ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 B66B 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 B66B |
---|---|
管理番号 | 1379847 |
異議申立番号 | 異議2021-700686 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-07-16 |
確定日 | 2021-10-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6815568号発明「運行管理装置および運行管理プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6815568号の請求項1、2、4?13に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6815568号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?13に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)8月6日を国際出願日とする特許出願であって、令和2年12月24日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月20日に特許掲載公報が発行された。その後、令和3年7月16日に特許異議申立人田中理紗(以下、「申立人」という。)から本件特許の請求項1、2、4?13に係る特許について特許異議の申立てがあったものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?13に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明13」という。)は、本件特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 エレベータのかごが停止した停止階での前記かごへの利用者の出入りを検出する出入り検出を行う出入り検出部と、 前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定部と、 前記停止階への前記かごの移動の要因が乗場呼びであり、且つ、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する状態判定部と を備える運行管理装置。 【請求項2】 前記かごに設けられたかごドアと前記停止階に設けられた乗場ドアとのいずれかに、物体の通過を検出するセンサが設置され、 前記出入り検出部は、前記停止階での前記センサによる物体通過検出を、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する 請求項1に記載の運行管理装置。 【請求項3】 前記出入り検出部は、前記停止階への前記かごの移動の要因がかご呼びであったという判定結果を、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する 請求項1または請求項2に記載の運行管理装置。 【請求項4】 前記運行管理装置は、さらに、 前記かごの荷重が前記停止階で変化したか判定する荷重変化判定部を備え、 前記出入り検出部は、前記かごの荷重が前記停止階で変化したという判定結果を、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の運行管理装置。 【請求項5】 前記運行管理装置は、さらに、 前記停止階での前記かごの状態が満員状態である場合に、乗場呼びに応じずにかご呼びに応じて前記かごを移動させる満員運行を行い、前記満員運行の後、前記満員運行によって前記かごに通過された階に前記かごを呼ぶための乗場呼び、を優先して前記かごを移動させる優先運行を行う運行管理部を備える 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の運行管理装置。 【請求項6】 前記運行管理装置は、さらに、 前記かごが前記停止階に停止した後に、かごドアと前記停止階の乗場ドアとの一対のドアを開く戸開管理部を備え、 前記戸開管理部は、前記停止階への前記かごの移動の要因が乗場呼びではなく、且つ、前記一対のドアが開いたときから通常時間が経過するときまでの間に前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合に、通常時間の経過時には前記一対のドアを閉めずに通常時間の経過時から延長時間が経過したときに前記一対のドアを閉める 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の運行管理装置。 【請求項7】 前記運行管理装置は、さらに、 前記かごが前記停止階に停止した後に、かごドアと前記停止階の乗場ドアとの一対のドアを開く戸開管理部を備え、 前記戸開管理部は、前記停止階への前記かごの移動の要因がかご呼びであり、且つ、前記一対のドアが開いたときから通常時間が経過するときまでの間に前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合に、通常時間の経過時には前記一対のドアを閉めずに通常時間の経過時から延長時間が経過したときに前記一対のドアを閉める 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の運行管理装置。 【請求項8】 エレベータのかごが停止した停止階での前記かごへの利用者の出入りを検出する出入り検出を行う出入り検出処理と、 前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定処理と、 前記停止階への前記かごの移動の要因が乗場呼びであり、且つ、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する状態判定処理 としてコンピュータを機能させるための運行管理プログラム。 【請求項9】 エレベータのかごが停止した停止階で前記かごの荷重が変化したか判定する荷重変化判定部と、 前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定部と、 前記停止階で前記かごの荷重が変化したという判定結果と、前記停止階への前記かごの移動の要因がかご呼びであったという判定結果とのそれぞれを、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する出入り検出部と、 前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する状態判定部と を備える運行管理装置。 