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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1379810
異議申立番号 異議2020-700351  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-20 
確定日 2021-09-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6606881号発明「OCT信号処理装置、OCT信号処理プログラム、およびOCT装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6606881号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4、5について訂正することを認める。 特許第6606881号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6606881号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成27年6月16日に出願され、令和元年11月1日にその特許権の設定登録がされ、同月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年5月20日に特許異議申立人 箕浦裕美子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、同年8月7日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年10月16日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、同年12月21日に意見書を提出した。さらに、当審は、令和3年2月17日付けで取消理由(決定の予告)を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年4月23日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、同年6月9日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断

(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。下線は訂正箇所を表す。
ア 訂正事項1
請求項1の「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示する」を、「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示し、
前記確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する。)。

イ 訂正事項2
請求項2の「前記制御手段は、深さの異なる複数の深さ領域においてそれぞれ抽出された深さ領域データ毎に生成された複数のモーションコントラスト画像を前記確認画面に切り替え可能に表示させる」を、「前記制御手段は、深さの異なる複数の深さ領域においてそれぞれ抽出された深さ領域データ毎に生成された複数のモーションコントラスト画像を前記確認画面に切り替え可能に表示させると共に、前記確認画面に表示させる前記モーションコントラスト画像の深さ領域を指定するインターフェースである切替部を前記確認画面に表示する」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。)。

ウ 訂正事項3
請求項4の「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示ステップ」を、「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示し、前記確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能である表示ステップ」に訂正する。

エ 訂正事項4
請求項5の「前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出された前記3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像を前記確認画面に表示させる」を、「前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出された前記3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像であって、深さの異なる複数の深さ領域における複数のモーションコントラスト画像を前記確認画面に並べて表示させる」に訂正する。

オ 訂正事項5
請求項5の「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号」を、「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCT光学系により再取得するための検者からの操作信号」に訂正する。

カ 訂正事項6
請求項5の「検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示する」を、「検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示し、
前記確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能である」に訂正する。

キ 訂正後の請求項1?3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア 訂正事項1、3及び6
訂正事項1、3及び6は、確認画面を表示させた後の内容を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、本件特許明細書には、「【0037】なお、制御部は、確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示部に表示させてもよい」との記載があることから、新規事項の追加に該当しない。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、確認画面に表示させる内容を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、本件特許明細書には、「【0074】(ステップS3)<確認画面の表示>被検眼の撮影が行われると、CPU71は、例えば、図5に示すような確認画面80を表示部75に表示する。確認画面80は、モーションコントラストデータ(以下、MCデータと略す)の良否を確認するための画面である。例えば、CPU71は、第1表示領域81、第2表示領域82、第3表示領域83、第1切替部84、第2切替部85等を確認画面80Aに表示する(図5(a)参照)。・・・【0076】<第1切替部>第1切替部84は、第1表示領域81に表示させるMC画像の深さ領域を指定するインターフェースである。」との記載があることから、新規事項の追加に該当しない。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項4
訂正事項4は、確認画面に表示させる内容を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、本件特許明細書には、「【0020】なお、制御部は、複数のモーションコントラスト画像を確認画面に並べて表示させてもよい。これによって、検者は、深さの異なる複数の深さ領域におけるモーションコントラストデータを容易に比較できる。」との記載があることから、新規事項の追加に該当しない。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項5
訂正事項5は、明らかな誤記を訂正するものである。また、明らかな誤記を訂正するものであるから、新規事項の追加に該当しない。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4、5について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

(本件発明1)
「 【請求項1】
被検体上を走査された測定光と、参照光とに基づいてOCTデバイスによって検出されたOCT信号を処理するOCT信号処理装置であって、
同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた3次元モーションコントラストデータの良否を確認するための確認画面を表示手段に表示させる制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出された前記3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像を前記確認画面に表示させると共に、
前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示し、
前記確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能であることを特徴とするOCT信号処理装置。」

(本件発明2)
「 【請求項2】
前記制御手段は、深さの異なる複数の深さ領域においてそれぞれ抽出された深さ領域データ毎に生成された複数のモーションコントラスト画像を前記確認画面に切り替え可能に表示させると共に、前記確認画面に表示させる前記モーションコントラスト画像の深さ領域を指定するインターフェースである切替部を前記確認画面に表示することを特徴とする請求項1のOCT信号処理装置。」

(本件発明3)
「 【請求項3】
前記制御手段は、前記3次元モーションコントラストデータを評価するための指標を前記確認画面に表示させることを特徴とする請求項1または2のOCT信号処理装置。」

(本件発明4)
「 【請求項4】
被検体上を走査された測定光と、参照光とに基づいてOCTデバイスによって検出されたOCT信号を処理するOCT信号処理装置において用いられるOCT信号処理プログラムであって、
前記OCT信号処理装置のプロセッサによって実行されることで、
前記3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた3次元モーションコントラストデータのうち、前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出されたモーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像を、前記3次元モーションコントラストデータの良否を確認するための確認画面を表示手段に表示させる表示ステップであって、前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示し、前記確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能である表示ステップと、を前記OCT信号処理装置に実行させることを特徴とするOCT信号処理プログラム。」

(本件発明5)
「 【請求項5】
走査手段によって被検体上を走査された測定光と、参照光とに基づいてOCT信号を取得するOCT光学系と、を備えるOCT装置であって、
前記OCT光学系よって取得された同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた3次元モーションコントラストデータの良否を確認するための確認画面を表示手段に表示させる制御手段を備え、
前記制御手段は、前記OCT光学系による被検体の撮影を開始するためのレリーズ信号を受け付けると、前記走査手段を制御することによって前記複数のOCT信号を取得し、前記3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出された前記3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像であって、深さの異なる複数の深さ領域における複数のモーションコントラスト画像を前記確認画面に並べて表示させると共に、
前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCT光学系により再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示し、
前記確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能であることを特徴とするOCT装置。」

第3 申立人が提出した証拠
申立人が提出した証拠は、次の甲第1号証?甲第10号証(以下、それぞれ「甲1」?「甲10」という。)である。甲4は、証拠説明書には「米国特許出願公開第2013/0173532号明細書」と記載され、特許異議申立書に添付された甲4の写しにも当該米国特許出願公開第2013/0173532号明細書が提出されている。一方、特許異議申立書の第12頁には「甲第4号証(米国特許出願公開第2013/0176532号明細書)」と記載され、特許異議申立書に添付された甲4の抄訳文(段落[0024])には当該米国特許出願公開第2013/0176532号明細書の抄訳文が提出されている。そして、特許異議申立書の申立て理由を踏まえると、抄訳文(段落[0024])を引用していることから、甲4は「米国特許出願公開第2013/0176532号明細書」の誤記であると認める。

甲1:米国特許出願公開第2013/0301000号明細書
甲2:特開2014-83263号公報
甲3:特開2012-213451号公報
甲4:米国特許出願公開第2013/0176532号明細書
甲5:米国特許出願公開第2012/0277579号明細書
甲6:特開2007-225349号公報
甲7:米国特許出願公開第2011/0273667号明細書
甲8:米国特許出願公開第2014/0073917号明細書
甲9:Cedric Blatter et al. 、Ultrahigh-speed non-invasive widefield angiography、 Journal of Biomedical Optics 、2012年 、Vol.17 No.7
甲10:Douglas Matsunaga et al. 、OCT Angiography in Healthy Human Subjects 、Clinical Science 、2014年 、Vol.45 No.6

第4 取消理由の概要
請求項1?5に係る特許に対して、当審が令和2年8月7日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1?5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び種々の周知技術(引用文献2?7)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1?5に係る特許は、取り消されるべきものである。

引用文献1(甲10):Douglas Matsunaga et al. 、OCT Angiography in Healthy Human Subjects 、Clinical Science 、2014年 、Vol.45 No.6
引用文献2:特表2015-515894号公報
引用文献3(甲1):米国特許出願公開第2013/0301000号明細書
引用文献4(甲5):米国特許出願公開第2012/0277579号明細書
引用文献5:特開2014-76403号公報
引用文献6(甲2):特開2014-83263号公報
引用文献7(甲3):特開2012-213451号公報

第5 取消理由(決定の予告)の概要
請求項1?5に係る特許に対して、当審が令和3年2月17日付けの取消理由(決定の予告)通知において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1?5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された技術事項及び周知技術(引用文献5、6)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1?5に係る特許は、取り消されるべきものである。

引用文献1(甲10):Douglas Matsunaga et al. 、OCT Angiography in Healthy Human Subjects 、Clinical Science 、2014年 、Vol.45 No.6
引用文献3(甲1):米国特許出願公開第2013/0301000号明細書
引用文献5:特開2014-76403号公報
引用文献6(甲2):特開2014-83263号公報

第6 各甲号証等の記載
各甲号証等が日本語の記載でない場合には、原文に続き日本語訳を示す。下線は当審おいて付与したものである。

1 甲1(引用文献3)について

(1)甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている。

(甲1ア)
「[0008] ・・・ In addition, typical representation of OCT angiography data is through display of summed en face images from motion contrast 3D volumes that further reduce the need for high axial resolution. ・・・Embodiments of the current invention use this fact to purposely degrade the axial resolution of the OCT angiography or motion contrast image in order to increase the acquisition speed or processing time without any significant effect on the en face image quality.」
「[0008] ・・・加えて、典型的なOCTアンギオグラフイデータの描写は、モーションコントラスト3Dボリューム(データ)から集約されて作られたアンファス画像(それは光軸解像度の必要性がさらに減少させる)の表示を通してなされる。・・・本発明の実施形態は、アンファス画像の画質に明らかな影響を与えることなく、(信号)取得速度を向上、もしくは処理を向上するために、この事実を使って意図的に OCT 血管造影の軸解像度を低下させるものである。」

