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審決分類 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  B65D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
管理番号 1379825
異議申立番号 異議2020-700497  
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-16 
確定日 2021-10-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6638751号発明「カバーテープおよび電子部品包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6638751号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?10]について訂正することを認める。 特許第6638751号の請求項1、2、5?10に係る特許を維持する。 特許第6638751号の請求項3、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6638751号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成30年3月7日の出願であって、令和2年1月7日にその特許権の設定登録がされ、同年1月29日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年7月16日 :特許異議申立人西郷新(以下、「申立人」という。)による請求項1?10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年10月1日付け:取消理由通知書
令和2年12月4日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和3年2月5日 :申立人による意見書の提出
令和3年4月22日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年7月5日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)

なお、令和2年12月4日になされた訂正請求は、特許法第126条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 本件訂正の適否
1.本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において
「前記シーラント層におけるJIS Z0237で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下である」
と記載されているのを
「前記シーラント層は、
前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含み、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下であり、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、
T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下であり、」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「カバーテープ。」と記載されているのを「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている、カバーテープ。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項4」と記載されているのを「請求項1または2」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至5」と記載されているのを「請求項1、2及び5」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1乃至7」と記載されているのを「請求項1、2及び5乃至7」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1乃至8」と記載されているのを「請求項1、2及び5乃至8」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1乃至9」と記載されているのを「請求項1、2及び5乃至9」に訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の段落【0009】に
「前記シーラント層におけるJIS Z0237で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下である、」
と記載されているのを
「前記シーラント層は、
前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含み、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下であり、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、
T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下であり、」
に訂正する。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0009】に「カバーテープを提供される。」と記載されているのを「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている、カバーテープを提供される。」に訂正する。

(12)訂正事項12
明細書の【0013】に「JIS Z0237」と記載されているのを「JIS Z3284」に訂正する。

(13)訂正事項13
明細書の【0080】に「前記シーラント層におけるJIS Z0237で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき」と記載されているのを「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき」に訂正する。

(14)訂正事項14
明細書の【0080】に「前記シーラント層におけるJIS Z0237で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき」と記載されているのを「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき」に訂正する。

(15)訂正事項15
明細書の【0089】に「JIS Z0237」と記載されているのを「JIS Z3284」に訂正する。

2.一群の請求項について
(1)訂正前の請求項1?10について、訂正前の請求項2?10は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1、2によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?10に対応する訂正後の請求項[1?10]は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、本件訂正は、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めはされてないから、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1?10に対応する訂正後の請求項[1?10]を訂正単位とするものであり、訂正事項1?9は、一体の訂正事項として取り扱われるものである。

(2)また、訂正事項10?15に係る明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、上記の一群の請求項[1?10]を訂正の単位として請求されたものである。

3.本件訂正の適否について
(1)訂正事項1のうち「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正することについて

ア 訂正前の請求項1の「JIS Z0237で規定されるプローブタック試験」は、日本工業規格「JIS Z0237:2009 粘着テープ・粘着シート試験方法」に「プローブタック試験」に係る記載がないことから、誤記であることが明らかである。

イ 一方、本件特許明細書の段落【0089】には、タック力の測定に関して以下の事項が記載されている。
「【0089】
・タック力
JIS Z0237で規定されるプローブタック試験により、ステージ上にシーラント層が上側となるようにしてカバーテープを配置し、測定した。また、プローブとステージの設定温度を同じにし、設定温度25℃、50℃、70℃、90℃としたときのそれぞれのタック値(T_(25)、T_(50)、T_(70)、T_(90))を測定した。
装置:株式会社レスカ製「TAC-1000」
押し付け速度:0.5mm/s
押し付け荷重:1,000gf
押し付け保持時間:60s
引き上げ速度:10mm/s
プローブの直径:5mm(プローブ素材:SUS)」

ウ 上記イの記載事項から、本件特許明細書におけるタック力の測定では、測定装置として「装置:株式会社レスカ製『TAC-1000』」を使用し、当該測定装置のステージ上に配置したカバーテープに対して、「プローブの直径:5mm(プローブ素材:SUS)」を「押し付け速度:0.5mm/s」、「押し付け荷重:1,000gf」、「押し付け保持時間:60s」及び「引き上げ速度:10mm/s」の条件で測定していることが看取できるから、本件特許明細書におけるタック力の測定は、プローブを試料に押しつけた後、プローブを引き上げる操作を行う「プローブタック試験」であることは明らかである。

エ さらに、特許権者が提出した乙1号証の1の「Features」の欄には、株式会社レスカ製「TAC-1000」に関して以下の事項が記載されている。
「3 Compliant with domestic and international regulations as follows,
・IIW SC/IA-SP058
・IPC SP-819
・JIS Z0237
・JIS Z3284」

当該記載によれば、株式会社レスカ製「TAC-1000」が準拠する国内規格又は国際規格は、「JIS Z0237」のほかに、「IIW SC/IA-SP058」、「IPC SP-819」及び「JIS Z3284」であることを看取でき、このうち「JIS Z0237」以外の規格は、全て「プローブタック試験」に係る規格である。

オ そして、本件特許明細書おいては、一貫して「JIS」規格に規定されたプローブタック試験により測定することとしているから、本件特許明細書の段落【0089】に記載された、「装置:株式会社レスカ製『TAC-1000』」を用いた「プローブタック試験」に係る「JIS」規格は、「JIS Z3284」であることが明らかである。

カ してみると、訂正事項1のうち「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正することは、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号の誤記の訂正を目的とするものである。

キ そして、「装置:株式会社レスカ製『TAC-1000』」を用いた「プローブタック試験」を行うことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)の【0089】に記載されており、そのJIS規格が「JIS Z3284」であることは【0089】の記載事項から明らかであるから、請求項1のプローブタック試験を「JIS Z3284で規定するプローブタック試験」に訂正することは、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第120条第5項の規定に適合する。

ク また、訂正事項1のうち「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正することは、上記のとおり、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第120条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項1のうち上記(1)以外の訂正について
ア 訂正事項1のうち上記(1)以外の訂正は、訂正前の請求項1における「シーラント層」について、「前記シーラント層は、前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含み、」、「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下であり、」とのことを直列的に付加して減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 当該訂正は、訂正前の請求項3、請求項4及び段落【0021】、【0029】に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第120条第5項の規定に適合する。

ウ 当該訂正は、訂正前の請求項1における「シーラント層」について、上記のような発明特定事項を直列的に付加するものである。なお、訂正前の請求項4のうち「(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体」を削除することは、択一的記載の発明特定事項を削除するものである。そして、当該訂正は、カテゴリーや発明特定事項を変更するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項1における「シーラント層」について、「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている」ことを直列的に付加して減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 当該訂正は、訂正前の段落【0025】記載された事項の範囲内において訂正するものであるから、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第120条第5項の規定に適合する。

ウ 当該訂正は、訂正前の請求項1における「シーラント層」について、上記のような発明特定事項を直列的に付加するものである。そして、当該訂正は、カテゴリーや発明特定事項を変更するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項3、4について
ア 訂正事項3は、請求項3を削除するものであり、訂正事項4は、請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正事項3、4は、請求項3、4を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5?9について
ア 訂正事項5?9は、請求項3、4が削除されたこと伴い、請求項5、6及び8?10の記載を整合させるものであって、また、択一的記載の発明特定事項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号又は第1号の明瞭でない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正事項5?9は、訂正前の請求項5、6及び8?10における択一的記載の発明特定事項を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項10について
ア 訂正事項10のうち、訂正前の「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正することは、上記(1)で述べたとおり、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号の誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項を追加するものでもなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項10のうち、上記アの訂正前の「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正すること以外の訂正は、特許請求の範囲の請求項1を訂正したことに伴い、段落【0009】の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、上記(2)で述べたとおり、新規事項を追加するものでもなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項11について
訂正事項11は、特許請求の範囲の請求項1を訂正したことに伴い、段落【0009】の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正は、上記(3)で述べたとおり、新規事項を追加するものでもなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項12?15について
訂正事項12?15は、いずれも、訂正前の「JIS Z0237」を「JIS Z3284」に訂正するものであって、上記(1)で述べたとおり、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号の誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項を追加するものでもなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

4.むすび
以上のとおりであるから、訂正事項1?15は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第2号又は第3号の特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するものである。

第3 本件訂正後の発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?請求項10に係る発明(以下、各々「本件発明1」?「本件発明10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?請求項10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、
電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープであって、
前記シーラント層は、
前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含み、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下であり、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、
T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下であり、
前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている、カバーテープ。
【請求項2】
前記シーラント層におけるJIS C0806-3に準拠した180°剥離強度が15gf以上である、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記(A)ポリオレフィン系樹脂が、カルボン酸またはカルボン酸誘導体に由来する構造単位を有する共重合体を含む、請求項1または2に記載のカバーテープ。
【請求項6】
前記カバーテープが、前記シーラント層と、前記基材層との間に、さらに中間層を備える、請求項1、2及び5いずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項7】
前記中間層は、オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上の熱可塑性樹脂を含む、請求項6に記載のカバーテープ。
【請求項8】
前記シーラント層の厚み(μm)に対する、前記基材層の厚み(μm)が、0.1以上、25以下である、請求項1、2及び5乃至7いずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項9】
1mm以上100mm以下の幅を有する、請求項1、2及び5乃至8いずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項10】
電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、
請求項1、2及び5乃至9いずれか一項に記載のカバーテープと有し、
前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。」

