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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03F
管理番号 1379679
審判番号 不服2021-3286  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-11 
確定日 2021-12-03 
事件の表示 特願2018-554548「増幅器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 9日国際公開、WO2017/190764、令和 1年 6月13日国内公表、特表2019-516308、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)5月2日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成30年12月 3日 手続補正書
令和 元年10月 3日付け 拒絶理由通知書
12月20日 意見書・手続補正書
令和 2年 4月15日付け 拒絶理由通知書
7月14日 意見書
11月17日付け 拒絶査定
令和 3年 3月11日 審判請求書

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明12」という。)は、令和元年12月20日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。

「 【請求項1】
受信機回路(15)のための増幅器(30)であって、前記増幅器は、入力ノード(Vin)と出力ノード(Vout)とを有し、
前記出力ノード(Vout)に接続されたチューニング可能なタンク回路(100)と、
前記出力ノード(Vout)と前記入力ノード(Vin)との間に接続されたフィードバック回路パス(200)と、
前記フィードバック回路パス(200)の内部ノードと、基準電圧ノードとの間に接続されたチューニング可能なコンデンサ(210)と、を有し、
前記フィードバック回路パス(200)は、少なくとも一つの抵抗(220、230)と、少なくとも一つのコンデンサ(240)との直列接続を有する、増幅器。
【請求項2】
請求項1に記載の増幅器(30)であって、前記フィードバック回路パス(200)は、パッシブ回路である、増幅器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の増幅器(30)であって、前記少なくとも一つの抵抗(220、230)は、チューニング可能である、増幅器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の増幅器(30)であって、前記少なくとも一つのコンデンサ(240)は、第一コンデンサ240を有し、前記少なくとも一つの抵抗は、前記出力ノード(Vout)と前記第一コンデンサ(240)との間に接続された第一抵抗(220)と、前記第一コンデンサ(240)と前記入力ノード(Vin)との間に接続された第二抵抗(230)とを有する、増幅器。
【請求項5】
請求項4に記載の増幅器(30)であって、前記内部ノードは前記第一コンデンサ(240)と前記第二抵抗(230)との間にあるノードである、増幅器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の増幅器(30)であって、コモンソース構成の第一トランジスタ(120)を有する、増幅器。
【請求項7】
請求項6に記載の増幅器(30)であって、前記第一トランジスタ(120)と前記出力ノード(Vout)との間にカスコード構成で接続された第二トランジスタ(130)を有する、増幅器。
【請求項8】
受信機回路(15)のための差動増幅器であって、それぞれ請求項1ないし7のいずれか一項に記載の増幅器である第一および第二の増幅器(30)を有する、差動増幅器。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の増幅器(30)または請求項8に記載の差動増幅器を有する受信機回路(15)。
【請求項10】
請求項9に記載の受信機回路(15)を有する通信装置(1、2)。
【請求項11】
請求項10に記載の通信装置(1)であって、前記通信装置(1)は、セルラー通信ネットワークにおける無線通信デバイス(1)である、通信装置。
【請求項12】
請求項10に記載の通信装置(2)であって、前記通信装置(2)は、セルラー通信ネットワークにおける無線基地局(2)である、通信装置。」

第3 原査定の概要
令和2年11月17日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである。

「本願の請求項1?12に係る発明は、以下の引用文献1?6に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2005-175819号公報
2.特表2008-512926号公報(周知技術を示す文献)
3.特開昭63-027104号公報
4.特開昭59-005709号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2010-258867号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2011-097160号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)」

なお、請求項に係る発明と引用文献との関係は以下のとおりである。
・請求項1及び2に係る発明については、引用文献1?3、6。
・請求項3?7に係る発明については、引用文献1?4、6。
・請求項8?12に係る発明については、引用文献1?6。


第4 引用文献の記載事項
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、無線通信の送受信に用いられる増幅器並びに通信装置に係り、特に、例えばUWB(ウルトラワイドバンド)通信に適用され、受信信号の高周波成分の電圧増幅を行なう増幅器並びに通信装置に関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明の目的は、UWB通信で使用することが可能な、広い周波数範囲において一括して増幅を行なうことができる、優れた増幅器並びに通信装置を提供することにある。
【0033】
本発明のさらなる目的は、広い周波数範囲において平坦な増幅特性を備え、寄生容量による劣化を防止し、且つ群遅延時間が短い、優れた増幅器並びに通信装置を提供すること
にある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、増幅素子と、
前記増幅素子の負荷として装荷された、s-plane上で複数の極点及び該極点間に零点が配置されたバンドパス・フィルタと、
を備えることを特徴とする増幅器である。」