(甲1イ)
「[0019] An optical coherence tomography scanner, illustrated in FIG. 1 typically includes a light source, 101. Two examples of suitable sources are a broadband light source with short temporal coherence length or a swept laser source. (See for example, Wojtkowski, et al., “Three-dimensional retinal imaging with high-speed ultrahigh-resolution optical coherence tomography,” Ophthalmology 112(10):1734 2005 or Lee et al. “In vivo optical frequency domain imaging of human retina and choroid,” Optics Express 14(10):4403 2006). Light from source 101 is routed, typically by optical fiber 105, to illuminate the sample 110, a typical sample being tissues at the back of the human eye. The light is scanned, typically with a scanner 107 or pair or scanning mirrors between the output of the fiber and the sample, so that the beam of light (dashed line 108) is scanned over the area or volume to be imaged. Light scattered from the sample is collected, typically into the same fiber 105 used to route the light for illumination. Reference light derived from the same source 101 travels a separate path, in this case involving fiber 103 and retro-reflector 104. Those skilled in the art recognize that a transmissive reference path can also be used. Collected sample light is combined with reference light, typically in a fiber coupler 102, to form light interference in a detector 120. The output from the detector is supplied to a processor 130. The results can be stored in the processor or displayed on display 140.」
「[0019] 図1に示す光コヒーレンストモグラフィスキャナは、典型的には光源101を含む。適切な光源の2つの例は、短い時間コヒーレンス長を有する広帯域光源又は掃引レーザ光源である。(例えば、Wojtkowskiら、“Threedimensional retinal imaging with high-speed ultrahigh-resolution optical coherence tomography,” Ophthalmology 112(10) :1734 2005、またはLeeら、“In vivo optical frequency domain imaging of human retina and choroid,”Optics Express 14(10):4403 2006)を参照)。光源101からの光は典型的には光ファイバ105によって、サンプル110を照射するように経路指定され、典型的なサンプルは人間の目の後ろの組織である。光は典型的にはスキャナ107またはファイバの出力と試料との間の対または走査ミラーでスキャンされ、その結果、光ビーム(破線108) は撮像されるべき領域または体積にわたって走査される。サンプルから散乱された光は、典型的には照明のために光をルーティングするために使用されるのと同じファイバ105内に集められる。同じ光源101から得られた参照光は、この場合はファイバ103及び逆反射器104を含む別個の経路を進む。当業者であれば、透過参照経路を使用することもできることを理解するのであろう。収集されたサンプル光は、典型的にはファイバカプラ102において参照光と結合され、検出器120において光干渉を形成する。検出器からの出力はプロセッサ130に供給される。結果は、プロセッサに記憶するか、または表示部140に表示することができる。」

(甲1ウ)
「[0022] En face visualization techniques based on inter-frame change analysis (see for example US Patent Publication No. 2012/0277579 hereby incorporated by reference) require a high density of sampling points, and hence the time required to finish such scans can be significantly higher than compared to regular cube scans used in commercial OCT systems. As described above, for larger data volume acquisitions there are several major limitations:」
「[0022] フレーム間変化分析に基づくアンファス可視化技術(例えば、参照により本願に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0277579号明細書参照)はサンプリングポイントの密度が高いことを要求しており、したがって、このようなスキャンを完了するために必要な時間は、商用OCTシステムで使用される通常のキューブスキャンよりも著しく高い可能性がある。上述したように、より大きなデータボリュームの取得には、いくつかの大きな制約がある:」

(甲1エ)
「[0026] ・・・Also, the most common visualization of the vasculature is the en face image that is obtained by summing or integrating the motion-contrast data in the axial direction.」
「[0026] ・・・また、最も一般な脈管構造で視覚化(方法)は、モーションコントラストデータを軸方向に集約もしくは積分することによって得られるアンファス画像である。」

(甲1オ)
「[0031] One of the major workflow challenges for OCT scans that require long acquisition and post-processing times is the significant time delays required for display of processed images and results to ensure that the scan was obtained successfully. Due to the large data sizes and heavy post-processing efforts, OCT angiography scan analysis could have significant delays and it will be challenging for the machine operator to decide if the scan needs to be reacquired. Hence in another embodiment of the present invention, we propose using a selected portion of the spectrum for faster analysis to rapidly generate OCT angiography images for en face vasculature visualization. In this case, the full wavelength range of the source would be used to collect data, but only a selected portion would be initially processed for image preview purposes. A quicker analysis can help the operator to decide if the data acquisition was done right to avoid the possibility of needing to perform repeat measurements later. Analysis and processing using the full axial resolution can be done later for better results and diagnosis or for different types of analysis. The rapid generation of en face images over larger FOV can also aid the operator to select specific regions of interesting pathology and perform more dense scans in the region of interest. It must be noted that this is simply a post-processing method which doesn't impact acquisition speeds but aids in quicker display of analysis to enable workflow related real-time decisions after the scan acquisition.
[0032] FIG. 3 shows a flowchart depicting various steps in one of the preferred embodiments of the present invention. After the OCT angiography data is acquired, the overall data sizes can be significantly reduced by using only a smaller portion of the spectrum or sub-spectrum corresponding to each A-scan measurement. The modified 3D volume with sub-spectrum information has reduced size and it can be used to generate OCT angiography analysis, albeit with data that supports lower axial resolution. Here we exploit the fact that loss of axial resolution does not significantly degrade the en-face vasculature images. However, it must be noted that there will be some degradation in the images compared to those obtained from full-spectrum original volume data as the sub-spectrum data will have a lower signal to noise ratio (SNR). Nonetheless, the trade-off will still be beneficial as it may reduce the processing time. At this stage, the operator could either visually inspect the low axial resolution OCT angiography images to decide if the scan is of acceptable quality and it doesn't have any unacceptable motion artifact. In order to assist the operator, a quality metric could also be generated that can be used to assess the image quality and a decision can be made whether the scan needs to be repeated. Further, the operator could use the preview image to identify regions of pathology and obtain a higher resolution, smaller FOV scan in the region of interest. While this lower axial resolution data facilitates faster processing and viewing of images, the complete spectral data-set can be used to generate improved quality images later. This method could also be combined by sub-sampling of lateral points from the acquisition volume.」
「[0031] 長い取得及び後処理時間を必要とするOCT走査に対する主要なワークフローの課題の1つは、走査が首尾よく取得されたことを保証するために、処理された画像及び結果の表示に必要とされるかなりの時間遅延である。データサイズが大きく、処理後の労力が大きいため、OCT血管造影スキャン解析はかなりの遅延を有する可能性があり、スキャンを再取得する必要があるかどうかを機械操作者が決定することは困難である。したがって、本発明の別の実施形態では、より高速な解析のためにスペクトルの選択された部分を使用して、アンファスでの血管系可視化のためのOCT血管造影画像を迅速に生成することを提案する。この場合、光源の全波長範囲はデータを収集するために使用されるが、選択された部分のみが画像プレビュー目的のために最初に処理される。より迅速な分析は、操作者が、後で測定を繰り返す必要がある可能性を回避するためにデータ取得が正しく行われたかどうかを決定するのを助けることができる。より良好な結果および診断のために、又は異なるタイプの分析のために、完全な軸方向分解能を使用する分析及び処理を後に行うことができる。より大きなFOVにわたるアンファス画像の迅速な生成はまた、操作者が関心のある病理の特定の領域を選択し、関心のある領域においてより密な走査を実行するのを助けることができる。これは単に、取得速度に影響を与えないが、スキャン取得後のワークフロー関連リアルタイム決定を可能にするために解析のより迅速な表示を助ける後処理方法であることに留意されたい。
[0032] 図3は、本発明の好ましい実施形態の1つにおける様々なステップを示すフローチャートを示す。OCT血管造影データが取得された後、各Aスキャン測定に対応するスペクトルまたはサブスペクトルのより小さい部分のみを使用することによって、全体的なデータサイズを大幅に低減することができる。サブスペクトル情報を有する修正された3Dボリュームはより低い軸方向解像度をサポートするデータではあるが、縮小されたサイズを有し、OCT血管造影分析を生成するために使用することができる。ここでは、軸方向解像度の損失がアンファス血管系画像を著しく劣化させないという事実を利用する。しかしながら、サブスペクトルデータがより低い信号対雑音比(SNR)を有することになるので、フルスペクトルのオリジナルボリュームデータから得られたものと比較して、画像に若干の劣化があることに留意しなければならない。それにもかかわらず、トレードオフは、処理時間を短縮することができるので、依然として有益である。この段階で、操作者は低軸解像度OCT血管造影画像を視覚的に検査して、スキャンが許容可能な品質であり、許容できない動きアーチファクトがないかどうかを判定することができる。操作者を支援するために、画質を評価するために使用することができる品質測定基準を生成することもでき、スキャンを繰り返す必要があるかどうかの決定を行うことができる。さらに、操作者はプレビュー画像を使用して、病理領域を識別し、関心領域におけるより高い解像度、より小さいFOV走査を得ることができる。このより低い軸方向分解能のデータは、画像のより高速な処理および観察を容易にする一方で、完全なスペクトル設定を使用して、改善された品質の画像を後で生成することができる。この方法は、収集ボリュームからの横方向点のサブサンプリングによって組み合わせることもできる。」

(2)甲1に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲1には、次の発明又は技術事項(以下、「甲1発明」又は「甲1(引3)の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 光源101からの光は光ファイバ105によって、サンプル110を照射するように経路指定され、サンプルは人間の目の後ろの組織であり、光は走査ミラーでスキャンされ、その結果、光ビームは撮像されるべき領域にわたって走査され、サンプルから散乱された光は、ファイバ105内に集められ、収集されたサンプル光は、検出器120において光干渉を形成し、検出器からの出力はプロセッサ130に供給され、結果は、プロセッサに記憶するか、または表示部140に表示することができる、光コヒーレンストモグラフィスキャナであって、
モーションコントラストデータを軸方向に集約もしくは積分することによって得られるアンファスでの血管系可視化のためのOCT血管造影画像を迅速に生成するために、OCT血管造影データが取得された後、各Aスキャン測定に対応するサブスペクトルのより小さい部分のみを使用することによって、アンファス血管系画像を表示させ、この段階で、操作者はこのアンファス血管系画像(低軸解像度OCT血管造影画像)を視覚的に検査して、スキャンが許容可能な品質であり、許容できない動きアーチファクトがないかどうかを判定することができ、操作者を支援するために、画質を評価するために使用することができる品質測定基準を生成することもでき、スキャンを繰り返す必要があるかどうかの決定を行うことができる、光コヒーレンストモグラフィスキャナ。」