第4 取消理由の概要
当審が令和3年4月22日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告:以下、単に「決定の予告」という。)の概要は、次のとおりである。

○理由2(新規性)
本件特許の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明若しくは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

○理由3(進歩性)
本件特許の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明若しくは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

甲1:特開2016-193753号公報
甲2:再公表特許第2008/126938号
甲3:国際公開第2010/018791号
甲4:国際公開第2012/143994号
甲5:特開2017-128699号公報

○理由4(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

なお、上記甲1?甲5は、各々特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された甲第1号証?甲第5号証であり、甲1?甲5の各々に記載された事項を、各々甲1記載事項?甲5記載事項という。また、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明を、各々甲1発明?甲3発明という。

第5 当審の判断
1.理由2、3(新規性進歩性)について
1.1.引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 「【0054】
<実施例1に係るカバーテープの製造>
基材層として、ポリエチレンテレフタレートおよびナイロンの二軸延伸フィルムを複合して厚みを20μmとしたものを用い、上記基材層の内側に30μmのポリエチレンフィルムを中間層としてラミネートした後、得られた積層物における中間層を有する面側にグラビアコーターを用いてシーラント層を膜厚2μmとなるように溶液製膜することにより、実施例のカバーテープを作製した。なお、シーラント層を形成する材料としては、接着性樹脂であるアクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)100重量部と帯電防止剤である酸化錫(三菱マテリアル社製、T-1)300重量部とを含む樹脂組成物を使用した。」

イ 「【0056】
以上の方法により、実施例1または2に係るカバーテープを作製した。得られたカバーテープの幅は、8mmであった。」

ウ 「【0062】
・電子部品の貼り付き防止性:8mm幅のポリカーボネート性キャリアテープ(ニッポー社製)に対し、電子部品(SHARP社製、GM4ZR83232AE)を挿入し、5.5mm幅にスリットしたカバーテープを、ヒートシール温度220℃で、ヒートシールすることにより包装体を作製した。次いで、得られた包装体に収容した電子部品が、当該包装体を形成するカバーテープの表面に接触するように70℃で24時間静置した。次に、包装体からカバーテープを300mm/minの速度で剥離した。その後、剥離したカバーテープの表面に貼り付いているチップの数をカウントした。本実施例においては、以下の基準で評価を行った。
○(電子部品の貼り付き防止性が良好):カバーテープの表面に張り付いているチップの数が2個未満である。
×(電子部品の貼り付き防止性が不良):カバーテープの表面に張り付いているチップの数が2個以上である。
【0063】
上記評価項目に関する評価結果を以下の表1に示す。
【0064】
【表1】



エ 「【図1】



以上ア?エから、甲1には、次の甲1発明が記載されている。
<甲1発明>
「一方の面に厚さ2μmのシーラント層を有し、前記シーラント層に厚さ30μmの中間層を介して厚さ20μmの基材層を備えており、電子部品を収容できるポケットを有するキャリアテープを、前記シーラント層によりヒートシールするためのカバーテープであって、シーラント層を形成する材料が接着性樹脂であるアクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)100重量部と帯電防止剤である酸化錫(三菱マテリアル社製、T-1)300重量部とを含む樹脂組成物からなる、カバーフィルム。」

(2)甲2に記載された事項及び甲2発明
ア 「【0009】
実施例及び比較例
外層として膜厚25μmの基材フィルム(基材層)を使用し、その上に押出しラミネート法にて15μmの中間層を設けて総厚40μmのフィルムを得た。その上にコロナ処理法にて表面を活性化させた上で、表1及び表2に示す配合処方でコーティング(乾燥後1μm)を行ってヒートシーラント層を形成し、フィルム(カバーテープ)を得た。
8mm幅のポリスチレン製キャリアテープ(素材:カーボン練りこみポリスチレン)に電子部品を収納し、上記で得られたカバーテープを、5.5mm幅にスリット後、剥離時の強度が40cNとなるようにヒートシール温度を調整して、キャリアテープにヒートシール(ヒートシール時の熱コテのサイズ:0.4mm巾×8mm長 2列・2度打ち)を行い、電子部品包装体を得た。
各実施例、比較例で使用した基材層、中間層の構成、ヒートシーラント層の成分、電子部品の素材は、表1、2に示したとおりである。
〔接着性樹脂と電子部品との間に摩擦を生じさせたときの接着性樹脂上の帯電極性の測定〕
電荷帯電性樹脂(B)を加える前の、接着性樹脂(A)と電子部品との摩擦直後の接着性樹脂面の帯電極性を、ETS社製の表面電位計を用いて測定した。
〔帯電量の測定〕
実施例、比較例で得られた電子部品包装体のサンプルについて、剥離時の電子部品の貼り付きを確認した。初めに、電子部品を100個テーピングしたものに300往復/分の振動を1分間与え、300mm/minで剥離したところ、いずれのサンプルについても電子部品の貼り付きは起こらなかった。
そこで、代替評価として、実施例及び比較例の電子部品包装体におけるカバーテープのキャリアテープと接する層(ヒートシーラント層)と、電子部品(サイズ:1mm×2mm×1mm、質量:0.01g、カバーテープ側の面の面積2mm2)5個とを、600回転/分にて3分間振動させた際の帯電量の大きさを測定した。
(測定)
摩擦後の電子部品の帯電量(摩擦帯電量)の測定はETS株式会社製のファラデーゲージを用いて実施した。結果は、表1?2に示した。
〔塗膜の状態〕
塗膜の状態は目視により評価を行い、問題ない場合を「良好」とし、塗膜ムラや塗膜抜けなどの見られた場合を「製膜できず」とした。
〔表面抵抗値(Ω/□)〕
JIS K6911に基づき23℃-50%RH環境下で測定した。
【表1】

【表2】

表1、2中の記号及び表示物名は以下のものを使用した。
o-PET:二軸延伸したポリエチレンテレフタレート(東洋紡社製 T6140)
o-Ny:二軸延伸したナイロン(ユニチカ社製 ONU12)
o-PP:二軸延伸したポリプロピレン(東洋紡社製 P2282)
PE:ポリエチレン(住友化学社製 L705)
PP:ポリプロピレン(サンアロマー社製 PC540R)
ポリスチレン:PSジャパン社製 PSJ-ポリスチレン679
Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製 A450A)
Sv:塩化ビニル系接着樹脂(日信化学社製 SOLBAIN M)
PS:正帯電性樹脂(藤倉化成社製 FCA-201-PS)
NS:負帯電性樹脂(藤倉化成社製 FCA-1001-NS)
ATO:酸化錫(三菱マテリアル社製 T-1)
ZO:酸化亜鉛(ハクスイテック社製 パゼットCK)
CB:カーボンブラック(ライオン社製 ケッチェンブラック EC600JD)
実施例では、摩擦帯電量が極めて小さかった。よって、ピックアップ不良やESDによる部品破壊を良好に防止できることが期待できた。また、塗膜状態、表面抵抗値も良好なものであった。一方、比較例では、摩擦帯電量が大きいか、測定できなかった。」

イ 「【図2】



以上ア?イから、甲2には、次の甲2発明が記載されている。
<甲2発明>
「一方の面に厚さ1μmのシーラント層を有し、前記シーラント層に厚さ15μmの中間層を介して厚さ25μmの基材層を備えており、電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりヒートシールするためのカバーテープであって、シーラント層を「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製 A450A)」(100部)及び「ATO:酸化錫(三菱マテリアル社製 T-1)」(300部)を配合して形成した、カバーフィルム。」

(3)甲3に記載された事項及び甲3発明
ア 「[0027]発明を実施するための最良の形態について、以下図面を用いて説明する。
本発明に係る電子部品包装用カバーテープは、電子部品包装用キャリアテープにヒートシールして用いられる電子部品包装用カバーテープである。図1は本発明に係るカバーテープの一例を示す概略図であり、本発明に係るカバーテープは図1に示すように少なくとも基材層2、クッション層3、ヒートシール追従層4及びヒートシール層5がこの順に積層されている。そして、上記クッション層3を構成する樹脂AのISO306により測定したビカット軟化点温度Taと、上記ヒートシール追従層4を構成する樹脂BのISO306により測定したビカット軟化点温度Tbとが、下記関係式1を満たし、更に、上記ヒートシール追従層の厚さが2μm以上15μm以下となる。これらの特徴を満たすことにより、高温でヒートシールがなされた場合であっても、樹脂の流出によるヒートシールコテの汚染を低減させつつ、キャリアテープとの密着性を高めることができる。
関係式1:Ta-Tb≧3(℃)
すなわち、本発明の電子部品包装用カバーテープにおいて、クッション層はビカット軟化点温度が高い樹脂Aからなるために、従来より高い温度でヒートシールしても樹脂流出を抑制することができる。さらに、ビカット軟化点温度が低い樹脂Bからなるヒートシール追従層を形成するため、ヒートシール層をキャリアテープの変形に追従させ、密着性を高めることができる。また、上記ヒートシール追従層の厚さを2μm以上15μm以下と、比較的薄膜に限定することで、ヒートシール追従層からの樹脂流出も抑制することができるものである。
以下、各構成について説明する。」