ウ 「【0036】
ここで、電流出力増幅素子の負荷としてのバンドパス・フィルタは、増幅素子に対し並列に装荷されたL-C並列共振回路及びL-C-R直列共振回路とで構成される。」

エ 「【0054】
s-plane上では、伝達関数H(s)の分母が0となる点に極点が配置され、分子が0となる点に零点が配置される。図2に示すs-plane上では、s-planeの中央に零点が配置されるとともに、バンドパス・フィルタの次数に相当する2個の極点がs-planeの片側に現れる。さらに、本実施形態では、直列コイルLsと直列キャパシタCsと抵抗RLからなるL-C-R直列共振回路の配設により、原点以外の場所にも、2個の極点の間に零点を設けている。」

オ 「【0063】
また、図6には、図1に示した広帯域増幅器において、電流出力増幅素子として、ソース接地(Common-Source)のカスコード電圧帰還増幅器(CascodeAmplifier with Voltage feedback)を適用した場合の構成例を示している。
【0064】
入力端子101はMOS-FET201のゲートに接続され、入力信号が印加される。MOS-FET201のソースはGNDに接地されている。また、MOS-FET301のソースはMOS-FET201のドレインに接続され、カスコード回路を構成している。
【0065】
キャパシタ302は、MOS-FET301のゲートとGNDの間に接続され、MOS-FET301のゲートを交流的に接地する。MOS-FET301のゲートはバイアス端子303に接続され、所定のゲート電圧が印加される。
【0066】
キャパシタ401は、MOS-FET301のドレインと抵抗402の間に接続され、電圧帰還の経路の直流を遮断する。抵抗402は、キャパシタ401とMOS-FET201のゲートの間に接続され、電圧帰還の帰還路を構成する。抵抗202は、抵抗402とバイアス端子203の間に接続され、MOS-FET201に所定のゲート電圧を供給する。
【0067】
参照番号103と104は、それぞれL-C並列共振回路を構成する並列インダクタLpと並列キャパシタCpである。また、参照番号107と106と105は、L-C-R直列共振回路を構成する直列インダクタLs、直列キャパシタCs、及び抵抗RLである。これらL-C並列共振回路、及びL-C-R直列共振回路は、増幅素子の負荷として並列的に装荷されている。参照番号108は出力端子である。」