2 甲2(引用文献6)について

(1)甲2の記載
甲2には、以下の事項が記載されている。

(甲2ア)
「【0012】
<概要> 本発明の実施形態に係る眼科撮影装置の概要について説明する。本実施形態に関わる眼科撮影装置(光コヒーレンストモグラフィーデバイス)10は、干渉光学系100、観察光学系200、表示手段(モニタ)75、操作入力手段(操作部)74、制御部(CPU)70、を備える。」

(甲2イ)
「【0076】
上記のようにして、撮影が完了すると、制御部70は、取得した断層像をメモリ72に記憶させる。そして、制御部70は、モニタ75上の表示を撮影画面から確認画面へ変更する。図4は、マルチスキャンでの撮影後の確認画面の一例を示す図である。制御部70は、メモリ72より正面像及び断層像を呼び出す。制御部70は、モニタ75上に、正面像20、指標25、断層像30、を表示する。
・・・
【0079】
ここで、検者は、各スキャンラインでの撮影が良好に完了しているか確認を行う。例えば、検者は、マウス74aを操作し、モニタ75上において、図示無きポインタ(例えば、矢印、十字マーク等)を移動させ、第1断層像30a又は第2断層像30bの断層像を選択する。検者によって、断層像が選択されると、制御部70は、選択された断層像を囲むようにフレームFを表示する。この状態で、検者がマウス74aを用いてスクロール操作を行うことによって、表示された断層像が他の断層像の表示へと変更される。例えば、第1断層像30aに、横方向のスキャンラインでの撮影された断層像の内、中心位置の断層像が表示されていた場合、検者によってスクロール操作が行われると、第1断層像30aに表示された断層像が中心位置から上方向又は下方向のスキャンラインの位置で撮影された断層像へ変更される。また、表示される断層像の変更にとともに、断層像の取得位置を示すスキャン表示31,32の表示を対応するスキャンライン位置を示す表示へと変更する。
・・・
【0081】
図5は、第1断層像30aの断層像を変更後の確認画面の一例を示す図である。例えば、図5に示されるように、スキャンライン28の位置で取得された断層像が良好に撮影取得されていない場合、第1断層像30aには、良好な断層像が表示されない。このように、検者は、第1断層像30a及び第2断層像30bを変更して、取得された断層像を確認することによって、撮影が良好に行われたかどうかを確認することができる。
【0082】
検者によって、マウス74aが操作され、各スキャンラインでの断層像の確認を行い、良好に撮影が行われていないスキャンラインを確認した場合、そのスキャンラインの位置で再撮影を行うことができる。なお、以下の再撮影の説明においては、スキャンライン28の位置にて良好に撮影が行われなかった場合を例として説明をする。
・・・
【0084】
検者によって、再撮影を行うスキャンライン28の選択が完了し、再撮影スイッチ34が選択されると、制御部70は、選択されたスキャンライン28の撮影位置において、再撮影を行うために、モニタ75の表示を確認画面から撮影画面へと変更する。なお、本実施例においては、1つのスキャンラインの再撮影を行う構成としたがこれに限定されない。複数のスキャンラインをまとめて選択して、再撮影を行う構成としてもよい。この場合、例えば、複数のスキャンラインが選択され、選択されたスキャンラインが再撮影の候補として設定される。そして、再撮影スイッチ34が選択されると、候補として設定された全ての断層像に対応する位置での、再撮影を行うようにする。」

(甲2ウ)図5


(2)甲2に記載された技術事項
上記(1)の記載及び図面から、甲2には、次の発明又は技術事項(以下、「甲2発明」又は「甲2(引6)の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 干渉光学系100、観察光学系200、表示手段75、操作入力手段74、制御部70、を備える眼科撮影装置10であって、
撮影が完了すると、制御部70は、取得した断層像をメモリ72に記憶させ、制御部70は、モニタ75上の表示を撮影画面から確認画面へ変更し、メモリ72より正面像及び断層像を呼び出し、モニタ75上に、正面像20、指標25、断層像30、を表示し、
確認画面において、検者によって、各スキャンラインでの断層像の確認を行い、良好に撮影が行われていないスキャンラインを確認した場合、検者によって選択されたスキャンラインが再撮影の候補として設定され、再撮影スイッチ34が選択されると、候補として設定された全ての断層像に対応する位置での、再撮影を行うようにする、眼科撮影装置10。」

3 甲3(引用文献7)について

(1)甲3の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。

(甲3ア)
「【0009】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る眼科システム(あるいは眼科装置)は、複数の断層画像をそれぞれ連続的に表示する際、該複数の断層画像の表示枚数に基づいて断層画像の表示時間を変更することができる。これにより、表示枚数が多い場合には1枚当たりの表示時間を短くすることができるので、検者による確認時間を短くして、診断の効率を向上させることができる。なお、本発明は、眼科システムに限定されるものではなく、人体の皮膚等の被検査物を観察するための内視鏡等の医療システム(あるいは医療装置)に適用可能である。
【0010】
ここで、表示枚数は、例えば、2次元断層画像の取得枚数であり、3次元断層画像を取得する場合には、測定光を被検眼の眼底上で走査する走査部の副走査線数である。これにより、取得した後直ちに取得した断層画像全てを確認することができる。また、表示枚数は、取得した断層画像全てを確認する必要はなく、取得した断層画像のうち中央部分の注目部位の断層画像を自動的に選択した選択枚数でも良い。また、表示枚数は、被検眼の固視微動が生じた場合の位置ずれのある断層画像を自動的に選択した選択枚数でもよい。また、表示枚数は、被検眼の瞬きや被検眼の前眼部の白内障により測定光が遮られた場合の暗い断層画像を自動的に選択した選択枚数でもよい。このように、暗い断層画像や位置ずれのある断層画像等を、写損がある断像画像と判断し、該判断された断層画像を選択する。写損がある断層画像の表示時間を長く(あるいは表示速度を小さく)することにより、検者が断層画像に写損があるか否かを確認する確認効率を向上させることができる。ここで、自動的に選択する手法としては、後述の画像評価指標等を用いて行うこともできる。例えば、画像評価指標の値が所定値よりも低い断層画像を位置ずれした断層画像として選択する。また、表示枚数は、検者が選択した注目部位の断層画像、暗い断層画像、位置ずれのある断層画像等の選択枚数であり、検者が選択的に断層画像を確認しても良い。これにより、しっかり確認する必要のある断層画像1枚当たりの確認時間(表示時間)を長く(表示速度を小さく)することができるので、診断効率を向上させることができる。なお、断層画像に写損がある場合には、今回の3次元断層画像はNGであることを入力し、再度、3次元断層画像を取得し直すことが好ましい。この場合、本発明により断層画像に写損があるか否かを確認する効率が向上され、全体的な撮像時間も短縮されるため、被検眼への負担を軽減することができる。」

(甲3イ)
「【0019】
(断層画像の取得フロー)
本実施形態に係る眼科システムの各構成が実行する工程について、図3を用いて説明する。まず、ステップ1001において、断層画像の取得を開始する。パソコン925により断層画像を取得するためのプログラムが実行されてモニタ928に初期画面を表示させる。また、XYスキャナ134を動作させ、自動的にステップ1002に進む。次に、ステップ1002において、モニタ928に患者情報入力画面を表示し、検者は患者選択あるいは初診であれば患者情報入力を行う。検者による操作(患者情報入力画面に表示したOKボタンをマウスにてクリックするなど)によってステップ1003に進む。
【0020】
また、ステップ1003において、モニタ928に検査パラメータ選択画面を表示し、検者は検査パラメータとして被検眼の左右、断層撮像をどの範囲で行うか、断層画像を何回撮像するか、Bスキャン画像に含まれるAスキャン画像の数などを設定する。なお、断層画像撮像に関わる設定をスキャンパターンと呼ぶ。そして、検者による操作(検査パラメータ選択画面に表示したOKボタンをマウスにてクリックするなど)によってステップ1004に進む。また、ステップ1004において、初期アライメント位置へ光学ヘッド900を移動する。被検眼の左右に応じて測定開始位置に光学ヘッド900を移動し、前眼観察用CCD171によって被検眼107の前眼部の画像を取得する。図2(a)中XY方向に関し、画像中心位置に初期調整目標位置となる瞳孔の中心が一致するように前記制御部が光学ヘッド900を移動する。Z方向に関しては前眼部に投影した輝点の大きさが最小になるようにZ方向を調整し、自動的にステップ1005に進む。また、ステップ1005において、眼底画像と断層画像のプレビューをモニタ928上に表示する。それと同時にこのステップでミラー132-4の移動による参考光路の光路長調整、レンズ135-3による眼底画像の焦点合わせ、レンズ135-5による断層画像の焦点合わせを自動で行う。ステップ1006において、検者からの断層画像の取得を開始するための信号の入力があるか否かを判断する。該信号の入力がある場合にはステップ1007に進む。該信号の入力がない場合には、ステップ1012に進み、自動的に行われた各調整に対してさらに良好な調整とするため、手動により調整の指示を行うことができる。手動による調整の後、再度、断層画像の取得を開始するための信号の入力を待機する。また、ステップ1007において、ステップ1003で設定されたスキャンパターンにより断層画像を取得する。また、パソコン925内の記憶装置に断層画像と眼底観察用のCCDで取得される眼底画像を保存して、自動的にステップ1008に進む。なお、この保存動作は自動的に行われてもよいし、画面上に表示される撮像ボタンをマウスでクリックすることにより行われてもよい。また、ステップ1008において、取得された断層画像に写損があるか否かを検者が判断するために、取得画像確認画面2000(後述)に取得した断層画像を表示する。
【0021】
また、ステップ1009において、断層画像に写損があるか否かに関する信号の入力を待機する。検者が断層画像に写損が無いと判断した場合には、画面上のOKボタン2214をマウス等のクリック操作を行い、ステップ1010に進む。また、検者が断層画像に写損があると判断した場合には、画面上のNGボタン2213がマウス等のクリック操作を行い、ステップ1013に進む。また、ステップ1013において、保存された断層画像のデータに写損のフラグを追加(写損である断層画像を選択)して、自動的にステップ1010に進む。フラグは、上記断層画像を再度読み出して表示した場合に写損であることを示すものである。また、ステップ1010において、検査継続か検査終了かを選択する画面を表示し、検者がそのどちらかを選択する。検査継続の場合にはステップ1003に進む。また、検査終了の場合にはステップ1017に進み、検査を終了する。」