イ 「[0031]上記クッション層は、樹脂Aからなるフィルムを用いることが好ましい。上記樹脂Aとしては、ISO306により測定したビカット軟化点温度Taが上記関係式1を満たすものであれば特に限定されないが、ビカット軟化点温度Taが96℃以上115℃以下であるものが好ましい。ビカット軟化点温度Taが上記範囲の下限以上であれば、ヒートシール時のクッション層の流出を抑えることができ、樹脂流出によるヒートシールコテへの樹脂付着による汚染や、中間層の変形によるカバーテープ自体の機械的強度の低下を抑えることが可能となる。また、上記範囲上限以下であれば充分なクッション性を得ることができ、ヒートシールの際の圧力、温度を均等に伝え、カバーテープとキャリアテープとの密着性が向上し、充分な剥離強度を得ることができる。」

ウ 「[0034]上記樹脂Aとしては、上記要件を満たした上で隣り合う層と充分な密着性を有すれば、適宜種々の樹脂を用いることができるが、具体的には以下の樹脂が挙げられる。例えば、ポリエステル、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メチル-メタアクリレート共重合体(EMMA)、アイオノマー、エチレン-プロピレンラバー、ポリプロピレン、スチレン系エラストマー、水素添加スチレン系エラストマー、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)等が挙げられ、これらの樹脂から選択される2種類以上が配合された樹脂組成物であってもよい。なお、カバーテープの安定した機械的強度や、ヒートシールの際の安定したクッション性を得るためには、直鎖状低密度ポリエチレン、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)やスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等の水素添加スチレン系エラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合体、または、これらの群から選択される2以上が配合された樹脂組成物を用いることが好ましい。特にメタロセン系触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いると、作業時のテープ切れを大幅に低減させることができる点でより好ましい。」

エ 「[0052]以下具体的な実施例により本発明を詳細に説明する。実施例及び比較例に使用した原料及びその物性は下記の通りである。クッション層とヒートシール追従層に用いた樹脂の特性を表1に示す。
(1)基材層
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート:東洋紡株式会社製エステルフィルムT6140
二軸延伸6-ナイロン:株式会社興人製ボニールW
(2)クッション層
メタロセンLLDPE1:株式会社プライムポリマー製エボリューSP1510(ビカット軟化点:98℃、曲げ弾性率:240MPa、分子量分布:4.5)
メタロセンLLDPE2:株式会社プライムポリマー製エボリューSP212(ビカット軟化点:104℃、曲げ弾性率:240MPa、分子量分布:2.5)
メタロセンLLDPE3:株式会社プライムポリマー製エボリューSP1540
(ビカット軟化点:96℃、曲げ弾性率:190MPa、分子量分布:2.5)
(3)ヒートシール追従層
メタロセンLLDPE4:株式会社プライムポリマー製エボリューSP0511
(ビカット軟化点:84℃、曲げ弾性率:130MPa、分子量分布:4.5)
メタロセンLLDPE5:株式会社プライムポリマー製エボリューSP0540
(ビカット軟化点:83℃、曲げ弾性率:120MPa、分子量分布:2.5)
メタロセンLLDPE6:株式会社プライムポリマー製エボリューSP1020
(ビカット軟化点:92℃、曲げ弾性率:140MPa、分子量分布:2.5)
(4)ヒートシール層
アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A」

オ 「[0054](キャリアテープへのヒートシール試験1)
上記作成方法により得られたカバーテープを、8mm幅導電ポリスチレン製キャリアテープと下記ヒートシール条件1によりヒートシールし、ヒートシール試験1とした。」

カ 「[請求項1]
電子部品包装用キャリアテープにヒートシールしうる電子部品包装用カバーテープであって、
少なくとも基材層、樹脂Aからなるクッション層、樹脂Bからなるヒートシール追従層及びヒートシール層がこの順に積層され、
前記樹脂AのISO306により測定したビカット軟化点温度Ta(昇温速度:50℃/時、荷重:10N)と、前記樹脂BのISO306により測定したビカット軟化点温度Tb(昇温速度:50℃/時、荷重:10N)とが、下記関係式1を満たし、
前記ヒートシール追従層の厚みが2μm以上15μm以下である電子部品包装用カバーテープ。
関係式1:Ta-Tb≧3(℃)
・・・
[請求項13]
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電子部品包装用カバーテープと電子部品包装用キャリアテープとをヒートシールされて得られたことを特徴とする電子部品包装体。」

キ 「[図5]



以上ア?キから、甲3には、次の甲3発明が記載されている。
<甲3発明>
「一方の面にヒートシール層を有し、前記ヒートシール層にヒートシール追従層及びクッション層を介して基材層を備えており、電子部品を収容できるエンボス部分を有するキャリアテープを、前記ヒートシール層によりヒートシールするためのカバーテープであって、ヒートシール層を「アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A」で形成した、カバーテープ。」

(4)甲4に記載された事項
「[0006]また、電子部品を収納した包装体では、封止樹脂に含まれる水分を除去するために、ベーキング処理をする必要がある。このような電子部品の量産性向上のためには、ベーキング温度を上げ、ベーキングの時間を短くする必要があり、最近ではカバーフィルムをキャリアテープにヒートシールした状態で、例えば60℃の環境下で72時間又は80℃の環境下で24時間程度のベーキング処理を行うようになってきている。このような場合、カバーフィルムのヒートシール面に電子部品が付着してしまい、基板上に部品を実装する際に実装不良を起こすことがある。しかしながら、従来は、このような部品付着の問題について十分には考慮されていなかった。」

(5)甲5に記載された事項
「【0022】
((A)ポリオレフィン系樹脂)
本実施形態のシーラント層2を構成する樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン系樹脂を含む。
この(A)ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブテン等のα-オレフィンに由来する単位を有する樹脂であり、公知の材料のなかから、適宜選択して、使用することができる。
【0023】
本実施形態においては、この(A)ポリオレフィン系樹脂として、エチレン共重合体を用いることが好ましい。
エチレン共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、アイオノマーなどの樹脂が挙げられる。
このような樹脂を用いることより、キャリアテープ20に対する剥離強度を好適なものとすることができる。
【0024】
なお、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体などがあげられる。
【0025】
また、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メタノール、エタノール等炭素数1?8のアルコールとのエステルが好適に使用される。上記エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体の中でも、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、もしくはエチレン-メタクリル酸メチル共重合体が汎用性の面から好ましい。
【0026】
上記の樹脂のうち、キャリアテープ基材への接着性およびコストの面から、エチレン共重合体が、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはエチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体であると好ましい。
本実施形態において、エチレン-酢酸ビニル共重合体は、少なくともエチレンと酢酸ビニルとが、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体は、少なくともエチレンと脂肪族不飽和カルボン酸エステルとが共重合した共重合体であり、場合により他のモノマーがさらに共重合されていてもよい。」

1.2.対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比・判断
甲1発明の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「ポケット」及び「キャリアテープ」は、それぞれ本件発明1の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「凹部」及び「キャリアテープ」に相当するから、甲1発明の「電子部品を収容できるポケットを有するキャリアテープを、前記シーラント層によりヒートシールするためのカバーテープ」は、本件発明1の「電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ」に相当する。

してみると、本件発明1と甲1発明とは、
「一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、
電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件発明1では、シーラント層が「前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含」むのに対して、甲1発明では、シーラント層を形成する材料が、「接着性樹脂であるアクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)100重量部と帯電防止剤である酸化錫(三菱マテリアル社製、T-1)300重量部とを含む樹脂組成物」である点。

(相違点2)
本件発明1では、「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下であり、前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下」であるのに対して、甲1発明では、タック値が不明な点。

(相違点3)
本件発明1では、「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている」のに対して、甲1発明では、そのような構成がない点。

上記相違点1について検討すると、甲1発明の「アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)」は、本件発明1の「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」と相違することが明らかである。
そして、甲1発明における「アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)」を、本件発明1のごとく「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」に置換する動機付けはない。
仮に、甲1発明の「アクリル系樹脂接着剤(大日本インキ社製、A450A)」に、「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含む場合を想定して相違点2、3について検討する。
甲第1号証には、「アクリル系樹脂接着剤(大日本インキ社製、A450A)」による前記シーラント層について、JIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)及び90℃でのタック値をT_(90)は記載されていないし、シーラント層の表面に粗さ付与することも記載されていない。
そして、当業者であっても、甲1発明の「アクリル系樹脂接着剤(大日本インキ社製、A450A)」に「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含有させるとともに、シーラント層の表面に粗さ付与をしたときの、シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)及び90℃でのタック値をT_(90)は、予測することが困難であるといわざるを得ないし、その動機付けもない。

してみると、本件発明1は、甲1発明ではないことが明らかであるから特許法第29条第1項第3号の発明には該当せず、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということもできないから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもない。

イ 本件発明1と甲2発明との対比
甲2発明の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「凹部」及び「キャリアテープ」は、それぞれ本件発明1の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「凹部」及び「キャリアテープ」に相当するから、甲2発明の「電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりヒートシールするためのカバーテープ」は、本件発明1の「電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ」に相当する。

してみると、本件発明1と甲2発明とは、
「一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点4)
本件発明1では、シーラント層が「前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含」むのに対して、甲2発明では、シーラント層が、「「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製 A450A)」(100部)及び「ATO:酸化錫(三菱マテリアル社製 T-1)」(300部)を配合して形成した」ものである点。

(相違点5)
本件発明1では、「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下であり、前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下」であるのに対して、甲2発明では、タック値が不明な点。

(相違点6)
本件発明1では、「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている」のに対して、甲2発明では、そのような構成がない点。

