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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F24F
管理番号 1379777
異議申立番号 異議2020-700367  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-27 
確定日 2021-08-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6611827号発明「空気調和装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6611827号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5-7〕、3、4について訂正することを認める。 特許第6611827号の請求項1、2、5ないし7に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6611827号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、2016年2月1日を国際出願日とする出願であって、令和元年11月8日にその特許権の設定登録がされ、令和元年11月27日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1、2,5?7に係る特許に対して、令和2年5月27日に特許異議申立人岩崎精孝(「崎」のつくりの一部は「大」ではなく「立」。以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和2年7月30日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和2年10月2日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して令和2年11月25日に異議申立人から意見書が提出され、令和3年1月15日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和3年3月8日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して令和3年4月8日に異議申立人から意見書が提出されたものである。
なお、令和3年3月8日に訂正の請求がなされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、令和2年10月2日の訂正の請求は取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年3月8日の訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである(下線は、特許権者が付与。以下同様。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「ベルマウス部とを具備し、」の後に「前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され、」を付加する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「ファンと、前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、を有し、前記ファンケーシングは、前記筐体に固定されるケーシング本体部と、前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものであり、前記ファンの外径は、前記吸込口の径よりも小さい、空気調和装置。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「ファンと、前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、を有し、前記ファンケーシングは、前記筐体に固定されるケーシング本体部と、前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものであり、前記ベルマウス部の開口径は、前記ファンの外径よりも小さい、空気調和装置。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5を、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「前記ケーシング本体部に前記吹出口」と記載されているのを「前記ケーシング本体部の上部に前記吹出口」に改める。
さらに、請求項5において、「二箇所」と記載されているのを、「第一接合部及び第二接合部の二箇所」に改め、「接合されており、」の後に、訂正事項1と同様に、「前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され、」を付加し、かつ「長さである」と記載されているのを「長さであり、前記接合部のうち、前記第二接合部は、前記吸込み口の下部に設けられ、前記第一接合部は前記吹出口の近傍であり、前記吸込み口の上部に設けられ、前記第二接合部よりも前記吹出口に近い位置に設けられる」に改め、
「ファンと、前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、を有し、前記ファンケーシングは、前記筐体に固定されるケーシング本体部と、前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものであり、前記ケーシング本体部に前記吹出口が形成され、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部とは、第一接合部及び第二接合部の二箇所で接合されており、前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され、前記ベルマウス部の外径は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合部のうちの少なくとも一方を基準とした外径以上の長さであり、前記接合部のうち、前記第二接合部は、前記吸込み口の下部に設けられ、前記第一接合部は前記吹出口の近傍であり、前記吸込み口の上部に設けられ、前記第二接合部よりも前記吹出口に近い位置に設けられる、空気調和装置。」と訂正する。

(5)訂正事項5
明細書の段落[0008]に「本発明に係る空気調和装置は、ファンと、前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、を有し、前記ファンケーシングは、前記筐体に固定されるケーシング本体部と、前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものである。」と記載されているのを、「本発明に係る空気調和装置は、ファンと、前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、を有し、前記ファンケーシングは、前記筐体に固定されるケーシング本体部と、前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され、前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものである。」に訂正する。

(6)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項3、4については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める。

2 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項について
訂正事項1?5に係る訂正前の請求項1?7は、請求項2?7がそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?7に対応する訂正後の請求項1?7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明の「吸込口」と「ベルマウス部」との構成について、訂正後の請求項1は、「前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され、」との事項によって特定されたものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下、同様である。)。
「【0029】
さらに、ファンケーシング1は、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bによって形成される吸込口4に配設される二つのベルマウス部6を有している。より具体的に、吸込口4は、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bの一方の側面及び他方の側面にそれぞれ形成されており、二つのベルマウス部6は、それぞれ、一方の側面と他方の側面とに配設されている。」
上記記載より、訂正事項1における「前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され」ている点は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項1は、「吸込口」及び「ベルマウス部」に関しての発明特定事項を、「前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され」ているものに限定するものであり、当該訂正により訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1又は2のいずれか一項の記載を引用する記載であるところ、“請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し独立形式請求項へ改めるため、請求項1の記載を引用しないものとするもの”及び“請求項2を引用するものについて削除するもの”であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項2は、訂正前の請求項3について、請求項2を引用するものを削除するものであり、かつその他の実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項2は、訂正前の請求項3について、請求項2を引用するものを削除するものであり、当該訂正により訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項3に記載された発明の対象や目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第第6項に適合する。

ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項4が請求項1?3のいずれか一項の記載を引用する記載であるところ、“請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し独立形式請求項へ改めるため、請求項1の記載を引用しないものとするもの”及び“請求項2?3のいずれか一項を引用するものについて削除するもの”であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項3は、訂正前の請求項4について、請求項2?3のいずれか一項を引用するものを削除するものであり、かつその他の実質的な内容の変更を伴うものではないから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項3は、訂正前の請求項4について、請求項2?3のいずれか一項を引用するものを削除するものであり、当該訂正により訂正前の請求項4に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項4に記載された発明の対象や目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第第6項に適合する。

エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1?4のいずれか一項の記載を引用する記載であるところ、“請求項2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し独立形式請求項へ改めるため、請求項2(及び請求項2が引用する請求項1)の記載を引用しないものとするもの”及び“請求項1、3?4のいずれか一項を引用するものについて削除するもの”であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
また、訂正前の請求項2に「前記ケーシング本体部に前記吹出口」と記載されているのを「前記ケーシング本体部の上部に前記吹出口」に限定し、訂正前の請求項5において、「二箇所」と記載されているのを、「第一接合部及び第二接合部の二箇所」に限定し、訂正前の請求項1の「吸込口」及び「ベルマウス部」に関しての発明特定事項を、「前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され」ているものに限定するものであり、訂正前の請求項5の「接合部」に関しての発明特定事項を、「前記接合部のうち、前記第二接合部は、前記吸込み口の下部に設けられ、前記第一接合部は前記吹出口の近傍であり、前記吸込み口の上部に設けられ、前記第二接合部よりも前記吹出口に近い位置に設けられる」と限定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項4に関して、“訂正前の請求項5について、請求項1、3?4のいずれか一項を引用するものを削除するものである”点は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
「接合部」に関して、本件特許明細書等には、次の事項が記載されている。
「【0030】
すなわち、ファンケーシング1は、吹出口2の近傍である第一接合部3と、吹出口2を上側とした場合の吸込口4の下部にあたる第二接合部5との二箇所において、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとに分割できる構造となっている。」
また、図5には、ケーシング本体部の上部に吹出口が形成される点、及びケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとを第一接合部及び第二接合部の二箇所で接合する点が示されている。
以上のことから、訂正事項4における「前記ケーシング本体部の上部に前記吹出口」が形成される点、「第一接合部及び第二接合部の二箇所」で接合する点、及び「前記接合部のうち、前記第二接合部は、前記吸込み口の下部に設けられ、前記第一接合部は前記吹出口の近傍であり、前記吸込み口の上部に設けられ、前記第二接合部よりも前記吹出口に近い位置に設けられる」点は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の事項であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
また、訂正事項4における「前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され」る点は、上記ア(イ)で述べたとおりである。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項4に関して、“訂正前の請求項5について、請求項1、3?4のいずれか一項を引用するものを削除するものである”点は、当該訂正により訂正前の請求項5に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、かつ、訂正前の請求項5に記載された発明の対象や目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第第6項に適合する。
「接合部」に関しての発明特定事項を、「前記接合部のうち、一箇所の接合部は前記吹出口の近傍に設けられる」ものに限定する点は、当該訂正により訂正前の請求項5に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
また、「吸込口」及び「ベルマウス部」に関しての発明特定事項を、「前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され」ているものに限定する点は、上記ア(ウ)で述べたとおりである。

オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、訂正事項1によって訂正される請求項1の記載事項と、明細書の記載事項とを整合させるだけのものであるから、その目的は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項5は、訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項5は、訂正事項1と同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第第6項に適合する。

(3)独立特許要件について
本件において、訂正前の請求項1?2、5?7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1、訂正前の請求項5に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
訂正事項2は、訂正前の請求項3について、請求項2を引用するものを削除するものであり、かつその他の実質的な内容の変更を伴うものではないから、独立特許要件が満たされなくなることはなく、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件を満たす。
訂正事項3は、訂正前の請求項4について、請求項2?3のいずれか一項を引用するものを削除するものであり、かつその他の実質的な内容の変更を伴うものではないから、独立特許要件が満たされなくなることはなく、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件を満たす。
訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、同第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正のいずれでもない。したがって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項並びに第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
そして、特許権者は、訂正後の請求項3及び4については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めているところ、上記のとおり、訂正事項2及び3に係る訂正は認められるものであるから、訂正後の請求項3及び4について、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱う。
よって、結論のとおり、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5?7〕、3、4について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件訂正により訂正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。以下、本件特許の請求項1?7に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などという。
「【請求項1】
ファンと、
前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、
前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、
前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、
を有し、
前記ファンケーシングは、
前記筐体に固定されるケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、
前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、
前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され、
前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものである、空気調和装置。
【請求項2】
前記ケーシング本体部に前記吹出口が形成された、請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
ファンと、
前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、
前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、
前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、
を有し、
前記ファンケーシングは、
前記筐体に固定されるケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、
前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、
前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものであり、
前記ファンの外径は、前記吸込口の径よりも小さい、空気調和装置。
【請求項4】
ファンと、
前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、
前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、
前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、
を有し、
前記ファンケーシングは、
前記筐体に固定されるケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、
前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、
前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものであり、
前記ベルマウス部の開口径は、前記ファンの外径よりも小さい、空気調和装置。
【請求項5】
ファンと、
前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、
前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、
前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、
を有し、
前記ファンケーシングは、
前記筐体に固定されるケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、
前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、
前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものであり、
前記ケーシング本体部の上部に前記吹出口が形成され、
前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部とは、第一接合部及び第二接合部の二箇所で接合されており、
前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され、
前記ベルマウス部の外径は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合部のうちの少なくとも一方を基準とした外径以上の長さであり、
前記接合部のうち、前記第二接合部は、前記吸込み口の下部に設けられ、前記第一接合部は前記吹出口の近傍であり、前記吸込み口の上部に設けられ、前記第二接合部よりも前記吹出口に近い位置に設けられる、空気調和装置。
【請求項6】
前記ケーシング分割部は、前記ケーシング本体部との接合部に、前記ケーシング本体部に向かって延び、前記ケーシング本体部の内面に接する差込部を有する請求項1?5の何れか一項に記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記ケーシング分割部は、
上端部にフランジ状の折り曲げ部を有すると共に、
前記折り曲げ部の上端部から前記ケーシング本体部に向かって延びる係止部を有する請求項1?6の何れか一項に記載の空気調和装置。」

