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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1379796
異議申立番号 異議2019-701037  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-18 
確定日 2021-10-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6539383号発明「粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6539383号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3、4〕、〔2、5、6〕について訂正することを認める。 特許第6539383号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件特許に係る出願は、平成25年12月26日(以下「原出願日という。)に出願された特願2013-269986号の一部を平成30年6月18日に新たな特許出願としたものであって、令和元年6月14日に特許権の設定登録がされ、同年7月3日に特許掲載公報が発行されたところ、同年12月18日に特許異議申立人 北岡 引章(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、令和2年3月24日付けで当審から取消理由通知がされ、同年6月22日に意見書の提出とともに訂正の請求がされ、同年7月29日に申立人から意見書が提出されたものである。
2 その後の手続は次のとおりである。
令和2年10月21日付 取消理由通知(決定の予告)
令和2年12月17日 意見書(権利者)の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正」という。)なお、令和2年6月22日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げたものとみなされる。
令和3年 1月22日 意見書(申立人)の提出
令和3年 4月27日付 審尋
令和3年 7月 6日 回答書

第2 本件訂正について
1 訂正事項
本件訂正は次の訂正事項からなるものである。当審が訂正箇所に下線を付した。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマーを含有し、」という記載を、「分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマー、及びラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有し、」と訂正する(請求項1を直接または間接的に引用する請求項2?4も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記モノマー混合物における前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が25重量%以下であり」という記載を、「前記モノマー混合物における前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が1重量%以上25重量%以下であり」と訂正する(請求項1を直接または間接的に引用する請求項2?4も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0006】の「本発明は、粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマーを含有する粘着テープである。」との記載を、「本発明は、粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマー、及びラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有する粘着テープである。」と訂正する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、
「前記粘着剤層は、更に、紫外線により気体を発生する気体発生剤を含有することを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。」と記載されているのを、
「粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマーを含有し、
前記リビングラジカル重合ポリマーは、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有するモノマー混合物を共重合させて得られたランダム共重合体であり、
前記モノマー混合物における前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が1重量%以上25重量%以下であり、
前記(メタ)アクリルポリマーは、前記リビングラジカル重合ポリマーに、前記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させて得られたものである
ことを特徴とする粘着テープであって、
前記粘着剤層は、更に、紫外線により気体を発生する気体発生剤を含有することを特徴とする粘着テープ。」と訂正する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項3に、「前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基又はアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。」と記載されているのを、「前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基又はアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーであることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。」と訂正し、あわせて、特許請求の範囲に、「前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基又はアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーであることを特徴とする請求項2記載の粘着テープ。」という【請求項5】を追加する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項4に「前記粘着剤層は、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の粘着テープ。」と記載されているのを、「前記粘着剤層は、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1又は3記載の粘着テープ。」と訂正し、あわせて、特許請求の範囲に、「前記粘着剤層は、架橋剤を含有することを特徴とする請求項2又は5記載の粘着テープ。」という【請求項6】を追加する。
(7)別の訂正単位とする求め
本件訂正の請求人は、「請求後の請求項2と、請求項2の記載を直接または間接的に引用する請求項5、6については、当該請求項についての訂正が認められる場合、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める」として、別の訂正単位とする求めを行っている。
2 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項
ア 訂正前の請求項1?4について、請求項2?4は請求項1を直接または間接的に引用するものであって、訂正前の請求項1?4は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
イ 訂正後の請求項1、3、4について、請求項3、4は請求項1を直接または間接的に引用するから、訂正後の請求項1、3、4は一群の請求項を構成するものである。
ウ 訂正後の請求項2、5、6について、請求項5、6は請求項2を直接または間接的に引用するから、訂正後の請求項2、5、6は一群の請求項を構成するものである。
エ 前記1(7)のとおり、別の訂正単位とする求めがされ、後述するように本件訂正は認められ、その別の訂正単位とする求めは認められるから、訂正後の請求項1、3、4からなる一群の請求項と訂正後の2、5、6からなる一群の請求項とは別の一群の請求項である。
(2)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、粘着剤層の成分を、「分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマー」に加えて、「ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有し、」と訂正するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
前記アの目的からみて、訂正事項1は、粘着剤層の成分を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0036】?【0037】には、
「【0036】
上記粘着剤層は、更に、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有してもよい。上記粘着剤層がラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、上記粘着剤層の紫外線硬化性が向上する。・・・
【0037】
上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。また、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」と記載されており、訂正事項1は願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では、モノマー混合物における官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量の上限値が「25重量%以下」と規定されていた。訂正事項2は、当該含有量を「1重量%以上25重量%以下」と規定することで特許請求の範囲を減縮しようとするものと認められるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上の拡張・変更の有無
前記アの訂正事項2の目的からみて、訂正事項2はモノマー混合物における官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量の範囲を減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでないものといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
新規事項の追加の有無
モノマー混合物における官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量について、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0018】には、「上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量は、上記モノマー混合物中の好ましい下限が1重量%、好ましい上限が35重量%である。上記含有量が1重量%未満であると、紫外線硬化が可能な重合性基を充分に導入することができず、上記粘着剤層の紫外線硬化性が低下し、被着体から剥離するときに粘着力が充分に低下しないことがある。」と記載されており、訂正事項2は願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、前記(2)の訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るための訂正と認められる。したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無
訂正事項3は、粘着剤層の成分について、訂正事項1と同様に訂正を行うものであって、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正ではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものとはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
新規事項の追加の有無
訂正事項3により訂正された粘着剤層の成分は、訂正事項1と同様に訂正されたものであるから、訂正事項1についての検討と同様に前記(2)ウに摘記した本件特許の願書に添付した明細書の段落【0036】?【0037】に記載されている。したがって、訂正事項3は願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
エ 訂正の対象請求項
訂正事項3は、訂正後の請求項1、3、4に係る一群の請求項の全ての請求項に関連する明細書の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項2が本件訂正前(当審注:前記第1において指摘したとおり設定登録時)の請求項1を引用するものであったところ、当該請求項1の記載を引用しないものとし、更に訂正前に特定のなかった「(メタ)アクリルポリマーの含有量が1重量%以上」と訂正したものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び同項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無及び新規事項の追加の有無
前記アに検討したように訂正事項4は、記載形式を引用形式から独立形式に訂正し、モノマー混合物における官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正ではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
新規事項の追加の有無
訂正事項4のモノマー混合物における官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量の下限が「1重量%以上」であるいう事項は、前記(3)ウにおいて検討したとおり、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0018】に記載された事項であるから、訂正事項4は新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項5
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項5のうち、訂正前の請求項3の引用元の請求項1又は2を、訂正後の請求項3の引用元を請求項1のみとする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
(イ)訂正事項5のうち、訂正前の請求項2を引用する請求項3を新たに請求項5とする訂正は、訂正後の請求項1の属する一群の請求項と、訂正後の請求項2の属する一群の請求項とを明確に区別するためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無及び新規事項の追加の有無
前記ア(ア)(イ)の訂正の目的からみて、訂正事項5が実質上、特許請求の範囲を拡張または変更するものでなく、また、新規事項を追加するものでないことは明らかである。したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項6のうち、訂正前の請求項4の引用元の請求項1、2又は3を、訂正後の請求項4においては引用元を請求項1又は3とする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
(イ)訂正事項6のうち、訂正前の請求項2又は3を引用する請求項4を新たに請求項6とする訂正は、訂正後の請求項1の属する一群の請求項と、訂正後の請求項2の属する一群の請求項とを明確に区別するためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
イ 実質上の拡張・変更の有無及び新規事項の追加の有無
前記ア(ア)(イ)の訂正の目的からみて、訂正事項6が実質上、特許請求の範囲を拡張または変更するものでなく、また、新規事項を追加するものでないことは明らかである。したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
3 訂正についての小括
以上から、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号を目的とするものであって、特許法第120条の5第4項の要件に適合し、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、本件訂正を認める。

第3 本件発明
前記第2で検討したように本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマー、及びラジカル重合性の多官能オリゴマーまたはモノマーを含有し、
前記リビングラジカル重合ポリマーは、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有するモノマー混合物を共重合させて得られたランダム共重合体であり、
前記モノマー混合物における前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が1重量%以上25重量%以下であり、
前記(メタ)アクリルポリマーは、前記リビングラジカル重合ポリマーに、前記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させて得られたものである
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマーを含有し、
前記リビングラジカル重合ポリマーは、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有するモノマー混合物を共重合させて得られたランダム共重合体であり、
前記モノマー混合物における前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が1重量%以上25重量%以下であり、
前記(メタ)アクリルポリマーは、前記リビングラジカル重合ポリマーに、前記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させて得られたものである
ことを特徴とする粘着テープであって、
前記粘着剤層は、更に、紫外線により気体を発生する気体発生剤を含有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項3】
前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基又はアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーであることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層は、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基又はアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーであることを特徴とする請求項2記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層は、架橋剤を含有することを特徴とする請求項2又は5記載の粘着テープ。」

第4 取消理由の概要
1 当審が令和2年10月21日付で通知した取消理由の概要は次のとおりのものである。
本件特許の下記の請求項に係る発明は、原出願日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、原出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、特許法第113条第2号の規定に該当し、下記の請求項に係る特許は取り消すべきものである。

・請求項1、3、4に対して
・引用文献一覧
(以下、申立人の提示した甲第1号証を「甲1」などという。)
甲1:特開2002-371262号公報
甲2:国際公開第2007/119884号
甲3:特開2011-74380号公報
甲4:特公昭63-36602号公報
参考資料1:特開平8-27239号公報
参考資料2:特開2009-35618号公報
参考資料3:特開2011-184576号公報
参考資料4:特開平2-187478号公報
2 当審が令和2年3月24日付で通知した取消理由(前記1の理由を除く)は次のとおりである。
設定登録時の本件特許に係る願書に添付された特許請求の範囲の記載は、請求項1における「前記モノマー混合物における前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が25重量%以下」という記載が下限を規定していない点で特許法第36条第6項第1号の規定を満たさないものであるから、本件発明1、2及び引用する本件発明3?6に係る特許は特許法第113条第4項に該当し、取り消されるべきものである。

第5 前記第4、2の記載要件についての当審の判断
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、前記第3に記載したとおりであって、請求項1及び請求項2における「前記モノマー混合物における前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が1重量%以上25重量%以下」との記載によって、下限が規定されているから、前記第4、2の記載要件を満たすものであって、この理由により本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。

