更に速度指令値fが一定の割合Δfだけ増加するように制御し,速度指令値fを高めて行くと,太陽電池10の出力のピーク点(最大電力点)を超えて,比較部26eの出力がマイナスになった場合,速度指令値fをΔfだけ小さく(-Δf)するように制御し,太陽電池10の出力がその最大出力点の近傍で動作するようにコントローラ12の運転速度を制御し,
直流モータ14は,位置検出器を有したブラシレス直流モータ,或いはエンコーダ付ブラシレス直流モータであっても同様の制御を行うことが可能である
ソーラポンプシステム。」


第5 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

1 「ソーラー駆動システム(1)」に関する対比

引用発明の「ソーラポンプシステム」は,「電源としての太陽電池10と,この太陽電池10の直流出力を交流電圧に変換するコントローラ12と,このコントローラ12で変換された交流電圧で駆動される直流モータ14とを備える」ものであって,「電源としての太陽電池10」の電力を用いて,「直流モータ14」を駆動するものであるから,引用発明と本願発明とは,“ソーラー駆動システム”である点で一致する。

2 「太陽電池アレイ(2)」に関する対比

引用発明の「電源としての太陽電池10」からは,「直流出力」が得られるところ,「太陽電池10」は,直流電流,すなわち,“DC電流”を発生することは明らかであるから,本願発明の「DC電流(Ipv)を発生する少なくとも1つの太陽電池アレイ(2)」とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“DC電流を発生する少なくとも1つの太陽電池”である点で一致する。

3 「インバータ(3)」に関する対比

引用発明の「コントローラ12」を構成する「スイッチング素子部20」は,「太陽電池10に電気的に接続され」,「太陽電池10の直流出力を交流電圧に変換」して,「このコントローラ12で変換された交流電圧で」「直流モータ14」を駆動するところ,上記2の認定を踏まえれば,本願発明の「前記DC電流(Ipv)をAC電流に変換するために前記太陽電池アレイ(2)に電気的に接続された少なくとも1つのインバータ(3)」とは,下記の点(相違点2)で相違するものの,“前記DC電流を変換するために前記太陽電池に電気的に接続された少なくとも1つのインバータ”である点で一致する。

4 「電気モータ(4)」に関する対比

引用発明の「直流モータ14」は,「コントローラ12で変換された交流電圧で駆動される」ものであるところ,上記3の認定を踏まえれば,本願発明の「前記AC電流を電気モータ(4)に供給するために前記インバータ(3)に電気的に接続された少なくとも1つの電気モータ(4)」とは,下記の点(相違点3)で相違するものの,“前記インバータに電気的に接続された少なくとも1つの電気モータ”である点で一致する。

5 「装置(6)」に関する対比

引用発明の「最大電力点追跡制御部26」の「乗算部26c」は,「直流モータ14の回転角速度ωと直流モータ14の運転電流Iの積をモニタし」ているところ,当該「直流モータ14の回転角速度ω」は,「直流モータ14」の単位時間当たりの回転数を表すものである。そして,当該「乗算部26c」には,「直流モータ14の運転速度を検出する速度検出部26a」からの出力と,「直流モータ14の運転電流を検出する電流検出部26b」からの出力が入力されることから,「直流モータ14の運転速度を検出する速度検出部26a」からの出力が,「直流モータ14の回転角速度ω」を表すものであるといえ,上記4の認定,及び「速度検出部26aは,直流モータ14に電気的に接続され」ることを踏まえれば,引用発明の「速度検出部26a」は,“インバータに電気的に接続された,電気モータの現時点の回転数を求めるための少なくとも1つの装置”といい得る。
そして,引用発明の「速度検出部26a」は,「直流モータ14の運転速度を検出する」ものであるところ,当該「直流モータ14の運転速度を検出する」ためのなんらかの検出手段が必要であることは自明であり,当該検出手段は,運転速度を検出,すなわちセンシングするエレメントという意味で,“センサエレメント”といい得るものである。してみれば,引用発明の「速度検出部26a」は,“少なくとも1つのセンサエレメント”を含んでいるというべきであり,引用発明の「速度検出部26a」と,本願発明の「前記電気モータ(4)の前記現時点の回転数を求めるための少なくとも1つのセンサエレメントを含む」「装置(6)」とは,“前記電気モータの前記現時点の回転数を求めるための少なくとも1つのセンサエレメントを含む”点で一致する。
そして,「速度検出部26a」が「直流モータ14に電気的に接続され」る態様には“有線または無線によって”接続されることが技術常識であること,及び,上記3の対比に鑑みれば,“前記センサエレメントは,有線または無線によって前記インバータに接続されている”と言い得るので,以上を総合すると,引用発明と本願発明とは,下記の点(相違点4,5)で相違するものの,“前記インバータに電気的に接続された,前記電気モータの現時点の回転数を求めるための少なくとも1つの装置であって,該装置は,前記電気モータの前記現時点の回転数を求めるための少なくとも1つのセンサエレメントを含み,前記センサエレメントは,有線または無線によって前記インバータに接続されている,装置”を有する点で一致する。

