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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
管理番号 1379769
異議申立番号 異議2019-701069  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-27 
確定日 2021-09-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6539047号発明「レンズ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6539047号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕〔5?6〕について訂正することを認める。 特許第6539047号の請求項1、4及び6に係る特許を維持する。 特許第6539047号の請求項2、3及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6539047号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成27年1月5日に出願され、令和元年6月14日にその特許権の設定登録がされ、令和元年7月3日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、特許異議申立人 金澤毅(以下「申立人」という。)により請求項1ないし6に対して特許異議の申立てがされ、令和2年2月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に新型コロナウイルス感染症の影響による指定期間の延長の請求(2回)があったため職権による期間延長の通知(あわせて4ケ月)の後、同延長後の指定期間内に同年6月25日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年7月20日に同年6月25日に提出された訂正請求書の補正書が提出され、同年9月11日に申立人から意見書が提出され、同年10月27日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年12月2日に意見書が提出され、令和3年1月28日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年3月25日に特許権者の求めにより面接(テレビ面接)が行われ、指定期間内の同年4月9日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年6月8日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年4月9日になされた訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6539047号の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の特許請求の範囲(以下「訂正前特許請求の範囲」という。)における、
「【請求項1】
レンズ群と、
該レンズ群を保持するレンズ群保持部材と、
該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する案内部材と、
前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動するアクチュエータと、
前記レンズ群保持部材と前記アクチュエータとを連結する連結部材と、
前記レンズ群保持部材と前記連結部材とを付勢する付勢部材と、を備えたレンズ装置において、
前記付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの付勢力モーメントを生じ、前記付勢力モーメントは、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きいことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記レンズ群保持部材を駆動する複数のアクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記連結部材は、前記複数のアクチュエータを前記レンズ群保持部材にそれぞれ連結する複数の連結部材であり、
前記付勢部材は、前記レンズ群保持部材と前記複数の連結部材とをそれぞれ付勢する複数の付勢部材であり、
前記付勢力モーメントは、前記複数の付勢部材によって生じるそれぞれの付勢力モーメントの和から構成される付勢力合成モーメントであり、前記付勢力合成モーメントは、前記自重力モーメントよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記それぞれの付勢力モーメントは、いずれも同一の方向であることを特徴とする請求項3に記載のレンズ装置。
【請求項5】
レンズ群と、
該レンズ群を保持するレンズ群保持部材と、
該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する案内部材と、
前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する複数のアクチュエータと、
前記レンズ群保持部材とそれぞれの前記アクチュエータとを連結する複数の連結部材と、
前記レンズ群保持部材とそれぞれの前記連結部材とを付勢する第1及び第2の付勢部材と、を備えたレンズ装置において、
前記第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第1の付勢力モーメントを生じ、
前記第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第2の付勢力モーメントを生じ、
前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントの和は、前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きいことを特徴とするレンズ装置。
【請求項6】
前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向であることを特徴とする請求項5に記載のレンズ装置。」
を、訂正後の特許請求の範囲(以下「訂正特許請求の範囲」という。)のとおり(下線は、特許権者が付与したとおりであり、訂正箇所を示す。)、
「【請求項1】
レンズ群と、
該レンズ群を保持するレンズ群保持部材と、
該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する案内部材と、
第1の動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1の超音波モータと、
第2の動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2の超音波モータと、
第1の動力取り出し部を備え、前記レンズ群保持部材と前記第1の超音波モータとを連結する第1の連結部材と、
第2の動力取り出し部を備え、前記レンズ群保持部材と前記第2の超音波モータとを連結する第2の連結部材と、
前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、
前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材と、を備えたレンズ装置において、
前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、
前記第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第1の付勢力モーメントを生じ、
前記第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第2の付勢力モーメントを生じ、
前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きく、
前記第1の付勢部材の付勢により前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記第1の超音波モータは、前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と、前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動し、
前記第2の付勢部材の付勢により前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記第2の超音波モータは、前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と、前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
レンズ群と、
該レンズ群を保持するレンズ群保持部材と、
該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する第1の案内部材と、
該レンズ群保持部材を前記光軸に沿って自在に移動可能に支持する第2の案内部材と、
前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1のアクチュエータと、
前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2のアクチュエータと、
前記レンズ群保持部材と前記第1のアクチュエータとを連結する第1の連結部材と、
前記レンズ群保持部材と前記第2のアクチュエータとを連結する第2の連結部材と、
前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、
前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材と、を備えたレンズ装置において、
前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、
前記レンズ群保持部材と前記第1の付勢部材との第1の接触点は、前記第1の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第1の作用点であり、
前記レンズ群保持部材と前記第2の付勢部材との第2の接触点は、前記第2の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第2の作用点であり、
前記第1の付勢部材の付勢力のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ、
前記第2の付勢部材の付勢力のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ、
前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記第1の案内部材を中心軸とした自重力モーメントよりも大きく、
前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向であることを特徴とするレンズ装置。」
に訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は後記2のとおりである。

2 訂正事項
(1)訂正事項1
訂正前特許請求の範囲の請求項1に「前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動するアクチュエータと、」と記載されているのを、「第1の動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1の超音波モータと、第2の動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2の超音波モータと、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
訂正前特許請求の範囲の請求項1に「前記レンズ群保持部材と前記アクチュエータとを連結する連結部材と、」と記載されているのを、「第1の動力取り出し部を備え、前記レンズ群保持部材と前記第1の超音波モータとを連結する第1の連結部材と、第2の動力取り出し部を備え、前記レンズ群保持部材と前記第2の超音波モータとを連結する第2の連結部材と、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
訂正前特許請求の範囲の請求項1に「前記レンズ群保持部材と前記連結部材とを付勢する付勢部材と、」と記載されているのを、「前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材と、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
訂正前特許請求の範囲の請求項1に「前記付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの付勢力モーメントを生じ、」と記載されているのを、「前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、前記第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第2の付勢力モーメントを生じ、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5
訂正前特許請求の範囲の請求項1に「前記付勢力モーメントは、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きい」と記載されているのを、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きく、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6
訂正前特許請求の範囲の請求項1の「・・・自重力モーメントよりも大きい」との記載の後に、「前記第1の付勢部材の付勢により前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記第1の超音波モータは、前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と、前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動し、前記第2の付勢部材の付勢により前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記第2の超音波モータは、前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と、前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動する」との記載を追加する。

(7)訂正事項7
訂正前特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(8)訂正事項8
訂正前特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(9)訂正事項9
訂正前特許請求の範囲の請求項4に「前記それぞれの付勢力モーメントは、いずれも同一の方向であることを特徴とする請求項3に記載のレンズ装置。」と記載されているのを、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。」に訂正する。

(10)訂正事項10
訂正前特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(11)訂正事項11
訂正前特許請求の範囲の請求項6の「前記第1の付勢力モーメントと・・・」との記載の前に、「レンズ群と、該レンズ群を保持するレンズ群保持部材と、該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する第1の案内部材と、該レンズ群保持部材を前記光軸に沿って自在に移動可能に支持する第2の案内部材と、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1のアクチュエータと、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2のアクチュエータと、前記レンズ群保持部材と前記第1のアクチュエータとを連結する第1の連結部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2のアクチュエータとを連結する第2の連結部材と、前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材と、を備えたレンズ装置において、前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、前記レンズ群保持部材と前記第1の付勢部材との第1の接触点は、前記第1の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第1の作用点であり、前記レンズ群保持部材と前記第2の付勢部材との第2の接触点は、前記第2の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第2の作用点であり、前記第1の付勢部材の付勢力のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ、前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記第1の案内部材を中心軸とした自重力モーメントよりも大きく、」との記載を追加する。