第4 取消理由の概要
(1)本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。
(2)請求項5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)請求項6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1発明、周知技術及び甲4記載技術または甲5記載技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)請求項7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1発明、周知技術、引用例1記載技術及び甲4記載技術または甲5記載技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許の請求項1、2、5?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

刊行物(特許異議申立書等に添付された甲各号証及び当審において追加した引用例)
ア 甲第1号証:特開平7-332727号公報
イ 甲第6号証:特開2008-240612号公報(周知技術を示す)
ウ 甲第7号証:特開2010-77899号公報 (周知技術を示す)
エ 甲第4号証:特開2000-283094号公報
オ 甲第5号証:特開平11-325499号公報
カ 引用例1 :特開2013-19355号公報

第5 刊行物に記載された事項
ア 甲第1号証に記載された発明
(ア) 特許異議申立書に添付された甲第1号証(特開平7-332727号公報)には、以下の事項が記載されている。ただし、「・・・」は、省略を意味する。下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下、同様である。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱交換換気装置に関し、より詳細には、2個の送風ユニットを用いて室内空気と室外空気とを換気する形式の熱交換換気装置に関する。
・・・
【0017】
【実施例】以下、添付図面を参照しつつ本発明の好ましい実施例について詳述する。図1は本発明の一実施例における熱交換換気装置10の要部を示す分解斜視図であり、図2は上記熱交換換気装置10の基本構造を示す平面略図である。これらの図を参照して、この熱交換換気装置10は、天井空間S1内に収容される天井埋込形のものであり、箱型のケーシング11を備えている。ケーシング11は、底板11Aと、底板11Aの周囲に延設された側板11B?11Eと、底板11Aの上方に対向する天板11Fとを一体的に備えた箱型に形成されている。上記側板11B?11Eのうちの一つは、天井板1に形成されたメンテナンス口2の側方に臨むメンテナンス側側板11Bであり、後述する熱交換エレメント12を挿抜するための挿抜口13が形成されている。この挿抜口13は、メンテナンス蓋14によって開放可能に閉塞されており、上記メンテナンス蓋14を開放することにより、熱交換エレメント12をメンテナンス口2の周囲に区画されるメンテナンス空間S11(平面のみ仮想線で図示)に開放できるようになっている。
【0018】ケーシング11内には、図示しない間仕切り板によって、室外の空気を室内に供給する給気経路PH1と、室内の空気を室外に排出する排気経路PH2と、両経路PH1、PH2が交差する熱交換エレメント収容室Cとが区画されている。また、上記メンテナンス側側板11Bと直交する一方の側板11Cには、ダクト継手OA、EAが取付けられており、他方の側板11Dには、ダクト継手RA、SAが取り付けられている。そして、ダクト継手OAとダクト継手RAが、ダクト継手SAとダクト継手EAがそれぞれケーシング11内に形成された給気経路PH1、吹出経路PH2を介して連通されており、ダクト継手OAから導入された室外の空気が給気経路PH1を介してダクト継手RAから室内に導入されるとともに、ダクト継手SAから排出される室内の空気が吹出経路PH2を介してダクト継手EAから室外に吹き出されるようになっている。
【0019】次に、ケーシング11内には、熱交換エレメント12が収容されている。熱交換エレメント12は、紙等の熱伝導性のよいシート状の仕切板12Aを所定の形状に形成し、さらに間隔をへだてて積層することにより、当該仕切板12Aの積層方向A1と直交する一方向に空気を流通させる第1の通気口16A、上記積層方向A1に沿って上記第1の通気口16Aの一部を区画する稜線12B、およびこの稜線12Bによって一部が区画されるとともに、上記積層方向A1と直交する他方向に空気を流通させる第2の通気口16B(図2参照)を形成している。そして、熱交換エレメント12は、積層方向A1が水平に沿った状態で上記第1の通気口16Aを給気経路PH1と連通させているとともに、第2の通気口16Bを吹出経路PH2と連通させている。本実施例において、熱交換エレメント12は、上記稜線12Bが水平に沿っているとともに、上記挿抜口13を介し、上記稜線12Bの方向に沿ってケーシング11の内部とケーシング11外のメンテナンス空間S1との間に挿抜可能にケーシング11内に収容されている。
・・・
【0021】上記ケーシング11内の各経路PH1、PS2に空気を流通させるために、ケーシング11内には、一対の送風ユニット20が配設されている。各送風ユニット20は、互いに上記熱交換エレメント12の稜線12Bと直交する方向に熱交換エレメント12を挟んで対向している。上記熱交換換気装置10の送風ユニット20の外観を示す図3を参照して、各送風ユニット20は、いわゆるモータ側吸込形式のシロッコファンによって構成されており、略矩形の外郭部材21、外郭部材21に着脱可能に取り付けられるモータ22、およびモータ22の回転軸22A端に固定されて、ケーシング11内の運転位置(図2に示す位置)にて上記稜線12Bに沿う方向にモータ22と対向する樹脂製ファンロータ23とを有するものである。
【0022】外郭部材21は、矩形に形成された発砲スチロール製のファンケーシング21Aと、ファンケーシング21Aの一端面に固定された取付け板21Bとを一体的に有している。上記モータ22は、取付け板21Bにビス21Cで固定された鋼板製のベルマウス24に対して同心に配設されており、このベルマウス24のフランジ部24Aに固定された鋼板製のモータ台25を介してビス21Dにより固定されている。上記ビス21Cは、上記ベルマウス24のフランジ部24Aの周囲に6箇所設けられており、一部がモータ台25の端部を共締めしている。また、モータ台25には、ビス21Eを介してモータ22のフランジ部22Bが取り付けられている。従って、外郭部材21からモータ22を取り外す際には、上記ビス21Cを螺脱させて、取付け板21Bからベルマウス24を取外し、その後、ファンロータ23を回転軸22Aから取り外した後、ベルマウス24からモータ台25を取外し、モータ22をモータ台25から取り外せばよい。この取外し作業は、送風ユニット20の外側からモータ22に対向する位置で容易に行なうことができる。また、モータ22を外郭部材21に取り付ける際も同様である。
【0023】本実施例において、モータ22は、メンテナンス側側板11Bに近接して配設されている。従って、本実施例では、メンテナンス空間S11から作業者の手がモータ22に届きやすくなる。上記ファンロータ23は、両吸込型のシロッコファン羽根車で構成されており、これによって図1に示すように、軸方向両端側から空気を吸引できるようになっている。本実施例では、ファンロータ23が、モータ22の回転軸22Aの両側から空気を吸引する両吸込型のものであるので、空気の圧力損失が小さくなり、容易に大風量を得ることができるという利点がある。
・・・
【0031】この実施例においても、図1の構成と同様の作用効果を奏することが可能になる。次に、図7および図8に示すさらに別の実施例について説明する。図7は、本発明の別の実施例における送風ユニットの概略斜視図であり、図8は、図7の背面図である。
【0032】これらの図を参照して、本実施例の送風ユニット20は、分割型のファンケーシング60を採用している。このファンケーシング60は、ケーシング11の対応する側板11C、11D(図1参照)に固定される固定部61と、固定部61に対し、着脱可能な状態で熱交換エレメント12(図1参照)側に配設される着脱部62とを備えており、着脱部62を挿抜口13(図1参照)から取り外すことにより、モータ22およびファンロータ23を熱交換エレメント12の熱交換エレメント収容室Cに開放して、挿抜口13からモータ22を着脱可能に構成したものである。」

「【図1】

【図7】

【図8】



図1から熱交換エレメント収容室Cに熱交換エレメント12が収容されていることは明らかである。また、図1には、ダクト継手OAから導入された室外の空気が給気経路PH1を介してダクト継手SAから室内に導入されるとともに、ダクト継手RAから排出されることが示されている。なお、段落【0018】の「ダクト継手RAから室内に導入されるとともに、ダクト継手SAから排出される」との記載は誤記と認める。
図7に示されるファンケーシング60が、樹脂製ファンロータ23を収容し、下図に示す位置に吸込口及び吹出口が形成されたものであり、固定部61に吹出口が形成されたものであることは明らかである。


図7及び図8から、ファンケーシング60が、固定部61と着脱部62とによって形成される吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス24を具備する。
図8から、固定部61と着脱部62とは上下の二箇所で接合されていることは明らかである。
段落【0023】の「上記ファンロータ23は、両吸込型のシロッコファン羽根車で構成されており、これによって図1に示すように、軸方向両端側から空気を吸引できるようになっている。」、【図1】及び【図7】から、吸込口は、固定部61及び着脱部62の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口にベルマウス24が配設されていることは明らかである。

(イ) 上記(ア)の記載事項を総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「熱交換換気装置10であって、箱型のケーシング11を備え、
前記ケーシング11は、室外の空気を室内に供給する給気経路PH1と、室内の空気を室外に排出する排気経路PH2と、前記両経路PH1、PH2が交差する熱交換エレメント収容室Cとに区画され、ダクト継手OAから導入された室外の空気が前記給気経路PH1を介してダクト継手SAから室内に導入されるとともに、ダクト継手RAから排出される室内の空気が前記排気経路PH2を介してダクト継手EAから室外に吹き出されるようになっており、
前記ケーシング11内の熱交換エレメント収容室Cには、熱交換エレメント12が収容されており、
前記熱交換エレメント12は、第1の通気口16Aを前記給気経路PH1と連通させているとともに、第2の通気口16Bを前記排気経路PH2と連通させており、
前記ケーシング11内の前記各経路PH1、PS2に空気を流通させるために、前記ケーシング11内には、一対の送風ユニット20が配設されており、
前記送風ユニット20は、モータ側吸込形式のシロッコファンによって構成されており、モータ22および樹脂製ファンロータ23を有し、前記モータ22が、取付け板21Bにビス21Cで固定された鋼板製のベルマウス24に対して同心に配設されており前記ベルマウス24のフランジ部24Aに固定された鋼板製のモータ台25を介してビス21Dにより固定されており、
前記送風ユニット20は、分割型のファンケーシング60を採用しており、前記ファンケーシング60は、前記ケーシング11の対応する側板11C、11Dに固定される固定部61と、前記固定部61に対し、着脱可能な状態で前記熱交換エレメント12側に配設される着脱部62とを備え、
前記ファンケーシング60は前記樹脂製ファンロータ23を収容し、吸込口及び吹出口が形成され、前記固定部61に前記吹出口が形成されており、
前記ファンケーシング60は、固定部61と着脱部62とによって形成される吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス24を具備し、
前記吸込口は、前記固定部61及び前記着脱部62の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口にベルマウス24が配設され、
前記固定部61と前記着脱部62とは二箇所で接合されている、
熱交換換気装置10。」