上記相違点4について検討すると、甲2発明の「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製 A450A)」は、本件発明1の「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」と相違することが明らかである。
そして、甲2発明における「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製 A450A)」を、本件発明1のごとく「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」に置換する動機付けはない。
仮に、甲2発明の「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、A450A)」に、「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含む場合を想定して相違点5、6について検討する。
甲第2号証には、前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)及び90℃でのタック値をT_(90)は記載されていないし、シーラント層の表面に粗さ付与することも記載されていない。
そして、当業者であっても、甲2発明の「Ac:アクリル系接着樹脂(大日本インキ社製、450A)」に「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含有させるとともに、シーラント層の表面に粗さ付与をしたときの、シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)及び90℃でのタック値をT_(90)は、予測することが困難であるといわざるを得ないし、その動機付けもない。

してみると、本件発明1は、甲2発明ではないことが明らかであるから特許法第29条第1項第3号の発明には該当せず、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということもできないから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもない。

ウ 本件発明1と甲3発明との対比
甲3発明の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「エンボス部分」及び「キャリアテープ」は、それぞれ本件発明1の「一方の面」、「基材層」、「電子部品」、「凹部」及び「キャリアテープ」に相当するから、甲3発明の「電子部品を収容できるエンボス部分を有するキャリアテープを、前記ヒートシール層によりヒートシールするためのカバーテープ」は、本件発明1の「電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ」に相当する。

してみると、本件発明1と甲3発明とは、
「一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、
電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープ。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点7)
本件発明1では、シーラント層が「前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含」むのに対して、甲3発明では、シーラント層が、「アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A」である点。

(相違点8)
本件発明1では、「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下であり、前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下である」のに対して、甲3発明では、タック値が不明な点。

(相違点9)
本件発明1では、「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている」のに対して、甲3発明では、そのような構成がない点。

上記相違点7について検討すると、甲3発明の「アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A」は、本件発明1の「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」と相違することが明らかである。
そして、甲3発明における「アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A」を、本件発明1のごとく「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」に置換する動機付けはない。
仮に、甲3発明の「アクリル系接着樹脂:大日本インキ社製、A450A」に、「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含む場合を想定して相違点8、9について検討する。
甲第3号証には、前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)及び90℃でのタック値をT_(90)は記載されていないし、シーラント層の表面に粗さ付与することも記載されていない。
そして、当業者であっても、甲3発明の「アクリル系接着樹脂:大日本インキ社製、450A」に「(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群」から選択される一種以上を含有させるとともに、シーラント層の表面に粗さ付与をしたときの、シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)及び90℃でのタック値をT_(90)は、予測することが困難であるといわざるを得ないし、その動機付けもない。

してみると、本件発明1は、甲3発明ではないことが明らかであるから特許法第29条第1項第3号の発明には該当せず、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということもできないから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもない。

(2)本件発明2、本件発明5?10について
本件発明2、本件発明5?10は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明1の発明特定事項の全てを含むものである。
そして、上記(1)で述べたとおり、本件発明1が甲1?3発明ではないことが明らかであって、甲1?3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということもできないのであるから、本件発明2、本件発明5?10が特許法第29条第1項第3号の発明に該当せず、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもないことが明らかである。

2.理由4(サポート要件)について
(1)本件発明1の発明特定事項は、本件訂正により「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下であり、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、
T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下であり、
前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている、」と訂正された。

(2)実施例4との関係について
本件発明1は、本件訂正により上記第3のとおりとなったことから、本件発明1の実施例は、発明の詳細な説明の段落【0085】の実施例4のみである。
そして、発明の詳細な説明の段落【0085】及び【0093】を総合すると、段落【0093】に記載された実施例4のタック力であるT_(70)及びT_(90)も粗面化されたシーラント層表面に対するタック力であることが明らかである。
してみると、「前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている」ことを発明特定事項とする本件発明1は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものではないことが明らかである。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2、本件発明5?10も同様である。

(3)T_(70)とT_(90)との関係について
本件発明1は、本件訂正により上記第3のとおりとなったことから、T_(70)とT_(90)との関係は、「T_(70)が30gf以上、200gf以下」、「T_(90)が40gf以上、500gf以下」及び「T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下」であることが特定された。
そして、上記の本件発明1におけるT_(70)とT_(90)との関係は、発明の詳細な説明の段落【0019】?【0022】に記載されたT_(70)とT_(90)との関係となんら矛盾するものではなく、してみると、本件発明1は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものではないことが明らかである。

本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2、本件発明5?10も同様である。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、5?10は、発明の詳細な説明に記載された発明であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。

3.申立人の意見について
申立人は、令和3年2月5日に意見書、甲第6号証及び参考資料1等を提出した上で、当該意見書において以下のア、イように主張している。

甲第6号証:再公表2016-076331号
参考資料1:特開2016-104641号公報

ア 「JIS Z3284」への訂正について
当該訂正は、「当初明細書等の記載から自明な事項」に基づくものではく、また、プローブタック試験は、例えば、ASTM D2979(2016)「Standerd Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives Using an Inverted Probe Machine」といった規格もあり、一義的に「JIS Z3284」に確定するものではない。

イ 訂正後の請求項1について
本件特許の実施例3と甲6号証(再公表2016-076331)の実施例3のシーラント層の成分を比較すると、・・・同じメーカーの成分を使用し、成分配合比もほぼ同じである。そして、令和1年8月19日付け提出の意見書において、本件特許の実施例3のT_(70)は220gfであり、甲6号証の実施例3のT_(70)は205gfであることが示されている。
エチレン-アクリル酸メチル共重合体は接着性樹脂として知られているから、シーラント層の粘着力の調整のために接着性樹脂の量を増減することは容易に想到でき、例えば参考資料1の実施例に示されるように、エチレン-アクリル酸メチル共重合体の量を25?55質量%とすることは容易に想到できる。そして、甲6号証の実施例3よりも接着性樹脂の量が少なくなると、T_(70)は205gfよりも小さくなるから、T_(70)=30?200gfを充足する蓋然性が極めて高いといえる。また、・・・T_(70)と同様にT_(90)も小さくなるから、T_(90)/T_(70)=1.3?6を充足する蓋然性は高いといえる。

ウ 上記申立人の主張について検討する。
(ア)「JIS Z3284」への訂正について
第2の3.(1)ウに示したとおり、本件特許明細書におけるタック力の測定では、測定装置として「装置:株式会社レスカ製『TAC-1000』」を使用していることが明らかであり、また、本件特許明細書におけるタック力の測定は、プローブを試料に押しつけた後、プローブを引き上げる操作を行う「プローブタック試験」であることは明らかである。
そして、第2の3.(1)エ、オで示したとおり、株式会社レスカ製「TAC-1000」が準拠する国内規格又は国際規格は、「JIS Z0237」のほかに、「IIW SC/IA-SP058」、「IPC SP-819」及び「JIS Z3284」であるが、本件特許明細書おいては、一貫して「JIS」規格に規定されたプローブタック試験により測定することとしているから、本件特許明細書の段落【0089】に記載された、「装置:株式会社レスカ製『TAC-1000』」を用いた「プローブタック試験」に係る「JIS」規格は、「JIS Z3284」であることが明らかである。
よって、上記申立人の主張を採用することはできない。

(イ)訂正後の請求項1について
申立人が提出した甲第6号証は、本件特許の審査において引用された引用文献であって、当該文献にシーラント層のタック力を測定した旨の記載はない。
そして、申立人が意見する「令和1年8月19日付け提出の意見書」の記載は、本件特許の実施例と甲第6号証の実施例とを比較実験したものであって、甲第6号証に記載された実施例のシーラント層の70℃におけるタック力:T_(70)は、いずれも200gfを超えることが記載されている。
申立人は、「本件特許の実施例3と甲6号証(再公表2016-076331)の実施例3のシーラント層の成分を比較すると、・・・同じメーカーの成分を使用し、成分配合比もほぼ同じである」こと、および参考資料1におけるエチレン-アクリル酸メチル共重合体の配合量を根拠に、甲第6号証の実施例3におけるエチレン-アクリル酸メチル共重合体の配合量を少なくすることが容易である旨を主張しているものと解される。
しかしながら、本件明細書の実施例3は、そもそも本件発明1の「T_(70)が30gf以上、200gf以下」の範囲に含まれていないものであって、本件発明1の実施例には含まれない。
また、甲第6号証の段落【0136】には、「ヒートシーラント層(ヒートシール層)に密着させた電子部品(50個)を、65℃24時間保管し、電子部品が下になるように180°回転させたときの電子部品の貼り付き性を評価した。」と記載されているように、甲第6号証は、本件発明1の「プローブタック試験」とは異なる評価方法によって電子部品の貼り付き性を評価するのみであって、70℃におけるタック力:T_(70)及び90℃におけるタック力:T_(90)を調整するためにエチレン-アクリル酸メチル共重合体の配合量を少なくする動機付けは、なにもないというべきである。
したがって、甲第6号証及び参考文献1を参酌しても、申立人の意見を採用することはできない。

4.決定の予告において採用しなかった取消理由について
(1)本件発明1の発明特定事項は、本件訂正により「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下であり、 前記シーラント層におけるJISZ3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、
T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下であり、」と訂正された。
そして、本件発明1の「前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験」は、令和2年12月4日に特許権者が意見書と同時に提出した乙第2号証において、「JIS Z3284-3:2014 ソルダーペースト-第3部:印刷性、粘度特性、だれ及び粘着性試験」に記載されているとおりであるから、明確である。

