ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L |
---|---|
管理番号 | 1379651 |
審判番号 | 不服2021-825 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-20 |
確定日 | 2021-11-30 |
事件の表示 | 特願2019- 6786「ノイズ検知装置、ノイズ検知方法及びノイズ検知プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月30日出願公開、特開2020-115628、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2019年 1月18日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 2019年10月21日付け:拒絶理由通知書 2019年11月26日 :意見書、手続補正書の提出 2020年 6月 8日付け:拒絶理由通知書 2020年 7月 9日 :意見書、手続補正書の提出 2020年12月 9日付け:拒絶査定 2021年 1月20日 :審判請求書の提出 第2 原査定の概要 原査定(2020年12月 9日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開2001-273199号公報 2.特開2011-151576号公報 なお、各請求項に係る発明と各引用文献の対応関係は、以下のとおりである。 ・請求項1、2、4?6に係る発明ついては、引用文献1に記載された発明を引用 ・請求項3に係る発明については、引用文献1及び2に記載された発明を引用 第3 本願発明 本願請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、2020年 7月 9日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 入力信号の振幅が閾値よりも大きい場合にパルス信号を発生させる識別再生部から前記パルス信号を受信し、前記パルス信号の立ち上がり変化点である第1変化点を検出すると同時にクロックによるカウントを開始する立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部と、 前記識別再生部から前記パルス信号を受信し、前記パルス信号の立ち下がり変化点である第2変化点を検出すると同時に前記クロックによるカウントを開始する立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部と、 前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第2変化点を検出した場合、 または、 前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第1変化点を検出した場合に、ノイズを有すると判定する変化点間隔ショート検出部と、 を備え、 前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第2変化点を検出した場合に、前記変化点間隔ショート検出部が前記ノイズを有すると判定後、前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部は、カウンタをクリアにして、次の立ち上がり変化点を待ち、 前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第1変化点を検出した場合に、前記変化点間隔ショート検出部が前記ノイズを有すると判定後、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部は、カウンタをクリアにして、次の立ち下がり変化点を待ち、 前記変化点間隔ショート検出部は、 複数の前記第1変化点及び前記第2変化点のうち、前記入力信号に位相同期のリタイミングクロックを生成するPLLから受信した前記リタイミングクロックの立ち上がり変化点である第3変化点、または、前記リタイミングクロックの立ち下がり変化点である第4変化点と一致するものを除外することにより、前記ノイズによる前記第1変化点及び前記第2変化点を抽出する、 ノイズ検知装置。 【請求項2】 前記変化点間隔ショート検出部は、 抽出された前記第1変化点及び前記第2変化点の間隔から前記ノイズの幅を導く、 請求項1に記載のノイズ検知装置。 【請求項3】 前記変化点間隔ショート検出部は、 抽出された前記第1変化点間の間隔または前記第2変化点間の間隔から前記ノイズの周期を導く、 請求項1に記載のノイズ検知装置。 【請求項4】 前記クロックは、発振器が発振した発振クロックをN逓倍したN逓倍クロックである、 請求項1?3のいずれか1項に記載のノイズ検知装置。 