(12)訂正事項12
訂正前特許請求の範囲の請求項6の「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向であることを特徴とする請求項5に記載のレンズ装置。」と記載されているのを、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向であることを特徴とするレンズ装置。」に訂正する。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、請求項1、4において、「アクチュエータ」を、「動力伝達部材を備え」る「超音波モータ」に限定するとともに、数が特定されない「アクチュエータ」が、「第1の動力伝達部材を備え」る「第1の超音波モータ」及び「第2の動力伝達部材を備え」る「第2の超音波モータ」の2つからなると特定してその数を限定することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項1は、本件明細書等の「レンズ装置10は、少なくとも1つのアクチュエータを備える。16は、第一のアクチュエータであって、レンズ群保持部材12を駆動する。ここでは、駆動アクチュエータとして光軸Oの方向に直動する超音波モータを用いて例示するが、駆動アクチュエータはこれに限定されない。・・・また、レンズ装置10は、複数のアクチュエータを備える構成として、第二のアクチュエータ17を備えることも可能である。」(【0012】)、「レンズ装置10は、レンズ群保持部材12と第一のアクチュエータ16とを連結する第一の連結部材18を備える。・・・また、第一の連結部材18は、動力取り出し部18cを備え、第一のアクチュエータ16と接続する。なお、複数のアクチュエータを備える構成としては、レンズ群保持部材12と第二のアクチュエータ17とを連結する第二の連結部材20を備える。」(【0013】)及び「図5は、動力取り出し部18cと第一のアクチュエータ16の動力伝達部材30との接触部を示す部分断面図である。」(【0017】)との記載、及び、図5の記載に基づく構成であり、本件明細書等に記載されたものであるから、当該訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、発明特定事項である「アクチュエータ」を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、請求項1、4において、「連結部材」を、「動力取り出し部を備え」る「連結部材」に限定するとともに、数が特定されない「連結部材」が、「第1の動力取り出し部を備え」る「第1の連結部材」及び「第2の動力取り出し部を備え」る「第2の連結部材」の2つからなると特定してその数を限定することで特許請求の範囲を減縮するとともに、上記訂正事項1での訂正と整合させるために「アクチュエータ」を「第1の超音波モータ」及び「第2の超音波モータ」と訂正するものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項2は、本件明細書等の「レンズ装置10は、レンズ群保持部材12と第一のアクチュエータ16とを連結する第一の連結部材18を備える。・・・また、第一の連結部材18は、動力取り出し部18cを備え、第一のアクチュエータ16と接続する。なお、複数のアクチュエータを備える構成としては、レンズ群保持部材12と第二のアクチュエータ17とを連結する第二の連結部材20を備える。」(【0013】)及び「図5は、動力取り出し部18cと第一のアクチュエータ16の動力伝達部材30との接触部を示す部分断面図である。」(【0017】)との記載、及び、図5の記載に基づく構成であり、本件明細書等に記載されたものであるから、当該訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、発明特定事項である「連結部材」を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、請求項1、4において、数が特定されない「連結部材」を付勢する「付勢部材」が、「第1の連結部材」を付勢する「第1の付勢部材」及び「第2の連結部材」を付勢する「第2の付勢部材」の2つからなると特定してその数を限定することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項3は、本件明細書等の「レンズ装置10は、レンズ群保持部材12と第一のアクチュエータ16とをガタ無く連結するために第一の付勢部材19を備える。より詳細には、第一の付勢部材19は、レンズ群保持部材12と第一の連結部材18とに付勢力を与える。また、第一の付勢部材19は、ねじりコイルばねと圧縮ばねの2つの作用を有する。なお、複数のアクチュエータを備える構成としては、レンズ群保持部材12と第二のアクチュエータ17とをガタ無く連結する、第二の付勢部材21を備える。第二の付勢部材21は、レンズ群保持部材12と第二の連結部材20とに付勢力を与える。以降、第一の連結部材18、第一の付勢部材19及び第一のアクチュエータ16の部材を中心に説明する。」(【0014】)との記載に基づく構成であり、本件明細書等に記載されたものであるから、当該訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、発明特定事項である「付勢部材」を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正事項3において「付勢部材」が、「第1の付勢部材」及び「第2の付勢部材」の2つからなると特定することに伴い、上記訂正事項3での訂正と整合させるために、「付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの付勢力モーメントを生じ」るとあったものを、「第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第1の付勢力モーメントを生じ」及び「第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第2の付勢力モーメントを生じ」と訂正するとともに、当該「第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され」るものであると限定することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項4は、本件明細書等の「第一の付勢部材19の近傍の詳細図である図8を参照する。作用点110は、第一の付勢部材19によって付勢力が及ぼされる点であり、第二の接触点19bが接触する点である。作用点110において、付勢力100は、中心軸13aと作用点110とを結んだ直線120と直交する方向の分力101と、直線120に平行な方向の分力102とに分解される。直線120の長さと分力101とを乗じた数値を中心軸13a回りの第一の付勢力モーメントm1とする。」(【0021】)及び「第二のアクチュエータ17に関連する第二の付勢部材21の詳細を示している。作用点210は、第二の付勢部材21によって付勢力が及ぼされる点である。作用点210において、付勢力200は、中心軸13aと作用点210とを結んだ直線220と直交する方向の分力201と、直線220に平行な方向の分力202とに分解される。直線220の長さと分力201とを乗じた数値を中心軸13a回りの第二の付勢力モーメントm2とする。」(【0027】)との記載、及び、図6?8の記載に基づく構成であり、本件明細書等に記載されたものであるから、当該訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、発明特定事項である「付勢力モーメント」を限定するとともに、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正事項4において「付勢力モーメント」が、「第1の付勢力モーメント」及び「第2の付勢力モーメント」の2つからなると特定することに伴い、上記訂正事項4での訂正と整合させるために、「前記付勢力モーメントは、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きい」とあったものを、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメント」は、「前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きく」と訂正するとともに、当該「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメント」は、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和」であると限定することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項5は、本件明細書等の「(実施例4) 実施例4は、図9において、複数のアクチュエータを備える場合の実施形態である。第二の付勢部材21によって発生するモーメントは(図7参照)、実施例2と同様であるため、同様の記載は省略する。第三の付勢力モーメントm3(CW)と第二の付勢力モーメントm2(CW)とを合成したモーメントを付勢力合成モーメントMSとする。付勢力合成モーメントMSは、時計回りの方向を有する。ここで、第一の案内部材13の中心軸13a回りのモーメントのつり合いを考える。中心軸13a回りに発生するモーメントは、付勢力合成モーメントMSと、自重力モーメントMGである。このモーメントの和がレンズ群保持部材12に作用する合成モーメント(MS+MG)である。実施例4では、モーメントの絶対値に関して、付勢力合成モーメントMSが自重力モーメントMGより大きいので、合成モーメント(MS+MG)が時計回りに生じている。」(【0037】)との記載、及び、図7、9の記載に基づく構成であり、本件明細書等に記載されたものであるから、当該訂正事項5は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、発明特定事項である「付勢力モーメント」を限定するとともに、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、「前記第1の付勢部材の付勢により前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記第1の超音波モータは、前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と、前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動し、前記第2の付勢部材の付勢により前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記第2の超音波モータは、前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と、前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動する」との記載を追加することで、特許請求の範囲を限定するものであるから、当該訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項6は、本件明細書等の「図5は、動力取り出し部18cと第一のアクチュエータ16の動力伝達部材30との接触部を示す部分断面図である。動力取り出し部18cの形状は、V字状の溝形状となっている。第一の付勢部材19は、第一の連結部材18を図のAの方向に付勢するので、レンズ群保持部材12と第一のアクチュエータ16とをガタ無く連結することが可能である。」(【0017】)及び「以上、レンズ群保持部材12が第一の連結部材18を保持し、第一の付勢部材19の付勢力により第一のアクチュエータ16にガタ無く連結される連結構造を説明した。複数のアクチュエータを備える構成としては、レンズ群保持部材12が第二の連結部材20を保持し、第二の付勢部材21により第二のアクチュエータ17に対してレンズ群保持部材12がガタ無く連結される。第二の連結部材20、第二の付勢部材21及び第二のアクチュエータ17の連結構造は、上述の第一の連結部材18、第一の付勢部材19及び第一のアクチュエータ16の連結構造とほぼ同様である。よって、第二の連結部材20、第二の付勢部材21及び第二のアクチュエータ17の連結構造の説明は省略する。」(【0018】)との記載、及び、図1及び5の記載に基づく構成であり、各超音波モータが、それぞれの動力伝達部材、動力取り出し部及びレンズ群保持部材とを、光軸の方向に直動するように駆動することが記載されているといえるから、本件明細書等に記載されたものであると認められ、当該訂正事項6は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、発明特定事項であるアクチュエータが駆動する際の具体的動作を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

(7)訂正事項7、8及び10について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7、8及び10はそれぞれ特許請求の範囲の請求項2、3及び5を削除するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項7、8及び10は請求項の削除であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7、8及び10は請求項の削除であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項9について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項9は、訂正事項4において「付勢力モーメント」が、「第1の付勢力モーメント」及び「第2の付勢力モーメント」の2つからなると特定することに伴い、上記訂正事項4での訂正と整合させるために、「前記それぞれの付勢力モーメントは、いずれも同一の方向である」と記載されているのを、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向である」に訂正するとともに、訂正事項7及び8で、それぞれ特許請求の範囲の請求項2及び3を削除したことと整合させるために、「請求項3に記載のレンズ装置」と記載されているのを、「請求項1に記載のレンズ装置」に訂正するものであって、当該訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

イ 新規事項の有無
上記アのとおり、訂正事項9は実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項9は実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(9)訂正事項11について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項11は、
(ア)まず、訂正前特許請求の範囲の請求項6が訂正前特許請求の範囲の請求項5を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるための訂正を行うために、訂正前特許請求の範囲の請求項5の記載を付加する、特許法第120条の5第2項ただし書第4項に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正を行った上で、

(イ)訂正前特許請求の範囲の請求項5において、「該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する案内部材と、」と記載されているのを、数が特定されない「案内部材」が、「第1の案内部材」及び「第2の案内部材」の2つからなると特定して、「案内部材」の数を限定するために、「該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する第1の案内部材と、該レンズ群保持部材を前記光軸に沿って自在に移動可能に支持する第2の案内部材と、」に訂正して、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を行い、

(ウ)訂正前特許請求の範囲の請求項5において、「前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する複数のアクチュエータと、」と記載されているのを、複数の「アクチュエータ」が、「第1のアクチュエータ」及び「第2のアクチュエータ」の2つからなると特定して、「アクチュエータ」の数を限定するために、「前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1のアクチュエータと、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2のアクチュエータと、」に訂正して、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を行い、

(エ)訂正前特許請求の範囲の請求項5において、「前記レンズ群保持部材とそれぞれの前記アクチュエータとを連結する複数の連結部材と、」と記載されているのを、複数の「連結部材」が、「第1の連結部材」及び「第2の連結部材」の2つからなると特定して、「連結部材」の数を限定するとともに、上記(ウ)のとおり、複数の「アクチュエータ」が、「第1のアクチュエータ」及び「第2のアクチュエータ」の2つからなると特定することに伴い、上記(ウ)での訂正と整合させるために、「前記レンズ群保持部材と前記第1のアクチュエータとを連結する第1の連結部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2のアクチュエータとを連結する第2の連結部材と、」に訂正して、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を行い、

(オ)訂正前特許請求の範囲の請求項5において、「前記レンズ群保持部材とそれぞれの前記連結部材とを付勢する第1及び第2の付勢部材と、」と記載されているのを、上記(エ)のとおり、複数の「連結部材」が、「第1の連結部材」及び「第2の連結部材」の2つからなると特定することに伴い、上記(エ)での訂正と整合させるために、「前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材と、」に訂正するとともに、「前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され」るものであると限定することで、特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を行い、