6 「インバータ(3)」の,「摂動および観測最大電力点追従法」に関する対比

引用発明は,「直流モータ14の回転角速度ωと等価な値である速度指令値fを高めた時に,比較部26eの出力がプラスであれば,直流モータ14の出力が前回の値よりも増加しているので,更に速度指令値fが一定の割合Δfだけ増加するように制御し,速度指令値fを高めて行くと,太陽電池10の出力のピーク点(最大電力点)を超えて,比較部26eの出力がマイナスになった場合,速度指令値fをΔfだけ小さく(-Δf)するように制御」するものであり,このうち,「直流モータ14の回転角速度ωと等価な値である速度指令値f」を調整して,「太陽電池10の出力がその最大出力点の近傍で動作するようにコントローラ12の運転速度を制御」することは,“摂動および観測最大電力点追従法を実施することによって前記太陽電池の最大電力点に追従”することに相当するといえるから,引用発明と本願発明とは,下記の点(相違点1,5)で相違するものの,“前記インバータは,摂動および観測最大電力点追従法を実施することによって前記太陽電池の最大電力点に追従する,ように構成されている”点で一致する。

7 まとめ(一致点及び相違点)

以上,1?6の検討から,引用発明と本願発明とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
ソーラー駆動システムであって,
DC電流を発生する少なくとも1つの太陽電池と,
前記DC電流を変換するために前記太陽電池に電気的に接続された少なくとも1つのインバータと,
前記インバータに電気的に接続された少なくとも1つの電気モータと,
前記インバータに電気的に接続された,前記電気モータの現時点の回転数を求めるための少なくとも1つの装置であって,該装置は,前記電気モータの前記現時点の回転数を求めるための少なくとも1つのセンサエレメントを含み,前記センサエレメントは,有線または無線によって前記インバータに接続されている,装置と,
を有し,
前記インバータは,摂動および観測最大電力点追従法を実施することによって前記太陽電池の最大電力点に追従する,ように構成されている,
ソーラー駆動システム。

〈相違点1〉
本願発明は,「太陽電池アレイ」を有するのに対し,引用発明の「太陽電池10」がアレイ構造であることが特定されていない点。

〈相違点2〉
本願発明の「インバータ(3)」は,「DC電流(Ipv)をAC電流に変換するため」のものであるのに対し,引用発明の「コントローラ12」は,「直流出力を交流電圧に変換する」ものである点。

〈相違点3〉
本願発明の「電気モータ(4)」は,「前記AC電流を電気モータ(4)に供給するために前記インバータ(3)に電気的に接続された」ものであるのに対し,引用発明の「直流モータ14」は,「コントローラ12で変換された交流電圧で駆動される」ものである点。

〈相違点4〉
本願発明の「装置(6)」は,「電気モータ(4)上に配置され」るものであるのに対し,引用発明の「速度検出部26a」が,「直流モータ14」上に配置されることが特定されていない点。

〈相違点5〉
本願発明の「装置(6)」は,「前記電気モータ(4)のモータエレクトロニックの1つのコンポーネントで」もあって,「前記コンポーネントは、有線または無線によって前記インバータ(3)に接続されて」もいるのに対し,引用発明は,そのような態様について特定されていない点。