(2)本件発明2の「前記シーラント層におけるJISC0806-3に準拠した180°剥離強度」は、令和2年12月4日に特許権者が意見書と同時に提出した乙第3号証において、「JIS C0806-3:2014 自動実装部品の包装-第3部:表面実装部品の連続テープによる包装」に記載されているとおりであるから、明確である。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明1、2、5?10は、明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合する。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、2、5?10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に適合するものであるから同法第113条第4号に該当せず、また、同法第29条第1項第3号の発明ではなく同法同条第2項の規定により特許を受けることができない発明でもないから同法第113条第2号にも該当しないので、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。

また、他に請求項1、2、5?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

そして、本件訂正により、請求項3、4に係る特許は削除されたため、請求項3、4に係る特許に対して申立人がした特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
カバーテープおよび電子部品包装体
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーテープおよび電子部品包装体に関する。より詳細には、半導体ICチップなどの電子部品を運搬するために格納ポケットを備えるキャリアテープをヒートシールすることが可能なカバーテープと、電子部品が格納されたキャリアテープにカバーテープをヒートシールして得られる電子部品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ICチップなどの電子部品は、その製造後、実装工程に提供されるまでの間、汚染を防止すべく包装材にてパッキングされ、紙製或いはプラスチック製のリールに巻かれた状態で、保管および輸送される。この電子部品の包装には、自動実装装置による基板への実装工程に対応するように、テープ状の包装材が用いられており、この包装材は、長尺のシートに所定の間隔をおいて複数個の凹状の格納ポケットが形成されたキャリアテープと、該キャリアテープにヒートシールされるカバーテープから構成される。このような包装材によりパッキングされた電子部品は、カバーテープがキャリアテープから剥離された後、パッケージから自動的に取出され、電子回路基板上に実装される。
【0003】
また、カバーテープがキャリアテープから剥離される工程において、キャリアテープからカバーテープを剥離するために必要な強度である剥離強度が高すぎると、カバーテープが剥離される際にキャリアテープが振動し、電子部品が格納ポケットから飛び出してしまう現象が生じる。一方、キャリアテープとカバーテープとの接着強度が低いと、パッケージの輸送中に、カバーテープがはがれ、パッキングされた電子部品が落下する場合がある。そのため、カバーテープには、キャリアテープに対して十分な接着強度を有していると同時に、実装工程においてキャリアテープから首尾よく剥離される剥離性が要求される。
【0004】
上述の課題を解決するために、様々な検討がなされており、例えば、特許文献1では、キャリアテープと上記カバーテープとの間における剥離抵抗力の最大値と最小値との剥離抵抗力比αに着目し、剥離性を適切にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-171393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるような従来技術においては、パッキングされた電子部品輸送する際や、キャリアテープからカバーテープを剥離する際、振動などによりキャリアテープ内に収容された電子部品が上面のカバーテープに接触し、そのままカバーテープに張り付いてしまうといった問題があった。すなわち、単に、カバーテープの剥離性を制御しただけでは、電子部品がカバーテープに付着しない耐付着性において、十分なものは得られなかった。
【0007】
そこで、本発明者は、良好な耐付着性を得る観点から、鋭意検討を行ったところ、電子部品包装体が輸送される環境、例えば、直射日光に晒される等の過酷な輸送環境を想定した70℃における所定のタック値という指標を用いることで、耐付着性を適切に評価できることを知見し本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明によれば、良好な耐付着性が得られるカバーテープ、および当該カバーテープを用いた電子部品包装体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、
電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープであって、
前記シーラント層は、
前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含み、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下であり、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、
T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下であり、
前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている、カバーテープが提供される。
【0010】
また本発明によれば、電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、上記のカバーテープと有し、前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な耐付着性が得られるカバーテープ、および当該カバーテープを用いた電子部品包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るカバーテープの構成を示す断面図である。
【図2】本実施形態に係る電子部品包装用カバーテープをキャリアテープにシールした状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
なお、本実施形態において、タック値とは、JIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定されたものとする。また、剥離強度とは、JIS C0806-3に準拠した180°剥離強度とする。
【0014】
<カバーテープ>
本実施形態に係る電子部品包装用のカバーテープ10は、図1に示すように、基材層3と、基材層3の一方の面に設けられたシーラント層2とを含む。ここで、カバーテープ10は、基材層3/シーラント層2の二層構造であってもよいし、例えば、基材層3とシーラント層2との間に別の層である中間層1を介在させた、基材層3/中間層1/シーラント層2のような多層構造であってもよい。以下、カバーテープ10が、基材層3/中間層1/シーラント層2といった多層構造の場合について説明する。
【0015】
まず、カバーテープ10の使用方法について図2を参照して説明する。
図2に示すとおり、カバーテープ10は、電子部品の形状に合わせて凹状のポケット21が連続的に設けられたキャリアテープ20の蓋材として用いられる。具体的には、カバーテープ10は、キャリアテープ20のポケット21の開口部全面を覆うように、キャリアテープ20の表面に接着(例えば、ヒートシール)させて使用する。なお、後述においては、カバーテープ10と、キャリアテープ20とを接着して得られた構造体のことを、電子部品包装体100と称する。
【0016】
[基材層]
基材層3は、キャリアテープ20に対してカバーテープ10を接着させる際、カバーテープ10の使用時等に外部から加わる応力に耐えうることができる程度の機械的強度、キャリアテープ20に対してカバーテープ10を接着させる際に加わる熱履歴に耐えうることができる程度の耐熱性を有したものがよい。
【0017】
基材層3を構成する材料としては、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
また、基材層3を構成する材料の形態は、特に限定されないが、加工が容易である観点から、フィルム状に加工されたものであることが好ましい。製膜されたフィルム、特に二軸延伸フィルムを好適に用いることができる。
基材層3の厚さは、一般的には、5?50μmである。
【0018】
[シーラント層]
シーラント層2はヒートシール性を有し、キャリアテープ20に対して接着させられるものであり、使用時に容易に剥がすことのできる易剥離性を示すものである。
【0019】
シーラント層2のタック値とは、カバーテープ10の一方の面を構成しているシーラント層2の当該面におけるタック値である。
カバーテープ10において、シーラント層2における70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、300gf未満である。
T_(70)を30gf以上とすることにより、適度な密着性が得られるようになる。密着性と耐付着性のバランスをさらに向上する観点から、T_(70)は、好ましくは35gf以上、より好ましくは38gf以上である。
一方、T_(70)を300gf未満とすることにより、キャリアテープ20のポケット21に収納された電子部品などの耐付着性を向上できる。密着性と耐付着性のバランスをさらに向上する観点から、T_(70)は、好ましくは250gf以下、より好ましくは200gf以下である。
【0020】
本発明は、シーラント層2の当該における70℃でのタック値に着目し、これを指標とすることで、耐付着性を適切に評価できることが見出され、完成されたものである。T_(70)が、かかる指標となる理由の詳細は明らかではないが、以下のように推測される。
一般的に、タック力は、瞬間の接着性を示すものと考えられているのに対し、剥離力は恒久的な接着性に対する剥離性を示すものであり、異なるものである。したがって、単に、剥離性を向上させたからといって、直ちに、タック性が向上するものではない。また、タック力は、温度上昇に伴い上昇する傾向にあるが、一般に剥離力と温度上昇との関連性を直ちに結びつけることは困難である。そこで、本発明においては、70℃という電子部品包装体が輸送される高温環境を想定し、高温条件下でのタック値を制御することで、結果的に、カバーテープ10の耐付着性を良好にできることを見出した。
【0021】
また、カバーテープ10において、シーラント層2における90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であることが好ましい。
T_(90)は、適度な密着性が得られるようになる。密着性と耐付着性のバランスをさらに向上する観点から、好ましくは50gf以上、より好ましくは55gf以上である。
一方、T_(90)は、キャリアテープ20のポケット21に収納された電子部品などの付着を抑制しつつ、良好な密着性が得られる観点から、好ましくは400gf以下、より好ましくは360gf以下、さらに好ましくは340gf以下である。
【0022】
また、シーラント層2において、T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下であることが好ましく、1.3以上、4以下であることがより好ましい。かかる数値範囲とすることで密着性と耐付着性の良好なバランスが安定的に得られるようになる。
【0023】
本発明のシーラント層2におけるタック値を実現するためには、以下の条件を適切に調整し、組み合わせることが重要である。
(1)後述するシーラント層形成用樹脂組成物の組成
(2)表面処理の有無
(3)成膜方法
【0024】
以下、より具体的に説明するが、本発明は、かかる条件に限定されるものではない。
(1)シーラント層形成用樹脂組成物としては、(A)ポリオレフィン系樹脂と、(B)ポリスチレン系樹脂および(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体の中から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0025】
(2)表面処理としては、コロナ処理、表粗さ付与等が挙げられ、例えば、中間層3にコロナ処理を施し、シーラント層2と中間層3の密着性を高めることにより、シーラント層2の剥離強度を高めることができる。また、例えば、シーラント層2のカバーテープ10の一方の面となる面において、表粗さ付与を施し、シーラント層2のタック力を抑制することが挙げられる。
【0026】
(3)成膜方法としては、例えば、シーラント層形成用樹脂組成物をフィルム状に押し出し成形する方法、シーラント層形成用樹脂組成物を基材層1上に押し出しラミネートする方法を用いることができる。
【0027】
シーラント層2における剥離強度とは、キャリアテープ10を、シーラント層2によりシールした際の剥離強度を意味する。
シーラント層2における剥離強度は、15gf以上であることが好ましく、20gf以上であることがより好ましく、28gf以上であることがさらに好ましい。これにより、カバーテープ10と、キャリアテープ20との密着性と耐付着性のバランスを良好にできる。
一方、シーラント層2における剥離強度は、100gf以下であることが好ましく、80gf以下であることがより好ましく、50gf以下であることがさらに好ましい。これにより、カバーテープ10と、キャリアテープ20と容易に剥離しつつ、密着性と耐付着性のバランスを良好にできる。
【0028】
シーラント層2の厚み(μm)に対する、基材層1の厚み(μm)が、0.1以上、25以下であることが好ましく、1.0以上、15以下であることがより好ましい。
上記下限値以上とすることで、密着性を向上しつつ、良好な耐付着性が得られる。一方、上記上限値以下とすることで、適度な強度を確保し、剥離しやすくなるとともに、良好な耐付着性が得られる。
【0029】
本実施形態のシーラント層2は、シーラント層形成用樹脂組成物で構成することができる。シーラント層形成用樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン系樹脂と、(B)ポリスチレン系樹脂および(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体の中から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これにより、本発明におけるタック値を制御しやすくなる。
【0030】
(A)ポリオレフィン系樹脂は、電位部品に対する親和性を低減する観点から、エチレン、プロピレン、ブテン等のα-オレフィンに由来する構造単位を有する、単独重合体または共重合体を含むことができる。例えば、上記単独重合体としては低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、上記共重合体としてはエチレン共重合体を含むことができる。
【0031】
また、上記エチレン共重合体としては、例えば、エチレンとカルボン酸あるいはその誘導体との共重合体が挙げられる。これにより、キャリアテープとの密着強度を高めつつ、耐付着性を制御することができる。
【0032】
