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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 B66B |
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管理番号 | 1379848 |
異議申立番号 | 異議2021-700628 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-07-05 |
確定日 | 2021-10-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6809629号発明「エレベータ用操作盤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6809629号の請求項1、3ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6809629号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和2年6月12日に出願され、同年12月14日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1、3ないし5に係る特許に対して、令和3年7月2日に特許異議申立人西村裕之は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第6809629号の請求項1、3ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明3」ないし「本件発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、3ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであって、本件発明1は、次のとおりである。なお、本件発明3ないし本件発明5は、本件発明1を更に限定したものである。 [本件発明1] 「エレベータ用昇降路を移動する乗りかごの行先階の登録操作を行う機能を有するとともに上下方向に沿って一列に並ぶ複数の接触式操作入力部を含み、前記乗りかご内の乗降口に隣接する壁に取り付けられたエレベータ用操作盤であって、 正面側から見て前記複数の接触式操作入力部の右側に各々隣接配置され、手をかざすことにより生じる遮光を検知することで正面側から見て左側に隣接する前記接触式操作入力部と同じ前記行先階の登録操作を実行可能に各々構成された複数の非接触式操作入力部と、 前記複数の接触式操作入力部および前記複数の非接触式操作入力部のうち左右に隣り合う前記接触式操作入力部および前記非接触式操作入力部のいずれか一方により前記行先階の登録操作が行われた場合に前記行先階の登録がなされたことを発光により報知する機能を有し、前記非接触式操作入力部が前記遮光を検知している状態で正面側から見たときに前記非接触式操作入力部にかざされている乗客の手で隠れてしまわないよう正面側から見て前記非接触式操作入力部の左側に隣接する前記接触式操作入力部に各々設けられる複数の登録報知部と、を備える、 エレベータ用操作盤。」 第3 申立理由の概要 令和3年7月2日の特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由の要旨は、次のとおりである。 請求項1、3ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、請求項1,3ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 甲第1号証:特開2019-142686号公報 甲第2号証:実願昭58-78725号(実開昭59-183467号)のマイクロフィルム 甲第3号証:特開2017-95940号公報 第4 各甲号証に記載の事項及び発明 1 甲第1号証・甲1発明(下線は当審で付した。以下同様。) (1)「【0017】 エレベータ10が設置された建物には、異なる階毎に乗場26A,26B,26Cが設けられており、エレベータ10の運転中、かご22は、現在、着床している階の乗場(図1では、乗場26C)から、次の行先階の乗場(例えば、乗場26A)までの移動を繰り返す。 【0018】 かご22内には、かご操作盤28(図2)が設置されている。かご操作盤28は、かご22の乗場26A,26B,26C側にある出入口(不図示)左右両側の袖壁のいずれか一方に設けられる。エレベータ10を利用する乗客は、このかご操作盤28を操作し、かご22の行先階を決定する。 【0019】 図2に示すように、かご操作盤28は、乗客がかご22の行先階を決定する操作を行う行先階操作部30を有する。