イ 甲第6号証に記載された事項
異議申立人が令和2年11月25日に提出した意見書に添付された甲第6号証(特開2008-240612号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0033】
1 シロッコファン、2 ファンモータ、3 熱交換器、4 吸込み口、5 吹出し口、6 スクロール、7 回転軸、8 舌部、9 ベルマウス、10 室内ユニット、11 ファン本体、12 直線部、13 直線部、14 モータ支持台、15 通風口、16 リブ、17 吸込み口、18 吹出し口、20 逆流領域、22 流れ。」
「【図7】


上記図7には、シロッコファン1のケーシングの一方の側面と他方の側面とに形成された吸込み口の両方にベルマウス9が1つずつ配設されていることが示されている。

ウ 甲第7号証に記載された事項
異議申立人が令和2年11月25日に提出した意見書に添付された甲第7号証(特開2010-77899号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0008】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係るシロッコファンの縦断面図、図2は図1のシロッコファンのケーシングの斜視図、図3は図2の曲線状の板の部分を拡大した斜視図、図4は図2の曲線状の板の部分の他の例を拡大した斜視図、・・・
ケーシング2の側壁2aに設けられた吸込口3には、その縁からファン6の内周側に向かって設置されたベルマウス7が吸込口3の全周縁に沿って設けられている。」
「【図2】


上記図2には、シロッコファンのケーシング2の一方の側面と他方の側面とに形成された吸込口3の両方にベルマウス7が1つずつ配設されていることが示されている。

エ 甲第4号証
特許異議申立書に添付された甲第4号証(特開2000-283094号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0030】(実施例2)図7?図9は本発明の実施例2の多翼送風機のケーシングを示すものである。
【0031】図7?図9において、ケーシング21は羽根車9の回転軸を含む平面で分割した2個の樹脂製の分割片22,23を各分割片22,23の開口縁22a,23aで当接させることにより構成され、一方の分割片22の開口縁22aベルマウス24部の内面側に、他方の分割片23の開口縁23aベルマウス24部により覆われる突起25を設けた構造となっている。この突起25は本発明の隙間封止手段を構成するものである。
【0032】この構成により、各開口縁22a,23aベルマウス24部の倒れ込みの度合いにかかわらず、両分割片22,23の開口縁22a,23aベルマウス24部の当接面間に生じる隙間24aを突起25で塞ぎ、ケーシング21内の気流が開口縁22a,23aベルマウス24部の当接面間の隙間24aからケーシング21外に漏れるのを防ぎ、送風性能の劣化を抑え騒音が増加するのを抑制することができる。
【0033】しかも、突起25がベルマウス部24の内面側にあるため、空気取入口26から流入する気流が突起25自身により乱されることがなく、乱流騒音が増加することもない。
【0034】尚、本実施例では突起25を分割片22に設けたが分割片23に設けても同様の効果が得られる。」
「【図4】



【図7】

【図8】

【図9】



上記の記載事項を総合すると、甲第4号証には、以下の技術(以下、「甲4記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「多翼送風機のケーシング21の一方の分割片22の開口縁22aのベルマウス部24の内面側に、他方の分割片23の開口縁23aのベルマウス部24により覆われ、ベルマウス部24の内面側にある突起25を設けた構造。」

オ 甲第5号証
特許異議申立書に添付された甲第5号証(特開平11-325499号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0011】前記ファンケーシング5は図3に示すように、下方と前方を開放し、両側壁6に半円状の第1の吸込部7aと第1の付合せ部8aを有し、同第1の付合せ部8a外側に係止爪9を設け、前部に吹出口を備えた略半円状のケーシング5aと、上方を開放し、両側壁6に前記第1の吸込部7aと連続する半円状の第2の吸込部7bと、前記第1の付合せ部8a内側に当接される第2の付合せ部8bを有し、同第2の付合せ部8b外側に第1のリブ10を設け、同第1のリブ10に前記係止爪9を嵌着する係止孔11を形成した半円状のケーシングカバー5bとで構成している。
【0012】図4は本発明による前記空気調和機のファンケーシングの一実施例を示す要部拡大断面図である。図において、12は第1の凸部で、前記ケーシング5aの第1の付合せ部8aの係止爪9との隣接部先端に形成している。13は第1の凹部で、前記ケーシングカバー5bの第1のリブ10に設け、前記第1の凸部12を嵌合するようにしている。」
「【図2】

【図3】

【図4】



上記の記載事項を総合すると、甲第5号証には、以下の技術(以下、「甲5記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「第1の付合せ部8aを有する略半円形状のケーシング5aと、前記第1の付合せ部8a内側に当接される第2の付合せ部8bを有する半円状のケーシングカバー5bとで構成される、ファンケーシング5。」

カ 甲第8号証
異議申立人が令和3年4月8日に提出した意見書に添付された甲第8号証(実願昭58-177218号(実開昭60-82165号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が記載されている。

「図より明らかなように送風機より発生する騒音を低減するため、ベルマウス部(19a)は曲げRを設けると共に、吹出口穴は中心位置が偏った状態で構成されている。」(第7頁第19行?第8頁第2行)

キ 甲第9号証
異議申立人が令和3年4月8日に提出した意見書に添付された甲第9号証(実公平2-22607号公報)には、以下の事項が記載されている。

「吹出口ベルマウス部全周に曲げRを設けて送風機から発生する騒音を低減できる等、その実用的価値は非常に大である。」(第3頁第6欄第24?27行)

ク 甲第10号証
異議申立人が令和3年4月8日に提出した意見書に添付された甲第10号証(米国特許第6257012号明細書)には、以下の事項が記載されている(当審による訳文を()内に示す。)。

「Looking first at FIGS. 1 and 8, the indoor unit 10 of a split system air conditioning system of the type incorporating a structural framework according to the present invention is illustrated. Briefly, the unit 10 includes a main structural support frame 12, which includes a bottom panel 14, a back panel 16 and a top section 18. Attached to the sides of the back and top panels are structural internal side covers 20. The side covers 20 and the back panel 16 cooperate to support a horizontally extending fan support panel 22, which includes a pair of rectangular openings 24 formed therein. Mounted above the fan support panel 22 on a pair of inclined surfaces 26, defined by the internal side covers 20 is a heat exchanger coil 25.」(第2欄第60行?第3欄第5行)
(最初に図1及び図8を参照すると、本発明に係るフレーム構造を備えた分割システム空気調和システムの室内機10が示されている。簡単に説明すると、ユニット10は、底部パネル14と、背面パネル16と、頂部18とを含む主要構造支持フレーム12を含む。背面パネルおよび頂部パネルの側面に取り付けられているのは、内部サイドカバー20である。内部サイドカバー20と背面パネル16は、協働して、一対の矩形状の開口24を形成し、水平方向に延在するファン支持パネル22を支持する。内側サイドカバー20によって規定される一対の傾斜面26上のファン支持パネル22の上に取り付けられているのは、熱交換器コイル25である。)

「Mounted to the lower surface of the fan support panel 22 is a fan assembly 34, which includes an electric motor 36 adapted to drive a pair of centrifugal fans 38, which are each enclosed in a two-piece scroll housing 40. Each of scroll housings 40 defines a rectangular upper air outlet opening 39, which is in air flow communication with the rectangular openings 24 in the fan support panel 22.」(第3欄第13?19行)
(ファン支持パネル22の下面に取り付けられているのはファン組立体34であり、これは2ピース渦巻ハウジング40内に封入されている一対の遠心ファン38を駆動させる電動モータ36を含んでいる。渦巻ハウジング40の各々は、矩形状の上部空気出口開口39を規定し、これは、ファン支持パネル22の矩形開口部24と空気流が連通するように形成されている。)

「Before describing the scroll housing 40 in detail, the sequence of attachment of the components to the fan panel 22 to form the sub-assembly 48 will briefly be described. First, the two pieces of the scroll housing 40 will be referred to as the "back section 50" and the "front section 52". The back section 50 is first attached to the fan panel, as illustrated on the left-hand side of FIG. 5. Following this, an assembly which includes the motor 36 and the fans 38 is attached to the lower side of the fan support panel 22 by a bracket 54. The bracket is attached at a location between the two rectangular openings 24 to thereby support the fans 38 within the back sections 50 of the scroll and underlying the rectangular openings 24. Following this, the front sections 52 of the scrolls are attached to the back sections 50 to complete the sub-assembly 48.」(第3欄第36?50行)
(渦巻ハウジング40を詳細に説明する前に、サブアセンブリ48を形成するためのファンパネル22への構成要素の取り付けの順序を簡単に説明する。第1に、2個の渦巻ハウジング40は、「後部セクション50」と「前部セクション52」と呼ぶことにする。後部セクション50は、図5の左側に示すように、最初にファンパネルに取り付けられる。これに続いて、モータ36及び送風機38を含むアセンブリが、ブラケット54によりファン支持パネル22の下側に取り付けられる。ブラケットは2個の矩形開口部24との間の位置に取り付けられており、これによりスクロールの背面部50内で矩形開口部24の下に位置するファン38を支持する。この後、スクロールの前部セクション52は、後部セクション50に取りつけられてサブアセンブリ48を完成させる。)