(カ)訂正前特許請求の範囲の請求項5において、「前記第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第2の付勢力モーメントを生じ、」と記載されているのを、各「付勢力モーメント」が生じる構成をより詳細に限定して、「前記レンズ群保持部材と前記第1の付勢部材との第1の接触点は、前記第1の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第1の作用点であり、前記レンズ群保持部材と前記第2の付勢部材との第2の接触点は、前記第2の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第2の作用点であり、前記第1の付勢部材の付勢力のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ、」と限定する、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を行い、

(キ)訂正前特許請求の範囲の請求項5において、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントの和は、前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きい」と記載において、「案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの」との記載が、どの軸まわりであるのか明瞭でないため、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記第1の案内部材を中心軸とした自重力モーメントよりも大きく」と訂正して、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正を行うものである。

イ 新規事項の有無
(ア)訂正事項11の上記ア(イ)の点は、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものであり、
(イ)訂正事項11の上記ア(イ)の点は、「第一の案内部材13は、レンズ群保持部材12に設けられたスリーブ部12d(図3参照)に、レンズ群保持部材12が第一の案内部材13の中心軸13aを中心とした回転方向に自由度を有するように収容される。第二の案内部材14は、レンズ群保持部材12の収容部12eに収容され(図7参照)、第一の案内部材13と一対でレンズ群保持部材12を光軸Oの方向に移動可能に支持する。」(【0011】)、及び、図6、9の記載、
訂正事項11の上記ア(ウ)の点は、本件明細書等の段落【0012】(上記(1)イ参照)、及び、図6、9の記載、
訂正事項11の上記ア(エ)の点は、本件明細書等の段落【0013】(上記(1)イ参照)、及び、図6、9の記載、
訂正事項11の上記ア(オ)の点は、本件明細書等の段落【0014】(上記(3)イ参照)、段落【0027】(上記(4)イ参照)、段落【0037】(上記(5)イ参照)、及び、図6、9の記載、
訂正事項11の上記ア(カ)の点は、本件明細書等の「(実施例3) 実施例3は、図9において、第一のアクチュエータ16を1つ備える場合の実施形態であって、実施例1における第一の付勢部材19の付勢力の作用する点が変更された例である。第一の付勢部材19は、第一のアクチュエータ16に対して第一の連結部材18をガタ無く付勢し、第一の付勢部材19の付勢力300を作用点310においてレンズ群保持部材12に対して発生させる。」(【0033】)、「第一の付勢部材19の近傍の詳細図を図10に示す。作用点310において、付勢力300は、作用点310と中心軸13aとを結んだ直線320と直交する方向の分力301と、直線320と平行な方向の分力302とに分解される。直線320の長さと分力301とを乗じた数値を中心軸13a回りの第三の付勢力モーメントm3とする。この第三の付勢力モーメントm3の方向は、中心軸13a回りに時計回りである。すなわち、実施例3は、第三の付勢力モーメントm3の方向が中心軸13a回りに時計回りとなるように第一の付勢部材19を配置した実施形態である。」(【0034】)、及び、図9、10の記載、
訂正事項11の上記ア(キ)の点は、本件明細書等の段落【0027】(上記(4)イ参照)、及び、図9、10の記載、
に基づく構成であり、本件明細書等に記載されたものであるから、いずれも本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項11は、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるための訂正を行った上で、「案内部材」、「アクチュエータ」、「連結部材」、「付勢部材」及び「付勢力モーメント」を限定するとともに、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

(10)訂正事項12について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項12は、訂正前特許請求の範囲の請求項6が訂正前特許請求の範囲の請求項5を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるための訂正を行うために、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向であることを特徴とする請求項5に記載のレンズ装置。」とあったものを、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向であることを特徴とするレンズ装置。」に訂正する、特許法第120条の5第2項ただし書第4項に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
上記アのとおり、訂正事項12は実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アのとおり、訂正事項12は実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(11)訂正前の請求項1ないし6については、特許異議の申立てがされているため、訂正前の請求項1ないし6に係る訂正事項1ないし12に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件を要しない。

(12)一群の請求項
訂正事項1ないし9に係る訂正前の請求項1ないし4は、当該訂正事項1ないし6を含む請求項1の記載を訂正前の請求項2ないし4がそれぞれ引用しているものであるから、これらに対応する訂正後の請求項〔1?4〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
訂正事項10及び11に係る訂正前の請求項5及び6は、当該訂正前の請求項5の記載を訂正前の請求項6が引用しているものであるから、これらに対応する訂正後の請求項〔5?6〕は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕〔5?6〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明6」といい、それらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、上記第2、1において、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものである。

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
訂正前の請求項1ないし6に係る特許に対して、当審が令和3年1月28日に特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
[理由1](サポート要件)
特許第6539047号(以下「本件特許」という。)は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
[理由2](明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
[理由3](新規性)
訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、取り消されるべきものである。
[理由4](進歩性)
訂正前の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

第5 甲号証の記載(下線は当審が付した。以下同じ。)
1 甲号証
(1)甲1:特開2005-315935号公報(申立人提出の甲第1号証)
(2)甲2:特開平4-195010号公報(申立人提出の甲第2号証)
(3)甲3:特開平7-234353号公報(申立人提出の甲第3号証)
(4)甲4:特開2013-15775号公報(申立人提出の甲第4号証)
(5)甲5:セミナーライブラリ 物理学=2 演習力学 株式会社サイエンス社、初版第25刷、2000年4月10日発行、著者:今井 功 他、70頁(申立人提出の甲第5号証)

2 甲号証に記載された事項及び甲号証に記載された発明
(1)甲1について
ア 本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲1には、下記の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置に係り、特に、レンズを保持しシャフトに支持されたレンズ保持枠を光軸方向に移動させるレンズ駆動装置に関する。」

(イ)「【0008】
また、切りかけナットをリードスクリュに付勢する第1のアームも樹脂材により形成される。
そのため、このレンズ駆動装置を搭載した光学機器の使用雰囲気温度によってそのバネ定数が変化し、例えば、高温時の方が、ばね性が軟らかくなって外部振動に対して歯飛びを起こしやすいという歯とび防止性能が温度依存性を有する問題(以下、問題<c>と記載する場合がある)があった。
この点に関しては、従来例2では、ナットのリードスクリューへの付勢にねじりコイルばねを用いているので、この問題<c>は改善されるものの、上述の問題<a>及び<b>を有する点においては、従来例1と同様である。」

(ウ)「【0015】
図1及び図2(A)において、移動レンズ1は、ズームや合焦のために図示しない固定レンズに対して光軸方向に移動させるべきレンズである。この移動レンズ1は単レンズでもよくレンズ群でもよい。
この移動レンズ1はレンズ保持枠2により保持される。
【0016】
このレンズ保持枠2には、その外側方向に突出した第1,第2のシャフト係合部2A,2Bを備えている。
第1のシャフト支持部2Aには略矩形の貫通孔2A1が形成され、この貫通孔2A1に、移動レンズ1の光軸CL方向に配置された第1のシャフト3が径方向の若干のガタを有して挿通される。
第2のシャフト支持部2Bには貫通孔2B1が形成され、この貫通孔2B1に、第1のシャフト3と平行に配置された第2のシャフト4が径方向に僅かなガタをもって挿通される。
従って、レンズ保持枠2は、第1,第2のシャフト3,4により支持されて光軸CL方向に摺動自在に支持される。
【0017】
一方、第2のシャフト4の図2(A)における下方側には、モータ11により回転するリードスクリュ5が配置されている。
また、図2(B)に示すように、第2のシャフト支持部2Bには、光軸CL方向に所定の間隙を有してリードスクリュ5側に向かって立設する一対のラック支持壁6A,6Bが形成されている。
ラック支持壁6A,6Bには、幅d1のスリット6A1,6B1を介して当図の下方側外部と連結するラック係合孔6A2,6B2が形成されている〔図6(D)参照〕。
【0018】
ラックアッセンブリ7は、このラック係合孔6A2,6B2間に軸CLR回りに回動自在に支持される組み立て体である。
【0019】
このラックアッセンブリ70について図3,図4を用いて詳述する。
ラックアッセンブリ70は、第1ラック7,第2ラック8,圧縮コイルばね9及びねじりコイルばね10を有して成る。以下、特に注記がない場合は、ラックアッセンブリを単にラック70と称する。
【0020】
第1ラック7は、軸部7aとその軸部7aの一方の端側に偏った位置に形成されたフランジ7fと、このフランジ7fから軸部7aより離れる方向に立設された腕部7bと、この腕部7bの先端側に設けられ軸部7a方向に所定の幅d2で延在するラック壁7cと、このラック壁7cに対向し、それと略U字形状を成す対向ラック壁7eとを有して形成されている。
【0021】
対向ラック壁7eは、中央にスリット7e1が形成され2つの部分に分かれている。図2(A),(C)においては、理解を容易にするため、手前側の対向ラック壁7eを除いて記載されている。
ラック壁7cの内側の面には、リードスクリュ5のねじ山形状に対応した形状とされてそのリードスクリュ5と噛合する一対のナット部7dが設けられている。
【0022】
また、ラック壁7cの外側の面における腕部7bから離れた位置に凹部7gが設けられている。この凹部7gには、後述するねじりコイルばね10の第1の腕部10bが係合する。
第1ラック7の軸部7aにおいて、その両端側の断面形状は、幅d0でカットされた略長丸形状とされている。
【0023】
第2ラック8は、第1ラック7の軸部7aが挿通する孔部8bを有する略円筒状の基部8aと、基部8aから基部8aより離れる方向に延在するストッパ部8cとを有して形成されている。
また、ストッパ部8cの一方の面(アッセンブリ時に内側となる面)の中央部には、円形のダボ8dが突出して設けられている。
また、基部8aには、そこから離れる方向に突出する係止リブ8eが形成されている。この係止リブ8eには、後述するねじりコイルばね10の第2の腕部10cが係止される。
(・・・途中省略・・・)
【0031】
これにより、ねじりコイルばね10の回動方向の反発力により第1ラック7と第2ラック8とは、それぞれのラック壁7cとストッパ部8cとが近づく方向(図3の矢印F方向)に付勢される。
この付勢により、第2ラック8に設けたダボ8dがラック壁7cの内側に当接しラック壁7cとストッパ部8cとの間に所定の間隙が保たれるので、その後の組み立て作業が極めて容易になっている。
【0032】
そして、ラック70を支持壁6A,6Bに取り付ける際には(図2参照)、軸部7aにおける端部7a1の幅d0の向きを、スリット6A1,6B1の幅d1の向きに合わせてそのスリット6A1,6B1を通過させた後、ラック係合孔6A2,6B2内で約90度回転させる。
これにより、ラック70は、回動軸CLR回りに回動自在とされて支持壁6A,6Bに、言い換えれば、レンズ保持枠2に取り付けられる。
【0033】
リードスクリュ5は、ラック壁7cとストッパ部8cとの間に挟まれるように配置され、ラック壁7cとストッパ部8cとは、ねじりコイルばね10の付勢力によりリードスクリュ5にそれぞれ圧接される。
これにより、ラック壁7cのナット部7dは、リードスクリュー5のねじ部に確実に噛合する。
(・・・途中省略・・・)
【0039】
一方、この状態で、第2のシャフト支持部2Bにおけるラック70側の面2Baにねじりコイルばね10の突出部10dが当接し、それにより第2のシャフト支持部2Bはラック70から離れる方向に付勢されるように構成される。
このときの当接点Pは、第1,第2のシャフト3,4の中心を通る線L1に第2のシャフト4の中心で直交する線L2よりも光軸CLに対して外側(A1の範囲)に位置させている。
そのため、レンズ保持枠2は、第2のシャフト4を中心として左回りのモーメントM1を受け、第1のシャフト3をF2方向の力で常に付勢する。
【0040】
従って、上述したように、第1のシャフト3と第1のシャフト支持部2Aの貫通孔2A1との間にガタはあるものの、リードスクリュ5の振動や軸ぶれによってレンズ保持枠2が動くことはなく画像が揺れることはない。
【0041】
また、このレンズ駆動装置50が光学機器に上下逆に搭載される場合や、搭載した光学機器が上下逆に使用される場合においても、常にレンズ保持枠2は第1のシャフト3に押圧されて接触しているので、光学機器の姿勢やレンズ保持枠2の自重の影響によって画像が傾いたり揺れたりすることがない。
(・・・途中省略・・・)
【0047】
実施例においては、ねじりコイルばね10の突出部10dがレンズ保持枠2と当接する当接点Pを範囲A1に位置させた例を示したが、通常の使用姿勢でレンズ保持枠2の自重が付与される方向と同じ方向に第1のシャフト3を付勢するよう当接点Pの位置を設定することが好ましい。
即ち、図2(A)において、通常の使用姿勢がこれと上下逆の場合は、当接点Pを線L2よりも左側に位置させ、第2のシャフト4を中心とした右回り方向のモーメントを付与するように構成するのがよい。」