【請求項5】 入力された信号の波形の振幅が閾値よりも大きい場合にパルス信号を発生させる識別再生部から前記パルス信号を受信する立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部に、前記パルス信号の立ち上がり変化点である第1変化点を検出させると同時にクロックによるカウントを開始させるステップと、 前記識別再生部から前記パルス信号を受信する立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部に、前記パルス信号の立ち下がり変化点である第2変化点を検出させると同時に前記クロックによるカウントを開始させるステップと、 前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第2変化点を検出した場合、または、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第1変化点を検出した場合に、変化点間隔ショート検出部はノイズを有すると判定するステップと、 を備え、 前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第2変化点を検出した場合に、前記変化点間隔ショート検出部が前記ノイズを有すると判定後、前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部は、カウンタをクリアにして、次の立ち上がり変化点を待ち、 前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第1変化点を検出した場合に、前記変化点間隔ショート検出部が前記ノイズを有すると判定後、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部は、カウンタをクリアにして、次の立ち下がり変化点を待ち、 前記変化点間隔ショート検出部は、 複数の前記第1変化点及び前記第2変化点のうち、前記入力された信号に位相同期のリタイミングクロックを生成するPLLから受信した前記リタイミングクロックの立ち上がり変化点である第3変化点、または、前記リタイミングクロックの立ち下がり変化点である第4変化点と一致するものを除外することにより、前記ノイズによる前記第1変化点及び前記第2変化点を抽出する、 ノイズ検知方法。 【請求項6】 入力された信号の波形の振幅が閾値よりも大きい場合にパルス信号を発生させる識別再生部から前記パルス信号を受信する立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部に、前記パルス信号の立ち上がり変化点である第1変化点を検出させると同時にクロックによるカウントを開始させ、 前記識別再生部から前記パルス信号を受信する立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部に、前記パルス信号の立ち下がり変化点である第2変化点を検出させると同時に前記クロックによるカウントを開始させ、 前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第2変化点を検出した場合、または、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第1変化点を検出した場合に、変化点間隔ショート検出部はノイズを有すると判定させ、 前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第2変化点を検出した場合に、前記変化点間隔ショート検出部が前記ノイズを有すると判定後、前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部に、カウンタをクリアにして、次の立ち上がり変化点を待たせ、 前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第1変化点を検出した場合に、前記変化点間隔ショート検出部が前記ノイズを有すると判定後、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部に、カウンタをクリアにして、次の立ち下がり変化点を待たせ、 前記変化点間隔ショート検出部に、 複数の前記第1変化点及び前記第2変化点のうち、前記入力された信号に位相同期のリタイミングクロックを生成するPLLから受信した前記リタイミングクロックの立ち上がり変化点である第3変化点、または、前記リタイミングクロックの立ち下がり変化点である第4変化点と一致するものを除外することにより、前記ノイズによる前記第1変化点及び前記第2変化点を抽出させる、 ことをコンピュータに実行させるノイズ検知プログラム。」 第4 引用文献、引用発明等 1.特開2001-273199号公報(以下、「引用文献1」という。) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項がある。(下線は当審が付与。) 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明はノイズ検知及びノイズによる誤動作の防止を目的としたシリアルインターフェイスに関する。」 「【0012】(実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1によるシリアルインターフェイスの構成を示すものである。1はシリアル受信データ、2はシリアルクロック、3はカウンタ6及びカウンタ9のクロック、4はシリアル受信データ1をシフトしつつ順次格納するシフトレジスタ、5はシリアルクロック2をカウントクロックとする転送ビットカウンタ、7はカウンタ6のカウント動作の開始、停止と、データをロードする制御回路、8はカウンタ6からのデータを格納するコンペアレジスタ、10はコンペアレジスタ8とカウンタ9の値の比較回路、11は転送ビットカウンタのオーバーフロー時に発生するシリアル割り込み信号、12は比較回路10から出力されるコンペア一致信号、13はシリアルクロック2によってセットされ、コンペア一致信号12によってリセットされるエッジ検出回路、14はエラー検知信号である。 