第6 前記第4、1の進歩性についての当審の判断
1 引用文献の記載事項
(1)甲1には、次の記載がある。
ア 「【請求項1】重量平均分子量が10万以上であり、かつ分子量の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1?2のベースポリマーを主成分として含有してなることを特徴とするウエハ加工用粘着シート用粘着剤。
【請求項2】ベースポリマーが放射線硬化型ポリマーであることを特徴とする請求項1記載のウエハ加工用粘着シート用粘着剤。
【請求項3】基材フィルム上に、請求項1または2記載の粘着剤により形成された粘着剤層が設けられていることを特徴とするウエハ加工用粘着シート。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ウエハ加工用粘着シート用粘着剤および当該粘着剤により形成された粘着剤層が設けられているウエハ加工用粘着シートに関する。ウエハ加工用粘着シートは、各種半導体の製造工程のうち半導体ウエハの裏面を研削する研削工程においてウエハの表面を保護するために用いる表面保護用粘着シートや、半導体ウエハを素子小片に切断・分割し、該素子小片をピックアップ方式で自動回収するダイシング工程においてウエハの裏面に貼付する固定支持用粘着シートなどとして有用である。」
ウ 「【0003】このようなウエハ加工用粘着シートからは、通常、半導体素子に対して若干の転写汚染物(糊残り)が発生する。かかる転写汚染物は、例えば、表面保護用粘着シートでは、その後の工程でワイヤボンディング不良を招き、また固定支持用粘着シートでは、樹脂封止工程(パッケージング工程)でのパッケージクラックという問題を引き起こすことが明らかになっている。そのため近年では、転写汚染物の発生の少ない高品質なウエハ加工用粘着シートが求められている。
【0004】一般に、転写汚染物は粘着剤中に含まれる分子量10万未満の低分子量成分であることが知られている。低分子量成分は粘着剤の主成分であるベースポリマーと呼ばれる高分子化合物中にもともと含まれており、精製により取り除くことも可能である。低分子量成分を低減するには、たとえば、汎用のラジカル重合などにより分散度の大きいポリマーを製造し、これを再沈殿法などにより精製するという方法がある。しかしながら、この方法では分子量10万未満の低分子量成分を1回の操作で完全に除去することは難しく、その操作が煩雑である。
【0005】また、一般に放射線硬化型粘着シートの粘着剤層を形成する放射線硬化型粘着剤は、ベースポリマーと呼ばれる高分子化合物に、分子内に炭素-炭素二重結合を有する放射線重合性化合物(放射線反応性オリゴマー等)、放射線重合性開始剤、さらには架橋剤などの種々の添加剤を適宜に加えて調製される。そして、通常、放射線照射後に粘着力が大きく低下するという特性を付与するため、放射線重合性化合物としては、1分子内に炭素-炭素二重結合を2個以上有するいわゆる多官能化合物が多く用いられている。このような放射線硬化型粘着剤に放射線を照射すると、放射線重合性化合物が反応して三次元網状構造が速やかに形成され、粘着剤全体が急激に反応・硬化し、粘着力が低下するものとされている。しかしながら、このような多官能化合物は分子量10万未満のオリゴマーまたはモノマーの低分子量成分である場合が多く、前述の理由により転写汚染物の問題は解消できない。
・・・
【0008】すなわち本発明は、重量平均分子量が10万以上であり、かつ分子量の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1?2のベースポリマーを主成分として含有してなることを特徴とするウエハ加工用粘着シート用粘着剤、に関する。
・・・
【0011】前記ウエハ加工用粘着シート用粘着剤において、ベースポリマーが放射線硬化型ポリマーであることが好ましい一態様である。
【0012】ベースポリマー自体を放射線硬化型ポリマーとすることにより、放射線反応性オリゴマー等の放射線重合性化合物を使用することなく粘着剤を放射線硬化型とすることができる。」
エ 「【0014】
【発明の実施の形態】ウエハ加工用粘着シート用粘着剤の主成分であるベースポリマーとしては、一般的な感圧性粘着剤、たとえば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等に用いられているものを使用できる。なかでも、半導体ウエハヘの粘着性などの点から、アクリル系粘着剤のベースポリマーであるアクリル系ポリマーが好ましい。これらベースポリマーは2種以上を混合して使用してもよい。
【0015】前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどのアルキル基の炭素数1?30、特に炭素数4?18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどがあげられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0016】前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリルなどがあげられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の50重量%以下が好ましい。」
オ 「【0018】本発明のベースポリマーの重量平均分子量は10万以上であり、かつ分子量の分散度1?2である。このようなベースポリマーは、例えば金属の酸化・還元反応を利用したリビングラジカル重合、サマリウム錯体を開始剤とする配位重合などの開始、成長反応が完全に制御されながら重合反応が進行する、いわゆるリビング重合法を採用することができる。かかる重合法によれば分子量の設定が容易であるとともに、分子量の分散度を小さく設定できポリマーの重合反応が終了した時点ですでに分子量10万以下の低分子量物の生成を抑えることができる。
【0019】また、本発明のベースポリマーとしては放射線硬化型ポリマーを用いることができる。放射線硬化型ポリマーとした場合にもその重量平均分子量は10万以上であり、かつ分子量の分散度1?2である。放射線硬化型ポリマーは、炭素-炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものであり、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、または多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができるため好ましい。」
カ 「【0021】前記アクリル系ポリマーへの炭素-炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素-炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。たとえば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基および炭素-炭素二重結合を有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合または付加反応させる方法があげられる。
【0022】これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基などがあげられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、上記炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素-炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、たとえば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートなどがあげられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物などを共重合したものが用いられる。
・・・
【0027】
・・・ウエハ加工用粘着シートは基盤やウエハ等の被切断体の平面形状に対応した形状や連続シートなどの適宜な形態とすることができ、またシートを巻いてテープ状とすることもできる。」
キ 「【0034】実施例1
(サマリウム錯体の調製)アルゴン置換した1リットルのフラスコに、SmI_(2)を3.9616g、テトラヒドロフラン(THF)を330ml入れ、攪拌しながら、ぺンタメチルシクロぺンタジエニルカリウム塩〔(C_(5)(CH_(3))_(5))K〕45.858gを加えて、室温で反応させた。その後、THFを減圧除去し、固形物にトルエンを加えて、上澄みを回収し、減圧乾燥したのち、THFとへキサンにより、(C_(5)(CH_(3))_(5))_(2)Sm(THF)_(2)の再結晶を行った。この(C_(5)(CH_(3))_(5))_(2)Sm(THF)_(2)の2.5gをトルエン60mlに溶解した後、トリメチルアルミニウム2.2mlを加え、攪拌して反応を行った。沈澱物を除去したのち、再結晶を行うことにより、(C_(5)(CH_(3))_(5))_(2)Sm(CH_(3))(THF)を得た。
【0035】(トリメチルシリルオキシエチルアクリレートの調製)1リットルの丸底フラスコに乾燥THF300mlを量り取り、これに乾燥トリエチルアミン111.6mlと乾燥2-ヒドロキシエチルアクリレート83.7mlを加えた。10分間程度撹拌した後、外欲を氷水で冷却し、乾燥トリメチルシリルクロライド76.1mlをゆっくり加えた。24時間室温で撹拌を続けた後、THFと過剰のトリエチルアミンとトリメチルシリルクロライドとを減圧留去した。そこに乾燥ヘキサン300mlを加え、約2時間撹拌後、ろ過により塩を取り除き、減圧下ヘキサンを留去したものをモレキュラーシーブで2晩処理し、42℃/0.1mmHgの条件下で蒸留することによりトリメチルシリルオキシエチルアクリレートを合成した。
【0036】(アクリル系共重合ポリマーの調製)アルゴン置換した1リットルのフラスコに、上記の(C_(5)(CH_(3))_(5))_(2)Sm(CH_(3))(THF)を100.4mg入れ、脱気脱水処理したトルエン400mlを加えて、-78℃に冷却した後、脱気脱水処理したブチルアクリレート80gおよびトリメチルシリルオキシエチルアクリレート20gを、1時間かけて滴下しながら重合反応を行い、さらに5時間重合反応を継続した。5時間後、大量のメタノールを加えて重合を終了させ、同時に保護基であるトリメチルシリル基を脱離させ末端をOH化した。ろ過、乾燥後に得られたアクリル系共重合ポリマーにつき、分子量をGPC法で測定した結果、重量平均分子量が35.3万、数平均分子量が32.4万、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.09であった。
【0037】(ウエハ加工用粘着シートの作製)前記アクリル系共重合ポリマーをトルエンに溶解し、このポリマー(固形分)100重量部に対して、さらにイソシアネート系架橋剤を0.8重量部添加して得られた粘着剤を、厚さが100μmのポリエチレンフイルム(基材フィルム)上に、乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布することにより粘着剤層を形成してウエハ加工用粘着シートを得た。」
ク 「【0038】実施例2
(アクリル系共重合ポリマーの調製)実施例1において、(C_(5)(CH_(3))_(5))_(2)Sm(CH_(3))(THF)の使用量を100.4mgから50.7mgに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたアクリル系共重合ポリマーの重量平均分子量は54.5万、数平均分子量が38.7万、分散度が1.41であった。
【0039】(放射線硬化型ポリマーの調製)上記アクリル系共重合ポリマー溶液に、さらに有機スズ触媒と2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを5g加え付加反応させることにより、重量平均分子量が56.0万、数平均分子量が39.0万、分散度が1.44の放射線硬化型ポリマー溶液を得た。
【0040】(ウエハ加工用粘着シートの作製)前記放射線硬化型ポリマー(固形分)100重量部に、さらにイソシアネート系架橋剤を0.8重量部とアセトフェノン系光重合開始剤を2重量部添加して得られた放射線硬化型粘着剤を、厚さが100μmのポリエチレンフイルムの上に、乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布することにより粘着剤層を形成してウエハ加工用粘着シートを得た。」
ケ 「【0044】実施例および比較例で得られたウエハ加工用粘着シートについて以下の評価を行った。実施例2、比較例3については加工処理後に紫外線を照射した。評価結果を表1に示す。
【0045】(ウエハ表面の転写汚染物量)ウエハ表面にウエハ加工用粘着シートを貼り付け、所定の厚さまで下記条件で裏面研削した後に剥がし、剥がしたウエハ表面の転写汚染物量を測定した。粘着シート剥離後のウエハ表面の元素比率はXPS(X線光電子分光分析)にて測定し、粘着シートからの転写汚染物に由来する炭素の増加量をブランクウエハと比較しAtomic%増加量として算出した。
X線源:MgKα、X線取出角度:90度、測定面積:1.0mm×3.5mm。」
コ 「【0049】
【表1】

実施例1と比較例1から、分散度が1?2の範囲にあっても重量平均分子量が10万未満の場合にはウエハ研削時に転写汚染物が多く、クラックが発生することがわかる。また実施例1と比較例2から、重量平均分子量が10万以上であっても分散度が2を超えると場合には前記同様に転写汚染物が多く、クラックが発生することがわかる。また実施例2と比較例3から、放射線硬化型粘着剤を調製する場合に、分子量10万未満の放射線重合性化合物を混合するような構成では転写汚染物、クラックの問題を解消できないことがわかる。」
(2)甲2の記載事項
甲2には次の記載がある。
ア 第40?41頁、請求の範囲
(ア)請求項1
「(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするピニルモノマー80?99.9重量部および反応性官能基を有するビニルモノマー0.1?20重量部を、
(a)式(1)で表される有機テルル化合物、
(b)式(1)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤の混合物、
(c)式(1)で表される有機テルル化合物と式(2)で表される有機ジテルル化合物の混合物、又は
(d)式(1)で表される有機テルル化合物、アゾ系重合開始剤及び式(2)で表される有機ジテルル化合物の混合物のいずれかを重合開始剤として用いてリビングラジカル重合法により共重合して得られた共重合体を含有する樹脂組成物であって、組成物中の金属含有量が1000ppm以下であることを特徴とする樹脂組成物。

(式中、R^(1)は、C_(1)?C_(8)のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R^(2)及びR^(3)は、水素原子又はC_(1)?C_(8)のアルキル基を示す。R^(4)は、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、アシル基、アミド基、オキシ力ルポニル基又はシアノ基を示す。)
(R^(1)Te)_(2) (2)
(式中、R^(1)は、上記と同じ。)」
(イ)請求項2
「共重合体のPD値が1.05?2.00である請求項1の樹脂組成物。」
(ウ)請求項3
「金属含有量が200ppm以下である請求項1の樹脂組成物。」
(エ)請求項5
「請求項1に記載の樹脂組成物100重量部に対し0.1?10重量部の架橋剤を配合してなり、架橋反応後のゲル分率が80重量%以上であることを特徴とする粘着剤。」
(オ)請求項6
「請求項1に記載の樹脂組成物100重量部に対し3?10重量部の架橋剤を配合したことを特徴とする表面保護フィルム用粘着剤。」
(カ)請求項7
「請求項1に記載の樹脂組成物100重量部に対し0.1?3重量部の架橋剤を配合したことを特徴とする光学フィルム用粘着剤。」
(キ)請求項8
「フィルムの基材に、請求項5?7のいずれかに記載の粘着剤を形成したことを特徴とする粘着フィルム。」
イ 明細書
(ア)第1頁5?9行(以下、行数は空行を含む。)
「技術分野
本発明は、有機テルル化合物を用いてリビングラジカル重合された樹脂組成物及びそれを用いた耐熱性に優れた粘着剤に関する。
また本発明は基材に上記粘着剤からなる粘着層を形成することにより得られる、耐熱性となじみ性に優れた粘着層を有する表面保護フィルムに関する。」
(イ)第1頁13?23行
「背景技術
これまで、粘着剤用樹脂組成物として様々なモノマーの組み合わせの共重合体が使用されており、これらは単一モノマーで作られる重合体に比べ、複数種類のモノマーそれぞれの特徴を有し、更には組み合わせることにより初めて発現する機能を持つ共重合体が得られる可能性がある。かかる共重合体を製造するに当たっては、通常のフリーラジカル重合法が用いられるが、該フリーラジカル重合法では、分子量の制御や、共重合体組成の均一性を取ることが困難であり、その結果として低分子量成分(オリゴマー)や、ホモポリマーの生成がおこり、これらの成分は粘着剤として使用する際に、使用環境下での耐熱性の低下や、再剥離時に糊残りによる被着体表面の汚染を招くことが知られており、できるだけこれらの成分を排除することが求められている。」
(ウ)第3頁13行?第4頁2行
「リビングラジカル重合は、ラジカル重合の簡便性と汎用性を保ちつつ分子構造の精密制御を可能にする重合法で、新しい高分子材料の合成に大きな威力を発揮している。この重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP)、硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT)、その他の方法がある。
これらの重合系については、スチレンやメタクリレート、アクリレートなどの種々のモノマーについて、盛んに研究がなされ、そのポリマーの一次構造をある程度精密に制御できることが広く知られるようになってきた。しかし、モノマーにより反応性が大きく異なるために、どのモノマーにも適用可能な重合法とはなり得ていない。
また遷移金属触媒を用いる方法では樹脂組成物中から触媒として用いた銅等の金属を完全に除去することが困難であり、粘着剤として用いた場合、電子材料用途において残存金属による誤作動等の問題が考えられ、硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法では、可逆的連鎖移動剤として作用したポリマー末端の硫黄化合物を除去するのが困難であり、残存した場合には着色や臭気が発生し、粘着剤として用いた場合、光学用途に用いる場合には光線透過率が低下し、医療用途に用いる場合には臭気による不快感を与える等の問題が考えられる。」
(エ)第4頁3?8行
「本発明者は、リビングラジカル重合の例として、有機テルル化合物を開始剤として用いたリビングラジカル重合を報告している(例えば、特許文献4、5参照)。有機テルル化合物を用いる方法は、適用モノマー範囲が他の方法よりも比較的広く、残存するテルル金属の除去が遷移金属触媒を用いる方法と比較して効率が高く硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法に比較して連鎖移動反応が少なく、分子量制御性に優れており、またポリマー末端の修飾が容易等の優位点を持っている。
また本発明者らは上記有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合によって得られた樹脂組成物の架橋度を制御し、この架橋度の制御された樹脂組成物を粘着フィルムの粘着層に使用することにより、なじみ性、耐熱性、耐久性、再剥離性、及び応力緩和性に優れた粘着層を有する粘着フィルムが得られることを見いだした。」
(オ)第18頁5?14行
「本発明で得られるリビングラジカルポリマーの分子量分布(PD=Mw/Mn)は、1.05?2.00の間で制御される。更に、分子量分布1.05?1.90,更には1.05?1.80のより狭い分子量分布を持ったポリマーを得ることができる。式(1)および式(2)で表される有機テルル化合物を開始剤として用いる場合、-TeR^(1)の形態でテルル原子がポリマー末端に残存する場合がある(R^(1)は、上記と同じ)。
テルル原子が末端に残存したポリマーは着色しており、金属性の元素であるため、得られた共重合体を配合した粘着剤の透明性の向上や異物混入防止の観点から、この残存テルル原子を含めた金属含量は、樹脂全体に対して1,000ppm以下、特に200ppm以下であることが好ましい。」
(カ)第30頁11行?第31頁5行
「実施例5
ポリアクリル酸n-ブチル-co-ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル
アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート59.5μL(0.26mmol)、アクリル酸n-ブチル(和光純薬工業株式会社製)95g(0.74mol)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(和光純薬工業株式会社製)5g(38.4mmol)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔大塚化学(株)製、商品名:ADVN〕12.9mg(0.05mmol)及び酢酸エチル25gを50℃で24時間反応させた。NMR分析により、重合率は
92.1%であった。
反応終了後、反応器をグローブボックスから取り出し、酢酸エチルで希釈後、空気酸化を行い、苛性ソーダ1%水溶液で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムを加え系中の水分を脱水し、1μm孔径のメンブランフィルターを用いてろ過を行い、アクリルポリマーを得た。得られたポリマー溶液の粘度は4,950mPa・S(25℃)、固形分は35.3%であった。
またGPC分析(ポリスチレン標準サンプルの分子量を基準)により、重量平均分子量435,500、PD=1.61であった。
またポリマー溶液を乾燥後、灰化処理しICP/MSによる分析を行った結果、不揮発分中の金属含量は135ppmであった。」
(キ)第34頁7?13行
「実施例9
実施例5で得たアクリルポリマー溶液の固形分換算100重量部に対して、架橋剤としてコロネートHL〔日本ポリウレタン工業(株)製〕を3部添加し、撹拌して粘着剤組成物を得た。
これを50μm厚のPET製剥離フィルム上に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、95℃で2分間乾燥させた後、25μm厚のPETフィルムを転写し、本発明の表面保護フィルムを作製した。」
(ク)第35頁16?20行
「(糊のこり評価方法E1)
粘着力測定後の被着体表面を目視で観察し、下記の如く評価した。
○…被着体表面の顕著な汚染なし
△…被着体表面にくもり
×…被着体表面に明らかな糊のこり(凝集破壊or転写)」
(ケ)第36頁の【表2】及び3?6行