【請求項10】 前記運行管理装置は、さらに、 前記停止階での前記かごの状態が満員状態である場合に、乗場呼びに応じずにかご呼びに応じて前記かごを移動させる満員運行を行い、前記満員運行の後、満員状態であると判定した階および前記満員運行によって前記かごに通過された階に前記かごを呼ぶための乗場呼び、を優先して前記かごを移動させる優先運行を行う運行管理部を備える 請求項9に記載の運行管理装置。 【請求項11】 前記運行管理装置は、さらに、 前記かごが前記停止階に停止した後に、かごドアと前記停止階の乗場ドアとの一対のドアを開く戸開管理部を備え、 前記戸開管理部は、前記停止階への前記かごの移動の要因が乗場呼びではなく、且つ、前記一対のドアが開いたときから通常時間が経過するときまでの間に前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合に、通常時間の経過時には前記一対のドアを閉めずに通常時間の経過時から延長時間が経過したときに前記一対のドアを閉める 請求項9または請求項10に記載の運行管理装置。 【請求項12】 前記運行管理装置は、さらに、 前記かごが前記停止階に停止した後に、かごドアと前記停止階の乗場ドアとの一対のドアを開く戸開管理部を備え、 前記戸開管理部は、前記停止階への前記かごの移動の要因がかご呼びであり、且つ、前記一対のドアが開いたときから通常時間が経過するときまでの間に前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合に、通常時間の経過時には前記一対のドアを閉めずに通常時間の経過時から延長時間が経過したときに前記一対のドアを閉める 請求項9または請求項10に記載の運行管理装置。 【請求項13】 エレベータのかごが停止した停止階で前記かごの荷重が変化したか判定する荷重変化判定処理と、 前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定処理と、 前記停止階で前記かごの荷重が変化したという判定結果と、前記停止階への前記かごの移動の要因がかご呼びであったという判定結果とのそれぞれを、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する出入り検出処理と、 前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する状態判定処理 としてコンピュータを機能させるための運行管理プログラム。」 第3 特許異議の申立ての理由及び証拠方法 1.特許異議の申立ての理由 申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び甲第2号証並びに従たる証拠として甲第3号証?甲第6号証を提出し、請求項1、4、8、9、13に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、請求項1、4、8、9、13に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。また、請求項2、5?7、10?12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項2、5?7、10?12に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 2.証拠方法 申立人が提出した証拠方法は、以下に示す甲第1号証?甲第6号証である。 甲第1号証:特開平4-125276号公報 甲第2号証:特許第5738948号公報 甲第3号証:特許第6125842号公報 甲第4号証:特開2014-231409号公報 甲第5号証:特開平8-119545号公報 甲第6号証:特公平6-35309号公報 第4 甲各号証の記載事項 1.甲第1号証に記載された事項及び甲1発明 (1)甲第1号証に記載された事項 甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。以下同様。)。 ア「 (課題を解決するための手段) エレベータの荷重状態を検出する手段と、乗場呼び停止時に乗車無状態を検出し乗車スペース無しを判断する手段と、前記の条件検出により乗場呼びを通過する手段とを備えて構成する。 (作用) かご内の状態と乗場呼び停止時の乗車無状態検出によりスペースが無いため事実上乗ることができない場合を検出した場合、満員と判定し、それを検出した号機の乗り場呼びを通過する。」(第2ページ左上欄第4行?第13行) イ「 単体制御部1とかご2と乗場呼びボタン3とモータ制御部6から構成される。 かご2よりかご状態4が単体制御部1へ送信される。かご状態4の内容は、戸開ボタン状態4A、戸開状態4B、かご呼び状態4C、かご荷重検出信号4D等からなる。乗り場呼びボン3より乗り場呼び状態5が単体制御部1へ送信される。モータ制御部6より走行状態7とかご荷重状態8が単体制御部1へ送信される。 乗り場呼びボタン3から送信された乗り場呼び状態5とかご2より送信されたかご状態4とモータ制御部6を介して送信されたかご荷重状態8により、単体制御部1にて、乗り場呼びのみによる戸開後、かご内で所定値以上の荷重状態でかつ一定荷重以上の増加がなく、一定時間以上戸開していたことまたは戸開ボタンを押されたことを検出した場合、満員である可能性有りと判断する。満員である可能性有りでスタート後、再び同一乗り場呼びが発生したら、その号機は満員であると判断し、乗り場呼びを無視して応答しない。荷重が一定値以上減少したら、満員を解除する。 第3図により満員の検出処理について説明する。 かご内が満員荷重以上である場合は、満員と判断する。 かご内が満員荷重未満でかつ停止中かつ満員でない時、満員である可能性があるかどうかを検出する。この検出方法は、乗り場呼びによる停止で、かつ、かご内で所定値以上の荷重状態で一定荷重以上の変化が無く、かつ、一定時間以上戸開していたかまたは戸開ボタンが押された時、満員である可能性有りと判断し、準満員状態とし応答した乗り場呼びのデータとしてかご位置階床と方向性をセーブする。 かご内が満員荷重未満でかつ停止中かつ満員の時、一定値以上荷重が減少した場合、満員を解除する。 かご内が満員荷重以下で走行中の時、満員状態でなくかつ準満員状態である場合、スタート後一定時間以内に準満員状態はなった時と同じ乗り場呼びが発生したら、満員状態とする。 荷重のみでは乗ることが可能でも、事実上乗ることができない場合の意味のない停止を減少させることができる。これにより、サービスが向上し、また、かご内の乗客とホールで待つ人の無駄運転による不快感を解消することができる。」(第2ページ左上欄第17行?右下欄第1行) ウ「第3図 」 エ 摘記事項ウの第3図より、かご内で一定荷重以上の増加がないかを判断するステップを有することが看取できる。 オ 摘記事項ウの第3図より、ホール呼びのみによる停止か否かを判断するステップを有することが看取できる。 (2)甲1発明 (1)の摘記事項ア?ウ及び認定事項エ?オから、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 【甲1発明】 「エレベータのかご2の乗り場呼び停止時に、かご内で一定荷重以上の増加がないかを判断し、 乗り場呼びのみによる停止か否かを判断し、乗り場呼びのみによる停止で、かつ、かご内で所定値以上の荷重状態でかつ一定荷重以上の増加がなく、一定時間以上戸開していたことまたは戸開ボタンを押されたことを検出した場合、満員である可能性有りと判断し、 満員である可能性有りでスタート後、再び同一乗り場呼びが発生したら、その号機は満員であると判断する、 単体制御部1。」 2.甲第2号証に記載された事項及び甲2発明 (1)甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア「【0008】 図1、図2に示すように、本実施形態のエレベータ制御装置1は、エレベータ群(エレベータシステム)2を群管理し効率的な運行サービスを行うものである。エレベータ制御装置1は、複数台のエレベータ3によって、複数の階床に対してサービス可能とするものである。ここでは、エレベータ群2は、1号機から3号機までの複数のエレベータ3からなり、複数の乗りかご4がそれぞれ昇降路を昇降することで複数の階床に対して運行サービスを行う。」 イ「【0010】 各エレベータ3は、それぞれ、乗客を乗せる乗りかご4、乗客が乗降する乗場5、単体制御装置50等を含んで構成される。各エレベータ3は、それぞれ、乗りかご4とカウンタウェイトとをメインロープで連結したいわゆるつるべ式のエレベータである。各エレベータ3は、単体制御装置50によって各部の駆動が制御されて乗りかご4が昇降路内を昇降することで、任意の目的階に移動することができる。 【0011】 乗りかご4は、メインロープが接続され、建造物の鉛直方向に沿って設けられる昇降路内に配置され、この昇降路を昇降可能なものである。乗りかご4は、当該乗りかご4に対応してそれぞれ設けられる巻上機のメインシーブに巻き掛けられたメインロープを介してカウンタウェイトと連結されている。乗りかご4は、巻上機の駆動によるメインシーブの回転に伴い、カウンタウェイトとともに互いに上下反対方向に昇降する。各乗りかご4は、かご呼び登録装置4a、荷重検出器4b等を含んで構成される。かご呼び登録装置4aは、各乗りかご4内にそれぞれ設けられる。かご呼び登録装置4aは、利用者が目的階を登録するためのものである。かご呼び登録装置4aは、典型的には、利用者の操作に応じてかご呼びを登録可能とする。つまり、かご呼び登録装置4aは、利用者による操作入力に応じていわゆるかご呼び登録等を行う。かご呼び登録装置4aは、目的階を表す複数の押しボタン、あるいは、これらを表示するタッチパネル等を含んで構成される。荷重検出器4bは、乗りかご4内の積載荷重を検出する。 【0012】 乗場5は、乗りかご4が着床可能な各エレベータ停止階床に設けられる。各乗場5は、それぞれ乗場呼び登録装置6等が設けられる。乗場呼び登録装置6は、各乗場5の扉7の近傍にそれぞれ設けられる。本実施形態の乗場呼び登録装置6は、各乗場5において、各号機に対応して1つずつ、すなわち、ここでは各乗場5に3つずつ設けられる。乗場呼び登録装置6は、利用者が乗場5に乗りかご4を呼ぶためのものである。乗場呼び登録装置6は、典型的には、利用者による操作に応じて乗場呼びを登録可能とする。つまり、乗場呼び登録装置6は、利用者による操作入力に応じていわゆる乗場呼び登録等を行う。各乗場呼び登録装置6は、それぞれ「上方向矢印」を表す乗場上昇呼びボタン8、「下方向矢印」を表す乗場下降呼びボタン9、あるいは、これらを表示するタッチパネル等を含んで構成される。」 ウ「【0014】 エレベータ制御装置1は、各々のエレベータ3の動作を個別に制御する単体制御装置50、エレベータ群2の群管理制御を行う群管理制御装置100等を含んで構成される。単体制御装置50は、各エレベータ3の種々のセンサ、検出器や巻上機、乗りかご4のかご呼び登録装置4a、荷重検出器4b、乗場呼び登録装置6等のエレベータ3の各部と電気的に接続され、エレベータ3単体の各部の動作を統括的に制御する。単体制御装置50は、例えば、かご呼び登録装置4a、乗場呼び登録装置6への利用者からの操作入力に応じて、巻上機の駆動を制御し、乗りかご4を呼び登録に応じた指定の目的階に移動させる。群管理制御装置100は、複数のエレベータ3の各単体制御装置50と相互に検出信号や駆動信号、制御指令等の情報の通信、授受を行い、エレベータ群2を群管理する。」 エ「【0027】 乗場呼び検出部104は、各乗場5の乗場呼び登録装置6の乗場上昇呼びボタン8、乗場下降呼びボタン9から入力される乗場呼び登録信号に基づいて乗場呼びを検出するものである。乗場呼び検出部104は、各乗場5の乗場呼び登録装置6から乗場呼び登録信号が入力されると、当該乗場呼びがなされてからの経過時間、ここでは信号入力からの経過時間を計測する。乗場呼び検出部104は、計測した経過時間に関する経過時間信号を割り振り制御部102に出力する。」 オ「【0029】 まず、割り振り制御部102は、乗場呼び検出部104から入力される信号に基づいて乗場呼びが発生したか否を判定する(ステップS1)。このとき、乗場呼び検出部104は、乗場呼び登録装置6から入力される乗場呼び登録信号に基づいて乗場呼びを検出した場合には、当該信号が入力された時点から経過時間の計測を開始する。そして、乗場呼び検出部104は、計測した経過時間に応じた経過時間信号を割り振り制御部102に出力する。割り振り制御部102は、乗場呼びが発生していないと判定した場合(ステップS1:No)、このステップS1の判定を繰り返し実行する。 【0030】 割り振り制御部102は、乗場呼びが発生したと判定した場合(ステップS1:Yes)、評価値等を算出し、登録された乗場呼びに応答する最適な乗りかご4を決定し、割り振り信号を該当する号機の単体制御装置50に出力する。割り振り信号が入力された単体制御装置50は、当該号機の乗りかご4(以下、「当該乗りかご4」という場合がある。)を、乗場呼びがなされた階床の乗場5に移動、着床させ、当該乗りかご4の扉10、及び、当該階床の乗場5の扉7を開放する(ステップS2)。」 カ「【0034】 割り振り制御部102は、当該乗りかご4の荷重が基準荷重以上であると判定した場合(ステップS5:Yes)、当該乗りかご4が乗場5に着床し戸開した際に当該乗りかご4の荷重が増減したか否かを判定する(ステップS6)。割り振り制御部102は、当該乗りかご4の荷重が増減していないと判定した場合(ステップS6:No)、ステップS4の処理に移行し、当該乗りかご4において満員通過オペレーションを発生させる。」 