(甲3ウ)
「【0027】
(画質の高い断層画像)
画質が高い断層画像そのもの、およびその近傍の断層画像をより長く表示する。検者は、それらの断層画像に注目できるため、層分離などの撮像状態がより詳細にチェックできる。画質の評価指標としては、OCT画像評価指標の一つであり、画像のヒストグラム中の診断に有効な画素の割合を示すQインデックスがある。このQインデックスを算出し、目標値あるいは他のアライメント位置での値と比較するプログラムが本実施形態における画像比較手段である。このプログラムは前述の撮像用プログラムに一体化されており、装置制御部であるパソコン925で実行される。なお、Qインデックスの計算方法については、BritishJournalofOphthalmology2006;90:P186-190”Anewqualityassessmentparameterforopticalcoherencetomography”に記載がある。」

(甲3エ)図1

(甲3オ)図3


(2)甲3に記載された技術事項
上記(1)の記載及び図面から、甲3には、次の技術事項(以下「甲3(引7)の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 複数の断層画像をそれぞれ連続的に表示する際、該複数の断層画像の表示枚数に基づいて断層画像の表示時間を変更することができる眼科システムであって、
設定されたスキャンパターンにより断層画像を取得し、
取得された断層画像から、画像評価指標(Qインデックス)の値が所定値よりも低い断層画像を位置ずれした断層画像として自動的に選択し、
選択された断層画像に写損があるか否かを検者が判断するために、取得画像確認画面2000に選択した断層画像を表示し、
検者が断層画像に写損があると判断した場合には、画面上のNGボタン2213に対しクリック操作を行い、再度、断層画像を取得し直す、眼科システム。」

4 甲4について

(1)甲4の記載
甲4号には、以下の事項が記載されている。
(甲4ア)
「[0024] In Functional OCT, differences between data collected at the same location at different times are used to analyze motion or flow. An en face vasculature image is an image displaying motion contrast signal in which the data dimension corresponding to depth is displayed as a single representative value, typically by summing or integrating an isolated portion of the data. For generating the enface images described herein, each B-scan in the given data volume consists of 300 A-scans, each cluster scan consists of four B-scans, for a total of eighty different cluster scans. Hence, the number of A-scans in a given unit data volume are 300×80×4. After processing the data to highlight motion contrast using any one of the known motion contrast techniques, a range of 25-30 pixels corresponding to 50-60 microns of tissue depth from the surface of internal limiting membrane (ILM) in retina, are summed to generate an en face image of the vasculature. Each B-scan takes approximately 12 ms to acquire (including fly-back time) so the time between B-scans is approximately 12 ms which is on the order of interest for retinal vasculature dynamics. For the enface image shown in FIG. 2, three volumes of data were collected with some overlapping area in the retina. The enface images obtained from the three volumes were montaged or combined to create a larger field of view enface image.」
「[0024] 機能的OCTでは、同じ場所で異なる時間に収集されたデータ間の差を利用して、モーション(動き)または流れを解析する。アンファス血管画像は、モーションコントラスト信号を表示する画像であり、深さに対応するデータ寸法は、典型的にはデータの孤立した部分を加算または積分することによって、単一の代表値として表示される。本明細書に記載のen face(正面)画像を生成するために、所定のデータボリューム内の各Bスキャンは300回のAスキャンからなり、各クラスタスキャンは4回のBスキャンからなり、合計80回の異なるクラスタスキャンである。従って、所定の単位データボリュームにおけるAスキャンの数は、300×80×4である。公知のモーションコントラスト技術のいずれか1つを用いてモーションコントラストを強調するためにデータを処理した後、網膜内の内部限界膜(ILM)の表面から50?60ミクロンの組織深さに相当する25?30画素の範囲を合計して、血管のアンファス(正面)画像を生成する。各Bスキャンの取得には約12msかかる(フライバック時間を含む)ので、Bスキャン間の時間は約12msであり、これは、網膜血管系ダイナミクスにとって関心のあるオーダーである。図2に示すen face(正面)画像については、3つの体積のデータが網膜内のいくつかの重なり合う領域と共に収集された。3つのボリュームから得られたen face(正面)画像はより大きな視野のen face(正面)画像を生成するために、モンタージュされるか、または組み合わされた。」

(2)甲4に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲4には、次の技術事項(以下「甲4の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 公知のモーションコントラスト技術のいずれか1つを用いてモーションコントラストを強調するためにデータを処理した後、網膜内の内部限界膜(ILM)の表面から50?60ミクロンの組織深さに相当する25?30画素の範囲を合計して、血管のアンファス(正面)画像を生成すること。」

5 甲5について

(1)甲5の記載
甲5には、以下の事項が記載されている。
(甲5ア)
「[0016] For generating the enface images described herein, each B-scan in the given data volume consists of 300 A-scans, each cluster scan consists of four B-scans, for a total of eighty different cluster scans. Hence, the number of A-scans in a given unit data volume are 300×80×4. After processing the data to highlight motion contrast using a particular motion contrast technique as described herein, a range of 25-30 pixels corresponding to 50-60 microns of tissue depth from the surface of internal limiting membrane (ILM) in retina, are summed to generate an en face image of the vasculature. Each B-scan takes approximately 12 ms to acquire (including fly-back time) so the time between B-scans is approximately 12 ms which is on the order of interest for retinal vasculature dynamics. This data set is illustrative in nature and one skilled in the art will appreciate that any type of OCT data in which OCT measurements are collected at the same or approximately the same location over relevant timescales for the motion being investigated could be used in the present invention.」
「[0016] 本明細書に記載のen face(正面)画像を生成するために、所定のデータボリューム内の各Bスキャンは300回のAスキャンからなり、各クラスタスキャンは4回のBスキャンからなり、合計80回の異なるクラスタスキャンである。従って、所定の単位データボリュームにおけるAスキャンの数は、300×80×4である。本明細書に記載されるような特定のモーションコントラスト技術を使用してモーションコントラストを強調するためにデータを処理した後、網膜内の内部限界膜(ILM)の表面から50?60ミクロンの組織深さに相当する25?30画素の範囲を合計して、血管のアンファス(正面)画像を生成する。各Bスキャンの取得には約12msかかる(フライバック時間を含む)ので、Bスキャン間の時間は約12msであり、これは、網膜血管系ダイナミクスにとって関心のあるオーダーである。このデータセットは本質的に例示的なものであり、当業者であれば、OCT測定が、調査されているモーションに関連する時間スケールにわたって、同じまたはほぼ同じ位置で収集される任意のタイプのOCTデータを本発明で使用できることを理解するのであろう。」

(2)甲5に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲5には、次の技術事項(以下「甲5の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 特定のモーションコントラスト技術を使用してモーションコントラストを強調するためにデータを処理した後、網膜内の内部限界膜(ILM)の表面から50?60ミクロンの組織深さに相当する25?30画素の範囲を合計して、血管のアンファス(正面)画像を生成すること。」

6 甲6について

(1)甲6の記載
甲6には、以下の事項が記載されている。
(甲6ア)
「【0068】
(6)光断層画像の積分2値化
画像処理装置は、積分2値化手段を有し、所定の層領域の光断層画像データについてAスキャン方向の画像強度の積分乃至その積分値の2値化のステップを行う。実際は、画像処理装置として動作するコンピュータ18が、搭載されたプログラムによって、積分2値化手段として機能する。
【0069】
このステップは次のとおりである。図5(a)、(b)は、Aスキャン方向(x方向)とBスキャン方向(y方向)で示される2次元光断層画像及びその画像強度グラフを示し、積分値の2値化のステップは、次のとおりである。積分2値化手段は、まず、(5)のステップ(所定の層領域の取り出し)で層領域取り出し手段で摘出した所定の層領域の光断層画像データについて、B-Cスキャン方向(y、z座標)の複数の位置のそれぞれについて、深さ方向(Aスキャン方向、x方向)に、画像強度を積分する(y座標の(イ)の位置の画像強度の積分については図5(a)、(b)を参照)。
【0070】
この積分された画像強度は、被計測物体17の表面を観察すると、y-z座標において、図5(c)に示すような強度分布の画像(「影絵」と呼ぶ。)として表示される。
【0071】
次に積分2値化手段は、図5(d)に示すような影絵の強度のヒストグラム、即ち、画像全体で同じ濃度値を持つ画素数を求め、横軸に濃度値を縦軸にピクセル数でグラフ化した濃度値ヒストグラムを取る。そして、平均値からかけ離れた画素(高い濃度及び低い濃度部分)(たとえば平均値±分散値より外側など)はノイズとみなし除去する。その後、このヒストグラムで閾値を設定し、2値化すると図6(a)に示すような2値化画像(データ)が得られる。」

(2)甲6に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲6には、次の技術事項(以下「甲6の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 画像処理装置は、積分2値化手段を有し、積分2値化手段は、層領域取り出し手段で摘出した所定の層領域の光断層画像データについて、B-Cスキャン方向(y、z座標)の複数の位置のそれぞれについて、深さ方向(Aスキャン方向、x方向)に、画像強度を積分し、この積分された画像強度は、被計測物体17の表面を観察すると、y-z座標において、強度分布の画像(「影絵」)として表示されること。」