表2から明らかなように、本発明の粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られたMw>30万以上、Mw/Mnが1.8以下の分子量が揃ったポリマーを用いることにより、耐熱性に優れ、被着体への耐汚染性に優れる。また本発明の粘着剤層はタック性が高いため、被着体へのなじみ性に優れる。」
(3)甲3の記載事項
甲3には次の記載がある。
ア 「【請求項1】
リビングラジカル重合によって得られた重量平均分子量20万?200万及び分子量分布2.5未満の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する保護フィルムであって、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)中の重量平均分子量5万以下の低分子量成分の割合が5質量%未満であることを特徴とする保護フィルム。
・・・
【請求項4】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)が、炭素数1?20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)と、反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b)とを、質量比80:20?99.9:0.1の割合で含むものである、請求項1?3のいずれかに記載の保護フィルム。
【請求項5】
さらに、粘着剤組成物が架橋剤(B)を含む、請求項1?4のいずれかに記載の保護フィルム。
・・・」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を有する保護フィルムに関する。さらに詳しくは、粘着剤層を構成する粘着剤組成物中の残留モノマー及び低分子量成分が極めて少なく、被着体への残渣物の付着が極めて少ない保護フィルム、及びその保護フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、保護フィルムは、光学用として各種画像表示装置、例えばLCD(液晶表示体)、タッチパネル、CRT(ブラウン管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、EL(エレクトロルミネッセンス)、光記録媒体などにおいて、表面保護を始め、防眩性や反射防止などの目的で用いられている。また、LCDにおいては、偏光子を保護するために用いられている。この保護フィルムは、一般に、基材フィルムの一方の面に粘着剤層を有し、他方の面に帯電防止性能や防汚性能などの機能性コーティング層、あるいは必要に応じてハードコート層などが設けられている。そして、光学的特性に優れ、粘着剤の設計が比較的容易であることから前記粘着剤層には、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主剤とするアクリル系粘着剤が用いられている。
このような保護フィルムを、前記被着体に粘着剤層を介して貼付すると、視認不可能なレベルで僅かな残渣物が付着することが知られており、これは、アクリル系粘着剤を用いる場合、主剤である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中に存在する残留モノマーや低分子量成分に起因することが分かっている。」
ウ 「【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被着体に貼付した場合に十分な粘着力で被着体に接着できるとともに、剥した際は被着体への残渣物の付着が極めて少ない粘着剤層を有する保護フィルムを提供することができる。本保護フィルムを用いることにより、被着体の中でも高いレベルで表面の清浄さが要求される機能性光学部材への適用においても残渣物の付着により各機能が損なわれるのを抑制し得ることが期待される。」
エ 「【0018】
(重合方法)
当該(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、リビングラジカル重合により重合されてなるものである。リビングラジカル重合はフリーラジカル重合と比較して活性点での反応が非常に緩やかであるという特徴を有する。すなわち、フリーラジカル重合では、活性点での反応が非常に早いために反応性の高い単量体から重合し、その後、反応性の低い単量体が重合するものと考えられている。一方、リビングラジカル重合では、活性点での反応が緩やかであるため、単量体の反応性の影響を受けずに均等に重合が進行し、得られるいずれの共重合体もより均等な組成になるものと考えられる。そのため、リビングラジカル重合で得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)はフリーラジカル重合によるものに比べて非官能性単量体単位(a)のみからなる(メタ)アクリル酸エステル系単独重合体の発生割合が圧倒的に少ないものになると考えられる。このため、リビングラジカル重合によって得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、分子量の低いものであっても後述の架橋剤(B)により架橋される可能性が非常に高くなる。その結果、リビングラジカル重合により得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を主剤とする粘着剤層は、被着体への残渣物の付着を非常に低いレベルに抑えることができるものと考えられる。
リビングラジカル重合法としては、従来公知の方法、例えば重合制御剤として、原子移動ラジカル重合剤を用いる原子移動ラジカル重合法(ATRP重合法)、可逆付加-開裂連鎖移動剤を用いる可逆付加-開裂連鎖移動による重合法(RAFT重合法)、重合開始剤として有機テルル化合物を用いる重合法などを採用することができる。これらのリビングラジカル重合法の中で、有機テルル化合物を重合開始剤として用いる方法が、分子量の制御性及び水系においても重合が可能であることなどから好ましい。以下に、有機テルル化合物を重合開始剤として用いる方法を示す。」
オ 実施例
(ア)「【0039】
・・・
(5)残留パーティクル試験
実施例あるいは比較例において得られた保護フィルムをクリーンルーム内にて、室温下で、4インチシリコンウエハの鏡面に5kg(49N)ゴムローラーを1往復させることにより貼り付け、60分間放置した後、剥離を行った。このときウエハ上の粒径0.27μm以上の残留異物の数をレーザー表面検査装置[日立電子エンジニアリング社製]により測定した。」
(イ)「【0041】
合成例1(エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート)
・・・黄色油状物のエチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート8.98g(収率59.5%)を得た。
実施例1
(1)リビングラジカル重合によるランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造
単量体としてブチルアクリレート[BA、東京化成社製]と2-エチルヘキシルアクリレート[2EHA、東京化成社製]と4-ヒドロキシブチルアクリレート[4HBA、東京化成社製]とを、質量比75:20:5の割合で用い、以下に示すリビングラジカル重合により、BA/2EHA/4HBAのランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造した。この共重合体の性状を第2表に示す。
<リビングラジカル重合>
アルゴン置換したグローブボックス内で、合成例1で製造したエチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート68.5μL、ブチルアクリレート(同上)107g、2-エチルヘキシルアクリレート(同上)28.5g、4-ヒドロキシブチルアクリレート(同上)7.1g及び2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)[AIBN;Aldrich社製]4.6mgを60℃で20時間反応させた。
反応終了後、反応器をグローブボックスから取り出し、酢酸エチル500mlに溶解した後、そのポリマー溶液を活性アルミナ[和光純薬工業社製]で作製したカラムに通した。ポリマー溶液の粘度が5000mPa・s(25℃)となるようにトルエンを添加した。得られたポリマーの固形分は30.0質量%であった。
またGPCにより、重量平均分子量48.5万、分子量分布1.88であった。
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で製造したランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分)と、架橋剤としてイソシアヌレート型HDI[日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」、NCO含量:21.3質量%、固形分100%]4.0質量部を、溶媒であるメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度28質量%、23℃における粘度が3Pa・sの粘着剤組成物を調製した。なお、上記粘度はB型粘度計を用いて測定した。
(3)保護フィルムの作製
厚さ38μmの離型フィルム[リンテック社製、商品名「SP-PET381031」]の離型処理面に、上記(2)で得た粘着剤組成物を、ナイフ式塗工機により、乾燥厚さが20μmになるように塗布したのち、90℃にて1分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した。
次いで、基材フィルムとして、厚さ38μmの帯電防止性防汚ポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ社製、商品名「PET38SLD52」]の一方の面に、上記で得られた離型フィルム付き粘着剤層を貼合して、保護フィルムを作製し、この保護フィルムについて、諸特性を求めた。その結果を第2表に示す。」
(ウ)「【0042】
実施例2?10、及び比較例2
(1)リビングラジカル重合によるランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造
単量体として、第1表に示す種類と使用割合のものを用い、エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート及びAIBNの添加量、並びに重合時間を調整する以外は実施例1と同様にしてリビングラジカル重合により、各種の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造した。各共重合体の性状を第2表に示す。
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で製造した各(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部と、第1表に示す種類と量の各架橋剤を溶媒であるメチルエチルケトンに溶解して、第1表に示す固形分濃度と粘度を有する各種の粘着剤組成物を調製した。
(3)保護フィルムの作製
上記(2)で得られた各種の粘着剤組成物を用い、粘着剤層の厚さを第2表に示す値にした以外は、実施例1と同様にして各種の保護フィルムを作製した。各保護フィルムについて、諸特性を求めた。その結果を第2表に示す。」
(エ)「【0043】
実施例11
(1)実施例4で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)(BA/4HBA質量比=99/1)の分別
実施例4で得られたBA/4HBA質量比=99/1の共重合体の溶液40質量部(固形分7.2質量部)をメタノール100質量部中に加え、室温でかきまぜて、沈殿を形成させた。次いで、この沈殿物を、デカンテーションにより分離したのち、メタノール50質量部で洗浄した。その後、デカンテーションでメタノールを取り除き、沈殿物をトルエン40質量部に溶解させ、固形分含有量が15質量%の共重合体(A)の溶液を調製した。
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で調製した溶液に、その固形分100質量部に対し、架橋剤としてイソシアヌレート型HDI「コロネートHX」(前出)1.0質量部を添加して溶解させ、23℃における粘度が3Pa・sの粘着剤組成物を調製した。
(3)保護フィルムの作製
上記(2)で得られた粘着剤組成物を用い、粘着剤層の厚さを第2表に示す値にした以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを作製した。この保護フィルムについて、諸特性を求めた。その結果を第2表に示す。
実施例12
前記帯電防止性防汚ポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ社製、商品名「PET38SLD52」]の一方の面に、実施例1の「(2)粘着剤組成物の調製」の工程で得られた粘着剤組成物を、ナイフ塗工機により、乾燥厚さが20μmになるように塗布したのち、90℃にて1分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した。
次いで、前記離型フィルム[リンテック社製、商品名「SP-PET381031」]をその離型処理面が前記粘着剤層と接するように積層することにより、離型フィルムで粘着剤層が保護された保護フィルムを得た。そして、該保護フィルムの諸特性は実施例1の保護フィルムと同一になることを確認した。」
(オ)「【0044】
比較例1
(1)フリーラジカル重合による(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造
単量体としてブチルアクリレート(同上)と2-エチルヘキシルアクリレート(同上)と4-ヒドロキシブチルアクリレート(同上)とを、質量比75:20:5の割合で用い、以下に示すフリーラジカル重合により、BA/2EHA/4HBAの(メタ)アクリル酸エステル共重合体を製造した。この共重合体の性状を第2表に示す。
<フリーラジカル重合>
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、酢酸エチル90質量部、2-エチルヘキシルアクリレート20質量部、ブチルアクリレート75質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート5質量部、重合開始剤2,2'-アゾビス(イソブチルニトリル)(AIBN)0.2質量部を仕込み、撹拌しながら酢酸エチルの還流温度で7時間反応させた。反応終了後、トルエン95質量部を添加して室温まで冷却した。粘度3,000mPa・s、固形分30質量%である(メタ)アクリル酸エステル共重合体を得た。
以下、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製し、さらに保護フィルムを作製した。この保護フィルムの諸特性を第2表に示す。」
(カ)「【0045】
【表1】

【0046】
[注]
コロネートHX;日本ポリウレタン工業社製、商品名、イソシアヌレート型HDI、NCO含量:23.1質量%、固形分:100%
タケネートD-110N;三井化学社製、商品名、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンの3:1付加物、NCO含量:11.8質量%、固形分:75質量%
BA;ブチルアクリレート[東京化成社製]
HEA;2-ヒドロキシエチルアクリレート[東京化成社製]
4HBA;4-ヒドロキシブチルアクリレート[東京化成社製]
2EHA;2-エチルヘキシルアクリレート[東京化成社製]
CHA;シクロヘキシルアクリレート[東京化成社製]
MA;メチルアクリレート[東京化成社製]」
(キ)「【0047】
【表2】