【0013】実施の形態1によるシリアルインターフェイスはシリアルクロック2から正常通信が行われた場合にはエッジが発生しない期間を算出することによって、この期間中にシリアルクロック上に発生する不要エッジを検出することによってノイズによる通信異常を認識することを特徴とする。 【0014】以上のように構成された実施の形態1によるシリアルインターフェイスについて、以下に図5を用いてその動作を説明する。 【0015】ここでは、例として8ビットのシリアルデータがシリアルクロック2の立ち下がりエッジに同期して送られてきたものを立ち上がりエッジで受信するものとする。シフトレジスタ4はシリアルクロック2の立ち上がりエッジに同期してシフト動作を行い、転送ビットカウンタ5についても同様に立ち上がりエッジに同期してダウンカウントするものとする。 【0016】まず、T1においてシリアルクロック2の立ち下がりエッジ発生によってシリアル受信が開始するとこれを受けた制御回路7はカウンタ6のカウント動作を許可し、カウンタ6はシリアルクロック2より高速のクロック3によってカウントアップを行う。次にT2においてはシリアルクロック2の立ち上がりエッジでシフトレジスタ4がシリアル受信データ1の1ビット目を取り込み、転送ビットカウンタ5が同じく1ビット分のカウント動作を行う。制御回路7はシリアルクロック2の立ち上がりエッジを受けてカウンタ6の動作を停止させると同時にカウンタ6のデータを減算処理しコンペアレジスタ8にロードする。この時のカウンタ6のデータがT1からT2までの時間Aに相当するデータとなり、ロードされたデータが正常通信中のクロックエッジが発生しない時間に相当する。 【0017】コンペアレジスタ8にデータがロードされるとカウンタ9がカウンタ6と同じクロック3でカウント動作を開始し、コンペアレジスタ8とカウンタ9のデータが比較回路10によって一致したと判断されるとコンペア一致信号12を発生する。コンペア一致信号12がセットされるタイミングはT3より制御回路7で実行された減算分だけ早く発生し、T3のシリアルクロックの立ち下がりエッジ以降クロック3によってリセットされる。 【0018】エッジ検出回路13はシリアルクロック2の両エッジでセットされ、コンペア一致信号12の’H’区間でリセットされ、出力信号はエラー検知信号14となる。 【0019】T4のようにノイズが発生した場合にはコンペア一致信号12が’L’区間であるためエッジ検出回路13がセットされエラー検知信号14の発生によって通信エラーが検出される。」 「【図1】 」 「【図5】 」 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「ノイズ検知及びノイズによる誤動作の防止を目的としたシリアルインターフェイスであって(【0001】)、 シリアル受信データ1をシフトしつつ順次格納するシフトレジスタ4、 シリアルクロック2をカウントクロックとする転送ビットカウンタ5、 カウンタ6のカウント動作の開始、停止と、データをコンペアレジスタ8へロードする制御回路7、 カウンタ6からのデータを格納する前記コンペアレジスタ8、 前記コンペアレジスタ8とカウンタ9のデータを比較する比較回路10、 前記シリアルクロック2によってセットされ、コンペア一致信号12によってリセットされるエッジ検出回路13、等を備え(【0012】)、 前記シリアルクロック2の立ち下がりエッジ発生によってシリアル受信が開始するとこれを受けた前記制御回路7は前記カウンタ6のカウント動作を許可し、 前記カウンタ6は前記シリアルクロック2より高速のクロック3によってカウントアップを行い、 前記制御回路7はシリアルクロック2の立ち上がりエッジを受けて前記カウンタ6の動作を停止させると同時に前記カウンタ6のデータを減算処理し前記コンペアレジスタ8にロードし、当該ロードされたデータが正常通信中のクロックエッジが発生しない時間に相当するものであり(【0016】)、 前記コンペアレジスタ8にデータがロードされると前記カウンタ9が前記カウンタ6と同じ前記クロック3でカウント動作を開始し(【0017】)、 前記比較回路10は、前記コンペアレジスタ8と前記カウンタ9のデータを比較して一致したと判断されるとコンペア一致信号12を発生するものであり(【0017】)、 前記エッジ検出回路13は、前記シリアルクロック2の両エッジでセットされ、前記コンペア一致信号12の’H’区間でリセットされ、前記クロックエッジが発生しない時間中にノイズが発生した場合には、コンペア一致信号12が’L’区間であるためセットされエラー検知信号14を発生する(【0018】、【0019】)、 シリアルインターフェイス。」 2.特開2011-151576号公報(以下、「引用文献2」という。) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、周期性を有するノイズによる信号の誤検出を防止する信号検出回路および誤検出防止方法について開示されており、ノイズの発生周期の具体的な算出手段及び方法について、以下の様に記載されている。 