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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04B
管理番号 1379662
審判番号 不服2021-4116  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-31 
確定日 2021-12-06 
事件の表示 特願2018-533625「複数速度のデータを処理する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日国際公開、WO2017/107772、平成31年 3月14日国内公表、特表2019-507517、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)12月7日(優先権主張外国庁受理 2015年12月26日 中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成30年 8月 3日 手続補正書
令和 元年 7月26日付け 拒絶理由通知書
10月30日 意見書・手続補正書
令和 2年 3月 2日付け 拒絶理由通知書(最後)
6月 9日 意見書・手続補正書
11月19日付け 補正の却下の決定・拒絶査定
令和 3年 3月31日 手続補正書・審判請求書
6月28日 前置報告書
7月14日 上申書
9月27日 上申書

第2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、令和3年3月31日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。

「 【請求項1】
複数速度のデータを処理する方法であって、前記方法は、
データ処理装置により、第1データを受信するステップであって、前記第1データの伝送速度は第1速度である、ステップと、
前記データ処理装置により、第2データを受信するステップであって、前記第2データの伝送速度は第2速度であり、前記第1速度は前記第2速度と異なる、ステップと、
前記データ処理装置により、前記第1速度と前記第1データに基づいて、前記第1データをN1個の第3データとN2個の第4データとに分割するステップであって、N1は1以上の整数であり、N2は0以上の整数である、ステップと、
前記データ処理装置により、前記第2速度と前記第2データに基づいて、前記第2データをM1個の第5データとM2個の第6データとに分割するステップであって、M1は1以上の整数であり、M2は0以上の整数である、ステップと、
前記データ処理装置により、前記N1個の第3データと前記N2個の第4データと第1変調方式に基づいて第7データを得るステップであって、
前記データ処理装置により、前記第1変調方式に従って前記N1個の第3データと前記N2個の第4データを第9データに変調するステップであって、前記第9データの速度は前記第1速度である、ステップと、
前記第7データを得るため、前記データ処理装置により、前記第9データに対して光電変換を遂行するステップと、を含み、
前記第7データはシリアル伝送データであり、光信号であり、前記第7データの伝送速度は前記第1速度である、ステップと、
前記データ処理装置により、前記M1個の第5データと前記M2個の第6データと第2変調方式に基づいて第8データを得るステップであって、
前記データ処理装置により、前記第2変調方式に従って前記M1個の第5データと前記M2個の第6データを第10データに変調するステップであって、前記第10データの速度は前記第2速度である、ステップと、
前記第8データを得るため、前記データ処理装置により、前記第10データに対して光電変換を遂行するステップと、を含み、
前記第8データはシリアル伝送データであり、光信号であり、前記第8データの伝送速度は前記第2速度である、ステップと、
前記データ処理装置により、前記第7データを出力するステップと、
前記データ処理装置により、前記第8データを出力するステップと
を含み、
前記データ処理装置により、前記データ処理装置に保存された、ポートと速度との間の対応関係と、前記第1データを受信するポートとに基づいて、前記第1速度を判断するステップと、
前記データ処理装置により、前記データ処理装置に保存された、ポートと速度との間の前記対応関係と、前記第2データを受信するポートとに基づいて、前記第2速度を判断するステップと