(4)甲4の記載事項
甲4には、次の記載がある。以下、行数には空行を含む。
ア 1頁右欄17行?2頁左欄7行
「本発明は、フエノール性残基の水酸基が飽和脂肪族系保護基によつて保護されたモノマーをリビングアニオン重合法により重合した後、保護基を脱離させることを特徴とするフエノール残基を有する狭分散高分子の製造方法に関する。
分子量分布の狭いフエノール残基を有する高分子は、超LSIの製造に必要なレジスト材や高解像のリソグラフイー用材料として利用することができるが、これまでその実用的な合成方法が見出されていない。分子量分布の狭い高分子を製造する方法として、一般に、リビングアニオン重合法が用いられるが、実際に、これによつて得られた分子量分布の狭いポリイソプレン、ポリスチレン、ポリ(α?メチルスチレン)等は高分子標準試料やLSI製造用のレジスト材として利用されている。ところが、フエノール残基を有するモノマーの場合、プロトンがカルバニオンによつて容易に引抜かれるため、それらの重合はリビングアニオン重合法によつて行うことはできない。」
イ 2頁左欄8行?25行
「一方、分子量分布の狭いポリスチレンを原料として、その分子量分布を広げないで、芳香族環に水酸基を導入することは極めて困難である。最近、tert?ブチルジメチルシランによつてp?ビニルフエノールの水酸基を保護すれば、リチウムナフタレン等の開始剤を用いてリビングアニオン重合が可能となることが報告されているが(高分子学会予稿集、31巻、1149ページ)、この場合、p?ビニルフエノキシtert?ブチルジメチルシランは精製が難しいこととその合成に必要なtert?ブチルジメチルシリルクロリドが極めて高価であることが実用的な難点となつている。
本発明者は飽和脂肪族系保護基によつてフエノール残基の水酸基を保護して得たモノマーについてリビングアニオン重合を試みた結果、tert?ブチル基等の体積の大きな基を保護基として用いれば、リビングアニオン重合が可能になることを見出し本発明に到達したものである。」
(5)参考資料1の記載事項
参考資料1には次の記載がある。
ア 「【請求項1】(A)官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体と、該官能基に反応する置換基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られる、側鎖にエネルギー線重合性不飽和基を有する分子量100,000以上のエネルギー線硬化型共重合体と、(B)分子量100,000以上で、かつガラス転移温度が-10℃以下であるアクリル系重合体とからなることを特徴とするエネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物。
【請求項2】(C)光重合開始剤をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物。
【請求項3】(D)分子量10,000以下のエネルギー線重合性化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載のエネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物。
【請求項4】請求項1?3の何れかに記載のエネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物が、基材上に塗布されてなることを特徴とする粘着シート。
【請求項5】ウエハ加工用粘着シートとして用いられることを特徴とする請求項4に記載の粘着シート。」
イ 「【0006】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、エネルギー線の照射前には、充分な感圧接着性と初期接着力を有し、照射後にはゴム弾性を維持しつつ接着力が激減するエネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物を提供することを目的としている。
【0007】また、本発明は、このようなエネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物を用いた粘着シート、特にウエハ加工用粘着シートおよび表面保護用粘着シートを提供することを目的としている。」
ウ 「【0033】さらに、エネルギー線に対する硬化特性を制御するために、エネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物に低分子量のエネルギー線重合性化合物(D)を添加することもできる。化合物(D)の分子量は、10,000以下であり、好ましくは100?8000程度であり、特に好ましくは100?3000程度である。
【0034】このような本発明において用いられうるエネルギー線重合性化合物(D)としては、具体的には、アクリレートモノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性ウレタンアクリレートオリゴマーあるいはエポキシアクリレートオリゴマー等があげられる。」
エ 「【0078】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明に係るエネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物は、充分なゴム弾性を示し、エネルギー線照射前には被着体に対して充分な感圧接着性と初期接着性を有し、エネルギー線照射後には、ゴム弾性を維持しつつ、被着体に対する接着力が激減し、粘着剤を残留することなく除去することができる。このため、本発明に係るエネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物は、貼付後の剥離を前提とした用途、たとえばウエハ加工あるいは表面保護用粘着シートに好ましく使用される。」
オ 「【0080】・・・
180°剥離粘着力
実施例あるいは比較例において得られた粘着フィルムを23℃、65%RHの雰囲気下で、半導体ウエハ鏡面に2kgゴムローラーを往復させることにより貼り付け、30分間放置した後、万能型引張試験機(株式会社オリエンテック製、TENSILON / UTM-4-100)を用いて剥離速度300mm/分で180°剥離粘着力を測定した。また、同様の条件で貼付、放置後、基材フィルム側から高圧水銀灯(80W/cm)で照射距離10cm、ラインスピード5mで紫外線照射した後、同様に180°剥離粘着力を測定した。
・・・
残留パーティクル測定
粘着シートに4インチシリコンウエハを貼付し、1時間放置後、180°剥離粘着力測定の時と同様の条件で紫外線照射に、粘着シートを剥離した。このときウエハに残留したパーティクルの数をレーザー表面検査装置(日立電子エンジニアリング製)により測定した。

カ 「【0081】また、以下の実施例において、エネルギー線硬化型共重合体(A)、アクリル系重合体(B)、光重合開始剤(C)およびエネルギー線重合性化合物(D)として以下のものを用いた。
エネルギー線硬化型共重合体(A)
(A1):ブチルアクリレート75重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート25重量部からなる重量平均分子量250,000の共重合体の25%酢酸エチル溶液100重量部と、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート6.7重量部との反応物。
(A2):ブチルアクリレート60重量部、メチルメタクリレート10重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート30重量部からなる重量平均分子量400,000の共重合体の25%酢酸エチル溶液100重量部と、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート8.4重量部との反応物。
アクリル系重合体(B)
(B1):ブチルアクリレート75重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート25重量部からなる重量平均分子量250,000の共重合体の25%酢酸エチル溶液。
(B2):ブチルアクリレート60重量部、メチルメタクリレート10重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート30重量部からなる重量平均分子量400,000の共重合体の25%酢酸エチル溶液。
光重合開始剤(C)
(C):イルガキュアー184(チバ・ガイギー社製)
エネルギー線重合性化合物(D)
(D1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(D2):ウレタンアクリレート(重量平均分子量3000)」
キ 「【0082】
【実施例1】上記成分(A1)67重量部、(B1)33重量部、(C)1重量部および多価イソシアナート化合物(コロネートL(日本ポリウレタン社製))0.5重量部を混合しエネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物を得た。このエネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物を、乾燥後の塗布厚が10μmになるように、80μm厚のエチレン-メタクリル酸共重合体フィルムに塗布した後、100℃で1分間乾燥し、粘着シートを得た。
【0083】得られた粘着シートを用いて「180°剥離粘着力」、「エキスパンド性(拡張率)」、「整列性」および「残留パーティクル測定」は上記のようにして評価した。結果を表1に示す。」
ク 「【実施例9】上記成分(A1)50重量部、(B1)50重量部、(C)1重量部、(D1)2重量部およびコロネートL0.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行なった。結果を表1に示す。
【0092】
【実施例10】上記成分(A1)50重量部、(B1)50重量部、(C)1重量部、(D2)5重量部およびコロネートL0.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行なった。結果を表1に示す。」
ケ 「【0099】
【表1】


(6)参考資料2の記載事項
参考資料2には次の記載がある。
ア 「【請求項1】
水酸基を有するポリマー(A)、活性エネルギー線硬化性化合物(B)、光重合開始剤(C)およびイソシアネート系硬化剤(D)を含んでなり、前記(A)?(C)が有する水酸基の合計に対する、(D)中のイソシアネート基の当量比が1を超え30以下であることを特徴とする活性エネルギー線粘着力消失型粘着剤組成物。
【請求項2】
水酸基を有するポリマー(A)が、さらにカルボキシル基を有するポリマー(A-1)であって、前記(A-1)、活性エネルギー線硬化性化合物(B)、および光重合開始剤(C)が有する水酸基と、カルボキシル基との合計に対する、イソシアネート系硬化剤(D)中のイソシアネート基の当量比が0.05?0.35であることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線粘着力消失型粘着剤組成物。
【請求項3】
基材、請求項1または2記載の活性エネルギー線粘着力消失型粘着剤組成物から形成される粘着剤層(I)および剥離シートが順次積層されてなる粘着テープであって、前記剥離シートの剥離処理面の算術平均粗さ(Ra)が0.10?2μmであることを特徴とする粘着テープ。」
イ 「【0005】
本発明は、電子部品や、プリント回路基板等へ表面保護や、裏面の補強用として貼付し、その貼り直し性が良好で、エッチング液やメッキ液等への薬液耐性を有し、製造工程後は活性エネルギー線照射により粘着力が低下し、糊残りなく容易に剥離可能な、活性エネルギー線粘着力消失型粘着剤組成物とそれを塗工した粘着テープを提供することを目的とする。」
ウ 「【0009】
本発明の活性エネルギー線粘着力消失型粘着剤組成物を用いることにより、プリント回路基板等へ補強用として貼付するときの貼り直し性が良好で、エッチング液やメッキ液等への薬液耐性を有し、製造工程後は活性エネルギー線照射により糊残りなく容易に剥離可能な粘着テープを提供することができるようになった。その結果、プリント回路基板の製造時のロスを低減することが可能になり、歩留まりを向上することができた。」
エ 「【0024】
活性エネルギー線粘着力消失型粘着剤組成物に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物(B)の作用としては、活性エネルギー線照射により、光重合開始剤(C)が反応し、さらに活性エネルギー線硬化性化合物(B)がより高度な3次元架橋を起こすことにより、粘着剤層(I)の粘着力が低下もしくは消失して、被着体から容易に剥離可能となる。活性エネルギー線硬化性化合物(B)は官能基として(メタ)アクリロイル基(「アクリロイル基」と「メタクリロイル基」とをあわせて「(メタ)アクリロイル基」と称す)を有する化合物で、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能モノマーおよび/または(メタ)アクリロイル基を6個以上有するウレタンアクリレートオリゴマーを使用することが好ましい。活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、水酸基を有するポリマー(A)100重量部に対して20?300重量部使用することが好ましく、30?150重量部使用することがより好ましい。
【0025】
活性エネルギー線硬化性化合物(B)として用いられる(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能モノマーとしては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2-ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート等が挙げられる。
【0026】
ウレタンアクリレートオリゴマーについては、分子内にウレタン結合を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を6個以上有するオリゴマーであればよい。ウレタンアクリレートオリゴマーの重量平均分子量は600?20000が好ましく、さらに600?10000が好ましい。20000を超えると活性エネルギー線照射後の粘着力消失性が不足する恐れがある。またウレタンアクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を分子内に6?20個有することが好ましい。6個に満たないときは活性エネルギー線照射後の粘着力消失性が不足する恐れがあり、20個を超えても活性エネルギー線照射後の粘着力消失性をさらに向上させることは難しい。」
オ 「【0041】
<ポリマー合成例1>
ブチルアクリレート99.3部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.7部、アゾビスイソブチロニトリル0.1部および酢酸エチル150部を原料として、窒素雰囲気下で加熱還流して、溶液重合によりポリマー合成を行った。その結果、不揮発分40%の水酸基を有するポリマー(A)溶液を得た。ポリマーの重量平均分子量(Mw)は42万であった。
・・・
【0045】
<ポリマー合成例5>
ポリマー合成例1で合成した水酸基を有するポリマー(A)溶液100部に、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート0.32部およびジブチルヒドロキシトルエン0.00032部を加え、酸素雰囲気下で加熱して、合成を行った。その結果、不揮発分41%の側鎖にメタクリロイル基を有するポリマー(A)溶液を得た。ポリマーの重量平均分子量44万であった。」
カ 「【0047】
<粘着シート作成>
表1の上段に示す配合組成で攪拌混合した粘着剤組成物を、コンマコーターを使用して厚さ100μmの易接着処理PETフィルム(U426 東レ製)へ乾燥膜厚が20μmになるように塗工し、熱風乾燥オーブン通過後に、表1の下段に示す剥離シートの剥離処理面を貼り合わせて実施例1?7および比較例1?4の粘着テープを得た。
・・・
【0049】
[粘着力]
剥離シートを剥がした粘着テープとポリイミドフィルム(カプトン100H 東レデュポン製)をハンドローラーで貼付後に、80℃-0.4MPa?1m/minの条件でラミネートを行った後、引っ張り試験機(テスター産業製「TE-503」)を使用してJIS K6854に準拠したT型剥離試験(幅25mm、剥離速度300mm/min)で、下記測定を行った。
貼付20分後粘着力:貼付20分後に測定(単位N/25mm)。
永久粘着力:貼付24時間後に測定。
照射後粘着力:貼付2時間以内に高圧水銀ランプを使用して、活性エネルギー線を積算照度が500mJ/cm^(2)になるまで照射し、照射24時間後に粘着力を測定した。
・・・
【0052】
[糊残り評価]
薬液耐性テストで使用した試料を、乾燥後に高圧水銀ランプを使用して、積算照度が500mJ/cm^(2)になるまで活性エネルギー線を照射した。照射1時間以内に粘着テープを剥離して、ポリイミド面の糊残りを目視にて5段階評価した。
1:点状糊残りあり。
2:粘着テープ外周状の糊残りあり。
3:粘着テープ外周上の一部に糊残りあり。
4:外周状の曇りが確認されるが糊残りはない。
5:糊残り・汚染がない。」
キ 「【0054】
【表1】