「Formed in the lower front edge 60 of the wall 56 are three horizontally extending hinge pins 70. The hinge pins extend along the same axis and are supported in spaced relationship forwardly of the edge 60 by perpendicularly extending structural support sections 72. Each of the side walls 62 and 64 is provided with a semi-circular opening 74 therein which, as will seen, cooperates with a similar opening in the front section 52 to define the inlet openings to the fans 38.」(第3欄第62行?第4欄第2行)
(壁56の下側前方端部60には、3つの水平方向に延びるヒンジピン70が形成されている。ヒンジピンは、同じ軸に沿って延びており、垂直に延在する構造支持部72によりエッジ60の前方に間隔を置いた関係で支持されている。側壁62及び64の各々は、半円形の開口74を備えており、これはフロント部52の同様の開口と協働して、ファン38への入口開口部を規定する。)

「The front section 52 of the scroll housing includes a curved wall 96, which has an upper back edge 98 and a lower back edge 100. The curved wall 96 further includes planar end walls 102 on opposite sides thereof. Each of the end walls 102 has a first edge 104 which intersects with and is perpendicular to the upper back edge 98 of the curved wall and a second edge 106, which intersects with and is perpendicular to the lower back edge 100 of the curved wall. Each of the end walls 102 is provided with a semi-circular opening 108 therein which, as previously described, cooperates with the semi-circular opening 74 in the back section 50 when the scroll 40 is assembled to define the air inlet openings. As best seen in FIG. 3, the lower back edge 100 is provided with three integrally formed hooks 110, which are configured to engage the three hinge pins 70 carried by the back section 50 in a manner which will be described.」(第4欄第34?49行)
(前記スクロールハウジングの前部セクション52は、上部後縁98と下部後縁100とを有する湾曲壁96を含む。湾曲壁96は更に、対向する側部上に平坦な端壁102を有している。それぞれの端壁102は、湾曲壁の上部後縁98と交差し、それに垂直である第1の縁部104と、湾曲壁の下部後縁100と交差し、それに垂直である第2エッジ106とを有する。それぞれの端壁102は、半円形の開口108が設けられており、スクロール40の空気入口開口部を規定するように組み立てられると、上述したように、背部50に半円形の開口部74と協働する。図3に最もよく見られるように、下部後縁100は、3つの一体的に形成されたフック110を備え、後述するように、後方部50によって支持された3のヒンジピン70に係合するように構成される。)





上記図4から、渦巻ハウジング40の後部セクション50と前部セクション52は上部接合部と下部接合部の二箇所で接合され、下部接合部は、開口部74及び開口部108により構成される空気入口開口部の下部に設けられ、上部接合部は、上部空気出口開口39の近傍であり、開口部74及び開口部108により構成される空気入口開口部の上部に設けられ、下部接続部よりも上部空気出口開口39に近い位置に設けられる点が把握できる。

上記の記載事項を総合すると、甲第10号証には、以下の技術(以下、「甲10記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「空調システムの室内機10の渦巻ハウジング40であって、
後部セクション50及び前部セクション52により構成され、
後部セクション50と前部セクション52は上部接合部と下部接合部の二箇所で接合され、
下部接合部は、開口部74及び開口部108により構成される空気入口開口部の下部に設けられ、
上部接合部は、上部空気出口開口39の近傍であり、開口部74及び開口部108により構成される空気入口開口部の上部に設けられ、下部接続部よりも上部空気出口開口39に近い位置に設けられる渦巻ハウジング40。」

ケ 甲第11号証
異議申立人が令和3年4月8日に提出した意見書に添付された甲第11号証(特開2006-64220号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0024】
本発明の一実施形態に係るファンケーシングおよびその製造方法、ならびにそれを備えた床置き型空気調和機について、図1?図8を用いて説明すれば以下の通りである。
[空気調和機の全体構成]
本発明の一実施形態に係わるファンケーシングを備えた床置き形空気調和機1の外観の正面図を図1に示す。図2には、図1の床置き形空気調和機1の内部の主要部を概略的に示す正面図が示されている。」
「【0031】
また、本実施形態では、ファンケーシング本体31と底板33とドレンパン36とを成形するための成形方法としては、インジェクション成形、とくに厚肉部への流動性の向上のためにガスインジェクション成形が採用されている。
図6および図7に示されるファンケーシング本体31および裏板32によって囲まれた空間S1には、ファンローター29(図2および図6参照)が収納される。
〔ファンケーシング本体31の構成〕
ファンケーシング本体31は、吸込口31aおよび吹出口31bを有し、吸込口31aが形成された前面部34に対して反対側である、後方側が開放されている。開放されている後方側には、裏板32が取り付けられる。図7に示されるように、吹出口31bは、ファンケーシング本体31と裏板32とで形成される。」





コ 甲第12号証
異議申立人が令和3年4月8日に提出した意見書に添付された甲第12号証(特開2003-56863号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0105】以上のように組み立てられた除湿機100を作動させると、まず、筐体110の空気吸込部121より除湿室140内に吸い込まれた空気は、蒸発器2によって冷やされ、その結露水が蒸発器2に付着する。付着した結露水は、ドレンパン6を介してタンク130内に滴下される。
【0106】蒸発器2によって除湿された空気は、次に凝縮器3によって暖められ乾燥される。凝縮器3を通った空気は、仕切板200の連通孔210を通って、ファンケーシング300内に収納された多翼ファン8の内径側に導かれ、遠心力によって外径側に吹き出される。」
「【0114】同様にして、図12は吹出口321を上方向Cに設定した状態であり、この上方向吹出Cは、例えば上方に吊り下げられた洗濯物や、室内天井に向けて除湿空気を吹き出すのに適している。」





サ 引用例1
当審において追加した引用例1(特開2013-19355号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0038】
図4、図5および図6に示すように、サイレンサケーシング8を構成している各パネル10a、10bは、上部側サイレンサケーシング8aと下部側サイレンサケーシング8bとを締結した際に、環形状となるように形成されており、水平方向において上下方向に2分割可能とされている。また、各パネル10a、10bの外周には、各サイレンサケーシング8a、8bを釣り上げる際に用いられる釣り上げ用ピース22が複数(例えば、上部側サイレンサケーシング8aの各パネル10a、10bに各3個所、下部側サイレンサケーシング8bの各パネル10a、10bに各3個所)設けられている。
【0039】
上部側サイレンサケーシング8aおよび下部側サイレンサケーシング8bの継手面(分割面)には、各パネル10a、10bの外面から外方(ハイブリッド過給機1の軸方向)に向かって水平方向に延在しているフランジ14、15が各々設けられている。上部側サイレンサケーシング8aに設けられているフランジ14を構成している水平部14a(図4および図5参照)と、下部側サイレンサケーシング8bに設けられているフランジ15との間には、上部側サイレンサケーシング8aと下部側サイレンサケーシング8bとを図示しないボルトとナットによって締結した際にゴムシート(制振材)等が挟持される。
【0040】
上部側サイレンサケーシング8aのフランジ14は、図4および図5に示すように、各パネル10a、10bの外面から外方に向かって水平方向に延在している水平部14aと、その延在端において鉛直方向下方に向かって延在している鉛直部14bとによって形成されている。すなわち、フランジ14は、その断面形状がL字形状となるように形成されている。このようにフランジ14をL字形状にすることによって、ハイブリッド過給機1(図1参照)が駆動した際であっても上部側サイレンサケーシング8aと下部側サイレンサケーシング8bとの継手面の間から漏洩した空気の経路をL字状に折り曲げることによって、漏洩する空気音を低減することができる。」
「【図4】

【図5】



上記の記載事項を総合すると、引用例1には、以下の技術(以下、「引用例1記載技術」という。)が記載されていると認められる。
「パネル10a、10bの外面から外方に向かって水平方向に延在している水平部14aと、その延在端において鉛直方向下方に向かって延在している鉛直部14bとによって形成されているL字形状のフランジ14によって、上部側サイレンサケーシング8aと下部側サイレンサケーシング8bとが締結されるサイレンサケーシング8。」

(3) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア) 甲1発明の「シロッコファン」は、本件発明1の「ファン」に相当する。甲1発明において、ファンケーシング60は、シロッコファンの樹脂製ファンロータ23を収容しており、吸込口及び吹出口が形成されている。したがって、甲1発明の「樹脂製ファンロータ23を収容し、吸込口及び吹出口が形成され」た「ファンケーシング60」は、本件発明1の「前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシング」に相当する。

(イ) 甲1発明において、熱交換エレメント12は、給気経路PH1と排気経路PH2とが交差する熱交換エレメント収容室Cに収容されており、前記各経路PH1、PH2に空気を流通させるために、シロッコファンによって構成される送風ユニット20が配設されている。したがって、甲1発明の「両経路PH1、PH2が交差する熱交換エレメント収容室C」に「収容され」た「熱交換エレメント12」は、本件発明1の「前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器」に相当する。

(ウ) 甲1発明において、ケーシング11は、「ダクト継手OAから導入された室外の空気が前記給気経路PH1を介してダクト継手SAから室内に導入されるとともに、ダクト継手RAから排出される室内の空気が前記排気吹出経路PH2を介してダクト継手EAから室外に吹き出される」ものであるから、空気の吸出部及び吸込部が形成されることは明らかである。また、甲1発明の「ケーシング11内には、一対の送風ユニット20が配設されており、前記送風ユニット20は、モータ側吸込形式のシロッコファンによって構成され」、「ケーシング11内の熱交換エレメント収容室Cには、熱交換エレメント12が収容されて」いる点は、本件発明1の「前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体」に相当する。したがって、甲1発明の上記構成は、本件発明1の「前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体」に相当する。

(エ) 甲1発明における「前記ケーシング11の対応する側板11C、11Dに固定される固定部61」及び「前記固定部61に対し、着脱可能な状態で前記熱交換エレメント12側に配設される着脱部62」は、それぞれ、本件発明1の「前記筐体に固定されるケーシング本体部」及び「前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部」に相当する。

(オ) 甲1発明において、「前記ファンケーシング60は、固定部61と着脱部62とによって形成される吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス24を具備」する点は、本件発明1の「前記ファンケーシングは、」「前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備」する点に相当する。

(カ) 甲1発明において、「前記吸込口は、前記固定部61及び前記着脱部62の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口にベルマウス24が配設され」る点は、本件発明1の「前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に」「前記ベルマウス部が配設され」る点に相当する。