キ「【0036】 上記のように構成されるエレベータ制御装置1は、乗りかご4の荷重の変化に応じて、当該乗りかご4に目的階までの途中階床を通過させる満員通過オペレーションを実行させる。ここでは、エレベータ制御装置1は、乗りかご4の荷重が満員判定荷重以上である場合に加え、乗りかご4の荷重が基準荷重以上であり、かつ、戸開した際に当該乗りかご4の荷重が増減しなかった場合に満員通過オペレーションを実行する。これにより、エレベータ制御装置1は、乗場5にて乗りかご4の荷重が増減しなかった場合、例えば、乗りかご4が混雑しており乗場5の利用者が乗りかご4に乗り込めなかったものと推定できるような場合に、満員通過オペレーションを実行することができる。この結果、エレベータ制御装置1は、乗りかご4の荷重が満員判定荷重に満たない状態であっても、各乗りかご4の荷重の変化に応じて必要に応じて満員通過オペレーションを実行することができる。したがって、このエレベータ制御装置1は、乗りかご4が混雑しており乗場5の利用者が乗りかご4に乗り込めないにもかかわらず、乗りかご4が不必要に目的階までの途中階床に停止することを抑制することができる。これにより、このエレベータ制御装置1は、運行の効率を向上することができると共に、利用者のニーズに適切に応えることができるので、利便性を向上することができる。」 (2)甲2発明 (1)の摘記事項ア?キから、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 【甲2発明】 「エレベータ3の乗りかご4が乗場5に着床し戸開した際に当該乗りかご4の荷重が増減したか否かを判定し、 乗場呼び検出部104から入力される信号に基づいて乗場呼びが発生したか否を判定し、 乗りかご4を、乗場呼びがなされた階床の乗場5に移動、着床させ、戸開した際に当該乗りかご4の荷重が増減しなかった場合に、乗りかご4が混雑しており乗場5の利用者が乗りかご4に乗り込めなかったものと推定し、満員通過オペレーションを実行する 割り振り制御部102を備える、 エレベータ制御装置1。」 3.甲第3号証に記載された事項 甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【0017】 エレベータ制御装置11は、かご側呼びボタン102からの信号及びホール側呼びボタン12からの信号(呼び情報)に基づいて、最適な運転効率を実現するようにかご10の運転制御を行う。エレベータ制御装置11はまた、荷重センサ104からの検知信号に従って、かごの通過運転制御を行う。例えば、荷重センサ104がかご10の定格積載荷重(例えば1000kgの80%である800kg)以上を検出すると、エレベータ制御装置11は通過運転制御を行う。 エレベータ制御装置11の出力信号はエレベータ基本運転制御装置(不図示)に転送され、このエレベータ基本運転制御装置によってかご10の昇降制御を行なわれる。」 (2)「【0022】 荷重変化判定部205は、前回のかごの着床時からの荷重値の変化を判定する。前回の荷重値はメモリ112に格納されているので、メモリ112から読み出した前回の荷重値と今回着床した時に検知された荷重値104´とを比較して、その差が所定以上の場合、荷重値に変化があったと判定する。 【0023】 荷重変化判定部205による荷重変化の判定の結果、荷重に変化が無いと判定された場合、通過運転制御部206は呼び階があってもその階を通過運転するように(通過運転モード)、エレベータ基本運転制御装置に指示する。通常運転制御部208は呼び階に停止するような通常運転(通常運転モード)を、エレベータ基本運転制御装置に指示する。」 (3)「【0035】 更に他の例として、図4に示すように、かご側ドア42とホール側ドア43の間に光学センサ44を配置して、この光センサ44によってかご10に出入りする乗客の変化を計測することで、乗客の変化を測定するこができる。」 (4)「【0037】 実施例1では、荷重センサ104を用いてかごの積載変化を把握した。 これに代わって、実施例4では、図4のかご側ドア42とホール側ドア43の間に配置した光学センサ44の検知信号と、図5に示すホール側ドアの上部に設置した光センサ501の検知信号を用いることによって、乗客の乗降(かご内の人の変化)を検知することができる。光センサ501はその照射領域503に人がいるかを検知する。」 4.甲第4号証に記載された事項 甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【0020】 ドア光電装置5は、かご3の出入口を通過する乗客の存在を検出する。例えば、ドア光電装置5Aは、かご3Aの出入口を通過する乗客の存在を検出する。ドア光電装置5は、例えば、投光素子と受光素子とを備える。かご3が両開き方式のドアを備える場合、投光素子は、出入口の一側に配置されたドアに設けられる。受光素子は、出入口の他側に配置されたドアに設けられる。投光素子は、出入口を横切るように検出光5aを照射する。出入口を通過する乗客がいなければ、投光素子から照射された検出光5aは、受光素子によって受光される。乗客が乗車或いは降車のために出入口を通過すると、投光素子から照射された検出光5aが乗客によって遮られる。ドア光電装置5は、受光素子が検出光5aを受光しないことに基づいて、乗客の存在を検出する。群管理装置1は、ドア光電装置5の検出結果を取得する。なお、ドア光電装置5の構成は、上記構成に限定されない。」 (2)「【0024】 満員判定手段7は、かご3が空間的な満員であるか否かを判定する。例えば、満員判定手段7は、かご3Aが空間的な満員であるか否かを判定する。空間的な満員とは、かご3が乗客が乗り込むことができない状態であることを意味する。例えば、赤ちゃんをベビーカーに乗せた親がかご3に乗ると、定員に満たない数の乗客しかかご3に乗っていない場合でも、かご3に他の乗客が乗るスペースがなくなってしまうことがある。このように、かご3に新たな乗客が乗るスペースが存在しない状態を空間的な満員という。満員判定手段7は、乗場センサ6の検出結果とドア光電装置5の検出結果とに基づいて上記判定を行う。また、満員判定手段7は、上記判定を行う際に必要に応じて秤増減検出手段9の検出結果も利用する。」 5.甲第5号証に記載された事項 甲第5号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【0014】・・・例4は、前記図3の3号機の場合の到着予測時間テーブルと運行計画である。3号機は6Fでの満員発生により5Fはエレベーターが割当てられたにもかかわらず通過となった。前記状況を解決するために、エレベーターを最終かご呼びサービス後、直ちに満員発生により通過階に直行運転させる運行計画を作成した。更に最終かご呼び階でのホール待ち客が乗車しないように、最終かご呼びサービス階床に「乗車できません」,「5階へ直行」等の表示をホールに案内し、満員通過した5Fのサービスを優先して行うようにして、満員通過による長待ちを極力短くした。