ク 「【0055】
【表2】


(7)参考資料3の記載事項
参考資料3には次の記載がある。
ア 「【請求項1】
ベースポリマーと分子内に放射線反応性炭素-炭素二重結合を有する放射線反応性化合物とを反応させることによって得られる(メタ)アクリル系ポリマー、及び多官能モノマーを含有し、
前記ベースポリマーは、共重合モノマー成分として、炭素数2?8の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーと、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーと、炭素数14?18の直鎖アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーとを少なくとも有し、
前記共重合モノマー成分全量に対して、前記炭素数2?8の直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有量が30?80質量%、前記水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有量が5?20質量%、前記炭素数14?18の直鎖アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーの含有量が10?60質量%であり、
前記放射線反応性化合物の含有量が、前記ベースポリマー100質量部に対して、5?25質量部である放射線硬化性粘着剤組成物。
【請求項2】
前記多官能モノマーの含有量が、前記ベースポリマー100質量部に対して、5?30質量部である請求項1に記載の放射線硬化性粘着剤組成物。
【請求項3】
さらに、架橋剤、及び光重合開始剤を含有する請求項1または2に記載の放射線硬化性粘着剤組成物。
【請求項4】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に粘着剤層とを有するダイシング用粘着フィルムであって、
前記粘着剤層は、請求項1?3のいずれか1項に記載の放射線硬化性粘着剤組成物を含有するダイシング用粘着フィルム。」
イ 「【0003】
上記ダイシング用粘着フィルムは、一般に、プラスチックフィルムなどの基材上に粘着剤組成物を含有する粘着剤層が形成された構成を有している。半導体素子を製造する場合、ダイシング用粘着フィルムには、ダイシング工程における粘着フィルムからの半導体素子の脱離飛散を抑えるため、ダイシング時に洗浄水の水圧が加えられても粘着フィルムから半導体素子が剥離しない程度の高い粘着力が要求される一方、ピックアップ工程における剥離時には粘着剤層が半導体ウェハを破損しない程度の低い粘着力になる軽剥離性、及び切断された半導体素子上に糊残りなどが生じない低汚染性を有することが要求されている。」
ウ 「【0010】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、放射線による硬化前では粘着力が高く、放射線による硬化後では粘着力が著しく低下する放射線硬化性粘着剤組成物を提供すること、及び前記放射線硬化性粘着剤組成物を用いることにより、ダイシング工程においては高い粘着力を有し半導体素子などの切断片の脱離飛散が抑えられるとともに、ピックアップ工程においては活性面を有する被加工物に対しても優れた軽剥離性及び低汚染性が得られる粘着剤層を有するダイシング用粘着フィルムを提供することにある。」
エ 「【0033】
本実施の形態の放射線硬化性粘着剤組成物は、さらに分子内に放射線反応性炭素-炭素二重結合を複数有する多官能モノマーを含有する。上記の長鎖のアルキル基を有するベースポリマーを用いて得られる(メタ)アクリル系ポリマーと多官能モノマーとを併用することにより、放射線の照射で(メタ)アクリル系ポリマーが重合硬化するだけでなく、分子内に放射線反応性炭素-炭素二重結合を複数有する多官能モノマー同士も反応するため、(メタ)アクリル系ポリマーの重合物が多官能モノマーの反応物によって拘束される。さらに、(メタ)アクリル系ポリマー及び多官能モノマーいずれも放射線反応性炭素-炭素二重結合を有するから、(メタ)アクリル系ポリマーと多官能モノマーも反応する。これにより、より高密度の三次元架橋構造が形成されて放射線硬化性粘着剤組成物が硬化収縮するため、著しく粘着力を低下させることができる。
【0034】
多官能モノマーの放射線反応性炭素-炭素二重結合の数は、一分子当たり、好ましくは2個以上であり、より好ましくは3?6個である。放射線反応性炭素-炭素二重結合の数が1個では、高分子量化しないため硬化が不充分となり粘着力が十分低下しない。このような多官能モノマーとしては、具体的には、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独でまたは複数使用してもよい。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0035】
多官能モノマーの含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、好ましくは3?35質量部であり、より好ましくは5?30質量部である。多官能モノマーの含有量が3質量部以上であれば、放射線の照射により硬化が十分に促進され、粘着力をより低減することができる。一方、多官能モノマーの含有量が35質量部以下であれば、低分子量成分による放射線による硬化前の粘着力の低下がより抑えられるとともに、放射線による硬化後の糊汚れをより低減することができる。」
オ 「【実施例】
【0050】
<(メタ)アクリル系ポリマーの合成>
共重合モノマー成分として、炭素数2の直鎖アルキル基を含有するアクリル酸エチル(EA)、炭素数8の分岐アルキル基を含有するアクリル酸2-エチルヘキシル(EHA)、水酸基を含有するアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)、炭素数14の直鎖のアルキル基を含有するアクリル酸ミリスチル(MA)、炭素数18の直鎖のアルキル基を含有するアクリル酸オクタデシル(STA)、及び炭素数12の直鎖のアルキル基を含有するアクリル酸ドデシル(LA)を準備した。これらの共重合モノマー成分を表1に示す各配合量で混合し、溶液ラジカル重合して各ベースポリマーを合成した。なお、重合にあたっては、GPCにより共重合モノマー成分の反応追跡を行い、共重合モノマー成分が消失した時点で重合を終了した。
【0051】
次に、この各ベースポリマー100部に対し、放射線反応性炭素-炭素二重結合を含有する2-イソシアネートエチルメタクリレート(IEM)を、表1に示す各配合量で反応させて、各(メタ)アクリル系ポリマーを合成した。なお、上記の反応にあたっては、重合禁止剤としてヒドロキノン・モノメチルエーテル(MEHQ)を0.05部用いた。合成した各(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量をGPC(溶媒:テトラヒドロフラン)により測定したところ、50万?80万であった。
【0052】
<ダイシング用粘着フィルムの作製>
多官能モノマーとして、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学社製,PE3A,3官能)、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製,DPHA,6官能)を準備した。上記のようにして得られた各(メタ)アクリル系ポリマーと、表1に示す各配合量の多官能モノマーと、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製,コロネートL)0.1部と、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティー・ケミカルズ社製,イルガキュア-184)0.5部とを混合し、各放射線硬化性粘着剤組成物を調製した。
【0053】
次に、上記のようにして得られた各放射線硬化性粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート製セパレータ(厚み:38μm)上に厚さが10μmとなるように塗布して粘着剤層を形成した後、100℃で3分間加熱した。その後、粘着剤層に、片面にコロナ放電処理が施されたポリオレフィン製フィルム(厚み:100μm)を貼り合わせた。貼り合せた試料を40℃の恒温槽に72時間保存して、各ダイシング用粘着フィルムを作製した。」
カ 「【0056】
(放射線による硬化後の粘着力)
放射線による硬化前の粘着力の測定で用いた測定試料と同様の測定試料を作製した。この測定試料のダイシング用粘着フィルムの基材側から紫外線(照射強度:300mJ/cm^(2))を照射し、照射後の粘着力を上記の放射線による硬化前の粘着力と同様にして測定し、以下の基準で硬化後の粘着力を評価した。
○:粘着力の測定値が、0.05N/10mm未満
△:粘着力の測定値が、0.05N/10mm以上、0.15N/10mm以下
×:粘着力の測定値が、0.15N/10mm超
【0057】
(ピックアップ性)
厚さ100μmの5インチのシリコンミラーウェハを鏡面研磨処理した後、直ちに23℃の雰囲気下で研磨面にダイシング用粘着フィルムを貼り合わせた。この粘着フィルムが貼付されたウェハに洗浄水を供給しながらウェハを3mm×3mmの大きさにフルカットした。
次に、ダイシング用粘着フィルムの基材側から紫外線(照射強度:300mJ/cm^(2))を照射し、エキスパンドした後、半導体素子を粘着フィルムから剥離して、ピックアップした。任意の半導体素子100個をピックアップしたときに、全ての半導体素子のピックアップが成功した場合を、◎、95?99個の半導体素子のピックアップが成功した場合を、○、50?94個の半導体素子のピックアップが成功した場合を、△、それ以外を、×としてピックアップ性を評価した」
キ 「【0058】
【表1】