(キ) 甲1発明の「熱交換換気装置10」は、本件発明1の「空気調和装置」に相当する。

(ク) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は
「ファンと、
前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、
前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、
前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、
を有し、
前記ファンケーシングは、
前記筐体に固定されるケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、
前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、
前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に前記ベルマウス部が配設された、空気調和装置。」
である点で一致し、以下に示す点で相違する。

[相違点1]
本件発明1は、「ベルマウス部は2つであり、」「前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され」るのに対し、甲1発明は、ベルマウス24を2つ備えるか不明であり、他方の側面に形成された吸込口に他方のベルマウスが配設されるか不明な点。

[相違点2]
本件発明1は、「前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものである」のに対し、甲1発明は、ベルマウス24が、固定部61と着脱部62との接合部を塞ぐものであるか不明である点。

イ 相違点についての判断
相違点1について検討する。
ケーシングの一方の側面と他方の側面とに吸込口が形成されるファンにおいて、両方の吸込口にベルマウスを1つずつ配設することは、甲第6号証及び甲第7号証に示されているように、本件特許の出願日より前の周知技術である(以下、単に「周知技術1」という。)。
そして、甲1発明と周知技術1とは、共にケーシングの一方の側面と他方の側面とに吸込口が形成されるファンである点で共通する。
よって、甲1発明に周知技術1を適用し、一方の側面と他方の側面にベルマウス部を配設し、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易である。

特許権者は、令和3年3月8日提出の意見書において、「甲6号証及び甲7号証に記載のベルマウスは分割ケーシング用ではなく、甲6発明及び甲7発明においてベルマウスを騒音低減の目的で使用する技術的思想は無い」旨主張している(意見書5頁6?21行)。
しかしながら、騒音低減の目的でベルマウスを設けることは技術常識である(甲第8号証の第7頁第19行?第8頁第2行、甲第9号証の第3頁第6欄第24?27行)。
そうすると、甲1発明において、一方の側面に形成された吸込口に一方のベルマウス部が配設されている理由は、甲第1号証に特段の記載がなくとも当業者であれば騒音低減の目的であると認識でき、そのうえで、他方の側面に形成された吸込口も同様に騒音低減の目的で、周知技術1に示されたベルマウス部を設けることは、当業者にとって格別の困難性はない。
よって、特許権者の主張は採用できない。

相違点2について検討する。
甲第1号証の図8には、固定部61と着脱部62とを接合する部分と、ベルマウス24の一部とが重なるように構成された点が示されており、ベルマウス24が固定部61と着脱部62との接合面の少なくとも一部を塞いでいるといえる。
よって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。
仮に、相違点であったとしても、ベルマウス24、固定部61と着脱部62の接合部、取付け板2Bなどの大きさを適宜設定し、ベルマウス24が固定部61と着脱部62の接合面の少なくとも一部を塞ぐように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

したがって、本件発明1は、甲1発明及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 本件発明2について
甲1発明において「前記固定部61に前記吹出口が形成されて」いる点は、本件発明2の「前記ケーシング本体部に前記吹出口が形成された」点に一致する。したがって、本件発明2と甲1発明とは、上記相違点1において相違し、その余において一致する。
相違点1、2についての判断は上記(3)イに記載したとおりであるから、本件発明2は甲1発明及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5) 本件発明5について
ア 本件発明5と甲1発明とを対比する。
(ア) 甲1発明の「シロッコファン」は、本件発明5の「ファン」に相当する。甲1発明において、ファンケーシング60は、シロッコファンの樹脂製ファンロータ23を収容しており、吸込口及び吹出口が形成されている。したがって、甲1発明の「樹脂製ファンロータ23を収容し、吸込口及び吹出口が形成され」た「ファンケーシング60」は、本件発明5の「前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシング」に相当する。

(イ) 甲1発明において、熱交換エレメント12は、給気経路PH1と排気経路PH2とが交差する熱交換エレメント収容室Cに収容されており、前記各経路PH1、PH2に空気を流通させるために、シロッコファンによって構成される送風ユニット20が配設されている。したがって、甲1発明の「両経路PH1、PH2が交差する熱交換エレメント収容室C」に「収容され」た「熱交換エレメント12」は、本件発明5の「前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器」に相当する。

(ウ) 甲1発明において、ケーシング11は、「ダクト継手OAから導入された室外の空気が前記給気経路PH1を介してダクト継手SAから室内に導入されるとともに、ダクト継手RAから排出される室内の空気が前記排気吹出経路PH2を介してダクト継手EAから室外に吹き出される」ものであるから、空気の吸出部及び吸込部が形成されることは明らかである。また、甲1発明の「ケーシング11内には、一対の送風ユニット20が配設されており、前記送風ユニット20は、モータ側吸込形式のシロッコファンによって構成され」、「ケーシング11内の熱交換エレメント収容室Cには、熱交換エレメント12が収容されて」いる点は、本件発明5の「前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体」に相当する。したがって、甲1発明の上記構成は、本件発明5の「前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体」に相当する。

(エ) 甲1発明における「前記ケーシング11の対応する側板11C、11Dに固定される固定部61」及び「前記固定部61に対し、着脱可能な状態で前記熱交換エレメント12側に配設される着脱部62」は、それぞれ、本件発明5の「前記筐体に固定されるケーシング本体部」及び「前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部」に相当する。

(オ) 甲1発明において、「前記ファンケーシング60は、固定部61と着脱部62とによって形成される吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス24を具備」する点は、本件発明5の「前記ファンケーシングは、」「前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備」する点に相当する。

(カ) 甲1発明において「前記固定部61に前記吹出口が形成されて」いる点と、本件発明5の「前記ケーシング本体部の上部に前記吹出口が形成され」ている点とは、「前記ケーシング本体部に前記吹出口が形成され」ている点で共通する。

(キ) 甲1発明の「前記固定部61と前記着脱部62とは二箇所で接合されている」点は、本件発明5の「前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部とは、二箇所で接合されて」いる点に相当する。

(ク) 甲1発明において、「前記吸込口は、前記固定部61及び前記着脱部62の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口にベルマウス24が配設され」る点は、本件発明5の「前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に」「前記ベルマウス部が配設され」る点に相当する。

(ケ) 甲1発明の「熱交換換気装置10」は、本件発明5の「空気調和装置」に相当する。

(コ) 本件発明5と甲1発明とを対比すると、両者は、
「ファンと、
前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、
前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、
前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、
を有し、
前記ファンケーシングは、
前記筐体に固定されるケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、
前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、
前記ケーシング本体部に前記吹出口が形成され、
前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部とは、第一接合部及び第二接合部の二箇所で接合されており、
前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に前記ベルマウス部が配設された、空気調和装置。」
である点で一致し、以下に示す相違点1?5で相違する。

[相違点1]
本件発明5は、「ベルマウス部は2つであり、」「前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され」るのに対し、甲1発明は、ベルマウス24を2つ備えるか不明であり、他方の側面に形成された吸込口に他方のベルマウスが配設されるか不明な点。

[相違点2]
本件発明5は、「前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものである」のに対し、甲1発明は、ベルマウス24が、固定部61と着脱部62との接合部を塞ぐものであるか不明である点。

[相違点3]
本件発明5は、「前記ベルマウス部の外径は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合部のうちの少なくとも一方を基準とした外径以上の長さである」のに対し、甲1発明は、そのような構成を備えるのか不明である点。

[相違点4]
本件発明5では、「前記ケーシング本体部の上部に前記吹出口が形成され」るのに対し、甲1発明では、「固定部61の側部に吹き出し口が形成される」点。

[相違点5]
本件発明5では、「接合部のうち、第二接合部は、吸込口の下部に設けられ、第一接合部は前記吹出口の近傍であり、前記吸込口の上部に設けられ、前記第二接合部よりも前記吹出口に近い位置に設けられる」のに対し、甲1発明は、そのように構成されていない点。

イ 相違点についての判断
相違点1、2については、上記(3)イで検討した相違点1、2と同様のものであるから、甲1発明及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
相違点3について検討する。
甲1発明において、ベルマウス24の外径をどの程度とするかは当業者が適宜決定し得ることである。
そして、甲第1号証の図8には、固定部61と着脱部62との接合部と、ベルマウス24の一部とが重なるように構成された点が示されていることを踏まえると、ベルマウス24の外径を、固定部61と着脱部62との接合部のうち少なくとも一方を基準とした外径以上の長さとすることに格別の困難性はない。
相違点4について検討する。
空調機等のケーシングの上部に吹出口を形成することは、例えば、甲第10号証、甲第11号証及び甲第12号証に示されているように、本件特許の出願日より前の周知技術である(以下、単に「周知技術2」という。)。
そして、甲1発明において、空気調和機の構造や設置場所等に基づき、上記周知技術2を参照して吹出口を上部に設けることに格別の困難性は無い。
相違点5について検討する。
甲1発明において、周知技術2を参照して吹出口を上部に設ければ、固定部61と着脱部62との上側の接合部は下側の接合部よりも吹出口に近い位置に配置されることになることは明らかである。
さらに、空調機等のケーシングの上部に吹出口を形成するものにおいて、ケーシング本体部とケーシング分割部が第一接合部及び第二接合部の二箇所で接合され、第二接合部は、吸込口の下部に設けられ、第一接合部は前記吹出口の近傍であり、前記吸込口の上部に設けられ、前記第二接合部よりも前記吹出口に近い位置に設けられるように構成することは、上記周知技術2の例証として示した甲第10号証にも記載されており(例えば、甲10号証記載技術)、そのような構成はよく知られているものである。
よって、甲1発明において、上記相違点5に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
したがって、本件発明5は、甲1発明及び周知技術1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6) 本件発明6について
ア 甲1発明との対比
本件発明6と甲1発明とを対比する。
本件発明6と甲1発明とは、上記相違点1乃至5に加えて、以下の相違点6において相違し、その余において一致する。
[相違点6]
本件発明6は、「前記ケーシング分割部は、前記ケーシング本体部との接合部に、前記ケーシング本体部に向かって延び、前記ケーシング本体部の内面に接する差込部を有する」のに対し、甲1発明はそのような構成を備えていない点。