上記カルボン酸またはカルボン酸誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、無水マレイン酸を用いてもよい。詳細なメカニズムは定かでないが、無水マレイン酸に由来する構造の含有率などの、樹脂の極性を調整することによって、キャリアテープに対する密着性がよい一方で、サーミスタなどの金属電極及び/またはインダクタなどの外層のエポキシ樹脂との密着性が低いような、密着性のバランスに優れた(A)ポリオレフィン系樹脂を適切に選択することにより、キャリアテープへの密着性を高くしつつも、電子部品に対する付着性を低減できると考えられる。
【0033】
上記共重合体は、カルボン酸またはカルボン酸誘導体に由来する構造単位に加えて、他のモノマーに由来する構造単位を含むことができる。他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸等のメタ(アクリル)酸系単量体などを用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
なお、上記のカルボン酸あるいはその誘導体に由来する繰り返し構造単位の割合は、(A)ポリオレフィン系樹脂全量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、2質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、キャリアテープとの密着性と電子部品に対する耐付着性のバランスを向上させることができる。
【0035】
上記エチレンとカルボン酸あるいはその誘導体との共重合体としては、具体的には、例えば、エチレン-酸無水物共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、およびアイオノマーなどの樹脂が挙げられる。このような樹脂を用いることより、キャリアテープ20に対する剥離強度を好適なものとすることができる。
【0036】
上記エチレン-酸無水物共重合体としては、例えば、エチレン-無水マレイン酸共重合体またはエチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体を用いることができる。これにより、キャリアテープとの密着性と電子部品に対する耐付着性のバランスを好適なものとすることができる。
【0037】
上記エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0038】
上記エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メタノール、エタノール等炭素数1?8のアルコールとのエステルが好適に使用される。上記エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体の中でも、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、もしくはエチレン-メタクリル酸メチル共重合体が汎用性の面から好ましい。
【0039】
上記の樹脂のうち、キャリアテープ基材への接着性およびコストの面から、エチレン共重合体が、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体であることが好ましい。
【0040】
(A)ポリオレフィン系樹脂は、剥離強度の観点から、JIS-K-7210に準じて測定されるメルトフローレートの値(以下、「MFR」と記載する場合がある)(190℃、2.16kg)が0.1g/10min?100g/10minであることが好ましく、1g/10min?50g/10minであることがさらに好ましい。これにより、キャリアテープ20との剥離強度を好適なものとすることができる。
【0041】
本実施形態において、シーラント層形成用樹脂組成物100質量部に対する(A)ポリオレフィン系樹脂の含有量は20質量部以上であり、好ましくは30質量部以上であり、より好ましくは45質量部以上である。
このように(A)ポリオレフィン系樹脂の含有量を設定することにより、シーラント層2としての適度な剥離強度を達成することができる。
また、本実施形態において、シーラント層形成用樹脂組成物100質量部に対する(A)ポリオレフィン系樹脂の含有量は、好ましくは85質量部以下であり、より好ましくは80質量部以下であり、さらに好ましくは78質量部以下である。
このように(A)ポリオレフィン系樹脂の含有量を設定することにより、良好な耐付着性が得られる。
【0042】
本実施形態に係るシーラント層形成用樹脂組成物は、(B)ポリスチレン系樹脂を含むことができる。これにより、適度な耐付着性と、剥離強度のバランスの調整を図ることができる。
【0043】
(B)ポリスチレン系樹脂は、特に限定されないが、例えばポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、水素添加スチレンブロック共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS;High Impact Polystyrene)、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS;General Purpose Polystyrene)等が含まれ、これらを2種以上組合せて用いてもよい。
この中でも、透明性が高く、また、耐付着性と剥離強度とをバランスよく向上させるという観点から、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体を用いることができる。
【0044】
本実施形態において、シーラント層形成用樹脂組成物100質量部に対する(B)ポリスチレン系樹脂の含有量は5?80質量部以上が好ましく、10?60質量%がより好ましい。かかる数値範囲とすることにより、耐付着性が良好になる。
【0045】
本実施形態に係るシーラント層形成用樹脂組成物は、(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体を含むことができる。これにより、(B)ポリスチレン系樹脂を含ませた場合と同様に、耐付着性と、剥離強度のバランスの調整を図ることができる。
【0046】
(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、及び(メタ)アクリル酸エチルヘキシル等から選択される(メタ)アクリル酸エステルの重合体を挙げることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これら重合体は、前述の成分(A)、(B)に該当しない限りにおいて、他のモノマーとの共重合体とすることもできる。
なお、本実施形態においては、これらのうち、入手容易性が高く、また、耐付着性と剥離強度とをバランスよく向上させるという観点から、(メタ)アクリル酸メチル重合体を用いることができる。
本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの混合物を表し、(メタ)アクリル酸を有する共重合体とは、アクリル基を1以上有する、またはメタクリル基を1以上有する共重合体を表す。
【0047】
なお、(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を、たとえば60モル%以上含むものであり、好ましくは70モル%以上含むものであり、より好ましくは80モル%以上含むものである。
【0048】
本実施形態において、シーラント層形成用樹脂組成物100質量部に対する(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体の含有量は、1質量部以上であり、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上である。一方、シーラント層形成用樹脂組成物100質量部に対する(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体の含有量は、100質量%であってもよく、98質量%以下であってもよい。これにより、良好な耐付着性が得られる。
【0049】
本実施形態に係るシーラント層形成用樹脂組成物は、さらに、(D)帯電防止剤を含むことができる。
【0050】
(D)帯電防止剤としては、リチウムイオンを含むことができる。本実施形態において、上述したリチウムイオンを含むものを(D)帯電防止剤として用いることにより、シーラント層2として、一段と良好な帯電防止能を実現することができる。より具体的には、リチウムイオンが樹脂中に存在する高分子型帯電防止剤を用いることができる。これにより、優れた帯電防止性能が持続的に安定して発揮される。
【0051】
上記リチウムイオンは、たとえば、リチウム塩のような形でこの帯電防止剤に含有させることができる。このリチウム塩としては、塩化リチウム、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、メタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸リチウム等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
なお、(D)帯電防止剤に含まれるリチウムイオンは、金属元素量測定により確認することができる。本実施形態において、帯電防止剤に含まれるリチウムイオン量は、たとえば、50μg/g以上(50ppm以上)に設定されていることが好ましい。
【0053】
また、本実施形態において、(D)帯電防止剤は、前述のリチウムイオンを含むもの以外にも、公知の帯電防止剤を併用することもできる。
このような帯電防止剤としては、たとえば、ポリエーテルエステルアミドなどのポリアミド系コポリマー、ポリオレフィンとポリエーテルのブロックポリマー、ポリエチレンエーテル及びグリコールからなるポリマー、カリウムアイオノマーなどのカルボン酸塩基含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基含有コポリマー、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属フィラー、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等のチオフェン系導電性ポリマーなどが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、これら、(D)帯電防止剤は、押出しラミネートや熱シールの際の高温による変質などを防止するために、熱分解温度が120℃以上であることが好ましい。
【0054】
本実施形態において、シーラント層形成用樹脂組成物100質量部に対する(D)帯電防止剤の含有量は、たとえば5質量部以上であり、好ましくは8質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上である。
このように(D)帯電防止剤の含有量を設定することにより、シーラント層2として、適切な帯電防止能を発揮することができる。
また、本実施形態において、シーラント層形成用樹脂組成物100質量部に対する(D)帯電防止剤の含有量は、好ましくは25質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは18質量部以下、とくに好ましくは16質量部以下である。
一般に、(D)帯電防止剤は、高価なものであるため、このように帯電防止剤の含有量を設定することにより、カバーテープ作製におけるコスト低減に資することができる。
【0055】
また、本実施形態において、(D)帯電防止剤全体100質量部に対するリチウムイオンを含む帯電防止剤の割合は、たとえば、50質量部以上であり、好ましくは60質量部以上であり、より好ましくは75質量部以上である。
このようにリチウムイオンを含む帯電防止剤の割合を設定することにより、シーラント層2としての適切な帯電防止能を効果的に発揮することができる。
(D)帯電防止剤全体100質量部に対するリチウムイオンを含む帯電防止剤の割合の上限値は特に制限されず、(D)帯電防止剤の全体がリチウムイオンを含む帯電防止剤であってもよい。
【0056】
本実施形態に係るシーラント層形成用樹脂組成物は、(E)粘着付与剤を含むことができる。
【0057】
(E)粘着付与剤としては、例えば、石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、クマロン・インデン樹脂等が挙げられるが、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、キャリアテープに対するヒートシール性を高める観点から、石油樹脂を用いることができる。上記石油樹脂としては、例えば、脂肪族系の石油樹脂、芳香族系の石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系の石油樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
(E)粘着付与剤を含む場合、シーラント層形成用樹脂組成物の混合条件を適切に組み合わせることが好ましい。これにより、シーラント層2の良好な耐付着性が得られる。
【0059】
また、シーラント層2の押出ラミネート時において、酸化に対する安定性を向上させる観点から、高温で溶融酸化される石油樹脂として、脂肪族系の石油樹脂を用いることができ、好ましくは脂環族飽和炭化水素樹脂系の石油樹脂を用いることができる。
【0060】
また、本実施形態における石油樹脂としては、キャリアテープに対するヒートシール性を一層向上させる観点から、石油樹脂として、水素化石油樹脂を用いることができる。
【0061】
本実施形態のシーラント層2は、(A)ポリオレフィン系樹脂が、カルボン酸またはカルボン酸誘導体に由来する構造単位Iを有する共重合体を含む場合、(E)粘着付与剤を含まなくてもよい。
【0062】
また、本実施形態のシーラント層2は、シーラント層2中の(A)ポリオレフィン系樹脂がα-オレフィンに由来する構造単位IIを有する共重合体を含む場合、(E)粘着付与剤を含むことが好ましい。詳細なメカニズムは定かでないが、低分子量である粘着付与剤を採用することにより、その流動性によるアンカー効果によって、キャリアテープに対する密着力を高めることができると考えられる。
【0063】
また、本実施形態において、シーラント層2を構成する樹脂組成物100質量部に対する(E)粘着付与剤の含有量の下限値は、キャリアテープ20との剥離強度を好適なものとする観点から、好ましくは、7質量部より多い量であり、より好ましくは、7.5質量部以上である。
一方、シーラント層2を構成する樹脂組成物100質量部に対する(E)粘着付与剤の含有量の上限値は、電子部品に対する耐付着性と、キャリアテープに対するヒートシール性とのバランスに優れたカバーテープを実現する観点から、たとえば、20質量部以下としてもよいし、15質量部以下としてもよい。
【0064】
また、本実施形態に係るシーラント層2を構成する樹脂組成物において、(D)帯電防止剤および(E)粘着付与剤の合計含有量は、電子部品に対する耐付着性と、キャリアテープに対するヒートシール性とのバランスに優れたカバーテープを実現する観点から、(A)ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは、34質量部以上80質量部以下であり、より好ましくは、34質量部以上75質量部以下である。
【0065】
また、本実施形態に係るシーラント層2を構成する樹脂組成物において、当該樹脂組成物100質量部に対する(E)粘着付与剤の含有量をXとし、当該樹脂組成物100質量部に対する(B)ポリスチレン系樹脂および(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体の含有量の総量をYとしたとき、X/Yの値は、電子部品に対する耐付着性と、キャリアテープに対するヒートシール性とのバランスに優れたカバーテープを実現する観点から、好ましくは、0.2以上15以下であり、より好ましくは、0.3以上12以下である。