をさらに含む、方法。
【請求項2】
N1が1に等しく、N2が0に等しい場合、前記データ処理装置により、前記N1個の第3データと前記N2個の第4データと第1変調方式に基づいて第7データを得る前記ステップは、
前記データ処理装置により、前記第3データを前記第7データとして使用するステップであって、前記第1変調方式は前記第3データを透過的に伝送する、ステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
M1が1に等しく、M2が0に等しい場合、前記データ処理装置により、前記M1個の第5データと前記M2個の第6データと第2変調方式に基づいて第8データを得る前記ステップは、
前記データ処理装置により、前記第5データを前記第8データとして使用するステップであって、前記第2変調方式は前記第5データを透過的に伝送する、ステップ
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
データ処理装置であって、前記装置は、受信ユニットと、第1処理ユニットと、第2処理ユニットと、第1変調ユニットと、第2変調ユニットと、出力ユニットとを備え、
前記受信ユニットは第1データを受信し、第2データを受信し、前記第1データの伝送速度は第1速度であり、前記第2データの伝送速度は第2速度であり、前記第1速度は前記第2速度と異なる、ように構成され、
前記第1処理ユニットは、前記受信ユニットによって受信された前記第1データと前記第1速度に基づいて、前記第1データをN1個の第3データとN2個の第4データとに分割し、N1は1以上の整数であり、N2は0以上の整数である、ように構成され、
前記第2処理ユニットは、前記受信ユニットによって受信された前記第2データと前記第2速度に基づいて、前記第2データをM1個の第5データとM2個の第6データとに分割し、M1は1以上の整数であり、M2は0以上の整数である、ように構成され、
前記第1変調ユニットは、前記第1処理ユニットによって得られた前記N1個の第3データと前記N2個の第4データと第1変調方式に基づいて第7データを得、前記第7データはシリアル伝送データであり、光信号であり、前記第7データの伝送速度は前記第1速度である、ように構成され、具体的には、前記第1変調ユニットは、
前記第1変調ユニットは、前記第1変調方式に従って、前記第1処理ユニットによって得られた前記N1個の第3データと前記N2個の第4データを第9データに変調し、前記第9データの速度は前記第1速度であり、
前記第7データを得るため、前記第9データに対して光電変換を遂行するように構成され、
前記第2変調ユニットは、前記第2処理ユニットによって得られた前記M1個の第5データと前記M2個の第6データと第2変調方式に基づいて第8データを得、前記第8データはシリアル伝送データであり、光信号であり、前記第8データの伝送速度は前記第2速度である、ように構成され、具体的には、前記第2変調ユニットは、
前記第2変調方式に従って、前記第2処理ユニットによって得られた前記M1個の第5データと前記M2個の第6データを第10データに変調し、前記第10データの速度は前記第2速度であり、
前記第8データを得るため、前記第10データに対して光電変換を遂行するように構成され、
前記出力ユニットは前記第1変調ユニットによって得られた前記第7データを出力し、前記第2変調ユニットによって得られた前記第8データを出力するように構成され、
前記データ処理装置に保存された、ポートと速度との間の対応関係と、前記第1データを受信するポートとに基づいて、前記第1速度を判断するように構成された第1判断ユニットと、
前記データ処理装置に保存された、ポートと速度との間の前記対応関係と、前記第2データを受信するポートとに基づいて、前記第2速度を判断するように構成された第2判断ユニットと
をさらに備える、
装置。
【請求項5】
N1が1に等しく、N2が0に等しい場合、前記第1変調ユニットは前記第3データを前記第7データとして使用し、前記第1変調方式は前記第3データを透過的に伝送する、ように具体的に構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
M1が1に等しく、M2が0に等しい場合、前記第2変調ユニットは前記第5データを前記第8データとして使用し、前記第2変調方式は前記第5データを透過的に伝送する、ように具体的に構成される、請求項4または5に記載の装置。」