7 甲7について

(1)甲7の記載
甲7には、以下の事項が記載されている。
(甲7ア)
「 [0031] ・・・The 3-D data is also used to generate conventional OCT cross-sectional images 185C. The 3-D data can also be subjected to a partial segmentation process (block 250) in order to outline and quantify fluid-filled spaces and other retinal features. This segmented data can also be used (block 260), to generate ocular maps, such as edema maps and thickness maps that can be used for diagnosis and treatment. The partial segmentation can also be used to generate a partial fundus image. The partial fundus image is generated the same way as the full fundus image from the 3-D data however, the depth location and range around that depth is limited and selected through the segmentation process. As discussed below, a partial fundus image can be created to highlight certain features or landmarks in the eye. Note that a full segmentation process would be one that identifies many (or all) retinal layers and/or structures. A partial fundus image requires finding only one surface, either a specific retinal layer, like the retinal pigment epithelium, or a more general description of retinal tilt and curvature such as the locus of the centroids of each a-scan.」
「[0031] ・・・3-Dデータは、従来のOCT断面画像185Cを生成するためにも使用される。3-Dデータはまた、流体で満たされた空間や他の網膜特徴の輪郭を描き、定量化するために、部分的セグメンテーションプロセス(ブロック250)を受けることができる。このセグメント化されたデータはまた、診断および治療のために使用され得る「浮腫マップ」および「厚さマップ」のような眼球マップを生成するために使用され得る(ブロック260)。部分的セグメンテーションはまた、部分的な眼底画像を生成するために使用され得る。部分的な眼底画像は3-Dデータから完全な眼底画像と同じ方法で生成されるが、その深さ周辺の深さ位置および範囲はセグメンテーションプロセスを通じて制限され、選択される。以下で論じるように、眼内の特定の特徴または目印を強調するために、部分的な眼底画像を作成することができる。完全なセグメンテーションプロセスは、多くの(またはすべての)網膜層および/または構造を識別するものであることに留意されたい。部分眼底像は、網膜色素上皮のような特定の網膜層、または各Aスキャンの重心の座位のような網膜の傾斜と弯曲のより一般的な記述のいずれかの1つの表面のみを見つけることを必要とする。」

(2)甲7に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲7には、次の技術事項(以下「甲7の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 OCT断面画像185Cを生成するためにも使用される3-Dデータは、流体で満たされた空間や他の網膜特徴の輪郭を描き、定量化するために、部分的セグメンテーションプロセスを受けることができること。」

8 甲8について

(1)甲8の記載
甲8には、以下の事項が記載されている。
(甲8ア)
「Detection of Measurement Volumes
[0132] Based on the 3D volumetric data set 102 from the above scanning protocol 100, SSADA algorithm 303 is performed on raw interference spectrum 302 and both reflectance intensity images 304 and decorrelation (flow) images 306 can be obtained simultaneously. If necessary, the image distortion due to the saccadic motion artifacts can be reduced by performing 3D registration 307 [Kraus et al., Biomed. Opt. Express 3:1182-1199 (2012)]. When registered B-scan reflectance 308 and registered B-scan flow 310 are processed, at 311, the anatomical landmarks are identified on B-scan reflectance 308 and used for the segmentation of B-scan flow 310. At 313, maximum projection algorithm [Jia et al., Opt. Express 20:4710-4725 (2012)] is applied on both reflectance 308 and segmented flow 312 image. The projection algorithm finds the maximum reflectance and decorrelation value for each transverse position, representing the highest reflectance and fastest flowing vessel lumen respectively. Next, at 317, the landmarks on en face reflectance 314 are identified and used to mask en face segmented flow image 316. Then segmented en face flow image 318 is obtained and used for calculation of flow index 320 and vessel density 322.」
「測定量の検出
[0132] 上記の走査プロトコル100からの3Dボリューメトリックデータセット102に基づいて、SSADAアルゴリズム303を生の干渉スペクトル302に対して実行され、反射強度画像304および非相関(流れ)画像306の両方を同時に得ることができる。必要に応じて、3D位置合わせ307[Kraus et al.,Biomed. Opt.Express 3:1182-1199 (2012)]を実行することによって、衝動性モーションアーチファクトによる画像の歪みを低減することができる。位置合わされたBスキャン反射308および位置合わされたBスキャンフロー310が処理されると、311において、解剖学的ランドマークがBスキャン反射308上で識別され、Bスキャンフロー310のセグメンテーションのために使用される。313において、最大投影アルゴリズム[Jia et al.,Opt.Express 20:4710-4725 (2012)]は、反射率308およびセグメント化されたフロー312画像の両方に適用される。投影アルゴリズムは、各横断方向の位置に対する最大の反射率と非相関値を見つけ、それぞれ最高の反射率と最速の流動血管ルーメンを表す。次に、317において、en face(正面)反射314上のランドマークを識別し、en face(正面)のセグメント化されたフロー画像316をマスクする。次に、セグメント化されたen face(正面)フロー画像318が得られ、フローインデックス320および血管密度322の計算に使用される。」

(2)甲8に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲8には、次の技術事項(以下「甲8の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 走査プロトコル100からの3Dボリューメトリックデータセット102に基づいて、SSADAアルゴリズム303を生の干渉スペクトル302に対して実行され、反射強度画像304および非相関(流れ)画像306の両方を同時に得、3D位置合わせ307を実行し、位置合わされたBスキャン反射308および位置合わされたBスキャンフロー310が処理されると、解剖学的ランドマークがBスキャン反射308上で識別され、Bスキャンフロー310のセグメンテーションのために使用され、最大投影アルゴリズムは、反射率308およびセグメント化されたフロー312画像の両方に適用され、次に、en face(正面)反射314上のランドマークを識別し、en face(正面)のセグメント化されたフロー画像316をマスクし、次に、セグメント化されたen face(正面)フロー画像318が得られ、フローインデックス320および血管密度322の計算に使用されること。」

9 甲9について

(1)甲9の記載
甲9には、以下の事項が記載されている。
(甲9ア)Fig. 3

「Fig. 3 An -12 deg FOV centered at the fovea. (a) Pseudo-SLO fundus obtained by en-face mean projection of the intensity data set. (b) Colorcoded en-face mean projection of the retinal and choroidal vasculature. (c) Retinal vasculature. (d) Choroidal vasculature.」
「図3 中心窩を中心とした?12度の視野。 (a)強度データセットのen-face (正面)平均投影によって得られた擬似SLO眼底。(b)網膜及び脈絡膜の血管系を色分けされた正面平均投影。(c)網膜血管系。(d)脈絡膜の血管系。」

(2)甲9に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲9には、次の技術事項(以下「甲9の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 中心窩を中心とした?12度の視野において、網膜血管系と脈絡膜の血管系をそれぞれ図示すること。」

10 甲10(引用文献1)について

(1)甲10の記載
甲10には、以下の事項が記載されている。
(甲10ア)第511頁左欄第22?43行
「 OCTA overcomes some of these limitations by using variations in the intensity and/or phase properties of the OCT signal that result from movement of blood over multiple B-scans.^(15)・・・Therefore the SS-OCT system provides an ideal platform for OCTA implementation. The goal of this study is to evaluate the feasibility of noninvasive retinal angiography using a prototype SS-OCT and a combination of phase and intensity-based motion contrast techniques.」
「 OCTAは、複数のBスキャン上での血液の動きに起因するOCTシグナルの強度や位相特性の変化を使用することで、これらの制限のいくつかを克服している^(15)。・・・したがって、SS-OCTシステムはOCTA実装のための理想的なプラットフォームを提供する。本研究の目的は、プロトタイプのSS-OCTと位相および強度ベースのモーションコントラスト技術の組み合わせを用いて、非侵襲的網膜血管造影の実現可能性を評価することである。」

(甲10イ)第511頁左欄第47行?第512頁左欄第13行
「PATIENTS AND METHODS
Data was acquired using a Cirrus (Carl Zeiss Meditec, Dublin, CA) prototype modified with a swept-source laser system with a central wavelength of 1,060 nm and a scan speed of 100,000 A-scans per second. Five healthy subjects with no prior ophthalmologic or medical history were recruited. A total of nine eyes were imaged. The study was approved by the institutional review board of the University of Southern California, and a signed informed consent was obtained from each subject prior to examination. Study participants were instructed to focus on a fixation target. At least three 3 × 3 mm^(2) scans were taken, centered on the fovea, nasal macula, and far temporal macula. Retinal vasculature was assessed within three horizontal retinal slabs consisting of the inner retina (retinal nerve fiber layer, ganglion cell layer, and superficial inner plexiform layer), middle retina (deep inner plexiform layer, inner nuclear layer, outer plexiform layer, and superficial outer nuclear layer), and outer retina (deep outer nuclear layer to the external limiting membrane). Figure 1 illustrates the scan locations and segmentation scheme. The vasculature within each retinal slab was reconstructed using phase-based and intensity contrast-based algorithms and visualized as separate en face images, as illustrated in Figure 2 (page 512).
Post-processed en face OCT angiograms were analyzed using ImageJ (NIH, Bethesda, MD) to quantify the density of retinal microvasculature. This was performed on each en face slab using the “Auto Local Threshold” plug-in of ImageJ (Landini G., v1.5) to delineate retinal vasculature from background noise. Local thresholding was performed using the “mean method” with a radius of 10 and a C value of -10. Vessel density was calculated as a percentage of the sampled area that was occupied by vessels detected by the thresholding parameters. Statistical analysis was performed using the Student’s t test or the Tukey- Kramer test for multiple comparisons. A P value of less than .05 was accepted as significant. The software JMP Pro (version 11; SAS Inc., Cary, NC) was used for all statistical analysis.」
「患者と方法
データは、中心波長1060nm、毎秒100000Aスキャンのスキャン速度を持つスウェプトソースレーザーシステムを改造したCirrus(Carl Zeiss Meditec,Dublin,CA)プロトタイプを使用して取得した。眼科学的既往歴も病歴もない健康な5人の被験者を募集した。合計の9つの眼を画像化した。この研究は南カリフォルニア大学の機関審査委員会によって承認され、検査前に各被験者から署名入りのインフォームドコンセントを得た。研究参加者は、固定目標に焦点を合わせるように指示された。中心窩、鼻黄斑、及び遠位黄斑を中心に、少なくとも3×3mm^(2)のスキャンを3回行った。網膜血管系は、内側網膜(網膜神経線維層、神経節細胞層、表層内網状層)、中間網膜(深層内網状層、内顆粒層、外網状層、表層外顆粒層)、外側網膜(深層外顆粒層から外部内境界膜まで)からなる3つの水平な網膜スラブ内で評価した。図1は、スキャン位置及びセグメンテーションスキームを示す。各網膜スラブ内の血管を、位相ベース及び強度コントラストベースのアルゴリズムを使用して再構成し、図2(512頁)に示すように、別々のen face画像として可視化した。
処理後のen face OCTアンギオグラムに対してImageJ(NIH,Bethesda,MD)を用いて解析し、網膜微小血管系の密度を定量化した。これは、背景ノイズから網膜血管系を描写するために、ImageJ(Landini G.,v1.5)の“Auto Local Threshold"プラグインを使用して、各en faceスラブ上に形成された。局所閾値は、半径10及びC値-10の「平均法」を用いて形成された。血管密度は、閾値パラメータによって検出された血管によって占有されたサンプル領域のパーセンテージとして計算された。統計分析は、スチューデントのt検定又は多重比較のためのTukey-Kramer検定を用いて実施した。0.05未満のP値は有意であると認められた。すべての統計解析には、ソフトウェアJMP Pro(バージョン11;SAS Inc.,Cary,NC)が使用された。」