(エ)図1、2、3及び6は次のものである。

【図2】

【図3】

【図6】


イ 上記アによれば、甲1には、下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「光軸方向に移動させるべきレンズ群である移動レンズ1と(【0015】)、
移動レンズ1を保持するレンズ保持枠2と(【0015】)、
レンズ保持枠2を光軸CL方向に摺動自在に支持する第1、第2のシャフト3,4と(【0016】)、
第2のシャフト4の下方側に配置されたリードスクリュ5を回転するモータ11と(【0017】)、
ラック70は、第1ラック7,第2ラック8,圧縮コイルばね9及びねじりコイルばね10を有し(【0019】)、第1ラック7はラック壁7cを有し(【0020】)、第2ラック8はストッパ部8cを有し(【0023】)、ラック70は、回動軸CLR回りに回動自在とされてレンズ保持枠2の支持壁6A,6Bに取り付けられ(【0032】)、リードスクリュ5は、ラック壁7cとストッパ部8cとの間に挟まれるように配置され、ラック壁7cとストッパ部8cとは、ねじりコイルばね10の付勢力によりリードスクリュ5にそれぞれ圧接され(【0033】)、
レンズ保持枠2は、その外側方向に突出した第1,第2のシャフト係合部2A,2Bを備え(【0016】)、前記第2のシャフト支持部2Bにおけるラック70側の面2Baに突出部10dが当接し、それにより第2のシャフト支持部2Bはラック70から離れる方向に付勢されるように構成するねじりコイルばね10と(【0039】)、
当接点Pは、第1,第2のシャフト3,4の中心を通る線L1に第2のシャフト4の中心で直交する線L2よりも光軸CLに対して外側に位置させているため、レンズ保持枠2は、第2のシャフト4を中心として左回りのモーメントM1を受け、第1のシャフト3をF2方向の力で常に付勢し(【0039】)、第1のシャフト3と第1のシャフト支持部2Aの貫通孔2A1との間にガタはあるものの、リードスクリュ5の振動や軸ぶれによってレンズ保持枠2が動くことはなく画像が揺れることはなく(【0040】)、レンズ駆動装置50が光学機器に上下逆に搭載される場合や、搭載した光学機器が上下逆に使用される場合においても、常にレンズ保持枠2は第1のシャフト3に押圧されて接触しているので、光学機器の姿勢やレンズ保持枠2の自重の影響によって画像が傾いたり揺れたりすることがなく(【0041】)、通常の使用姿勢でレンズ保持枠2の自重が付与される方向と同じ方向に第1のシャフト3を付勢するよう当接点Pの位置を設定することが好ましく、使用姿勢がこれと上下逆の場合は、当接点Pを線L2よりも左側に位置させ、第2のシャフト4を中心とした右回り方向のモーメントを付与するように構成するのがよい(【0047】)、
レンズを保持しシャフトに支持されたレンズ保持枠を光軸方向に移動させるレンズ駆動装置(【0001】)。」

(2)甲2について
ア 本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲2には、下記の事項が記載されている。
(ア)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、レンズ駆動機構に関し、特にレンズ駆動力の伝達系によって生じるメカ的な誤差による悪影響の除去に関するものである。」(2頁右上欄1?4行)

(イ)「第1図は、本発明の第1の実施例の側面図であり、第2図は、要部斜視図である。1はモータ(例えばステップモータ)であり、2はリードネジであり、モータ1のシャフトと同軸になっている。3は保持部材であり、レンズ4を保持している。5は第1の案内ロットであり、6は第2の案内ロッドである。第1の案内ロッド5と第2の案内ロッド6により、保持部材3に保持されたレンズ4は、光軸10上(図面上左右方向)を移動する。
7は、半割りナット状あるいはラック状の雌ネジ部であり、リードネジ2と螺合している。雌ネジ部7は、板バネ9(例えばリン青銅板)を介し、保持部材3に固定されている。ステップモータ1を駆動するとリードネジ2が回転し、リードネジ2と螺合する雌ネジ部7はリン青銅板9を介し、保持部材3に固定されているので第1の案内ロット5と、第2の案内ロット6で規制されながら、レンズ4を光軸上に移動させる。
本実施例によれば、雌ネジ部7が、保持部材3の2カ所に設けられており、2つのモータ1を同時に同し移動量に相当する回転を与えることで、レンズ4に回転する力を与えることなく、移動することとなる。これにより、リードネジ2の回転方向を変えた場合にも、レンズの中心の位置が回転による誤差を生じることなく、移動する。」(3頁左上欄7行?右上欄11行)

(ウ)第1図及び第2図は次のものである。


(エ)上記(ア)及び(イ)の記載を踏まえて、上記(ウ)の第2図を見ると、リードネジ2、雌ネジ部7、板バネ9及びステップモータ1からなる移動手段が2つあり、雌ネジ部7及び板バネ9が保持部材3の2カ所に設けられていることが見てとれる。

イ 上記アによれば、甲2には、下記の事項(以下「甲2に記載された事項」という。)が記載されている。
「保持部材に保持されたレンズが光軸上を移動するものであって、保持部材の2カ所に設けられているラック状であり2つのリードネジと螺合している2つの雌ネジ部が、それぞれ板バネを介して保持部材に固定され、2つのステップモータを駆動すると各リードネジが回転し、各リードネジと螺合する各雌ネジ部が各板バネを介し、レンズを光軸上に移動させるレンズ駆動機構。」

(3)甲3について
ア 本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲3には、下記の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、カメラ、ビデオカメラ、電子スチルカメラなどの光学機器に備えるズ-ムレンズの駆動制御装置に関する。」

(イ)「【0016】
【実施例】次に、本発明をカメラのズ-ムレンズに実施した一例について図面に沿って説明する。図1は本発明を実施したズ-ムレンズの簡略図である。図示する如く、固定枠11内には光軸12に沿って移動するようにした第1移動枠13が設けてある。そして、この第1移動枠13にはシャッタ取付枠14を固定し、前群レンズ15がこのシャッタ取付枠14に取付けてある。なお、シャッタ取付枠14の背面側にはシャッタ羽根が装備してある。
【0017】上記した第1移動枠13は駆動リング16に連繋されており、この駆動リング16によって押し出され、また、引き戻される。つまり、駆動リング16の外周側に設けた雄ヘリコイドねじが固定枠11内面の雌ヘリコイドねじに螺合しており、駆動リング16が第1モ-タ17によって回転駆動されて光軸方向に移動し、第1移動枠13を非回動のまま進退させる。
【0018】第1移動枠13の内側には後群レンズ18を取付けた第2移動枠19が設けてある。そして、この第2移動枠19の一部が第1移動枠13に軸支させたリ-ドスクリュ20に螺合しており、このリ-ドスクリュ20がシャッタ取付枠14に配置した第2モ-タ21によって回転駆動されることにより、第2移動枠19が光軸に沿って移動する。」