この案内表示例を図6に示してある。もし、誤って、待ち客が乗り込むとかご呼びは登録されるが5Fへ直行運転した後、前記登録されたかご呼びをサービスする。この様に運転制御することにより、満員通過した5Fでの待ち客を直ちにサービスすることができ、エレベーターのサービス性の低下を防止できる。」 6.甲第6号証に記載された事項 甲第6号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「この実施例では、かご呼びに応答して停止したにもかかわらず、所定時間経過しても降車客を検出しないと、かご内が混雑している場合は、この階で降車するはずの乗客がかごの奥の方にいて降車に手間どっていると判断して出入口付近の乗客に出入口を開けるように促すとともに、戸開放時間を延長して降車するのに必要な時間を確保するようにした。」(第3ページ右欄第30行?第36行) 第5 当審の判断 1.甲1発明を主引用発明とする判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「エレベータ」は、本件発明1の「エレベータ」に相当し、甲1発明の「かご2」は、本件発明1の「かご」に相当し、甲1発明の「かご内で一定荷重以上の増加がないかを判断し」ていることは、これにより、かごへの乗客の出入りを検出しているものであるから、本件発明1の「前記かごへの利用者の出入りを検出する出入り検出を行う出入り検出部」を備えることに相当する。また、本件発明1の「停止階」で「エレベータのかごが停止した」ことには、「乗場呼び」で停止したことと「かご呼び」で停止したことが含まれるから、甲1発明の「エレベータのかご2の乗り場呼び停止時」は、「エレベータのかご」が乗場呼びにより「停止階」で「停止した」という限りにおいて、本件発明1の「エレベータのかご」が「停止階」で「停止した」ことと一致する。したがって、甲1発明の「エレベータのかご2の乗り場呼び停止時に、かご内で一定荷重以上の増加がないかを判断し」ていることは、「エレベータのかごが乗場呼びにより停止した停止階での前記かごへの利用者の出入りを検出する出入り検出を行う出入り検出部」を備える限りにおいて、本件発明1の「エレベータのかごが停止した停止階での前記かごへの利用者の出入りを検出する出入り検出を行う出入り検出部」を備えることと一致する。 甲1発明の「乗り場呼びのみによる停止か否かを判断」することは、「乗り場呼び」及び「かご呼び」から「乗り場呼び」のみであることを判定していることを意味するから、本件発明1の「前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定部」を備えることに相当する。 甲1発明の「乗り場呼び」は、本件発明1の「乗場呼び」に相当し、甲1発明の「乗り場呼びのみによる停止」は、本件発明1の「前記停止階への前記かごの移動の要因が乗場呼びであ」ることに相当する。 甲1発明の「かご内で所定値以上の荷重状態でかつ一定荷重以上の増加がなく、一定時間以上戸開していたことまたは戸開ボタンを押されたことを検出した場合」は、かごへの乗客の出入りが検出されなかった場合を意味するから、本件発明1の「前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合」に相当し、甲1発明の「乗り場呼びのみによる停止か否かを判断し、乗り場呼びのみによる停止で、かつ、かご内で所定値以上の荷重状態でかつ一定荷重以上の増加がなく、一定時間以上戸開していたことまたは戸開ボタンを押されたことを検出した場合、満員である可能性有りと判断」することは、「前記停止階への前記かごの移動の要因が乗場呼びであり、且つ、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態を判定する」という限りにおいて、本件発明1の「前記停止階への前記かごの移動の要因が乗場呼びであり、且つ、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する状態判定部」を備えることと一致する。 甲1発明の「単体制御部1」は、本件発明1の「運行管理装置」に相当する。 以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。 【一致点1】 「エレベータのかごが乗場呼びにより停止した停止階での前記かごへの利用者の出入りを検出する出入り検出を行う出入り検出部と、 前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定部と、 前記停止階への前記かごの移動の要因が乗場呼びであり、且つ、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態を判定する状態判定部と を備える運行管理装置。」 【相違点1】 出入り検出部について、本件発明1では、「停止階」に「かごが停止した」時に「かごへの利用者の出入りを検出する」ものであるのに対し、甲1発明では、「かご2の乗り場呼び停止時」に「かご内で一定荷重以上の増加がないかを判断」するものである点。 【相違点2】 「状態判定部」について、本件発明1では、「前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する」のに対し、甲1発明では、「満員である可能性有りと判断」する点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点2について検討する。 甲1発明は、乗り場呼びのみによる停止か否かを判断し、乗り場呼びのみによる停止で、かつ、かご内で所定値以上の荷重状態でかつ一定荷重以上の増加がなく、一定時間以上戸開していたことまたは戸開ボタンを押されたことを検出した場合、満員である可能性有りと判断し、満員である可能性有りでスタート後、再び同一乗り場呼びが発生したら、その号機は満員であると判断するものであって、満員であると判断するためには、満員である可能性有りと判断した後、再び同一乗り場呼びが発生することを必要としている。 そして、甲第1号証には、甲1発明において、乗り場呼びのみによる停止か否かを判断し、乗り場呼びのみによる停止で、かつ、かご内で所定値以上の荷重状態でかつ一定荷重以上の増加がなく、一定時間以上戸開していたことまたは戸開ボタンを押されたことを検出した場合に、満員である可能性有りと判断することなく、直接満員であると判断することを示唆する記載はない。 してみれば、甲1発明において、乗り場呼びのみによる停止か否かを判断し、乗り場呼びのみによる停止で、かつ、かご内で所定値以上の荷重状態でかつ一定荷重以上の増加がなく、一定時間以上戸開していたことまたは戸開ボタンを押されたことを検出した場合に、満員である可能性有りと判断することに代えて、満員であると判断するようにして、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者といえども容易になし得たこととはいえない。 したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 結論 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2、5?7について 本件発明2、5?7は、本件発明1をさらに限定するものであり、甲1発明との間に少なくとも(1)アで示した相違点1及び2を有するものである。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2、5?7は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明4について 本件発明4は、本件発明1をさらに限定するものであり、甲1発明との間に少なくとも(1)アで示した相違点1及び2を有するものである。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明4は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明8について 本件発明8は、本件発明1の「運行管理装置」を「運行管理プログラム」としたものであって、実質的に同等の構成を有するものと認められる。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明8は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明9について ア 対比 本件発明9と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「エレベータ」は、本件発明9の「エレベータ」に相当し、甲1発明の「かご2」は、本件発明9の「かご」に相当し、甲1発明の「かご内で一定荷重以上の増加がないかを判断し」ていることは、本件発明9の「前記かごの荷重が変化したか判定する荷重変化判定部」を備えることに相当する。また、本件発明9の「停止階」で「エレベータのかごが停止した」ことには、「乗場呼び」で停止したことと「かご呼び」で停止したことが含まれるから、甲1発明の「エレベータのかご2の乗り場呼び停止時」は、「エレベータのかご」が乗場呼びにより「停止階」で「停止した」という限りにおいて、本件発明9「エレベータのかご」が「停止階」で「停止した」ことと一致する。したがって、甲1発明の「エレベータのかご2の乗り場呼び停止時に、かご内で一定荷重以上の増加がないかを判断し」ていることは、「エレベータのかごが乗場呼びにより停止した停止階で前記かごの荷重が変化したか判定する荷重変化判定部」を備える限りにおいて、本件発明1の「エレベータのかごが停止した停止階で前記かごの荷重が変化したか判定する荷重変化判定部」を備えることと一致する。 甲1発明の「乗り場呼びのみによる停止か否かを判断」することは、「乗り場呼び」及び「かご呼び」から「乗り場呼び」のみであることを判定していることを意味するから、本件発明9の「前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定部」を備えることに相当する。 甲1発明の「乗り場呼びのみによる停止か否かを判断し、乗り場呼びのみによる停止で、かつ、かご内で所定値以上の荷重状態でかつ一定荷重以上の増加がなく、一定時間以上戸開していたことまたは戸開ボタンを押されたことを検出」することは、かごへの乗客の出入りがあるか否かを検出することを意味するから、「前記停止階で前記かごの荷重が変化したという判定結果を、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する出入り検出部」を備える限りにおいて、本件発明9の「前記停止階で前記かごの荷重が変化したという判定結果と、前記停止階への前記かごの移動の要因がかご呼びであったという判定結果とのそれぞれを、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する出入り検出部」を備えることと一致する。 甲1発明の「かご内で所定値以上の荷重状態でかつ一定荷重以上の増加がなく、一定時間以上戸開していたことまたは戸開ボタンを押されたことを検出した場合」は、かごへの乗客の出入りが検出されなかった場合を意味するから、本件発明9の「前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合」に相当し、甲1発明の「かご内で所定値以上の荷重状態でかつ一定荷重以上の増加がなく、一定時間以上戸開していたことまたは戸開ボタンを押されたことを検出した場合、満員である可能性有りと判断」することは、「前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態を判定する状態判定部」を備える限りにおいて、本件発明9の「前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する状態判定部」を備えることと一致する。 甲1発明の「単体制御部1」は、本件発明9の「運行管理装置」に相当する。 以上のとおりであるから、本件発明9と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。 【一致点2】 「エレベータのかごが乗場呼びにより停止した停止階で前記かごの荷重が変化したか判定する荷重変化判定部と、 前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定部と、 前記停止階で前記かごの荷重が変化したという判定結果を、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する出入り検出部と、 前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態を判定する状態判定部と を備える運行管理装置。」 【相違点3】 荷重変化判定部について、本件発明9では、「停止階」に「かごが停止した」時に「かごの荷重が変化したか判定する」ものであるのに対し、甲1発明では、「かご2の乗り場呼び停止時」に「かご内で一定荷重以上の増加がないかを判断」するものである点。 【相違点4】 出入り検出部に関し、本件発明9では、「前記停止階で前記かごの荷重が変化したという判定結果と、前記停止階への前記かごの移動の要因がかご呼びであったという判定結果とのそれぞれを、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する」のに対し、甲1発明では、「停止階へのかごの移動の要因がかご呼びであったという判定結果」を用いているか否かが不明である点。 