(甲10ウ)第512頁左欄第15行?右欄第12行
「 Figure 1 (page 511) shows an example of the regions of the retina that underwent OCTA as well as a sample segmentation scheme of the retina. A total of five healthy participants without any history of ocular disorders (other than refractive error) were imaged in this fashion. Figures 2 and 3 show representative OCT angiograms and the results of the ImageJ thresholding algorithm that was applied for quantification of retinal vessel density within each retinal slab. In no cases were retinal vessels visualized in the deep retinal layers, so only results from the inner and middle retinal layers are discussed below. OCTA of the inner and middle retinal layers showed region-specific vascular patterns that consistently corroborated qualitative findings in histological studies^(3,18,19) and are discussed in detail below.」
「 図1(511頁)は、OCTAを受けた網膜の領域の例、及び網膜のサンプルセグメンテーションスキームを示す。眼障害(屈折異常以外)の病歴のない合計5人の健康な参加者を、この様式で撮像した。図2及び3は、代表的なOCT血管造影図及び各網膜スラブ内の網膜血管密度の定量化に適用されたI m ageJ閾値化アルゴリズムの結果を示す。深部網膜層に網膜血管が視覚化された症例はなかったので、内側及び中間の網膜層からの結果のみを以下に考察する。網膜内層及び網膜中層のOCTAは組織学的研究^(3, 18, 19)における定性的所見を一貫して確証する領域特異的血管パターンを示し、以下に詳細に論じる。」

(甲10エ)Figure 1.

「Figure 1. OCT angiography scan locations and retinal segmentation. (A) Fundus photograph showing the target locations for each OCT angiograph. i = optic nerve head; ii = nasal macula; iii = macula; iv = far temporal macula. (B) OCT B-scan showing the segmentation scheme defining the inner, middle and outer retinal layers. The inner retinal layer extends from the inner limiting membrane to the middle of the inner plexiform layer. The middle retinal layer extends from the middle of the inner plexiform layer to the middle of the outer nuclear layer. The outer retinal layer extends from the middle of the outer nuclear layer to the inner limiting membrane.」
「図1 OCT血管造影スキャン位置及び網膜のセグメンテーション。(A)各OCT血管造影の対象位置を示す眼底写真。i=視神経乳頭;ii=鼻黄斑;iii=黄斑;iv=遠位黄斑。(B)内側、中央及び外側の網膜層を規定するセグメンテーションスキームを示すOCTBスキャン。内側網膜層は、内境界膜から内網状層の中央まで延在する。中間網膜層は、内網状層の中央から外顆粒層の中央まで延在する。外側網膜層は、外顆粒層の中央から内境界膜まで延在する。」

(甲10オ)Figure 2.

「Figure 2. OCT angiogram and vessel density analysis of a 3 x 3 mm2 area centered on the fovea of a healthy subject. En face representation of the retinal vessels in the (A) inner retinal layer and (B) middle retinal layer. (C,D) Contrast enhanced images of the respective retinal regions in (A) and (B). (C) Vessel density analysis of the inner retina showed an average total density of 31.68% ± 1.15%. (D) Vessel density analysis of the middle retina showed an average total density of 30.86% ± 1.20%. The scale bar in (A) shows a distance of 500 μm. This scale applies to (A-D).」
「図2 健常者の中心窩を中心とした3×3mm2の領域のOCT血管造影図及び血管密度解析。(A)内側網膜層及び(B)中間網膜層における網膜血管のen face表現。(C,D)(A)及び(B)におけるそれぞれの網膜領域のコントラスト強調画像。(C)内側網膜の血管密度解析では、平均総密度は31.68%±1.15%であった。(D)中間網膜の血管密度解析では、平均総密度は30.86%±1.20%であった。(A)のスケールバーは、500μmの距離を示している。このスケールは(A-D)に適用される。」

(2)甲10に記載された発明
上記(甲10ウ)の「 処理後のen face OCTアンギオグラムに対してImageJ(NIH,Bethesda,MD)を用いて解析し、網膜微小血管系の密度を定量化した。これは、背景ノイズから網膜血管系を描写するために、ImageJ(Landini G.,v1.5)の“Auto Local Threshold"プラグインを使用して、各en faceスラブ上に形成された。局所閾値は、半径10及びC値-10の「平均法」を用いて形成された。血管密度は、閾値パラメータによって検出された血管によって占有されたサンプル領域のパーセンテージとして計算された。統計分析は、スチューデントのt検定又は多重比較のためのTukey-Kramer検定を用いて実施した。0.05未満のP値は有意であると認められた。すべての統計解析には、ソフトウェアJMP Pro(バージョン11;SAS Inc.,Cary,NC)が使用された。」との記載によれば、上記(甲10オ)の(C)及び(D)のコントラスト強調画像から求めた血管の平均総密度31.68%±1.15%、30.86%±1.20%を、血管密度解析の結果として表示していることは明らかである。

この点を踏まえて上記(1)の記載及び図面を総合すると、甲10には、次の発明又は技術事項(以下、「引用発明」又は「甲10の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 非侵襲的網膜血管造影を評価するシステムであって、
SS-OCTを改造したプロトタイプを使用してOCTBスキャンデータを取得し、取得したOCTBスキャンデータに対して、網膜のセグメンテーションスキームにより規定された、内側網膜(網膜神経線維層、神経節細胞層、表層内網状層)、中間網膜(深層内網状層、内顆粒層、外網状層、表層外顆粒層)、外側網膜(深層外顆粒層から外部内境界膜まで)からなる3つの水平な各網膜スラブ内の血管を、複数のBスキャン上での血液の動きに起因する位相ベース及び強度コントラストベースのモーションコントラストアルゴリズムを使用して再構成し、別々のen face画像として可視化し、
処理後のen face OCTアンギオグラムに対してImageJを用いて解析し、網膜微小血管系の密度を定量化し、定量化された密度を血管密度解析の結果として表示する、システム。」

11 引用文献2について

(1)引用文献2の記載
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(引2ア)
「【0011】
本願明細書に記載された方法は、網膜血管系(または血流)の画像を生成するための、非侵襲性の計算的技法であり、当該画像は、次いで、網膜微小循環に関連する様々な診断上の、関連するメトリクスを抽出するために使用されるか、および/または、網膜組織の構造に関して、血管および毛細血管の構造を可視化するために、後で使用され得るか、のいずれかである。血管系の解剖学的所在は、典型的に血液の流れに起因する、認識可能な運動対比が存在する所在として規定される。ドップラーOCT、スペックルまたは強度分散、および位相分解法などの、運動対比を検出するための種々のOCTベースの方法が存在する。これらの方法のほとんどにおいて、運動対比は、ほぼ同じ所在で少なくとも2つのOCT測定値を得ることによって求められ、ここで、2つの測定値は、事前に求められた間隔によって、および、アルゴリズムを適用して、複素OCT信号の変化か、または、強度もしくは位相などの当該複素OCT信号の成分の変化を見ることによって、時間において分離される。これらの測定値の精度は、以下のものに限定されないが、サンプルの軸方向のバルク運動に起因する信号を除去することを含めた、運動に関連する誤差を最小化することによって、改善され得る。」

(2)引用文献2に記載された技術事項
上記(1)の記載から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 網膜血管系(または血流)の画像を生成するための、非侵襲性の計算的技法において、血管系の解剖学的所在は、典型的に血液の流れに起因する、認識可能な運動対比が存在する所在として規定され、ドップラーOCT、スペックルまたは強度分散、および位相分解法などの、運動対比を検出するための種々のOCTベースの方法が存在し、運動対比は、ほぼ同じ所在で少なくとも2つのOCT測定値を得ることによって求められ、ここで、2つの測定値は、事前に求められた間隔によって、および、アルゴリズムを適用して、複素OCT信号の変化か、または、強度もしくは位相などの当該複素OCT信号の成分の変化を見ることによって、時間において分離されること。」

12 引用文献5について

(1)引用文献5の記載
引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(引5ア)