【0066】
また、本実施形態において、シーラント層2を構成する樹脂組成物は、たとえば、用途に応じ、以下に示す、アンチブロッキング剤、スリップ剤等を含有してもよい。
【0067】
上記アンチブロッキング剤の例としては、例えば、シリカ、アルミノ珪酸塩(ゼオライト等)などを挙げることができる。アンチブロッキング剤を含有することで、シーラント層2のブロッキングが緩和される。
【0068】
上記スリップ剤の例としては、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油などが挙げられる。シーラント層2がスリップ剤を含有することで、押出加工等の加工性、離ロール性、フィルム滑り性などが向上される。
【0069】
その他、上記シーラント層2は、その特性を損なわない範囲で、各種導電材料、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、各種界面活性剤、無機フィラー等の任意の添加剤を含んでいてもよい。また、コーティング処理が施されていてもよい。
【0070】
本実施形態において、シーラント層2の厚さは、例えば、1μm以上30μm以下であることが好ましく、2μm以上20μm以下であることがより好ましい。シーラント層2の厚さが上記上限値以下のものであれば、ヒートシール時の染み出しを制御しやすくなり、良好な耐付着性が安定的に得られる。また、シーラント層2の厚さが、上記下限値以上のものであれば、耐付着性と密着性のバランスを良好にできる。
【0071】
[中間層]
中間層1は、基材層3とシーラント層2の間には設けられる。中間層1により、カバーテープ10全体の柔軟性を調整しクッション性を向上させるとともに、耐付着性を良好にできる。さらに、接着対象であるキャリアテープ20との密着性を向上させることができ、また、基材層3とシーラント層2の接着強度を強固にすることができる。
【0072】
中間層1は、熱可塑性樹脂からなることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく、オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹、スチレン系樹脂からなる群から選択される一種、または二種以上の熱可塑性樹脂が挙げられる。
また、中間層1は、単層でもあっても、複層でもよく、それぞれ、熱可塑性樹脂は、一種または二種以上であってもよい。
【0073】
中間層1の厚さは、接着対象であるキャリアテープ20との密着性を向上させる観点から、好ましくは、10μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは、15μm以上25μm以下である。
【0074】
カバーテープ10は、基材層3と、シーラント層2または中間層1との接着強度を強固にして安定するために、シーラント層2または中間層1と接する側をサンドプラスト処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理をすることができる。また、基材層3には、帯電防止剤が練り込まれたかまたは表面コーティングされた静電防止品を用いることもできる。
【0075】
カバーテープ10の厚みは、好ましくは、25μm以上200μm以下であり、より好ましくは、30μm以上150μm以下である。
カバーテープ10の幅は、好ましくは、1mm以上100mm以下であり、より好ましくは2mm以上80mm以下であり、さらに好ましくは、2mm以上50mm以下である。
【0076】
また、本実施形態のカバーテープ10の変形例としては、図2に示すように、シーラント層2とは反対側の基材層1の面に、他の層が形成されていてもよい。他の層としては、例えば、導電層を用いることができる。このようなカバーテープ10を包装体100に用いることにより、静電気の蓄積をより効果的に抑止することができる。
【0077】
次に、電子部品を収容して搬送する際にシーラント層2の表面と接触する対象物を形成する材料について説明する。
上述した通り、上記対象物としては、キャリアテープ20の底面等が挙げられるが、電子部品を収容して搬送する際や電子部品を実装する際にシーラント層2の表面と接触する可能性を有したものであれば限定されない。また、上記対象物を形成する材料の具体例としては、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のキャリアテープを形成する材料や、ポリエチレン、ゴム(天然ゴム、合成ゴムなどを加工した材料)および紙等が挙げられる。
【0078】
<電子部品包装体>
図2に示すように、電子部品包装体100は、電子部品がポケット21(凹部)に収容されたキャリアテープ20と、上記のカバーテープ10と有し、当該電子部品を封止するようにシーラント層2がキャリアテープ20に接着されたものである。
【0079】
電子機器の製造現場においては、キャリアテープ20のポケット21内に電子部品を収容し、次いで、キャリアテープ20のポケット21の開口部全面を覆うように、キャリアテープ20の表面にカバーテープ10を接着することで、電子部品が収容された電子部品包装体100が作製される。包装体100は、上述のように、紙製あるいはプラスチック製のリールに電子部品包装体100を巻いた状態で、電子回路基板等に表面実装を行う作業領域まで搬送される。電子部品の表面実装工程において、カバーテープ10がキャリアテープ20から剥離されて、電子部品がパッケージから自動的に取出され、電子回路基板上に実装される。
【0080】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、
電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープであって、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、300gf未満である、カバーテープ。
<2>
前記シーラント層におけるJIS C0806-3に準拠した180°剥離強度が15gf以上である、<1>に記載のカバーテープ。
<3>
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下である、<1>または<2>に記載のカバーテープ。
<4>
前記シーラント層は、
(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂、および(C)(メタ)アクリル酸エステル重合体からなる群から選択される一種以上を含む、<1>乃至<3>いずれか一つに記載のカバーテープ。
<5>
前記(A)ポリオレフィン系樹脂が、カルボン酸またはカルボン酸誘導体に由来する構造単位を有する共重合体を含む、<4>に記載のカバーテープ。
<6>
前記カバーテープが、前記シーラント層と、前記基材層との間に、さらに中間層を備える、<1>乃至<5>いずれか一つに記載のカバーテープ。
<7>
前記中間層は、オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上の熱可塑性樹脂を含む、<6>に記載のカバーテープ。
<8>
前記シーラント層の厚み(μm)に対する、前記基材層の厚み(μm)が、0.1以上、25以下である、<1>乃至<7>いずれか一つに記載のカバーテープ。
<9>
1mm以上100mm以下の幅を有する、<1>乃至<8>いずれか一つに記載のカバーテープ。
<10>
電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、
<1>乃至<9>いずれか一つに記載のカバーテープと有し、
前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
<実施例1>
膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「E7415」)の上に押出ラミネート法により、中間層として低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製「スミカセンL705」)を押出温度300℃で厚み20μmに製膜した。この中間層をコロナ処理した後、シーラント層としてのアクリル系シーラント樹脂(DIC株式会社製「A450A」)を、膜厚が2μmとなるように製膜し、カバーテープを得た。
【0083】
<実施例2>
膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「E7415」)の上に押出ラミネート法により、中間層1として低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製「スミカセンL705」)を押出温度300℃で厚み20μmに製膜した。製膜した中間層1の上に、中間層2としてスチレン-メタクリル酸メチル共重合体(新日鉄住金株式会社製「エスチレンMS-600」)15質量%、低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製「スミカセンL705」)55質量%、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(旭化成ケミカルズ株式会社製「タフテックH1031」)30質量%の混合物を押出温度280℃で厚さ10μmに製膜した。
この中間層2をコロナ処理した後、シーラント層としてのアクリル系シーラント樹脂(DIC株式会社製「A450A」)を、膜厚が2μmとなるように製膜し、カバーテープを得た。
【0084】
<実施例3>
膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「E7415」)の上に押出ラミネート法により、中間層として低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製「スミカセンL705」)を押出温度300℃で厚み20μmに製膜した。
製膜した中間層の上に、シーラント層としてスチレン-メタクリル酸メチル共重合体(新日鐵住金株式会社製「エスチレンMS-600」)15質量%、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エルバロイAC1820」、アクリル基の含有率:20質量%)65質量%、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体(三洋化成工業株式会社製「ペレスタット212」)20質量%の混合物を押出温度280℃で厚さ10μmに製膜しカバーテープを得た。
なお、シーラント層を製膜する際に表面粗さ5.5μmの突起を備える冷却ロールにシリコンゴム製マットロールを圧力0.2MPaで押当てることでシーラント層表面の粗面化をおこなった。
【0085】
<実施例4>
膜厚25μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「E7415」)の上に押出ラミネート法により、中間層として低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製「スミカセンL705」)を押出温度300℃で厚み20μmに製膜した。
製膜した中間層の上に、シーラント層としてスチレン-メタクリル酸メチル共重合体(新日鐵住金株式会社製「エスチレンMS-600」)10質量%、低密度ポリエチレン(住友化学社株式会社製「スミカセンL705」)67質量%、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体(三洋化成工業株式会社製「ペレクトロンPVL」)15質量%、粘着付与剤(荒川化学工業株式会社製「アルコンP-100」)8質量%の混合物を押出温度280℃で厚さ10μmに製膜しカバーテープを得た。
なお、シーラント層を製膜する際に表面粗さ5.5μmの突起を備える冷却ロールにシリコンゴム製マットロールを圧力0.2MPaで押当てることでシーラント層表面の粗面化をおこなった。
【0086】
<比較例1>
シーラント層を製膜する際に用いる冷却ロールを表面粗さ2.5μmの突起を備えるものにした以外は、実施例3と同様にしてカバーテープを得た。
【0087】
<比較例2>
シーラント層を製膜する際に用いるエチレン-アクリル酸メチル共重合体をアルケマ株式会社製「ロトリル28MA07」(アクリル基の含有率:28質量%)にした以外は、実施例3と同様にしてカバーテープを得た。
【0088】
得られたカバーテープを用いて、以下の評価・測定を行った。結果を表1に示す。
【0089】
・タック力
JIS Z3284で規定されるプローブタック試験により、ステージ上にシーラント層が上側となるようにしてカバーテープを配置し、測定した。また、プローブとステージの設定温度を同じにし、設定温度25℃、50℃、70℃、90℃としたときのそれぞれのタック値(T_(25)、T_(50)、T_(70)、T_(90))を測定した。
装置:株式会社レスカ製「TAC-1000」
押し付け速度:0.5mm/s
押し付け荷重:1,000gf
押し付け保持時間:60s
引き上げ速度:10mm/s
プローブの直径:5mm(プローブ素材:SUS)
【0090】
・剥離強度
以下の条件でヒートシールを行い、JIS C0806-3に準拠した180°剥離強度を測定した。
(ヒートシール)
設備:ISMECA MBM4000
アイロンサイズ:0.4mmx8mm
温度:180℃
荷重:1kg
シール時間:100ms
キャリアテープ送りピッチ:4mm
キャリア:ポリカーボネート(PC)
【0091】
(電子部品に対する耐付着性)
・金属片の付着試験A
まず、ニッケルを精密切断機で切断し、縦:0.4mm×横:0.8mm×厚み:0.4mmに加工することにより、金属片を用意した。
つぎに、実施例および比較例で得られたカバーテープのシーラント層の表面が上向きになるように、当該カバーテープをスライドガラスの上に貼り付け、シーラント層の上に、金属片(縦:0.4mm×横:0.8mm×厚み:0.4mm)20個を載せた試験片を作製した。得られた試験片を、60℃、95%RHの条件下において24時間静置し、さらに常温常湿で24時間静置した。その後、スライドガラスを反転させた状態で1,500rpmで20秒間の振動を試験片に加えた後、当該カバーテープのシーラント層の表面に付着している、金属片の数から付着割合(%)を算出した。
算出された付着割合(%)から、以下の基準に沿って、評価した。
○:0?20%未満
△:20?40%未満
×:40?100%
【0092】
・エポキシ樹脂片の付着試験B
まず、エポキシ試験片を、次のように作製した。
ビフェニル型エポキシ樹脂64.3g(三菱化学製YX-4000HK)、フェノールノボラック樹脂35.5g(DIC製TD-2090)、トリフェニルホスフィン0.2gを配合し、ミキサーで混合したのち、加熱ロールで80℃で5分間混練した。得られた樹脂組成物の混練物を粉砕したのち、100kg/cm^(2)、175℃で10分間プレス成型した。さらに180℃6時間、後硬化し、エポキシ硬化成形物を得た。上記エポキシ硬化成形物を精密切断機で切断し、縦:0.4mm×横:0.8mm×厚み:0.4mmのエポキシ樹脂片を得た。
つぎに、実施例および比較例で得られたカバーテープの前記シーラント層の表面が上向きになるように、当該カバーテープをスライドガラスの上に貼り付け、シーラント層の上に、エポキシ樹脂片(縦:0.4mm×横:0.8mm×厚み:0.4mm)20個を載せた試験片を作製した。得られた試験片を、60℃、95%RHの条件下において24時間静置し、さらに常温常湿で24時間静置した。その後、前記スライドガラスを反転させた状態で1,500rpmで20秒間の振動を試験片に加えた後、当該カバーテープのシーラント層の表面に付着している、エポキシ樹脂片の数から付着割合(%)を算出した。
算出された付着割合(%)から、以下の基準に沿って、評価した。
○:0?20%未満
△:20?40%未満
×:40?100%
【0093】
【表1】