カ 図6



(2)前記(1)の記載によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「UWB通信に適用され、受信信号の高周波成分の電圧増幅を行なう増幅器であって(【0001】)、
増幅素子の負荷として装荷された、s-plane上で複数の極点及び該極点間に零点が配置されたバンドパス・フィルタを備えることにより(【0034】)、広い周波数範囲において一括して増幅を行なうことができ(【0032】)、広い周波数範囲において平坦な増幅特性を備え、寄生容量による劣化を防止し、且つ群遅延時間が短く(【0033】)、
ここで、電流出力増幅素子の負荷としてのバンドパス・フィルタは、増幅素子に対し並列に装荷されたL-C並列共振回路及びL-C-R直列共振回路とで構成され(【0036】)、
s-planeの中央に零点が配置されるとともに、バンドパス・フィルタの次数に相当する2個の極点がs-planeの片側に現れ、直列コイルLsと直列キャパシタCsと抵抗RLからなるL-C-R直列共振回路の配設により、原点以外の場所にも、2個の極点の間に零点を設け(【0054】)、
増幅素子として、ソース接地のカスコード電圧帰還増幅器を適用した場合(【0063】)、
MOS-FET301のソースはMOS-FET201のドレインに接続され、カスコード回路を構成し(【0064】)、
入力端子101はMOS-FET201のゲートに接続され(【0063】)、
キャパシタ401は、MOS-FET301のドレインと抵抗402の間に接続され、電圧帰還の経路の直流を遮断し(【0066】)、
抵抗402は、キャパシタ401とMOS-FET201のゲートの間に接続され、電圧帰還の帰還路を構成し(【0066】)、
抵抗202は、抵抗402とバイアス端子203の間に接続され、MOS-FET201に所定のゲート電圧を供給し(【0066】)、
参照番号103と104は、それぞれL-C並列共振回路を構成する並列インダクタLpと並列キャパシタCpであり(【0067】)、
参照番号107と106と105は、L-C-R直列共振回路を構成する直列インダクタLs、直列キャパシタCs、及び抵抗RLであり(【0067】)、
これらL-C並列共振回路、及びL-C-R直列共振回路は、増幅素子の負荷として並列的に装荷され(【0067】)、
参照番号108は出力端子であり(【0067】)、
L-C並列共振回路及びL-C-R直列共振回路の一端は出力端子108に接続し(図6)、
MOS-FET301のドレインは出力端子108に接続される(図6)、
増幅器。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細の説明】
【0001】
今日では、多くの無線システムは、受信機連鎖内にカスコードLNA(低雑音増幅器)を用いている。そのような構造の利点は、単一のトランジスタ段と比べると、入力インピーダンス整合ネットワークをLNA負荷からほとんど独立させ、LO(局部発振器)からのいかなるリークも著しく低減するような優れた逆アイソレーションであることが良く知られている。802.11aに関しては、動作周波数が4.9GHzから6.0GHzであり、UWBに関しては、動作帯域が数GHzを扱うように、ますます、無線システムは広い周波数帯域にわたって動作する。受信機連鎖の第1段である(他にあったとしてもアンテナ及び前段のフィルタの後)LNAは、動作周波数にわたって十分に高い利得及び低い雑音の形状を提供する必要がある。
【0002】
以下の参考文献は、従来技術を図示するものと思われる。
[1]「A 3 to 10 GHz LNA using wideband LC-Ladder Matching Network、A.Ismail」、A.Abidi、ISSCC 2004 conference
[2]「An ultra-wideband CMOS LNA for 3.1 to 10.6GHz Wireless Receivers」、Andrea Bevilacqua、Ali M Niknejad、ISSCC 2004 conference
[3]「A single-chip dual-band tri-mode CMOS transceivers for IEEE 802.11a/b/g WLAN」、Masoud Zargari and al、ISSCC 2004 conference
[4]「A 2.5dB NF direct-conversion receiver front-end for HiperLAN2/IEEE 802.11a/b/g」、Paola Rossi、Antonio Liscidini、Massimo Brandolini、Francesco Svelto、ISSCC 2004 conference

イ 「【0007】
本当の広い帯域のLNA(帯域干渉の外でさえ増幅する)の問題点を解決するためには、1つのアプローチは、狭帯域LNAを周波数調節することである。図3を参照すると、このことは、様々なキャパシタで誘導負荷を調節することによって容易に行われる。既に、この概念は[4]において実行されて公開された。しかしながら、この文献に提案された回路は、LNAがカスコードではないが、わずかなLOリークを有する共通のベース段であること、周波数応答が平坦でないこと、といった幾つかの欠点を有し、文献[4]は、1dB利得変化について示す。」

ウ 図3


(2)前記(1)の記載によれば、引用文献2には、従来技術として(【0002】、【0007】)、次の技術(以下、「文献2従来技術」という。)が記載されていると認められる。

「受信機連鎖のLNA(低雑音増幅器)において(【0001】、【0007】)、
インダクタ(L2)及びキャパシタ(C2)の並列回路が出力に接続され(図3)、
前記キャパシタ(C2)を調節可能とすることにより、LNAを周波数調節する(【0007】)技術。」

3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 2頁左下欄19行?右下欄10行
「第1図において、並列帰還型増幅器は、たとえば電界効果型トランジスタなどのトランジスタ(以下FETと記す)1と、FET1の入力端子4と出力端子5との間に、出力端子5から入力端子4へ帰還を施すための帰還抵抗2と、帰還抵抗2に直列接続される直流遮断コンデンサ3と、直流遮断コンデンサ3と出力端子5との間に接続される抵抗7と、直流遮断コンデンサ3と抵抗7との接続点と接地端子6との間に接続されるコンデンサ8とで構成される。抵抗7とコンデンサ8とがフィルタ回路(ローパスフィルタ)20を構成する。」

イ 3頁右上欄20行?左下欄8行
「さらに、他の実施例として第1図のCfを可変コンデンサとすることにより、利得、入出力VSWR、位相ひずみの制御を行うことができ、その回路図を第2図に示す。第2図において15は可変コンデンサ、17は可変コンデンサ制御用電圧端子、16は抵抗Rf(第2図7)による直流消費電力を無くすためのコンデンサであり、コンデンサ3と同様、十分大きな容量であるが、コンデンサ16は必ずしも必要ではない。」