行先階操作部30には、前記操作を非接触で検出する複数のセンサ32A,32B,…32Cが設けられている。センサ32A,32B,…32Cの各々は、乗場26A,26B,26Cがある各階に対応している。本例は、1階から4階ならびに6階および10階が行先階となり得る構成になっており、例えば、センサ32Bは、2階を行先階として決定するための操作を検出することとしている。 【0020】 行先階操作部30では、センサ32A,32B,…32Cの各々として、投光器と受光器が一体になった反射型光電センサが用いられている。この反射型光電センサは、投光器から光を照射し、受光器が受光する物体からの反射光の受光量に基づいて、物体の有無を検出する。本例では、受光器側の受光量(センサの感度)を調整し、センサの検出距離を行先階操作部30から5cm程度の範囲内に設定している。反射型光電センサが物体を検出すると、後述する制御装置46(図1)に検出信号が送信される。」 (2)「【0022】 センサ32A,32B,…32Cのうち隣接するセンサ同士は、10cm程度(概ね、拳骨1つ分程度)の間隔を有する。検出距離が上記範囲内に設定されたセンサ32A,32B,…32Cの各々を、このような間隔をもって配置することにより、仮に、乗客が行先階操作部30の正面に立って、指や手のひらを特定のセンサにかざし、行先階を決定する操作を行ったとしても、当該操作をその隣接階に対応するセンサが誤検出するといった事態を可能な限り防ぐことができる。 【0023】 パネル部分34には、センサ32A,32B,…32C各々の左側に、対応する階を示す数字が表示されている。さらに、パネル部分34には、対応関係にあるセンサ32A,32B,…32Cと数字の組合せを階毎に区切るL字の区切り線37A,37B,…37Cが表示されている。これらの数字および区切り線37A,37B,…37Cの各々は透光性を有する部材で形成された透光部であり、その裏側に格納されたランプ(不図示)が発光すると、数字と区切り線37A,37B,…37Cが点灯するように構成されている(図2では、2階に対応する透光部が点灯した状態を示している)。」 (3)「【0034】 センサ32Bからの検出信号があり、且つ、隣接センサからの検出信号がない場合(S2:YES)は、センサ32Bからの検出信号の継続時間が、第1閾値時間を経過したかどうかを判断する(S3)。そして、第1閾値時間を経過すると(S3:YES)、2階を行先階として登録する(S4)。具体的には、制御装置46が、2階の行先階登録フラグをONし、かご操作盤28の行先階操作部30に表示された数字の「2」とこれに対応する区切り線37Bを点灯させるとともに、スピーカーから簡単な登録音を出力する処理を実行する。」 (4)【図2】 (5)【図2】からは、センサ32A,32B,…32Cが、上下方向に沿って一列に並び、センサ32A,32B,…32Cの左側に複数の点灯する数字が隣接している構成が見て取れる。 そこで、上記記載事項及び図示内容を総合し、本件の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「エレベータ10のかご22の行先階を決定する操作を行う機能を有し、前記かご22内の出入口左右両側の袖壁のいずれか一方に設けられたかご操作盤28であって、 指や手のひらをかざすことによる反射光の受光量に基づいて行先階を決定する操作を行う反射型光電センサを収納した複数のセンサ32A,32B,…32Cと、 前記複数のセンサ32A,32B,…32Cにより前記行先階を決定する操作が行われた場合に前記決定がなされた行先階の数字が点灯するように構成され、正面側から見て前記センサ32A,32B,…32Cの左側に隣接する複数の数字と、を備える、 かご操作盤28。」 2 甲第2号証 甲第2号証には、次の事項が記載されている。 「従来の操作表示装置の一例を第1図により説明する。図に於て、10はかご操作盤、1?4は1?4階用の行先階呼登録ボタンであり、操作されると内蔵されたランプが点灯し、呼登録が行われたことを表示するようになっている。1a?4aは行先階呼登録ボタン1?4の近傍に設けた説明用の点字であり「1」?「4」と表示してある。」(明細書第2ページ第4?11行) 3 甲第3号証 甲第3号証には、次の事項が記載されている。 (1)「【0040】 非接触スイッチ25は、3点式の押しボタン24の上昇(開)ボタン241、停止(停)ボタン242、下降(閉)ボタン243の左側に隣接して設けられたエリアセンサ25a?25cから構成される。3個のエリアセンサ25a?25cは、3点式の押しボタン24の配列方向(図5では上下方向又は開閉方向)に沿った各ボタンの左側近傍に配置されている。この非接触スイッチ25は、近赤外線距離限定反射式のエリアセンサ25a?25cで構成され、点線で示す手指40などの反射物がエリアセンサ25a?25cに接近した状態を検知し、その検知信号を通信ケーブル経由にて入出力端子台21のマイクロコンピュータに出力する。