【相違点5】 「状態判定部」について、本件発明9では、「前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する」のに対し、甲1発明では、「満員である可能性有りと判断」する点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点5について検討する。 上記相違点5は、(1)アで示した相違点2と同様の相違点である。 してみれば、(1)イで示した理由と同様、甲1発明において、上記相違点5に係る本件発明9の構成とすることは、当業者といえども容易になし得たこととはいえない。 したがって、上記相違点3及び4について検討するまでもなく、本件発明9は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 結論 以上のとおりであるから、本件発明9は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明10?12について 本件発明10?12は、本件発明9をさらに限定するものであり、甲1発明との間に少なくとも(5)アで示した相違点3ないし5を有するものである。 したがって、本件発明9と同様の理由により、本件発明10?12は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)本件発明13について 本件発明13は、本件発明9の「運行管理装置」を「運行管理プログラム」としたものであって、実質的に同等の構成を有するものと認められる。 したがって、本件発明9と同様の理由により、本件発明13は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2.甲2発明を主引用発明とする判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「エレベータ3」は、本件発明1の「エレベータ」に相当し、甲2発明の「乗りかご4」は、本件発明1の「かご」に相当し、甲2発明の「割り振り制御部102」が「当該乗りかご4の荷重が増減したか否かを判定」することは、かごへの乗客の出入りを検出することを意味するから、本件発明1の「前記かごへの利用者の出入りを検出する出入り検出を行う出入り検出部」を備えることに相当する。したがって、甲2発明の「エレベータ3の乗りかご4が乗場5に着床し戸開した際に当該乗りかご4の荷重が増減したか否かを判定」することは、本件発明1の「エレベータのかごが停止した停止階での前記かごへの利用者の出入りを検出する出入り検出を行う出入り検出部」を備えることに相当する。 甲2発明の「乗場呼び」は、本件発明1の「乗場呼び」に相当するから、甲2発明の「乗りかご4を、乗場呼びがなされた階床の乗場5に移動、着床させ」ることは、本件発明1の「前記停止階への前記かごの移動の要因が乗場呼びであ」ることに相当し、甲2発明の「戸開した際に当該乗りかご4の荷重が増減しなかった」ことは、かごへの乗客の出入りが検出されなかったことを意味するから、本件発明1の「前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった」ことに相当し、甲2発明の「割り振り制御部102」が「乗りかご4が混雑しており乗場5の利用者が乗りかご4に乗り込めなかったものと推定」することは、本件発明1の「前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する状態判定部」を備えることに相当する。 甲2発明の「エレベータ制御装置1」は、本件発明1の「運行管理装置」に相当する。 以上のとおりであるから、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。 【一致点3】 「エレベータのかごが停止した停止階での前記かごへの利用者の出入りを検出する出入り検出を行う出入り検出部と、 前記停止階への前記かごの移動の要因が乗場呼びであり、且つ、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する状態判定部と を備える運行管理装置。」 【相違点6】 本件発明1では、「前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定部」を備えるのに対し、甲2発明では、「割り振り制御部102」が「乗場呼び検出部104から入力される信号に基づいて乗場呼びが発生したか否を判定し」ている点。 イ 判断 上記相違点6について検討する。 甲2発明の「割り振り制御部102」は、甲第2号証の段落【0029】に記載されているとおり、「乗場呼び検出部104から入力される信号に基づいて乗場呼びが発生したか否を判定する」ものであるが、「乗場呼び」が発生したか否を判定するにあたって、「かご呼び登録装置4a」からの信号を用いることは、甲第2号証には記載されていない。 そうしてみると、甲2発明の「割り振り制御部102」は、「各乗場5の乗場呼び登録装置6の乗場上昇呼びボタン8、乗場下降呼びボタン9から入力される乗場呼び登録信号」に基づいて「乗場呼び検出部104から入力される信号」のみを用いるものであって、「乗場呼び検出部104から入力される信号」と「かご呼び登録装置4a」からの信号の両方を用いるものではないから、本件発明1の「呼び判定部」のごとく「前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する」ことはできない。 そして、甲第2号証には、甲2発明において、「割り振り制御部102」が「乗場呼び」が発生したことを判定する際、「かご呼び登録装置4a」からの信号を用いることを示唆する記載も無い。 してみれば、甲2発明において、「割り振り制御部102」が「停止階へのかごの移動の要因となった呼びの種類を判定する」ようにして、上記相違点6に係る本件発明1の構成とすることは、当業者といえども容易になし得たこととはいえない。 したがって、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 結論 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2、5?7について 本件発明2、5?7は、本件発明1をさらに限定するものであり、甲2発明との間に少なくとも(1)アで示した相違点6を有するものである。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2、5?7は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明4について 本件発明4は、本件発明1をさらに限定するものであり、甲2発明との間に少なくとも(1)アで示した相違点6を有するものである。