ウ 第1図


エ 第2図


(2)前記(1)の記載によれば、引用文献3には、次の技術が記載されていると認められる。

「FET1の入力端子4と出力端子5との間に、出力端子5から入力端子4へ帰還を施すための帰還抵抗2と、帰還抵抗2に直列接続される直流遮断コンデンサ3と、直流遮断コンデンサ3と出力端子5との間に接続される抵抗7と、直流遮断コンデンサ3と抵抗7との接続点と接地端子6との間に接続されるコンデンサ8とを設け、抵抗7とコンデンサ8とでローパスフィルタ20を構成し(前記ア)、
コンデンサ8を可変コンデンサ15とすることにより、利得、入出力VSWR、位相ひずみの制御を行うことができる(前記イ)
並列帰還型増幅器。」

4 引用文献6について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョンチューナ等の無線通信装置のフロントエンド部に適用可能な高周波増幅器およびこれを適用した無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信周波数(RF)に受信周波数に帯域制限をかけて希望する周波数のみ選択する受信機において、高周波増幅器の負荷にはほとんどの場合、LC共振器が利用されている。
【0003】
図1は、負荷に並列LC共振器を適用したフロントエンド回路の高周波増幅器の構成例を示す回路図である。
【0004】
この高周波増幅器1は、増幅部であるgmアンプ2、負荷回路3、および出力端子TO1、TO2を有する。
負荷回路3は、gmアンプ2の出力と出力端子TO1,TO2との間に配置されている。
負荷回路3は、ノードND1がgmアンプ2の出力および出力端子TO1に接続され、ノードND2が出力端子TO2および基準電位VSSに接続されている。
負荷回路3は、可変容量素子C、インダクタL、および共振インピーダンス素子としての抵抗素子Rを有する。
可変容量素子C、インダクタL、および抵抗素子Rは、ノードND1とノードND2間に並列に接続されている。
この負荷回路3においては、たとえば容量素子Cの容量値を可変にすることで、帯域を切り替え、帯域切り替えに伴う利得変動を補償するように構成される。」

イ 図1


(2)前記(1)の記載によれば、引用文献6には、従来技術として(【背景技術】)、次の技術(以下、「文献6従来技術」という。)が記載されていると認められる。

「テレビジョンチューナ等の受信機のフロントエンド部に適用可能な高周波増幅器において(【0001】、【0002】)、
負荷に並列LC共振器を利用し(【0002】、【0003】)、
容量素子Cの容量値を可変にすることで、帯域を切り替え、帯域切り替えに伴う利得変動を補償する(【0004】)技術。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明は「受信信号の高周波成分の電圧増幅を行なう増幅器」(【0001】)であるから、受信機の回路のための増幅器であると認められる。
よって、本願発明1と引用発明とは「受信機回路(15)のための増幅器(30)」である点で一致する。

イ 引用発明の「入力端子101」及び「出力端子108」は、それぞれ本願発明1の「入力ノード(Vin)」及び「出力ノード(Vout)」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明とは「前記増幅器は、入力ノード(Vin)と出力ノード(Vout)とを有」する点で一致する。

ウ 本願明細書には「チューニング可能なタンク回路100は、インダクタ260に対して並列に接続されたコンデンサ250を有する並列LC回路を有してもよい。」(【0029】)と記載されているから、本願発明1の「タンク回路(100)」は、インダクタとコンデンサとが並列に接続された並列LC回路を包含する。
引用発明の「L-C並列共振回路」は、明らかに並列LC回路であるから、本願発明1の「タンク回路(100)」に対応する。
そして、引用発明の「L-C並列共振回路」の一端は「出力端子108」に接続する(図6)から、本願発明1と引用発明とは「前記出力ノード(Vout)に接続されたタンク回路(100)」を有する点で一致する。