(ウ)「【0037】ズ-ミングは外部指示装置24から中央制御装置23にズ-ミングの指示信号を送ることでレンズ駆動部25が制御される。このとき、先ず第1モ-タ17を回転駆動して第1移動枠13と第2移動枠19とを共に繰り出させた後、第2モ-タ21を回転駆動して第2移動枠19のみを移動させる。」

(エ)図1は次のものである。
【図1】


イ 上記アによれば、甲3には、下記の事項(以下「甲3に記載された事項」という。)が記載されている。
「固定枠内には光軸に沿って移動するようにした第1移動枠が設けてあり、前記第1移動枠は駆動リングに連繋され、前記駆動リングが第1モ-タによって回転駆動されて光軸方向に移動し、第1移動枠を非回動のまま進退させ、前記第1移動枠の内側には後群レンズを取付けた第2移動枠が設けてあり、前記第2移動枠の一部が第1移動枠に軸支させたリ-ドスクリュに螺合し、前記リ-ドスクリュがシャッタ取付枠に配置した第2モ-タによって回転駆動されることにより、第2移動枠が光軸に沿って移動するズ-ムレンズの駆動制御装置であって、先ず第1モ-タを回転駆動して第1移動枠と第2移動枠とを共に繰り出させた後、第2モ-タを回転駆動して第2移動枠のみを移動させる点。」

(4)甲4について
ア 本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲4には、下記の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及びカメラに関するものである。」

(イ)「【0014】
つぎに、図2?図6を参照して、本実施形態において特徴的な、合焦レンズ22を移動駆動可能に支持する駆動支持構造について説明する。
図2は、合焦レンズ22の駆動支持構造を示す斜視図である。図3は、図2のA矢視に相当する駆動支持構造の正面図である。図4は、図2のB-B断面図に相当する駆動支持構造の縦断面図である。図5は、図2のC矢視に相当する駆動支持構造を上側から見た説明図である。図6は、駆動支持構造における作用説明図であって、ガイド軸受部32のガイド孔32Maと主ガイドバー23Mの嵌合状態を示す図である。
【0015】
合焦レンズ22の駆動支持構造は、レンズ保持枠30を移動可能に支持する一対のガイドバー23(主ガイドバー23M,副ガイドバー23S)と、合焦レンズ22を保持するレンズ保持枠30と、レンズ保持枠30を移動駆動する一対のボイスコイルモータ40(40U,40L)と、により構成されている。
【0016】
ガイドバー23(主ガイドバー23M,副ガイドバー23S)は、断面形状が所定径の円形の軸であって、光軸OAを挟むX軸上の略対称位置に、それぞれ光軸OAと平行に配設されている。
すなわち、X軸上プラス側に主ガイドバー23Mが、X軸上マイナス側に副ガイドバー23Sが、それぞれ光軸OAから所定間隔離間して配設されている。これらのガイドバー23(主ガイドバー23M,副ガイドバー23S)は、レンズ鏡筒20の図示しない固定部材に固定されており、レンズ保持枠30を支持すると共にその移動を案内する。
【0017】
レンズ保持枠30は、合焦レンズ22を支持する短筒状のレンズ支持部31の周囲に、一対のガイド軸受部32(主軸受32M,副軸受32S)と、一対のコイル支持部33と、を備えている。
ガイド軸受部32における主軸受32Mは、主ガイドバー23Mと対応して、X軸上プラス側に配設されている。」

(ウ)図2は次のものである。
【図2】


イ 上記アによれば、甲4には、下記の事項(以下「甲4に記載された事項」という。)が記載されている。
「合焦レンズの駆動支持構造は、レンズ保持枠を移動可能に支持する一対のガイドバーと、合焦レンズを保持するレンズ保持枠と、レンズ保持枠を移動駆動する一対のボイスコイルモータとにより構成され、前記レンズ保持枠は、合焦レンズを支持する短筒状のレンズ支持部の周囲に、一対のガイド軸受部と一対のコイル支持部とを備え、一対のボイスコイルモータを駆動することによりレンズ保持枠を移動駆動する光学装置。」

(5)甲5について
ア 本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲5には、下記の事項が記載されている。
「◆ 剛体のつりあいの条件 剛体の各部分に働く外力の総和をF,任意に定めた一点に関する外力のモーメントの総和をNとすれば,つりあいの条件は
F=0,N=0 (1)
と表される。(1)はどちらもベクトル式であるから,全部で6個の条件を表している。したがって,これから剛体の6個の自由度に対応する変数の値が確定する。合力が0のときには,力の合モーメントはモーメントをとる基準点によらないから(例題1),(1)はNはどの点に関してとったとしても同じことである。」(70頁17?23行。なお、上記のF、Nはイタリック体である。)

イ 上記アによれば、甲5には、下記の事項(以下「甲5に記載された事項」という。)が記載されている。
「力の合モーメントは外力のモーメントの総和(合力)である点。」

第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 特許法第36条第6項第1号(理由1 サポート要件)について
(1)当審が取消理由(決定の予告)において通知した特許法第36条第6項第1号についての取消理由は、訂正前特許請求の範囲の請求項1(及び請求項2?4)における「前記付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの付勢力モーメントを生じ、前記付勢力モーメントは、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きいこと」、及び、訂正前特許請求の範囲の請求項5(及び請求項6)における「前記第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第2の付勢力モーメントを生じ、前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントの和は、前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きいこと」における「前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの」「モーメント」が、本件明細書等に記載されたものではない、というものであった。

(2)これに対して、本件訂正により訂正された請求項1において、「前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、前記第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第2の付勢力モーメントを生じ、前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きく、」と訂正されるとともに、同請求項6において、「前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、・・・前記第1の付勢部材の付勢力のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ、前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記第1の案内部材を中心軸とした自重力モーメントよりも大きく、」と訂正された。

(3)上記訂正により、本件訂正により訂正された請求項1においては、「第1及び第2の付勢部材は光軸まわりに配され」るとともに、「第1の付勢部材」は「第1の案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ」、「第2の付勢部材」は「第1の案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ」ることが明確となったところ、当該構成は、上記第2、3(4)イで検討したとおり、本件明細書等に記載されている事項である。
また、本件訂正により訂正された請求項6においては、「前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、・・・前記第1の案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ、前記第1の案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ」と訂正されたため、「前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの」「モーメント」との記載ではなくなり、また、当該構成は、上記第2、3(9)イ(イ)で検討したとおり、本件明細書等に記載されている事項である。

(4)以上の検討によれば、本件訂正により訂正された請求項1及び6に係る発明は、本件明細書等に記載された発明であると認められる。
よって、本件訂正により訂正された請求項1及び6は、特許法第36条第6項第1号に基づく取消理由を有するとはいえない。
本件訂正により訂正された請求項4も同様である。

2 特許法第36条第6項第2号(理由2 明確性)について
(1)当審が取消理由(決定の予告)において通知した特許法第36条第6項第2号についての取消理由は、上記1で検討した、訂正前特許請求の範囲の請求項1及び5(請求項2?4、6も同様)における「前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの」「モーメント」が、本件明細書等に記載されたものではないからいかなる「モーメント」であるのか明確ではないというものであった。

(2)しかしながら、本件訂正により訂正された請求項1及び6においては、上記第2、3(4)のとおり、本件訂正により訂正された請求項1においては、「第1及び第2の付勢部材は光軸まわりに配され」るとともに、「第1の付勢部材」は「第1の案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ」、「第2の付勢部材」は「第1の案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ」ることが明確となったことにより、当該「第1の付勢力モーメント」及び「第2の付勢力モーメント」がいかなる「モーメント」であるのかが明確となった。

(3)以上の検討によれば、本件訂正により訂正された請求項1及び6に係る発明は明確であると認められる。
よって、本件訂正により訂正された請求項1及び6は、特許法第36条第6項第2号に基づく取消理由を有するとはいえない。
本件訂正により訂正された請求項4も同様である。

3 特許法第29条第1項第3号(理由3 新規性)及び特許法第29条第2項(理由4 進歩性)について
3-1 本件発明について
上記第3で述べたとおりである。

3-2 甲号証に記載された事項及び甲号証に記載された発明
上記第5で述べたとおりである。

3-3 本件発明と甲号証に記載された発明との対比・判断
(1)本件発明1及び4について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「光軸方向に移動させるべきレンズ群である移動レンズ1」は、本件発明1の「レンズ群」に相当する。

(イ)甲1発明の「移動レンズ1を保持するレンズ保持枠2」は、本件発明1の「前記レンズ群を保持するレンズ群保持部材」に相当する。

(ウ)甲1発明の「レンズ保持枠2を光軸CL方向に摺動自在に支持する第1、第2のシャフト3,4」は、本件発明1の「前記レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する案内部材」に相当する。

(エ)甲1発明の「第2のシャフト4の下方側に配置されたリードスクリュ5を回転するモータ11」は、「レンズ保持枠2を光軸CL方向に摺動自在に支持する」点、及び、「レンズ保持枠2の支持壁6A,6Bに取り付けられ」た「ラック70」の「ラック壁7cとストッパ部8cとは、ねじりコイルばね10の付勢力によりリードスクリュ5にそれぞれ圧接され」る点を踏まえれば、「第2のシャフト4の下方側に配置されたリードスクリュ5を回転するモータ11」は、「ラック70」を介して「レンズ保持枠2」「を光軸に沿って自在に移動可能」とする部材であるといえる。
したがって、甲1発明の「第2のシャフト4の下方側に配置されたリードスクリュ5を回転するモータ11」は、本件発明1の「第1の動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1の超音波モータと、第2の動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2の超音波モータ」と、「動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動するモータ」の点で一致する。