【符号の説明】
【0094】
1 中間層
2 シーラント層
3 基材層
10 カバーテープ
20 キャリアテープ
21 ポケット
100 電子部品包装体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面にシーラント層を有し、前記シーラント層上に基材層を備えており、
電子部品を収容できる凹部を有するキャリアテープを、前記シーラント層によりシールするために用いる、カバーテープであって、
前記シーラント層は、
前記シーラント層形成用樹脂として(A)ポリオレフィン系樹脂、(B)ポリスチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上を含み、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された70℃でのタック値をT_(70)としたとき、T_(70)が30gf以上、200gf以下であり、
前記シーラント層におけるJIS Z3284で規定されるプローブタック試験により測定された90℃でのタック値をT_(90)としたとき、T_(90)が40gf以上、500gf以下であり、
T_(90)/T_(70)が、1.3以上、6以下であり、
前記シーラント層の表面は粗さ付与がなされている、カバーテープ。
【請求項2】
前記シーラント層におけるJIS C0806-3に準拠した180°剥離強度が15gf以上である、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記(A)ポリオレフィン系樹脂が、カルボン酸またはカルボン酸誘導体に由来する構造単位を有する共重合体を含む、請求項1または2に記載のカバーテープ。
【請求項6】
前記カバーテープが、前記シーラント層と、前記基材層との間に、さらに中間層を備える、請求項1、2及び5いずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項7】
前記中間層は、オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂からなる群から選択される一種以上の熱可塑性樹脂を含む、請求項6に記載のカバーテープ。
【請求項8】
前記シーラント層の厚み(μm)に対する、前記基材層の厚み(μm)が、0.1以上、25以下である、請求項1、2及び5乃至7いずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項9】
1mm以上100mm以下の幅を有する、請求項1、2及び5乃至8いずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項10】
電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、
請求項1、2及び5乃至9いずれか一項に記載のカバーテープと有し、
前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-09-30 
出願番号 特願2018-40604(P2018-40604)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B65D)
P 1 651・ 113- YAA (B65D)
P 1 651・ 537- YAA (B65D)
P 1 651・ 841- YAA (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 石井 孝明
特許庁審判官 間中 耕治
村山 達也
登録日 2020-01-07 
登録番号 特許第6638751号(P6638751)
権利者 住友ベークライト株式会社
発明の名称 カバーテープおよび電子部品包装体  
代理人 速水 進治  
代理人 速水 進治  

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