「【0011】 本発明による信号検出回路は、外部信号のレベルを検出する信号検出回路であって、サンプリング周波数信号に従って外部信号をサンプリングするサンプリング手段と、前記サンプリング手段の出力であるサンプリング結果から周期性ノイズの周期を測定するノイズ周期測定手段と、前記サンプリング手段の出力であるサンプリング結果から前記外部信号のレベルを判定する信号判定手段と、ノイズ周期測定時に前記サンプリング周波数信号をノイズ検出可能な所定の周波数に設定し、その時のサンプリング手段の出力である第1サンプリング結果を前記ノイズ周期測定手段へ転送し、ノイズ周期測定後に、前記サンプリング周波数信号を、測定されたノイズ周期に相当する周波数と一致しない周波数に設定し、その時のサンプリング手段の出力である第2サンプリング結果を前記信号判定手段へ転送するように制御する制御手段と、を有することを特徴とする。」 「【0016】 1.第1実施形態 1.1)構成 図2において、本発明の第1実施形態による信号検出回路10は、外部入力端子11を通して外部機器から外部信号を入力し、水晶発振器12からクロック(CLK)信号を入力する。ここで、外部信号は、高(H)レベルと低(L)レベルとの間で変化する信号であって、HレベルあるいはLレベルのいずれか一方を通常時の信号レベルとする信号であるが、一定の発生周期でノイズが重畳したものとする。このようなノイズとしては、DC?DCコンバータのスイッチングノイズなどがある。以下の説明では、通常はHレベルに維持され、異常を通知する時はLレベルとなる外部信号を例示する。 【0017】 信号検出回路10は、外部信号をサンプリング周波数信号に従ってサンプリングするサンプリング部101を有し、そのサンプリングされた外部信号がスイッチ102を通して外部信号判定部103あるいはノイズ分析制御部104のいずれかへ出力される。ここでは、外部信号判定部103へ出力されるサンプリングされた外部信号を「サンプリング結果b」、ノイズ分析制御部104へ出力されるサンプリングされた外部信号を「サンプリング結果a」として区別する。 【0018】 外部信号判定部103は、後述するように、サンプリング結果bがLレベルである連続サンプリング回数が予め設定された閾値を越えた場合に、当該外部信号が異常を通知していると判定する。 【0019】 ノイズ分析制御部104はノイズ周期測定部104aと制御部104bと機能的に含む。ノイズ周期測定部104aは、制御部104bの制御に従って、入力したサンプリング結果aのレベル変化を検出してノイズ周期を算出する。制御部104bは、ノイズ周期測定処理を行い場合には、想定されるノイズ繰り返し周波数よりも十分に高い高周波数サンプリングのための周波数設定信号を周波数生成部105へ出力し、かつ、サンプリング結果aがノイズ周期測定部104aに入力するようにスイッチ102を設定する。これによりノイズ周期測定部104aはサンプリング結果aからノイズの発生周期(以下、ノイズ周期という。)の算出を行う。 【0020】 高周波数サンプリング時の周波数をf_(H)、サンプリング結果aがLレベルとなる周期の間に実行されるサンプリング回数をSとすれば、ノイズ周期Prは、次式(1)により算出される。 Pr=(1/f_(H))*S ・・・ (1)」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 (ア)『入力信号の振幅が閾値よりも大きい場合にパルス信号を発生させる識別再生部から前記パルス信号を受信し、前記パルス信号の立ち上がり変化点である第1変化点を検出すると同時にクロックによるカウントを開始する立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部』と『前記識別再生部から前記パルス信号を受信し、前記パルス信号の立ち下がり変化点である第2変化点を検出すると同時に前記クロックによるカウントを開始する立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部』について 引用発明1における「シリアルクロック2」は、【図5】の記載からも明らかなように「パルス信号」であり、「(シリアルクロック2の)立ち下がりエッジ」は、本願発明1でいう『パルス信号の立ち下がり変化点である第2変化点』に対応するものといえる。 そして、引用発明1は、「シリアルクロック2の立ち下がりエッジ発生によってシリアル受信が開始するとこれを受けた前記制御回路7は前記カウンタ6のカウント動作を許可し、前記カウンタ6は前記シリアルクロック2より高速のクロック3によってカウントアップを行」うのであるから、「(シリアルクロック2の)立ち下がりエッジ」を検出すると同時に「カウンタ6」がカウントを開始することは明らかである。 してみると、本願発明1と引用発明1とは、「パルス信号を受信し、前記パルス信号の変化点を検出すると同時にクロックによるカウントを開始するカウンタ部」を備えているという点で共通している。 (イ)『前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第2変化点を検出した場合、 または、 前記立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部が所定のカウント数をカウントする前に、前記立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部が前記第1変化点を検出した場合に、ノイズを有すると判定する変化点間隔ショート検出部』について 引用発明1における「エッジ検出回路13」は、「前記シリアルクロック2の両エッジでセットされ、前記コンペア一致信号12の’H’区間でリセットされ、前記クロックエッジが発生しない時間(前記パルス幅)中にノイズが発生した場合には、コンペア一致信号12が’L’区間であるためセットされエラー検知信号14を発生する」ものであり、ノイズの発生の有無を検出している。 