ク 「【0063】
そして、長鎖のアルキル基を有する共重合モノマー成分を一定量含有するベースポリマーと一定量の放射線反応性化合物とを反応させた(メタ)アクリル系ポリマー、及び多官能モノマーを一定量含有する放射線硬化性粘着剤組成物を用いた場合、硬化前では粘着力が高く、硬化後では著しく粘着力が低下することが分かる。特に、多官能モノマーをベースポリマーに対して、5?30質量部用いた場合、硬化前により高い粘着力を有し、且つ硬化後に低い粘着力を有する粘着剤層が得られることが分かる。このため、これらの放射線硬化性粘着剤組成物を用いた場合、ダイシング時に半導体素子の脱離飛散も観察されず、またピックアップ工程において全ての半導体素子をピックアップすることができた。なお、多官能モノマーを35質量部含有する放射線硬化性粘着剤組成物を用いた場合、得られた半導体素子の表面に若干糊汚れが観察された。
【0064】
これに対して、同一の(メタ)アクリル系ポリマーを用いても、多官能モノマーを含有しない放射線硬化性粘着剤組成物は、硬化後にある程度粘着力が低下するが、多官能モノマーを併用した場合に比べて、粘着力の低下が少ないことが分かる。」
(8)参考資料4の記載事項
参考資料4には以下の事項が記載されている。
ア 1頁左下欄4?12行
「2.特許請求の範囲
(1)分子内に放射線重合性の不飽和結合を有してなるヨウ素価が0.5?20であるアクリル酸アルキルエステル系および/またはメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、このポリマー100重量部に対して1?50重量部となる割合の放射線重合性の多官能オリゴマーとを主成分として含む再剥離型粘着剤。」
イ 2頁左上欄3行?右上欄12行
「 〔発明が解決しようとする課題〕
しかるに、上記公知の粘着シートでは、粘着剤中の多官能オリゴマーの量が少ないと、放射線の照射による重合硬化速度が遅くなるうえに、接着力の低下も小さくなり、一方上記の量を多くすると、放射線の照射前の凝集力が小さくなって素子小片への切断時にズレが生じやすく、また硬化後は粘着剤の伸びが小さくなり、素子小片を分離しピックアップする際に粘着シートを引き伸ばしたとき、粘着剤層にクラックが発生して、素子小片が飛散するといった不具合があった。
したがって、この発明は、多官能オリゴマーの多少に起因した上述の如き問題を回避して、半導体ウェハの素子小片への切断作業やピックアップ作業をより良好に行えるような再剥離型粘着剤を提供することを目的としている。
〔課題を解決するための手段〕
この発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、粘着剤のベースポリマーとして分子内に放射線重合性の不飽和結合を導入した特定のアクリル酸アルキルエステル系および/またはメタクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用い、このポリマーに多官能オリゴマーを配合するようにすると、放射線照射前の凝集力や接着力が大きく、しかも放射線の照射による重合硬化速度が速くてかつ硬化後の接着力の低下の大きい再剥離型粘着剤が得られ、これによれば半導体ウェハの素子小片への切断作業やピックアップ作業の大幅な改善を図れるものであることを知り、この発明を完成するに至った。」
ウ 2頁左下欄13?18行
「このような重合性ポリマーに放射線重合性の多官能オリゴマーを配合すると、放射線の照射により粘着剤層の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の増加が著しくなって、接着力の低下が大きくなる。」
エ 3頁左下欄11行?4頁左上欄2行
「この発明において用いる多官能オリゴマーは、その分子量が通常10,000以下であるのがよく、より好ましくは放射線の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5,000以下でかつ分子内の放射線重合性の不飽和結合の数が2?6個のものを用いるのがよい。このような特に好適な多官能オリゴマーとしては、たとえばトリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールへキサアクリレートまたは上記同様のメタクリレート類などが挙げられる。その他、1・4-ブチレングリコールジアクリレート、1・6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートまたは上記同様のメタクリレート類なども使用することができる。
多官能オリゴマーとしては、上記の化合物のうちの1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。その使用量は、上記の重合性ポリマー100重量部に対して、1?50重量部、好適には5?20重量部である。1重量部未満となると、放射線の照射による重合硬化後のガラス転移点の上昇が小さくかつ架橋率も小さいため、接着力の低下が小さくなる。また50重量部を超えると、放射線照射前の粘着剤の可塑化が著しくなって半導体ウェハの切断時にズレや接着不良が発生し、また放射線照射後は粘着剤の伸びの不足などの不具合が生じてくる。」
オ 4頁右下欄14行?5頁左上欄3行
「〔発明の効果〕
以上のように、この発明においては、特定の重合性ポリマーに多官能オリゴマーを特定量配合する構成としたことにより、放射線照射前の凝集力や接着力が大きく、しかも放射線の照射による重合硬化速度が速くてかつ硬化後の接着力の低下の大きい再剥離型粘着剤を得ることができ、この粘着剤によれば半導体ウェハの素子小片への切断作業やピックアップ作業の大幅な改善を図ることができる。」
カ 5頁左上欄10行?左下欄13行
「実施例1
アクリル酸n-ブチル79部、アクリル酸エチル15部、アクリル酸1部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル5部を、トルエン中で常法により共重合して、重量平均分子量が65万の官能基含有ポリマーを含む固形分濃度が35重量%のポリマー溶液を得た。
つぎに、このポリマー溶液に、官能基含有ポリマー100部に対してメタクリル酸2-イソシアネートエチル(昭和ローデイオ社製のMDI)3.5部を加え、40℃で6時間かけて反応させることにより、ヨウ素価が5.2の重合性ポリマーを含むポリマー溶液とした。
この重合性ポリマー溶液に、重合性ポリマー100部に対してペンタエリスリトールトリアクリレート20部、ベンゾフェノン0.5部およびポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製のコロネートL)0.3部を配合し、再剥離型粘着剤の溶液を調製した。
この溶液を厚さが38μmのポリプロピレンフィルムに塗布し、加熱乾燥して、厚さが10μmの粘着剤層を形成し、その上面に剥離紙を貼り合わせて粘着シートとした。剥離紙を除去し、直径101のシリコンウェハを粘着剤層面に貼り合わせて、JIS-Z-0237に基づき初期接着力を測定したところ、550g/25mmであったが、粘着剤層に電子線を実効吸収線量2Mrad(電圧150KeV、電流5mA)照射したのち、その接着力を調べたところ、10g/25mmと著しく低下していた。
つぎに、この粘着シートに直径5インチの大きさの半導体ウェハを貼り付け、回転丸刃を用いて50mlの大きさの素子小片に切断した。この切断は2kg/cm^(2)の水圧の水で洗浄しながら行ったものであるが、その際に素子小片が剥がれ落ちることはなかった。この切断後、粘着シートの基材側から高圧水銀ランプ(40W/cm)で発生した光を集光して5秒間ピックアップするべき素子小片に対応する部分にのみ光照射したのち、この照射部分の素子小片をニードルで突き上げるとともに、エアピンセットで吸着することにより、ピックアップした。このピックアップ作業は非常に容易で、しかも粘着剤層の素子小片への移行は認められず、隣接する素子小片の飛散も生じなかった。」
キ 6頁左上欄15行?右上欄6行
「比較例1
ペンタエリスリトールトリアクリレート20部を用いなかった以外は、実施例1と同様にして再剥離型粘着剤の調製および粘着シートの作製を行った。この粘着シートの初期接着力および電子線照射後の接着力を調べたところ、初期接着力は450g/25mm、電子線照射後の接着力は180g/25mmであった。また、この粘着シートを用いて実施例1と同様の方法で半導体ウェハの切断およびピックアップ作業を行ってみたところ、切断作業は良好に行えたが、ピックアップ作業はうまく行えなかった。」
2 本件発明1について
(1)甲1発明の認定
ア 前記1(1)クに摘記した甲1の段落【0038】?【0040】に記載された実施例2(以下「甲1実施例2」という。)に注目し、以下検討する。
イ モノマーについて
(ア)甲1実施例2におけるポリマーを構成するモノマーの組成は、前記1(1)キに摘記した甲1の段落【0034】?【0037】に記載された実施例1と同じであるから、甲1の段落【0036】にあるように、「ブチルアクリレート80gおよびトリメチルシリルオキシエチルアクリレート20g」である。
(イ)トリメチルシリルオキシエチルアクリレートは、段落【0036】に記載のように重合後「保護基であるトリメチルシリル基を脱離させ末端をOH化」されることから、ヒドロキシエチルアクリレート単位となっていると認められる。なお、前記1(4)イに摘記した甲4の記載から、ヒドロキシエチルアクリレートにトリメチルシリルクロリドを反応させることでトリメチルシリルオキシエチルアクリレートが得られると推認できる。
ウ 重合反応について
前記1(1)オに摘記した甲1の段落【0018】には、「サマリウム錯体を開始剤とする配位重合」と記載されており、前記実施例2においても、サマリウム錯体が用いられているから、配位重合であると認められる。
エ 放射線について
前記1(1)クに摘記した甲1の段落【0039】に記載の「放射線硬化型」とは、前記1(1)ケに摘記した甲1の段落【0044】の「実施例2、比較例3については加工処理後に紫外線を照射」という記載から、紫外線硬化型であることが理解できる。
オ 甲1発明
以上から、甲1には、「ブチルアクリレート80g及びヒドロキシエチルアクリレートをトリメチルシリル基によって保護したトリメチルシリルオキシエチルアクリレート20gを配位重合すると共にトリメチルシリル基を脱離されて得られる重量平均分子量54.5万、分散度1.41のアクリル系共重合体ポリマーに、さらに5gの2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを反応させた紫外線硬化型樹脂溶液に、イソシアネート系架橋剤とアセトフェノン系光重合開始剤を加えて得られた粘着剤を、フイルム上に塗布して乾燥させた粘着剤層を有する粘着シート」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)対比
ア 分散度について
(ア)前記1(1)ウに摘記したように、甲1の段落【0008】に「分散度(重量平均分子量/数平均分子量)」と記載されているから、甲1発明の分散度は本件発明の「分子量分布(Mw/Mn)」と同義である。
(イ)甲1発明における分散度1.41は、本件発明1に規定される「分子量分布(Mw/Mn)=1.05?2.5」を充足する。
イ 2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートについて
(ア)前記(1)イ(イ)において検討したように、末端をOH化された状態で、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと反応させると、OH基がイソシアネート基と反応することは技術常識であって、この場合、メタクリロイル基が上記ポリマーに導入され、その基に含まれる炭素同士の2重結合部分が重合可能であることも技術常識である。また、甲1発明は、前記(1)エで検討したように、紫外線照射により重合するものである。
(イ)そうすると、甲1において2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを反応させることは、本件発明1における「ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した」及び「前記(メタ)アクリルポリマーは、・・・ポリマーに、前記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させて得られたものである」に相当する。
ウ モノマー混合物について
(ア)甲1発明の「ブチルアクリレート80g及びヒドロキシエチルアクリレートをトリメチルシリル基によって保護したトリメチルシリルオキシエチルアクリレート20g」のうち、ブチルアクリレートには、官能基が存在しないが、トリメチルシリルオキシエチルアクリレートには、保護基で保護された潜在的な官能基が存在するといえる。保護基をその後除去することは、当然必要なことであるからである。
(イ)そうすると、甲1発明の「ブチルアクリレート80g及び・・・トリメチルシリルオキシエチルアクリレート20g」は、本件発明1における「官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有するモノマー混合物」に相当し、混合物におけるトリメチルシリルオキシエチルアクリレートは、20重量%であるから、本件発明1の「1重量%以上25重量%以下」を充足する。
エ 共重合について
(ア)甲1発明における共重合は、前記ウのようにモノマーの混合物の共重合であり、甲1にブロック共重合という明示がないから、ランダム共重合であることが推認できる。
(イ)そうすると、甲1発明における重合は、本件発明1の「ランダム共重合」に相当する。
オ 粘着テープについて
(ア)「テープ」とは、前記1(1)カに摘記した甲1の段落【0027】に記載されているように、シートを巻いたものとも解される。
(イ)しかしながら、本件特許明細書の段落【0056】の「厚み50μmの離型処理したPETフィルムに、得られた粘着剤溶液を、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、70℃で10分間乾燥させ、粘着テープを得た。」と記載されており、巻く工程の記載がないことから、本件発明における「粘着テープ」は、単なる「粘着シート」を指していると解される。
カ 一致点
以上から、本件発明1と甲1発明は次の点で一致する。
「粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5の重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマーを含有し、
前記重合ポリマーは、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有するモノマー混合物を共重合させて得られたランダム共重合体であり、
前記モノマー混合物における前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が1重量%以上25重量%以下であり、
前記(メタ)アクリルポリマーは、前記重合ポリマーに、前記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させて得られたものであることを特徴とする粘着テープ。」である点。
キ 相違点
本件発明1と甲1発明は次の点で相違する。
(ア)相違点1
重合について、本件発明1においては、「リビングラジカル重合」であるのに対し、甲1発明においては、「配位重合」である点。
(イ)相違点2
粘着剤層について、本件発明1においては、「ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマー」を含有するのに対し、甲1発明においては、当該成分を含有しない点。
(3)本件発明1についての判断
ア 相違点1について
(ア)前記1(1)オに摘記した甲1の段落【0018】には、「このようなベースポリマーは、例えば金属の酸化・還元反応を利用したリビングラジカル重合、サマリウム錯体を開始剤とする配位重合などの開始、成長反応が完全に制御されながら重合反応が進行する、いわゆるリビング重合法を採用することができる。」と記載されており、リビングラジカル重合についても示唆がされている。
(イ)前記1(2)イ(エ)、(オ)に摘記したように、甲2には、粘着剤に用いるポリマーの分子量分布を幅狭くするために、リビングラジカルポリマーを採用することが記載され、具体的に、前記2(2)イ(カ)、(キ)に摘記したように、「ポリアクリル酸n-ブチル-co-ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル」が合成可能であることが示されている。
(ウ)前記1(3)エに摘記したように、甲3には、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主剤とするアクリル系粘着剤低分子量成分を減少させるためにリビングラジカル重合を重合方法とすることが記載され、前記1(3)オに摘記したように具体的な実施例として、リビングラジカル重合により粘着剤用の(メタ)アクリル酸系ランダム共重合体が合成可能であることが示されている。
(エ)そうすると、甲1発明及び甲1の段落【0018】の記載を動機づけとして、甲2及び甲3に記載された事項を採用して、本件発明1は当業者が容易に想到できるものという他ない。
(オ)なお、重合方法が本件発明1のように「リビングラジカル重合」であるか、甲1発明のように「配位重合」であるかに応じて、モノマーが持つ水酸基のような官能基について、保護基による保護が必要ないか、必要があるかの相違もあるが、保護基により保護されても官能基を有することに相違がないことは、前記(2)ウ(ア)において、「トリメチルシリルオキシエチルアクリレート」が官能基を有すると認定したとおりである。
イ 相違点2について
(ア)甲1発明は、前記1(1)に摘記したように、ウエハ加工用粘着シート用をその用途とするものであり、その重要な機能は、前記1(1)コに摘記したように、放射線照射により粘着力を低下した状態で剥離した後の転写汚染物質を少なくすることである。
(イ)周知技術の認定
a 前記1(5)ウに摘記したように参考資料1には、「エネルギー線に対する硬化特性を制御するために、エネルギー線硬化型感圧粘着剤組成物に低分子量のエネルギー線重合性化合物(D)を添加することもできる。」とされ、具体的には、前記2(5)オに摘記したように、「(D1):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、(D2):ウレタンアクリレート」が用いられ、これらは、本件発明1の「ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマー」に相当する。
そして、前記1(5)ケに摘記した表1から残留パーティクルが減少していることが読み取れる。
b 前記1(6)ア、エに摘記したように参考資料2には、「水酸基を有するポリマー(A)、活性エネルギー線硬化性化合物(B)、光重合開始剤(C)およびイソシアネート系硬化剤(D)を含」む「活性エネルギー線粘着力消失型粘着剤組成物」に用いられる、「活性エネルギー線硬化性化合物(B)は官能基として(メタ)アクリロイル基(「アクリロイル基」と「メタクリロイル基」とをあわせて「(メタ)アクリロイル基」と称す)を有する化合物で、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能モノマーおよび/または(メタ)アクリロイル基を6個以上有するウレタンアクリレートオリゴマーを使用することが好ましい。」とされ、具体的には、前記1(6)キに摘記した表1の注記にあるように、多官能モノマーとして「アクリロイル基3 ライトアクリレートTMP 共栄社化学製」が用いられ、ウレタンアクリレートオリゴマーとして「ウレタンアクリレートオリゴマーA(アクリロイル基6 Mw1000)等が用いられており、これらは、本件発明1の「ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマー」に相当する。
そして、それにより前記1(6)クに摘記した表2から「糊残り評価」が高くなっていることが読み取れる。
c 前記1(7)エに摘記したように参考資料3には、「本実施の形態の放射線硬化性粘着剤組成物は、さらに分子内に放射線反応性炭素-炭素二重結合を複数有する多官能モノマーを含有する。」とされ、具体的には、前記1(7)オに摘記した段落【0052】に「ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学社製,PE3A,3官能)、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製,DPHA,6官能)」と記載され、これらは、本件発明1の「ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマー」に相当する。
そして、前記1(7)キに摘記した表1から、多官能モノマーを添加することによりピックアップ性が向上していることが読み取れる。
d 前記1(8)エに摘記したように参考資料4には、「この発明において用いる多官能オリゴマーは、その分子量が通常10,000以下であるのがよく、より好ましくは放射線の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5,000以下でかつ分子内の放射線重合性の不飽和結合の数が2?6個のものを用いるのがよい。このような特に好適な多官能オリゴマーとしては、たとえばトリメチロールプロパントリアクリレート・・・」と記載され、具体的には、前記1(8)カに摘記したように「ペンタエリスリトールトリアクリレート」を用いて実証されており、これは本件発明1の「ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマー」に相当する。
これにより、前記1(8)カ、キに摘記したように、ペンタエリスリトールトリアクリレートを用いない場合(比較例1)よりも、ピックアップ性が向上することが記載されている。
e 以上から、ウエハ加工用粘着シート用粘着剤において、放射線照射により粘着力を低下した状態で剥離した後の転写汚染物質を少なくために、「ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマー」を添加することは、本件元出願前に周知の技術であったと認められる。
ウ 阻害要因について
(ア)前記第5、1(1)ウに摘記した甲1の従来技術を説明する段落【0005】には、「そして、通常、放射線照射後に粘着力が大きく低下するという特性を付与するため、放射線重合性化合物としては、1分子内に炭素-炭素二重結合を2個以上有するいわゆる多官能化合物が多く用いられている。このような放射線硬化型粘着剤に放射線を照射すると、放射線重合性化合物が反応して三次元網状構造が速やかに形成され、粘着剤全体が急激に反応・硬化し、粘着力が低下するものとされている。しかしながら、このような多官能化合物は分子量10万未満のオリゴマーまたはモノマーの低分子量成分である場合が多く、前述の理由により転写汚染物の問題は解消できない。」と記載されている。
(イ)前記第5、1(1)コに摘記した甲1の段落【0049】には、「放射線硬化型粘着剤を調製する場合に、分子量10万未満の放射線重合性化合物を混合するような構成では転写汚染物、クラックの問題を解消できない」と記載されている。
(ウ)そして、甲1発明における放射線重合性化合物は全て分子量10万以上の放射線重合性化合物となっており、それにより転写汚染物の問題を解消したというのであるから、分子量10万以上の放射線重合性化合物でない放射線重合性化合物である「ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマー」を添加することによって、転写汚染物の問題が発生すると予測されることになる。
(エ)一方、前記1(1)オに摘記した甲1の段落【0019】には、「放射線硬化型ポリマーは、炭素-炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものであり、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、または多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる」と記載されているが、「オリゴマー成分等を多くは含まない」という記載は、前記aに摘記した甲1の段落【0005】、【0049】の記載から把握できる甲1全体の記載と整合せず、当業者が甲1の段落【0019】の記載から何らかの発想を得ると言うことはできない。
(オ)そうすると、甲1発明に対して相違点2に係る構成を備えさせることには、そもそも動機付けがないことに加えて、阻害要因があって、当業者が容易に想到しうることということはできない。
カ 小括
以上に検討したように、本件発明1は、甲1発明及び甲第2、3号証に記載された技術事項並びに参考文献1?4に示される原出願前周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明ということはできないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえず、特許法第113条第2号の規定により本件発明1に係る特許は取り消すべきものとすることはできない。
3 本件発明3、4に対して
本件発明3、4は、本件発明1を包含し、さらに特定事項を追加するものであるから、本件発明1と同様に本件発明1は、甲1発明及び甲第2、3号証に記載された技術事項並びに参考文献1?4に示される原出願前周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明ということはできないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえず、特許法第113条第2号の規定により本件発明1に係る特許は取り消すべきものとすることはできない。
4 進歩性についての小括
以上のように、本件発明1、3、4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえないから、本件発明1、3、4に係る特許を取り消すことはできない。