(オ)甲1発明の「第1ラック7,第2ラック8,圧縮コイルばね9及びねじりコイルばね10を有し、第1ラック7はラック壁7cを有し、第2ラック8はストッパ部8cを有し、ラック70は、回動軸CLR回りに回動自在とされてレンズ保持枠2の支持壁6A,6Bに取り付けられ、リードスクリュ5は、ラック壁7cとストッパ部8cとの間に挟まれるように配置され、ラック壁7cとストッパ部8cとは、ねじりコイルばね10の付勢力によりリードスクリュ5にそれぞれ圧接され」る「ラック70」は、上記(エ)での検討を踏まえると、レンズ保持枠2の支持壁6A,6Bと、リードスクリュ5を介してモータ11とを連結する部材であるといえる。
したがって、甲1発明の「第1ラック7,第2ラック8,圧縮コイルばね9及びねじりコイルばね10を有し、第1ラック7はラック壁7cを有し、第2ラック8はストッパ部8cを有し、ラック70は、回動軸CLR回りに回動自在とされてレンズ保持枠2の支持壁6A,6Bに取り付けられ、リードスクリュ5は、ラック壁7cとストッパ部8cとの間に挟まれるように配置され、ラック壁7cとストッパ部8cとは、ねじりコイルばね10の付勢力によりリードスクリュ5にそれぞれ圧接され」る「ラック70」は、本件発明1の「第1の動力取り出し部を備え、前記レンズ群保持部材と前記第1の超音波モータとを連結する第1の連結部材と、第2の動力取り出し部を備え、前記レンズ群保持部材と前記第2の超音波モータとを連結する第2の連結部材」と、「前記レンズ群保持部材と前記モータとを連結する連結部材」の点で一致する。

(カ)甲1発明の「レンズ保持枠2は、その外側方向に突出した第1,第2のシャフト係合部2A,2Bを備え、前記第2のシャフト支持部2Bにおけるラック70側の面2Baに突出部10dが当接し、それにより第2のシャフト支持部2Bはラック70から離れる方向に付勢されるように構成するねじりコイルばね10」は、第2のシャフト支持部2Bを介してレンズ保持枠2と、ラック70とを付勢するコイルばね10であるといえるから、本件発明1の「前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材」と、「前記レンズ群保持部材と前記連結部材とを付勢する付勢部材」の点で一致する。

(キ)甲1発明の「第2のシャフト支持部2Bはラック70から離れる方向に付勢されるように構成するねじりコイルばね10」において、「当接点Pは、第1,第2のシャフト3,4の中心を通る線L1に第2のシャフト4の中心で直交する線L2よりも光軸CLに対して外側に位置させているため、レンズ保持枠2は、第2のシャフト4を中心として左回りのモーメントM1を受け、第1のシャフト3をF2方向の力で常に付勢」することは、ねじりコイルばね10の付勢力は、光軸CLまわりであって、第2のシャフト4を中心とした左回りのモーメントM1を生じることであるといえるから、本件発明1の「前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、前記第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第2の付勢力モーメントを生じ、前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大きく、前記付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの付勢力モーメントを生じ、前記付勢力モーメントは、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大き」いことと、「前記付勢部材は前記光軸まわりに配され、前記付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの付勢力モーメントを生じ」ることの点で一致する。

(ク)甲1発明の「レンズを保持しシャフトに支持されたレンズ保持枠を光軸方向に移動させるレンズ駆動装置」は、本件発明1の「レンズ装置」に相当する。

(ケ)上記(ア)ないし(ク)での検討によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「レンズ群と、
該レンズ群を保持するレンズ群保持部材と、
該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する案内部材と、
動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動するモータと、
前記レンズ群保持部材と前記モータとを連結する連結部材と、
前記レンズ群保持部材と前記連結部材とを付勢する付勢部材と、を備えたレンズ装置において、
前記付勢部材は前記光軸まわりに配され、前記付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの付勢力モーメントを生じる、
レンズ装置。」
の点で一致し、以下の各点で相違する。

〔相違点1〕
「動力伝達部材」及び「モータ」に関して、本件発明1は、「第1の動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1の超音波モータと、第2の動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2の超音波モータと」からなると特定されるのに対して、甲1発明は、「モータ11」が「超音波モータ」とは特定されず、また、甲1発明は、「リードスクリュ5」及び「モータ11」が、それぞれ第1のリードスクリュ及び第2のリードスクリュ、並びに、第1のモータ及び第2のモータからなるとは特定されない点。

〔相違点2〕
「連結部材」に関して、本件発明1は、「第1の動力取り出し部を備え、前記レンズ群保持部材と前記第1の超音波モータとを連結する第1の連結部材と、第2の動力取り出し部を備え、前記レンズ群保持部材と前記第2の超音波モータとを連結する第2の連結部材と」からなると特定されるのに対して、甲1発明は、「ラック70」が、「動力取り出し部」を備えるとは特定されず、また、甲1発明は、「ラック70」が、第1のラック及び第2のラックからなるとは特定されない点。

〔相違点3〕
「付勢部材」に関して、本件発明1は、「前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材と」からなると特定されるのに対して、甲1発明は、「コイルばね10」が、第1のコイルばね及び第2のコイルばねからなるとは特定されない点。

〔相違点4〕
「モーメント」に関して、本件発明1は、「前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、前記第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第2の付勢力モーメントを生じ」ると特定されるのに対して、甲1発明は、「モーメントM1」が、「第1の付勢部材の付勢力」により生じる「第1の付勢力モーメント」と「第2の付勢部材の付勢力」により生じる「第2の付勢力モーメント」であるとは特定されない点。

〔相違点5〕
本件発明1は、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの自重力モーメントよりも大き」いと特定されるのに対して、甲1発明は、このように特定されない点。

〔相違点6〕
本件発明1は、「前記第1の付勢部材の付勢により前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記第1の超音波モータは、前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と、前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動し、前記第2の付勢部材の付勢により前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記第2の超音波モータは、前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と、前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動する」と特定される(以下「特定事項A」という。)のに対して、甲1発明の「ラック70」(本件発明1の「連結部材」に相当。)は、「動力取り出し部」に該当する部材を備えていないため、甲1発明は、「コイルバネ10の付勢によりモータ11のリードスクリュ5と前記ラック70の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記モータ11は、前記モータ11の前記リードスクリュ5と、前記ラック70の前記動力取り出し部と、レンズ保持枠2とが、光軸の方向に直動するように駆動」する構成を第1及び第2の2系統備えていない点。

イ 判断
事案に鑑みて上記相違点6について検討する。
甲1発明の「ラック70」は、「コイルバネ10」の付勢力を用いて「モータ11」の回転力を伝達する「リードスクリュ5」を挟むことにより、「モータ11」の回転力をレンズ保持体2の光軸CL方向の移動力に変換する部材であるから、「ラック70」に別異の「動力取り出し部」を設ける必要性は認められない。
さらには、「ラック70」及び「レンズ保持体2」を光軸CL方向に移動させるために、光軸CL方向に関して固定した状態にある「モータ11」に対して、「リードスクリュ5」だけを「光軸の方向に直動するように駆動」することは想定し得ない。
したがって、甲1発明において、「ラック70」に別異の「動力取り出し部」を設けた上で、「リードスクリュ5」を「光軸の方向に直動するように駆動」する構成となして、特定事項Aの構成となす動機はなく、また、このように構成することが容易に想到し得たことであるとする証拠も見当たらない。

ウ したがって、相違点1ないし5について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではない。
また、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された事項ないし甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに、本件発明1を引用する本件発明4も同様の理由により、甲1発明及び甲2に記載された事項ないし甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「光軸方向に移動させるべきレンズ群である移動レンズ1」は、本件発明6の「レンズ群」に相当する。

(イ)甲1発明の「移動レンズ1を保持するレンズ保持枠2」は、本件発明6の「前記レンズ群を保持するレンズ群保持部材」に相当する。

(ウ)甲1発明の「レンズ保持枠2を光軸CL方向に摺動自在に支持する第1、第2のシャフト3,4」は、本件発明6の「該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する第1の案内部材と、該レンズ群保持部材を前記光軸に沿って自在に移動可能に支持する第2の案内部材」に相当する。

(エ)甲1発明の「第2のシャフト4の下方側に配置されたリードスクリュ5を回転するモータ11」は、「レンズ保持枠2を光軸CL方向に摺動自在に支持する」点、及び、「レンズ保持枠2の支持壁6A,6Bに取り付けられ」た「ラック70」の「ラック壁7cとストッパ部8cとは、ねじりコイルばね10の付勢力によりリードスクリュ5にそれぞれ圧接され」る点を踏まえれば、「第2のシャフト4の下方側に配置されたリードスクリュ5を回転するモータ11」は、「ラック70」を介して「レンズ保持枠2」「を光軸に沿って自在に移動可能」とする部材であるといえる。
したがって、甲1発明の「第2のシャフト4の下方側に配置されたリードスクリュ5を回転するモータ11」は、本件発明6の「前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1のアクチュエータと、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2のアクチュエータ」と、「前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動するアクチュエータ」の点で一致する