イ 相違点についての判断
相違点1乃至5についての判断は、上記(3)及び(5)に記載したとおりである。
相違点6について検討する。
甲1発明のファンケーシング60と、甲4記載技術のケーシング21とは、ファンケーシングであるという点において一致するから、甲1発明のファンケーシング60に甲4記載技術を適用して、相違点6に係る本件発明6の構成とすることは、当業者にとって容易である。また、甲1発明のファンケーシング60と、甲5記載技術のケーシング5とは、ファンケーシングであるという点において一致するから、甲1発明のファンケーシング60に甲5記載技術を適用して、相違点6に係る本件発明6の構成とすることは、当業者にとって容易である。
したがって、本件発明6は、甲1発明、甲4記載技術または甲5記載技術及び周知技術1、2、に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7) 本件発明7について
ア 甲1発明との対比
本件発明7と甲1発明とを対比する。
本件発明7と甲1発明とは、上記相違点1乃至7に加えて、以下の相違点5において相違し、その余において一致する。
[相違点7]
本件発明7は、「前記ケーシング分割部は、上端部にフランジ状の折り曲げ部を有すると共に、前記折り曲げ部の上端部から前記ケーシング本体部に向かって延びる係止部を有する」のに対し、甲1発明はそのような構成を備えていない点。