「【0010】
本実施例に係る眼底撮像装置について、図1などを用いて説明する。なお、眼底撮像装置とは、被検者(あるいは被験者とも呼ぶ。)の眼底(被検査物の一例)を観察すための画像を撮像可能に構成される装置のことである。このとき、肉眼による観察を含んでも良い。
【0011】
まず、300は、眼底の表面の2次元画像(例えば、図5(b)の眼底画像1402。)を撮像可能に構成される眼底画像撮像部(あるいは眼底カメラ本体部とも呼ぶ。)である。これは、カメラ部500を着脱自在に構成されることが好ましい。なお、眼底画像撮像部は、被検査物の表面画像を取得する表面画像取得手段の一例である。また、表面画像取得手段は、表面画像を表示部に表示させるコンピュータ125(表示制御手段の一例)が表面画像データを受信する構成等も含む。
【0012】
次に、100は、眼底画像撮像部300と共通の光学系を介して構成(あるいは接続可能に構成)され、眼底の断層画像(例えば、図5(b)のBスキャン画像1401。)を撮像するための断層画像撮像部である。これらは、例えば、光ファイバ148を介して光学的に接続されることが好ましい。なお、断層画像撮像部は、被検査物の断層画像を取得する断層画像取得手段の一例である。また、断層画像取得手段は、断層画像を表示部に表示させるコンピュータ125(表示制御手段の一例)が断層画像データを受信する構成等も含む。
【0013】
また、128は、断層画像1401を表示するための表示部である。表示部は、装置の出力部(後述の制御部に含めて構成されても良いし、別々に構成されても良い。)を介して接続されている。出力部は、表示部に断層画像1401に関する信号を出力する。
【0014】
また、125は、眼底画像撮像部300と断層画像撮像部100と出力部とをそれぞれ制御するための制御部である。
【0015】
また、804は、制御部125に上述したそれぞれの構成の制御に関する信号を入力するための信号入力部である。ここで、信号入力部804には、図1(a)のジョイスティック805に設けられる操作スイッチ804以外にも、図4(b)の断層画像撮像ボタン1203など、制御部125に信号を入力可能なものであれば何でも良い。
【0016】
このとき、制御部125は、以下のa)からc)の工程を行う。
【0017】
a)信号入力部804から入力された信号(例えば、操作スイッチ804への1回目の押下により入力される第1の信号。)により、断層画像(例えば、図5(a)の複数のBスキャン画像から成る確認用断層画像1305。)を撮像するように断層画像撮像部100を制御する。
【0018】
b)撮像された断層画像1305に関する信号が表示部128から出力するように出力部を制御する。
【0019】
c)断層画像1305に関する信号が出力部に出力された場合に、信号入力部804から入力された信号(例えば、操作スイッチ804への2回目の押下により入力される第2の信号。)により、2次元画像1402を撮像するように眼底画像撮像部300を制御する。
【0020】
これにより、断層画像1305を確認してから眼底画像1402の撮像に移れる。もし、固視微動などによる画像の位置ずれにより、再度断層画像を撮像する必要がある場合に、上記断層画像の確認を行うことで、効率良く撮像することができる。
【0021】
ここで、断層画像1305の再撮像(再取得)を選択するための選択入力部1304(あるいは断層画像再撮像ボタンとも呼ぶ。)を備えることが好ましい。なお、選択入力部は、アライメントのタブでも良く、制御部125に信号を入力できるものであれば何でも良い。そして、制御部125は、断層画像1305に関する信号が出力部から出力された場合に、選択入力部1304から入力された信号により、断層画像を撮像(確認用断層画像1305を再び撮像)するように断層画像撮像部100を制御することが好ましい。これにより、再度断層画像を撮像する場合、被検者の瞳孔が開くまで待つ必要がないので、再撮像を短時間で繰り返し行うことができる。」

(引5イ)図5


(2)引用文献5に記載された技術事項
上記(1)の記載から、引用文献5には、次の技術事項(以下「引用文献5の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「 眼底画像1402を撮像可能に構成される眼底画像撮像部300と、Bスキャン画像1401を撮像するための断層画像撮像部100と、眼底画像撮像部300と断層画像撮像部100と出力部とをそれぞれ制御するための制御部125とを備える眼底撮像装置であって、
制御部125は、複数のBスキャン画像から成る確認用断層画像1305を撮像するように断層画像撮像部100を制御し、撮像された断層画像1305に関する信号が表示部128から出力するように出力部を制御し、これにより、撮像結果表示画面において断層画像1305を確認してから眼底画像1402の撮像に移れ、ここで、撮像結果表示画面において、断層画像1305の再撮像(再取得)を選択するための選択入力部1304を備えており、
制御部125は、断層画像1305に関する信号が出力部から出力された場合に、選択入力部1304から入力された信号により、確認用断層画像1305を再び撮像するように断層画像撮像部100を制御する、眼底撮像装置。」

第7 当審の判断
令和2年8月7日付けの取消理由通知、及び令和3年2月17日付けの取消理由(決定の予告)通知に記載した取消理由について、以下、検討する。

1 本件発明1について

(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「SS-OCTを改造したプロトタイプを使用してOCTBスキャンデータを取得し、」「非侵襲的網膜血管造影を評価するシステム」は、本件発明1の「被検体上を走査された測定光と、参照光とに基づいてOCTデバイスによって検出されたOCT信号を処理するOCT信号処理装置」に相当する。

イ 引用発明の「3つの水平な各網膜スラブ内の血管を、」「可視化」させる手段と、本件発明1の「同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた3次元モーションコントラストデータの良否を確認するための確認画面を表示手段に表示させる制御手段」とは、「画面を表示手段に表示させる制御手段」の点で共通する。

ウ 引用発明の「取得したOCTBスキャンデータに対して、網膜のセグメンテーションスキームにより規定された、内側網膜(網膜神経線維層、神経節細胞層、表層内網状層)、中間網膜(深層内網状層、内顆粒層、外網状層、表層外顆粒層)、外側網膜(深層外顆粒層から外部内境界膜まで)からなる3つの水平な各網膜スラブ内の血管を、複数のBスキャン上での血液の動きに起因する位相ベース及び強度コントラストベースのモーションコントラストアルゴリズムを使用して再構成し、別々のen face画像として可視化」させることと、本件発明1の「前記制御手段は、」「同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた」「3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出された前記3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像を前記確認画面に表示させる」こととは、「前記制御手段は、」「同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた」「3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出された前記3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像を前記画面に表示させる」点で共通する。

エ 引用発明の「処理後のen face OCTアンギオグラムに対してImageJを用いて解析し、網膜微小血管系の密度を定量化し、定量化された密度を欠陥密度解析の結果として表示する」ことと、本件発明1の「前記確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能である」こととは、「前記画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能である」点で共通する。

よって、本件発明1と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「 被検体上を走査された測定光と、参照光とに基づいてOCTデバイスによって検出されたOCT信号を処理するOCT信号処理装置であって、
画面を表示手段に表示させる制御手段を備え、
前記制御手段は、
同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出された前記3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像を前記画面に表示させ、
前記画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能である、OCT信号処理装置。」

(相違点)
被検体の一部の深さ領域において抽出された3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像を表示させる画面が、本件発明1では、「3次元モーションコントラストデータの良否を確認するための確認画面」であり、「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示し、前記確認画面」を表示した後に解析画面を表示可能であるのに対し、引用発明では、「3つの水平な各網膜スラブ内の血管を、」「別々のen face画像として可視化」させる画面であり、この画面にOCT信号の再取得ボタンを表示させていない点。

(2)判断

ア 令和3年2月17日付けの取消理由(決定の予告)で用いた甲1(引3)の適用について
甲1(引3)の技術事項には、「OCT血管造影データが取得された後、各Aスキャン測定に対応するサブスペクトルのより小さい部分のみを使用することによって、アンファス血管系画像を表示させ、この段階で、操作者はこのアンファス血管系画像(低軸解像度OCT血管造影画像)を視覚的に検査して、スキャンが許容可能な品質であり、許容できない動きアーチファクトがあるかどうかを判定する」ことが開示されている。
しかしながら、甲1(引3)の技術事項では、再取得の判定に用いる画像は、アンファス血管系画像(低軸解像度OCT血管造影画像)であって、一部の深さ領域のアンファス血管系画像ではないから、引用発明において、甲1(引3)の技術事項を適用しても、再取得の判定に用いる画像が、「別々のen face画像」(一部の深さ領域のアンファス血管系画像)にはならない。
よって、引用発明において、甲1(引3)の技術事項を適用して上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

イ 令和2年8月7日付けの取消理由で用いた甲2(引6)、引用文献5の適用について
甲2(引6)、引用文献5の技術事項によれば、OCT信号処理装置において、Bスキャン信号から生成した断層画像を表示する確認画面に、表示された前記断層画像のBスキャン信号を再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを表示することは、周知技術であるといえる。
しかしながら、当該周知技術では、確認画面に表示される再取得の判定に用いる画像は、Bスキャン信号から生成した断層画像であって、一部の深さ領域のアンファス血管系画像ではないから、引用発明において、当該周知技術を適用しても、再取得の判定に用いる画像が、「別々のen face画像」(一部の深さ領域のアンファス血管系画像)にはならない。
よって、引用発明において、当該周知技術を適用して上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

ウ その余(甲3?甲9、引2)の技術事項について
その余(甲3?甲9、引2)の技術事項のいずれにおいても、上記相違点に係る本件発明1の構成、とりわけ、「被検体の一部の深さ領域において抽出された3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像」(一部の深さ領域のアンファス血管系画像)を「3次元モーションコントラストデータの良否を確認するため」に用いる点について記載も示唆もない。また、この点が周知技術であるという証拠も見当たらない。

エ 上記ア?ウから、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、引用発明及び甲2?甲9、引2、引5の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

オ そして、本件特許明細書の【0102】に記載の「網膜全層のMC画像しか確認できない場合に比べ、特定の深さ領域が上手く撮影できているかを容易に確認することができる」という本件発明1が奏する作用・効果は、引用発明及び甲2?甲9、引2、引5の技術事項から当業者が予測し得ることとはいえない。