(オ)甲1発明の「第1ラック7,第2ラック8,圧縮コイルばね9及びねじりコイルばね10を有し、第1ラック7はラック壁7cを有し、第2ラック8はストッパ部8cを有し、ラック70は、回動軸CLR回りに回動自在とされてレンズ保持枠2の支持壁6A,6Bに取り付けられ、リードスクリュ5は、ラック壁7cとストッパ部8cとの間に挟まれるように配置され、ラック壁7cとストッパ部8cとは、ねじりコイルばね10の付勢力によりリードスクリュ5にそれぞれ圧接され」る「ラック70」は、上記(エ)での検討を踏まえると、レンズ保持枠2の支持壁6A,6Bと、リードスクリュ5を介してモータ11とを連結する部材であるといえる。
したがって、甲1発明の「第1ラック7,第2ラック8,圧縮コイルばね9及びねじりコイルばね10を有し、第1ラック7はラック壁7cを有し、第2ラック8はストッパ部8cを有し、ラック70は、回動軸CLR回りに回動自在とされてレンズ保持枠2の支持壁6A,6Bに取り付けられ、リードスクリュ5は、ラック壁7cとストッパ部8cとの間に挟まれるように配置され、ラック壁7cとストッパ部8cとは、ねじりコイルばね10の付勢力によりリードスクリュ5にそれぞれ圧接され」る「ラック70」は、本件発明6の「前記レンズ群保持部材と前記第1のアクチュエータとを連結する第1の連結部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2のアクチュエータとを連結する第2の連結部材」と、「前記レンズ群保持部材と前記アクチュエータとを連結する連結部材」の点で一致する。

(カ)甲1発明の「レンズ保持枠2は、その外側方向に突出した第1,第2のシャフト係合部2A,2Bを備え、前記第2のシャフト支持部2Bにおけるラック70側の面2Baに突出部10dが当接し、それにより第2のシャフト支持部2Bはラック70から離れる方向に付勢されるように構成するねじりコイルばね10」は、第2のシャフト支持部2Bを介してレンズ保持枠2と、ラック70とを付勢するコイルばね10であるといえるから、本件発明6の「前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材」と、「前記レンズ群保持部材と前記連結部材とを付勢する付勢部材」の点で一致する。

(キ)甲1発明の「第2のシャフト支持部2Bはラック70から離れる方向に付勢されるように構成するねじりコイルばね10」において、「当接点Pは、第1,第2のシャフト3,4の中心を通る線L1に第2のシャフト4の中心で直交する線L2よりも光軸CLに対して外側に位置させているため、レンズ保持枠2は、第2のシャフト4を中心として左回りのモーメントM1を受け、第1のシャフト3をF2方向の力で常に付勢」することは、ねじりコイルばね10の付勢力は、光軸CLまわりであって、第2のシャフト4を中心とした左回りのモーメントM1を生じることであるといえるから、本件発明6の「前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、前記レンズ群保持部材と前記第1の付勢部材との第1の接触点は、前記第1の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第1の作用点であり、前記レンズ群保持部材と前記第2の付勢部材との第2の接触点は、前記第2の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第2の作用点であり、前記第1の付勢部材の付勢力のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ、前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記第1の案内部材を中心軸とした自重力モーメントよりも大き」いことと、「前記付勢部材は前記光軸まわりに配され、前記レンズ群保持部材と前記付勢部材との接触点は、前記付勢部材によって付勢力が及ぼされる作用点であ」ることの点で一致する。

(ク)甲1発明の「レンズを保持しシャフトに支持されたレンズ保持枠を光軸方向に移動させるレンズ駆動装置」は、本件発明6の「レンズ装置」に相当する。

(ケ)上記(ア)ないし(ク)での検討によれば、本件発明6と甲1発明とは、
「レンズ群と、
該レンズ群を保持するレンズ群保持部材と、
該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する第1の案内部材と、
該レンズ群保持部材を前記光軸に沿って自在に移動可能に支持する第2の案内部材と、
前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動するアクチュエータと、
前記レンズ群保持部材と前記アクチュエータとを連結する連結部材と、
前記レンズ群保持部材と前記連結部材とを付勢する付勢部材と、を備えたレンズ装置において、
前記付勢部材は前記光軸まわりに配され、
前記レンズ群保持部材と前記付勢部材との接触点は、前記付勢部材によって付勢力が及ぼされる作用点である、
レンズ装置。」
の点で一致し、以下の各点で相違する。

〔相違点7〕
「アクチュエータ」に関して、本件発明6は、「前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1のアクチュエータと、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2のアクチュエータ」からなると特定されるのに対して、甲1発明は、「モータ11」が、第1のモータ及び第2のモータからなるとは特定されない点。

〔相違点8〕
「連結部材」に関して、本件発明6は、「前記レンズ群保持部材と前記第1のアクチュエータとを連結する第1の連結部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2のアクチュエータとを連結する第2の連結部材と」からなると特定されるのに対して、甲1発明は、「ラック70」が、第1のラック及び第2のラックからなるとは特定されない点。

〔相違点9〕
「付勢部材」に関して、本件発明6は、「前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材と」からなると特定されるのに対して、甲1発明は、「コイルばね10」が、第1のコイルばね及び第2のコイルばねからなるとは特定されない点。

〔相違点10〕
「モーメント」に関して、本件発明6は、「前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、前記レンズ群保持部材と前記第1の付勢部材との第1の接触点は、前記第1の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第1の作用点であり、前記レンズ群保持部材と前記第2の付勢部材との第2の接触点は、前記第2の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第2の作用点であり、前記第1の付勢部材の付勢力のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ」ると特定されるのに対して、甲1発明は、「モーメントM1」が、「第1の付勢部材の付勢力」「のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力」により生じる「第1の付勢力モーメント」と「第2の付勢部材の付勢力」「のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力」により生じる「第2の付勢力モーメント」であるとは特定されない点。

〔相違点11〕
本件発明6は、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記第1の案内部材を中心軸とした自重力モーメントよりも大き」く、さらに、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向である」と特定されるのに対して、甲1発明は、このように特定されない点。

イ 判断
事案に鑑みて上記相違点10及び11について検討する。
甲1発明は、「コイルバネ10」を「通常の使用姿勢でレンズ保持枠2の自重が付与される方向と同じ方向に第1のシャフト3を付勢するよう当接点Pの位置を設定する」ことで、「レンズ保持枠2は、第2のシャフト4を中心として左回りのモーメントM1を受け、第1のシャフト3をF2方向の力で常に付勢」しているから、「レンズ保持枠2の自重」と「コイルバネ10」の付勢力を合わせて「常にレンズ保持枠2は第1のシャフト3に押圧されて接触」する構成となすものである。
そして、甲1発明は、「レンズ保持枠2の自重」と「コイルバネ10」の付勢力を合わせて「常にレンズ保持枠2は第1のシャフト3に押圧されて接触」することで、「第1のシャフト3と第1のシャフト支持部2Aの貫通孔2A1との間にガタはあるものの、リードスクリュ5の振動や軸ぶれによってレンズ保持枠2が動くことはなく画像が揺れることはなく、レンズ駆動装置50が光学機器に上下逆に搭載される場合や、搭載した光学機器が上下逆に使用される場合においても、常にレンズ保持枠2は第1のシャフト3に押圧されて接触しているので、光学機器の姿勢やレンズ保持枠2の自重の影響によって画像が傾いたり揺れたりすることがな」い効果を得ている。
そうすると、「レンズ保持枠2の自重」と「コイルバネ10」の付勢力で十分に「常にレンズ保持枠2は第1のシャフト3に押圧されて接触」できているのであるから、さらに、「モーメントM1」が、「第1の付勢部材の付勢力」「のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力」により生じる「第1の付勢力モーメント」と「第2の付勢部材の付勢力」「のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力」により生じる「第2の付勢力モーメント」を別途考慮してまで、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和」を、「前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記第1の案内部材を中心軸とした自重力モーメントよりも大き」くする必要性はなく、「前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向である」ことも考慮する必要性がない。
したがって、甲1発明において、「コイルバネ10」を2つ備えるものとなすことが容易に想到し得たとしても、「モーメントM1」に関して、「第1の付勢部材の付勢力」「のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力」により生じる「第1の付勢力モーメント」と「第2の付勢部材の付勢力」「のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力」により生じる「第2の付勢力モーメント」を別途考慮することは想定し得ず、また、その和や方向までを考慮することも想定し得ず、さらには、甲2に記載された事項ないし甲5に記載された事項にもこのように構成することは記載も示唆もされていないから、このように構成することが容易に想到し得たことであるとする証拠も見当たらない。

ウ したがって、相違点7ないし9について検討するまでもなく、本件発明6は甲1発明ではない。
また、本件発明6は、甲1発明及び甲2に記載された事項ないし甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 申立人の意見について
(1)申立人は、令和3年6月8日に提出された意見書(以下、単に「意見書」という。)における主張について
申立人は意見書の「3 意見の内容」において、概略、以下のとおり主張する。
ア 本件明細書等に「第1の動力伝達部材」及び「第2の動力伝達部材」のそれぞれが「光軸の方向に直動する」ことは記載されていないから、「第1の超音波モータは、前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と、前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動し」及び「第2の超音波モータは、前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と、前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動する」とした本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正ではない。(同意見書 1頁下から4行?4頁2行)

イ 訂正後の請求項1では「案内部材」が二つであるとは限定されていないから、「案内部材」が一つのみの構成を含むところ、「案内部材」が一つのみで、「アクチュエータ」、「連結部材」及び「付勢部材」がそれぞれ二つある構成は、本件明細書等に開示されておらず(同意見書 4頁10行?5頁8行)、当該構成は不明確であり、本願発明の課題を解決できない。(同意見書 5頁18行?6頁11行)

ウ 訂正後の請求項1では、「超音波モータ」と「動力伝達部材」との接続関係が全く記載されていないため、「超音波モータ」による動力が「動力伝達部材」によって「動力取り出し部」にどのように伝達されるのかが不明であるため、訂正後の請求項1に係る発明は不明確である。(同意見書 5頁9?17行)

エ 訂正後の請求項1に係る発明が奏する効果は、周知の超音波モータそのものによる効果であり、また、付勢力モーメントの和を自重力モーメントよりも大きくすることは自明のことにすぎない。(同意見書 6頁12行?10頁6行)