第7 本件通知に採用しなかった申立理由について
1 特許異議申立書における申立人の主張
(1)申立人は、特許異議申立書において、本件発明1?6について、(1)官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの種類及び配合割合、(2)コモノマーの種類及び配合割合、(3)重合開始剤などが特定されていないから、本件明細書における実施例を拡張一般化することができず、本件発明1?6の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないと主張する。
(2)しかしながら、申立人は本件発明1?6における具体的に課題が解決できない態様について主張・立証していないから、申立人の主張は採用できない。
2 意見書(申立人)における申立人の主張
(1)申立人は、令和3年1月22日提出の意見書において、本件発明1、3、4に係る発明は、実施例による裏付けを欠いているから、本件特許明細書に記載された本件発明が解決しようとする課題が解決できるといえないから、本件特許請求の範囲の請求項1、3、4の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないと主張する。
(2)しかしながら、「ラジカル重合性の多官能オリゴマーまたはモノマーを含有」させることは、前記第6、1(5)?(8)において摘記したように本件の原出願日前に周知の技術事項であって、本件特許明細書に実施例がないとしても、前記第2、2(2)ウに摘記した本件特許明細書の段落【0036】に記載のように「粘着剤層の紫外線硬化性が向上する」程度に、「ラジカル重合性の多官能オリゴマーまたはモノマーを含有」させることによって本件発明1、3、4の課題が解決できることは本件明細書から読み取れる事項であるから、申立人の主張は採用できない。

第8 むすび
1 本件訂正は認められる。
2 本件発明1?6に係る特許については、特許異議の申立ての理由により取り消すべきものといえず、また、他に取り消すべき理由を発見しない。
3 よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
粘着テープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、糊残りを低減しつつ被着体から容易に剥離することができる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの加工(例えば、裏面研削、ダイシング等)は一般に半導体ウエハに粘着テープを貼り合わせた状態で行われ、加工後に粘着テープが剥離される。
特許文献1及び2には、ダイシング用粘着テープに用いる紫外線硬化型アクリル粘着剤が開示されている。これらの紫外線硬化型アクリル粘着剤は、主鎖の末端又は側鎖に紫外線硬化が可能な不飽和結合を有しており、紫外線の照射により架橋反応を起こして硬化し、粘着力が低下する。特許文献1及び2では、半導体ウエハを加工している間は強力な粘着力でダイシング用粘着テープにより半導体ウエハを固定し、加工後に紫外線を照射してダイシング用粘着テープを剥離し、加工された半導体ウエハ又は半導体チップを得ている。
【0003】
しかしながら、半導体ウエハは壊れやすく、近年では微細な加工や極めて薄い薄膜が表面に形成された半導体ウエハが登場している。このような壊れやすい半導体ウエハからであっても加工後に容易に剥離することができる粘着テープが望まれているが、従来の紫外線硬化型アクリル粘着剤では、半導体ウエハから剥離するときに粘着力が充分に低下せず、糊残りが生じてしまうという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平5-32946号公報
【特許文献2】 特開2013-98408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、糊残りを低減しつつ被着体から容易に剥離することができる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマー、及びラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有する粘着テープである。
以下、本発明を詳述する。
【0007】
粘着剤層には、一般に(メタ)アクリルモノマー等のラジカル重合性モノマーを「フリーラジカル重合」により重合させて得られたポリマーが用いられている。特許文献1及び2に記載されているような紫外線の照射により架橋反応を起こして硬化し、粘着力が低下する粘着剤層にも、一般にフリーラジカル重合により得られたポリマー(本明細書中「フリーラジカル重合ポリマー」ともいう)に紫外線硬化が可能な重合性基を導入したポリマーが用いられている。
しかしながら、フリーラジカル重合は、分子量及び分子量分布、共重合体組成等を充分に制御できず、低分子量成分が生成したり、共重合の場合であってもホモポリマーが生成したりするという欠点がある。本発明者らは、このような低分子量成分又はホモポリマーが糊残りの原因となっていると考えた。また、本発明者らは、フリーラジカル重合ポリマーにおいては、紫外線硬化が可能な重合性基を導入するための反応点となる官能基を有する(メタ)アクリルモノマーが、各ポリマー分子に均一に共重合されていないために、粘着剤層の紫外線硬化性が阻害され、糊残りが発生することを見出した。そこで、本発明者らは、フリーラジカル重合ではなく「リビングラジカル重合」により得られたポリマー(本明細書中「リビングラジカル重合ポリマー」ともいう)を用いることを検討した。
【0008】
リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合であるため、分子量及び分子量分布、共重合体組成等を制御しやすく、例えばフリーラジカル重合等と比較してより均一な分子量及び組成を有するポリマーを得ることができる。
本発明者らは、特定範囲の分子量分布(Mw/Mn)のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマーを用いることにより、糊残りを低減しつつ被着体から容易に剥離することができる粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。糊残りを低減できる理由としては、リビングラジカル重合によれば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、アミド基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで、これらのモノマーを各ポリマー分子に均一に共重合させることができ、上記官能基を反応点として紫外線硬化が可能な重合性基を均一に導入することができるため、粘着剤層の紫外線硬化性を高め、被着体から剥離するときに粘着力を充分に低下させることができる点が挙げられる。
【0009】
本発明の粘着テープは、粘着剤層を有する粘着テープである。上記粘着剤層は、分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマーを含有する。
【0010】
上記リビングラジカル重合ポリマーは、リビングラジカル重合、好ましくは有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合により得られたポリマーである。
上記粘着剤層が上記リビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマーを含有することにより、本発明の粘着テープは、被着体から剥離するときに紫外線照射されるまでは、剥がれにくいものとなる。一方、本発明の粘着テープは、被着体から剥離するときには紫外線の照射により上記粘着剤層の全体が均一にかつ速やかに架橋反応を起こして硬化し、粘着力が大きく低下し、糊残りを低減しつつ被着体から容易に剥離することができる。糊残りを低減できる理由としては、リビングラジカル重合によれば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、アミド基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで、これらのモノマーを各ポリマー分子に均一に共重合させることができ、上記官能基を反応点として紫外線硬化が可能な重合性基を均一に導入することができるため、粘着剤層の紫外線硬化性を高め、被着体から剥離するときに粘着力を充分に低下させることができる点が挙げられる。
【0011】
なかでも、有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合は、他のリビングラジカル重合とは異なり、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、アミド基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーをいずれも保護することなく、同一の開始剤で重合して均一な分子量及び組成を有するポリマーを得ることができる。このため、このような官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを容易に共重合することができる。
【0012】
上記有機テルル重合開始剤は、リビングラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、有機テルル化合物、有機テルリド化合物等が挙げられる。
上記有機テルル化合物として、例えば、(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-クロロ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-ヒドロキシ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-アミノ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-ニトロ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-シアノ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-メチルカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-フェニルカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-メトキシカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-フェノキシカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-スルホニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-クロロ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-ヒドロキシ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-アミノ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-ニトロ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-シアノ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-メチルカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-フェニルカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-メトキシカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-フェノキシカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-スルホニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-クロロ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-ヒドロキシ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-アミノ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-ニトロ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-シアノ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-メチルカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-フェニルカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-メトキシカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-フェノキシカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-スルホニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、2-(メチルテラニル-メチル)ピリジン、2-(1-メチルテラニル-エチル)ピリジン、2-(2-メチルテラニル-プロピル)ピリジン、2-メチルテラニル-エタン酸メチル、2-メチルテラニル-プロピオン酸メチル、2-メチルテラニル-2-メチルプロピオン酸メチル、2-メチルテラニル-エタン酸エチル、2-メチルテラニル-プロピオン酸エチル、2-メチルテラニル-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メチルテラニルアセトニトリル、2-メチルテラニルプロピオニトリル、2-メチル-2-メチルテラニルプロピオニトリル等が挙げられる。これらの有機テルル化合物中のメチルテラニル基は、エチルテラニル基、n-プロピルテラニル基、イソプロピルテラニル基、n-ブチルテラニル基、イソブチルテラニル基、t-ブチルテラニル基、フェニルテラニル基等であってもよく、また、これらの有機テルル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記有機テルリド化合物として、例えば、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジ-sec-ブチルジテルリド、ジ-tert-ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス-(p-メトキシフェニル)ジテルリド、ビス-(p-アミノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-ニトロフェニル)ジテルリド、ビス-(p-シアノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。これらの有機テルリド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドが好ましい。
【0014】
なお、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記有機テルル重合開始剤に加えて、重合速度の促進を目的として重合開始剤としてアゾ化合物を用いてもよい。
上記アゾ化合物は、ラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル-1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1’-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記リビングラジカル重合においては、分散安定剤を用いてもよい。上記分散安定剤として、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記リビングラジカル重合の方法として、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
上記リビングラジカル重合において重合溶媒を用いる場合、該重合溶媒は特に限定されず、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒や、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド等の高極性溶媒を用いることができる。これらの重合溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、重合温度は、重合速度の観点から0?110℃が好ましい。
【0016】
上記リビングラジカル重合ポリマーは、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有するモノマー混合物を共重合させて得られたポリマーであることが好ましい。有機テルル重合開始剤を用いることで、このような官能基を有する(メタ)アクリルモノマーであってもいずれも保護することなく用いることができる。上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基又はアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
なお、上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの官能基は、上記リビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入するための反応点となる部分である。
【0017】
上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー;N-メチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する(メタ)アクリルモノマー;(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリルモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリルモノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル等のアミノ基を有する(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。これらの官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量は、上記モノマー混合物中の好ましい下限が1重量%、好ましい上限が35重量%である。上記含有量が1重量%未満であると、紫外線硬化が可能な重合性基を充分に導入することができず、上記粘着剤層の紫外線硬化性が低下し、被着体から剥離するときに粘着力が充分に低下しないことがある。上記含有量が35重量%を超えると、ガラス転移温度の上昇により、紫外線照射される前に粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記含有量のより好ましい下限は2重量%、より好ましい上限は30重量%であり、更に好ましい下限は3重量%、更に好ましい上限は25重量%である。
【0019】
また、上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの官能基は、上述した通り、上記リビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入するための反応点となる部分であるが、反応点の全てを反応させないことが好ましく、反応点の2%未満を反応させずに残しておくことがより好ましい。このように反応点を反応させずに残すことにより、最終的に得られる粘着テープの粘着力又は凝集力を向上させることができる。
【0020】
上記モノマー混合物は、上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーに加えて、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等を含有していてもよい。これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記モノマー混合物は、更に、ビニル化合物を含有していてもよい。
上記ビニル化合物は特に限定されず、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。これらのビニル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記リビングラジカル重合ポリマーは、分子量分布(Mw/Mn)が1.05?2.5である。上記分子量分布が2.5を超えると、上記リビングラジカル重合において生成した低分子量成分等が増えるため、粘着テープが剥がれやすくなる。上記分子量分布の好ましい上限は2.0であり、より好ましい上限は1.8である。
【0023】
上記リビングラジカル重合ポリマーは、重量平均分子量(Mw)の好ましい下限が10万、好ましい上限が200万である。上記重量平均分子量が10万未満であると、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎて、使用状況によっては糊残りすることがあり、耐熱性が低下することがある。上記重量平均分子量が200万を超えると、塗工時の粘度が高すぎて塗工し難くなり、上記粘着剤層の厚みムラを発生させてしまうことがある。上記重量平均分子量のより好ましい下限は20万である。
【0024】
なお、分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。具体的には、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、リビングラジカル重合ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液を用いてGPC法によりポリスチレン換算分子量として測定される。GPC法では、例えば、2690 Separations Model(Waters社製)等を使用できる。
【0025】
上記(メタ)アクリルポリマーは、上記リビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入したものである。
上記紫外線硬化が可能な重合性基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の炭素-炭素二重結合を有する基が挙げられる。上記紫外線硬化が可能な重合性基は、炭素-炭素三重結合を有する基であってもよい。
【0026】
上記(メタ)アクリルポリマーは、例えば、次の方法により得ることが好ましい。
上記リビングラジカル重合により上記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させることで、これらのモノマーを各ポリマー分子に均一に共重合させることができ、得られたリビングラジカル重合ポリマーは側鎖に上記官能基を有するものとなる。このようなリビングラジカル重合ポリマーに、上記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させることで、側鎖に重合性基を結合させる。
即ち、上記(メタ)アクリルポリマーは、上記リビングラジカル重合ポリマーに、上記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させて得られたものであることが好ましい。
【0027】
上記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、アミド基等の官能基を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。具体的には例えば、次の(1)?(4)の場合が挙げられる。
(1)側鎖に水酸基を有するリビングラジカル重合ポリマーに対しては、アミド基、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1つを有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させればよい。
(2)側鎖にカルボキシル基を有するリビングラジカル重合ポリマーに対しては、エポキシ基又はイソシアネート基を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させればよい。
(3)側鎖にエポキシ基を有するリビングラジカル重合ポリマーに対しては、カルボキシル基又はアミド基を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させればよい。
(4)側鎖にアミノ基を有するリビングラジカル重合ポリマーに対しては、エポキシ基を有し、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させればよい。
【0028】
上記粘着剤層は、光重合開始剤を含有してもよい。
上記光重合開始剤は、例えば、250?800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物や、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物や、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物や、フォスフィンオキシド誘導体化合物や、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記粘着剤層は、紫外線により気体を発生する気体発生剤を含有してもよい。
上記粘着剤層が上記気体発生剤を含有することにより、被着体から剥離するとき、上記粘着剤層の粘着力が大きく低下することに加えて上記気体発生剤から気体が発生し、これにより、上記粘着剤層の剥離応力が発生するか、又は、被着体との接着面積が減少して、強く引き剥がさずとも剥離できる。
上記気体発生剤としては、例えば、アゾ化合物、アジド化合物、テトラゾール化合物又はその塩、ビステトラゾール化合物等が挙げられる。
【0030】
上記気体発生剤の含有量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が50重量部である。上記含有量がこの範囲内であると、被着体から剥離するときには充分な気体が発生して上記粘着剤層の剥離を行うことができ、かつ、上記接着剤層の粘着力を損なうこともない。上記含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0031】
上記粘着剤層は、更に、光増感剤を含有してもよい。
上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができる。
上記光増感剤としては、例えば、アミノ系化合物、ニトロ化合物、キノン系化合物、キサントン系化合物、アンスロン化合物、ケトン系化合物等が挙げられる。
【0032】
上記光増感剤は特に限定されず、例えば、アルコキシ基を少なくとも1つ以上有する多環芳香族化合物が挙げられる。なかでも、一部がグリシジル基又は水酸基で置換されたアルコキシ基を有する置換アルコキシ多環芳香族化合物が好ましい。このような化合物は、耐昇華性が高く、高温下で使用することができる。また、アルコキシ基の一部がグリシジル基又は水酸基で置換されることにより、上記粘着剤層への溶解性が高まり、ブリードアウトを防止することができる。
上記多環芳香族化合物は、アントラセン誘導体が好ましい。上記アルコキシ基は、炭素数1?18のものが好ましく、炭素数1?8のものがより好ましい。
【0033】
上記アルコキシ基を少なくとも1つ以上有する多環芳香族化合物は、例えば、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、2-tブチル-9,10-ジメトキシアントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9-メトキシ-10-メチルアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2-tブチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジエトキシアントラセン、9-エトキシ-10-メチルアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、2-tブチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、9-イソプロポキシ-10-メチルアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジベンジルオキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジベンジルオキシアントラセン、2-tブチル-9,10-ジベンジルオキシアントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジベンジルオキシアントラセン、9-ベンジルオキシ-10-メチルアントラセン、9,10-ジ-α-メチルベンジルオキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジ-α-メチルベンジルオキシアントラセン、2-tブチル-9,10-ジ-α-メチルベンジルオキシアントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジ-α-メチルベンジルオキシアントラセン、9-(α-メチルベンジルオキシ)-10-メチルアントラセン、9,10-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ジ(2-カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体等が挙げられる。
【0034】
上記一部がグリシジル基又は水酸基で置換されたアルコキシ基を有する置換アルコキシ多環芳香族化合物は、例えば、9,10-ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2-tブチル-9,10-ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジ(グリシジルオキシ)アントラセン、9-(グリシジルオキシ)-10-メチルアントラセン、9,10-ジ(2-ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ジ(2-ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2-tブチル-9,10-ジ(2-ビニルオキシエトキシ)アントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジ(2-ビニルオキシエトキシ)アントラセン、9-(2-ビニルオキシエトキシ)-10-メチルアントラセン、9,10-ジ(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ジ(3-メチル-3-オキセタニルメメトキシ)アントラセン、2-tブチル-9,10-ジ(3-メチル-3-オキセタニルメメトキシ)アントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジ(3-メチル-3-オキセタニルメメトキシ)アントラセン、9-(3-メチル-3-オキセタニルメメトキシ)-10-メチルアントラセン、9,10-ジ(p-エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ジ(p-エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2-tブチル-9,10-ジ(p-エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジ(p-エポキシフェニルメトキシ)アントラセン、9-(p-エポキシフェニルメトキシ)-10-メチルアントラセン、9,10-ジ(p-ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2-エチル-9,10-ジ(p-ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2-tブチル-9,1-ジ(p-ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、2,3-ジメチル-9,10-ジ(p-ビニルフェニルメトキシ)アントラセン、9-(p-ビニルフェニルメトキシ)-10-メチルアントラセン、9,10-ジ(2-ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9,10-ジ(2-ヒドロキシプロポキシ)アントラセン、9,10-ジ(2-ヒドロキシブトキシ)アントラセン、9,10-ジ(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロポキシ)アントラセン、9,10-ジ(2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロポキシ)アントラセン、9,10-ジ(2-ヒドロキシ-3-アリロキシプロポキシ)アントラセン、9,10-ジ(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロポキシ)アントラセン、9,10-ジ(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0035】
上記光増感剤の含有量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対する好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が10重量部である。上記含有量が0.05重量部未満であると、充分な増感効果が得られないことがある。上記含有量が10重量部を超えると、光増感剤に由来する残存物が増え、充分な剥離を行えなくなることがある。上記含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0036】
上記粘着剤層は、更に、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有してもよい。上記粘着剤層がラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有することにより、上記粘着剤層の紫外線硬化性が向上する。
上記多官能オリゴマー又はモノマーは、分子量が1万以下であるものが好ましく、紫外線の照射による上記粘着剤層の硬化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2?20個のものがより好ましい。
【0037】
上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。また、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記粘着剤層は、粘着付与樹脂を含有してもよい。上記粘着剤層が粘着付与樹脂を含有することにより、粘着テープは、被着体から剥離するときに紫外線照射されるまでは、剥がれにくいものとなる。
上記粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、不均化ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、不均化ロジンエステル樹脂、重合ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
【0039】
上記粘着付与樹脂の含有量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が40重量部である。上記含有量が5重量部未満であると、紫外線照射される前に粘着テープが剥がれやすくなり、上記含有量が40重量部を超えると、ガラス転移温度の上昇により、紫外線照射される前に粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0040】
上記粘着剤層は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、微粒子、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、ワックス、充填剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0041】
上記粘着剤層は、ゲル分率の好ましい下限が1重量%、好ましい上限が70重量%である。上記ゲル分率が1重量%未満であると、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎて、耐熱性が低下することがある。上記ゲル分率が70重量%を超えると、粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記ゲル分率のより好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は60重量%である。
なお、ゲル分率は、次のようにして測定される。まず、粘着テープを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、粘着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0042】
上記範囲のゲル分率の粘着剤層を得る方法としては、架橋剤を添加して上記粘着剤層を構成する樹脂の主鎖間に架橋構造を形成する方法が好ましい。上記架橋剤の種類又は量を適宜調整することによって、上記粘着剤層のゲル分率を上記範囲に調整しやすくなる。
【0043】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、基材に対する密着安定性に優れるため、イソシアネート系架橋剤が好ましい。上記イソシアネート系架橋剤として、例えば、コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製)、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製)、マイテックNY260A(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記架橋剤の配合量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対して0.01?5重量部が好ましく、0.1?3重量部がより好ましい。
【0044】
上記粘着剤層の厚みは用途によって設定されるので特に限定されないが、好ましい下限が1μm、好ましい上限が100μmである。上記厚みが1μm未満であると、粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記厚みが100μmを超えると、薄い粘着テープが得られないことがある。上記厚みのより好ましい下限は25μm、より好ましい上限は75μmである。
【0045】
本発明の粘着テープは、基材を有するサポートタイプであってもよいし、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。サポートタイプの場合には、基材の片面に上記粘着剤層が形成されていてもよいし、両面に上記粘着剤層が形成されていてもよい。
【0046】
上記基材は特に限定されないが、樹脂フィルム、樹脂発泡体、紙、不織布、ヤーンクロス布等が挙げられる。
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルムや、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のポリエステル系樹脂フィルムや、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等の変性オレフィン系樹脂フィルムや、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、シクロオレフィンポリマー樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
上記樹脂発泡体としては、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、アクリルフォーム、ウレタンフォーム、エチレンプロピレンゴムフォーム等が挙げられる。上記ヤーンクロス布としては、例えば、ポリエチレンフラットヤーンを織ったものや、その表面に樹脂フィルムをラミネートしたもの等が挙げられる。
上記基材は、透明な樹脂からなる基材であってもよく、網目状の構造を有する基材であってもよく、孔が開けられた基材であってもよい。
【0047】
上記基材の厚みは用途によって設定されるので特に限定されないが、例えばフィルム基材の場合には1?100μmが好ましく、5?75μmがより好ましい。上記基材の厚みが1μm未満であると、粘着テープの機械的強度が低下することがある。上記基材の厚みが100μmを超えると、粘着テープの腰が強くなりすぎて、被着体の形状に沿って密着させて貼り合わせることが困難になることがある。
【0048】
本発明の粘着テープの製造方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリルポリマーを、必要に応じて上記光重合開始剤、上記気体発生剤、上記光増感剤、上記粘着付与樹脂、上記架橋剤等のその他の配合成分と共に混合し、攪拌して粘着剤溶液を調製し、続いて、この粘着剤溶液を離型処理したPETフィルムに塗工乾燥させて粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層を基材の片面又は両面に転着させる方法、基材に直接塗工乾燥させる方法等が挙げられる。粘着剤溶液を離型処理したPETフィルムに塗工乾燥させて形成した粘着剤層を、基材なしでそのままノンサポートタイプの粘着テープとしてもよい。
【0049】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、例えば、半導体ウエハを加工する際のバックグラインドテープ又はダイシング用粘着テープや、反り易い部材(例えば、極薄ガラス基板等の脆弱部材、プラスチックスフィルム、コアレスFPC基板等)の支持用テープ等に好適に用いることができる。
また、本発明の粘着テープは、例えば、半導体ウエハに薬液処理、加熱処理又は発熱を伴う処理を施す際、或いは、半導体ウエハに電極を有する貫通孔を形成させる際に、半導体ウエハを保護する目的で支持板を貼り合わせる際に用いることができる。これらの処理を終えた後には、光を照射することにより容易に半導体ウエハから支持板を剥離することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、糊残りを低減しつつ被着体から容易に剥離することができる粘着テープを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0052】
(合成1)
(リビングラジカル重合ポリマーの合成)
Tellurium(40メッシュ、金属テルル、アルドリッチ社製)6.38g(50mmol)をテトラヒドロフラン(THF)50mLに懸濁させ、これに1.6mol/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(アルドリッチ社製)34.4mL(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで攪拌した。この反応溶液に、エチル-2-ブロモ-イソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間攪拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物の2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチルを得た。
【0053】
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、上記で得られた2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチル38μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)2.8mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、表1に示すモノマー(2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート、Mac:メタクリル酸、HEA:ヒドロキシエチルアクリレート)の合計100g、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、60℃で20時間重合反応を行い、リビングラジカル重合ポリマー含有溶液を得た。
得られたリビングラジカル重合ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、得られた濾液をゲルパミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、ポリマーのポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。カラムとしてはGPC KF-806L(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
【0054】
(合成2)
(フリーラジカル重合ポリマーの合成)
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチル50gを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)0.15gを酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、表1に示すモノマーの合計100gを2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業社製)0.15gを酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、フリーラジカル重合ポリマー含有溶液を得た。合成1と同様にして、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0055】
【表1】