第3 原査定の概要
令和2年11月19日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2008-92410号公報
引用文献2 特開2003-324759号公報

第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は光伝送システムの送受信用集積回路に関する。特に、クライアント信号とITU-T勧告G.709「光伝送ネットワーク(OTN)のインターフェース」で定義されたOTU2(光チャネル伝送ユニット2)またはOTU3とを相互に変換する集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報転送技術の進歩により、10GbpsのEthernet(登録商標)が実用化され、また、40Gbpsの情報転送も実用化されようとしている。一方、ITU-T勧告G.709には、このようなクライアント信号を光伝送ネットワークで伝送するための光チャネル伝送ユニットとして、ライン・レートが10GbpsのOTU2、ライン・レートが40GbpsのOTU3が定義されている。」

イ 「【0019】
この集積回路を10Gbpsトランスポンダとして動作させるには、クライアント側に入力インターフェース11-1および出力インターフェース11-2を用い、ライン側に入力インターフェース21-1および出力インターフェース21-2を用いる。10Gbpsのクライアント信号は、入力インターフェース11-1からセレクタ36を介して信号変換回路37に入力され、OPU(光チャネル・ペイロード・ユニット)2、ODU(光データ・ユニット)2およびOTU2への信号変換(マッピング)が施されて、出力インターフェース21-2からライン側に出力される。一方、ライン信号は、入力インターフェース21-1からセレクタ41を介して信号変換回路42に入力され、クライアント信号への信号変換(デマッピング)が施されて、セレクタ48および出力インターフェース11-2を経由してクライアント側に出力される。
【0020】
40Gbpsトランスポンダとして動作させるには、クライアント側に入力インターフェース15-1および出力インターフェース15-2を用い、ライン側に入力インターフェース22-1および出力インターフェース22-2を用いる。入力インターフェース15-1に入力された40Gbpsクライアント信号は、セレクタ36を介して信号変換回路37に入力され、OPU3、ODU3およびOTU3にマッピングされて、出力インターフェース22-2からライン側に出力される。一方、入力インターフェース22-1に入力されたライン信号は、セレクタ41を介して信号変換回路42に入力され、クライアント信号にデマッピングされて、出力インターフェース15-2からクライアント側に出力される。」

ウ 図1


(2)前記(1)の記載によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「クライアント信号とITU-T勧告G.709「光伝送ネットワーク(OTN)のインターフェース」で定義されたOTU2(光チャネル伝送ユニット2)またはOTU3とを相互に変換する集積回路であって(【0001】)、
ITU-T勧告G.709には、10GbpsのEthernet(登録商標)、40Gbpsの情報転送のようなクライアント信号を光伝送ネットワークで伝送するための光チャネル伝送ユニットとして、ライン・レートが10GbpsのOTU2、ライン・レートが40GbpsのOTU3が定義されており(【0002】)、
10Gbpsのクライアント信号は、入力インターフェース11-1からセレクタ36を介して信号変換回路37に入力され、OPU(光チャネル・ペイロード・ユニット)2、ODU(光データ・ユニット)2およびOTU2への信号変換(マッピング)が施されて、出力インターフェース21-2からライン側に出力され(【0019】)、
入力インターフェース15-1に入力された40Gbpsクライアント信号は、セレクタ36を介して信号変換回路37に入力され、OPU3、ODU3およびOTU3にマッピングされて、出力インターフェース22-2からライン側に出力される(【0020】)
集積回路。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オールオプティカルクロスコネクト(OOO型OXC)部、波長分割多重(WDM)部、及びOOO型OXC部とWDM部との間でのM本の稼動リンクに対して共有できるN本の予備リンク(プロテクションリンク)を持った光通信ネットワークにおけるプロビジョンニング(プロテクションリンクへの割当て)に関する、光通信ネットワークにおけるプロビジョンニング方法及びプログラム、プロビジョンニング光通信ネットワークシステム並びに該プログラムを記録した記録媒体に関するものである。」

イ 「【0021】
本発明システムの第2の特徴は、異なるビットレートの光通信機器を接続したOXC(オプティカルクロスコネクト)部と、当該OXC部に接続され波長分割多重を行うWDM(波長分割多重)部とを、送受信側でそれぞれ具備し、プロテクションリンクを持った光通信ネットワークシステムにおいて、前記OXC部においてプロテクションリンクへの切替を行うに際して通知される切替に係る情報を受けると、前記OXC部のIN側とOUT側とのクロス接続関係、当該OXC部のOUT側と前記WDM部の接続関係、及び当該WDM部の各ポートとそれに設定されたビットレートの関係を、一元的に対応付けたビットレート-接続対応表に反映させ、当該ビットレート-接続対応表から、当該WDM部の切替先のビットレートの値を決定し、当該決定した値を前記切替先のビットレートとして設定するように前記WDM部に指令する、制御部を具備することにより、前記プロテクションリンクを、ビットレート毎に設ける必要をなくしてなる、プロビジョンニング光通信ネットワークシステムの構成採用にある。」