してみると、本願発明1と引用発明1とは、「ノイズの発生の有無を検出する手段」を備えるという点で共通している。 (ウ)『ノイズ検知装置』について 引用発明1は、「ノイズ検知及びノイズによる誤動作の防止を目的としたシリアルインターフェイス」であるから、本願発明1でいう『ノイズ検知装置』といえるものである。 上記(ア)から(ウ)で対比した事項を踏まえると、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点、相違点がある。 (一致点) 「パルス信号を受信し、前記パルス信号の変化点を検出すると同時にクロックによるカウントを開始するカウンタ部と、 ノイズの発生の有無を検出する手段と、を備える ノイズ検知装置。」 (相違点) (相違点1) 本願発明1は、『入力信号の振幅が閾値よりも大きい場合にパルス信号を発生させる識別再生部』を有し、『識別再生部』から『パルス信号』を受信するのに対して、引用発明1にそのような構成はない点。 (相違点2) 本願発明1は、『パルス信号の立ち上がり変化点である第1変化点』と『パルス信号の立ち下がり変化点である第2変化点』を検出すると、それぞれ、『立ち上がり変化点ラッチ・カウンタ部』と『立ち下がり変化点ラッチ・カウンタ部』という2つの『変化点ラッチ・カウンタ部』でカウントを開始するのに対し、引用発明1においては、「立ち下がりエッジ」という変化点を検出すると、「立ち下がりエッジ」から「立ち上がりエッジ」までを「カウンタ6」という1つの手段でカウントを行う点。 (相違点3) 本願発明1及び引用発明1は、いずれも「ノイズの発生の有無を検出する手段」を備えているものの(本願発明1においては『変化点間隔ショート検出部』、引用発明1においては「エッジ検出回路13」が対応する。)、上記相違点2で指摘した事項と関連して、ノイズの発生の有無を検出する具体的な処理方法が異なっている点。 (相違点4) 本願発明1の『変化点間隔ショート検出部』は、検出された変化点の除外処理として、『複数の前記第1変化点及び前記第2変化点のうち、前記入力信号に位相同期のリタイミングクロックを生成するPLLから受信した前記リタイミングクロックの立ち上がり変化点である第3変化点、または、前記リタイミングクロックの立ち下がり変化点である第4変化点と一致するものを除外することにより、前記ノイズによる前記第1変化点及び前記第2変化点を抽出する』処理を実行するのに対し、引用発明1の「エッジ検出回路13」は,比較回路10によるコンペアレジスタ8とカウンタ9の比較により出力されたコンペア一致信号12がH区間の場合の変化点を除外(リセット)することにより、コンペア一致信号12がL区間の変化点だけをセットしてエラー検知信号14を発生するが、『入力信号に位相同期のリタイミングクロックを生成するPLL』が備わっている旨特定されていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点4について検討すると、 引用発明1は、シリアル受信データ1をシフトレジスタ4で受信すれば良いので「リタイミング」を必要としないから、別途、『リタイミングクロック』を生成することの動機付けが存在しない。 してみれば、引用発明1において、『位相同期のリタイミングクロックを生成するPLL』を設け、『リタイミングクロック』の変化点(エッジ)に一致するものを正常なパルスのエッジとして除外するよう構成することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 以上を踏まえると、本願発明1は、当業者といえども、引用発明1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 したがって、上記相違点1?3について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 本願発明2、4も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明できたものとはいえない。 本願発明3も、本願発明1と同一の構成を備えるものであり、引用文献2に、上記相違点4に関する構成は記載も示唆もされていないから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2記載技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。 本願発明5は、本願発明1を方法の発明として特定したものであって、本願発明1に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 本願発明6は、本願発明1をプログラムの発明として特定したものであって、本願発明1に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-11-11 |
出願番号 | 特願2019-6786(P2019-6786) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉江 一明 |
特許庁審判長 |
佐藤 智康 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 伊藤 隆夫 |
発明の名称 | ノイズ検知装置、ノイズ検知方法及びノイズ検知プログラム |
代理人 | 家入 健 |