イ 相違点についての判断
相違点1ないし6についての判断は、上記(3)、(5)及び(6)に記載したとおりである。
相違点7について検討する。
甲1発明において、固定部61と着脱部62とを固定する具体的な構造は当業者が適宜選択し得るものであり、引用例1記載技術を採用して、相違点7に係る本件発明7の構成とすることは当業者にとって容易である。
したがって、本件発明7は、甲1発明、甲4記載技術または甲5記載技術、引用例1記載技術、及び周知技術1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件発明1、2は甲1発明及び周知技術1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
本件発明5は、甲1発明及び周知技術1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
本件発明6は、甲1発明、甲4記載技術または甲5記載技術、及び周知技術1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
本件発明7は、甲1発明、甲4記載技術または甲5記載技術、引用例1記載技術、及び周知技術1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1、2、5?7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
空気調和装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンを収納するファンケーシングを備えた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱交換器において熱交換された空気を被調和室内に送風するファンを備えた空気調和装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の空気調和装置は、ファンモータの回転軸に連結されたファンの回転により、筐体の空気吸込口からファンケーシング内に空気を吸い込み、ファンケーシングから吹き出した空気を熱交換器へ送るように構成されている。そして、熱交換器へ送られた空気が、熱源機から熱交換器に流入する熱媒体と熱交換した後、筐体の空気吹出口から吹き出すことによって室内温度が調整される。
【0003】
しかしながら、特許文献1の空気調和装置は、ファンモータとファンとが直接連結され、ファンケーシングの吸込口にファンモータの回転軸を通した形となっている。このため、ファンモータのみ、或いはファンのみをメンテナンスしようとしても、ファンモータの回転軸がファンケーシングと干渉することから、ファンケーシングごと取り外す大掛かりなメンテナンスが必要となる。
【0004】
こうした課題から、メンテナンス時のファンモータ及びファンの取り外しを容易にするため、ファンケーシングを二つの分割体に分割できるようにした空気調和装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。特許文献2の空気調和装置において、ファンケーシングを構成する二つの分割体の取り付けは、爪状の係止部によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4-4614号公報
【特許文献2】特開2013-249766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のファンケーシングは、空気の吸込み部の曲面部分であるベルマウス部も含めて二つに分割されている。このため、二つの分割体の接合面にズレが生じると、そのズレがたとえわずかであっても、ずれた端部に生じたエッジ部は、風切り音の発生原因となる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、メンテナンス性が高く、かつファンの送風時における風切り音を抑制する空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気調和装置は、ファンと、前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、を有し、前記ファンケーシングは、前記筐体に固定されるケーシング本体部と、前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され、前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ファンを収容するファンケーシングが、筐体に固定されるケーシング本体部と、ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、一体成形品であるベルマウス部と、に分割可能であり、ベルマウス部は、ケーシング本体部及びケーシング分割部によって形成される吸込口に配設される。このため、メンテナンス性の向上を図ると共に、ファンの送風時における風切り音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る空気調和装置の室内機を前面からみた外観斜視図である。
【図2】図1の空気調和装置の室内機を背面からみた外観斜視図である。
【図3】図1の空気調和装置の室内機を前面からみた内部斜視図である。
【図4】図1の空気調和装置の室内機に備わるファンケーシングの外観斜視図である。
【図5】図4のファンケーシングの分解構造斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る空気調和装置の室内機を前面からみた外観斜視図である。図2は、図1の空気調和装置の室内機を背面からみた外観斜視図である。図3は、図1の空気調和装置の室内機を前面からみた内部斜視図である。図1?図3に基づき、本実施の形態に係る空気調和装置の室内機の構成について説明する。なお、図1?図3では、x軸正方向を前方向、y軸正方向を右方向、z軸正方向を上方向と定義する。
【0012】
本実施の形態における空気調和装置の室内機10は、被調和室に配設されており、屋外などに設置された熱源機(図示せず)に、熱媒体を循環させる配管を介して接続されている。室内機10は、熱源機にて排熱又は吸熱された熱媒体を循環させ、被調和室内の空気調和を行うものである。
【0013】
図1?図3に示すように、室内機10は、筐体11を有している。筐体11は、上部に空気(被調和空気)を吹き出す吹出部12を有し、前面部に空気を吸い込む前側吸込部13を有し、背面部に空気を吸い込む後側吸込部14を有している。また、筐体11は、右側面パネル24及び左側面パネル25を有している。右側面パネル24と左側面パネル25とは、筐体11において、左右対称に配設されている。
【0014】
さらに、室内機10は、筐体11の内部に、空気を送風するファン7と、ファン7を駆動するモータ8と、ファン7を収容するファンケーシング1と、熱源機から流入する熱媒体と空気とを熱交換させる熱交換器30と、を有している。
【0015】
室内機10は、例えば、被調和室内の床面に設置され、吹出部12の周囲に配置された吹出フランジ15が、被調和室内の天井に配置された吹出ダクトに接続されている。室内機10は、ファン7を駆動させることで、被調和室内の空気を前側吸込部13及び後側吸込部14から吸い込み、熱交換器30を通し、熱交換器30の内部の熱媒体と空気とを熱交換させ、吹出部12及び吹出ダクトを経て、再び被調和室内に供給している。つまり、室内機10は、被調和室内の空気を循環させることにより、空気調和を行うものである。
【0016】
ファン7は、例えば、遠心式のシロッコファンからなり、複数の羽根7aが円筒形状に配置されている。すなわち、ファン7は、ファンケーシング1の側面方向から内部に空気を吸込み、吸い込んだ空気を、遠心力の作用で外側に放出するものである。本実施の形態では、ファン7として、両吸込形のシロッコファンを採用している。
【0017】
ファン7の周囲には、ファンケーシング1が設けられている。ファンケーシング1は、筐体11に備わる天パネル19と、前側フレーム20と、後側フレーム21とに固定されている。ファンケーシング1は、前側フレーム20及び後側フレーム21に固定する際に用いる固定部材1fを有している。
【0018】
モータ8は、モータ取付板22に取り付けられており、モータ取付板22は、モータ台23に取り付けられている。モータ取付板22の前側は、モータ台23にネジによって取り付けられており、モータ取付板22の後側は、ピン(不図示)によって係止されている。このため、前側のネジを外し、後側のピンを外せる程度にモータ取付板22を動かせば、モータ8をモータ取付板22ごと取り外すことができる。
【0019】
熱交換器30は、例えばフィンアンドチューブ型熱交換器からなり、筐体11内に斜めに配置されている。かかる配置は、有効面積を確保すると共に室内機10の外形寸法を小さくするためのものであるが、同時に空気が必ず熱交換器30を通過するように誘導する仕切板の役割も兼ねている。
【0020】
また、熱交換器30の下部にはドレン受け16が設けられている。ドレン受け16は、結露水を効率よく排出させるため、右斜め前方向に傾斜しており、端部に設けられた開口がドレン導水部17の上端部に接続されている。
【0021】
ドレン導水部17は管形状となっている。これは、結露水が送風によって巻き上げられ、供給する空気に混在しないようにするためである。ドレン導水部17の下端部は、ドレンパン18上に設けられている。ドレンパン18は、右方向に傾斜しており、端部にはドレン口18aが設けられている。
【0022】
すなわち、熱交換器30における空気との熱交換によって生じた結露水は、ドレン受け16を通り、ドレン導水部17及びドレンパン18を経て、ドレン口18aより排出される。
【0023】
ここで、本実施の形態におけるドレンパン18は、塗装により耐食性を向上させた鋼板製である。もっとも、ドレンパン18は、例えば発泡スチロール等の樹脂材を用いて形成されていてもよい。ただし、該樹脂材を用いて形成したドレンパン18は、結露水を受ける面を、防カビ処理及び防水処理が施された樹脂シート等で保護する必要がある。
【0024】
なお、ドレン受け16の傾斜方向は、図3の例に限らず、ドレン導水部17の位置関係に応じて変更してもよい。例えば、筐体11内の前側中央にドレン導水部17を配置する場合は、当該ドレン導水部17の上端部に繋がるようにドレン受け16に傾斜をつけるようにするとよい。
【0025】
また、ドレンパン18の傾斜方向は、図3の例に限らず、ドレン口18aの位置関係に応じて変更してもよい。例えば、ドレン口18aが左右の端部どちらにも設けられたドレンパン18を採用した場合は、施工時のドレン配管の方向によって使用するドレン口18aを選択し、選択したドレン口18aに合わせてドレンパン18の傾斜を変更するとよい。このように、ドレンパン18の傾斜を可変させる構造を採れば、現地施工性が向上する。
【0026】
図4は、空気調和装置の室内機10に備わるファンケーシング1の外観斜視図である。図5は、ファンケーシング1の分解構造斜視図である。図4及び図5を参照して、ファンケーシング1の構造をより詳細に説明する。なお、図4及び図5においても、x軸正方向、y軸正方向、及びz軸正方向を、図1?図3と同様に定義する。
【0027】
ファンケーシング1は、筐体11に固定されるケーシング本体部1aと、ケーシング本体部1aに固定されるケーシング分割部1bと、を有している。すなわち、ファンケーシング1は、前述の通り、筐体11に備えた天パネル19、前側フレーム20、及び後側フレーム21に固定されているが、これらに固定されているのはケーシング本体部1aのみである。つまり、ファンケーシング1は、ケーシング本体部1aが筐体11に固定され、ケーシング分割部1bは、ケーシング本体部1aにネジ止めされることにより、筐体11に間接的に固定されている。
【0028】
ファンケーシング1には、空気を給気する吸込口4と、吸込口4から給気された空気を吹き出す吹出口2とが形成されている。より具体的に、ケーシング本体部1aの上部には、空気を吹き出す吹出口2が設けられている。また、図4に示すように、ファンケーシング1は、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとによって吸込口4を形成するものである。
【0029】
さらに、ファンケーシング1は、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bによって形成される吸込口4に配設される二つのベルマウス部6を有している。より具体的に、吸込口4は、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bの一方の側面及び他方の側面にそれぞれ形成されており、二つのベルマウス部6は、それぞれ、一方の側面と他方の側面とに配設されている。
【0030】
すなわち、ファンケーシング1は、吹出口2の近傍である第一接合部3と、吹出口2を上側とした場合の吸込口4の下部にあたる第二接合部5との二箇所において、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとに分割できる構造となっている。そして、送風時において、空気は、ベルマウス部6及びファンケーシング1の側面の吸込口4を経て、ファン7の内部に吸い込まれ、ファンケーシング1の内面を通り、吹出口2より吹き出される。
【0031】
図5に示すように、ケーシング本体部1aの第一接合部3にあたる部分には、フランジ状の第一本体折り曲げ部3aが設けられている。ケーシング分割部1bの第一接合部3にあたる部分には、フランジ状の第一分割折り曲げ部3bが設けられている。第一本体折り曲げ部3a及び第一分割折り曲げ部3bは、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bの外周から突起するように形成され、上方向である吹出口2の軸方向に沿って延びている。
【0032】
ケーシング本体部1aの第二接合部5にあたる部分には、フランジ状の第二本体折り曲げ部5aが設けられている。ケーシング分割部1bの第二接合部5にあたる部分には、フランジ状の第二分割折り曲げ部5bが設けられている。第二本体折り曲げ部5a及び第二分割折り曲げ部5bは、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bの外周から突起するように形成されている。また、ケーシング本体部1aの下方には、固定部材1fが取り付けられている、第二本体折り曲げ部5a及び第二分割折り曲げ部5bは、前方に傾斜した斜め下方向に沿って延びている。
【0033】
また、第一本体折り曲げ部3a及び第一分割折り曲げ部3bは、それぞれ、複数のネジ穴3hを有しており、第二本体折り曲げ部5a及び第二分割折り曲げ部5bは、それぞれ、複数のネジ穴5hを有している。すなわち、ファンケーシング1は、図4に示すように、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとをネジ3s及びネジ5sによって固定できる構造となっている。
【0034】
ベルマウス部6は、図5に示すように、複数のネジ穴6hを有しており、図4に示すように、ネジ6sによって、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bに固定されるものである。ベルマウス部6には、中央に開口部6aが設けられている。また、ベルマウス部6は、吸込口4に嵌め込まれる内径部6bと、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとの接合部である第一接合部3及び第二接合部5の少なくとも一部を塞ぐ平面部6cと、により構成されている。
【0035】
ベルマウス部6は、開口部6aに面する縁部が、ファンケーシング1の内部に向かって円弧状の断面となるように形成されている。すなわち、内径部6bの開口部6a側の面は、曲面であり、開口部6aの軸方向を中心とした回転面における断面の形状が円弧状となっている。つまり、内径部6bの開口部6a側の曲面は、例えばxy平面又はyz平面で切断した断面が円弧状となっている。また、内径部6b及び平面部6cは、xz平面で切断した断面の形状が円環状となっている。つまり、平面部6cは、側面視における形状が円環状となっている。そして、ベルマウス部6は、一体成形されており、従来のように分割して形成されたものではない。したがって、ベルマウス部6は、開口部6aに面する部分にエッジなどの突起した部分が存在しないため、風切り音の発生を防ぐことができる。
【0036】
本実施の形態では、ベルマウス部6の内径部6bが吸込口4に嵌り込むように構成されており、ベルマウス部6の開口径6dは、吸込口4の径よりも小さくなっている。また、送風効率を高めるために、ベルマウス部6の開口径6dは、ファン7の外径よりも小さくなっている。
【0037】
さらに、吸込口4の径は、ファン7の外径よりも大きくなっている。このため、例えば、左側面パネル25及び右側面パネル24のうちの少なくとも一方を取り外すことにより、ケーシング分割部1bを取り外すことなく、ファン7を取り外すことができる。
【0038】
ここで、本実施の形態におけるファンケーシング1は、第一接合部3における接合面の上下方向の長さが、第二接合部5における接合面の上下方向の長さよりも短くなっている。よって、ベルマウス部6の中心に対応する吸込口4の中心を「O」とした場合、中心Oと第一接合部3における外周の面との距離である第一仮想半径4aは、中心Oと第二接合部5における外周の面との距離である第二仮想半径4bよりも短くなっている。なお、第一接合部3における接合面の上下方向の長さ及び第一仮想半径4aには、第一本体折り曲げ部3a及び第一分割折り曲げ部3bの上下方向の長さは含まない。また、第二接合部5における接合面の上下方向の長さ及び第二仮想半径4bには、第二本体折り曲げ部5a及び第二分割折り曲げ部5bの上下方向の長さは含まない。
【0039】
そして、ベルマウス部6は、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとの接合面の少なくとも一部を塞ぐものである。より具体的に、本実施の形態では、図4に示すように、ベルマウス部6の外径6eが、第一仮想半径4aの二倍以上であり、かつ第二仮想半径4bの二倍より短くなっている。
【0040】
ここで、第一仮想半径4aの二倍の長さは、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとの一方の接合部である第一接合部3を基準とした外径に相当し、第二仮想半径4bの二倍の長さは、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとの他方の接合部である第二接合部5を基準とした外径に相当する。
【0041】
このように、ファンケーシング1では、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとの接合面の少なくとも一部が、ベルマウス部6によって塞がれているため、ファン7の送風時における風漏れの発生を抑制することができる。
【0042】
もっとも、ベルマウス部6の平面部6cの側面視における形状は、円環状に限らず、例えば、ベルマウス部6の第二接合部5側の仮想半径が、ベルマウス部6の第一接合部3側の仮想半径よりも長くなるような任意の形状とし、第一接合部3及び第二接合部5を全て覆うようにしてもよい。
【0043】