エ 引用発明の「キャパシタ401」は、「電圧帰還の経路の直流を遮断」する(【0066】)ものであるから、交流を通過させて電圧帰還の経路すなわち帰還路を形成するものである。
また、引用発明の「抵抗402」は、「電圧帰還の帰還路を構成」する(【0066】)ものであるから、これも帰還路を形成するものである。
前記「キャパシタ401」は「MOS-FET301のドレインと抵抗402の間に接続され」ており(【0066】)、前記「抵抗402」は「キャパシタ401とMOS-FET201のゲートの間に接続され」ている(【0066】)から、「キャパシタ401」及び「抵抗402」からなる帰還路は、「MOS-FET301のドレイン」と「MOS-FET201のゲート」との間に形成されている。
そして、「入力端子101はMOS-FET201のゲートに接続され」(【0063】)、「MOS-FET301のドレインは出力端子108に接続される」(図6)のであるから、「キャパシタ401」及び「抵抗402」からなる帰還路は、「出力端子108」と「入力端子101」との間に接続されている。
「帰還路」が「フィードバックパス」であることは明らかであるから、本願発明1と引用発明とは「前記出力ノード(Vout)と前記入力ノード(Vin)との間に接続されたフィードバック回路パス(200)」を有する点、及び、「前記フィードバック回路パス(200)は、少なくとも一つの抵抗(220、230)と、少なくとも一つのコンデンサ(240)との直列接続を有する」点で一致する。

オ 以上ア?エによれば、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

〈一致点〉
「受信機回路(15)のための増幅器(30)であって、前記増幅器は、入力ノード(Vin)と出力ノード(Vout)とを有し、
前記出力ノード(Vout)に接続されたタンク回路(100)と、
前記出力ノード(Vout)と前記入力ノード(Vin)との間に接続されたフィードバック回路パス(200)と、
を有し、
前記フィードバック回路パス(200)は、少なくとも一つの抵抗(220、230)と、少なくとも一つのコンデンサ(240)との直列接続を有する、増幅器。」である点。

〈相違点1〉
本願発明1の「タンク回路(100)」は「チューニング可能」であるのに対し、引用発明の「L-C並列共振回路」はチューニング可能ではない点。

〈相違点2〉
本願発明1は「前記フィードバック回路パス(200)の内部ノードと、基準電圧ノードとの間に接続されたチューニング可能なコンデンサ(210)」を有するのに対し、引用発明はそのようなコンデンサを有さない点。

(2)相違点についての判断
前記相違点1について検討する。

ア 引用発明は、「L-C並列共振回路及びL-C-R直列共振回路とで構成され」た「バンドパス・フィルタ」を「増幅素子に対し並列に装荷」したものであり(【0036】)、該「バンドパス・フィルタ」は「s-plane上で複数の極点及び該極点間に零点が配置され」ることによって(【0034】)、「広い周波数範囲において一括して増幅を行なうこと」(【0032】、「広い周波数範囲において平坦な増幅特性を備え、寄生容量による劣化を防止し、且つ群遅延時間が短く」なること(【0033】)という課題を達成するものである。

イ そうすると、引用発明においては、「L-C並列共振回路」及び「L-C-R直列共振回路」からなる「バンドパス・フィルタ」の特性を、「s-plane上で複数の極点及び該極点間に零点が配置され」るよう予め設計することが必須であるから、「L-C並列共振回路」を構成する「並列キャパシタCp」を可変とすることは想定されておらず、相違点1に係る構成を導入する動機付けは存在しないと認められる。

ウ 他方、文献2従来技術及び文献6従来技術によれば、受信機の増幅器において出力にLC並列共振回路を接続し、該LC並列共振回路を構成するキャパシタを可変にすることで、帯域を調整する技術は周知であったと認められる。
しかしながら、前記周知技術は、LC並列共振回路に並列にLCR直列共振回路を接続するものではないし、仮に前記LCR直列共振回路を接続するとしても、それらで構成されるバンドパスフィルタの極点と零点との関係を調整することを示唆するものではない。
したがって、引用発明の「バンドパス・フィルタ」に対して、仮に前記周知技術を適用するとしても、引用発明の課題を達成するために「s-plane上で複数の極点及び該極点間に零点が配置され」ることが維持できるように「並列キャパシタCp」を可変とすることは、当業者であっても容易とはいえない。

エ その他、引用発明に相違点1に係る構成を導入することが容易であることを示す文献は存在しない。

オ 以上によれば、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は引用発明から容易に想到し得るものではない。

2 本願発明2?12について
本願発明2?12は、いずれも、本願発明1の従属発明であるから、前記相違点1を含む。
したがって、前記1(2)のとおりであるから、本願発明2?12は、いずれも、本願発明1から容易に想到し得るものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?12は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-11-15 
出願番号 特願2018-554548(P2018-554548)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 及川 尚人  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 丸山 高政
衣鳩 文彦
発明の名称 増幅器  
代理人 特許業務法人大塚国際特許事務所  

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