オ 訂正後の請求項6に係る発明は「アクチュエータ」を「超音波モータ」に限定しておらず、甲1発明における「リードスクリュ5」を回転させる「モータ11」、及び、甲第2号証における「リードネジ2」を回転させる「2つのモータ1」を含むところ、当該甲1発明における「リードスクリュ5」を回転させる「モータ11」を2つ備えることは当業者が適宜なし得ることである。(同意見書 10頁7行?15頁下から3行)

(2)しかしながら、以下のとおり、申立人の主張は採用できない。
ア 上記(1)アの点について
本件明細書等には、「レンズ装置10は、少なくとも1つのアクチュエータを備える。16は、第一のアクチュエータであって、レンズ群保持部材12を駆動する。ここでは、駆動アクチュエータとして光軸Oの方向に直動する超音波モータを用いて例示するが、駆動アクチュエータはこれに限定されない。」(【0012】)と記載され、「少なくとも1つの」「第一のアクチュエータ16」である「超音波モータ」は「レンズ群保持部材12を駆動する」ものであって「光軸Oの方向に直動する」ことが開示されている。
また、本件明細書等には、「図5は、動力取り出し部18cと第一のアクチュエータ16の動力伝達部材30との接触部を示す部分断面図である。動力取り出し部18cの形状は、V字状の溝形状となっている。第一の付勢部材19は、第一の連結部材18を図のAの方向に付勢するので、レンズ群保持部材12と第一のアクチュエータ16とをガタ無く連結することが可能である。」(【0017】)と記載され、「第一のアクチュエータ16の動力伝達部材30」は「動力取り出し部18c」と「接触部」で「レンズ群保持部材12と第一のアクチュエータ16とをガタ無く連結すること」が記載されている。
そうすると、「動力伝達部材30」は「動力取り出し部18c」と「接触部」で「レンズ群保持部材12」と「ガタ無く連結」した上で、少なくとも1つの「レンズ群保持部材12」は「光軸Oの方向に直動する」から、結果として、少なくとも1つの「動力伝達部材30」も「光軸Oの方向に直動する」ことが記載されているといえる。
したがって、申立人の上記(1)アの主張は採用できない。

イ 上記(1)イの点について
本件発明1は、「案内部材」に関して、「前記第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第1の付勢力モーメントを生じ、前記第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした前記光軸まわりの第2の付勢力モーメントを生じ」と特定しており、「案内部材」を中心軸とした「第1の付勢部材の付勢力」により生じる「第1の付勢力モーメント」及び「第2の付勢部材の付勢力」により生じる「第2の付勢力モーメント」の2つのモーメントを生じることが特定されるとともに、当該「第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され」ていると特定している。
そうすると、「案内部材」が1つであって、「第1の付勢部材」と「第2の付勢部材」が同じ「案内部材」に「配され」ている場合は、当該「第1及び第2の付勢部材は前記光軸」から離れた位置「配」されるにとどまり、当該「第1及び第2の付勢部材」を「前記光軸まわりに配」することはできない。
したがって、本件発明1は、「案内部材」が1つであって、「第1の付勢部材」と「第2の付勢部材」が同じ「案内部材」に「配され」ている場合を含まないものであるから、「案内部材」が一つのみで、「アクチュエータ」、「連結部材」及び「付勢部材」がそれぞれ二つある構成を含むと解することはできない。
したがって、申立人の上記(1)イの主張は採用できない。

ウ 上記(1)ウの点について
本件発明1は、「前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1の超音波モータ」が「第1の動力伝達部材を備え」ること、及び、「前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2の超音波モータ」が「第2の動力伝達部材を備え」ることを特定している。
そして、当該「動力伝達部材」がその「超音波モータ」の動力を伝達する機能を有するものであることはその名称から明らかであり、また、「超音波モータ」を使用するに当たって動力を伝達する部材が必要なことは「超音波モータ」の技術分野において技術常識であるから、「動力伝達部材」によって「動力取り出し部」に動力を伝達する構成を具体的に特定していないことをもって、発明が明確ではないとまではいえない。
さらには、上記アで検討したとおり、本件明細書等に、「動力伝達部材30」は「動力取り出し部18c」と「接触部」で「レンズ群保持部材12」と「ガタ無く連結」した上で、少なくとも1つの「レンズ群保持部材12」は「光軸Oの方向に直動する」部材であることが記載されているといえる。
したがって、「超音波モータ」による動力が「動力伝達部材」によって「動力取り出し部」にどのように伝達されるのかまで具体的に特定していないことをもって、訂正後の請求項1に係る発明の記載が不明確であるとまではいえない。
したがって、申立人の上記(1)ウの主張は採用できない。

エ 上記(1)エの点について
上記3-3(1)イで検討したとおり、例え、甲2に記載された事項ないし甲5に記載された事項を踏まえて、甲1発明において、「リードスクリュ5」、「モータ11」、「ラック70」、「コイルばね10」及び「モーメントM1」がそれぞれ第1及び第2のものからなるとなことが容易に想到し得たことであるとしても、さらに、甲1発明の「モータ11」を第1及び第2の「超音波モータ」となし、甲1発明の「ラック70」を「動力取り出し部」を備える第1及び第2の部材となした上で、特定事項Aの構成となす動機はなく、また、このように構成することが容易に想到し得たことであるとする証拠も見当たらない。
したがって、訂正後の請求項1に係る発明が奏する効果は、周知の超音波モータそのものによる効果であり、また、付勢力モーメントの和を自重力モーメントよりも大きくすることは自明のことにすぎないとしても、本件発明1は甲1発明及び甲2に記載された事項ないし甲5に記載された事項から容易に想到し得たものであるとはいえないから、申立人の上記(1)エの主張は採用できない。

オ 上記(1)オの点について
上記3-3(2)イで検討したとおり、例え、甲2に記載された事項ないし甲5に記載された事項を踏まえて、甲1発明において、「リードスクリュ5」、「モータ11」、「ラック70」及び「コイルばね10」がそれぞれ第1及び第2のものからなることが容易に想到し得たことであるとしても、さらに、甲1発明の「モーメントM1」を「モーメントM1」が、「第1の付勢部材の付勢力」「のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力」により生じる「第1の付勢力モーメント」と「第2の付勢部材の付勢力」「のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力」により生じる「第2の付勢力モーメント」であるとなした上で、特定事項B及びCの構成となす動機はなく、また、このように構成することが容易に想到し得たことであるとする証拠も見当たらないから、申立人の上記(1)オの主張は採用できない。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、4及び6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、4及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件発明2、3及び5に係る特許は、本件訂正により削除されたので、本件発明2、3及び5に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ群と、
該レンズ群を保持するレンズ群保持部材と、
該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する案内部材と、
第1の動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1の超音波モータと、
第2の動力伝達部材を備え、前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2の超音波モータと、
第1の動力取り出し部を備え、前記レンズ群保持部材と前記第1の超音波モータとを連結する第1の連結部材と、
第2の動力取り出し部を備え、前記レンズ群保持部材と前記第2の超音波モータとを連結する第2の連結部材と、
前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、
前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材と、を備えたレンズ装置において、
前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、
前記第1の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ、
前記第2の付勢部材の付勢力は、前記案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ、
前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ装置の姿勢にかかわらず前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記案内部材を中心軸とした自重力モーメントよりも大きく、
前記第1の付勢部材の付勢により前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記第1の超音波モータは、前記第1の超音波モータの前記第1の動力伝達部材と、前記第1の連結部材の前記第1の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動し、
前記第2の付勢部材の付勢により前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部が接触部で接触した上で、前記第2の超音波モータは、前記第2の超音波モータの前記第2の動力伝達部材と、前記第2の連結部材の前記第2の動力取り出し部と、前記レンズ群保持部材とが、前記光軸の方向に直動するように駆動することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
レンズ群と、
該レンズ群を保持するレンズ群保持部材と、
該レンズ群保持部材を光軸に沿って自在に移動可能に支持する第1の案内部材と、
該レンズ群保持部材を前記光軸に沿って自在に移動可能に支持する第2の案内部材と、
前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第1のアクチュエータと、
前記レンズ群保持部材を前記光軸に沿って駆動する第2のアクチュエータと、
前記レンズ群保持部材と前記第1のアクチュエータとを連結する第1の連結部材と、
前記レンズ群保持部材と前記第2のアクチュエータとを連結する第2の連結部材と、
前記レンズ群保持部材と前記第1の連結部材とを付勢する第1の付勢部材と、
前記レンズ群保持部材と前記第2の連結部材とを付勢する第2の付勢部材と、を備えたレンズ装置において、
前記第1及び第2の付勢部材は前記光軸まわりに配され、
前記レンズ群保持部材と前記第1の付勢部材との第1の接触点は、前記第1の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第1の作用点であり、
前記レンズ群保持部材と前記第2の付勢部材との第2の接触点は、前記第2の付勢部材によって付勢力が及ぼされる第2の作用点であり、
前記第1の付勢部材の付勢力のうち前記第1の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第1の付勢力モーメントを生じ、
前記第2の付勢部材の付勢力のうち前記第2の作用点と前記第1の案内部材の中心軸とを結んだ線と直交する方向の分力が、前記第1の案内部材を中心軸とした第2の付勢力モーメントを生じ、
前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとの和は、前記レンズ群と前記レンズ群保持部材との自重から生じる前記第1の案内部材を中心軸とした自重力モーメントよりも大きく、
前記第1の付勢力モーメントと前記第2の付勢力モーメントとは、いずれも同一の方向であることを特徴とするレンズ装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-08-20 
出願番号 特願2015-223(P2015-223)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G02B)
P 1 651・ 113- YAA (G02B)
P 1 651・ 537- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡邉 勇  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 松川 直樹
野村 伸雄
登録日 2019-06-14 
登録番号 特許第6539047号(P6539047)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 レンズ装置  
代理人 齋藤 正巳  
代理人 齋藤 正巳  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  
代理人 岡部 讓  
代理人 越智 隆夫  
代理人 越智 隆夫  

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