(2)前記(1)の記載によれば、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。

「オールオプティカルクロスコネクト(OOO型OXC)部、波長分割多重(WDM)部、及びOOO型OXC部とWDM部との間でのM本の稼動リンクに対して共有できるN本の予備リンク(プロテクションリンク)を持った光通信ネットワークにおけるプロビジョンニング(プロテクションリンクへの割当て)に関し、
前記OXC部においてプロテクションリンクへの切替を行うに際して通知される切替に係る情報を受けると、前記OXC部のIN側とOUT側とのクロス接続関係、当該OXC部のOUT側と前記WDM部の接続関係、及び当該WDM部の各ポートとそれに設定されたビットレートの関係を、一元的に対応付けたビットレート-接続対応表に反映させ、当該ビットレート-接続対応表から、当該WDM部の切替先のビットレートの値を決定し、当該決定した値を前記切替先のビットレートとして設定するように前記WDM部に指令する技術。」

第5 対比・判断
1 本願発明4について
事案に鑑み、先ず、本願発明4と引用発明との対比・判断を行う。

(1)対比
ア 引用発明は、「クライアント信号と」「OTU2(光チャネル伝送ユニット2)またはOTU3とを相互に変換する集積回路」であるから、クライアント信号のデータを処理する装置、すなわち、データ処理装置であると認められる。
引用発明の「入力インターフェース11-1」及び「入力インターフェース15-1」は、クライアント信号が入力されるものであるから、本願発明4の「受信ユニット」に相当する。
引用発明の「出力インターフェース21-2」及び「出力インターフェース22-2」は、ライン側に信号を出力するものであるから、本願発明4の「出力ユニット」に相当する。
引用発明の「信号変換回路37」は、Ethernet(登録商標)等のクライアント信号を「OTU2(光チャネル伝送ユニット2)またはOTU3」に変換するものであるから、当然、変調を行う機能を有すると認められ、本願発明4の「第1変調ユニット」及び「第2変調ユニット」に対応する。
以上によれば、本願発明4と引用発明とは、「データ処理装置であって、前記装置は、受信ユニットと、変調ユニットと、出力ユニットとを備え」る点で共通する。

イ 引用発明の「10Gbpsのクライアント信号」及び「40Gbpsクライアント信号」は、いずれもデータが搬送されている信号であると認められ、搬送されるデータと同一視できるから、それぞれ本願発明4の「第1データ」及び「第2データ」に相当する。
そうすると、引用発明の「10Gbps」及び「40Gbps」は、それぞれ本願発明4の「第1速度」及び「第2速度」に相当する。
よって、本願発明4と引用発明とは、「前記受信ユニットは第1データを受信し、第2データを受信し、前記第1データの伝送速度は第1速度であり、前記第2データの伝送速度は第2速度であり、前記第1速度は前記第2速度と異なる、ように構成され」る点で一致する。

ウ 引用発明の「OTU2」は、「光伝送ネットワーク(OTN)」で伝送される「光チャネル伝送ユニット2」であるから、本願発明4の「光信号」である「第7データ」に相当する。
そして、引用発明の「信号変換回路37」は、「10Gbpsのクライアント信号」を「OTU2」に変換しており、この変換に用いる変調方法を「第1変調方式」と呼ぶことは任意である。
引用発明の「OTU2」は「ライン・レートが10Gbps」であるから、クライアント信号と同じ「10Gbps」の伝送速度を有する。
以上によれば、本願発明4と引用発明とは、「前記変調ユニットは、前記第1データに由来するデータと第1変調方式に基づいて第7データを得、前記第7データは光信号であり、前記第7データの伝送速度は前記第1速度である、ように構成され」る点で共通する。