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明4は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明8について 本件発明8は、本件発明1の「運行管理装置」を「運行管理プログラム」としたものであって、実質的に同等の構成を有するものと認められる。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明8は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明9について ア 対比 本件発明9と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「エレベータ3」は、本件発明1の「エレベータ」に相当し、甲2発明の「乗りかご4」は、本件発明9の「かご」に相当し、甲2発明の「割り振り制御部102」が「当該乗りかご4の荷重が増減したか否かを判定」することは、本件発明9の「前記かごの荷重が変化したか判定する荷重変化判定部」を備えることに相当する。したがって、甲2発明の「エレベータ3の乗りかご4が乗場5に着床し戸開した際に当該乗りかご4の荷重が増減したか否かを判定」することは、本件発明9の「エレベータのかごが停止した停止階で前記かごの荷重が変化したか判定する荷重変化判定部」を備えることに相当する。 甲2発明の「乗りかご4を、乗場呼びがなされた階床の乗場5に移動、着床させ、戸開した際に当該乗りかご4の荷重が増減しなかった」ことを検出することは、かごの荷重の増減からかごへの乗客の出入りを検出することを意味するから、「前記停止階で前記かごの荷重が変化したという判定結果を、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する出入り検出部」を備える限りにおいて、本件発明9の「前記停止階で前記かごの荷重が変化したという判定結果と、前記停止階への前記かごの移動の要因がかご呼びであったという判定結果とのそれぞれを、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する出入り検出部」を備えることと一致する。また、甲2発明の「割り振り制御部102」が「乗りかご4が混雑しており乗場5の利用者が乗りかご4に乗り込めなかったものと推定」することは、「前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する状態判定部」を備えることに相当する。 甲2発明の「エレベータ制御装置1」は、本件発明9の「運行管理装置」に相当する。 以上のとおりであるから、本件発明9と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。 【一致点4】 「エレベータのかごが停止した停止階で前記かごの荷重が変化したか判定する荷重変化判定部と、 前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定部と、 前記停止階で前記かごの荷重が変化したという判定結果と、前記停止階への前記かごの移動の要因がかご呼びであったという判定結果とのそれぞれを、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する出入り検出部と、 前記停止階での前記かごへの利用者の出入りが検出されなかった場合、前記停止階での前記かごの状態が満員状態であると判定する状態判定部と を備える運行管理装置」 【相違点7】 本件発明9では、「前記停止階への前記かごの移動の要因となった呼びの種類を判定する呼び判定部」を備えるのに対し、甲2発明では、「割り振り制御部102」が「乗場呼び検出部104から入力される信号に基づいて乗場呼びが発生したか否を判定し」ている点。 【相違点8】 出入り検出部に関し、本件発明9では、「前記停止階で前記かごの荷重が変化したという判定結果と、前記停止階への前記かごの移動の要因がかご呼びであったという判定結果とのそれぞれを、前記停止階での前記かごへの利用者の出入りとして検出する」のに対し、甲2発明では、「停止階へのかごの移動の要因がかご呼びであったという判定結果」を用いているか否かが不明である点。 イ 判断 上記相違点7について検討する。 上記相違点7は、(1)アで示した相違点6と同様の相違点である。 してみれば、(1)イで示した理由と同様、甲2発明において、上記相違点7に係る本件発明9の構成とすることは、当業者といえども容易になし得たこととはいえない。 したがって、上記相違点8について検討するまでもなく、本件発明9は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 結論 以上のとおりであるから、本件発明9は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明10?12について 本件発明10?12は、本件発明9をさらに限定するものであり、甲2発明との間に少なくとも(5)アで示した相違点7及び8を有するものである。 したがって、本件発明9と同様の理由により、本件発明10?12は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)本件発明13について 本件発明13は、本件発明9の「運行管理装置」を「運行管理プログラム」としたものであって、実質的に同等の構成を有するものと認められる。 したがって、本件発明9と同様の理由により、本件発明13は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3.甲第3号証?甲第6号証について 甲第3号証?甲第6号証は、いずれも、本件発明1、2、4?13を開示するものではないから、甲3号証?甲第6号証を参照したとしても、本件発明1、2、4?13は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、4?13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2、4?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-10-15 |
出願番号 | 特願2020-535346(P2020-535346) |
審決分類 |
P
1
652・
113-
Y
(B66B)
P 1 652・ 121- Y (B66B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 須山 直紀 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 中村 大輔 |
登録日 | 2020-12-24 |
登録番号 | 特許第6815568号(P6815568) |
権利者 | 三菱電機株式会社 |
発明の名称 | 運行管理装置および運行管理プログラム |
代理人 | 溝井国際特許業務法人 |