カ 申立人の意見について

(ア)令和3年6月9日に提出された意見書において申立人は、次のとおり主張する。
上記相違点に係る本件発明1の構成について、「ここで、取得したデータに基づく画像を表示して、取得したデータの良否を確認することは、引用文献3([0031]、[0032])、引用文献5(図5a)、[0020]、[0070]」、引用文献6(図5、[0081])などにも記載のとおり、画像診断装置の技術分野において当然のことであるから、引用文献1に記載の、一部の深さ領域において抽出された3次元モーションコントラストデータに基づいて生成された画像である、「3つの水平な各網膜スラブ血管を、」「別々のen face画像として可視化」させた画像(引用文献1の図2)は、3次元モーションコントラストデータの良否を確認できる画像であることは自明であり、・・・
そうすると、引用文献1において、再撮影のための手間を軽減することを目的として、同文献に記載の「3つの水平な各網膜スラブ血管を、」「別々のen face画像として可視化」させた画像が表示された画面で、3次元モーションコントラストデータの良否を確認し、許容できない動きアーティファクトなどがある場合に、引用文献5、6などに記載された眼科OCT撮影装置において周知な技術的事項である、取得したデータ(3次元OCTデータ)の良否を確認するための確認画面に表示された、複数のOCT信号をOCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを、引用文献1に組み合わせて、本件訂正発明1に想到することは、当業者が容易になし得た程度のことである。」(第4頁8行?第5頁21行)

(イ)上記主張について検討する。
申立人の上記主張は、当審が令和2年8月7日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由と同様の趣旨である。
しかしながら、上記イで説示したとおり、甲2(引6)、引用文献5の技術事項によれば、OCT信号処理装置において、Bスキャン信号から生成した断層画像を表示する確認画面に、表示された前記断層画像のBスキャン信号を再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを表示することは、周知技術であるといえるが、当該周知技術では、確認画面に表示される再取得の判定に用いる画像は、Bスキャン信号から生成した断層画像であって、一部の深さ領域のアンファス血管系画像ではないから、引用発明において、当該周知技術を適用しても、再取得の判定に用いる画像が、「別々のen face画像」(一部の深さ領域のアンファス血管系画像)にはならない。
また、申立人の主張どおりに「取得したデータに基づく画像を表示して、取得したデータの良否を確認することは・・・画像診断装置の技術分野において当然のことである」との仮定を前提に、引用発明において、3次元モーションコントラストデータの良否を確認する場合を考えてみると、3次元モーションコントラストデータの良否を確認できる画像は、セグメンテーション処理後の一部の深さ領域のモーションコントラスト画像(「別々のen face画像」)でなく、セグメンテーション処理前の深さ全領域の3次元モーションコントラスト画像(全層のen face画像)であることが自然である。
よって、申立人の上記意見は採用できない。

(3)小括
したがって、本件発明1は、当業者であっても、引用発明及び甲2?甲9、引2、引5の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1を減縮した発明であり、上記相違点に係る本件発明1の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び甲2?甲9、引2、引5の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本件発明4について
引用発明4は、本件発明1に対応するOCT信号処理プログラムの発明であり、上記相違点に係る本件発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び甲2?甲9、引2、引5の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1に対応するOCT装置の発明であり、上記相違点に係る本件発明1の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び甲2?甲9、引2、引5の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第8 令和2年8月7日付けの取消理由、令和3年2月17日付けの取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について

1 申立て理由1(特許法第29条第2項)について
申立人は、本件発明1?5は、甲1発明及び甲2?甲10の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの、と主張する。
しかしながら、上記第7で検討したとおり、甲1?甲10のいずれにおいても、上記相違点に係る本件発明1の構成、とりわけ、「被検体の一部の深さ領域において抽出された3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像」(一部の深さ領域のアンファス血管系画像)を「3次元モーションコントラストデータの良否を確認するため」に用いる点について記載も示唆もないことから、本件発明1?5は、甲1発明及び甲2?甲10の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立人の上記申立て理由1は採用できない。

2 申立て理由2(特許法第29条第2項)について
申立人は、本件発明1?5は、甲2発明及び甲1、甲3?甲5、甲8?甲10の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの、と主張する。
しかしながら、上記第7で検討したとおり、甲1?甲5、甲8?甲10のいずれにおいても、上記相違点に係る本件発明1の構成、とりわけ、「被検体の一部の深さ領域において抽出された3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像」(一部の深さ領域のアンファス血管系画像)を「3次元モーションコントラストデータの良否を確認するため」に用いる点について記載も示唆もないことから、本件発明1?5は、甲2発明及び甲1、甲3?甲5、甲8?甲10の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立人の上記申立て理由2は採用できない。

3 申立て理由3(特許法第36条第6項第2号)について
(1)申立人は、本件発明1?5の「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタン」には、再取得を開始する検者からの操作信号を受け付けるボタン以外に、どのようなものを含むのか不明であり、本件発明1?5は不明確である、と主張する。
上記主張について検討する。
本件発明1?5で特定される「検者からの操作信号を受け付けるボタン」は、「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための」用途を有するもので、当該特定事項はその記載自体で明確に把握できるものである。そして、上記特定事項は本件特許明細書の段落【0099】などに記載されているように「再びOCTデバイス10による被検眼Eの撮影眼の撮影を行う」ためのボタンに対応するものである。よって、本件発明1?5は明確である。

(2)申立人は、本件発明4の「前記3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、」の「3次元モーションコントラストデータ」は前記されていないため、本件発明4は不明確である、と主張する。
上記主張について検討する。
本件発明4は、「前記3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた3次元モーションコントラストデータのうち、前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出されたモーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像を、前記3次元モーションコントラストデータの良否を確認するための確認画面を表示手段に表示させる表示ステップ」という特定事項を踏まえると、請求人が不明確であると主張する「前記3次元モーションコントラストデータ」は、「3次元モーションコントラストデータ」の明らかな誤記である。よって、本件発明4は明確である。

(3)上記(1)及び(2)から、本件発明1?5は明確である。
したがって、申立人の上記申立て理由3は採用できない。

4 申立て理由4(特許法第36条第6項第1号)について
申立人は、本件発明1?5の「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタン」について、本件特許明細書には、具体的には「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得を開始する検者からの操作信号を受け付けるボタン」のみが記載されており、それ以外のボタンに関する記載はない。よって、本件発明1?5は、発明の詳細な説明に記載したものでない、と主張する。
上記主張について検討する。
上記3(1)で述べたとおり、本件発明1?5で特定される「検者からの操作信号を受け付けるボタン」は、「前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための」用途を有するもので、当該特定事項はその記載自体で明確に把握できるものである。そして、上記特定事項は本件特許明細書の段落【0099】などに記載されているように「再びOCTデバイス10による被検眼Eの撮影眼の撮影を行う」ためのボタンに対応するものである。よって、本件発明1?5は発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、申立人の上記申立て理由4は採用できない。

第9 むすび
以上のとおりであるから、令和2年8月7日付けの取消理由通知、及び令和3年2月17日付けの取消理由(決定の予告)通知に記載した取消理由、並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体上を走査された測定光と、参照光とに基づいてOCTデバイスによって検出されたOCT信号を処理するOCT信号処理装置であって、
同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた3次元モーションコントラストデータの良否を確認するための確認画面を表示手段に表示させる制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出された前記3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像を前記確認画面に表示させると共に、
前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示し、
前記確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能であることを特徴とするOCT信号処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、深さの異なる複数の深さ領域においてそれぞれ抽出された深さ領域データ毎に生成された複数のモーションコントラスト画像を前記確認画面に切り替え可能に表示させると共に、前記確認画面に表示させる前記モーションコントラスト画像の深さ領域を指定するインターフェースである切替部を前記確認画面に表示することを特徴とする請求項1のOCT信号処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記3次元モーションコントラストデータを評価するための指標を前記確認画面に表示させることを特徴とする請求項1または2のOCT信号処理装置。
【請求項4】
被検体上を走査された測定光と、参照光とに基づいてOCTデバイスによって検出されたOCT信号を処理するOCT信号処理装置において用いられるOCT信号処理プログラムであって、
前記OCT信号処理装置のプロセッサによって実行されることで、
前記3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた3次元モーションコントラストデータのうち、前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出されたモーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像を、前記3次元モーションコントラストデータの良否を確認するための確認画面を表示手段に表示させる表示ステップであって、前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCTデバイスにより再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示し、前記確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能である表示ステップと、を前記OCT信号処理装置に実行させることを特徴とするOCT信号処理プログラム。
【請求項5】
走査手段によって被検体上を走査された測定光と、参照光とに基づいてOCT信号を取得するOCT光学系と、を備えるOCT装置であって、
前記OCT光学系よって取得された同一部位における時間の異なる複数のOCT信号を処理して得られた3次元モーションコントラストデータの良否を確認するための確認画面を表示手段に表示させる制御手段を備え、
前記制御手段は、前記OCT光学系による被検体の撮影を開始するためのレリーズ信号を受け付けると、前記走査手段を制御することによって前記複数のOCT信号を取得し、前記3次元モーションコントラストデータを複数の深さ領域に分離するためのセグメンテーション処理を行い、前記セグメンテーション処理によって前記被検体の一部の深さ領域において抽出された前記3次元モーションコントラストデータである深さ領域データに基づくモーションコントラスト画像であって、深さの異なる複数の深さ領域における複数のモーションコントラスト画像を前記確認画面に並べて表示させると共に、
前記3次元モーションコントラストデータの基礎となる前記複数のOCT信号を前記OCT光学系により再取得するための検者からの操作信号を受け付けるボタンを前記確認画面上に表示し、
前記確認画面を表示した後に、前記3次元モーションコントラストデータの解析結果を表示するための解析画面を表示可能であることを特徴とするOCT装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-13 
出願番号 特願2015-121574(P2015-121574)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61B)
P 1 651・ 121- YAA (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 後藤 順也  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
渡戸 正義
登録日 2019-11-01 
登録番号 特許第6606881号(P6606881)
権利者 株式会社ニデック
発明の名称 OCT信号処理装置、OCT信号処理プログラム、およびOCT装置  
代理人 水越 邦仁  
代理人 水越 邦仁  

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