ところで、第一本体折り曲げ部3aと第一分割折り曲げ部3bとは、ネジ3sの締結力によって固定されており、第二本体折り曲げ部5aと第二分割折り曲げ部5bとも、ネジ5sの締結力によって固定されている。また、本実施の形態では、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとの接合面のうち、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bの側面で、かつ第一接合部3にあたる部分には、あらかじめ振動による接触のないレベルで隙間を設けている。これは、ケーシング本体部1aの端面とケーシング分割部1bの端面とは、製作公差によって均一に接触しないことから、第一接合部3に上記隙間を設けなければ、送風時の振動による連続的な接触音が発生してしまうためである。すなわち、ファンケーシング1は、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとの接合面に、ケーシング本体部1aの端面とケーシング分割部1bの端面とが送風時においても接触しない程度の僅かな隙間が設けられているため、連続的な接触音である異音の発生を抑えることができる。
【0044】
しかしながら、送風時には、第一接合部3に設けられた隙間から風が漏れてしまう。この点、ファンケーシング1では、一体成形品であるベルマウス部6が、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bによって形成される側面に配設され、第一接合部3に設けられた隙間は、ベルマウス部6の平面部6cが塞ぐように構成されている。このため、ファンケーシング1によれば、送風時の風漏れを防ぐことができる。すなわち、ベルマウス部6は、ファンケーシング1の風漏れ防止機能を有している。
【0045】
また、第一分割折り曲げ部3bの端部には、第一本体折り曲げ部3aの方向に向かって延びる係止部3cが設けられている。よって、ケーシング分割部1bを取り付ける際又は取り外す際に、係止部3cがケーシング本体部1aに係止されるため、ケーシング分割部1bの脱落を抑制することができる。すなわち、ファンケーシング1によれば、メンテナンス時の安全性を高めると共に、ケーシング分割部1bの着脱時における作業性を向上することができる。
【0046】
さらに、ケーシング分割部1bは、側面のうち、第二接合部5にあたる部分に、ケーシング本体部1aの内面に重なるように形成された差込部5cを有している。すなわち、ケーシング分割部1bは、ケーシング本体部1aとの接合部である第二接合部5にあたる部分に、ケーシング本体部1aに向かって延び、ケーシング本体部1aの内面に接する差込部5cを有している。このため、ケーシング本体部1aにケーシング分割部1bを取り付けたとき、ベルマウス部6の取付面を面一にすることができると共に、送風時における風漏れを抑制することができる。
【0047】
より具体的に、ケーシング分割部1bの下方における接合面と差込部5cとの境界部分には、側面側つまりベルマウス部6側に段差が形成されており、差込部5cは、ケーシング分割部1bの下方における接合面から突出するように設けられている。したがって、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとを接合させると、ケーシング本体部1aの下方における接合部が、上記段差に嵌り、ケーシング分割部1bの下方における接合面及び差込部5cの側面側の面に当接する。これにより、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bの第二接合部5における側面が面一の状態となる。
【0048】
ところで、ケーシング本体部1aに差込部5cを設けるようにしてもよいが、ファンケーシング1内における空気の流れ方向を考慮すると、ケーシング分割部1b側に設ける方がより好ましい。なぜなら、ファンケーシング1内における空気は、ケーシング本体部1aからケーシング分割部1bに向かって流れるため、ケーシング本体部1aに差込部5cを設けた場合は、当該差込部5cの先端面が抵抗となり、騒音の発生原因となるためである。すなわち、ファンケーシング1は、差込部5cをケーシング分割部1b側に有するため、差込部5cに起因した騒音の発生を回避することができる。
【0049】
なお、上述の通り、ベルマウス部6の外径6eは、第二仮想半径4bの二倍よりも短くなっているが、本実施の形態では、ケーシング分割部1bに差込部5cが設けられている。よって、ファンケーシング1によれば、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとの接合面のうち、ベルマウス部6によって覆われていない部分からの風漏れを防ぐことができるため、送風時における風切り音の発生を抑えることができる。
【0050】
以上のように、ファンケーシング1において、吸込口4には、ベルマウス部6が、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bとは別部品として設けられている。すなわちベルマウス部6は、その縁が、開口部6aの軸方向及びファンケーシング1の内側に向かって円弧状の断面となるように一体成形されたものである。そして、ベルマウス部6は、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bから分離可能に構成されている。したがって、ファンケーシング1には、従来の分割構造にみられる接合面のずれによって生じるエッジ部がないため、送風による風切り音の発生を抑えることができる。
【0051】
また、ファンケーシング1は、第一接合部3と第二接合部5とにおいて、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとに分離可能となっている。そして、ケーシング本体部1aのみが、前側フレーム20及び後側フレーム21に固定される構造となっている。さらに、モータ取付板22は、モータ台23に対して、前側はネジ止めにより固定でき、後ろ側はピンによる係止で固定できる構造となっている。このため、ファン7のメンテナンス時には、ベルマウス部6のネジ6sを取り外した上で、第一本体折り曲げ部3aと第一分割折り曲げ部3bとを固定しているネジ3sと、第二本体折り曲げ部5aと第二分割折り曲げ部5bとを固定しているネジ5sとを取り外せば、ケーシング分割部1bのみを取り外すことができる。また、ファン7及びモータ8のメンテナンス時においては、ネジ3s及びネジ5sと共に、モータ台23にモータ取付板22を固定する前側のネジ及び後側のピンを取り外すだけで、ファンケーシング1の全てを取り外すことなく、ファン7及びモータ8を取り外すことができる。すなわち、ファンケーシング1によれば、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0052】
さらに、筐体11は、ケーシング分割部1bを保持する部材を有していないため、ケーシング分割部1bを支えるための構成部材を有していなければ、ケーシング分割部1bの着脱時に、ケーシング分割部1bを脱落させ、ケーシング分割部1b及び筐体11内の構成部材を破損させるおそれがある。この点、ケーシング分割部1bは、係止部3cを有しており、ケーシング分割部1bの着脱時には、係止部3cがケーシング本体部1aに係止されるため、ケーシング分割部1bを脱落に起因した各構成部材の破損等のリスクを低減することができる。
【0053】
また、ファンケーシング1の側面の第一接合部3にあたる部分には、振動により接触しない程度の隙間が設けられていることから、ケーシング本体部1aの端面とケーシング分割部1bの端面とが送風時においても接触しないため、異音の発生を抑制することができる。そして、ファンケーシング1は、一体成形品であるベルマウス部6が、第一接合部3に設けられた隙間を覆うように構成されているため、送風時における当該隙間からの風漏れを防ぐことができる。
【0054】
加えて、ケーシング分割部1bの第二接合部5にあたる部分には、ケーシング本体部1aの内面に重なるように突出した差込部5cが設けられている。このため、ファンケーシング1によれば、送風時における風漏れ及び風漏れによる音を抑制することができる。
【0055】
上記実施の形態は、空気調和装置における好適な具体例であり、本発明の技術的範囲は、これらの態様に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、ファン7が両吸込形のシロッコファンであり、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bによって二つの吸込口4が形成されている場合を例示したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、ファン7として片吸込形のシロッコファンを採用し、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bによって、一方の側面のみに吸込口4が形成されるようにしてもよい。かかる構成を採った場合、ファンケーシング1は、一つの吸込口4に配設する一つのベルマウス部6を有していればよい。また、ファン7として片吸込形のシロッコファンを採用し、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bによって、一方の側面に吸込口4を形成し、他方の側面にモータ8の連結用の開口を設けたような場合にも、ファンケーシング1が、一つの吸込口4に配設する一つのベルマウス部6を有するようにしてもよい。
【0056】
加えて、上記実施の形態では、吸込口4の径、ファン7の外径、ベルマウス部6の開口径6dの順に小さくなっている構成を例示したが、これに限らず、例えば、ベルマウス部6の開口径6dは、ファン7の外径より大きくてもよい。また、吸込口4の径は、ファン7の外径より小さくてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、室内機10が被調和室内の床面に配置された場合を例に説明したが、これに限らず、室内機10は、被調和室内の天井部又は天井裏部などに配置するようにしてもよい。併せて、図1?図5を用いての説明では、便宜上、上方向と下方向とを特定したが、これに限らず、ファンケーシング1は、室内機10の構成に応じて、配置する方向を適宜変更することができる。
【0058】
さらに、上記実施の形態では、室内機10が、送風に関する構成部品であるファンケーシング1、ベルマウス部6、ファン7、及びモータ8を一式しか備えていない場合を例示したが、これに限定されるものではない。すなわち、上記実施の形態では、筐体11内に、送風に関する構成部品を一式そろえて構成された送風機が一台だけ配設された例を示しているが、室内機10は、複数の送風機を有していてもよい。例えば、室内機10は、筐体11内の左右方向に、複数の送風機を並べて配設するようにしても、上記同様の効果を得ることができる。また、ファンケーシング1は、室外機として機能する熱源機に設けるようにしてもよく、すなわち、ファンケーシング1は、例えば、熱源機内のファンを収容するファンケーシングとして適用してもよい。
【0059】
また、第一本体折り曲げ部3a及び第一分割折り曲げ部3bが吹出口2の軸方向に沿って延びている場合を例示したが、これに限定されるものではない。すなわち、第一本体折り曲げ部3a及び第一分割折り曲げ部3bは、ケーシング本体部1aにケーシング分割部1bを当接させたときに、第一本体折り曲げ部3aと第一分割折り曲げ部3bとが平行となる限り、任意の方向に突出させることができる。同様に、第二本体折り曲げ部5a及び第二分割折り曲げ部5bは、ケーシング本体部1aにケーシング分割部1bを当接させたときに、第二本体折り曲げ部5aと第二分割折り曲げ部5bとが平行となる限り、任意の方向に突出させることができる。もっとも、ケーシング本体部1aとケーシング分割部1bとは、ネジ3s及びネジ5sによって固定されるため、第一本体折り曲げ部3a及び第一分割折り曲げ部3bと、第二本体折り曲げ部5a及び第二分割折り曲げ部5bとは、ケーシング本体部1a及びケーシング分割部1bの外周に対して垂直に突起させるようにするとよい。
【符号の説明】
【0060】
1 ファンケーシング、1a ケーシング本体部、1b ケーシング分割部、1f 固定部材、2 吹出口、3 第一接合部、3a 第一本体折り曲げ部、3b 第一分割折り曲げ部、3c 係止部、3h、5h、6h ネジ穴、3s、5s、6s ネジ、4 吸込口、4a 第一仮想半径、4b 第二仮想半径、5 第二接合部、5a 第二本体折り曲げ部、5b 第二分割折り曲げ部、5c 差込部、6 ベルマウス部、6a 開口部、6b 内径部、6c 平面部、6d 開口径、6e 外径、7 ファン、7a 羽根、8 モータ、10 室内機、11 筐体、12 吹出部、13 前側吸込部、14 後側吸込部、15 吹出フランジ、16 ドレン受け、17 ドレン導水部、18 ドレンパン、18a ドレン口、19 天パネル、20 前側フレーム、21 後側フレーム、22 モータ取付板、23 モータ台、24 右側面パネル、25 左側面パネル、30 熱交換器。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンと、
前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、
前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、
前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、
を有し、
前記ファンケーシングは、
前記筐体に固定されるケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、
前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、
前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され、
前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものである、空気調和装置。
【請求項2】
前記ケーシング本体部に前記吹出口が形成された、請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
ファンと、
前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、
前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、
前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、
を有し、
前記ファンケーシングは、
前記筐体に固定されるケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、
前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、
前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものであり、
前記ファンの外径は、前記吸込口の径よりも小さい、空気調和装置。
【請求項4】
ファンと、
前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、
前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、
前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、
を有し、
前記ファンケーシングは、
前記筐体に固定されるケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、
前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、
前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものであり、
前記ベルマウス部の開口径は、前記ファンの外径よりも小さい、空気調和装置。
【請求項5】
ファンと、
前記ファンを収容し、空気を給気する吸込口及び前記吸込口から給気された前記空気を吹き出す吹出口が形成されたファンケーシングと、
前記ファンによって流動する前記空気が通過する熱交換器と、
前記空気の吹出部及び吸込部が形成され、前記ファンを収容した前記ファンケーシング及び前記熱交換器が内部に設けられた筐体と、
を有し、
前記ファンケーシングは、
前記筐体に固定されるケーシング本体部と、
前記ケーシング本体部に固定されるケーシング分割部と、
前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部によって形成される前記吸込口に配設された一体成形品であるベルマウス部とを具備し、
前記ベルマウス部は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合面の少なくとも一部を塞ぐものであり、
前記ケーシング本体部の上部に前記吹出口が形成され、
前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部とは、第一接合部及び第二接合部の二箇所で接合されており、
前記ベルマウス部は2つであり、前記吸込口は、前記ケーシング本体部及び前記ケーシング分割部の一方の側面と他方の側面とに形成され、前記一方の側面に形成された前記吸込口に一方の前記ベルマウス部が配設され、かつ前記他方の側面に形成された前記吸込口に他方の前記ベルマウス部が配設され、
前記ベルマウス部の外径は、前記ケーシング本体部と前記ケーシング分割部との接合部のうちの少なくとも一方を基準とした外径以上の長さであり、
前記接合部のうち、前記第二接合部は、前記吸込み口の下部に設けられ、前記第一接合部は前記吹出口の近傍であり、前記吸込み口の上部に設けられ、前記第二接合部よりも前記吹出口に近い位置に設けられる、空気調和装置。
【請求項6】
前記ケーシング分割部は、前記ケーシング本体部との接合部に、前記ケーシング本体部に向かって延び、前記ケーシング本体部の内面に接する差込部を有する請求項1?5の何れか一項に記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記ケーシング分割部は、
上端部にフランジ状の折り曲げ部を有すると共に、
前記折り曲げ部の上端部から前記ケーシング本体部に向かって延びる係止部を有する請求項1?6の何れか一項に記載の空気調和装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-01 
出願番号 特願2017-564977(P2017-564977)
審決分類 P 1 652・ 121- ZAA (F24F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 佐藤 正浩  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 槙原 進
平城 俊雅
登録日 2019-11-08 
登録番号 特許第6611827号(P6611827)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 空気調和装置  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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