このエリアセンサ25a?25cの検知範囲は、上昇(開)ボタン241、停止(停)ボタン242、下降(閉)ボタン243の左側であって、センサ手前の約5?15[cm]の領域(エリア)A,B,Cである。なお、エリアセンサ25a?25cは、3点式の押しボタン24の上昇(開)ボタン241、停止(停)ボタン242、下降(閉)ボタン243の右側に隣接して設けてもよい。手指40は、人間の手指のみならず、例えば義手の手指や鉛筆、ペン等の人間の手指に似た細長い物体を含むものである。」 (2)「【0046】 ステップS212では、接続されている各種構成部品から入力した状態変化を示す信号に対応した制御信号をモータドライブ基板22に通信ケーブル30経由で送信する。例えば、3点式の押しボタン24からの押圧操作信号を入力した場合、それぞれの開閉停の押しボタン241?243に対応した開閉停の制御信号をモータドライブ基板22に送信する。また、非接触スイッチ25からの検知信号に基づいて検知信号処理を実行し、開閉停の制御信号をモータドライブ基板22に送信する。さらに、障害物感知用の光電センサから感知信号を入力した場合、閉動作停止信号をモータドライブ基板22に送信する。」 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「エレベータ10のかご22」は、本件発明1の「エレベータ用昇降路を移動する乗りかご」に相当し、以下同様に、 「行先階の決定」は「行先階の登録」に、 「行先階の決定をする操作」は「行先階の登録操作」に、 「出入口左右両側の袖壁のいずれか一方」は「乗降口に隣接する壁」に、 「設けられ」ることは「取り付けら」ることに、 「かご操作盤28」は「エレベータ用操作盤」に、 「前記決定がなされた行先階の数字が点灯するように構成され」ることは「前記行先階の登録がなされたことを発光により報知する機能を有」することに、 「複数の数字」は「複数の登録報知部」に、それぞれ相当する。 そして、本件特許の願書に添付した明細書の「各センサ部32には両端が丸みを帯び水平方向Zに長くなるように形成された矩形状の孔が設けられ、各孔の奥側に上記反射型光電センサがそれぞれ格納される。」(段落【0025】)及び「図3に破線で示すように、上記検出領域Pに利用者が手Uをかざすなどの所定動作を行うことでセンサ部32が予め設定された時間だけ遮光を検知すると、後述する制御装置(図1参照)に検出信号が送信され、行先階の登録がなされる。」(段落【0030】)との記載からみて、甲1発明の「指や手のひらをかざす」こと及び「反射光の受光量に基づいて行先階を決定する」ことは、本件発明1の「手をかざす」こと及び「生じる遮光を検知することで前記行先階の登録操作を実行」することに相当するといえるから、甲1発明の「指や手のひらをかざすことによる反射光の受光量に基づいて行先階を決定する操作を行う反射型光電センサを収納した複数のセンサ32A,32B,…32C」は、本件発明1の「手をかざすことにより生じる遮光を検知することで前記行先階の登録操作を実行可能に各々構成された複数の非接触式操作入力部」に相当し、甲1発明の「前記センサ32A,32B,…32Cが前記指や手のひらをかざしたことを検知している状態」は、本件発明1の「前記非接触式操作入力部が前記遮光を検知している状態」に相当するといえる。 さらに、甲1発明において、センサ32A,32B,…32Cに指や手のひらをかざしたことを検知している状態において、センサ32A,32B,…32Cの左側に隣接する位置は、当該手のひらで隠れない位置であるといえるから、甲1発明の「正面側から見て前記センサ32A,32B,…32Cの左側に隣接する」ことは、本願発明1の「前記非接触式操作入力部が前記遮光を検知している状態で正面側から見たときに前記非接触式操作入力部にかざされている乗客の手で隠れてしまわないよう正面側から見て前記非接触式操作入力部の左側に隣接する」ことに相当するといえる。 以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「エレベータ用昇降路を移動する乗りかごの行先階の登録操作を行う機能を有し、前記乗りかご内の乗降口に隣接する壁に取り付けられたエレベータ用操作盤であって、 手をかざすことにより生じる遮光を検知することで前記行先階の登録操作を実行可能に各々構成された複数の非接触式操作入力部と、 前記複数の非接触式操作入力部により前記行先階の登録操作が行われた場合に前記行先階の登録がなされたことを発光により報知する機能を有し、前記非接触式操作入力部が前記遮光を検知している状態で正面側から見たときに前記非接触式操作入力部にかざされている乗客の手で隠れてしまわないよう正面側から見て前記非接触式操作入力部の左側に隣接する複数の登録報知部と、を備える、 エレベータ用操作盤。」 [相違点] 本件発明1のエレベータ用操作盤は「乗りかごの行先階の登録操作を行う機能を有するとともに上下方向に沿って一列に並ぶ複数の接触式操作入力部を含み」、 本件発明1の非接触式操作入力部は「正面側から見て前記複数の接触式操作入力部の右側に各々隣接配置され、」「正面側から見て左側に隣接する前記接触式操作入力部と同じ前記行先階の登録操作を実行可能」であって、 本件発明1の複数の登録報知部は「前記複数の接触式操作入力部および前記複数の非接触式操作入力部のうち左右に隣り合う前記接触式操作入力部および前記非接触式操作入力部のいずれか一方により前記行先階の登録操作が行われた場合に前記行先階の登録がなされたことを発光により報知する機能を有」し、「接触式操作入力部に各々設けられる」構成であるのに対し、甲1発明は、このような構成を有しない点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 甲第2号証には、「行先階呼登録ボタン」に内蔵される「ランプ」(本件発明1の「接触式操作入力部に各々設けられる」「登録報知部」に相当)は開示されているものの、「行先階呼登録ボタン」と同じ行先階の登録操作を実行可能な非接触式操作入力部が記載も示唆もされていないので、甲1発明に、甲第2号証に記載された技術的事項を付加したとしても、上記相違点に係る本件発明1の構成に至らない。 また、甲第3号証には、反射式のエリアセンサ25a?25cを、3点式の押しボタン24の上昇(開)ボタン241、停止(停)ボタン242、下降(閉)ボタン243の右側に隣接して設ける構成が記載されており、甲第3号証の「反射式のエリアセンサ25a?25c」及び「3点式の押しボタン24」は、それぞれ本件発明1の、「非接触式操作入力部」及び「接触式操作入力部」に相当するから、本件発明1の「非接触式操作入力部」を「正面側から見て前記複数の接触式操作入力部の右側に各々隣接配置」することに相当する構成は甲第3号証に記載されているものの、「行先階の登録操作を行う」「接触式操作入力部」及び「接触式操作入力部と同じ行先階の登録操作を実行可能」な「非接触式操作入力部」に相当する構成は、記載ないし示唆されていないので、甲1発明に、甲第3号証に記載された技術的事項を付加したとしても、上記相違点に係る本件発明1の構成に至らない。 さらに、甲第2号証及び甲第3号証のいずれにも、「接触式操作入力部と同じ行先階の登録操作を実行可能」な「非接触式操作入力部」は、記載ないし示唆されていないので、甲1発明に、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術的事項を付加しても、上記相違点に係る「正面側から見て左側に隣接する前記接触式操作入力部と同じ前記行先階の登録操作を実行可能」な「非接触式操作入力部」の構成には至らない。 そして、本件発明1は、上記相違点に係る本件発明1の「正面側から見て左側に隣接する前記接触式操作入力部と同じ前記行先階の登録操作を実行可能」な「非接触式操作入力部」の構成により、「操作盤の大型化を抑制しつつ利用者の利便性も向上させる」(段落【0014】参照。)という作用・効果を奏すると認められ、このような作用・効果は、当業者といえども甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術的事項から予測できたものとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明3ないし本件発明5について 本件発明3ないし本件発明5は、本件発明1を更に限定するものであり、甲1発明との間に少なくとも上記相違点を有するものである。 したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明3ないし本件発明5は、甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、3ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-10-08 |
出願番号 | 特願2020-102469(P2020-102469) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(B66B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 羽月 竜治 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
内田 博之 中村 大輔 |
登録日 | 2020-12-14 |
登録番号 | 特許第6809629号(P6809629) |
権利者 | フジテック株式会社 |
発明の名称 | エレベータ用操作盤 |
代理人 | 三宅 紘子 |
代理人 | 浅野 哲平 |
代理人 | 福屋 好泰 |