エ 前記ウと同様に、引用発明の「OTU3」は、本願発明4の「光信号」である「第8データ」に相当し、引用発明の「信号変換回路37」は、「40Gbpsクライアント信号」を「OTU3」に変換しており、この変換に用いる変調方法を「第2変調方式」と呼ぶことは任意である。
よって、本願発明4と引用発明とは、「前記変調ユニットは、前記第2データに由来するデータと第2変調方式に基づいて第8データを得、前記第8データは光信号であり、前記第8データの伝送速度は前記第2速度である、ように構成され」る点で共通する。

オ 引用発明の「出力インターフェース21-2」は、「OTU2」を出力する。
また、引用発明の「出力インターフェース22-2」は、「OTU3」を出力する。
よって、本願発明4と引用発明とは、「前記出力ユニットは前記変調ユニットによって得られた前記第7データを出力し、前記変調ユニットによって得られた前記第8データを出力するように構成され」る点で共通する。

カ 前記ア?オによれば、本願発明4と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

〈一致点〉
「データ処理装置であって、前記装置は、受信ユニットと、変調ユニットと、出力ユニットとを備え、
前記受信ユニットは第1データを受信し、第2データを受信し、前記第1データの伝送速度は第1速度であり、前記第2データの伝送速度は第2速度であり、前記第1速度は前記第2速度と異なる、ように構成され、
前記変調ユニットは、前記第1データに由来するデータと第1変調方式に基づいて第7データを得、前記第7データは光信号であり、前記第7データの伝送速度は前記第1速度である、ように構成され、
前記変調ユニットは、前記第2データに由来するデータと第2変調方式に基づいて第8データを得、前記第8データは光信号であり、前記第8データの伝送速度は前記第2速度である、ように構成され、
前記出力ユニットは前記変調ユニットによって得られた前記第7データを出力し、前記変調ユニットによって得られた前記第8データを出力するように構成される
装置。」である点。

〈相違点1〉
本願発明4は、「前記受信ユニットによって受信された前記第1データと前記第1速度に基づいて、前記第1データをN1個の第3データとN2個の第4データとに分割し、N1は1以上の整数であり、N2は0以上の整数である、ように構成され」た「第1処理ユニット」を「第1変調ユニット」の前段に備えるのに対し、引用発明は、「10Gbpsのクライアント信号」を分割する構成を備えない点。
上記に伴い、本願発明4の「第1変調ユニット」の入力は、「前記第1処理ユニットによって得られた前記N1個の第3データと前記N2個の第4データ」であるのに対し、引用発明の「信号変換回路37」の入力は、「10Gbpsのクライアント信号」そのものである点。
上記に伴い、本願発明4の「第1変調ユニット」は、具体的に「前記第1変調方式に従って、前記第1処理ユニットによって得られた前記N1個の第3データと前記N2個の第4データを第9データに変調し、前記第9データの速度は前記第1速度であり、前記第7データを得るため、前記第9データに対して光電変換を遂行するように構成され」るのに対し、引用発明の「信号変換回路37」の具体的構成は明らかではない点。

〈相違点2〉
本願発明4は、「前記受信ユニットによって受信された前記第2データと前記第2速度に基づいて、前記第2データをM1個の第5データとM2個の第6データとに分割し、M1は1以上の整数であり、M2は0以上の整数である、ように構成され」た「第2処理ユニット」を「第2変調ユニット」の前段に備えるのに対し、引用発明は、「40Gbpsクライアント信号」を分割する構成を備えない点。
上記に伴い、本願発明4の「第2変調ユニット」の入力は、「前記第2処理ユニットによって得られた前記M1個の第5データと前記M2個の第6データ」であるのに対し、引用発明の「信号変換回路37」の入力は、「40Gbpsクライアント信号」そのものである点。
上記に伴い、本願発明4の「第2変調ユニット」は、具体的に「前記第2変調方式に従って、前記第2処理ユニットによって得られた前記M1個の第5データと前記M2個の第6データを第10データに変調し、前記第10データの速度は前記第2速度であり、前記第8データを得るため、前記第10データに対して光電変換を遂行するように構成され」るのに対し、引用発明の「信号変換回路37」の具体的構成は明らかではない点。