【0056】
(実施例1?6、比較例1?3)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器を用意し、この反応容器内に、合成1又は2で得た固形分換算で100重量部のラジカル重合ポリマー含有溶液に対して、2-イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、ラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマー1又は2を含有する酢酸エチル溶液を得た。
更に、(メタ)アクリルポリマー1又は2を含有する酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、表2、表3に示す所定量の光重合開始剤(イルガキュア651、BASF社製)、架橋剤(IPDI:イソホロンジイソシアネート)を添加して攪拌し、不揮発分30重量%の粘着剤溶液を得た。このとき、実施例4?6では、表3に示す所定量の気体発生剤(アゾジカルボンアミド)、光増感剤(9,10-ジグリシジルオキシアントラセン)を添加した。
厚み50μmの離型処理したPETフィルムに、得られた粘着剤溶液を、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、70℃で10分間乾燥させ、粘着テープを得た。なお、粘着剤層を保護するために粘着剤層のもう一方の面にも厚み50μmの離型処理したPETフィルムを積層した。
【0057】
得られた粘着テープを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、離型フィルムを剥離除去した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0058】
<評価>
実施例、比較例で得られた粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表2、表3に示した。
【0059】
(1)鋼板(SUS板)に対する糊残りの有無の観察
幅20mm×50mmに切り出した粘着テープの片面の離型処理したPETフィルムを剥がし、コロナ処理した厚み50μmのPETフィルムで裏打ちした。この粘着テープのもう一方の離型処理したPETフィルムを剥がし、鋼板(SUS板)に貼り、23℃50%湿度で一晩養生した後、超高圧水銀灯を用いて365nmの紫外線を照射強度が40mW/cm^(2)となるよう照度を調節して10秒間照射した。その後、粘着テープを23℃で90°の方向に引き剥がした。
◎:糊残りがまったく見られない
○:粘着テープを剥がした面にわずかに曇りが見られる
×:糊残りあり
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、糊残りを低減しつつ被着体から容易に剥離することができる粘着テープを提供する。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマー、及びラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーを含有し、
前記リビングラジカル重合ポリマーは、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有するモノマー混合物を共重合させて得られたランダム共重合体であり、
前記モノマー混合物における前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が1重量%以上25重量%以下であり、
前記(メタ)アクリルポリマーは、前記リビングラジカル重合ポリマーに、前記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させて得られたものである
ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、分子量分布(Mw/Mn)1.05?2.5のリビングラジカル重合ポリマーの側鎖に紫外線硬化が可能な重合性基を導入した(メタ)アクリルポリマーを含有し、
前記リビングラジカル重合ポリマーは、官能基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有するモノマー混合物を共重合させて得られたランダム共重合体であり、
前記モノマー混合物における前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーの含有量が1重量%以上25重量%以下であり、
前記(メタ)アクリルポリマーは、前記リビングラジカル重合ポリマーに、前記官能基と反応可能であり、かつ、紫外線硬化が可能な重合性基を有する化合物を反応させて得られたものであることを特徴とする粘着テープであって、
前記粘着剤層は、更に、紫外線により気体を発生する気体発生剤を含有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項3】
前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基又はアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーであることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層は、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記官能基を有する(メタ)アクリルモノマーは、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基又はアミド基を有する(メタ)アクリルモノマーであることを特徴とする請求項2記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層は、架橋剤を含有することを特徴とする請求項2又は5記載の粘着テープ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-22 
出願番号 特願2018-115570(P2018-115570)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 門前 浩一
亀ヶ谷 明久
登録日 2019-06-14 
登録番号 特許第6539383号(P6539383)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 粘着テープ  
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