〈相違点6〉
本願発明は,「前記電気モータ(4)の前記現時点の回転数を用いて」,「前記摂動および観測最大電力点追従法のステップ方向を決定」しているのに対し,引用発明は,「直流モータ14の回転角速度ωと等価な値である速度指令値fを高めた時に,比較部26eの出力がプラスであれば,直流モータ14の出力が前回の値よりも増加しているので,更に速度指令値fが一定の割合Δfだけ増加するように制御」しているものの,直流モータ14の「現時点の回転数を用い」るとの特定がされていない点


第6 判断

上記相違点につき検討する。

1 相違点1について

引用発明の「電源としての太陽電池10」は,「この太陽電池10の直流出力を交流電圧に変換するコントローラ12」によって,「変換された交流電圧で」「直流モータ14」を「駆動」するものであるから,単独の「太陽電池10」ではなく,複数の太陽電池を用いて,アレイ構造とすることに何ら技術的困難性は無く,したがって相違点1は格別なものではない。

2 相違点2及び3について

引用発明の「コントローラ12」は,「太陽電池10の直流出力を交流電圧に変換する」ものであるから,入力は「直流」であって,流れ込む電流はしたがって“DC電流”であることは自明である。また,出力は「交流」であって,流れ出す電流はしたがって“AC電流”であることも自明である。
そして,引用発明の「直流モータ14」は,「コントローラ12で変換された交流電圧で駆動される」ものであり,上記のとおり当該「直流モータ14」に流れ込む電流はAC電流であるといえることから,相違点2及び3は,単なる表現上の差異というべきであって,格別なものとはいえない。

3 相違点4について

上記第5の5の対比の項で検討したとおり,引用発明の「速度検出部26a」は,「直流モータ14の運転速度を検出する」ためのなんらかの検出手段,すなわち“少なくとも1つのセンサエレメント”を含んでいるというべきであって,当該センサエレメントは,「直流モータ14の運転速度を検出する」以上,「直流モータ14」のいずれかの箇所にに設けざるを得ず,そうとすると,これを電気モータ上に配置すること,すなわち相違点4に係る構成とすることになんら技術的困難性は無い。したがって,相違点4は格別なものとはいえない。

4 相違点5について

引用発明の「直流モータ14」は,「位置検出器を有したブラシレス直流モータ,或いはエンコーダ付ブラシレス直流モータであっても同様の制御を行うことが可能である」ところ,当該「位置検出器」や「エンコーダ」は,“電気モータのモータエレクトロニックの1つのコンポーネント”といい得る。
そして,これら「位置検出器」や「エンコーダ」を,「ブラシレス直流モータ」の“現時点の回転数を求める”ために用いることに何ら技術的困難性は無く,引用発明において,「ブラシレス直流モータ」のモータエレクトロニックの1つのコンポーネントである,当該「位置検出器」や「エンコーダ」を,インバータに電気的に接続された,前記「ブラシレス直流モータ」の現時点の回転数を求めるための装置として用いるとともに,有線または無線によってインバータに接続することは,当業者にとって容易である。

5 相違点6について

一般に,モータの出力はトルクと回転速度の積に比例すること,及びモータに流れる電流とトルクは比例するものであることが技術常識である。そして引用発明では,「直流モータ14の運転速度を検出する速度検出部26a」及び「直流モータ14の運転電流を検出する電流検出部26b」の「出力を乗算して」,摂動および観測最大電力点追従法のステップ方向を決定しているといえるものであるところ,このことは,上記技術常識に鑑みれば,「直流モータ14」の回転角速度,すなわち単位時間あたりの現時点の回転数を用いて制御を行っているといえることから,相違点5も格別なものとはいえない。

6 むすび

以上検討したとおり,相違点1?5はいずれも格別なものではなく,またそのことによる効果も,当業者であれば普通に想起し得る程度のことに過ぎない。
したがって,本願発明は,引用例に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないものである。


第7 むすび

以上のとおり,本願発明は,本願の優先日前に頒布された引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-06-11 
結審通知日 2021-06-14 
審決日 2021-06-25 
出願番号 特願2018-504867(P2018-504867)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白井 孝治  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山澤 宏
山崎 慎一
発明の名称 ソーラー駆動システムおよび太陽電池アレイの最大電力点に追従する方法  
代理人 森田 拓  
代理人 二宮 浩康  
代理人 前川 純一  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 上島 類  
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