〈相違点3〉
本願発明4は、「第1変調ユニット」及び「第2変調ユニット」の2つの変調ユニットを備え、「第1変調ユニット」を「第1データ」に用い、「第2変調ユニット」を「第2データ」に用いるのに対し、引用発明は、1つの「信号変換回路37」を「10Gbpsのクライアント信号」及び「40Gbpsクライアント信号」の双方に用いる点。

〈相違点4〉
本願発明4の「第7データ」は「シリアル伝送データ」であるのに対し、引用発明の「OTU2」はシリアル伝送データであるか否かが明らかではない点。

〈相違点5〉
本願発明4の「第8データ」は「シリアル伝送データ」であるのに対し、引用発明の「OTU3」はシリアル伝送データであるか否かが明らかではない点。

〈相違点6〉
本願発明4は「ポートと速度との間の対応関係」を保存しており、「第1判断ユニット」及び「第2判断ユニット」を備え、「第1判断ユニット」は「ポートと速度との間の対応関係と、前記第1データを受信するポートとに基づいて、前記第1速度を判断するように構成され」、「第2判断ユニット」は「ポートと速度との間の前記対応関係と、前記第2データを受信するポートとに基づいて、前記第2速度を判断するように構成され」ているのに対し、引用発明は「ポートと速度との間の対応関係」を保存しておらず、「第1判断ユニット」及び「第2判断ユニット」を備えない点。

(2)相違点についての判断
相違点1について検討する。

ア 本願発明4においてN2が0に等しい場合、結果的に第1データは分割されない。
しかしながら、本願発明4の「第1処理ユニット」は、第1データを「分割」するものとして規定されているから、本願発明4に、N2が恒久的に0に等しい態様(すなわち、一切の分割を行わない態様)が含まれると解釈するのは不自然である。換言すれば、本願発明4は、第1データを分割できるように構成したものであって、その動作の中でN2が0となる場合を許容しているに過ぎないと解釈すべきである。

イ 前記アの本願発明4の解釈に鑑みると、引用文献1には、引用発明の集積回路において「10Gbpsのクライアント信号」を「N1個の第3データとN2個の第4データとに分割」することについては、記載も示唆もない。

ウ その他、引用発明の「10Gbpsのクライアント信号」を「分割」することが容易であることを示す文献は存在しない。

エ 以上によれば、相違点2?6について検討するまでもなく、本願発明4は引用発明から容易に想到し得るものではない。

2 本願発明5、6について
本願発明5及び6は、いずれも、本願発明4の従属発明であるから、引用発明との間に、相違点1が存在する。
したがって、前記1(2)のとおりであるから、本願発明5及び6は、いずれも、引用発明から容易に想到し得るものではない。

3 本願発明1?3
本願発明1は、本願発明4を方法の発明としたものであるから、引用発明との間に以下の相違点1′が存在する。

〈相違点1′〉
本願発明1は、「前記データ処理装置により、前記第1速度と前記第1データに基づいて、前記第1データをN1個の第3データとN2個の第4データとに分割するステップであって、N1は1以上の整数であり、N2は0以上の整数である、ステップ」を含むのに対し、引用発明は、「10Gbpsのクライアント信号」を分割することを含まない点。

相違点1′は、相違点1と同様に、第1データを「分割」することに関する相違点であるから、前記1(2)と同様に、本願発明1は引用発明から容易に想到し得るものではない。
本願発明2及び3は、いずれも、本願発明1の従属発明であるから、引用発明との間に相違点1′が存在し、引用発明から容易に想到し得るものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?6は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-11-19 
出願番号 特願2018-533625(P2018-533625)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 対馬 英明  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 丸山 高政
福田 正悟
発明の名称 複数速度のデータを処理する方法および装置  
代理人 野村 進  
代理人 実広 信哉  

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